JP3619251B2 - 消去性マーキング媒質組成物 - Google Patents
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Description
本発明は、消去可能なマーク特に透明着色マークを作成するインキ組成物である。
発明の背景
本発明は、多孔質チップの筆記具を通して又は様々なタイプのローラーボールペンによって分配することができるマーキング用または筆記用の消去性の媒質またはインキに関する。媒質の適用によって得られるマークは、普通の鉛筆用消しゴムのような非摩耗式消去具によって比較的容易に除去することができる。
筆記具によって書きしるされた像、文字または明るいマークの作成においては、高度の非消去性を得ることが必ずしも望まれてはいない。たとえば、筆記面から機械的手段によって容易に除去可能である筆記用媒質すなわち消去性の筆記用媒質が望まれるであろう。真に消去性であるためには、筆記用媒質はその適用された筆記面からの除去が筆記面に有意な損傷たとえば摩耗を与えることなく可能でなければならない。最も普通に使用される筆記面は紙であるので、紙の特性および組成についての一般的解説は本発明の理解を助ける。
紙は本質的に、無作為に分布されたセルロース繊維のマットである。無作為配向のせいで、紙面は無作為に配向したセルロース繊維の間に存在する多数の空隙を含有している。従って、筆記用媒質が真に消去性であるためには、媒質の光学有効部分(たとえば、着色剤)を含有する筆記用媒質は少なくともその部分がそれら空隙の中に実質程度浸透するのを防止されなければならない。そうでないと、消去によるマーク除去は筆記面に摩耗形態の損傷を与えることなしには達成できないであろう。従って、筆記面によって吸収されないが多孔質チップペンの中に使用することができる筆記用媒質に対する需要がある。また、筆記用媒質はペンのチップ上では乾燥抵抗性であるべきであるが、筆記面に適用されたときには比較的迅速に乾燥するべきである。そのことを反映して、多孔質チップマーカーを通して容易に流動するが紙中には消せないようには吸収されないインキを開発することは明らかに不可能な仕事であると反論されることがある。一般に、インキが多孔質チップを通して有効に通過するのを可能にするには、インキが非常に低い表面張力、低い粘度を有していなければならず、かつインキの中の粒子が非常に小さくなければならない。しかしながら、これら特徴はインキを紙中深く浸透させる。さらに、実用的な可使時間を有するには、インキ組成物は広範囲の条件下で非常に安定でなければならない。従って、多孔質チップを通して流動することができるインキは多分消去可能ではなく、他方、消去性にすることができるインキは多孔質チップを多分通過しないであろうし、かつ劣った可使時間を有するであろう。
W.フェレー(Ferree)およびG.V.グエン(Nguyen)に対して発行された米国特許第4,297,260号は、ボールペンおよびフェルトマーカーで使用するための消去性インキ組成物の必要性に取り組んでいる。この特許は1979年11月19日に出願され、そして1981年10月27日に米国で発行された。このフェレー特許は、水エマルジョン中のカルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムに塩基性染料(トリアリールメチルカチオン)を化学的に結合させることによって形成できる消去性インキを教示している。得られたエマルジョンは紙の上に置かれたときに、主張によれば、非浸透性ゴム層を紙上に形成し、全ての染料がゴム層の中に化学的に固定される。それから、ゴム層は消去具によって除去されることができ、ゴム層と一緒に染料を除去する。フェレー特許は特殊な系統の化学活性(高極性)の染料を化学活性(高極性)のカルボキシル化ゴムと化学的に結合させることによってその消去性を達成することを教示している。従って、フェレー特許はゴムと反応しない顔料またはその他の着色剤の使用を教示していない。また、フェレー特許は非カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムのような非反応性ゴムを使用することも教示していない。
フェレー特許組成物は配合時のスラッジ生成による問題を有することが判明していた。その特許に言及されているように、このスラッジを濾過によってインキから除去した後でなければ、インキを使用することができない。スラッジは染料とゴムの間の反応の副生物であるらしい。
濾過の必要性はフェレー組成物にコストおよび加工上の問題を生じさせる。スラッジの生成および分離は廃棄上の問題を生じさせる。更に、スラッジの生成はゴムに結合させることができる染料の量を制限させ、従って、フェレーの概念を使用して具体化できる色強度を許容できないほど制限する。
結果として、本発明の好ましい態様は反応性の染料とゴムの組合せを使用することを回避するものである。選ばれる着色剤(たとえば、顔料)および選ばれるゴム(たとえば、非カルボキシル化SBR)のどちらか(または、好ましくは両方)が比較的非反応性である。
同時係属中のR.M.ロフティン(Loftin)の特許出願、1991年12月18日出願の米国出願第809,344号、1992年12月15日出願のPCT出願番号WO92US11127号、1993年6月24日公開のPCT公開番号WO9312175号はボールペンおよびフェルトマーカーで使用するための消去性インキ組成物の必要性に取り組んでいる。ロフティン特許出願は10〜30センチポアズの粘度のインキを生成する90より高いムーニー粘度を有するラテックスの中にシリコーン系剥離剤成分を組み入れるという概念を教示している。剥離剤成分は、インキが紙に適用されたときに剥離剤成分が紙とラテックスのゴム相との間にバリヤを形成するのに、適している。バリヤはゴムが紙中へと濾過されていかないようにし、そしてゴム相が紙から容易に除去(消去)されることを可能にする。
シリコーン系剥離剤の存在は望ましくない多数の影響を与える。第一に、シリコーン系剥離剤がロフティンによって教示されている効果を有するのに十分な濃度で存在する場合には、粘度は10センチポアズより高くなることを強いられる。この粘度はフェルトマーカーの中で使用するには高すぎることがある。更に、剥離剤は消去後に紙中に残留することがあり、そして後で紙のその領域に書き込むことを妨げることがある。最後に、シリコーン系剥離剤をインキの中に混入しその中で安定化することは困難かつ高価である。それら理由で、かつ本発明の「ショックアウト(shock out)」効果が剥離剤を不必要にする故に、本発明の好ましい態様はゴムを紙から分離させる剥離剤またはシリコーン系剥離剤またはその他薬剤を含有しない。
三菱鉛筆によって1992年2月7日に出願された特願平4−56089号、そして1993年8月24日に公開された特開平5−214285号は、水、顔料、および0℃未満のガラス転移温度を有する樹脂を含有する消去性インキに関する。この教示はこの選ばれたガラス転移温度範囲において利用可能な広範囲の樹脂を引用している。この教示は本発明の「ショックアウト」効果を認識していないし、この効果を生じさせる樹脂系も教示していない。従来の器具によって体験されてきたこれらおよびその他の困難性は本発明による新規手法においては解消されている。
従って、本発明の顕著な目的はマーカーの多孔質チップを通って有効に通過することができるマーカー組成物を提供することである。
本発明のもう一つの顕著な目的は多様な型のローラーボールペンによって有効に適用できるマーカー組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、通常の(不透明な)マークまたはハイライト型の(着色されているが透明な)マークを作成するマーカー組成物であって、そのマークが通常の消去具によって容易かつ完全に消去可能である、前記マーカー組成物を提供することである。
本発明の更に別の目的は通常の貯蔵条件下で高度に安定性であるマーカー組成物を提供することである。
発明の概要
本発明によれば、ゴムからなる不連続相、水の連続相、およびゴムと会合する着色剤を有するエマルジョンから構成される筆記用媒質またはインキが提供される。ゴムおよび着色剤についての、および連続相に対するゴムの適切な割合についての注意深い選択は筆記面上に消去性着色層を形成するインキ組成物をもたらし、該層は文房用紙のような筆記面の空隙の中に浸透せず、かつ該層は適用後の規定されない期間の間に筆記面から容易に消去可能である。
本発明の組成物は、着色剤分散物、特に、疎水性親油性の顔料、染料またはトナーの分散物の使用を伴う。加えて、消去性の筆記用媒質組成物の中に組み入れられたエマルジョンが筆記用媒質をして適用後容易に消去可能であるが紙を折り曲げしても剥落や亀裂なしで紙に付着していることを可能にさせる。
可塑剤、表面張力低下剤、および乾燥防止剤(酸化防止剤および保湿剤)を包含するその他成分が、本発明の組成物の中に組み入れられてもよい。
