JP3618686B2 - 帯状金属薄板の突合せ接合装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にコイル状に巻き取られている帯状金属薄板(以下ワークと呼ぶ)からリードフレームやシャーシ類、パイプ等の各種製品を連続的に生産するプレスラインや造管ライン等に於いて利用されるものであり、加工中のワークの終端部と新しいワークの始端部とをTIG溶接により突合せ溶接する帯状金属薄板の突合せ接合装置の改良に関するものである。
【0002】
【従前の技術】
一般に、ワークを連続的に供給しながらリードフレーム等の部品を成形加工するプレスラインに於いては、プレス型内へワークを挿入するための手数を省くため、繰り出し中のワークの終端部が近づくと、ワークの供給を止めてその終端部へ、新たなワークの始端部を突合せ溶接し、その後新しいワークをプレスラインへ連続的に供給するようにしている。
【0003】
ところで、上述の如きワークの突合せ溶接に於いては、溶接部の機械的強度の確保だけでなく、溶接部の仕上げ精度例えば溶接部の厚さや直線性等の点でも高精度が要求される。何故なら、溶接部の仕上げ精度が悪いと、プレス型に損傷を生じたり、溶接部を含んだ成形加工品の品質が極端に悪くなるからである。そのため、この種のワークの突合せ接合装置や接合方法については、各種の開発が行われており、実用にも供されている。
【0004】
図6乃至図9は従来のワークの突合せ接合装置の一例を示すものであり、本願発明者が先に特許第2899276号として公開しているものである。
即ち、前記突合せ接合装置は、図6に示す如く、ワークW1,W2が載置される作業用テーブル30を設けたキャビネット本体31と、ワークW1,W2の終端部及び始端部を直線状に切断する切断装置32と、ワークW1,W2の終端部と始端部とを突合せ溶接する溶接装置33と、ワークW1,W2の溶接部を圧延して溶接部の厚みを均一化する圧延装置34と、ワークW1,W2の終端部上面及び始端部上面を保持する上部クランプ35と、ワークW1,W2の終端部及び始端部を作業用テーブル30の上面へ保持固定するワーククランプ36と、溶接条件や電極位置等を設定するメーター類を設けた操作パネル37と、切断装置32や溶接装置33等を作動させる操作スイッチ38盤等から構成されており、キャビネット本体31の内部には、切断装置32や溶接装置33、圧延装置34等の駆動用モータ及び駆動用シリンダ(何れも図示省略)、各駆動用モータ及び駆動用シリンダの制御装置(図示省略)、溶接用ガスボンベ及びその附属品(何れも図示省略)、溶接用電源装置及びその制御装置(何れも図示省略)等が格納されている。
【0005】
尚、図7乃至図9に於いて、39は溶接用トーチ、40はタングステン電極棒、41は下部クランプ、42はエアシリンダ、43は押えガイド板、44はセンター基準板、45はセンター押え板、45aはセンター押え板45の凹部、46はアークガイドねじ、W1′,W2′はワークW1,W2の切断端部、Lは作業用テーブル30上面と下部クランプ41上面の段差、Gは上部クランプ35間の隙間である。
【0006】
而して、前記突合せ接合装置を用いたワークW1,W2の突合せ接合に際しては、先ず加工中のワークW1の終端部及び新しいワークW2の始端部を切断装置を用いて切断する。次に、新しいワークW2の始端部をワーククランプ36及び押えガイド板43の下方へ通し、その切断端面をセンター基準板44の側面へ当接させた後、ワーククランプ36によりワークW2を固定する。同様に、加工中のワークW1の切断端面をセンター基準板44の他方の側面へ当接させた後、ワーククランプ36によりワークW1を固定する。
【0007】
両ワークW1,W2の始端部及び終端部のクランプが終了すれば、上部クランプ35を下部クランプ41の上方位置へ移動させた後、図9に示すように、センター押え板45を上部クランプ35間の隙間Gを通して上方より挿入し、センター基準板44の上端部をセンター押え板45の凹部45a内へ嵌合させ、ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′を下部クランプ41上へ押圧する。
