JPWO2006112119A1 - 強磁性二重トンネル接合素子及び磁気デバイス - Google Patents

強磁性二重トンネル接合素子及び磁気デバイス Download PDF

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Abstract

室温で100%以上のTMR効果が得られ、TMRのバイアス電圧による低下が小さい強磁性二重トンネル接合素子(10)及びそれを用いた磁気デバイスであって、第1の強磁性層(13)と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層(14)と、第2の強磁性層(15)と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層(16)と、第3の強磁性層(17)とを基板(2)上に順次積層してなり、少なくとも第1及び第2の絶縁層(14,16)と第1及び第2の絶縁層(14,16)の間に挿入する第2の強磁性層(15)とが同一の結晶面を有する結晶であり、第2の強磁性層(15)の厚さを、第2の強磁性層(15)中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにする。微分トンネルコンダクタンスが、バイアス電圧変化で共鳴トンネル効果により振動する。

Description

本発明は、室温で100%以上のトンネル磁気抵抗(TMR)効果が得られる強磁性二重トンネル接合素子とこの強磁性二重トンネル接合を有する磁気デバイスに関する。
近年、強磁性層と非磁性金属層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)効果素子、及び強磁性層と絶縁体層と強磁性層からなる強磁性トンネル接合(MTJ)素子が、新しい磁界センサーや不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)素子として注目されている。
MTJ素子では、外部磁界によって2つの強磁性層の磁化を互いに平行あるいは反平行に制御することにより、膜面垂直方向のトンネル電流の大きさが互いに異なる、いわゆるトンネル磁気抵抗(TMR)効果が室温で得られる(非特許文献1参照)。このTMRは、用いる強磁性体と絶縁体との界面におけるスピン分極率Pに依存し、二つの強磁性体のスピン分極率をそれぞれP1 ,P2 とすると、一般に下記(1)式で与えられることが知られている。
TMR=2P1 2 /(1−P1 2 ) (1)
ここで、強磁性体のスピン分極率Pは、0<P≦1の値をとる。
最近、非特許文献2及び3により、MTJ素子において、(100)面を有するFe、MgO、Fe(以下、Fe/MgO/Feと表記する)を順に積層したエピタキシャル構造においては、理論計算により大きなTMRが得られることが報告された。
非特許文献4では、室温におけるTMRが88%と大きくできるFe/MgO/Fe構造のMTJ素子が報告された。さらに、TMR値が室温で180%に改良することができ、トンネルバリアの厚さを変化させると、TMRが振動することが非特許文献5で報告された。
非特許文献6及び7では、MTJ素子をCoFe/MgO/CoFeまたはCoFeB/MgO/CoFeB構造とすることにより、室温におけるTMRとして220〜230%が得られたことが報告された。上記非特許文献4〜7で報告されたTMR値は、従来の酸化膜をAlOxとしたMTJ素子のTMRである75%を凌いだ値である。
本発明者等による非特許文献8には、100%を超える大きなTMRが得られ、また、バイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることが可能な強磁性二重トンネル接合素子が報告されている。
T. Miyazaki and N. Tezuka, "Spin polarized tunneling in ferromagnet/insulator/ferromagnet junctions", 1995, J. Magn. Magn. Mater, L39, p.1231 W. H. Butler, X.-G. Zhang, T. C. Schulthess, and J. M. MacLaren, 2001, Phys. Rev. B 63, 054416 J. Mathon and A. Umerski, 2001, Phys. Rev. B 63, R220403 S. Yuasa, A. Fukushima, T. Nagahama, K. Ando, and Y. Suzuki, 2003, Jap. J. Appl. Phys. 43, L588 S. Yuasa, T. Nagahama, A. Fukushima, Y. Suzuki, and K. Ando, 2004, Nature Materials, Vol.3, p.868 S. S. Parkin, C. Kaiser, A. Panchula, P. M. Rice, B. Hughes, M. Samant, and S.-H. Yang, 2004, Nature Materials, Vol.3, p.868 D. D. Djayaprawira et al., 2005, Appl. Phys. Lett., Vol.86, p.092502 T. Nozaki, A. Hirohata, N. Tezuka, S. Sugimoto, and K. Inomata, published online in Appl. Phys. Lett. on 15 February, 2005, Vol.86, p.082501
MTJ素子は現在、ハードデイスク用磁気ヘッドに実用化され、さらに不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)への応用が期待されている。このMRAMでは、MTJ素子をマトリックス状に配置し、別に設けた配線に電流を流して磁界を印加することで、各MTJ素子を構成する二つの磁性層を互いに平行又は反平行に制御することにより、“1" ,“0" を記録させる。読み出しは、TMR効果を利用して行う。しかし、MRAMでは高密度化のために素子サイズを小さくすると、素子のバラツキに伴うノイズが増大し、TMRの値が現状では不足するという問題がある。したがって、より大きなTMRを示すMTJ素子を実現することが課題である。
MRAMでは読み出す際に、MTJ素子へ300mmV程度のバイアス電圧を加えるが、このバイアス電圧によってTMRが大きく低下する。従って、バイアス電圧によるTMR低下の小さいMTJ素子が望ましい。これを解決する方法の一つとして強磁性二重トンネル接合が知られている。しかしながら、従来の強磁性二重トンネル接合のTMRは50%以下であり、大容量MRAMに使えるような十分大きなTMRを得ることができなかった。また、従来のMRAMにおいては、メモリセルとしてMTJ素子とMOSトランジスタとを用いる必要があり、MTJ素子とMOSトランジスタとを集積するために工程が複雑である。
本発明は、上記課題に鑑み、室温で100%以上のTMR効果が得られ、かつ、TMRのバイアス電圧による低下が小さい、強磁性二重トンネル接合素子を提供することを第1の目的としている。
本発明は、また、室温で100%以上のTMR効果が得られ、かつ、TMRのバイアス電圧による低下が小さく、かつ、トンネルコンダクタンス又はトンネル電流が振動する、強磁性二重トンネル接合素子を提供することを第2の目的とし、この強磁性二重トンネル接合を有する磁気デバイスを提供することを第3の目的としている。
上記第1の目的を達成するため、本発明の強磁性二重トンネル接合素子は、第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が基板上に順次積層されてなり、少なくとも第1及び第2の絶縁層と、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であることを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、第2の強磁性層は、層状の連続膜である。
好ましくは、第1及び第2の絶縁層はMgOからなり、第1〜第3の強磁性層はFeからなる。このFeの一部を、Co又はNi、あるいは、その両方で置換したbcc構造からなるように形成してもよい。また、好ましくは、基板がMgOからなる。