このマーキング組成物は通常の文房用紙の表面上に付着したときを除いて安定なエマルジョンとして存在するように設計されている。かかる用紙は、酸性であってそして水溶性多価カチオン特にカルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムを含有する表面処理を殆ど一般的に有している。本発明のマーキング組成物は、常態安定性であるエマルジョンが紙面と接触した時に不安定性になりゴムが凝集するように、設計されている。より詳しくは、不安定性は文房用紙の中に実質的に一般に存在する表面処理成分によって誘発される。好ましくは、安定性は塩基性(pH>7)の水性媒質の中でゴム相粒子を安定化させる石鹸型界面活性剤によって生じる。エマルジョンと用紙の接触は媒質がより酸性になることと用紙から多価カチオンを溶解することを生じさせる。これは石鹸型界面活性剤を失活させる。何故ならば、石鹸のカルボン酸末端が不溶性塩になるからである。ゴム粒子はエマルジョンから脱出し、そしてゴムが室温未満のガラス転移温度を有するせいでゴム粒子は凝集して皮膜状になる。皮膜およびそれに合体した着色剤は紙面に最少の付着力で横たわっているので、皮膜および着色剤は容易かつ完全に除去できる。
【図面の簡単な説明】
しかしながら、本発明の特徴は図面によって例示されているようなその構造形態の一つを参照して最も良く理解されるであろう:
図1は本発明の本質を具体化する組成物の、マーカーによって紙シートに適用されつつあるときの、概略図である。
図2は紙上の組成物の、皮膜形成以前かつキャリヤ逃亡以前の、概略図である。
図3は組成物の、キャリヤ逃亡後かつ皮膜形成後の、概略図である。
図4は、図3で形成された皮膜の、消去具によって除去されつつあるときの、概略図である。
図5はインキの表面張力に対するインキ系の界面活性剤の効果を表わすグラフである。
発明の詳細
本発明の消去性の筆記用媒質は顔料および好ましくは下記のその他成分を含有するエマルジョンからなる。
本発明の代表的な操作は図1〜4に概略図示されている。図1においては、引用数字10によって包括的に示されているマーキング組成物は多孔質チップマーカー12の多孔質チップ11から紙シート14の筆記面に適用されているところを図示されている。多孔質チップによるマーキング技術において通常そうであるように、マーキング組成物はチップ11の上方端部における貯蔵チャンバー20の中に貯蔵されている。組成物は多孔質チップ11を通って流下し、そして多孔質チップ11が適切な筆記面13と接触状態に置かれたときに多孔質チップ11から流れる。図1おいては、マーキング組成物はストライプ15の形態で適用されており、図1には、その適用されたままの形態で、すなわち、乾燥されていないエマルジョンとして示されている。
図2は、ストライプ15が紙シート14の筆記面13に適用された後の、しかし顔料18を含有する不連続相17から連続相16が逃亡する前の状態を示している。
この時点において、連続相16は非常に急速にプロトン(H+)(酸性)および多価カチオン(カルシウムCa++、マグネシウムMg++、および/またはアルミニウムAl+++)を紙上の表面処理成分から溶解する。これはエマルジョンを破壊させ不連続相17を皮膜状に凝集させる。また、連続相16は紙14の中に吸収される。
エマルジョンが不安定化することと顔料入り粒子が凝集してゴム状凝集皮膜になることが殆ど瞬時に起こるメカニズムは、インキを製造しているラテックスを安定化させるために使用された界面活性剤を伴うと考えられる。好ましくは、この界面活性剤は両親媒性の石鹸分子、特に、カルボン酸のナトリウム塩である。これら界面活性剤は9.5より高いpHによってエマルジョンの中で作用する。エマルジョンのpHが降下した(より酸性になった)場合、および多価カチオンがエマルジョンに加えられた場合、たとえば、エマルジョンが紙の調製表面と接触したときに起こるそのような場合には、界面活性剤は無効になる。得られるカルボン酸の塩は水不溶性であり、そして分子の親水性は効果的に失われる。紙上に付着したインキに対するこの効果は殆ど瞬時であり、かつ実に顕著である。
図3は、連続相16の紙中への吸収によって及び/又は連続相16の蒸発によって連続相16が不連続相17から分離したときに形成される顔料入りゴム皮膜21を図示している。図3に概略的に示されているように、顔料入り皮膜は紙本体の中に浸透しないが、紙面の外側突出部に付着する。この方法においては、顔料入り皮膜21は通常の環境下では紙に付着しているが、紙本体の中には十分な程浸透してはいない。
図4は鉛筆26の末端上の標準的な鉛筆用消しゴム25を顔料入り皮膜21に適用した場合の効果を示している。図示されているように、消しゴム25の剪断効果は顔料入り皮膜を筆記面の高地点から分離させ、そして比較的一体の塊または一連の一体的塊として剥離させる。顔料入り皮膜21はかなり凝集性であるので、紙の中までは汚さず、そして残留遮蔽物を残すことなく又は顔料が紙13の表面内部に移行することなく筆記面から容易に除去できる清浄な厚いシート状態で紙から分離する傾向がある。
エマルジョンは流動性、安定性および消去性のような特性に有意に影響するので、それは本発明の筆記用媒質組成物の最も重要な成分である。本発明によれば、エマルジョンはゴムラテックスである。それは最終インキにおいては重量で約30%〜約96%の水になるまで希釈されている。多数のタイプのゴムラテックス、特に、スチレン−ブタジエン(SBR)ラテックスがあるが、インキ組成物が望ましい性質を有するためにはゴムラテックスの選択に注意しなければならない。エマルジョンが有する性質は常にエマルジョンの成分だけに関連して正確に決定できるわけではないので、しかも様々な成分の相互作用および相乗効果が完全に理解されているわけではないので、本発明に従って使用するのに適するゴムエマルジョンの選択および配合には若干の実験が必要であることが認識される。本発明にとって必須であるエマルジョン破壊効果はゴムに依存しないと考えられる。従って、配合者はゴム成分の選択においては全体の適合性を考慮することからは解放される。
エマルジョンの中に使用するのに有効なゴムを選択する際の重要なパラメーターはゴムのガラス転移温度(Tg)である。このパラメーターはゴムの臨界的室温特性の便利な指標を与える。高過ぎるガラス転移温度は、紙上に有効なマーキング皮膜を形成するには剛性過ぎ脆くかつ非粘着性であるゴムを意味する。他方、低過ぎるガラス転移温度は、消しゴムによって紙繊維の中にすり込まれ且つブロッキングが生じるほど粘着性であるゴムを意味する。Tgが必ずしもこれら性質を規定しないということ、および生成物の最適化にはダルキスト(Dalquist)モジュラス、分子量および粘弾流動特性が重要であるということを理解すべきである。
本発明に従って使用するためには、エマルジョンは以下に記載される特定の特性およびパラメーターを有するべきである。好ましいエマルジョンは非カルボキシル化スチレン−ブタジエンラテックスである。本発明のスチレン−ブタジエンインキは約1センチポアズ〜約35センチポアズの範囲の室温粘度、好ましくは、約5センチポアズ〜約10センチポアズ、最も好ましくは約7センチポアズの室温粘度を有するべきである。高度に粘稠なエマルジョンは筆記具の中に使用するのに不十分な流動特性を示す。非常に低粘度のエマルジョンはより良い流動特定を有するが、過度に紙繊維に浸透する傾向があり、それによって、インキ組成物の消去性に悪影響を与える。従って、標準フェルトチップマーカーに使用するには、一般に、約35センチポアズ未満の粘度を有するエマルジョンが使用されなければならない。
本発明に従って使用されるゴムエマルジョンは紙面上で乾燥されたときに筆記面に対して「低接着性」を有するべきである。ここで使用される場合、「低接着性」は乾燥したエマルジョンが紙のような筆記面から低摩耗式消去具たとえば通常の鉛筆用消しゴムによって鉛筆マークの消去によって起こる以上の損傷を起こすことなく除去できることを意味している。従って、エマルジョンは乾燥(水の蒸発および紙中への吸収)後に筆記面に対する接着力より大きい凝集力を有するべきである。エマルジョンは筆記面に適用されたときに一般に約20秒以内に筆記面上に凝集皮膜を形成するべきである。
エマルジョンの特性(特に乾燥したときの)は共重合体鎖の中のブタジエン単位数に対するスチレン単位数の比率によって或る程度決定される。本発明に従って使用するためには、スチレン−ブタジエン比は約20:80から約55:45までの範囲にあるべきである。好ましいスチレン−ブタジエン比は約20:80から約45:55までであり、好ましい比率は24:76である。スチレン/ブタジエン比が55/45より大きくなると、インキ組成物は乾燥したときに脆くなる傾向が大きくなり、これは結果として筆記面に適用されたインキの亀裂および剥落を生じる。従って、55/45より大きいスチレン/ブタジエン比の使用は特に得策ではない。
