JP3619078B2 - スピン伝導素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスピン伝導素子に関し、特に高密度磁気記録読み出し用磁気ヘッドや、磁性RAM(MRAM)および磁性ROM(MROM)などの高密度記憶素子に適用されるスピン伝導素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録の高密度化および高速化は、磁気記録媒体の改良と並んで、磁気記録装置の進歩、なかでも磁気記録の書き込みおよび読み出しに用いられる磁気ヘッドの進歩に負うところが多い。例えば、磁気記録媒体の小型化および大容量化に伴って、磁気記録媒体と読み出し用磁気ヘッドとの相対速度は小さくなるが、その場合でも大きな出力が取り出せる新しいタイプの読み出し用磁気ヘッドとして巨大磁気抵抗効果ヘッド(GMRヘッド)の開発が進められている。GMRヘッドは従来のMRヘッドに比較して磁気抵抗比(MR比)が大きく優れた特性を持っているが、最近より優れた特性が期待されるトンネル接合型のGMRヘッドが急速に注目を集めている。
【0003】
また、従来の磁気記録媒体は磁気ディスクすなわちファイルメモリーとして機能し、その情報はいったんコンピューター本体の半導体メモリー(DRAM、SRAM)に読み込まれた後に利用される。半導体メモリーは多くの優れた特性を持っているが、記憶保持のために大量の電力を消費するという大きな欠点も持っている。近年、記憶保持のための電力が必要のないフラッシュメモリーやFRAMなどの開発が進められているが、いずれも書き換え回数が限定されるという大きな欠点を持っている。一方、実質的に無限回の書き換えが可能な磁気メモリー(MRAM)の開発も始められているが、その実現のためには大きなMR比を示す材料またはデバイスの開発が望まれる。
【0004】
以上のような背景から、従来のスピンバルブ膜に比べてより大きなMR比を示す素子として磁性体トンネル接合素子が注目され、それらを用いて、またはそれらとMOS型トランジスタを組み合わせることによって磁気ヘッドや磁気メモリーを形成する試みが進められている。さらに、磁性体トンネル接合素子に比べより優れた特性を示すことが期待される種々の3端子型デバイス(スピントランジスタ)の開発も進められている。
【0005】
現在、磁性体トンネル接合素子は、数十mV以下の低電圧域で30%程度のMR比を示すが、数百mV以上の実用電圧域ではMR比が10%程度に低下するという問題があるため、実用電圧域で30%以上のMR比が望まれている。実用電圧域で高いMR比を実現するためには、一方の強磁性電極からトンネルバリアー層を介して他方の強磁性電極に注入される電子のスピン偏極率を増大させる必要がある。また、3端子型デバイスの特性を実用レベルに高めるためにも、強磁性電極からトンネルバリアー層を介して常磁性金属または半導体からなる他の電極に注入される電子のスピン偏極率を増大させる必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、強磁性電極から他の電極へスピン偏極率の大きい電子を注入することができるトンネル接合部を持ったスピン伝導素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のスピン伝導素子は、強磁性電極からスピン偏極した電子を絶縁体または半導体からなるトンネルバリアー層を介して、常磁性金属、強磁性金属または半導体からなる他の電極へトンネル注入する構造を有するスピン伝導素子において、前記トンネルバリアー層を構成する材料が、絶縁体として六方晶BN、立方晶BN、非晶質BN、BP、In 2 O 3 、SnO 2 およびPbO、ならびに半導体として層状 III −VI化合物であるGaS,GaSe,GaTe,InSおよびInSe、 III −VI化合物であるInTe,TlSおよびTiSe、ならびに III −V化合物であるGaPおよびGaNからなる群より選択されることを特徴とする。
【0008】
本発明において、強磁性電極の材料としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)またはこれらの合金が用いられる。