上記構成によれば、室温において強磁性一重トンネル接合素子よりも大きいTMRが得られる。また、バイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることができる。したがって、本発明の強磁性二重トンネル接合素子によれば、MRAMの読み出し時に大きな信号電圧が得られる。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、強磁性二重トンネル接合素子において、特に、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁層の厚さを薄くし、かつ、積層膜全体が同じ結晶面をもつようにエピタキシャル成長させるか、または二つの絶縁層を同じ結晶面をもつ結晶相とし、二つの絶縁層に挟まれた中央の強磁性層をアモルファス合金にすれば、膜厚が均一でラフネスの小さい強磁性層が得られ、その結果スピンに依存した量子準位が形成され、それを介したトンネル磁気抵抗効果が得られるという知見を得て、本発明を完成するに至った。
上記第2の目的を達成するため、本発明の第2の構成による強磁性二重トンネル接合素子は、第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が基板上に順次積層されてなり、少なくとも第1及び第2の絶縁層と、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、第2の強磁性層の厚さを、第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子は、第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が基板上に順次積層されてなり、少なくとも第1及び第2の絶縁層が同一の結晶面を有する結晶であり、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層はアモルファス合金であり、第2の強磁性層の厚さを、第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする。
上記構成において、好ましくは、第2の強磁性層は層状の連続膜である。また、第2の強磁性層は島状に配列している。
第1及び第2の絶縁層はMgOからなり、第1〜第3の強磁性層はFeからなっていてよい。Feの一部を、Co又はNi、あるいは、その両方で置換したbcc構造から構成してもよい。好ましくは、基板はMgOからなり、アモルファス合金はCoFeBまたはCoFeSiBから成る。好ましくは、強磁性二重トンネル接合素子に印加されるバイアス電圧に対して、トンネルコンダクタンス又はトンネル電流が振動する。
上記構成によれば、バイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることができる。したがって、本発明の強磁性二重トンネル接合素子によれば、MRAMの読み出し時に大きな信号電圧が得られる。また、コンダクタンス又はトンネル電流がバイアス電圧に対して振動する。従って、本発明の強磁性二重トンネル接合素子を、MRAMのメモリセルに用いれば、セルの選択が可能となり、MOSトランジスタを用いる必要がなくなる。
上記第3の目的を達成するため、本発明は、第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合を用いた三端子素子であって、第1の強磁性層及び第3の強磁性層を主電極とし、第2の強磁性層を制御電極とし、少なくとも第1及び第2の絶縁層と、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、第2の強磁性層の厚さを、第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする。
上記構成によれば、コンダクタンスを電圧で制御できる強磁性二重トンネル接合を有する三端子素子が得られる。この三端子素子を従来のMRAMのMTJ素子の代わりに用いれば、大きなTMRが得られる。共鳴トンネル効果を利用することで、MTJ素子に電圧を印加した場合のみ大きな電圧が流れるのでセル選択が可能となる。それと同時にセルの選択が可能になるので、MOSトランジスタを必要としないMRAMのメモリセルを構成できる。さらには、MRAMなどのメモリ以外に、例えばロジック回路などにも使用することができる。
本発明の第2の構成による不揮発性ランダムアクセス磁気メモリは、第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合を、二つのビット線が交差する各位置にマトリックス状に配設して成り、少なくとも第1及び第2の絶縁層と、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、第2の強磁性層の厚さを第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする。
上記構成によれば、強磁性二重トンネル接合を、従来のMRAMのMTJ素子の代わりに用いれば、大きなTMRが得られる。共鳴トンネル効果を利用することで、MTJ素子に電圧を印加した場合のみ大きな電圧が流れるのでセル選択が可能となる。それと同時に、セルの選択が可能になるので、従来のMRAMのメモリセルに用いられていたMOSトランジスタが不要となる。
本発明の第3の構成による不揮発性ランダムアクセス磁気メモリは、第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合を用いた三端子素子を、ワード線とビット線とが交差する各位置にマトリックス状に配設して成り、少なくとも第1及び第2の絶縁層と、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、第2の強磁性層の厚さを第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする。
上記構成によれば、強磁性二重トンネル接合を有する三端子素子を、従来のMRAMのMTJ素子の代わりに用いれば、大きなTMRが得られる。共鳴トンネル効果を利用することで、MTJ素子に電圧を印加した場合のみ大きな電圧が流れるのでセル選択が可能となる。それと同時に、従来のMRAMのメモリセルに用いられていたMOSトランジスタが不要となる。さらには、MRAMなどのメモリ以外に、例えばロジック回路などにも使用することができる。
本発明によれば、二つのトンネル絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層の厚さを適当に制御すれば、結晶配向性を保持してエピタキシャル成長させることができ、100%を超える大きなTMRが得られ、バイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることが可能である。例えば、MRAMに用いることでより大きな信号電圧を得ることができる。
本発明の第2の構成による強磁性二重トンネル接合素子によれば、二つのトンネル絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層の厚さを適当に制御すれば、結晶配向性を保持してエピタキシャル成長させることができ、100%を超える大きなTMRが得られ、バイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることが可能である。また、トンネルコンダクタンス又はトンネル電流がバイアス電圧に対して振動する。これによって、例えば、MRAMに用いることでより大きな信号電圧を得ることができるとともに、メモリセルにMOSトランジスタを必要としないMRAMを構成できる。さらには、メモリ以外に、例えばロジックなどにも使用することができる。
また、本発明の強磁性二重トンネル接合を用いた三端子素子によれば、二重トンネル接合のコンダクタンスを電圧で制御できる三端子素子を提供することができる。