【0008】
その後、センター押え板45を下方へ押えつつエアシリンダ42によって下部クランプ41を上方ヘ移動させ、両ワークW1,W2及びセンター押え板45と一緒に、下部クランプ41を作業用テーブル30と同一高さ位置まで持ち上げる。このとき、センター基準板44の下端部がキャビネット本体31側へ固定されているため、センター基準板44の上端部は下部クランプ41の上昇に伴って両ワークW1,W2の切断端部の間から引き抜かれる。又、下部クランプ41の上昇作動時に、両ワークW1,W2の終端部及び始端部に、作業用テーブル30上面と下部クランプ41上面との間に設けた段差Lに相当する左右方向への移動量の余裕が生じる。然も、下部クランプ41の上昇作動時には、両ワークW1,W2の終端部及び始端部に撓みが生じる。従って、両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′は、センター基準板44の上端部が両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′の間から引き抜かれた際に、ワークW1,W2自体が持っている弾性力によって若干量だけ左右方向へ移動し、両切断端部W1′,W2′の端面同士が正確に突き合された状態で、上部クランプ35の先端部底面と下部クランプ41の上面との間で緊密に挾持固定される。尚、人手によって保持されていたセンター押え板45は、適宜に取り除かれる。
【0009】
両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′のクランプが終了すれば、溶接装置33を作動させて溶接装置33の溶接用トーチ39を所定の位置まで自動的に下降させる。即ち、溶接用トーチ39のタングステン電極棒40の先端がアークガイドねじ46の頭部頂面近傍まで下降され、頭部頂面とタングステン電極棒40との間にアークが発生される。アークが発生すると、タングステン電極棒40は所定の速度でワークW1,W2の幅方向へ移動される。これにより、発生したアークは、アークガイドねじ46の頭部外周縁に形成したテーパ面を経過してワークW1,W2の突合せ部の一端部へ引き継がれ、引き続きワークW1,W2の突合せ部のTIG溶接が行われる。
【0010】
ワークW1,W2の突合せ部の他端まで溶接が完了すると、アークがストップされると共に、溶接装置33が上昇されて元の位置まで引き戻される。又、ワークW1,W2の突合せ部の溶接が終れば、ワークW1,W2の溶接部を圧延装置34の下方へ移動させて圧延装置34の圧延ローラによって圧延し、その厚みを均一化する。その後、突合せ接合されたワークW1,W2は、突合せ接合装置からフリーにされてプレス工程等へ送られて行く。
【0011】
上述した特許第2899276号に係るワークW1,W2の突合せ接合装置は、▲1▼薄板のワークW1,W2であっても両ワークW1,W2の切断端面を簡単且つ正確に突き合すことができ、部分的な重なりや間隙の全くない理想的な突合せ接合部を溶接することになるため、高精度な溶接ができること、▲2▼発生したアークがアークガイドねじ46を通してワークW1,W2の突合せ部の端部へ引き継がれるため、アークが不安定になったりすることがなく、理想的な溶接を高能率で行える等の優れた実用的効用を奏するものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許第2899276号に係るワークW1,W2の突合せ接合装置にも解決すべき問題が残されている。
即ち、ワークW1,W2が軟らかい材質の金属材(例えはアルミやアルミ合金等)で形成されている場合やワークW1,W2の厚みが20μm〜50μmの場合には、ワークW1,W2自体の持っている弾性力が小さいため、作業用テーブル30の上面よりも下降した位置にある下部クランプ41を上昇させたときに、両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′が左右方向へ移動せず、撓んだ状態のままで下部クランプ41と一緒に上昇することになる。その結果、両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′の端面同士が完全に突き合わされず、ワークW1,W2の突合せ接合部に部分的な間隙等が生じることになる。
