JP3619451B2 - V型シリンダブロックの鋳造装置 - Google Patents

V型シリンダブロックの鋳造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、V型シリンダブロックの鋳造装置に関し、特に、V字形に配置される第1および第2シリンダバレルに個別に対応した第1および第2シリンダバレル対応部を有するキャビティが、各シリンダバレル対応部でのシリンダボア配列方向を水平とするとともに第1シリンダバレル対応部の上方に第2シリンダバレル対応部を配置して、型締め状態にある複数の金型間に形成され、前記キャビティに溶湯を供給するための湯口が、前記シリンダボア配列方向に沿う第1シリンダバレル対応部の中央部に対応した位置で第1シリンダバレル対応部よりも下方に配置されるV型シリンダブロックの鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、第1および第2シリンダバレル対応部を有するキャビティが、シリンダボア配列方向を水平として型締め状態の金型装置に形成される鋳造装置は、たとえば特開昭61−232053号公報等で既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の鋳造装置では、第1および第2シリンダバレル対応部のうち下側に配置されている第1シリンダバレル対応部よりもさらに下方に湯口が配置されており、湯口からの溶湯は、先ずキャビティの第1シリンダバレル対応部に入り、第1シリンダバレル対応部を満たした後に第2シリンダバレル対応部側に流れることになる。このため、湯口からの注湯開始後に第1シリンダバレル対応部が溶湯で満たされるまでの時間と、第2シリンダバレル対応部が溶湯で満たされるまでの時間との間に時間差が生じ、第1および第2シリンダバレルの鋳造品質に差が生じてしまう可能性がある。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、シリンダボア配列方向を水平方向としてV型シリンダブロックを鋳造成形する際に一対のシリンダバレルの鋳造品質に差が生じることを極力防止し得るようにしたV型シリンダブロックの鋳造装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、V字形に配置される第1および第2シリンダバレルに個別に対応した第1および第2シリンダバレル対応部を有するキャビティが、各シリンダバレル対応部でのシリンダボア配列方向を水平とするとともに第1シリンダバレル対応部の上方に第2シリンダバレル対応部を配置して、型締め状態にある複数の金型間に形成され、前記キャビティに溶湯を供給するための湯口が、前記シリンダボア配列方向に沿う第1シリンダバレル対応部の中央部に対応した位置で第1シリンダバレル対応部よりも下方に配置されるV型シリンダブロックの鋳造装置において、前記湯口に一端を連ならせるとともに第1シリンダバレル対応部側で前記キャビティに他端を通じさせる湯口ランナと、該湯口ランナに一端を通じさせる一対のアシスト湯口ランナとが、型締め状態にある複数の金型の少なくとも一部に設けられ、その一対のアシスト湯口ランナの他端が、2つに分岐した分岐部を各々有していて、その一対のアシスト湯口ランナの各一方の分岐部が第2シリンダバレル対応部側でシリンダボア配列方向に沿う前記キャビティの両端に通じるように形成されると共に、その一対のアシスト湯口ランナの各他方の分岐部が第1シリンダバレル対応部側でシリンダボア配列方向に沿う前記キャビティの両端に通じるように形成されることを特徴とする。
【0006】
このような構成によれば、湯口から湯口ランナに導かれる溶湯の大部分は、キャビティ内で第1シリンダバレル対応部から第2シリンダバレル対応部へと流れるが、湯口ランナから一対のアシスト湯口ランナ側に流れる溶湯が、第1シリンダバレル対応部を迂回して第2シリンダバレル対応部側におけるシリンダボア配列方向の両端に流れることになるため、湯口からの注湯開始後に第1シリンダバレル対応部が溶湯で満たされるまでの時間と、第2シリンダバレル対応部が溶湯で満たされるまでの時間との間に大きな時間差が生じないようにすることができ、その結果、第1および第2シリンダバレルの鋳造品質に差が生じることを極力防止することができる。
【0007】
また特に上記一対のアシスト湯口ランナの他端は、2つに分岐した分岐部を各々有していて、第2シリンダバレル対応部側におけるシリンダボア配列方向の両端だけでなく、第1シリンダバレル対応部側におけるシリンダボア配列方向の両端にも通じているため、その一対のアシスト湯口ランナを通して第1,第2シリンダバレル対応部の何れにもシリンダボア配列方向の両端から溶湯が均等に注入されることになり、これにより、各々のシリンダバレルにおいてシリンダボア配列方向で鋳造品質に差が生じるのを極力抑制することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図4は本発明の一実施例を示すものであり、図1は鋳造完了直後のシリンダブロックの正面図であって図2の1矢視図、図2は図1の2矢視図、図3は図2の3矢視図、図4は図1の4ー4線に沿う部分での鋳造装置の断面図である。
