JP3621050B2 - 巻線装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、巻線装置に関し、特に、線材の絶縁皮膜の剥離機構を装備した巻線装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ボビンに線材を巻付ける場合には、巻始め、または、巻終りに線材をボビンの端子に絡げ、端子に溶着させる。そして、絡げる線材の絶縁被膜を予め剥離して、端子と線材との接合に対する信頼性を高めることができ、絶縁被膜の剥離装置が巻線装置に付設されている。
【0003】
しかし、従来の巻線装置における絶縁被膜の剥離装置は、巻線機とは別体であり、巻線機に線材を供給する部位に配置され、フライヤの先端の繰出し部からは遠く離れて位置されていた。
【0004】
このため、巻終りまでに巻付ける長さが線材の剥離位置と繰出し部間の距離と等しくなる時点で剥離装置を通過中の線材の絶縁被膜を剥離し、剥離部位が線材の巻回に連れて繰出し部に向かって搬送され、繰出し部が線材を巻終って端子に移動する時に、先に剥離した線材の剥離部分が繰出し部から繰出されるようにしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の巻線装置においては、剥離装置を通過する線材に対してボビンへの巻終り位置を見込んで剥離を開始するため、ボビンへの巻付けが巻終りに向かって進むに連れ、巻付け周長が変化したり巻付け密度が変化したりすることにより、剥離部分を端子の絡げ位置に正確に一致させることが難しく、しばしば剥離されていない線材部分が端子に絡げられて半田付けや溶着の際に炭化した絶縁被膜のカスが周囲に飛散し、また、端子に付着する不具合があった。
【0006】
特に、絶縁被膜の剥離装置と巻付け繰出し部の位置とが大きく離れている場合には、上記ズレがより一層生じやすい。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、絶縁被膜の剥離部分をボビンの端子位置に精度よく絡げるに好適な巻線装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、線材を繰出す繰出し部を軸心から偏心した先端位置に備え、回転ヘッドに回転自在に支持され、繰出し部から繰出す線材をワークに巻回するフライヤと、
前記フライヤの繰出し部手前の線材通過経路に配置され、フライヤに対して回転可能に支持された回転軸を回転させることにより絶縁皮膜を剥離する剥離手段を線材回りに回転させつつ線材表面に接触させて通過する線材の絶縁被膜を剥離する剥離機構と、
前記回転ヘッドに配置され、前記剥離機構の前記回転軸を選択的に回転駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記剥離機構は、前記回転軸に配置され線材に接離可能なカッタを回転に伴う遠心力により線材側へ押圧する錘およびこのカッタを線材から離反する方向に前記遠心力に対抗するよう付勢するばねを備えていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記回転ヘッドは、3軸方向に移動可能に3軸移動手段により支持され、前記フライヤの繰出し部は、回転を含めて4軸方向に移動可能であることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかにおいて、前記剥離機構の駆動手段は、回転軸に固定されたローラと、駆動源により回転され且つ前記ローラに接離可能な駆動ローラとからなることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかにおいて、前記剥離機構の駆動手段は、回転軸に固定された回転部材と、フライヤと同軸上に回転可能に配置され前記回転部材に係合するリング部材と、回転ヘッドに設けられ前記リング部材をフライヤに対し相対回転させる駆動源とからなることを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第3の発明において、前記剥離機構の剥離幅は、フライヤの繰出し部を経由して固定部材に係止された線材に対して繰出し部の前記4軸方向の少なくとも一つの軸方向への移動量により調整されることを特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