このように、両ワークW1,W2の切断端面の突き合せが完全でないと、溶接部に部分的な溶け込み不良を生じたり、溶接部の厚み斑、穴あき、溶接部の曲り等を生ずることになり、プレス工程等に於いて様々な不都合を生じることになる。
【0013】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、ワークの材質や厚みに関係なく、加工中のワークと新しいワークの切断端面同士の突き合せを確実且つ正確に行えるようにした帯状金属薄板の突合せ接合装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、帯状金属薄板の切断端面同士を突き合せ固定し、この突合せ部をTIG溶接装置により溶接するようにした帯状金属薄板の突合せ接合装置に於いて、帯状金属薄板を載置する作業用テーブルと、作業用テーブルの上方に間隔を空けて対向状に配設した上部クランプと、作業用テーブルの中央部に上下動自在に配設され、作業用テーブルの上面より下方に位置して作業用テーブルと同一高さ位置まで押し上げられる下部クランプと、下部クランプの中央部に上下動自在に配設された垂直状のセンター基準板と、センター基準板の両側に位置して下部クランプに配設され、作業用テーブルの上面に載置された両帯状金属薄板の端部を真空吸着により下部クランプ上面へ吸引固定する真空吸引機構とを具備したことに特徴がある。
【0015】
本発明の請求項2の発明は、真空吸引機構が、下部クランプのセンター基準板の両側に位置する部分にワークの幅方向に一定の間隔を空けて直列状に配置された複数の真空吸引部を備えており、帯状金属薄板を下部クランプに載置したときに、帯状金属薄板の下方に位置する真空吸引部のみが作動するように構成されていることに特徴がある。
【0016】
本発明の請求項3の発明は、真空吸引機構の各真空吸引部が、下部クランプの上面に形成され、常時真空吸引されている凹状の吸引穴と、吸引穴に気密状に挿着され、中央部に空気が吸引される貫通孔を形成したピン押えと、ピン押えの貫通孔に遊嵌状態で上下動自在に挿通され、スプリングにより上方ヘ附勢されて上端が下部クランプの上面より突出するピンと、ピン側に設けられ、ピンが上方ヘ附勢されているときにピン押えの貫通孔をシールするシール材とから成り、帯状金属薄板が下部クランプの上面に載置されたときに、下部クランプの上面から突出するピンが押し下げられてピン押えの貫通孔が開放され、吸引穴内へ空気が吸引されるように構成されていることに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項4の発明は、各真空吸引部の吸引穴の内周縁部に帯状金属薄板の裏面へ密着し得る環状部材を挿着し、下部クランプの上面と帯状金属薄板の下面との間から空気が漏洩しないようにしたことに特徴がある。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図5は本発明の実施の形態に係る帯状金属薄板W1,W2(以下ワークW1,W2と呼ぶ)の突合せ接合装置の要部を示すものであり、当該突合せ接合装置は、コイル状に巻き取られているワークW1,W2から各種製品を連続的に大量生産する生産ライン、例えばリードフレーム等を連続的に大量生産するプレスラインに設置されて居り、プレス加工中のワークW1の終端部とこれに続く新しいワークW2の始端部とを突合せ溶接により接合し、ワークW1,W2を連続してプレスライン上へ供給できるようにしたものである。
【0019】
