JP3618485B2 - 被覆金属部材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂被覆金属部材に関し、さらに詳しくは、耐熱性、耐フレオン性、難燃性、耐薬品性、耐放射線性、低温物性、電気絶縁性、機械的物性等に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂被覆金属部材に関する。
本発明の被覆金属部材は、自動車や船舶のコントロールケーブル用索導管やコントロールケーブル用内索、耐熱性コイルやモーター等の巻線、自動車ソレノイドリード線、コンプレッサー等の耐フレオン電線、変圧器の巻線、原子力発電所用の耐放射線性機器配線、及びケーブル、金属棒、金属管、その他の耐熱電線、シース管、ワイヤーなどの広範な分野で利用される。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と略記)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PAS樹脂と略記)は、耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気絶縁性等に優れたエンジニアリングプラスチックとして広範な分野で使用されている。このような優れた諸特性を生かして、PAS樹脂を電線、金属棒等の被覆用樹脂として使用することが期待され、具体的な提案もなされている。
例えば、特開昭60−185306号公報には、310℃、剪断速度200/秒で測定した溶融粘度が300〜100,000ポイズで、孔径0.5mmのノズルから310℃で溶融押出をして紡糸した場合の第一次延伸倍率が10以上のPPS樹脂を、金属導線上に溶融押出してエナメル線型被覆電線を製造する方法が提案されている。特開昭62−143307号公報には、メルトインデックスが0.5〜100g/10minのPPS樹脂組成物を導体上に押し出して成形した絶縁電線が提案されている。
【0003】
しかし、PAS樹脂を金属導線などの金属基材上に溶融押出して被覆層を連続的に形成しようとすると、該樹脂の延伸性が悪いため、樹脂切れ等を引き起こしやすく、安定して被覆物を得ることが困難であった。また、PAS樹脂被覆金属部材を、被覆後、高温下にさらして樹脂を結晶化させると、被覆層が割れるという問題があった。
一般に、溶融押出法より、金属基材上に樹脂を連続被覆する場合、該樹脂は、溶融状態で延伸される。このとき、樹脂切れを生ずることなく、均一な被覆層が安定して得られることが必要である。さらに、被覆後に熱処理を行っても、被覆層に割れが生じないことが必要である。しかしながら、従来、被覆電線などの用途に好適な物性を有する金属被覆用PAS樹脂は、見いだされていなかったのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溶融押出法により金属基材上に連続被覆を行った場合に、樹脂切れを起こすことなく安定して連続被覆することができ、しかも被覆後に熱処理した場合に、被覆層の割れを生じることがないポリアリーレンスルフィド樹脂被覆金属部材を提供することにある。
また、本発明の目的は、耐熱性、耐フレオン性、難燃性、耐薬品性、耐放射線性、低温物性、電気絶縁性、機械的物性等に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂の被覆層が形成された被覆金属部材を提供することにある。
【0005】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を克服するために鋭意研究した結果、特定の伸長粘度を有するPAS樹脂を用い、かつ、金属基材上への被覆条件を選択して、示差走査熱量計(DSC)により測定されるPAS樹脂被覆層(被膜)の昇温結晶化温度がPAS樹脂プレスシートの昇温結晶化温度よりも℃以上低くすることにより、前記目的を達成できることを見いだした。この場合、PAS樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度が降伏強度の0.93倍以上であることが好ましい。このような被覆条件を選択することにより、被覆後に熱処理してPAS樹脂を結晶化させた場合に、被覆層に割れを生じることがなく、しかも厳しい熱老化試験または熱処理条件下での熱履歴を受けた後においても、30%以上の伸度を保持する被覆層を得ることができる。
【0006】
PAS樹脂としては、完全な直鎖型樹脂であってもよいが、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物をトリハロ芳香族化合物の存在下に重合して得られる分岐型PAS樹脂であることが好ましい。
このような選択されたPAS樹脂を被覆した被覆電線などの被覆金属部材は、PAS樹脂被覆層が、耐熱性、難燃性、耐薬品性、耐フレオン性、耐放射線性、電気絶縁性、低温特性などPAS樹脂が本来有する優れた特性を示すだけではなく、耐屈曲性、引張強度、可撓性、耐候性などの物性にも優れている。
本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、金属基材上に、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶融押出法により被覆してなる被覆金属部材において、
(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度が10,000Pa・s以上であり、
(B)示差走査熱量計により測定されるポリアリーレンスルフィド樹脂被覆層の昇温結晶化温度がポリアリーレンスルフィド樹脂の無配向非晶シートの昇温結晶化温度よりも6℃以上低く、かつ