本発明のインキ組成物中に使用するためのエマルジョンの選択または配合においては、エマルジョンはチップの内面の臨界表面張力に比べて相対的に低い表面張力を有することが望ましく、それによって、標準的な「フェルトチップ」マーカーの多孔質チップに組成物が浸透する能力を最大にする。一般に、本発明のインキは通常のアクリルまたはポリエステル製フェルトチップの中で使用する場合には許容できるものとして約10〜約60ダイン/cmの表面張力を有する。25〜35ダイン/cmが好ましく、そして29.5ダイン/cmが最も好ましい。ラテックスを安定化するために存在する乳化剤の量およびタイプはエマルジョンの表面張力を高めるかもしれないと思われる。従って、湿潤剤のタイプおよび量は本発明に必須であるエマルジョン破壊作用を無効にするような乳化剤の補給を伴うことなく必要な低表面張力を与えるように調節されるべきである。チップの内面をプラズマ処理するか又はチップを加熱すること等によってフェルトチップの表面張力が増加されるならば、より高い表面張力のインキを使用できる。
エマルジョンは乾燥したときには消去工程中にたとえば消しゴムに容易に付着できるように僅かに粘着性であることが望ましい。エマルジョンは乾燥したときに粘着性であり過ぎると、紙シートが一緒に固着してしまう。また、エマルジョンは「凍結−解凍」安定性を有しかつ長時間の可使時間にわたって崩壊しないことが好ましい。
インキのpHは一般に約9〜約14の範囲にあるべきである。この範囲を外れるpHは使用以前に不安定である組成物または着色剤を分散できない組成物を生じるので望ましくない。
最も好ましいスチレン−ブタジエンエマルジョンはオハイオ州アクロンのグッドイヤー タイヤ アンド ラバー カンパニーから「プリオライト(Pliolite)LPF2108」の商標で、およびBASFコーポレーションから「ブトナル(Butonal)NS103」の商標で入手可能である。この化合物は24:76のスチレン−ブタジエン比、約40.0重量%の固形分、約11.4のpH、および約58ダイン/cmの表面張力を有する非カルボキシル化スチレン−ブタジエンラテックスである。本発明の消去性インキ組成物の中に存在する着色剤または顔料は親油性でもある水分散性顔料である。これら顔料は水系の中に分散されるべき顔料を選ぶ場合に適することが知られている工業標準製品から選ばれる。それらは組成物を筆記面たとえば紙に適用したときに筆記面の中に有意に浸透しないスチレン−ブタジエン相の中に分散可能または該相上に均質会合した状態に分散可能である疎水性顔料の群から選ばれる。この効果は、それ自体が紙の中に浸透しないように選ばれている顔料がゴム相によって又はゴム相との均質な排他的会合状態において完全に吸蔵されていることの結果であると考えられる。顔料は明らかに水を入り込ませない。水は紙に浸透する。本発明の消去可能な筆記用媒質組成物に従って使用できる具体的顔料はカーボンブラック、および超微細蛍光顔料および染料およびそれらの混合物を包含する。同じ様に挙動するその他の顔料、染料およびトナーが本発明の組成物に使用されてもよいと認識される。一般に、着色剤はインキ組成物に添加される前に水中の安定な分散物の状態にされる。一般に、添加以前に安定化されていない着色剤はインキ中でも安定でないことが判明している。顔料はエマルジョン中に分散されるべきであるが、顔料含有エマルジョンが筆記面たとえば紙に適用されたときに顔料は可視像を紙中に形成するのに十分なほど紙中に浸透するべきではない。顔料はエマルジョンから紙繊維の中または紙繊維間の空隙にまで浸透するべきではない。何故ならば、かかる浸透は紙繊維の部分を損傷または除去することなく筆記用媒質を消去によって除去することを妨げるからでなる。一般に、顔料は筆記用媒質組成物全体の約1重量%〜約50重量%の量で存在する。
顔料粒子の大きさは本発明の組成物の有効性にとって重要である。粒子はそれらをゴム相に強く親和させそして安定なインキを形成させるとみられる小さな直径および/または化学的性質を有していることが好ましい。その一方で、粒子は所定の光学的効果を生じるのに十分な大きさでなければならない。
エマルジョンの中のゴム粒子の大きさも本発明には重要である。約700Å(0.07μ)に及ぶ大きさが好ましい。通常、この小さいな粒子は紙本体の中に浸透し、そして消去性を損なわせる。本発明のエマルジョン破壊効果は急速かつ劇的であるので、かかる微細粒子でさえ紙中への浸透を起こす前に凝集して連続凝集ゴム状皮膜になることを強いられる。
本発明の動作の正確なメカニズムは最終的にわかっているわけではなく、動作の理論は本発明を実施するのに決定的なものではないけれども、以下の記述は動作のメカニズムに関してまとめた簡単な説明である。本発明に従って顔料がエマルジョンの中に分散されたときに、全ての顔料はゴム相に移動し、そしてその相に付着したままになると考えられる。これは微細顔料粒子の小さな表面が親油性で疎水性であるためであろう。本発明の低粘性エマルジョンが紙シートの表面に置かれると、水性連続相は紙の表面調製成分からプロトンおよび多価カチオンを溶解する。これはエマルジョンのpHを低下させ、そして、先にエマルジョンを安定化させていたが酸および/または多価カチオンによって失活される石鹸型界面活性乳化剤またはその他乳化剤を失活させる。これは多価カチオンが粒子表面にカルボキシル(またはその他の)アニオンと共に水不溶性のおよび/または非帯電の塩を形成するからである。これはゴム分散物を崩壊させ、そしてTgの適切な選択によって連続ゴム状皮膜の状態に融合させる。同時に、紙の持つ高い吸収能力は顔料を含有していない連続水相をエマルジョンから紙面内へ迅速に引き込む。非連続ゴム相(それは顔料を含有または吸収またはその表面上に吸着している)は崩壊され、そして紙面上にそこに付着しているが吸収されてはいない薄い連続凝集ゴム状層の状態に合体する。これは紙面に描かれていると見られるが実際は紙面に付着しているに過ぎない顔料入りマークを生じる。この層は物理的摩擦によって摩擦領域の層および局在顔料が剥離されるほどのゆるやかさで紙面に結合している。このことは紙の摩擦された部分を明らかにマークされない状態にする。
好ましい態様においては、エマルジョンがたとえばマーカーチップの上でエマルジョンから水が蒸発したときに乾燥するのを防止するために、乾燥防止剤(保湿剤)が使用でき、それによって、特に、長く使用しない期間の後の、マーカーからのマーキング組成物の滑らかな流動を促進する。適する乾燥防止剤は、組成物またはその性質に有意な有害な影響を与えず且つ沸点が約140℃〜約300℃と比較的高い、水溶性の有機の、ケトン、エステルおよびアルコールを包含する。乾燥防止剤として使用できる具体的な化合物は、たとえば、2−オクタノン、5−メチル−2−ヘキサノン、セルロースアセテート、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、およびブチルセロソルブ(2−ブトキシエタノール)を包含する。上記の乾燥防止剤の中でも、ソルビトールまたはブチルセロソルブが好ましい。
乾燥防止剤はエマルジョンの乾燥を防止するので紙上のゴムおよび顔料の展着も促進し、たとえば紙繊維の中へのゴムおよび顔料の望ましくない浸透を起こさせることがある。従って、乾燥防止剤の濃度を最少にすることが重要であり、大抵の場合には、乾燥防止剤の濃度は消去性の筆記用媒質組成物全体の15重量%を越えるべきではない。
本発明の消去性の筆記用媒質組成物はまた、組成物の「粘着性」を増大させかつ皮膜形成プロセスを遅くして長いリフトオフ時間を可能にするために、任意的には(好ましくはないが)可塑剤を含有してもよい。先に説明したように、このインキ組成物はより容易に消去可能であり、そして非常に僅かに粘着性であるならば消去具に対する接着性を有する。可塑剤は組成物の粘着性を増大させ、従って、通常の非摩耗式消去具によってより容易に消去可能である組成物を提供する。本発明の組成物と混和性であるどの可塑剤が利用されてもよい。好ましい可塑剤はジプロピレングリコールジベンゾエートであり、それはテネシー州チャッタノーガ(Chattanooga)のベルシコル(Velsicol)ケミカル コーポレーションによってベンゾフレックス(Benzolfex)9−88の商標で販売されている。別の好ましい可塑剤はミズーリー州セントルイスのモンサント インダストリアル ケミカルズ カンパニーによって「サンティサイザー(Santicizer)8」の商標で販売されており、「サンティサイザー」はN−エチル−オルト−トルエンスルホンアミドとN−エチル−パラ−トルエンスルホンアミドの混合物である。