したがって、第1の発明では、フライヤの繰出し部手前の線材通過経路に配置され、フライヤに対して回転可能に支持された回転軸を回転させることにより絶縁皮膜を剥離する剥離手段を線材回りに回転させつつ線材表面に接触させて通過する線材の絶縁被膜を剥離する剥離機構を設け、この剥離機構を回転ヘッドに配置された駆動手段により選択的に回転駆動するようにしたため、剥離位置と線材を絡げる繰出し部との距離が短縮され、絶縁被膜の剥離部分を繰出し部から繰出したときワークの端子位置に精度よく一致させることができ、端子への線材の半田付け、溶着等が確実に行える。
【0015】
従って、従来のように、剥離後に線材が繰出し部へ移動する途中で弛んだり伸びたりして端子の位置に正確に位置決めされないことや、整列巻でない場合には、線材の長さを正確に決められず、正確な位置決めが難しいという問題を解消できる。
【0016】
しかも、剥離手段は回転しながら絶縁被膜を剥離するため、線材全周の絶縁被膜を剥離でき、端子への半田付け、溶着をより一層確実にできる。
【0017】
第2の発明では、第1の発明の効果に加えて、剥離機構を線材に接離可能なカッタを回転に伴う遠心力により線材側へ押圧する錘およびこのカッタを線材から離反する方向に前記遠心力に対抗するよう付勢するばね機構とで構成したため、駆動手段により回転軸を回転させ、錘に加わる遠心力でカッタを線材側へ押圧するよう作用し、この押圧力はこれに対抗するようカッタを付勢するばね機構に受止められ、両者の釣合った位置にカッタは移動する。駆動手段の回転速度を高めると釣合い位置がより線材の軸線に近い位置へ変化する。従って、駆動手段の回転数を調整することで上記カッタの回転中の位置を調整することができる。そして、線材の線径に対応して駆動手段の回転速度を変更することで、剥離作動中の線材に無理な押付け力を加えなくすることができ、断線や線材の削り取り等を防止できると共に、柔らかい表面の樹脂層からなる絶縁被膜のみを剥離することができる。したがって、線材が細い場合にも断線することなく絶縁被膜の剥離を行うことができる。
【0018】
第3の発明では、第1または第2の発明の効果に加えて、繰出し部はフライヤの回転を含めて4軸方向に移動可能であるため、ワークに一端が係止された線材を繰出し部から繰出す際、繰出し部を4軸のいずれかに移動させるのみでよく、線材の絶縁被膜を所定の長さで剥離するときにも繰出し部を移動させることで線材を移動させることができ、線材を送り出すのに別の送り出し機構を必要としない。
【0019】
第4の発明では、剥離機構の駆動手段は別体で設けられ必要時にのみ剥離機構のローラに接触して剥離機構を作動させるものであるため、フライヤの回転部を軽量にでき、その位置決め精度、移動位置精度を向上でき、また、駆動力を削減できる。
【0020】
第5の発明では、剥離機構の駆動手段が常時剥離機構と連結されているため、フライヤの任意の回転位置で線材の絶縁被膜を剥離でき、剥離位置を任意に設定でき、剥離位置精度をより一層向上できる。
【0021】
第6の発明では、第3の発明の効果に加えて、前記剥離機構の剥離幅を繰出し部の4軸方向の少なくとも一つの軸方向への移動量により調整するため、フライヤの位置決め精度に対応した精度で剥離幅を調整できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、本発明を適用した巻線装置の一例の斜視図、図2はその正面図、図3は剥離機構の詳細斜視図を夫々示し、線材Aの絶縁被膜を剥離する剥離機構1を備えたフライヤ部2と、ボビン等のワークWを保持するワーク保持部3と、ワークWの端子W1へ絡げられた線材Aと端子W1とを溶着する溶着装置4と、線材Aの抜け落ちを防止する捨て絡げ部5とから構成されている。
