JP3620330B2 - 可動部配線材用極細導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療機器や産業ロボット等の電子機器可動部に配線される可動部配線材の芯線として用いられる可動部配線材用極細導体に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
一般に、医療機器や産業ロボット等の電子機器可動部に配線される可動部配線材は、その性格上、過酷な曲げ,捻り,引張り等の応力を繰り返し受けることから、特にその芯線となる導体には優れた耐屈曲性と引張強度が要求される。
【0003】
そのため、最近では、このような可動部配線材に使用される導体として、軟銅線単独でなく、Cuに適量のSnを添加することで引張強度及び耐屈曲性を向上させた合金材料からなるものが開発され、一部実用化に至っている。
【0004】
一方、近年の電子機器の小型・軽量・高性能化の要請を受け、このような可動部配線材には、小型・軽量化のための細径化と共に情報伝送量の増大に伴う高導電性が要求されてきているが、引張強度及び耐屈曲性と共に高導電性をも同時に満足する細径導体は提案されていないのが現状である。
【0005】
すなわち、上述した従来の銅合金を細径導体の材料として用いた場合、細径化に伴う引張強度や耐屈曲性を向上させるために、Snの添加量をさらに増加させる必要があるが、そうすると導電率が著しく低下してしまうといった欠点があり、引張強度,耐屈曲性,高導電性の全てを高い次元で満足することは不可能であった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、導電性の低下を招くことなく、引張強度及び耐屈曲性を大幅に向上させることができる新規な可動部配線材用極細導体を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、Cuに合計で0.15〜1.0wt%のInとSnを添加した銅合金を素線径0.05mm以下に冷間伸線加工してなる極細素線を形成し、この極細素線を少なくとも3本以上撚線加工してなるものである。
【0008】
これによって、導電性の低下を招くことなく、引張強度及び耐屈曲性を大幅に向上させることができるため、引張強度,耐屈曲性,高導電性の全てを高い次元で満足することが可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施する好適一形態を添付図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る可動部配線材用極細導体1の実施の一形態を示したものである。
【0011】
図示するように、この可動部配線材用極細導体1は、素線径が0.08mm以下、望ましくは0.05mm以下の極細素線2を、少なくとも3本以上複数本撚り線加工してなるものであり、その撚りピッチは、導体1の外径に対して少なくとも11〜24の比率となっている。
【0012】
すなわち、この撚りピッチと導体径の比が10以下であると、撚線作業時に素線2に加わるたわみ量が大きくなって屈曲疲労寿命が大きく低下してしまう上に、撚り線作業時の速度が遅くなり、生産性が低下してしまうからである。一方、この比が25以上となると、端末加工時に撚線端末からバラケが生じてしまい、人手による端末処理を行わなければならず、端末加工の自動化ができなくなるからであり、さらに、望ましくは撚りピッチと導体径の比は15〜20の範囲である。尚、この極細素線2を撚るようにしたのは、勿論、強度の向上と強度と密接に関連する屈曲疲労特性の向上を図るためである。ちなみに軟銅線の場合は、これをいくら撚っても強度と屈曲疲労特性について満足する結果を得ることができない。
【0013】
また、この極細素線2は、Cuに合計で0.15〜1.0wt%のInとSnを添加した銅合金材料を用い、これを線径0.08mm以下に冷間伸線加工してなるものである。
【0014】
ここで、Cu中にSnの他にInを加えた理由としては、上述したようにSnのみでは、極細化した場合に耐屈曲性が低下して屈曲疲労寿命が短くなってしまうからであり、また、InとSnの合計添加量を0.15〜1.0wt%と限定したのは、0.15wt%未満では、強度向上に有効な固溶限が少なく強度の向上が期待できないためであり、反対に1.0wt%を越えると、導電性が著しく低下してしまい、導電材料としての実用性上問題があるためである。
【0015】
そして、このような構成をした本発明の可動部配線材用極細導体1にあっては、導電率の低下を招くことなく優れた引張強度及び耐屈曲性を発揮することが可能となり、加えて端末加工時の撚線バラケ等の不都合を招くことなく優れた生産性及び信頼性を発揮することができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を説明する。