本発明による組成物はファイバーチップマーカー、好ましくは、フェルトチップマーカーとして知られているマーキング具、の中で使用することができる。かかるマーカーでは、マーカーケースの中に多孔質フェルト様材料の本体、通常は合成繊維の本体が入っている。幅広のフェルトチップがマーカーケースから突き出ている。本体には本発明のインキを充填される。チップを紙面に押しつけて動かすと、紙面にエマルジョンの細長い帯が適用される。エマルジョンの中の水が紙に吸収されると、顔料を含有している非連続ゴム相は、紙面に押し付けられ付着した顔料入りゴム層の状態に合体する。この層はハイライトマーキング用には透明であるが着色しているであろうし、また、通常のマーキングまたは筆記用には不透明かつ黒色であるか、または不透明かつ着色しているであろう。いずれの場合においても、層は消去によって除去可能であり、そしてこれはマーキングの可視痕跡を全て除去するであろう。
実施例1
調製方法
1.清浄なステンレス鋼またはガラス張り容器にフレキシバースを加える。
2.ライトニング式攪拌機を低〜中速度に設定し、そして10.0ポンドの脱イオン水を加える。混合を継続する。
3.攪拌機を中〜高速度にして、フルオラドFC129を加え、そして全てのフルオラドがフレキシバースの中に完全に混合されるまで混合を中〜高速度で継続する。速度を低〜中速度にし、そして混合を継続する。
4.別の清浄なステンレス鋼またはガラス張り容器の中に、プリオライトを秤量して入れ、攪拌機を低〜中速度で動かし、そして10.0ポンドの脱イオン水を加える。均質になるまで攪拌を継続する。
5.この希釈されたプリオライトを、攪拌機を中速度にしたフレキシバースの容器に加える。均質になるまで攪拌を継続する。
6.フレキシバース容器の攪拌機の中速度をもって、ソルビトールを加え、そして攪拌を継続する。
7.残りの脱イオン水によって、60rpmに於いて7.0±0.5センチポアズの粘度を達成する。
得られた組成物を標準フェルトチップマーカーの中に入れた。標準文房用紙に適用したとき、標準マーカーからのマークと同じ外観のマークが形成された。しかしながら、このマークは通常の鉛筆用消しゴムの通常の作用によって、可視残留マーキングを残さずに容易に除去可能であった。
実施例2
この配合物は実施例1と同じような方法で製造され、そして優れた消去可能な黒色マークを生じた。
本発明の多数の他の態様が存在する。
マーキングの消去を促進するためにマーカーの末端にビニルまたはゴムの消去具が取り付けられる。この消去具は特殊な材料から構成されるわけでは全くない。大抵の既知の材料は十分に良く作用する。
着色剤の特性の説明:黒色インキの開発に現在使用されている着色剤はサン(Sun)ケミカルからのLPF4343フレキシバースブラックである。それは非イオン性界面活性剤、ジョンクリル(Joncryl)68(アルカリ可溶性アクリル)、殺微生物剤、およびカーボンブラックを含有している。油溶性染料も初期にはいくらかの成功をもって試みられたが系の中に分散することが顔料入り着色剤のようには容易でなかった。顔料を使用するインキ系の安定性は市販の水性顔料分散物の広い有効性のために良好である。
本発明は本発明の水性系における蛍光着色剤(染料およびトナー)の分散物/乳濁物も包含する。一般に、本発明はこれら新しい小粒子サイズの乳濁物および分散物の使用を包含する。何故ならば、それらはハイライト様式の消去性マーカーに使用するのに特に良く適するからである。非常に有効な様式は着色剤として日本のダイアン(Dian)株式会社製のインキを使用する。
樹脂エマルジョン:サンケミカルからのフレキシバース4343黒色分散物を使用して次のエマルジョンを試みた。一般的な処方は(容量で)10%のフレキシバース黒色顔料分散物、50%の樹脂エマルジョン、40%の水である。
グッドイヤー樹脂LPF2108は約700Å(0.07μ)の粒子サイズを有する非カルボキシル化スチレン−ブタジエン樹脂である(1μは10,000Å)。グッドイヤーLPF5356樹脂は、LPF2108樹脂の凝集した態様であり、従って、より広範囲の粒子サイズを有しており、大部分は700Åよりはるかに大きい。これはほぼ半透明の2108樹脂に比べて5356の方がより高い固形分のクリーム状の特性に反映されている。
凝集5356はより大きい粒子サイズ(0.08〜2μ)を有するので、その組成物は水によって容易に希釈されるようなものではない。2108樹脂の代わりの置換物として5356樹脂を使用したときに得られるインキは安定ではなく、数日間の放置で層状に沈降する。それにもかかわらず、それは本発明においては機能する。
本発明は消去性に対するゴムのガラス転移温度(Tg)(皮膜形成温度)の影響に関する重要な発見を包含している。従来は、消去性マークは室温より十分に高いガラス転移温度を有しているべきであると考えられていた。比較的剛性で皮膜非形成性の材料は適用時に紙にあまり浸透しないし、紙にあまり接着しないし、そして消去中によりきれいに剥落すると考えられていた。高Tgのこれら机上の効果は実際には期待したほど十分には生じない。
他方、本発明は室温未満のTg(たとえば、−52±5℃)を有するゴムが驚異的に良く作用するということを発見した。この優れた挙動は、不安定化可能なエマルジョンが紙との接触によって瞬時に破壊されるというショック凝集コンセプトと組み合わされたときに特に有効である。低いTgは最も小さいゴム粒子でさえ紙面上に直ちに凝集した非浸透性皮膜を形成することを可能にさせる。驚くべきことには、この高度にゴム状の皮膜は紙に許容できないほど付着することはない。更に予想外なことには、この皮膜は消去中に自己掃去作用を発揮する、すなわち、皮膜の何らかの遊離粒子は消去中に生じる皮膜のかたまりによって紙組織から吸収されるらしい。結果として、全ての消去領域の皮膜は少数の比較的大きい凝集塊として紙からきれいに落ちる。この自己掃去効果は結果として、きれいな、陰のない、消し去された紙面を生じる。
消去性インキのメカニズム:(容量で)10%のフレキシバース4343黒色顔料分散物、50%のLPF2108SBrエマルジョン、38%の水、および2%のFC129界面活性剤から構成された消去性インキを標準便箋に適用した場合、そのマーキングは容易に除去される。このインキの粒子サイズは小さく(0.5μよりはるかに小さい)、そして表面張力は30ダイン/cm以下である。このインキはインキ中の粒子が水中に分散され乳化されているので消去可能ではないと予想された。LPF2108ラテックスの予想外の挙動はこのラテックスエマルジョンが非常にイオン安定性でない故に起こるらしい。グッドイヤーのLPF2108樹脂およびBASF競合製品ブトナルNS103はイオン不安定性の性質を共有するラテックスである。ラテックス中に使用された乳化剤は9.5またはそれ以上のpHでのみ有効である。大抵の紙の表面は特性上酸性またはカチオン性であり、そしてラテックスは紙面と接触すると直ちに凝集する(エマルジョンが「破壊する」)。直接的なアニオン−カチオン効果に加えて、製紙には多数の多価被覆剤が使用されおり、それらもラテックスを凝集させる。表面凝集理論の試験として、本発明者らは濾紙上でインキを試した。無灰濾紙は酸および多価カチオンを実質的に含有しておらず、そしてこの表面に消去性インキ配合物でマークした場合には、インキは全部浸透して紙の反対側まで通過し、そして消去性は喪失した。カルボキシル化ラテックスはよりイオン安定性であり、そして、上記理論に一致して、それらはLPF2108のような非カルボキシル化ラテックスよりも大きい度合で普通紙に浸透する傾向があった。
凝集しつつあるインキが紙面上に皮膜を形成するためには、樹脂から速やかに水相が除去されることが必要であるか又は少なくとも大いに望ましい。紙面からの水の蒸発と組み合わされた紙の吸上作用がこの速度を与えることが最も所望である。この乾燥作用はまた、溶解されたプロトンおよび多価カチオンを急に濃縮し、従って、ショック作用に皮膜形成が付加される。
この提案したモデルから、高表面張力で高凝集性のイオン感受性の2108樹脂がどうして本発明の課題である低粘度インキ系においてそのように顕著に良く作用するかが理解可能である。これは臨界的であるが、その理由はインキ系の界面活性剤によってインキ全体の表面張力を低下させてニッブの湿潤を促進することが必要であるからである。従って、ラテックスの安定性を増大させないインキ系の界面活性剤を利用することが最良であろう。より大量のゴム乳化剤の添加は紙の多価被覆の存在下でさえラテックスを安定化させるであろう。従って、乳化剤の臨界的規定は低表面張力インキの一部分であり得る不安定化可能なエマルジョンを規定するものの一つとなる。
保湿剤:本発明者らは現時点の系における保湿剤としてソルビトール(デラウェア州ウィルミントンのICIアメリカズ インコーポレーテッドによって「ソルビトール(Sorbitol)の名称で販売されている多価アルコール)を使用してマーカーのキャップオフ性能を改良する。キャップオフはユニットが乾燥に耐えて機能を維持するための能力の測定である。最も有効である保湿剤の名称は列挙されている。
界面活性剤:先に言及したように、インキ系の界面活性剤はインキの表面張力をニッブが湿潤されることができるところまで低下させるように使用される。明らかに、LPF2108ラテックスの非常に小さい粒子サイズ(700Å)のせいで、系の表面張力を低下させるには比較的大量の界面活性剤が要求される。2%のフルオロケミカル界面活性剤はかかる高活性剤にとっては非常に高い。使用された界面活性剤は3MによってFC129の名称で販売されており、それはアルカリ性の系の中で有効であるフッ素化アルキル−カルボキシレートのカリウム塩である。