即ち、前記突合せ接合装置は、ワークW1,W2が載置される作業用テーブル1を設けたキャビネット本体(図示省略)と、加工中のワークW1の終端部及び新しいワークW2の始端部を直線状に切断する切断装置(図示省略)と、両ワークW1,W2の切断端部同士を突合せ溶接する溶接装置2と、ワークW1,W2の溶接部を圧延して溶接部の厚みを均一化する圧延装置(図示省略)と、両ワークW1,W2の切断端部の上面を夫々保持する左右の上部クランプ3と、両上部クランプ3との間で両ワークW1,W2の切断端部を挾持固定する下部クランプ4と、ワークW1,W2の切断端面の位置決めを行うセンター基準板5と、両ワークW1,W2の終端部及び始端部を作業用テーブル1の上面へ保持固定する左右のワーククランプ6と、両ワークW1,W2の端部を真空吸着により下部クランプ4上へ吸引固定する真空吸引機構7等から構成されており、キャビネット本体の内部には、切断装置や溶接装置2、圧延装置等の駆動用モータ及び駆動用シリンダ(何れも図示省略)、各駆動用モータ及び駆動用シリンダの制御装置(図示省略)、溶接用ガスボンベ及びその附属品(何れも図示省略)、溶接用電源装置及びその制御装置(何れも図示省略)等が格納されている。
【0020】
尚、図1及び図2に於いて、1aは作業用テーブル1に形成した凹部、8は下部クランプ4を上下動させるエアシリンダ、9はバックバー、10はバックバー9を上下動させるエアシリンダ、11は溶接用トーチ、12はタングステン電極棒、13は真空吸引部、14は吸引穴、15はピン押え、15aはピン押え15の貫通孔、16はピン、17はスプリング、18はシール材、19は環状部材である。
【0021】
又、切断装置、溶接装置2及び圧延装置等は、キャビネット本体に形成した作業用テーブル1の奥部に前後方向へ移動自在に配設されており、ワークW1,W2の切断時、ワークW1,W2の接合時、ワークW1,W2の溶接部の圧延時に作業用テーブル1上へ引き出されるようになっている。これら各装置(切断装置、溶接装置2及び圧延装置等)は、従来公知のものと同様構造に構成されているため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0022】
前記作業用テーブル1は、キャビネット本体の前面側の中間部に水平状に形成されており、その中央部には後述する下部クランプ4が収納される長方形状の凹部1aが形成されている。
【0023】
前記左右の上部クランプ3は、加工中のワークW1の切断端部の上面と新しいワークW2の切断端部の上面を夫々保持するものであり、作業用テーブル1の奥部に前後方向へ水平移動自在に支持され、ワークW1,W2のクランプ時に作業用テーブル1の上方へ送り出されてくる。
即ち、両上部クランプ3は、銅材により形成されており、僅かな間隙を置いて対向状に配設されている。又、両上部クランプ3は、その先端部3aが断面形状三角状に形成されており、この先端部3a底面でもって両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′の上面を保持するようになっている。
そして、両上部クランプ3は、ワークW1,W2のクランプ時に作業用テーブル1の奥部から前方へ水平移動され、作業用テーブル1の凹部1aの上方位置に水平姿勢で保持される。このとき、両上部クランプ3の先端部3a下面は、作業用テーブル1の上面と略同一高さレベルに保持されている。
【0024】
前記下部クランプ4は、銅材から成る厚肉の平板状に形成されており、作業用テーブル1の中央部に形成した凹部1a内に上下方向へ移動自在に配設され、エアシリンダ8により上下動するようになっている。
即ち、下部クランプ4は、平常時(エアシリンダ8の非作動時)にはその上面が図1に示すように作業用テーブル1の上面よりも所定の距離L(L=2〜6mm)だけ下方に位置するように配設されており、ワークW1,W2のクランプ時にはエアシリンダ8によりその上面が図1の位置から2〜6mm上方へ持ち上げられ、作業用テーブル1の上面と同じ水平位置まで上昇するようになっている。これによって、両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′は、上部クランプ3と下部クランプ4との間で堅固に挾持固定されることになる。