この三端子素子を従来のMRAMのMTJ素子の代わりに用いれば、大きなTMRが得られる。それと同時に、従来のMRAMで必要であったMTJ素子に接続していたMOSトランジスタを用いない、新規な不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)セルを構成することができる。さらには、メモリ以外に、例えばロジックなどにも使用することができる。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子を模式的に示す断面図である。 実施例1の強磁性二重トンネル接合素子の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。 比較例1の強磁性一重トンネル接合素子の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。 実施例1の強磁性二重トンネル接合素子及び比較例1の強磁性一重トンネル接合素子の規格化TMRのバイアス電圧依存性を示す図である。 本発明の強磁性二重トンネル接合素子を模式的に示す断面図である。 本発明の強磁性二重トンネル接合素子の変形例を模式的に示す断面図である。 本発明の強磁性二重トンネル接合素子の動作を模式的に示す図である。 本発明の強磁性二重トンネル接合素子における、トンネル注入の透過確率のバイアス電圧依存性を模式的に示す図である。 (A),(B)は、それぞれ、本発明の強磁性2重トンネル接合素子の磁化において、平行及び反平行を説明する図である。 図9(A)及び(B)のトンネル透過率のバイアス電圧依存性を示す図である。 本発明の強磁性二重トンネル接合素子において、さらに、別の変形例の構造を模式的に示す部分断面図である。 本発明の第3の実施形態による強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子の動作を説明する模式的な図である。 (A),(B)はそれぞれ、強磁性二重トンネル接合素子を用いたMRAMの模式的な斜視図と、その動作を説明する回路図である。 (A),(B)はそれぞれ、強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子を用いたMRAMの模式的な斜視図と、その動作を説明する回路図である。 (A),(B)は、それぞれ、実施例2の強磁性二重トンネル接合素子及び比較例2の強磁性一重トンネル接合素子の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。 実施例2の強磁性二重トンネル接合素子及び比較例2の強磁性一重トンネル接合素子における、規格化TMRのバイアス電圧依存性を示す図である。 (A)〜(E)及び(F)は、それぞれ、実施例2及び比較例2の微分トンネルコンダクタンスのバイアス電圧依存性を示す図である。 実施例2及び比較例2のトンネルコンダクタンスの差分ΔGを示す図である。 実施例2の第2の強磁性層の厚さtが1.2nmの強磁性二重トンネル接合素子における、微分トンネルコンダクタンスのバイアス電圧依存性を示す図である。 実施例2の成長膜断面において、第2の強磁性層が島状となった場合の透過型電子顕微鏡像を示す図である。 実施例3の成膜中にその場観察した反射型高速電子線回折像を示す図である。 成膜したFe及びMgOの結晶配列を模式的に示す図である。 実施例3の強磁性二重トンネル接合素子の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。 実施例3において、微分トンネルコンダクタンスに対する第2の強磁性層の膜厚依存性を示す図である。 実施例3において、微分トンネルコンダクタンスに対する温度依存性を示すもので、(A)は第2の強磁性層の厚さが1.2nm、(B)は1.5nmの場合を示す。 実施例3の強磁性二重トンネル接合素子のバンドダイアグラムを示す図である。 第2の強磁性層のバンドダイヤグラムで、(A)は上向きスピン電子の場合を、(B)は下向きスピン電子(ダウンスピン)の場合を示している。
符号の説明
1,10,20,25:強磁性二重トンネル接合素子
2,12:基板
3,13:第1の強磁性層
4:第1の絶縁層
5:第2の強磁性層
6:第2の絶縁層
7:第3の強磁性層
10A,10B:電極
13A:(電極)主電極
14:第1の絶縁層
15,18:第2の強磁性層
15A,15B,15C,15D:島状の第2の強磁性層
16:第2の絶縁層
16A,16B,16C,16D:島状の第2の絶縁層
17:第3の強磁性層
22:強磁性一重トンネル接合素子
26:島状の強磁性二重トンネル接合素子
30:強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子
31,32:主電極
33:制御電極
35:直流電源
36:制御用直流電源
38:第3の強磁性層を通過する電子
40,50:不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)
41:X方向のビット線
42:Y方向のビット線
51:ビット線
52:ワード線
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の強磁性二重トンネル接合素子を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明の強磁性二重トンネル接合素子1は、基板2上に、第1の強磁性層3と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層4と、第2の強磁性層5と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層6と、第3の強磁性層7と、からなる層が順次積層されて構成されている。
ここで、少なくとも、第1及び第2の絶縁層4,6と第1及び第2の絶縁層4,6の間に挿入される第2の強磁性層5とは同一の結晶面を有する結晶である。この場合、第2の強磁性層5の厚さを適当に制御し、結晶配向性を保持していれば、本発明の強磁性二重トンネル接合素子1のTMRを大きくすることができる。他の強磁性層3,7は、第1及び第2の絶縁層4,6及び第2の強磁性層5と同じ結晶面を有する結晶層から形成されてもよい。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子1は、上記基板上の各層2〜7と同じ結晶面を有する基板2上に、エピタキシャル成長により形成することができる。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子1において、基板としては(100)面のMgOを用い、第1〜3の強磁性層3,5,7として(100)面のFeを、そして、第1及び第2の絶縁層4,5として(100)面のMgOを、それぞれ用いることができる。この強磁性二重トンネル接合素子1は、例えば分子線エピタキシャル成長法(MBE)を用いて、(100)面を主表面とするMgO基板2に、第1の強磁性層3、第1の絶縁層4、第2の強磁性層5、第2の絶縁層6、第3の強磁性層7の順にエピキシャル成長させることで、製作することができる。上記基板2と第1の強磁性層3との間には、バッファ層や基板と同じ材料からなる所謂シード層を挿入してもよい。最上層の第3の強磁性層7の表面には電極層を形成してもよい。
第1〜第3の強磁性層3,5,7において、Feの一部を、Co又はNi、あるいは、その両方で置換したbcc(体心立方格子)構造から構成してもよい。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子1において、二つのトンネル絶縁層4,6の間に挿入される第2の強磁性層5の厚さを適当に制御すれば、結晶配向性を保持して、エピタキシャル成長をさせることができる。この場合、第2の強磁性層5を、層状の連続膜とすることによりTMRを大きくすることができる。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子1によれば、100%を超える大きなTMRが得られる。また、バイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることが可能である。したがって、本発明の強磁性二重トンネル接合素子1をMRAMに用いることでより大きな信号電圧を得ることができる。
次に、実施例1により本発明をさらに詳しく説明する。
分子線エピタキシャル成長法(MBE)を用いてMgO基板2上に、MgO(10)/Fe(50)/MgO(2)/Fe(t)/MgO(2)/Fe(20)(カッコ内は膜厚、単位はnm)の順にエピタキシャル成長を行ない、実施例の強磁性二重トンネル接合素子1となるエピタキシャル成長膜を作製した。
最初の10nmのMgO層はシード層であり、中間の第2の強磁性層5であるFe層の厚さは1〜2.5nmまで変化させたのでFe(t)と表記している。結晶成長中に反射型高速電子線回折(RHEED)の回折パターン測定を行ない、上記各層がエピタキシャル成長していることを確認した。
次に、上記エピタキシャル成長膜を、フォトリソグラフィとArイオンミリングを用いて10×10μm2 の大きさに微細加工して、実施例1の強磁性二重トンネル接合素子1を製作した。
実施例1と対比するために、MgO基板上に、MgO(10)/Fe(50)/MgO(2)/Fe(1.5)/Co(10)の各層を順にエピタキシャル成長した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の強磁性一重トンネル接合素子を製作した。
実施例1の強磁性二重トンネル接合素子1及び比較例の強磁性一重トンネル接合素子について、4端子法を用いてコンダクタンス及びトンネル磁気抵抗(TMR)の印加電圧依存性を測定した。