(C)ポリアリーレンスルフィド樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度が降伏強度の0.93倍以上である
ことを特徴とする被覆金属部材が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するPAS樹脂は、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物のみから得られる直鎖型樹脂を用いることができるが、伸長粘度が10,000Pa・s以上と十分に高いので、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物を反応させるに際し、三官能モノマーであるトリハロ芳香族化合物を少量共存させて得られる分岐型樹脂であることが望ましい。ただし、低分子量のPAS樹脂を空気の存在下に酸化架橋(キュアリング)して得られる架橋型樹脂は、溶融延伸の際にゲル状物が発生し、加工性が劣悪であることに加えて、被覆層の強度、金属基材への密着性、耐摩耗性、絶縁破壊抵抗性、耐熱性等の点で実用性に乏しい。
【0009】
本発明で使用するPAS樹脂の伸長粘度は、10,000Pa・s以上と大きいことが必要であり、好ましくは10,000〜300,000Pa・s、より好ましくは10,000〜200,000Pa・sである。ここで、伸長粘度(Shear and Elongnational Viscosity)は、F.N.Cogswellの方法〔Polym.Eng.Sci.12,p.64(1972)〕にしたがって、算出することができるが、詳細な測定法は、後記する。PAS樹脂の伸長粘度が低すぎると、PAS樹脂の分子量または分岐度が不足し、金属基材上に溶融押出して被覆層を連続的に形成しようとすると、該樹脂の延伸性が悪いため、樹脂切れ等を引き起こしやすく、安定して被覆物を得ることが困難な場合がある。また、PAS樹脂の伸長粘度が低すぎると、被覆層の破断伸度が小さくなるため、耐屈曲性や可撓性が不満足なものとなり、しかも被覆金属部材を、被覆後、高温下にさらして樹脂を結晶化させると、被覆層が割れ易くなる。PAS樹脂の伸長粘度が高すぎると、加工性が低下したり、被覆層の耐屈曲性や可撓性が低下するおそれがあり、また、被覆の際の金属基材の引取速度を小さくしなければならないので、生産性が低下する。PAS樹脂の310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度ηは、50Pa・s以上であることが好ましい。
【0010】
PAS樹脂は、常法に従って、極性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物を反応させることにより得ることができる。分岐型PAS樹脂を得るには、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物をトリハロ芳香族化合物の存在下に重合し、その際、各モノマーの割合や重合条件を適切なものとする。
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化リチウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム、及びこれらの混合物などが挙げられる。また、アルカリ金属硫化物は、常法により反応容器中でin situで生成させてもよい。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物、水性混合物、または無水物の形で用いることができる。アルカリ金属硫化物中に微量存在するアルカリ金属重硫化物やアルカリ金属チオ硫酸塩と反応させるために、少量のアルカリ金属水酸化物を添加して、これらの不純物を除去するか、あるいは硫化物へ転化させてもよい。これらの中でも硫化ナトリウムが最も安価であるため、工業的には好ましい。
【0011】
ジハロ芳香族化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン等のジハロベンゼン;2,5−ジクロロトルエン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン等の置換ジハロベンゼン;1,4−ジクロロナフタレン等のジハロナフタレン;4,4′−ジクロロビフェニル、3,3′−ジクロロビフェニル等のジハロビフェニル;3,5−ジクロロ安息香酸等のジハロ安息香酸;4,4′−ジクロロベンゾフェノン等のジハロベンゾフェノン;4,4′−ジクロロジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロジフェニルスルフォン等のジハロジフェニルスルホン;4,4′−ジクロロジフェニルエーテル等のジハロフェニルエーテル;などを挙げることができる。
これらの中でも、経済性や物性等の観点から、ジハロベンゼンが好ましく、p−ジクロロベンゼンなどのp−ジハロベンゼンがより好ましい。特に、ジハロ芳香族化合物として、p−ジハロベンゼンを、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上の割合で含有するものが好ましい。
【0012】
トリハロ芳香族化合物としては、例えば、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリブロモベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロムベンゼン等のトリハロベンゼン;トリハロベンゼンのアルキル置換体;これらの混合物等が挙げられる。これらの中でも、経済性、反応性、物性等の観点から、1,2,4−トリハロベンゼン、1,3,5−トリハロベンゼン、及び1,2,3−トリクロロベンゼンが好ましい。