又、下部クランプ4の中央部表面には、銅製のバックバー9がその上面を下部クランプ4の上面と同じ高さにした状態で上下方向へ移動自在に嵌め込まれており、当該バックバー9はエアシリンダ10により上下動して作業用テーブル1の上面と同一高さ位置になるようになっている。このバックバー9は、溶接金属の溶け落ち防止と裏側のシールドを行うものであり、その表面及び内部にはシールドガス(不活性ガス)が流れる溝9a及び通路9bが夫々形成されている。
尚、作業テーブル1上面と下部クランプ4上面との段差距離Lは、ワークW1,W2の厚さに応じて適宜に調整可能な構成となっている。
【0025】
前記センター基準板5は、下部クランプ4の中央部に垂直姿勢で且つ上下方向へ移動自在に配設されている。
即ち、センター基準板5は、その厚さが0.1〜0.3mm程度の薄板鋼板により形成されており、バックバー9の溝9aに垂直姿勢で着脱自在に嵌め込まれ、エアシリンダ10によりバックバー9と一緒に上下動するようになっている。このセンター基準板5は、上昇時にはその上端が作業用テーブル1の上面より僅かに上方へ突出するようになっている。
尚、この実施の形態に於いては、センター基準板5を上下動するバックバー9に着脱自在に取り付け、バックバー9と一緒にエアシリンダ10により上下動させるようにしたが、センター基準板5を下部クランプ4に単独で上下動するように配設し、当該センター基準板5をエアシリンダ10により上下動させるようにしても良い。
【0026】
前記左右のワーククランプ6は、加工中のワークW1の切断端面及び新しいワークW2の切断端面から60〜100mm程度の部分を作業用テーブル1上へ保持固定するものである。この両ワーククランプ6は、図4に示す如く、断面形状逆L字型の押え爪体20と、押え爪体20の下面側に貼着したナイロン製又はウレタン製のクッション材21と、押え爪体20を上下動させるエアシリンダ22とから成り、エアシリンダ22が作業用テーブル1に保持固定されていると共に、エアシリンダ22のピストンロッドに押え爪体20が支持固定されている。尚、23は挿入したワークW1,W2の位置を規制するストッパーである。
【0027】
前記真空吸引機構7は、センター基準板5の両側位置で且つ下部クランプ4に配設されており、作業用テーブル1の上面に載置された両ワークW1,W2の端部を真空吸着により下部クランプ4の上面へ吸引固定するものである。
即ち、真空吸引機構7は、下部クランプ4のセンター基準板5の両側に位置する部分にワークW1,W2の幅方向に一定の間隔を空けて直列状に配置され、真空吸引によりワークW1,W2の端部を吸引する複数の真空吸引部13と、各真空吸引部13に配管及び電磁弁等を介して接続された真空ポンプ(何れも図示省略)とから成り、ワークW1,W2の幅に応じて適宜の真空吸引部13が作動するように構成されている。
又、各真空吸引部13は、図3(A)及び(B)に示す如く、下部クランプ4の上面に形成され、常時真空吸引されている凹状の吸引穴14と、吸引穴14に気密状に挿着され、中央部に空気が吸引される貫通孔15aを形成したピン押え15と、ピン押え15の貫通孔15aに遊嵌状態で上下動自在に挿通され、スプリング17により上方ヘ附勢されて上端が下部クランプ4の上面より突出するピン16と、ピン16側に設けられ、ピン16が上方ヘ附勢されているときにピン押え15の貫通孔15aをシールするシール材18(Oリング)とから夫々構成されている。
更に、各真空吸引部13の吸引穴14の内周縁部には、下部クランプ4の上面とワークW1,W2の下面との間から空気が漏洩しないようにワークW1,W2の裏面へ密着し得る環状部材19が挿着されている。この環状部材19は、ナイロンやウレタン等により形成されている。
【0028】
而して、前記真空吸引機構7に於いては、真空ポンプ(図示省略)が常時作動されており、下部クランプ4上へワークW1,W2が載せられたときだけ、ワークW1,W2の下方に位置する真空吸引部13のみが作動し、ワークW1,W2の端部を真空吸着により下部クランプ4上へ吸引固定するようになっている。