図2は、実施例1の強磁性二重トンネル接合素子1の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。図において、横軸は外部磁界(エルステッド、Oe)を、縦軸は抵抗×面積(kΩμm2 )を示す。第2の強磁性層5であるFeの厚さは1.5nmである。また、バイアス電圧は、上部電極側を正としたときの5mVである。図から明らかなように、低磁界で抵抗が大きく変化し、室温で110%という大きなTMRが得られ、比較例1の強磁性一重トンネル接合素子よりも大きなTMRであることが分かった。
図3は、比較例1の強磁性一重トンネル接合素子の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。図の横軸及び縦軸とバイアス電圧とは、図2と同じである。図から明らかなように、TMRは88%であった。
以上の実施例1の強磁性二重トンネル接合素子及び比較例1の強磁性一重トンネル接合素子において、大きなTMRが得られることは、各層がエピタキシャル成長により形成されていることを示している。
図4は、実施例1の強磁性二重トンネル接合素子1及び比較例1の強磁性一重トンネル接合素子の規格化TMRのバイアス電圧依存性を示す図である。図において、横軸は上部電極を正側とするバイアス電圧(V)を示し、縦軸は規格化TMRである。図から明らかなように、黒丸印(●)で示す強磁性二重トンネル接合素子1の方が、正バイアス側において、白丸印(○)で示す強磁性一重トンネル接合素子よりもTMRの低下は小さいことが分かる。一方、負バイアス側においては、両者のバイアス電圧(V)依存性は、殆ど同じである。これは実施例1の二重トンネル接合における一方の接合の界面状態が悪いためであり、本質的には負バイアス側においても正バイアス側と同等のバイアス電圧依存性が得られる。
本発明の第2の構成に係る強磁性2重トンネル接合素子について図5〜8を参照して説明する。
図5は本発明の第2の構成に係る強磁性二重トンネル接合素子を模式的に示す断面図である。図5に示すように、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10は、基板12上に、第1の強磁性層13と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層14と、第2の強磁性層15と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層16と、第3の強磁性層17と、からなる層が順次積層されて構成されている。この場合、第2の強磁性層15の厚さを薄くして、その内部に量子準位を形成するようにしている。少なくとも、第1及び第2の絶縁層14,16と第1及び第2の絶縁層14,16の間に挿入される第2の強磁性層15とが同一の結晶面を有する結晶である。
図6は、本発明の強磁性二重トンネル接合素子の変形例20を模式的に示す断面図である。図6に示すように、この変形例の強磁性二重トンネル接合素子20が、図5に示す強磁性二重トンネル接合素子10と異なるのは、強磁性二重トンネル接合素子10の第2の強磁性層15を、アモルファス合金からなる強磁性層18に代えた点である。第2の強磁性層をアモルファス合金からなる強磁性層18とした点以外の構成は、強磁性二重トンネル接合素子10と同じであるので説明は省略する。
上記本発明の強磁性二重トンネル接合素子10,20において、第2の強磁性層15,18の厚さを薄くして、その内部に量子準位を形成するようにしている。そして、少なくとも、第1及び第2の絶縁層14,16と第1及び第2の絶縁層14,16の間に挿入される第2の強磁性層15とが同一の結晶面を有する結晶であるか、又は、第2の強磁性層18はアモルファス合金である。このアモルファス合金からなる第2の強磁性層18は、第1及び第2の絶縁層が同じ結晶面をもつ結晶相としその間に挿入すればよい。この場合、第2の強磁性層15,18の厚さを薄くなるよう制御し、結晶配向性を保持していれば、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10,20において、所謂共鳴トンネル効果が生起する。本発明の強磁性二重トンネル接合素子10及び20は同様に動作するので、異なる部分以外は、強磁性二重トンネル接合素子10で説明する。
他の強磁性層13,17は、第1及び第2の絶縁層14,16及び第2の強磁性層15と同じ結晶面を有する結晶層から形成されてもよい。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子10は、上記基板上の各層12〜17と同じ結晶面を有する基板12上に、エピタキシャル成長により形成することができる。
図7は、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10の動作を模式的に示すもので、図7(A)〜(C)はバンドダイアグラムを、図7(D)は得られるJ−V特性を示す図である。図7(A)〜(C)は素子上部、すなわち、第3の強磁性層17を正側とした場合のバイアス電圧を0から増大させたときのバンドダイアグラムであり、そのときのバイアス電圧に対する電流密度(J−V)を図7(D)においてa,b,cとして示している。図示するように、第1の強磁性層13と、トンネル注入のバリアとなる第1の絶縁層14と、第2の強磁性層15と、トンネル注入のバリアとなる第2の絶縁層16と、第3の強磁性層17(以下、適宜、強磁性層13/絶縁層14/強磁性層15/絶縁層16/強磁性層17と呼ぶ)からなる強磁性二重トンネル接合素子10において、中央の第2の強磁性層15が薄い場合、エネルギー準位が量子化される。この強磁性二重トンネル接合素子10にバイアス電圧を印加し、量子準位と同じエネルギーになると電子はトンネルしやすくなり、トンネルコンダクタンス又はトンネル電流が図7(D)のように振動する。これが共鳴トンネル効果である。
図8は、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10における、トンネル電流の透過確率のバイアス電圧依存性を模式的に示す図である。図8において、横軸はバイアス電圧、縦軸はトンネル電流の際の透過確率、すなわちトンネル確率である。図示するように、第2の強磁性層15には複数の量子準位があるので、バイアス電圧を印加すると、それに応じて共鳴トンネル効果が繰り返し生じるようになる。これにより、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10においては、バイアス電圧を印加したときに、バイアス電圧に応じてトンネルコンダクタンスには、振動が生じるようになる。
図9(A),(B)は、それぞれ、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10の磁化において、平行及び反平行を説明する図で、図10は図9(A)及び(B)のトンネル透過率のバイアス電圧依存性を示す図である。図9(A)に示すように、上向きの矢印(↑)で示す磁化が互いに平行である場合とは、第1及び第3の強磁性層13,17の磁化と第2の強磁性層15の磁化とが、同じ向きである。一方、反平行とは、図9(B)に下向きの矢印で示すように、第2の強磁性層15における磁化の向き(↓)が、第1及び第3の強磁性層13,17の磁化(↑)とは反対方向に向く場合を示している。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子10の場合には、第2の強磁性層15を薄くすることにより、スピンに依存した量子準位が形成されるので、両端の第1及び第3の強磁性層13,17の磁化と中央の第2の強磁性層15の磁化とが互いに平行の場合と反平行の場合とでは、スピン依存共鳴トンネル効果が生じる。このため、第2の強磁性層15の磁化の向きにより、図10に示すように、共鳴トンネル効果のバイアス電圧依存性がシフトする。この場合、強磁性二重トンネル接合素子20のように、第2の強磁性層18をアモルファス合金とした場合、より膜厚が均一で、表面粗さ(ラフネス)の小さい磁性超薄膜を作製することが可能であり、スピンに依存した量子準位である量子井戸を形成できるので、スピン依存共鳴トンネル効果が生じる。このようなスピン依存共鳴トンネル効果はこれまで観測された例がなく、本発明者らにより、世界で最初に見出されたものである。
したがって、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10,20において、スピン依存共鳴トンネル効果を効果的に得るためには、第1及び第2の絶縁層14,16と、第2の強磁性層15,18とが原子層オーダーで平坦な層であることが好ましい。特に、第2の強磁性層15,18が層状の連続膜であることが好ましい。一般に絶縁層の上に金属の超薄膜を原子層オーダーで均一に形成することは困難である。逆に、金属の上に絶縁層の超薄膜を原子層オーダーで均一に形成することも困難である。このような場合には、強磁性二重トンネル接合素子20のように、第2の強磁性層18をアモルファス合金とすれば、より膜厚が均一でラフネスの小さい磁性超薄膜を作製することができる。