【0017】
(実施例)
0.2wt%のInと0.2wt%のSnを添加した銅合金線からなる銅合金材料を冷間伸線加工してφ0.04mmの極細素線を形成した後、この極細素線7本用いて、ピッチと導体径との比を15及び20で撚線加工した試料導体を形成し、その後、これら各試料導体に対して屈曲寿命試験を行った。
【0018】
(比較例1,2)
ピッチと導体径との比をそれぞれ10未満及び25を越える比とした他は、実施例と同様な試料導体を形成し、その後、これら各試料導体に対して屈曲寿命試験を行った。
【0019】
(比較例3,6)
InとSnの合計添加量をそれぞれ0.10wt%,1.5wt%以上とした他は実施例と同様な試料導体を形成し、その後、これら各試料導体に対して屈曲寿命試験を行った。
【0020】
(比較例4,5)
Inを添加せず、かつSnのみの添加量をそれぞれ0.15wt%、0.30wt%とした他は実施例と同様な試料導体を形成し、その後、これら各試料導体に対して屈曲寿命試験を行った。
【0021】
尚、上記実施例及び比較例1,2及び比較例3,6の試料においては、伸線加工を容易とするために冷間伸線加工の途中で1度焼鈍を入れた。また、比較例4,5の試料においては、冷間伸線加工が可能なため、途中で焼鈍を入れていない。
【0022】
【表1】
【0023】
この結果、本発明に係る実施例は、いずれも1200回を越える優れた屈曲寿命を示しているのに対し、ピッチと導体径との比が本発明の範囲を外れる比較例1及び2の試料では、いずれも屈曲寿命が1000回前後であり、実施例に区画して大きく低下してしまい、さらに、比較例2にあっては端末加工時の撚り線バラケが生じてしまった。
【0024】
また、InとSnの合計添加量が本発明の範囲外である比較例3,6の試料は、比較例3にあっては、添加元素の固溶量が少なすぎて引っ張り強度が出ず、それに関連して屈曲寿命も硬銅線と比べて殆ど有位差がないのに対して導電率が約10%程度低下してしまった。比較例6にあっては、引張強度及び屈曲寿命は向上するが、導電率の低下が著しく実用的でない。導電率は少なくとも60%以上は必要である。
【0025】
さらに、Inを全く添加しない比較例4,5の試料の場合では屈曲寿命がそれぞれ539回,801回であり、本発明に係る実施例に比較して大きく劣ってしまった。
【0026】
尚、この試験と並行して、本発明に係る極細導体1の各素線2上に、撚り線加工する前に予め銀メッキを施したところ、有効なハンダ付け性も確認された。
【0027】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、導電性を犠牲にすることなく、引張強度及び耐屈曲性を大幅に向上させることができる。この結果、過酷な曲げ応力に対しても破断や座屈を招くことなく引張強度,耐屈曲性,高導電性の全てを高い次元で満足することができる。そして、このような本発明の可動部配線材用極細導体を使用することにより、医療機器や電子機器等及びその可動部の小型・軽量化並びに高性能化等に大いに貢献することができる等といった優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示す拡大側面図である。
【符号の説明】
1 可動部配線材用極細導体
2 極細素線
Claims (5)
- Cuに合計で0.15〜1.0wt%のInとSnを添加した銅合金を素線径0.05mm以下に冷間伸線加工してなる極細素線を形成し、この極細素線を少なくとも3本以上撚線加工してなることを特徴とする可動部配線材用極細導体。
- Cuに合計で0.15〜1.0wt%のInとSnを添加した銅合金を素線径0.08mm以下に冷間伸線加工してなる極細素線を形成し、この極細素線を複数本撚線加工してなり、
上記極細素線の撚りピッチと導体径との比が11〜24であることを特徴とする可動部配線材用極細導体。 - 上記極細素線の撚りピッチと導体径との比が11〜24であることを特徴とする請求項1に記載の可動部配線材用極細導体。
- Cuに合計で0.15〜1.0wt%のInとSnを添加した銅合金を素線径0.08mm以下に冷間伸線加工してなる極細素線を形成し、この極細素線を複数本撚線加工してなり、
上記極細素線の外周に銀メッキが施されていることを特徴とする可動部配線材用極細導体。 - 上記極細素線の外周に銀メッキが施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可動部配線材用極細導体。
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1999
- 1999-03-10 JP JP06359199A patent/JP3620330B2/ja not_active Expired - Lifetime
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