実施例3(♯1〜♯7)
X1111−122
消去性マーカーインキ
様々な濃度のFC−129を評価する。
インキベースを次のように調製する:
次の成分を5分間混合する:
(湿潤重量)
フレキシバースブラックLFD4343 10.84g
脱イオン水 18.2
次の成分を5分間混合する:
グッドイヤーSBRゴムラテックス2108 180.65
脱イオン水 24.7
ソルビトール70% 19
上記混合物を合わせ、そして10分間混合する。
次の成分を5分間混合する:
上記データはインキの表面張力に対する界面活性剤FC−129の効果を示すために図5にグラフ化されている。
低い表面張力はインキが多孔質チップを湿潤することを可能にさせるための好ましい方法であるが、当業者にはその他の手法も使用できることが認識されよう。
粘度:マーカーインキは5〜10センチポアズ以下の粘度を有するべきであることが一般に認められている。
抗微生物剤または防腐剤、殺微生物剤、殺菌剤:本発明者らはフレキシバース系インキ配合物の中で微生物増殖の何らの証拠も見出せなかったけれども、或る程度の抗微生物剤が適切であろうことを示唆する。
消泡剤:この製品を配合するために行わなければならない長い混合故に、製造中の発泡を低下させるために通常の消泡剤が使用されてもよい。
酸化防止剤:現行の配合物の中に使用されているLPF2108は酸化防止剤無しでグッドイヤーによって販売されている。このエマルジョンは、空気に曝されるとゆっくり酸化しインキマークをして消去性を喪失させるようなインキをもたらす。酸化防止剤の添加によって、規定しないが、消去性を拡大できる。
本発明のもう一つの重要な面は非消去性または消去性の時間の制御である。具体的適用に依存して、本発明のインキを紙に適用後短時間(数日)から非常に長い時間(数年)までの様々な時間の間消去可能に維持するように構成することが望ましい。インキに酸化防止剤が添加されていない場合には、インキは通常の室温で数週間で消去不能になることが判明した。酸化防止剤の添加はマークが消去可能のままである時間の長さを関数的に増加させる。
この系において良く作用する酸化防止剤はジョージア州ダルトンのテキスタイル ラバー アンド ケミカル カンパニーによって「オクトライト453」の商標で販売されている。それは55%固形分であり、そして消去性を少なくとも数カ月間維持するためには乾燥基準で(重量で)約3%以下で使用される。この製品はグッドイヤー タイヤ アンド ラバー カンパニーによって「ウイングステイ(Wing Stay)L」および「ウィングステイSN1」の商標で販売されている2種類の高分子ヒンダードフェノールチオエステル酸化防止剤の50:50の乳化ブレンドであると言われている。
コースと/残留物:顕微鏡を使用して、マークからの残留物を分析した。LPF2108樹脂エマルジョンと共にフレキシバース4343着色剤を使用したとき、幾つかの基体上の目視可能な残留物の色または「ゴースト(ghosting)」は紙面上の小さな溝の中に捕獲されている樹脂および着色剤である。この残留物は結合されていない着色剤であるようにはみえない。この残留物は消去具による摩擦を逃れることができる樹脂/着色剤マトリックスである。針を使用してこの残留物を除去した場合には、紙の上に横たわる汚れは存在しない。
本発明において最も有効であることが判明したゴムはLPF2108と称されるものであり、そしてテキサス州ハウストンのグッドイヤー タイヤ アンド ラバー カンパニーによって販売されている。この製品は40.0%固形分である。それは0.019%の残存スチレンを有する。それは11.4のpH(高塩基性)を有する。それは40%の全固形分において58ダイン/cmの表面張力を有する。それは23.4%の結合スチレンを含有する。それは0.001%の凝塊を有する。それは0.008%の安定MGを有する。それはオレイン酸カリウムであると思われる石鹸を8.64%含有する。
インキの中のゴムおよび水の量の変動の効果は表1に示されている。乾燥重量で約10%未満のゴム濃度は消去性を損なう。
(表1を挿入)
本発明者らは第一の界面活性剤を含有するアルカリ性水性媒質の中に懸濁された固体顔料粒子からなる顔料分散物をもって開始する。本発明者らはこれを、第二の石鹸型界面活性剤を含有するアルカリ性水性媒質の中のゴムのエマルジョンであるラテックスに加える。顔料分散物およびラテックスを、混合物全体の表面張力が有意に低下するように混合物を安定化させるのに必要な量より十分に過剰である実質的量の第三の界面活性剤と混合する。これでインキになる。
本明細書のためには、用語「通常の筆記用紙」は商業用および家庭用の筆記用およびタイプ用に通常使用される様式の紙を意味し、それは標準的な仕方で処理またはサイジングされた表面を有しており、そして結果として、この表面は表面が湿潤されたときにイオンを放出する。用語「イオン」は水溶性の帯電粒子を意味するために使用される。用語「カチオン」は少なくとも1つの正電荷を有する水溶性の帯電粒子を意味するために使用される。用語「多価カチオン」は少なくとも2個の正電荷を有する水溶性の帯電粒子を意味するために使用される。
インキ混合物は、ゴム粒子の中または上に着色剤の粒子が排他的に会合されているところの前記ゴム粒子の水性エマルジョンであると考えられる。このエマルジョンは、pHが高く(塩基性である)かつ混合物のイオン含有量が乱されない即ち1価カチオン(Na+およびK+)である限りは、安定である。
インキが通常の用紙または通常の筆記用紙に適用された場合には、用紙の表面処理の中に存在するイオンがインキの中に溶解されたときには3つの事が起こる。第一には、用紙表面の酸性度がインキのpHを低下させ、石鹸型の第二の界面活性剤の有効性を低下させ、そしてエマルジョンの破壊を引き起こす、すなわち、ゴムおよび顔料の凝集を引き起こす。第二には、この凝集は用紙表面の中の多価カチオンン(Ca++およびMg++およびAl+++)の存在によって更に加速される。これらカチオンは石鹸型界面活性剤と共に水不溶性の塩を形成し、そしてその界面活性剤の効果を無効にする。インキ中のゴムおよび顔料が凝集するそのときには、水は用紙の中へと吸収される。これはインキが用紙表面上に顔料入り皮膜を形成することを起こさせる。石鹸型界面活性剤は本質的に作用可能でないので、ゴムの表面張力は非常に高く、そしてゴムは用紙表面との相互作用で最少の「湿潤」を有するに過ぎない。これは真実であり、好ましいゴムのガラス転移温度が−52±5℃であり従って皮膜が全く可撓性であることが予想されるにもかかわらず、真実である。皮膜と用紙との間の接着力は最少であるので、顔料入り皮膜は摩擦によって用紙から容易に除去できる。
入手可能な樹脂製品の全てが本発明の利点を付与するというわけではないことは明らかである。次の表(表2および表3)は或る範囲の入手可能な樹脂製品の性能における変動を示している。
(表2を挿入)
本発明の消去性インキ組成物の別の適用法は「ローラーボール(roller−ball)」ペンとして本明細書中に引用される筆記具の類におけるものである。このクラスのペンは古典的なボールペン(ball−point pen)に非常に近いものであり、筆記具の中のボールペンのクラスから分かれたクラス(多分、サブクラス)の筆記具と解釈させるように開発された。
本発明の消去性インキの、ローラーボールのクラスの筆記具における用途を有効に記述および分類するためには、ローラーボールペンの概念の発展の歴史のモデルを提供することが有効である。このモデルは事実と一致するが、開発のプロセスを簡略化して表わしていると理解するべきである。さらに、それはローラーボール技術の開発に携わった多くの関係者の思考プロセスおよび動機に関する或る見解を表わしている。
古典的なボールペン筆記具は通常の標準的な構造に開発され、その構造では、内径2mmのチューブの中に高粘稠の有機溶剤系インキが充填されており、インキはチューブの一方の端において回転するボールに対して露出される。このタイプの筆記具に使用される非水性インキはチューブの開放端から流れ出ないオーダーで、かつボールとそのボールが保持されている環状体シートとの間の比較的大きい間隙から漏れ出ないオーダーの高い粘稠性になるように特に設計されていた。ボールとシートとの間のこの比較的大きい空間は製造法に関連した実際上の寛容度の問題から多分必要とされたのであろう。有機インキはまた、チューブからのインキの蒸発が、インキが使用される以前にチューブの解放後端を通して又はボール端において乾燥しないオーダーになるように特に選択されていた。勿論、ボール端における乾燥はボールの作用を閉塞する。