【0010】
先ず図1〜図3において、このV型シリンダブロック5は、たとえばV型6気筒エンジンの一部を構成するものであり、クランクケース部6と、該クランクケース部6からV字形をなして上方に延びる一対の第1および第2シリンダバレル7A,7Bとを一体に備える。
【0011】
第1および第2シリンダバレル7A,7Bには、シリンダボア配列方向8に沿って一列に並ぶ複数(この実施例では3つ)のシリンダボア9…をそれぞれ備えるものであり、これらのシリンダボア9…内にピストン(図示せず)がそれぞれ摺動自在に嵌合される。またクランクケース部6には、シリンダボア配列方向8に沿って複数(この実施例では4つ)のジャーナル壁10,10…が隔設されており、各ジャーナル壁10,10…と、それらのジャーナル壁10,10…にそれぞれ締結されるベアリングキャップ(図示せず)とでクランクシャフト(図示せず)が回転自在に支承される。
【0012】
このようなシリンダブロック5は、図4で示す鋳造装置で鋳造成形されるものであり、該鋳造装置は、型締め可能な複数の金型11,12,13…を備え、型締め状態にある前記各金型11,12,13…間には、V型シリンダブロック5に対応した形状のキャビティ14が形成される。
【0013】
キャビティ14は、V型シリンダブロック5の第1および第2シリンダバレル7A,7Bにそれぞれ対応した第1および第2シリンダバレル対応部14a,14bを有しており、各シリンダバレル対応部14a,14bでのシリンダボア配列方向8(図4の紙面に垂直な方向)を水平とするとともに第1シリンダバレル対応部14aの上方に第2シリンダバレル対応部14bを配置するようにして、金型11,12,13…間に形成される。
【0014】
また金型11には、キャビティ14に溶湯を供給するための湯口15が設けられたおり、この湯口15は、前記シリンダボア配列方向8に沿う第1シリンダバレル対応部14aの中央部に対応した位置で第1シリンダバレル対応部14aよりも下方に配置される。しかも金型11には、溶湯を加圧して湯口15に押し込むための射出スリーブ16が、湯口15に通じるようにして連結される。
【0015】
金型11〜13のうち金型11,12間には、湯口15に一端を通じさせるとともにキャビティ14 のうち第1シリンダバレル対応部14aの複数箇所に他端を通じさせる湯口ランナ17が形成される。また各金型11〜13のうち金型11,12には、前記シリンダボア配列方向8に沿う湯口ランナ17の両端に一端を通じさせる一対のアシスト湯口ランナ18…が設けられる。これらのアシスト湯口ランナ18…の他端は2つに分岐した分岐部18a,18bをそれぞれ有し、両分岐部18a,18bはシリンダボア配列方向8に沿うキャビティ14の両端に通じるのであるが、一方の分岐部18aは、第2シリンダバレル対応部14b側でキャビティ14に通じるように形成され、他方の分岐部18bは、第1シリンダバレル対応部14a側でキャビティ14に通じるように形成される。
【0016】
さらに各金型11〜13のうち金型11,12間には、シリンダボア配列方向8に沿って間隔をあけた複数箇所(この実施例では7箇所)で、キャビティ14の上部すなわち第2シリンダバレル対応部14bに通じるガス抜きランナ19…が形成される。
【0017】
このような鋳造装置による鋳造完了後には、図1〜図3で示すように、湯口15に対応する不要部20、湯口ランナ17に対応する不要部21、アシスト湯口ランナ18…に対応した不要部22,22、ならびにガス抜きランナ19…に対応した不要部23,23…が、V型シリンダブロック5に一体に形成されており、それらの不要部20,21,22,22,23,23…を除去することにより、V型シリンダブロック5が得られる。
【0018】
次にこの実施例の作用について説明すると、鋳造装置の金型11〜13のうち金型11には、シリンダボア配列方向8に沿う第1シリンダバレル対応部14aの中央部に対応した位置で第1シリンダバレル対応部14aよりも下方に配置される湯口15が設けられており、この湯口15に一端を連ならせるとともに第1シリンダバレル対応部14a側でキャビティ14に他端を通じさせる湯口ランナ17が金型11,12間に形成され、湯口ランナ17に一端を通じさせるとともに第2シリンダバレル対応部14b側でシリンダボア配列方向8に沿うキャビティ14の両端に他端を通じさせる一対のアシスト湯口ランナ18…が金型11,12に設けられている。
【0019】
このような鋳造装置の構成によれば、湯口15から湯口ランナ17に導かれる溶湯の大部分は、キャビティ14内で第1シリンダバレル対応部14aから第2シリンダバレル対応部14bへと流れるが、湯口ランナ17から両側のアシスト湯口ランナ18…側に流れる溶湯が第1シリンダバレル対応部14aを迂回して第2シリンダバレル対応部14b側に流れることになる。
【0020】
したがって湯口15からの注湯開始後に第1シリンダバレル対応部14aが溶湯で満たされるまでの時間と、第2シリンダバレル対応部14bが溶湯で満たされるまでの時間との間に大きな時間差が生じないようにすることができる。その結果、第1および第2シリンダバレル7A,7Bの鋳造品質に差が生じることを極力防止してV型シリンダブロック5を鋳造成形することができる。