【0024】
前記フライヤ部2は、ベース6に水平移動機構21、上下移動機構22、前後移動機構23からなる3軸移動手段20を介して3次元に位置決めおよび移動される回転ヘッド24と、この回転ヘッド24に回転可能に支持した回転体25と、回転体25を駆動する駆動機構26と、回転体25の前方に固定され先端に線材Aを案内する繰出し部27を備えたフライヤ28と、フライヤ28内に回転可能に保持されたセンターフォーマ29と、フライヤ28外周に固定配置された線材絶縁被膜の剥離機構1と、剥離機構1を駆動する駆動手段7とから構成されている。
【0025】
前記回転ヘッド24を3次元に位置決めおよび移動させる3軸移動手段20の水平移動機構(X軸)21、上下移動機構(Z軸)22、前後移動機構(Y軸)23は、具体的に図示していないが、夫々ガイドレールとスライダとからなる案内機構と、モータ等により回転駆動される送りねじおよびナット等とからなる送り機構とを備えたものであり、夫々直交した第1〜3軸を構成し、XYZ軸のいずれを第1軸〜第3軸として設けるかは任意である。
【0026】
この回転ヘッド24には回転体25を軸受け24Aにより回転可能に支持しており、回転ヘッド24に固定したフライヤモータ26Aのプーリ26Bと回転体25に固定したプーリ26Cとの間にベルト26Dを掛け渡して駆動機構26が構成され、駆動機構26により回転体25は回転駆動される。
【0027】
前記回転体25の端面中心部には線材導入穴25Aが開口して設けられ、この線材導入穴25Aはフライヤ28への固定部分の手前で半径方向に次第に湾曲させて外周に開口され、その開口した部分には線材Aを案内するガイドプーリ25Bを配置している。
【0028】
前記フライヤ28は、回転体25に基部のフランジ28Aが固定されて一体に回転可能であり、筒状部分28Bの先端は二箇所で斜めに切欠かれて前記線材導入穴25Aの外周のガイドプーリ25Bの円周方向位置と一致させて一方の突出端28Cが位置する対向した突出端28C、28Dに形成され、この一方の突出端28Cには線材Aをガイドし繰出す繰出し部27が配置され、繰出し部27の後方にはガイドプーリ28Eが配置されている。
【0029】
そして、前記繰出し部27は、斜め内方に向かって傾斜設置され、繰出した線材を、前記駆動機構26によるフライヤ28の回転によりワークWに巻回できる一方、前記3軸移動手段20によってもワークWに巻回したり絡げたりできる。
【0030】
なお、繰出し部27は、線材Aが通過するノズル形状に構成されるのが一般的であるが、これに限られることなく、図示しないが、例えば、ガイドプーリにより線材Aを案内しながら繰出すよう構成したものであってもよい。
【0031】
また、前記フライヤ28の突出端28C、28Dを二箇所に設けているが、一箇所でも差し支えがなく、また、図示しないが、ワークのスロットに二条に線材を巻回する際には、二箇所の突出端に線材を繰出す繰出し部を設けるようにする。
【0032】
前記センターフォーマ29は、フライヤ28内に軸受け29Aを介して回転自在に配置され、先端29BはワークWに当接して巻付ける線材AがワークWのスロットSに円滑に進入するようガイドする形状に形成されている。
【0033】
前記剥離機構1は、前記回転体25の線材導入穴25Aの外周へ開口した部分のガイドプーリ25Bとフライヤ28の繰出し部27後方のガイドプーリ28Eとの間に位置して設けられ、フライヤ28基部のフランジ28Aとフランジ28Aに固定したブラケット8とに軸受け8A、8Bを介して回転可能に配置されフライヤ28と平行な軸心を持つ中空の回転軸9と、フランジ28Aおよびブラケット8間の回転軸9に固定した回転ローラ10とを備えている。
【0034】