即ち、下部クランプ4上へワークW1,W2が載せられていないときには、ピン16がスプリング17により常時上方ヘ押し上げられており、これによってピン16に設けたシール材18がピン押え15の貫通孔15aを閉鎖し、吸引穴14への空気の吸引がストップされている(図3(A)参照)。
この状態でワークW1,W2が下部クランプ4の上面に載せられると、下部クランプ4の上面から突出するピン16がワークW1,W2の自重により下方へ押し下げられ、ピン押え15の貫通孔15aが開放される(図3(B)参照)。このとき、真空ポンプが常時作動して吸引穴14内へ空気を常時吸引するようにしているため、吸引穴14内へ空気が吸引されることになる。これに伴って、ワークW1,W2の端部の下面が真空吸引により真空吸引部13へ吸引固定される。又、ワークW1,W2の下面に環状部材19が当接するため、ワークW1,W2の下面と下部クランプ4の上面との間から空気が漏れることがなく、ワークW1,W2は下部クランプ4の上面へ確実且つ良好に吸引固定される。
【0029】
尚、図示していないが、下部クランプ4には、特許第2899276号に係る突合せ接合装置と同様に初期アークを発生させるアークガイドねじが設けられている。このアークガイドねじは、銅材により円柱状に形成されており、両ワークW1,W2の突合せ部の側方に設けられ、下部クランプ4に高さ位置を調整可能にねじ込み固定されている。又、アークガイドねじの頭部は、平面状に形成されており、その外周縁部にはテーパ面が設けられている。
【0030】
次に、前記突合せ接合装置を用いて加工中のワークW1の終端部と新しいワークW2の始端部とを接合する場合について説明する。
【0031】
尚、ワークW1,W2には、厚みが20μmm〜2.0mm程度の鉄、アルミ、アルミ合金、銅、銅合金、チタン、ステンレス、軟鋼、ケイ素鋼等のワークW1,W2が使用されている。又、溶接電流、溶接速度、不活性ガスの供給量、溶接用トーチの移動速度、タングステン電極棒の先端形状等の溶接条件は、ワークW1,W2の材質、板厚、幅等に応じて最適の条件下に設定されていることは勿論である。
【0032】
先ず、加工中のワークW1の終端部及び新しいワークW2の始端部を切断装置により直線状に切断すると共に、センター基準板5の上端が作業用テーブル1の上面より上方へ突出するようにバックバー9をエアシリンダ10により上昇させる。
【0033】
次に、一方のワークW2の切断端部W2′の端面をセンター基準板5の一方の側面へ当接させ、ワーククランプ6によりワークW2を作業用テーブル1上へ固定し、その後バックバー9をその上面が下部クランプ4の上面と同一位置になるようにエアシリンダ10に下降させる。そうすると、ワークW2の端部が下部クランプ4の上面に載せられた状態となり、ワークW2の下方に位置する真空吸引部13のピン16がワークW2の自重により下方へ押し下げられ、ピン押え15の貫通孔15aが開放されて吸引穴14内へ空気が吸引される。これによって、一方のワークW2の端部が真空吸引により下部クランプ4上へ吸引固定される。又、ワークW2の下面に環状部材19が当接するため、ワークW2の下面と下部クランプ4の上面との間から空気が漏れることがなく、ワークW2は下部クランプ4の上面へ確実且つ良好に吸引固定される。
【0034】
その後、センター基準板5をバックバー9から取り除くと共に、他方のワークW1の端部を下部クランプ4の上面に載せ、その切断端部W1′の端面を目視によって先に下部クランプ4上へ吸引固定されているワークW2の切断端部W2′の端面に突き合せ、ワーククランプ6によりワークW1を作業用テーブル1上へ固定する。このとき、ワークW1の下方に位置する真空吸引部13のピン16がワークW1により下方へ押し下げられ、ピン押え15の貫通孔15aが開放されて吸引穴14内へ空気が吸引される。これによって、他方のワークW1の端部が真空吸引により下部クランプ4上へ吸引固定される。従って、両ワークW1,W2は、その切断端部W1′,W2′が完全に突き合された状態で下部クランプ4上へ吸引固定されることになる。又、ワークW1の下面に環状部材19が当接するため、ワークW1の下面と下部クランプ4の上面との間から空気が漏れることがなく、ワークW1は下部クランプ4の上面へ確実且つ良好に吸引固定される。