図11は、本発明の強磁性二重トンネル接合素子において、さらに、別の変形例25の構造を模式的に示す部分断面図である。図11に示すように、第1の絶縁層14上には、島状の第2の強磁性層15A,15B,15Cと、これらの強磁性層上に形成される第2の絶縁層16A,16B,16Cとが形成されている。第1の絶縁層4上の第2の強磁性層15A,15B,15Cが形成されない表面には、直接、第2の絶縁層16Dが形成されている。第2の絶縁層上には第3の強磁性層17が形成されている。
上記構造では、島状に形成される第2の強磁性層15と第2の絶縁層16と、が原子層オーダーで平坦な層であり、結晶配向性を保持していれば、それぞれ、強磁性二重トンネル接合素子26として動作する。そして、島状部が形成されない領域は、第1の強磁性層13と、第1及び第2の絶縁層14,16Dとからなる絶縁層と、第3の強磁性層17と、からなる強磁性一重トンネル接合22となっている。なお、島状に形成される第2の強磁性層15はアモルファス合金層で形成してもよい。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子10,25において、基板としては(100)面のMgOを、第1〜3の強磁性層13,15,17として(100)面のFeを、そして、第1及び第2の絶縁層14,15として(100)面のMgOを、それぞれ用いることができる。この強磁性二重トンネル接合素子10,25は、例えば分子線エピタキシャル成長法(MBE)や超高真空中のスパッタ法を用いて、(100)面を主表面とするMgO基板12に、強磁性層13、絶縁層14、強磁性層15、絶縁層16、強磁性層17の順にエピキシャル成長させることで、製作することができる。上記基板12と第1の強磁性層13との間には、バッファ層や、基板と同じ材料からなる所謂シード層を挿入してもよい。また、最上層となる第3の強磁性層17の表面には電極層を形成してもよい。
第2の強磁性層15がアモルファス合金層からなる強磁性二重トンネル接合素子20の場合においても、第2の強磁性層15の形成以外は、上記と同様にして製作することができる。
第1〜第3の強磁性層13,15,17において、Feの一部を、Co又はNi、あるいは、その両方で置換したbcc(体心立方格子)構造から構成してもよい。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子10,25において、二つのトンネル絶縁層14,16の間に挿入される第2の強磁性層15の厚さを適当に制御すれば、結晶配向性を保持して、エピタキシャル成長をさせることができる。また、本発明の強磁性二重トンネル接合素子20の場合には、第2のアモルファス合金からなる強磁性層18の厚さを適当に制御してもよい。何れの場合も、第2の強磁性層15,18を、層状の連続膜や島状とすることにより、スピンに依存した量子準位を介したトンネル効果やスピン依存共鳴トンネル効果を効果的に得ることができる。本発明の強磁性二重トンネル接合素子10,20,25においては、100%を超える大きなTMRとバイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることが可能である。したがって、例えばMRAMに用いることでより大きな信号電圧を得ることができる。
次に、本発明の強磁性二重トンネル接合素子を用いた磁気デバイスについて説明する。最初に、本発明の第3の実施形態に係る強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態による強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子の動作を説明する模式図である。図示するように、強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30において、第1及び第3の強磁性層13,17には、それぞれ主電極となる電極31,32が設けられ、第2の強磁性層15には、制御電極となる電極33が設けられている。一方の主電極31には、直流電源35の負極が接続され、その正極が電流計を介して他方の主電極32に接続されている。制御電極33には、制御用直流電源36の負極が接続され、その正極が直流電源35の正極に接続されている。
このように構成される強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30は、第1及び第3の強磁性層13,17を通過する電子38が、第2の強磁性層15の電極33に印加される制御用直流電源36で制御される。この場合、第2の強磁性層15への電圧制御により、スピンに依存した共鳴トンネル効果を変化させることができる。このため、本発明の強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30によれば、主電極31,32間のトンネルコンダクタンスを電圧で制御できる。したがって、主電極31及び32間のトンネルコンダクタンスの振動を、制御電極33に印加する電圧により変化させることができる。
また本発明の強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30においては、素子両端の第1及び第3の強磁性層13,17の磁化と第2の強磁性層15の磁化と、が互いに平行及び反平行の場合では、トンネル確率が異なる。このため、第2の強磁性層15の磁化の向きにより、共鳴トンネル効果のバイアス電圧依存性をシフトさせることができる。上記の強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30において、第2の強磁性層15は、アモルファス合金からなる強磁性層18であってもよい。また、第2の強磁性層15,18は、層状または島状であってもよい。
本発明の強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30によれば、コンダクタンスを電圧で制御できる三端子素子が得られる。この三端子素子を従来のMRAMのMTJ素子の代わりに用いれば、大きなTMRが得られる。共鳴トンネル効果を利用することで、MTJ素子に電圧を印加した場合のみ大きな電圧が流れるのでセル選択が可能となる。それと同時にセルの選択が可能になるので、MOSトランジスタを必要としないMRAMのメモリセルを構成できる。さらには、MRAMのメモリセル以外に、例えば、ロジック回路用の三端子素子などにも使用することができる。
次に、強磁性二重トンネル接合素子を用いた別の構成の不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)への応用について説明する。
図13(A),(B)はそれぞれ、強磁性二重トンネル接合素子を用いたMRAMの模式的な斜視図と、その動作を説明する回路図である。図13において、MRAM40は、X方向のビット線41とY方向のビット線42とが交差する各位置にマトリクス状に強磁性二重トンネル接合素子10を配設した構成である。強磁性二重トンネル接合素子1の第1及び第3の強磁性層13,17には、電極10A,10Bが設けられ、それぞれ、Y方向のビット線42とX方向のビット線41に接続している。このMRAM40においては、マトリクスを構成する各強磁性二重トンネル接合素子10に直接電流を流してスピン反転を行なうことで書き込みができる。この場合、第2の強磁性層15の磁化を、第1及び第3の強磁性層13,17の磁化に対して、互いに平行又は反平行に制御することにより“1" ,“0" の記録、つまり、書き込みができる。
一方、読み出しは、TMR効果を利用して行なう。TMRの測定は、第2磁性層15の磁化反転が生じないように、上記書き込み時の電流とは異なる電流で行なえばよい。このため、本実施形態のMRAM40では、第2磁性層15の磁化が平行か反平行かで“1" ,“0" の情報を規定でき、第2磁性層15の磁化は電源を切っても保持されるから不揮発メモリにできる。これにより、本発明のMRAM40では大きなTMRが得られる。共鳴トンネル効果を利用することで、MTJ素子に電圧を印加した場合のみ大きな電圧が流れるのでセル選択が可能となる。それと同時に、従来のMRAMで必要であったMTJ素子に接続していたMOSトランジスタを不要とする、新規なMRAMセルを構成することができる。
次に、強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子の不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)への応用について説明する。