前記回転軸9の中空穴内には前記回転体25の線材導入穴25Aの外周のガイドプーリ25Bから導かれた線材Aが通過するよう構成され、回転軸9先端には線材を振れなく繰出すノズル9Aに構成され、このノズル9Aから繰出された線材Aはフライヤ28の突出端28Cに設けたガイドプーリ28Eを経由して繰出し部27に送られる。
【0035】
また、前記剥離機構1は、ブラケット8を貫通した回転軸9に固定した後方の大円板11Aおよび先端の小円板11Bを備え、これら大円板11Aおよび小円板11Bを夫々斜めに貫通して円周方向等角度に配置した複数の自転可能な各シャフト12の小円板11Bを貫通した先に剥離手段としてのカッタ13を固定し、同じく各シャフト12の大円板11Aを貫通した後方に偏芯した位置に重心を持ち回転軸9が所定速度で回転する際に作用する遠心力によりシャフト12を自転させカッタ13同士を接近させる錘14を固定して備えている。
【0036】
そして、前記各錘14を貫通して設けた各ピン14Aに係合する半径方向溝15Aを持ち、図示しないばねにより各錘14を遠心力に対向して後退方向に付勢するばね機構15を備えている。
【0037】
従って、剥離機構1は、回転軸9の中空穴先端のノズル9Aから前記ガイドプーリ28Eおよび繰出し部27内を通って案内される線材Aに対し、回転軸9が所定速度で回転される際には、前記各錘14に作用する遠心力はばね機構15の後退作用に対向してシャフト12を自転させ先端に配置したカッタ13同士を接近させ、通過する線材Aの絶縁被膜を剥離するよう機能する。
【0038】
また、通過する線材Aの外径に対応して前記所定回転数は変更され、径の大きい線材Aに対しては比較的低い所定回転数が設定されてカッタ13同士の接近を抑制し、径の小さい線材Aに対しては比較的高い所定回転数を設定してカッタ13同士の接近を大きくする。
【0039】
前記剥離機構1の駆動手段7は、前記回転ヘッド24に設けた昇降ガイド16および昇降シリンダ16Aによりフライヤ28に接近離脱可能に設けたブラケット16Bに取付けた剥離モータ17と、剥離モータ17により駆動される駆動ローラ17Aとを備えている。
【0040】
そして、フライヤ28の回転を停止して剥離機構1が所定位置に停止され、昇降シリンダ16Aを作動させて駆動ローラ17Aを剥離機構1の回転ローラ10に接触させ、剥離モータ17を回転させることで、剥離モータ17、駆動ローラ17A、回転ローラ10と回転が伝達され、剥離機構1を剥離作動させる。
【0041】
前記ワーク保持部3に保持されるワークWは、図示例ではモータのロータを対象として示しており、線材Aが巻回されて磁極を形成するスロットSを磁極数だけ備えたアーマチュアAM、および、磁極の数に応じてスリットにより分割された円筒型のコミュテータCMとを出力軸SHに固定して構成されており、コミュテータCMの各分割部にはアーマチュアAMの各磁極に巻回された線材Aの絶縁被膜が剥離された端部が絡げられる半径方向に伸びる端子W1が設けられる。
【0042】
前記ワーク保持部3は、ベース6下方に固定した割出モータ30により回転位置が調整される割り出しテーブル31を備え、ワーク保持治具としてのチャック32を割り出しテーブル31に装着し、ワークWであるロータの出力軸SHをチャック32により固定する。
【0043】
そして、割り出しテーブル31を割り出しモータ30により割り出し角度位置に回転保持して、所定の磁極にフライヤ28により巻線されると、次の磁極の割り出し位置に回転させるよう作動する。
【0044】
なお、前記ワーク保持部3は、図示例ではモータのロータを対象として示しているが、これに限定されるものではなく、他のボビンにも、また、ボビンレスのコイルにも適用するよう変更できる。
【0045】
前記溶着装置4は、ワークWの端子W1と絡げられた線材Aとを溶着させるものであり、この溶着のための溶着ヘッド35と、ベース6に固定され前記溶着ヘッド35をワークWの端子W1位置に移動させる移動機構36とを備えている。
【0046】