【0009】
本発明において、トンネルバリアー層を構成する材料は、絶縁体としては六方晶BN、立方晶BN、非晶質BN、BP、In 2 O 3 、SnO 2 およびPbO、ならびに半導体としては層状 III −VI化合物であるGaS,GaSe,GaTe,InSおよびInSe、 III −VI化合物であるInTe,TlSおよびTiSe、ならびに III −V化合物であるGaPおよびGaNからなる群より選択される。
【0010】
本発明のスピン伝導素子の例としては、強磁性層/トンネルバリアー層/強磁性層の三層構造を有する磁性体トンネル接合を含むものが挙げられる。
【0011】
本発明のスピン伝導素子の他の例としては、強磁性層/トンネルバリアー層を有するエミッタと、強磁性積層膜からなるベースと、半導体からなるコレクタとで構成されるスピンバルブトランジスタを含むものが挙げられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、強磁性電極からトンネルバリアー層を介して他の電極へ注入される電子のスピン偏極率は、強磁性体のバンド構造だけでなく、トンネルバリアー層を構成する材料のバンド構造に強く依存することを見出した。以下、本発明の原理について説明する。
【0013】
Fe,Co,Niなどの強磁性金属またはこれらの合金は、図1に模式的に示すように、局在性の強いdバンドと、質量の軽い非局在電子とが共存したバンド構造を有する。トンネル電流は、主として非局在電子によって担われている。Feを例に取ると、非局在電子のバンドは、アップスピンバンドの底がフェルミ準位から約3eV、ダウンスピンバンドの底がフェルミ準位から約0.5eVのところにある。このようにスピンに依存したバンド構造は、他の強磁性金属や合金でもほぼ同様である。
【0014】
図1からわかるように、非局在電子のスピン偏極率はフェルミ準位近くでは小さく、フェルミ準位の下0.5eVから3eVのエネルギー絶囲では極めて大きい。したがって、フェルミ準位の下0.5eVから3eVのエネルギー範囲にある電子を選択的にトンネルさせることができれば、極めて大きなスピン偏極電流が得られる。
【0015】
一方、電子のトンネル確率はトンネルバリアー層を構成する絶縁体または半導体のバンド構造に依存することが知られている。図2はバンドギャップ内での電子の波動関数の減衰定数kの2乗をエネルギーの関数として示したものである。図2からわかるように、伝導帯の底または価電子帯の頂上近くのエネルギーを持つ電子の減衰定数は小さく、バンドギャップ中央近くのエネルギーを持つ電子の減衰定数は大きい。電子が厚さtのトンネルバリアー層をトンネルする確率はexp(−2kt)に比例するので、電子のトンネル確率はそのエネルギーに強く依存する。
【0016】
従来、トンネルバリアー層の材料としては、Al2O3,AlN,MgOなどの絶縁体が用いられてきた。図3(a)に示すように、これらの絶縁体では、伝導帯の底がFe,Co,Niなどの強磁性金属のフェルミ準位の近くにあり、価電子帯の頂上はフェルミ準位から離れている。したがって、図3(b)に示すように、強磁性金属からトンネルバリアー層を介して、金属や半導体からなる他の電極に注入される電子のエネルギー分布は、印加電圧に係わらずフェルミ準位近くのエネルギーを持つものが圧倒的に多くなる。上述したように、Feなどの強磁性金属中では、非局在電子のスピン偏極率はフェルミ準位近くでは小さいので、トンネル電子のスピン偏極率も小さくなってしまう。
【0017】
一方、図4(a)に示すように、六方晶BNなどの絶縁体やGaSeなどの半導体では、価電子帯の頂上がFe,Co,Niなどの強磁性金属のフェルミ準位の近くにあり、伝導帯の底はフェルミ準位から離れている。したがって、図4(b)に示すように、強磁性金属からこれらの材料で形成されたトンネルバリアー層を介して、金属や半導体からなる他の電極に注入される電子のエネルギー分布は、印加電圧Vに対応したエネルギーeVに鋭いピークをもつ。上述したように、Feなどの強磁性金属中では非局在電子のスピン偏極率は、フェルミ準位の下約0.5eVから約3eVのエネルギー範囲では極めて大きいので、約0.5Vから約3Vの電圧を印加することにより、極めて大きなスピン偏極率をもったトンネル電流が得られる。