図14(A),(B)はそれぞれ、強磁性二重トンネル接合素子による三端子素子を用いたMRAMの模式的な斜視図と、その動作を説明する回路図である。図14において、MRAM50は、ワード線52とビット線51とが交差する各位置に、マトリクス状に強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30を配設した構成である。三端子素子30は、電流及び電圧の制御によるスイッチ作用があるので、従来のMRAMに対して、MTJ素子に接続するMOSトランジスタが不要となる。
このMRAM50では、別に設けた配線に電流を流して磁界を印加することで、各三端子素子30を構成する第2の磁性層15の磁化を、第1及び第3の強磁性層13,17の磁化に対して、互いに平行又は反平行に制御することにより、“1" ,“0" を記録させることができる。一方、読み出しは、TMR効果を利用して行なう。このため、本実施形態のMRAM50では、第2の磁性層15の磁化が平行か反平行かで“1" ,“0" の情報を規定でき、第2の磁性層15の磁化は電源を切っても保持されるから不揮発メモリのMRAM50にできる。
本発明に係るMRAM50においては、強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30は、100%を超える大きなTMRを有し、バイアス電圧によるTMRの低下を小さく抑えることが可能である。したがって、従来のMTJ素子より大きな信号電圧を得ることができる。共鳴トンネル効果を利用することで、MTJ素子に電圧を印加した場合のみ大きな電圧が流れるのでセル選択が可能となる。それと同時に、従来のMRAMで必要であったMOSトランジスタを使用しないメモリセルを構成することができる。
上記構成の本発明の強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30やそれを用いた不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ40,50などの磁気デバイスは、以下のようにして製作することができる。
最初に、基板12上に、強磁性二重トンネル接合となる第1の強磁性層13と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層14と、第2の強磁性層15と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層16と、第3の強磁性層17と、を順にMBE法などのエピタキシャル成長法により堆積する。この基板12として、MgO基板や、絶縁層で被覆したSi基板にMgOを堆積した基板を用いることができる。アモルファス合金からなる第2の強磁性層18は、第1及び第2の絶縁層14,16を同じ結晶面をもつ結晶相とし、その間に挿入すればよい。このアモルファス合金層となる磁性超薄膜は、超高真空中のスパッタ法により形成することができる。第3の強磁性層17上には、電極層を形成してもよい。そして、所定の厚さの絶縁膜を、スパッタ法やCVD法により堆積をする。
次に、主電極となる第1及び第3の強磁性層13,17と、制御電極となる第3の強磁性層17と、に電極を形成する領域の開口を行ない、必要に応じてエッチングを行なって各電極31,32,33が形成される領域を露出させる。
続いて、各電極31,32,33を形成する領域の露出部に、所定の厚さの金属膜をスパッタ法などにより堆積し、余分な金属膜を選択エッチングにより除去する。以上の工程で、強磁性二重トンネル接合素子を用いた三端子素子30を製造することができる。
MRAM40,50やロジック用の集積回路の場合には、上記の工程で製作した強磁性二重トンネル接合素子30上をさらに絶縁膜で被覆し、強磁性二重トンネル接合素子30の配線をする箇所だけに窓開けをした後に、ビット線41,42,51やワード線52の配線を行なえばよい。また、MRAMの周辺回路をSiのMOSトランジスタで形成する場合には、最初に、Siの周辺回路を形成し、その後で、MRAM40,50のメモリセルを形成してもよい。各材料の堆積には、スパッタ法やCVD法以外には、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法などの通常の薄膜成膜法を用いることができる。所定の形状の電極や集積回路の配線を形成するためのマスク工程には、光露光やEB露光などを用いることができる。
実施例2により本発明をさらに詳しく説明する。
分子線エピタキシャル成長法(MBE)を用いてMgO基板12上に、MgO(10)/Fe(50)/MgO(2)/Fe(t)/MgO(2)/Fe(15)/Ta(5)(カッコ内は膜厚、単位はnm)の順にエピタキシャル成長を行ない、実施例2の強磁性二重トンネル接合素子10となるエピタキシャル成長膜を作製した。
最初の10nmのMgO層はシード層であり、中間の第2の強磁性層15であるFe層の厚さは1〜2.5nmまで変化させたのでFe(t)と表記している。この第2の強磁性層15の成膜速度は約0.02Å/秒であった。最上層の5nmの厚さのTaは、電極層である。そして、成長中に反射型高速電子線回折(RHEED)の回折パターン測定を行ない、上記各層がエピタキシャル成長していることを確認した。
次に、上記エピタキシャル成長膜を、フォトリソグラフィとArイオンミリングを用いて10×10μm2 の大きさに微細加工して、実施例2の強磁性二重トンネル接合素子10を製作した。
次に、比較例2について説明する。
MgO基板上に、MgO(10)/Fe(50)/MgO(2.5)/Fe(1.5)/Co(10)/Ta(5)の各層を順にエピタキシャル成長した以外は、実施例2と同様にして、比較例2の強磁性一重トンネル接合素子を製作した。
実施例2の強磁性二重トンネル接合素子10及び比較例2の強磁性一重トンネル接合素子の各種測定結果を以下に説明する。
最初に、4端子法を用いてコンダクタンス及びトンネル磁気抵抗(TMR)の印加電圧依存性を測定した。
図15(A),(B)は、それぞれ、実施例2の強磁性二重トンネル接合素子10及び比較例2の強磁性一重トンネル接合素子の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。図において、横軸は外部磁界(エルステッド、Oe)を示し、縦軸は抵抗×面積(kΩμm2 )を示す。第2の強磁性層15であるFeの厚さtは、実施例2の場合、1.5nmである。また、バイアス電圧は、上部電極側を正としたときの5mVである。図15から明らかなように、実施例2及び比較例2のTMRは、それぞれ、110%、128%であり、何れも100%を超えており、エピタキシャル成長していることを示している。
図16は、実施例2の強磁性二重トンネル接合素子10及び比較例2の強磁性一重トンネル接合素子における、規格化TMRのバイアス電圧依存性を示す図である。図において、横軸は上部電極を正側とするバイアス電圧(V)を示し、縦軸は規格化TMRである。図から明らかなように、黒丸印(●)で示す強磁性二重トンネル接合素子10の方が、正バイアス側において、白丸印(○)で示す強磁性一重トンネル接合素子よりもTMRの低下は小さいことが分かる。一方、負バイアス側においては、両者のバイアス電圧(V)依存性は殆ど同じである。これは実施例2の二重トンネル接合における一方の接合の界面状態が悪いためであり、本質的には負バイアス側においても正バイアス側と同等のバイアス電圧依存性が得られる。
図17(A)〜(E)及び(F)は、それぞれ、実施例2及び比較例2の微分トンネルコンダクタンスのバイアス電圧依存性を示す図である。図において、横軸は上部電極を正側とするバイアス電圧(V)を、縦軸は微分トンネルコンダクタンス(×10-3Ω-1)を示している。図17(A)〜(E)において、第2の強磁性層15であるFe層の厚さは、それぞれ、1.0nm,1.2nm,1.3nm,1.5nm,2nmであり、第2の強磁性層15の磁化は、第1及び第3の強磁性層15,17の磁化と平行である。図から明らかように、トンネルコンダクタンスはバイアス電圧に対して振動していることがわかる。図17(F)には、比較のため、強磁性一重トンネル接合素子に対する結果も示している。この比較例2では振動が観測されなかった。