このボールペンに必要とみられていた高粘度のインキは最も心地よい感触の筆記効果を与えなかったことが明らかに認識された。低粘度のインキは紙面に対してボールとインキを移動させるのに要求される非常に小さな力をもってボールペンを作用させることを可能にするだろうと明らかに認識されていた。しかしながら、先に言及した理由で、低粘度インキは古典的なボールペンの構造においては簡単には実用化できなかった。
ローラーボールのクラスのペンの最初の一つは繊維状多孔質フィラーにインキ溜めを吸収させることによって低粘度インキの問題を解決した。多孔質のインキ供給ロッドはフィラーからのインキをペンの末端で回転するボールにまで導くために提供された。これら供給ロッドはインキの流量を制御し、従って、ボール外周の周辺でのインキ漏れの潜在的深刻さ、および筆記の開始と停止におけるインキの過剰流動および「液だまり(globbing)」を軽減した。
これらの構造は実用的な回転ボール適用システムにおいて低粘度インキを使用する手法を提供したが、伝統的な有機系インキは低粘度で調製されたときには通常の用紙から許容できない程の滲み出しを生じる傾向があることが判明した。
他方、水性インキは許容できないほどの用紙からの滲み出しを生じないことが判明した。結果として、多孔質フィラー、供給パッドおよび回転ボールを有する水性インキのローラーボールペンの開発がかなり活発であった。ローラーボール筆記具の中の水性インキの流動を制御するためにかかる系を使用する先行特許の例は、英国特許明細書第1,139,038号、および米国特許第3,446,564号、第3,533,708号、第3,572,954号、第3,873,218号および第4,145,148号を包含する。上記タイプのインキ貯蔵および供給システム(「フィラー、ニッブ、ボールのシステム」)を使用した際の欠点は幾つかある。第一には、速やかな使用のためにボールにインキを充分に連続供給することを供給ロッドまたはニッブができない場合がしばしばあることである。さらに、溜のインキを物理的に安定化させるためのフィラーの使用は筆記具の中の利用可能なインキの量を有意に減少させた(約1/2にまで)。さらに、着色剤として可溶性染料ではなく顔料を用したインキの使用はインキ貯蔵および供給用の繊維状ロッドの毛管通路を塞ぐことがあり、さらには、ボールに分配されるインキの流速および量を抑制し断つことがある。
溜めフィラーの欠陥は、ここでは「フィラー無し、ニッブ、ボールのシステム」と呼ばれている様々なフィラー無しローラーボールペンの開発を促した。このタイプのシステムはインキのより充分な貯蔵を提供するが、それはまた、供給ロッドのコンセプトが維持されている限り予想される全ての困難性を保有している。
依然として、筆記具の開発者の目的はフィラーおよびフィラーロッドまたはニッブの必要性を解消するコンセプトを処方することであり、同時に、かかる構造において滑らかな筆記用低粘度インキを使用した場合に存在する漏れおよび蒸発の問題を回避することである。
「フィラー無し、ニッブ無し、ボースシステム」のためのこの設計上の問題を解決する一方法は一連の「ゲル化インキ」関係の米国特許、すなわち、米国特許第4,671,691号、第4,686,246号、第4,786,198号および第5,013,361号に記載されている。この一連の特許はフィラー無し、ニッブ無し、ボールシステムの中で水性インキを使用するためのシステムの一つを記載しており、そして低粘度インキの滑らかな供給を達成することに努力している。本質的に、このシステムは疑似塑性または剪断希釈として特徴付けられるインキを使用している。ここでは「ゼリー化インキ」との呼ばれているこの手法のインキは、通常の放置段階で高粘稠性であるが古典的なボールペンに使用されるインキより典型的に粘稠でないレオロジー特性を有すると言われている。しかしながら、それらがボールペンによって筆記される際に生じる高い剪断速度に曝された場合には、粘度は100センチポアズ未満に低下する。通常の高粘度は漏洩の発生を減少させるが、筆記操作中およびその直後における低粘度は低粘度インキの滑らかな供給を提供する。実際には、このシステムは溜インキの蒸発および乾燥を制御するためにインキ溜の後端と大気との間に高粘度フィラープラグの存在を要求する。
本発明の消去性インキシステムは3種類全てのローラーボール技術に対して有効に応用できる。
ボールローラーペン(ball−roller−point pen)技術における別の開発は本発明の水性の消去性インキの関連において特に有益である。伝統的には、筆記具に使用されるボールは金属から形成される。水性インキは或る種の存在する有機系インキ配合物のようには有効にボールの金属表面を「湿潤」しないので、水性インキは金属ボールペンで使用される場合には或る種劣った筆記特性をしばしば有する。ボールローラーペンのシステムにおけるセラミックボールの使用は水生インキを適用するための優れた方法を提供する。セラミック表面はしばしば、水性インキによってはるかに有効に「湿潤」され、従って、インキのより滑らかで、より均一な適用をもたらす。このセラミックボール技術が本発明の水性の消去性インキに適用される場合には、より優れた結果を生じることができる。有意なことに、より高い表面張力のインキを使用することができ、そしてそのことは消去性を改良する。ボールはより滑らかに回転する傾向にあり、そしてインキは筆記者によって小さい力で適用される傾向にあり、そしてインキによって適用されたマークはより一様でより滑らかな形態を有する。さらに、人造ボールは与えられた状況下で低い剪断力を生じる傾向にあり、それは以下に記述されるように有利であることがわかる。
ローラーボールシステムの第1クラス、すなわち、フィラーとニッブとボールのシステムにおいては、本発明のインキはフェルトチップマーカー用途に使用されるものと本質的に同じ配合であり、そしてほぼ同じように挙動する。
フェルトチップマーカーについて記述したのと本質的に同じ形態である本発明の組成物は、ローラーボール製品の第2クラス、すなわち、フィラー無しのニッブとボールのシステムに、およびローラーボール製品の第3クラス、すなわち、ゲル化インキのために設計された、フィラー無し、ニッブ無しのボールペンに、使用することができる。
実施例4
「ビック メタル ポイント ローラー ファイン ポイント(BIC METAL POINT ROLLER FINE POINT)」という商標で販売されている第1クラスの商業的に入手可能なローラーポールペンを得て、それを集成し直す。それはチューブと、フィラーと、ニッブと、ボールを含んでいた。それら部品の全部を清浄にしてインキを落とし、ペンに試験インキを装填し、そしてペンを再集成した。試験インキは次の組成を有していた。
カーボンブラック KS5725 3.23g
FC129 界面活性剤 1.1 g
プリオライト2108 ラテックス 42.0 g
ソルビトール/グリセリン 3.5 g
オクトライト453 0.4 g
脱イオン水 9.82g
作用するソルビトール/グリセリン混合物は2重量部のソルビトールと1重量部のグリセリンであった。
この混合物は先の実施例に記載されている標準手順を使用して調製された。粘度は約5.3センチポアズであった。表面張力は約23.7ダイン/cmであった。
得られた製品は許容できるように書けたし、そして得られたマークは消去可能であった。5日後でも、この製品は書けたし、そして得られたマークは消去可能であった。
実施例5
「バイロット プリサイス ローラー ボール(PILOT PRECISE ROLLER BALL)V5」という商標で販売されている第2クラスの商業的に入手可能なローラーボールペンを得て、それを集成し直す。それはチューブ、フィラー無し、ニッブ、およびボールを含んでいた。それら部品の全部を清浄にしてインキを落とし、ペンに試験インキを装填し、そしてペンを再集成した。試験インキは次の組成を有していた。
カーボンブラック KS5725 3.23g
FC129 界面活性剤 1.1 g
プリオライト2108 ラテックス 42.0 g
ソルビトール/グリセリン 3.5 g
オクトライト453 0.4 g
脱イオン水 9.82g
作用するソルビトール/グリセリン混合物は2重量部のソルビトールと1重量部のグリセリンであった。
この混合物は先の実施例に記載されている標準手順を使用して調製された。粘度は約5.3センチポアズであった。表面張力は約23.7ダイン/cmであった。
得られた製品は許容できるように書けたし、そして得られたマークは消去可能であった。5日後でも、この製品は書けたし、そして得られたマークは消去可能であった。
実施例6
「サクラ ボール サイン(SAKURA BALL SIGN)」という商標で販売されている第3のクラスの商業的に入手可能なローラーボールペンを得て、それを集成し直す。それはチューブ、フィラー無し、ニッブ無し、およびボールを含んでいた。それら部品を全部を清浄にしてインキを落とし、ペンに試験インキを装填し、そしてペンを再集成した。試験インキは次の組成を有していた。
カーボンブラック KS5725 3.23g
FC129 界面活性剤 1.1 g