【0035】
両ワークW1,W2の端部が下部クランプ4の上面へ突き合された状態で吸引固定されると、上部クランプ3を下部クランプ4の上方位置へ移動させ、その後下部クランプ4をその上面が作業用テーブル1の上面と同一高さ位置になるようにエアシリンダ8により上方へ移動させる。このとき、両ワークW1,W2は、切断端面同士が完全に突き合された状態で下部クランプ4と一緒に上方へ持ち上げられるため、その切断端部の端面同士が正確且つ確実に突き合された状態で、上部クランプ3と下部クランプ4との間で緊密に挾持固定されることになる。
【0036】
そして、両ワークW1,W2の切断端部W1′,W2′のクランプが終了すれば、溶接装置2を作動させ、溶接用トーチ11を所定の位置まで自動的に下降させる。即ち、溶接用トーチ11のタングステン電極棒12の先端は、アークガイドねじの頭部頂面付近まで下降され、頭部頂面とタングステン電極棒12との間でアークが発生される。
【0037】
前記アークが発生すると、タングステン電極棒12は、所定の速度でワークW1,W2の幅方向へ移動され、発生したアークはアークガイドねじの外周縁部に形成したテーパ面を経過してワークW1,W2の突合せ部端部へ引き継がれ、引き続き突合せ部の溶接が行われる。このとき、アークがアークガイドねじのテーパ面を通してワークW1,W2の突合せ端部へ引き継がれるため、アークが不安定になったり、或いは溶接部の端部近傍に溶け落ち等を生じることがない。
【0038】
ワークW1,W2の突合せ部の他端まで溶接が完了すると、アークがストップされると共に、溶接装置2が元の位置まで戻される。最後に、ワークW1,W2の溶接部を圧延装置の下方へ移動させ、溶接部を圧延してその厚みを均一化する。
加工中のワークW1の終端部に接合された新しいワークW2は、突合せ接合装置からフリーにされることによってプレス工程等へ送られて行く。
【0039】
【発明の効果】
上述の通り、本発明の帯状金属薄板の突合せ接合装置は、下部クランプに帯状金属薄板の端部を下部クランプ上面へ真空吸着する真空吸引機構を設けているため、この真空吸引機構を用いることによって、両帯状金属薄板の切断端部を完全に突き合せた状態で下部クランプ上へ吸引固定することができる。その結果、帯状金属薄板の材質が軟らかい場合や帯状金属薄板の厚みが20μmm〜50μmmのように極めて薄い場合であっても、両帯状金属薄板の切断端部を正確且つ且つ確実に突き合せた状態で上部クランプと下部クランプとの間で挾持固定することができ、理想的な突合せ接合部の溶接を行える。
又、真空吸引機構は、下部クランプの幅方向に一定の間隔を空けて直列状に配置された複数の真空吸引部を備え、帯状金属薄板の下方に位置する真空吸引部のみが作動するようにしているため、帯状金属薄板の幅に関係なく、帯状金属薄板を下部クランプの上面へ確実且つ良好に吸引固定することができる。
更に、真空吸引部は、常時真空吸引されている吸引穴に、空気が吸引される貫通孔を形成したピン押えと、ピン押えの貫通孔を開閉するシール材を設けたピンと、シール材により貫通孔が閉鎖されるようにピンを附勢するスプリングとを夫々装着し、下部クランプの上面から突出するピンが帯状金属薄板により押し下げられたときに、ピン押えの貫通孔が開放されて吸引穴内へ空気が吸引されるように構成されているため、帯状金属薄板を下部クランプに載置するだけで下部クランプ上面へ吸引固定することができ、至極便利である。
然も、各真空吸引部の吸引穴の内周縁部には、帯状金属薄板の裏面へ密着する環状部材を挿着しているため、下部クランプの上面と帯状金属薄板の下面との間から空気が漏洩することがなく、帯状金属薄板を下部クランプ上面へより確実且つ良好に吸引固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る帯状金属薄板の突合せ接合装置の要部を示す縦断面図である。