上記の測定で観測された振動成分を明確化し、真の振動成分のみ取り出すために、正バイアス側と負バイス側のトンネルコンダクタンスGP ,GN の差分、ΔG(ΔG=GP −GN )のバイアス電圧依存性を計算した。図18は、実施例2及び比較例2のトンネルコンダクタンスの差分ΔGを示す図である。図において、横軸は上部電極を正側とするバイアス電圧(V)を示し、縦軸はトンネルコンダクタンスの差分ΔG(×10-6Ω-1)を示している。図18から明らかなように、実施例の強磁性二重トンネル接合素子10においては、第2の強磁性層15であるFe層の厚さtが1.3nmより薄くなったときに、振動が観測されることが分かった。振動のピークを示すバイアス電圧の間隔ΔEは、200mVから300mVであることが分かった。これに対して、比較例2の強磁性一重トンネル接合素子では、ΔGがほぼ0であり、振動は観測されなかった。
上記の第2の強磁性層15であるFe層の厚さtが1.3nmより薄くなったときに観測される振動は、第1及び第2の絶縁層14,16であるMgOバリアで挟まれたFeからなる第2の強磁性層15中に量子井戸が形成され、そのエネルギー準位が不連続になったためと考えられる。すなわち、この振動は共鳴トンネル効果によるものである。そのため第2の強磁性層15の厚さtが薄くなるほど、量子準位の間隔が広がるため、振動の山の位置は、厚さtが薄くなるほどより大きな電圧側に移行している。
上記の不連続な量子準位は、Feからなる第2の強磁性層15が磁性体のため、スピンに依存することが考えられる。それを確認するため、中央の第2の強磁性層15の磁化と両端の第1及び第3の強磁性層13,17の磁化とが、互いに平行及び反平行な場合の微分トンネルコンダクタンスのバイアス電圧依存性を調べた。
図19は、実施例2の第2の強磁性層5の厚さtが1.2nmの強磁性二重トンネル接合素子10における、微分トンネルコンダクタンスのバイアス電圧依存性を示す図である。図において、横軸は上部電極を正側とするバイアス電圧(V)を示し、右及び左縦軸は、それぞれ、各強磁性層13,15,17の磁化が平行な場合と、反平行の場合の微分トンネルコンダクタンス(×10-3Ω-1)を示している。図19から明らかなように、両者の微分トンネルコンダクタンスの上向きの矢印(↑)で示すピークの位置はわずかではあるがずれており、これは中央の薄い第2の強磁性層15中にはスピンに依存した量子準位が形成されていることを示している。
実施例2及び比較例2で形成した成長膜の断面を、透過型電子顕微鏡で観察した。実施例2及び比較例2において、第2の強磁性層15は、それぞれ、連続薄膜が形成される場合と、島状になる場合の両方が観測された。
図20は、実施例2の成長膜断面において、第2の強磁性層15が島状となった場合の透過型電子顕微鏡像である。図示するように、第1の絶縁層14には島状の結晶である第2の強磁性層15が形成されており、島の大きさは20〜60nm程度であった。
次に、実施例3を説明する。
実施例2の強磁性二重トンネル接合素子10における第3の強磁性層17であるFeを20nmとした以外は同様にして、分子線エピタキシャル成長法でMgO基板12上に、MgO(10)/Fe(50)/MgO(2)/Fe(t)/MgO(2)/Fe(20)/Ta(5)(カッコ内は膜厚、単位はnm)の順にエピタキシャル成長を行ない、実施例3の強磁性二重トンネル接合素子10となるエピタキシャル成長膜を作製した。第2の強磁性層15であるFe層の厚さは1,1.2,1.5nmまで変化させたのでFe(t)と表記している。分子線エピタキシャル成長装置の背圧(Base Pressure)は5×10-8Paであった。第1の強磁性層13の成膜後には300℃で60分の熱処理を行ない、第2及び第3の強磁性層の成膜後には200℃で60分の熱処理を行なった。
図21は、実施例3の成膜中にその場観察した反射型高速電子線回折像を示し、図22は、成膜したFe及びMgOの結晶配列を模式的に示す図である。
図21(A)〜(F)は基板の成膜順の各層からの電子線回折像であり、(A)は第1の強磁性層13であるFeの熱処理後の[110]方向を、(B)は第1の絶縁層14であるMgOの成膜後の[100]方向を、(C)は第2の強磁性層15であるFeの成膜直後の、(D)は第2の強磁性層15であるFeの熱処理後の、(E)は第2の絶縁層16であるMgOの成膜後の、(F)は第3の強磁性層17であるFeの熱処理後の、電子線回折像をそれぞれ示している。
図21(C)から明らかなように、第2の強磁性層15のFeは、成膜直後は結晶方位が揃ってないことが分かる。図21(D)からは、第2の強磁性層15のFeの熱処理後には、ストリーク状の電子線回折となり、格子面方位が揃い、所謂エピタキシャル成長していることが確認できた。図22は、このようにして形成したエピタキシャル成長膜のFe,Mg,Oの結晶配列を示しており、Feの格子定数は4.05Åで、MgOの格子定数は4.21Åである。
上記エピタキシャル成長膜を、電子ビームリソグラフィとArイオンミリングを用いて10×10μm2 の大きさに微細加工して、実施例3の強磁性二重トンネル接合素子10を製作した。
次に、比較例3について説明する。
第1〜第3の強磁性層の成膜後の熱処理を行なわない以外は、実施例3と同様にして、比較例3の強磁性二重トンネル接合素子を製作した。
実施例3及び比較例3の強磁性二重トンネル接合素子10の測定結果を下記に説明する。最初に、4端子法を用いてコンダクタンス及びトンネル磁気抵抗(TMR)の印加電圧依存性を測定した。
図23は、実施例3の強磁性二重トンネル接合素子10の低バイアス電圧における室温でのTMR曲線を示す図である。図において、横軸は外部磁界(エルステッド、Oe)を示し、縦軸は抵抗(kΩ)を示す。第2の強磁性層15であるFeの厚さtは、1.5nmである。また、バイアス電圧は、上部電極側を正としたときの5mVである。この場合、強磁性二重トンネル接合素子10の第2の強磁性層15が島状となっており、第2の強磁性層15の磁化はランダムな方向を向いている。図23から明らかなように、実施例3のTMRは、室温で110%であった。図示しないが、4.5KにおけるTMRは128%であった。何れの温度でもTMRは100%を超えており、強磁性二重トンネル接合素子10の各層がエピタキシャル成長していることを示している。実施例3の規格化TMRのバイアス電圧依存性についても、実施例2の強磁性二重トンネル接合素子10と同様に、比較例2の強磁性一重トンネル接合素子よりもTMRの低下は小さいことが判明した。
図24は、実施例3の強磁性二重トンネル接合素子10において、微分トンネルコンダクタンスのバイアス電圧変化における第2の強磁性層15の膜厚依存性を示す図である。図において、横軸は上部電極を正側とするバイアス電圧(V)を示し、縦軸は微分トンネルコンダクタンス(dI/dV)(任意目盛)を示している。測定温度は4.5Kである。図24において、第2の強磁性層15のFe層の厚さは、それぞれ、1.0nm,1.2nm,1.3nm,1.5nmの場合を示し、第2の強磁性層15の磁化は、第1及び第3の強磁性層15,17の磁化と平行である。図から明らかように、トンネルコンダクタンスはバイアス電圧に対して振動していることがわかる。観測される振動は、第1及び第2の絶縁層14,16であるMgOバリアで挟まれたFeからなる第2の強磁性層15中に量子井戸が形成され、そのエネルギー準位が不連続になったためと考えられる。すなわち、この振動は共鳴トンネル効果によるものである。このため第2の強磁性層15の厚さtが薄くなるほど、量子準位の間隔が広がるため、振動の山の位置は、厚さtが薄くなるほどより大きな電圧側に移行している。
図25は、実施例3の強磁性二重トンネル接合素子10において、微分トンネルコンダクタンスのバイアス電圧変化における温度依存性を示す図で、図25(A)は第2の強磁性層の厚さが1.2nm、(B)が1.5nmの場合を示す。図において、横軸は上部電極を正側とするバイアス電圧(V)、縦軸は微分トンネルコンダクタンス(dI/dV)(任意目盛)を示している。測定温度は、4.5K,100K,200K,300Kである。第2の強磁性層15の磁化は、第1及び第3の強磁性層15,17の磁化と平行である。図25から明らかなように、微分トンネルコンダクタンスにおける振動が、室温でも観測できることが分かった。
上記の第2の強磁性層15であるFe層の厚さtが1.5nmより薄くなったときに観測される振動は、第2の強磁性層15であるFeの上向きスピン(アップスピン)のΔ1バンドが量子準位を形成していることによっている。
図26は、実施例3の強磁性二重トンネル接合素子のバンドダイアグラムを示す。図26(A)及び(B)は、それぞれ、図7(B)、図7(C)に相当し、薄い第2の強磁性層15であるFeには、上向きスピンによるΔ1バンドが量子準位を形成していることを示している。この強磁性二重トンネル接合素子10にバイアス電圧を印加し、量子準位と同じエネルギーになると電子はトンネルしやすくなり、トンネルコンダクタンスが共鳴トンネル効果により振動する。
図27は、第2の強磁性層のバンドダイヤグラムで、(A)は上向きスピン電子の場合を、(B)は下向きスピン電子(ダウンスピン)の場合を示している。図27において、横軸は波数を示し、縦軸はエネルギーを示している。図から明らかなように、上向きスピン電子の場合には、Δ1バンドが形成されていることが分かる。