プリオライト2108 ラテックス 42.0 g
ソルビトール/グリセリン 3.5 g
オクトライト453 0.4 g
脱イオン水 9.82g
作用するソルビトール/グリセリン混合物は2重量部のソルビトールと1重量部のグリセリンであった。
この混合物は先の実施例に記載されている標準手順を使用して調製された。粘度は約5.3センチポアズであった。表面張力は約23.7ダイン/cmであった。
得られた製品は許容できるようには書けなかった。それは「スキップ」し、すなわち、不連続なマークを生じ、それから筆記を中止した。ボールは閉塞したようであった。
実施例7
「サクラ ボール サイン」という商標で販売されている第3クラスの商業的に入手可能なローラーボールペンを得て、それを集成し直す。それはチューブ、フィラー無し、ニッブ無し、およびボールを含んでいた。それら部品の全部を清浄にしてインキを落とし、ペンに試験インキを装填し、そしてペンを再集成した。サクラボールは先の実験では閉塞したので、ボール末端を、「パーカー ベクター ローラー ボール(PARKER VECTOR ROLLER BALL)」という商標で販売されている製品のボール末端によって置き換えた。試験インキは次の組成を有していた。
デイグロ マゼンタ EP21(水中の固形分11g)25 g
FC129 界面活性剤 0.5g
プリオライト2108 ラテックス 50 g
ソルビトール/グリセリン 25 g
作用するソルビトール/グリセリン混合物は2重量部のソルビトールと1重量部のグリセリンであった。
この混合物は先の実施例に記載されている標準手順を使用して調製された。粘度は約12センチポアズであった。表面張力は約42.5ダイン/cmであった。
得られた製品は非常に良く書けたし、そして得られたマークは消去可能であった。5日後でも、この製品は書けたし、そして得られたマークは消去可能であった。
しかしながら、特に有意なことは本発明の消去性インキは比較的高粘度の形態(標準処方の約5センチポアズから、水の代わりににソルビトールを加えたことによる15〜20センチポアズまで)に配合された場合には第3クラスのローラーボール筆記具すなわちフィラー無し、ニッブ無しのボールシステムの中で作用する。現時点では、本発明の消去性インキは先に記述した疑似塑性インキまたは剪断希釈(「ゼリー化」)インキに通常関連したレオロジー特性を保有することは明らかでない。実際には、試験は本発明のインキがニュートン型であり、そして多分膨張性でさえあることを示している。しかしながら、本発明の高粘度態様はこのクラスの筆記具において非常に良く作用することが判明した。さらに、この製品の高粘度態様は優れた消去特性を有しており、そして結果として、本質的に全く新規な製品範疇の消去性のローラーボール筆記具を提供することが判明した。
本インキのニュートン流動特性は第3クラスのローラーボールペンにおける「ゼリー化インキ」の有効性を説明するために使用された剪断希釈モデルとは適合しなこと、および本インキはそれらのように作用することは期待されないことが予想されていた。
第3クラスのローラーボールペンは先に記述したインキ処方の中の「ゼリー化」インキ形態を、先に列挙した「ゼリー化インキ」特許に引用されている剪断希釈性でショック抵抗性でかつ水を急速に増強させる性質の添加剤の添加によって、効果的に使用できるということも判明した。
本発明の水性インキが、親水性表面を有するセラミックボールをもってこの第3クラスのローラーボール製品中に使用された場合に、その性能は伝統的な金属表面のボールよりも有意に高めることができる。
本発明のインキの有効性は、ゼリー化インキ方式の類の3種類のローラーボールペンにおいては、本発明のインキの剪断不安定性(剪断希釈ではない)によって影響されるらしい。フェルトチップマーカーの作用点において生じる剪断は約6000秒-1であることが観測された。古典的なボールペンの大きいボールは約6000秒-1の剪断を生じる。このレベルの剪断では、本インキの標準配合物は剪断安定性ではないようである。マーカーまたはペンを筆記に使用するとエマルジョンが不安定性になって破壊し始め、破壊がチップの外側で起こりインキの「小滴(glob)」が用紙に転写されるので、この効果が操作を妨げないとう証拠がある。しかしながら、ローラーボールペンにおいては、「小滴」はボールソケットに繰戻されてボールとソケットを閉塞する傾向がある。比較的小さい直径を有するローラーボールの設計が、特に、この類の3種類のローラーボールペンにおいては使用された場合には、ボールはインキがボール周辺および用紙上に搬送されるときに高剪断力を発生する。この剪断力は9000秒-1のオーダーである。本発明の標準配合のインキが増大した剪断力特に約6000秒-1の剪断力にさらされると、エマルジョンは破壊し、そしてインキは2相化した水−ゴムの形態で用紙に供給される。この2相化した形態はソケットの中のボールを閉塞する傾向があり、大きい直径のボールでさえそうであり、そして筆記工程の最初の部分を妨げる傾向がある。それは「スキッピング」、すなわち、筆記されたマークの中の意図しない破損、をも引き起こす。幸いなことに、本発明者らはこの問題がインキ配合物に剪断安定化用添加剤を加えることによって解決できることを見出した。
理想的には、剪断安定化用添加剤は、その中でインキを使用するべきペンによって生じる剪断に対してエマルジョンを安定化させることを、本発明の動作にとって有益であるイオン不安定性を不当に増加させることなく行なわなければならない。多価アルコール、たとえば、ソルビトールやグリセロールは、本発明の処方の中の保湿剤としての役割によって典型的に要求されるものに等しいか又はそれよりも大きい濃度で添加された場合には、得られるインキが高剪断ボールペンの中で閉塞を起こすことなく使用できるところまでエマルジョンを安定化させることが判明した。この高量の剪断安定剤はキャップオフ時間すなわちチップ上のインキがペンを使用するには乾燥し過ぎるようになるまでキャップをはずしたままペンを放置できる時間をも増大させる。剪断安定剤の濃度は最適化されなければならない。何故ならば、多過ぎる量の保湿剤は筆記したマークの乾燥時間を許容できない長さにまでのばすことがあり、そして消去性を低下させる「ゴースト」を発生させることがあるからである。
樹脂−水−ソルビトール−グリセリンの系による実験はローラーボール式筆記具に対するキャップオフ時間を非常に驚異的に増大させた。標準的な市販のローラーボール用インキ系は筆記用チップからキャップを1日間はずしておくと不満足になる。これはボール周辺の間隙からの揮発性インキ成分の蒸発およびボールの不可逆的閉塞による結果とみられる。本発明のローラーボール用処方物は筆記を停止するとボール周辺に微妙なしかし実に気密のシールを形成する。このシールは筆記を再開すると破壊されてインキと共に筆記マーク上へと流動する。しかしながら、その間の時間においては、シールはペンが約1月ものキャップオフ時間の間有効なままあることを可能にさせる。
実施例8
試験のユニットは本発明者らの実験ノートからインキ番号X1265−90−1のものを含有していた。このインキは次のように構成されていた(重量%):
60% BASF NS 103 SBr ラテックスエマルジョン
20% ソルビトール/グリセリン(2:1の比)
10% フレキシバース 4343 カーボンブラック分散物
10% 脱イオン水(8.5のpHになるようにトリエタノールアミンが添加されている)
このローラーボール用インキは本発明者らの標準マーカー用インキより多量のゴムエマルジョンを有している。さらに、このインキはローラーチップの乾燥を防止しそしてローラーチップを潤滑にするために、本発明者らの標準マーカー用インキよりも多量のソルビトール/グリセリンを有している。
2個のゲル型ローラーボールユニットを30日間キャップなしで放置し、それから本発明者らはユニットを使用することを試みた。標準ローラーボールユニットが数日間だけもちこたえることを期待されている事実で照らして、この2個の消去性ユニットがキャップオフ試験の30日後にも完全によく書けたときには驚きであった。
再使用の前に30日間キャップオフしたユニットのチップを検査したところ、ラテックスがボールとソケットの界面にシール環を形成していたことが判明した。このシールの上面(すなわち外側)にはソルビトール/グリセリンがボールの露出表面とソケットの縁を被覆する透明な保護層を形成していた。このユニットを使用してときには、ゴムシールとソルビトール/グリセリン層は容易に用紙の表面に無害に圧延される。
ゴムによって形成された気密シールはこのユニットが何故かかる長いキャップオフ時間を有し、そしてキャップオフ試験直後のかかる優れた筆記性を有するかを説明している。ソルビトール/グリセリンの乾燥防止かつ潤滑の作用と組み合わされたゴムのシール作用は非常に有効なローラーボール組合せであることを証明した。