【0018】
本発明においては、トンネルバリアー層の材料として、強磁性金属のフェルミ準位に対して図4(a)のようなエネルギーの関係にあるバンド構造をもつものが用いられる。このような材料としては、以下に示すような絶縁体または半導体が挙げられる。絶縁体としては、六方晶BNのほかにも、立方晶BN、BP、In 2 O 3 、SnO 2 、PbOなどが挙げられる。半導体としては、層状 III −VI化合物であるGaS,GaSe,GaTe,InS,InSeなど、 III −VI化合物であるInTe,TlS,TiSeなど、 III −V化合物であるGaP,GaNなどが用いられる。
【0019】
一方、多くの酸化物絶縁体や、SiC,AlAs,InSb,CdS,ZnS,ZnOなどの半導体は、Al2O3やAlNと同様に図3(a)に示したのと同様なバンド構造をもつため、大きなスピン偏極率の電流は得られない。
【0020】
本発明のスピン伝導素子において、大きなスピン偏極率の電流を得るために重要なもう一つの要請は、トンネル過程における電子のスピン反転現象を抑制することである。トンネル電子は強磁性電極中の磁気励起(マグノン)やトンネルバリアー層中の局在スピンなどと相互作用することにより、そのスピンが反転してしまう。上述したように、実用電圧域で磁性トンネル接合のMR比が減少する原因はこのスピン反転現象であると考えられている。
【0021】
本発明に係るトンネルバリアー層を用いれば、アップスピン状態のみが存在できるエネルギー範囲の電子を選択的にトンネルに関与させることができる。この場合、電子のスピン状態をアップスピンからダウンスピンに反転するには大きなエネルギーを伴った非弾性散乱を受けることが必要である。こうした散乱確率は極めて小さいため、本発明のスピン伝導素子ではスピン反転が抑制され、大きくスピン偏極した電流を得ることができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0023】
実施例1
以下のようにして、図5に示すFe/非晶質BN/Coからなる磁性体トンネル接合を含む磁気抵抗効果素子を作製した。
【0024】
マグネトロンスパッタ装置にシリコン基板11を入れ、10−8torrに真空引きした。シリコン基板11上に、マグネトロンスパッタにより、厚さ100nmのPtからなるシード層12、厚さ10nmのFeMnからなる交換バイアス層13、厚さ12nmのFeからなる下部電極14、厚さ1.5nmの非晶質BNからなるトンネルバリアー層15、厚さ8nmのCoからなる上部電極16、厚さ100nmのAuからなるバックアップ層17を順次形成して磁気抵抗効果素子を作製した。フォトリソグラフィーとArイオンミリングにより接合面積を5×5μm2に設定した。
【0025】
この磁気抵抗効果素子について、室温において電圧1Vで接合面内に外部磁場を印加して磁気抵抗を測定した。この結果、磁化曲線を反映した磁気抵抗特性が観測され、MR比(磁気抵抗効果比)は42%であった。また、飽和磁場の下での接合抵抗の絶対値は約200Ωであった。
【0026】
実施例2
トンネルバリアー層として、実施例1における厚さ1.5nmの非晶質BNの代わりに、バンドギャップ2eVの半導体であるGaSeを10nmの厚さに形成した以外は実施例1と同様な方法で磁気抵抗効果素子を作製した。この磁気抵抗効果素子では、電圧1VでのMR比は45%、接合抵抗は約100Ωであった。
【0027】
比較例1
比較のために、トンネルバリアー層として、実施例1における厚さ1.5nmの非晶質BNの代わりに、厚さ2nmのAl2O3を用いた以外は実施例1と同様な方法で磁気抵抗効果素子を作製した。この磁気抵抗効果素子では、電圧1VでのMR比は5%、接合抵抗は約200Ωであった。
【0028】
これらの実施例1、実施例2および比較例1から、トンネルバリアー層に非晶質BNやGaSeを用いることにより、Al2O3を用いた場合と比較して大きなMR比が得られることがわかる。
【0029】
実施例3
トンネルバリアー層をトンネルした伝導電子のスピン偏極率を調べるために、図6に示すn+−GaAs/ノンドープGaAs/Feの積層構造を有するトンネル接合を含むスピン伝導素子(発光素子)を作製した。