前記溶着ヘッド35は、先端同士が隙間をもって対向する一対の電極35A、35Bを備え、電極35A、35B間に、図示しないが、比較的抵抗の高い金属(タングステン等)を配置して、電極35A、35B間の隙間に絡げられた線材Aと端子W1を挟んだ状態で大電流を電極35A、35B間に流すことで電極35A、35B間の金属に発生する熱により線材Aと端子W1とを溶着するよう機能する。
【0047】
また、移動機構36は、ベース6に固定されたブラケット36Aに、詳細には図示しないが、前後方向レールによる前後移動機構の第1軸(Y軸)36Bと、昇降レールによる上下移動機構の第2軸(Z軸)36Cと、水平レールによる水平移動機構の第3軸(X軸)36Dとを備えた3軸位置決め機構に構成され、ワーク保持部3に保持されたワークWの端子W1へ前記溶着ヘッド35を移動可能としている。なお、XYZ軸のいずれを第1軸〜第3軸として設けるかは任意に設定できる。
【0048】
前記捨て絡げ部5は、フライヤ28の繰出し部27から繰出される線材Aが繰出し部27後方に抜け出ないように線材Aの先端部を絡げておくものであり、線材Aが絡げられるピン37を備え、このピン37は前記溶着装置4の移動機構36の前後移動機構(Y軸)36Bに設けられた支持台36Eに水平移動機構(X軸)37Aを付加することで、前記ピン37は前後方向、および、左右方向の任意位置に移動可能に構成されている。
【0049】
次に、巻線装置の巻線動作を説明する。
【0050】
先ず、線材Aをフライヤ28の回転体25の線材導入穴25Aからガイドプーリ25Bで案内し、剥離機構1の回転軸9内、ガイドプーリ28E、繰出し部27を通過させた状態で、その先端が捨て絡げ部5のピン37に絡げられている。この絡げ動作は、先行するワークWへの巻線作業が終了した際に行われる。
【0051】
次に、割り出しテーブル31のチャック治具32に、ワークWであるロータの出力側の出力軸SHをチャックして保持させ、割り出しモータ30を作動させて線材AのスロットS間の磁極をフライヤ28に正対するよう割り出し位置に位置決めさせる。このワークWのセットは、図示しないマニピュレータ(ロボット装置)により自動的に行い、その回転位置を決めて装着することで第1回目の割り出し動作を省くようにしてもよい。
【0052】
次いで、フライヤ28をその3軸移動手段20を作動させてワークWに接近させ、フライヤ28先端の繰出し部27をコミュテ一夕CMの端子W1に向け移動させる。
【0053】
このフライヤ28の移動に伴い、先端が捨て絡げ部5のピン37に絡げられている線材Aが剥離機構1を通過して繰出し部27から繰出され、所定のタイミングにより剥離モータ17により駆動される駆動ローラ17Aが上下シリンダ16Aにより下降されて剥離機構1の回転ローラ10と接触して駆動し、剥離機構1の回転軸9を回転させる。
【0054】
この回転は大小円板11A、11Bで支持したシャフト12を回転(公転)させ、且つ、シャフト12後端の錘14に加わる遠心力に応じてシャフト12を所定角度だけ自転させ、シャフト12先端のカッタ13を通過する線材A表面に接触させ、線材Aの表面の絶縁被膜をカッタ13各々でヘリカル状に剥離する。
【0055】
所定範囲の剥離が完了すると剥離モータ17および駆動ローラ17Aは昇降シリンダ16Aで上昇されて剥離機構1の回転ローラ10から離脱され、上記被膜剥離が終了する。
【0056】
前記剥離範囲の位置および範囲は、フライヤ28の繰出し部27が端子W1に最も接近した時に繰出し部27から剥離された線材Aが繰出されてくるよう、捨て絡げピン37と端子W1との相互の距離関係が予め測定され、剥離位置が設定され、端子W1に絡める長さの範囲で剥離範囲が設定され、夫々プログラムに入力され、上記剥離モータ17および駆動ローラ17Aを昇降するようにしている。
【0057】
そして、線材Aが端子W1に掛かるとフライヤ28の繰出し部27を3軸移動手段20により端子W1回りに旋回移動させ、端子W1へ線材Aの剥離部分を絡げ、この絡げ後に、3軸移動手段20によりフライヤ28を移動させ、センターフォーマ29の受け部28BをアーマチュアAM側面のスロートS間の外周に接触させる。
【0058】