ゲル型ローラーボールシステムにおける消去性インキは現在のところ、キャップオフ試験においては、標準の非消去性インキよりも性能が優れているということに注目することが重要である。標準の非消去性のローラーボール用インキは少量のラテックスおよびソルビトール/グリセリンを加えることによって改良することができるらしい。得られたローラーボール用インキは用紙の繊維の中に浸透しないであろうし、そして延びたキャップオフ時間を有するであろう。消去性に関することではないけれども、この新規インキはローラーボールユニットをして、キャップを必要としない高分子量溶剤インキと競合することを可能にする。
インキの粘度は具体的な筆記具のためにインキを最適化することにおける臨界的パラメーターの一つであることが判明した。粘度の変化は他の臨界的パラメーターに影響することがあるので、与えられた筆記具のための最適粘度を有する機能的なインキの達成はしばしば困難である。筆記用インキを、フェルトチップマーカーのような毛管型筆記具用の低粘度(10センチポアズ未満)、ボールペンやゲル型ローラーボールペンのような塊状流動型筆記具用の高粘度(30センチポアズより上)、および中間の範囲の粘度(10〜30センチポアズ)、の3つの範囲に分類することが有効であることが判明した。(以下に説明する)実験によって、インキの「ショックアウト」効果および得られる優れた消去性は3つ全ての粘度範囲において達成できることが確立された。
実施例9、10および11においては、様々な粘度の消去性インキが、「ビック ラウウンド スティック メディアム(Bic round stic medium)」のボールペン部品の中で試験された。部品から溶剤系インキの残留物を除去するために、部品をMEKの中で洗った。これら部品と市販のゲル型システムに使用されている部品との唯一の相違はボールに分配されるインキの量である。ビックの部品においては、インキ用チューブは典型的なゲルインキ用チューブより小さい。このサイズの相違は現在のゲルインキユニットにおいては用紙に分配されるインキの量がより大量に消費されることを要求している。
実施例9
インキX1265−105−2は64センチポアズの粘度を有しており、そして次のように構成されている:
60g BASF NS 103 SBr ラテックス
10g フレキシバース 4343 カーボンブラック分散物
15g ソルビトール/グリセリン(2:1)
14g 脱イオン水中の0.5%トラガカンス(Tragacanth)ガム溶液(すなわち、0.07gのガム)
1g FC−129 界面活性剤
このインキはビック部品から構成したペンから適用されたときに優れた筆記性と優れた消去性を有した。
実施例10
インキX1265−105−3(インキX1265−90−1の繰り返し混合)は26センチポアズの粘度を有しており、そして次のように構成されている:
60g BASF NS 103 SBr ラテックス
10g フレキシバース 4343 カーボンブラック分散物
20g ソルビトール/グリセリン(2:1)
10g 脱イオン水
このインキは、前と同様、ビック部品の中で優れた筆記性と優れた消去性を有した。
実施例11
インキX1265−105−4はより高量のトラガカンスガムを使用したので559センチポアズの粘度を有しており、そして次のように構成されている:
60g BASF NS 103 SBr ラテックス
10g フレキシバース 4343 カーボンブラック分散物
15g ソルビトール/グリセリン(2:1)
0.3g トラガカンスガム
14.7g 脱イオン水
このインキもビック部品の中で優れた筆記性および消去性を有した。
本発明の粘度上限は配合物に添加できる顔料およびゴムの最大量によって決まるであろう。非常に粘稠なインキは顔料およびゴムのより高い充填を必要とするであろう。ブレネンマン(Brennenman)他の米国特許第4.721,739号には、消去性ならびに非消去性のインキのための粘度範囲が与えられている。標準の非消去性のボールペン用の粘度範囲は50〜150ポアズ(5,000〜150,000センチポアズ)である。消去性インキ用の範囲は48〜500ポアズ(4,800〜50,000センチポアズ)である。時には、これら消去性インキは加圧カートリッジを使用する。これらの高い方の範囲において本発明者らの消去性インキの有効な変形を配合することは当分野で入手可能な様々な増粘剤の使用によって可能であった。
本発明を好ましい態様に関して記述したが、本明細書を閲読すれば、多数の変形、変更および置換が明らかになるであろうし、それらが本願の請求の範囲の中に包含されることは明らかである。
Claims (14)
- 通常の鉛筆用消しゴムによって通常の筆記用紙から消去可能である毛管型筆記用媒質組成物であって、前記組成物が、
(a)(i)不連続のゴム相と連続の水性キャリヤ相から構成されたエマルジョンであり、
(ii)前記エマルジョンはゴム相を組成物が通常の筆記用紙と接触しないときに分散状態に保持させる乳化剤を含んでいるが、その役割は通常の筆記用紙からエマルジョンによって溶解された要素が乳化剤と反応したときには無効になり、前記エマルジョンはシリコーン系バリヤ材料を含んでおらず、
(iii)前記エマルジョンは通常の筆記用紙と接触すると、エマルジョンが安定である第一状態から、エマルジョンが不安定でありゴム相が急速に凝集する第二状態に急速に変換し、用紙表面に対して低接着力を有する凝集ゴム相皮膜を形成し、前記皮膜は通常の鉛筆用消しゴムで皮膜を擦ることによって用紙から完全に除去されることが可能であり、不連続ゴム相は室温未満のガラス転移温度を有し、前記エマルジョンは前記組成物の60〜70重 量%を構成する非カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムエマルジョンであるとを特徴とする、
前記エマルジョンと、
(b)前記エマルジョンの中に分散された着色剤であって、ゴム相との及び前記皮膜との不変の会合を特徴とする前記着色剤要素を含んでおり、そして
(c)前記筆記用媒質組成物が、10センチポアズ未満の粘度と、25〜35ダイン/cmの表面張力とを有する、
ことを特徴とする、筆記用媒質組成物。 - エマルジョンは界面活性剤を含んでおり、前記界面活性剤は、アルカリ性水性媒質中で親水性であるが酸性度および通常の筆記用紙からエマルジョンによって溶解された多価カチオンによって疎水性になることができる変換可能な部分を有している、請求項1に記載の組成物。
- 界面活性剤をさらに含み、前記界面活性剤は、エマルジョンが通常の筆記用紙に接触した際前記第一状態から前記第二状態に変換されるのを防ぐことなく、組成物の表面張力を低下させるための能力により特徴付けられる、請求項1に記載の組成物。
- 前記ゴムが、24:76のスチレン−ブタジエン比、40.0%の固形率、11.4のpHおよび58ダイン/cmの表面張力とを有する、請求項1に記載の組成物。
- ゴムが−52±5℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の組成物。
- 前記着色剤が顔料である、請求項1に記載の組成物。
- 乾燥防止剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記非カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムエマルジョンが、20:80〜55:45のスチレン−ブタジエン比、700Åのゴム粒子の大きさとを有する、請求項1に記載の組成物。
- 前記非カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムエマルジョンが、20:80〜55:45のスチレン−ブタジエン比を有する、請求項1に記載の組成物。
- 前記非カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムエマルジョンが、20:80〜45:55のスチレン−ブタジエン比を有する、請求項1に記載の組成物。
- 前記非カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムエマルジョンが、24:76のスチレン−ブタジエン比を有する、請求項1に記載の組成物。
- 前記スチレン−ブタジエンインキが7センチポアズの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
- 前記界面活性剤がフルオロケミカル界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
- 前記非カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムエマルジョンが、24:76のスチレン−ブタジエン比、40.0%の固形率、11.4のpHおよび58ダイン/cmの表面張力とを有する、請求項8に記載の組成物。
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