【0030】
マルチチャンバーのMBE装置にn+−GaAs(001)ウェーハ21を入れた。まず、第1チャンバー内でウェーハ21上にn+−GaAsからなる活性層22、厚さ5nmのノンドープGaAsからなるトンネルバリアー層23を形成した。STMおよびRHEED観察により、トンネルバリアー層23であるノンドープGaAsの表面がAsのダイマーにより終端された2×4構造となっていることが確認された。テラスの幅は約0.5μmであった。次に、第2チャンバー内で厚さ10nmのFe(001)からなる強磁性電極24を形成して発光素子を作製した。この際、クヌーセンセルを用い、0.3nm/minの速度で成膜した。
【0031】
Feからなる強磁性電極24とn+−GaAsからなる活性層22との間に1Vの電圧を印加し、ノンドープGaAsからなるトンネルバリアー層23を介して強磁性電極24から活性層22へスピン偏極した電子をトンネル注入した。発光の円偏光度を測定することにより、注入された電子のスピン偏極率を求めたところ、約63%の高い値が得られた。
【0032】
比較例2
比較のために、トンネルバリアー層として、実施例3における厚さ5nmのノンドープGaAsの代わりに、厚さ1.5nmのAl2O3を用いた以外は実施例3と同様の方法で発光素子を作製した。この例では、第1チャンバー内でウェーハ上にn+−GaAsからなる活性層を形成した後、第2チャンバー内でAlを蒸着し、このAlをプラズマ酸化することによりAl2O3からなるトンネルバリアー層を形成し、さらにFeからなる強磁性電極を形成した。
【0033】
Feからなる強磁性電極とn+−GaAsからなる活性層との間に1Vの電圧を印加し、Al2O3からなるトンネルバリアー層を介して強磁性電極から活性層へスピン偏極した電子をトンネル注入した。発光の円偏光度を測定することにより、注入された電子のスピン偏極率を求めたところ、約13%であった。
【0034】
実施例3および比較例2から、トンネルバリアー層にノンドープGaAsを用いることにより、Al2O3を用いた場合と比較して高いスピン偏極率で電子を注入できることがわかる。
【0035】
実施例4
以下のようにして図7に示す構造を有するスピンバルブトランジスタを作製した。このスピンバルブトランジスタは、p型シリコンからなるコレクタ31上に、厚さ2nmのAu層32/厚さ1.5nmのFe層33/厚さ2nmのAu層34という磁性積層膜からなるベース35、および厚さ1nmの非晶質BNからなるトンネルバリアー層36/厚さ10nmのFe層37/厚さ100nmのAu層38からなるエミッタ39が順次形成された構造を有する。このスピンバルブトランジスタは、実施例1と同様にマグネトロンスパッタ装置で各層を成膜し、フォトリソグラフィーとArイオンミリングによりパターニングすることにより作製した。
【0036】
このスピンバルブトランジスタでは、エミッタ39/ベース35間にベース35/コレクタ31間のショットキーバリアーの高さ(約0.4eV)以上の電圧を印加すると、エミッタ39からベース35に注入された正孔がショットキーバリアーを越えてコレクタ31に流れ込み、コレクタ電流として観測される。この際、磁場を印加して2つのFe層33、37の磁気モーメントを反平行状態から平行状態に変化させるとコレクタ電流が変化し、磁気抵抗効果が観測される。この例では、エミッタ/ベース間に1Vの電圧を印加したとき、約500%の大きなMR比が観測された。
【0037】
比較例3
比較のために、トンネルバリアー層として、厚さ1nmの非晶質BNの代わりに、厚さ1nmのAl2O3を用いた以外は実施例4と同様なスピンバルブトランジスタを作製した。このスピンバルブトランジスタについてMR比を測定したところ、約30%であった。
【0038】
実施例4および比較例3から、トンネルバリアー層に非晶質BNを用いることにより、Al2O3を用いた場合と比較して大きなMR比が得られることがわかる。
【0039】