この状態では、センターフォーマ29の外周はワークWのスロットSに連なる形状となっており、磁極の中心とフライヤ28の中心とが正対している。
【0059】
次いで、ワークWの磁極の当該スロットSに線材Aを巻き付けるため、フライヤモータ26Aを回転させ、プーリ26B、26C、ベルト26Dを介して回転体25を回転させ、フライヤ28の繰出し部27を磁極の周囲に回転移動させて、磁極のスロットSに線材Aを巻き付ける。
【0060】
この巻付け作業において、センターフォーマ29は軸受け29Aによりフライヤ28に支持されているため、ワークWへの接触状態を維持し、繰出し部27から繰出された線材AをワークWのスロットSにガイドする。
【0061】
所定の巻数を巻付けたら、剥離機構1を上方に位置させてフライヤ28の回転を止め、剥離モータ17および駆動ローラ17Aを上下シリンダ16Aで下降させ、駆動ローラ17Aを剥離機構1の回転ローラ10に押圧接触させ、剥離モータ17を回転させることで、剥離機構1のカッタ13を線材Aの周囲で回転させ、錘14の遠心力により線材Aにカッタ13を接触させて、線材Aの絶縁被膜を剥離する。
【0062】
上記剥離機構1の作動と連動して、フライヤ28を3軸移動手段20の前後移動機構23(左右移動機構21でも上下移動機構22でもよい)を作動して所定量だけ後退(移動すればよい)させることで、線材Aの所定幅の絶縁被膜を剥離させることができ、所定幅の絶縁被膜の剥離後、剥離モータ17を上昇させ、剥離機構1を停止させる。
【0063】
次に、ワークWであるロータを割り出しモータ30により割り出しテーブル31を所定角度回転させて、新たに巻線する磁極への巻線位置に位置決めする。
【0064】
そして、繰出し部27を新たな磁極に対応するコミュテ一夕CMの端子W1に接近させ、その端子W1に線材Aを掛け、フライヤ28の繰出し部27を3軸移動手段20により端子W1回りに移動させ、端子W1に線材Aを絡げる。
【0065】
この時、線材Aの剥離部分が繰出し部27先端から繰出されるように線材Aの巻終りの位置と今回絡げようとする端子W1との間隔に相当する位置から絶縁被膜が剥離されるよう、繰出し部27と剥離機構1のカッタ13との間隔を考慮して前記前後移動機構23の所定ストローク中の剥離初めの位置と剥離終り位置とを設定しており(他の方向の移動機構であってもよい)、線材Aの剥離部分において端子W1に絡げることができる。
【0066】
そして、フライヤ28を磁極に正対させてフライヤ28を回転させ、センターフォーマ29によるガイドによって磁極のスロットSに所定の巻き数だけ巻回し、同様に絶縁被膜を剥離し、割り出しテーブル31を割り出しモータ30により所定角度回転させて新たな磁極を巻線位置に移動させ、繰出し部27を新たな磁極に対応するコミュテ一夕CMの端子W1に絡げ、このときにも、同様に、線材Aの剥離部分を端子W1に絡げる。
【0067】
以上の動作を繰り返すことで、順次ワークWのスロットSに線材Aを巻き付け、端子W1に線材Aを絡げ、アーマチュアAMの巻線が完了すると、フライヤ28は3軸移動手段20により繰出し部27を捨て絡げピン37回りを周回移動させて捨て絡げピン37に線材Aを絡げ、フライヤ28の移動を停止させる。
【0068】
そして、溶着ヘッド35を3軸移動機構36により移動させて、各絡げられたコミュテータCMの各端子W1と線材Aとの溶着を行ない、一連の作業を終了し、ワークWはチャック32から取り外され、次工程に搬送される。
【0069】
以上の実施の態様においては、以下の効果を奏する。
【0070】
剥離機構1は、フライヤ28に回転可能で且つ繰出し部27の後端に向かって延在され外部の駆動手段7に選択的に連結されて回転する中空の回転軸9とこの回転軸9先端から繰出し部27後端に案内される線材Aを囲み回転軸9の回転により線材Aに接近作動する絶縁被膜の剥離手段13とからなり通過する線材Aの絶縁被膜を剥離するため、剥離位置と剥離した線材Aを繰出す繰出し部27との距離が短縮でき、線材の剥離部分を繰出し部27から繰出したときワークWの端子W1位置に精度よく一致させることができ、端子W1への線材Aの半田付け、溶着等が確実に行える。