(比較例3)
強磁性層の成膜後に熱処理を施さなかった比較例3の強磁性二重トンネル接合素子では、実施例2及び実施例3で観測された微分トンネルコンダクタンスにおける振動が全く観測されなかった。
上記実施例2及び3によれば、本発明の強磁性二重トンネル接合素子10,25を用いれば大きなTMRを得ることができる。また、第2の強磁性層15の厚さtを適当に制御すれば、スピンに依存した量子井戸を形成でき、トンネルコンダクタンスのバイアス電圧による振動を観測できた。第2の強磁性層15は、エピタキシャル成長していれば島状でもよく、連続膜であれば、より明瞭なトンネルコンダクタンスの振動を観測できた。そのような連続膜は、第2の強磁性層15を変えることで可能である。例えば、CoFeBのようなアモルファス磁性層を用いることで連続膜の作製が可能である。
本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。

Claims (17)

  1. 第1の強磁性層と、
    トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、
    第2の強磁性層と、
    トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、
    第3の強磁性層と、が基板上に順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合素子であって、
    少なくとも上記第1及び第2の絶縁層と、該第1及び第2の絶縁層の間に挿入される上記第2の強磁性層とが、同一の結晶面を有する結晶であることを特徴とする、強磁性二重トンネル接合素子。
  2. 前記第2の強磁性層が、層状の連続膜であることを特徴とする、請求項1に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  3. 前記第1及び第2の絶縁層がMgOからなり、前記第1〜第3の強磁性層がFeからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  4. 前記Feの一部を、Co又はNi、あるいは、その両方で置換したbcc構造からなることを特徴とする、請求項3に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  5. 前記基板がMgOからなることを特徴とする、請求項1に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  6. 第1の強磁性層と、
    トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、
    第2の強磁性層と、
    トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、
    第3の強磁性層と、が基板上に順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合素子であって、
    少なくとも上記第1及び第2の絶縁層と、該第1及び第2の絶縁層の間に挿入される上記第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、
    上記第2の強磁性層の厚さを、該第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする、強磁性二重トンネル接合素子。
  7. 第1の強磁性層と、
    トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、
    第2の強磁性層と、
    トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、
    第3の強磁性層と、が基板上に順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合素子であって、
    少なくとも第1及び第2の絶縁層が同一の結晶面を有する結晶であり、第1及び第2の絶縁層の間に挿入される第2の強磁性層はアモルファス合金であり、第2の強磁性層の厚さを、第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする、強磁性二重トンネル接合素子。
  8. 前記第2の強磁性層が、層状の連続膜であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  9. 前記第2の強磁性層が、島状に配列していることを特徴とする、請求項6又は7に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  10. 前記第1及び第2の絶縁層がMgOからなり、前記第1〜第3の強磁性層がFeからなることを特徴とする、請求項6に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  11. 前記第1及び第2の絶縁層がMgOからなり、前記第1及び第3の強磁性層がFeからなり、前記アモルファス合金が、CoFeB又はCoFeSiBからなることを特徴とする、請求項7に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  12. 前記Feの一部を、Co又はNi、あるいは、その両方で置換したbcc構造からなることを特徴とする、請求項10又11に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  13. 前記基板がMgOからなることを特徴とする、請求項6又は7に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  14. 前記強磁性二重トンネル接合素子に印加されるバイアス電圧に対して、トンネルコンダクタンス又はトンネル電流が振動することを特徴とする、請求項6又は7に記載の強磁性二重トンネル接合素子。
  15. 第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合を用いた三端子素子であって、
    上記第1の強磁性層及び第3の強磁性層を主電極とし、上記第2の強磁性層を制御電極とし、
    少なくとも上記第1及び第2の絶縁層と、該第1及び第2の絶縁層の間に挿入される上記第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、
    上記第2の強磁性層の厚さを、該第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする、強磁性二重トンネル接合を用いた三端子素子。
  16. 第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合を、二本のビット線が交差する各位置にマトリクス状に配設した不揮発性ランダムアクセス磁気メモリであって、
    少なくとも上記第1及び第2の絶縁層と、該第1及び第2の絶縁層の間に挿入される上記第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、
    上記第2の強磁性層の厚さを、該第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする、不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ。
  17. 第1の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、第2の強磁性層と、トンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、第3の強磁性層と、が順次積層されてなる強磁性二重トンネル接合を用いた三端子素子を、ワード線とビット線とが交差する各位置にマトリクス状に配設した不揮発性ランダムアクセス磁気メモリであって、
    少なくとも上記第1及び第2の絶縁層と、該第1及び第2の絶縁層の間に挿入される上記第2の強磁性層と、が同一の結晶面を有する結晶であり、
    上記第2の強磁性層の厚さを、該第2の強磁性層中にスピンに依存した複数の量子準位が形成されるようにしたことを特徴とする、不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ。
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