なお、本発明は上記実施例で説明した以外のスピン伝導素子にも適用できる。例えば図8にスピン蓄積型バイポーラスピントランジスタを示す。このスピン蓄積型バイポーラスピントランジスタは、強磁性コレクタ41、トンネルバリアー層42、非磁性ベース43、トンネルバリアー層44、強磁性コレクタ45という積層構造を有する。これらのトンネルバリアー層42、44に、バリアー高さが強磁性電極のフェルミ準位の上方でより高くフェルミ準位の下方でより低い材料を用いることにより、良好な特性が得られる。
【0040】
本発明における各層を構成する材料は、以上述べた材料に限られない。
【0041】
なお、請求項において列挙した材料層についても、隣接する強磁性層や、離間する層などからの原子拡散が、製造工程の調整などによって容易に起こることが予想される。例えば、トンネルバリアー層を成膜する趣旨でバリアー層材料のターゲットなどを用いても、スパッタ法などではスパッタ圧や温度に、また成膜後の熱処理の温度、雰囲気、処理時間などによって原子拡散の度合が左右されると考えられる。請求項に挙げる材料に拡散による他の層の構成原子が混ざっていても、その層の主な物性が当該列挙された材料に依存するうちは、拡散が生じても請求項2の範囲内にあるといえる。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、トンネルバリアー層として、バリアーの高さが強磁性電極のフェルミ準位の上方でより高く、フェルミ準位の下方でより低い材料を用いることにより、大きなスピン偏極率で電子を注入することが可能となり、スピン伝導素子の特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】強磁性金属のバンド図。
【図2】バンドギャップ内での電子の波動関数の減衰定数kの2乗をエネルギーの関数として示す図。
【図3】従来のトンネルバリアー層材料のバンド図、およびそのトンネルバリアー層を介して注入される電子のエネルギー分布を示す図。
【図4】本発明に係るトンネルバリアー層材料のバンド図、およびそのトンネルバリアー層を介して注入される電子のエネルギー分布を示す図。
【図5】本発明の実施例1における磁気抵抗効果素子の構造を示す断面図。
【図6】本発明の実施例2における発光素子の構造を示す断面図。
【図7】本発明の実施例4におけるスピンバルブトランジスタの構造を示す断面図。
【図8】本発明の他の実施例におけるスピン蓄積型バイポーラスピントランジスタの構造を示す断面図。
【符号の説明】
11…シリコン基板
12…シード層
13…交換バイアス層
14…下部電極
15…トンネルバリアー層
16…上部電極
17…バックアップ層
21…ウェーハ
22…活性層
23…トンネルバリアー層
24…強磁性電極
31…コレクタ
32…Au層
33…Fe層
34…Au層
35…ベース
36…トンネルバリアー層
37…Fe層
38…Au層
39…エミッタ
41…強磁性コレクタ
42…トンネルバリアー層
43…非磁性ベース
44…トンネルバリアー層
45…強磁性コレクタ
Claims (3)
- 強磁性電極からスピン偏極した電子を絶縁体または半導体からなるトンネルバリアー層を介して、常磁性金属、強磁性金属または半導体からなる他の電極へトンネル注入する構造を有するスピン伝導素子において、前記トンネルバリアー層を構成する材料が、絶縁体として六方晶BN、立方晶BN、非晶質BN、BP、In 2 O 3 、SnO 2 およびPbO、ならびに半導体として層状 III −VI化合物であるGaS,GaSe,GaTe,InSおよびInSe、 III −VI化合物であるInTe,TlSおよびTiSe、ならびに III −V化合物であるGaPおよびGaNからなる群より選択されることを特徴とするスピン伝導素子。
- 前記他の電極は、強磁性金属からなることを特徴とする請求項1に記載のスピン伝導素子。
- 前記スピン伝導素子は、前記強磁性電極及びトンネルバリアー層を備えるエミッタと、前記強磁性金属からなるベースと、半導体からなるコレクタとで構成されるスピンバルブトランジスタを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のスピン伝導素子。
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