【0071】
従って、従来のように、被膜剥離後の線材が、繰出し部へ移動する途中で弛んだり、伸びたりして、その剥離部分が端子の位置に正確に位置決めされないことや、整列巻でない場合には、線材の長さを正確に決められず、正確な位置決めが難しいという問題を解消できる。
【0072】
そして、剥離手段13は、線材A回りを回転しながら絶縁被膜を剥離するため、線材A全周の絶縁被膜を剥離することができ、端子W1への半田付け、溶着をより一層確実にできる。
【0073】
また、剥離機構1を線材Aに接離可能なカッタ13を回転に伴う遠心力により線材A側へ押圧する錘14およびこのカッタ13を線材Aから離反する方向に前記遠心力に対抗するよう付勢するばね機構15とで構成したため、駆動手段7により回転軸9を回転させ、錘14に加わる遠心力でカッタ13を線材A側へ押圧するよう作用し、この押圧力はこれに対抗するようカッタ13を付勢するばね機構15に受止められ、両者の釣合った位置にカッタ13は移動する。駆動手段7の回転速度を高めると釣合い位置がより線材Aの軸線に近い位置へ変化する。従って、駆動手段7の回転数を調整することで上記カッタ13の回転中の位置を調整することができる。そして、線材Aの線径に対応して駆動手段7の回転速度を変更することで、剥離作動中の線材Aに無理な押付け力を加えなくすることができ、断線や線材の削り取り等を防止できると共に、柔らかい表面の樹脂層からなる絶縁被膜のみを剥離することができる。したがって、線材Aが細い場合にも断線することなく絶縁被膜の剥離を行うことができる。
【0074】
また、繰出し部27は3軸移動手段20によりフライヤ28の回転を含めて4軸方向に移動可能に設けられるため、ワークWに一端が係止された線材Aを繰出し部27から繰出す際、繰出し部27を4軸のいずれかに移動させるのみでよく、線材Aの絶縁被膜を所定の長さで剥離するときにも繰出し部27を移動させることで線材Aを移動させることができ、線材Aを送り出すのに別の送り出し機構を必要としない。
【0075】
また、線材Aの剥離幅は、繰出し部27の4軸方向の少なくとも一つの軸方向への移動量により調整できるため、フライヤ28の位置決め精度に対応した精度で剥離幅を調整できる。
【0076】
また、剥離機構1は、駆動手段7としての剥離モータ17、駆動ローラ17Aを別体に備えているため、フライヤ28の回転部を軽量にでき、その位置決め精度、移動位置精度を向上でき、また、駆動力を削減できる。
【0077】
図4は、本発明の他の実施の態様の巻線装置の斜視図、図5は正面図を夫々示し、図1〜3に示す巻線装置においては、フライヤ28の所定回転位置においてのみ剥離機構1が駆動可能となる制約がある駆動手段7であるのに対し、本態様では、その制約を取り除き、フライヤ28の回転位置に関わりなく何時でも剥離機構1を作動できる駆動手段39としたもので、図1〜3に示す巻線装置と同一部品には同一符号を付して説明する。
【0078】
即ち、剥離機構1の回転ローラ10はかさ歯車40(直歯のみならず、曲がり歯でも可)に変更され、このかさ歯車40に噛み合う歯をもつリングギヤ41を回転体25外周に軸受け43を介して回転可能に支持し、このリングギヤ41に一体にプーリ44を設け、回転ヘッド24に固定した図示しないクラッチ内蔵の剥離モータ45の駆動プーリ46と前記リングギヤ41のプーリ44とをベルト47で巻き掛けしている。
【0079】
そして、剥離モータ45に内蔵されたクラッチを開放しておくことで、リングギヤ41とかさ歯車40との噛み合い位置が変化せずにリングギヤ41が回転体25と一体となって回転し、ベルト47およびプーリ44、46は空転する状態とでき、剥離機構1を作動させないようにできる。
【0080】
また、剥離機構1を作動させる場合には、上記剥離モータ45に内蔵のクラッチを締結して剥離モータ45を駆動することで、ベルト47を介してリングギヤ41を回転体25に対して相対回転させ、噛み合っているかさ歯車40を回転させ、フライヤ28の回転位置に拘束されることなく回転軸9を回転させることができる。