【0021】
またアシスト湯口ランナ18…は、第2シリンダバレル対応部14b側におけるシリンダボア配列方向8の両端だけでなく、第1シリンダバレル対応部14a側におけるシリンダボア配列方向8の両端にも通じており、それにより両シリンダバレル対応部14a,14bにはシリンダボア配列方向8の両端から溶湯が均等に注入されることになり、各シリンダバレル7A,7Bのシリンダボア配列方向8で鋳造品質に差が生じるのを極力抑制することができる。
【0022】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、シリンダボア配列方向に沿う第1シリンダバレル対応部の中央部に対応した位置で第1シリンダバレル対応部よりも下方に配置される湯口から湯口ランナに導かれる溶湯の大部分は、キャビティ内で第1シリンダバレル対応部から第2シリンダバレル対応部へと流れるが、湯口ランナから一対のアシスト湯口ランナ側に流れる溶湯が第1シリンダバレル対応部を迂回して第2シリンダバレル対応部側におけるシリンダボア配列方向の両端に流れることになるので、湯口からの注湯開始後に第1シリンダバレル対応部が溶湯で満たされるまでの時間と、第2シリンダバレル対応部が溶湯で満たされるまでの時間との間に大きな時間差が生じないようにして、第1および第2シリンダバレルの鋳造品質に差が生じることを極力防止することができる。
【0024】
また特に上記一対のアシスト湯口ランナの他端は、2つに分岐した分岐部を各々有していて、その一対のアシスト湯口ランナの各一方の分岐部が第2シリンダバレル対応部側でシリンダボア配列方向に沿う前記キャビティの両端に通じるように形成されると共に、その一対のアシスト湯口ランナの各他方の分岐部が第1シリンダバレル対応部側でシリンダボア配列方向に沿う前記キャビティの両端に通じるように形成されており、即ち、その一対のアシスト湯口ランナは、第2シリンダバレル対応部側におけるシリンダボア配列方向の両端だけでなく、第1シリンダバレル対応部側におけるシリンダボア配列方向の両端にも通じているため、その一対のアシスト湯口ランナを通して第1,第2シリンダバレル対応部の何れにもシリンダボア配列方向の両端から溶湯が均等に注入されることになり、これにより、各々のシリンダバレルにおいてシリンダボア配列方向で鋳造品質に差が生じるのを極力抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳造完了直後のシリンダブロックの正面図であって図2の1矢視図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】図1の4ー4線に沿う部分での鋳造装置の断面図である。
【符号の説明】
5・・・・V型シリンダブロック
7A・・・第1シリンダバレル
7B・・・第2シリンダバレル
8・・・・シリンダボア配列方向
11,12,13・・・金型
14・・・キャビティ
14a・・・第1シリンダバレル対応部
14b・・・第2シリンダバレル対応部
15・・・湯口
17・・・湯口ランナ
18・・・アシスト湯口ランナ
18a・・一方の分岐部
18b・・他方の分岐部

Claims (1)

  1. V字形に配置される第1および第2シリンダバレル(7A,7B)に個別に対応した第1および第2シリンダバレル対応部(14a,14b)を有するキャビティ(14)が、各シリンダバレル対応部(14a,14b)でのシリンダボア配列方向(8)を水平とするとともに第1シリンダバレル対応部(14a)の上方に第2シリンダバレル対応部(14b)を配置して、型締め状態にある複数の金型(11,12,13)間に形成され、前記キャビティ(14)に溶湯を供給するための湯口(15)が、前記シリンダボア配列方向(8)に沿う第1シリンダバレル対応部(14a)の中央部に対応した位置で第1シリンダバレル対応部(14a)よりも下方に配置されるV型シリンダブロックの鋳造装置において、
    前記湯口(15)に一端を連ならせるとともに第1シリンダバレル対応部(14a)側で前記キャビティ(14)に他端を通じさせる湯口ランナ(17)と、該湯口ランナ(17)に一端を通じさせる一対のアシスト湯口ランナ(18)とが、型締め状態にある複数の金型(11〜13)の少なくとも一部に設けられ
    その一対のアシスト湯口ランナ(18)の他端が、2つに分岐した分岐部(18a,18b)を各々有していて、その一対のアシスト湯口ランナ(18)の各一方の分岐部(18a)が第2シリンダバレル対応部(14b)側でシリンダボア配列方向に沿う前記キャビティ(14)の両端に通じるように形成されると共に、その一対のアシスト湯口ランナ(18)の各他方の分岐部(18b)が第1シリンダバレル対応部(14a)側でシリンダボア配列方向に沿う前記キャビティ(14)の両端に通じるように形成されることを特徴とする、V型シリンダブロックの鋳造装置。
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