【図2】同じく突合せ接合装置の要部を示す平面図である。
【図3】真空吸引機構の真空吸引部の拡大縦断面図である。
【図4】ワーククランプの拡大縦断面図である。
【図5】真空吸引機構により帯状金属薄板の端部を下部クランプ上へ吸引固定した状態の突合せ接合装置の要部の縦断面図である。
【図6】従来の突合せ接合装置の正面図である。
【図7】同じく従来の突合せ接合装置の要部を示す縦断面図である。
【図8】同じく従来の突合せ接合装置の要部を示す平面図である。
【図9】帯状金属薄板の突合せ部に於ける拡大断面図である。
【符号の簡単な説明】
1は作業用テーブル、2は溶接装置、3は上部クランプ、4は下部クランプ、5はセンター基準板、7は真空吸引機構、13は真空吸引部、14は吸引穴、15はピン押え、15aは貫通孔、16はピン、17はスプリング、18はシール材、19は環状部材、W1,W2は帯状金属薄板(ワーク)。
Claims (4)
- 帯状金属薄板(W1),(W2)の切断端面同士を突き合せ固定し、この突合せ部をTIG溶接装置(2)により溶接するようにした帯状金属薄板(W1),(W2)の突合せ接合装置に於いて、帯状金属薄板(W1),(W2)を載置する作業用テーブル(1)と、作業用テーブル(1)の上方に間隔を空けて対向状に配設した上部クランプ(3)と、作業用テーブル(1)の中央部に上下動自在に配設され、作業用テーブル(1)の上面より下方に位置して作業用テーブル(1)と同一高さ位置まで押し上げられる下部クランプ(4)と、下部クランプ(4)の中央部に上下動自在に配設された垂直状のセンター基準板(5)と、センター基準板(5)の両側に位置して下部クランプ(4)に配設され、作業用テーブル(1)の上面に載置された両帯状金属薄板(W1),(W2)の端部を真空吸着により下部クランプ(4)上面へ吸引固定する真空吸引機構(7)とを具備したことを特徴とする帯状金属薄板の突合せ接合装置。
- 真空吸引機構(7)は、下部クランプ(4)のセンター基準板(5)の両側に位置する部分に帯状金属薄板(W1),(W2)の幅方向に一定の間隔を空けて直列状に配置された複数の真空吸引部(13)を備えており、帯状金属薄板(W1),(W2)を下部クランプ(4)に載置したときに、帯状金属薄板(W1),(W2)の下方に位置する真空吸引部(13)のみが作動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の帯状金属薄板の突合せ接合装置。
- 真空吸引機構(7)の各真空吸引部(13)は、下部クランプ(4)の上面に形成され、常時真空吸引されている凹状の吸引穴(14)と、吸引穴(14)に気密状に挿着され、中央部に空気が吸引される貫通孔(15a)を形成したピン押え(15)と、ピン押え(15)の貫通孔(15a)に遊嵌状態で上下動自在に挿通され、スプリング(17)により上方ヘ附勢されて上端が下部クランプ(4)の上面より突出するピン(16)と、ピン(16)側に設けられ、ピン(16)が上方ヘ附勢されているときにピン押え(15)の貫通孔(15a)をシールするシール材(18)とから成り、帯状金属薄板(W1),(W2)が下部クランプ(4)の上面に載置されたときに、下部クランプ(4)の上面から突出するピン(16)が押し下げられてピン押え(15)の貫通孔(15a)が開放され、吸引穴(14)内へ空気が吸引されるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の帯状金属薄板の突合せ接合装置。
- 各真空吸引部(13)の吸引穴(14)の内周縁部に帯状金属薄板(W1),(W2)の裏面へ密着し得る環状部材(19)を挿着し、下部クランプ(4)の上面と帯状金属薄板(W1),(W2)の下面との間から空気が漏洩しないようにしたことを特徴とする請求項3に記載の帯状金属薄板の突合せ接合装置。
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