【0081】
なお、上記例では、かさ歯車40とリングギヤ41とを組合わせているが、これに限られず、図示しないが、ピニオンギヤとリングギヤとの組合わせ、摩擦ローラとリングローラの組合わせであってもよい。
【0082】
この実施の態様においては、図1に示す実施の態様により得られる効果に加えて、剥離機構1が常時リング部材としてのリングギヤ41、および、プーリ44、46を介して剥離モータ45に連結しているため、剥離機構1はフライヤ28の任意の回転位置で線材Aの絶縁被膜を剥離でき、剥離位置を任意に設定でき、剥離位置精度をより一層向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す巻線装置の斜視図。
【図2】同じく正面図。
【図3】同じく剥離機構の拡大斜視図。
【図4】本発明の他の実施形態を示す巻線装置の斜視図。
【図5】同じく正面図。
【符号の説明】
A 線材
W ワーク
W1 端子
1 剥離機構
2 フライヤ部
3 ワーク保持部
4 溶着装置
5 捨て絡げ部
6 ベース
7、39 駆動手段
9 回転軸
10 回転ローラ
11 円板
12 シャフト
13 カッタ(剥離手段)
14 錘
15 ばね機構
17、45 剥離モータ
17A 駆動ローラ
20 3軸移動手段
21 水平移動機構
22 上下移動機構
23 前後移動機構
24 回転ヘッド
25 回転体
26 駆動機構
27 繰出し部
28 フライヤ
29 センターフォーマ
30 割り出しモータ
31 割り出しテーブル
32 チャック
35 溶着ヘッド
36 3軸移動機構
37 捨て絡げピン
40 かさ歯車
41 リングギヤ(リング部材)
Claims (6)
- 線材を繰出す繰出し部を軸心から偏心した先端位置に備え、回転ヘッドに回転自在に支持され、繰出し部から繰出す線材をワークに巻回するフライヤと、
前記フライヤの繰出し部手前の線材通過経路に配置され、フライヤに対して回転可能に支持された回転軸を回転させることにより絶縁皮膜を剥離する剥離手段を線材回りに回転させつつ線材表面に接触させて通過する線材の絶縁被膜を剥離する剥離機構と、
前記回転ヘッドに配置され、前記剥離機構の前記回転軸を選択的に回転駆動する駆動手段とを備えたことを特徴とする巻線装置。 - 前記剥離機構は、前記回転軸に配置され線材に接離可能なカッタを回転に伴う遠心力により線材側へ押圧する錘およびこのカッタを線材から離反する方向に前記遠心力に対抗するよう付勢するばね機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の巻線装置。
- 前記回転ヘッドは、3軸方向に移動可能に3軸移動手段により支持され、前記フライヤの繰出し部は、回転を含めて4軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の巻線装置。
- 前記剥離機構の駆動手段は、回転軸に固定されたローラと、駆動源により回転され且つ前記ローラに接離可能な駆動ローラとからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の巻線装置。
- 前記剥離機構の駆動手段は、回転軸に固定された回転部材と、フライヤと同軸上に回転可能に配置され、前記回転部材に係合するリング部材と、回転ヘッドに設けられ、前記リング部材をフライヤに対し相対回転させる駆動源とからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の巻線装置。
- 前記剥離機構の剥離幅は、フライヤの繰出し部を経由して固定部材に係止された線材に対して繰出し部の前記4軸方向の少なくとも一つの軸方向への移動量により調整されることを特徴とする請求項3に記載の巻線装置。
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