【0013】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法としては、水を含有する極性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを、所望によりトリハロ芳香族化合物の存在下に、重縮合反応させる方法を採用することができる。水としては、例えば、アルカリ金属硫化物の水和水、添加水、反応水、アルカリ金属硫化物水溶液の水などが挙げられる。有機アミド溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホン酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、経済性や安定性の観点から、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が特に好ましい。
【0014】
仕込みジハロ芳香族化合物のモル数aと仕込みアルカリ金属硫化物のモル数bとの比a/bは、通常、0.95〜1.10、好ましくは0.98〜1.08、より好ましくは1.00〜1.06の範囲内になるように調製する。トリハロ芳香族化合物は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常、0.0002〜0.01モル、好ましくは0.0004〜0.009モル、より好ましくは0.0005〜0.007モルの範囲内となるように調整して、重合反応系に添加する。
【0015】
仕込みアルカリ金属化合物1モルに対して、トリハロ芳香族化合物が0.0002モル未満では、生成PAS樹脂の分子量が十分に高くない場合、溶融状態における弾性が十分でないことがあり、溶融状態から直接延伸すると、必要な配向をさせることができないことがある。このため、得られた被覆層の靭性が低下する。逆に、トリハロ芳香族化合物が0.01モル超過では、生成PAS樹脂の溶融粘度と分岐度も高くなり、被覆時に樹脂切れを引き起こし、連続して均一な被覆物を得ることが困難となるため好ましくない。重合反応系へのトリハロ芳香族化合物の添加は、重合の初期であっても後期であってもよいが、初期の場合の方が少量の添加でもより効果的である。
【0016】
重合方法については、従来公知の方法を採用することができ、特に限定されないが、具体例として、例えば、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.5〜2.4モルの水が存在する状態で、150〜235℃の温度で反応を行って、ジハロ芳香族化合物の転化率50〜98モル%程度まで反応させ、次いで、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり2.5〜7.0モルの水を反応系内に存在させて、245〜280℃の温度に昇温して反応を継続する方法を挙げることができる。極性有機溶媒の使用量は、アルカリ金属硫化物1モル当たり、通常、0.2〜2.0kg、好ましくは0.3〜1.0kgである。
【0017】
上記PAS樹脂を用いて連続して金属基材の被覆を行うには、押出機を用いて該樹脂の融点以上、好ましくは(融点+5℃)〜370℃、より好ましくは(融点+20℃)〜350℃の範囲の温度で溶融させた後、パリソンを形成させながらダイ外被覆により金属基材上に被覆する。被覆工程中、被覆金属体(即ち、被覆金属部材)は、ピンチローラ等によって一定の速度で引き取られ、ダイを通過した直後、均一な被覆層が連続して形成される。次いで、被覆金属体は、冷却ゾーンで冷却された後、通常、巻き取り機等によって巻き取られる。
【0018】
本発明では、(1)DSCにより測定されるPAS樹脂被覆層の昇温結晶化温度がPAS樹脂の無配向非晶シートの昇温結晶化温度よりも6℃以上低いことが必要であり、さらに、(2)PAS樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度が降伏強度の好ましくは0.93倍以上、より好ましくは0.95倍以上であること、(3)120〜290℃の熱処理温度で熱処理した後のPAS樹脂被覆層の結晶化度が15〜40%の範囲内であること、(4)熱処理した後のPAS樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度が降伏強度の0.95倍以上であること、(5)熱処理した後のPAS樹脂層の破断伸度が30%以上であること等が望ましい。
【0019】
本発明では、PAS樹脂被覆層の昇温結晶化温度(X)とPAS樹脂の無配向非晶シートの昇温結晶化温度(Y)との差(X−Y=ΔTc)が6℃より大きいこと、すなわち、ΔTc≦−6℃であることが必要であり、この差が6℃未満であると、PAS樹脂被覆層の破断伸度が小さくなり、被覆層の耐屈曲性や可撓性が低下する。ΔTcの範囲は、通常、−35℃≦ΔTc≦−6℃、好ましくは−25℃≦ΔTc≦−7℃である。
【0020】
引張試験により測定されるPAS樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度(B)は、降伏強度(A)の0.93倍以上(B/A≧0.93)であることが好ましく、0.95倍以上であることがより好ましい。この比率(B/A)が0.93倍よりも小さいと(B/A<0.93)、PAS樹脂被覆層の破断伸度が小さくなり、被覆層の耐屈曲性や可撓性が低下する。この比率(B/A)は、より好ましくは0.93≦B/A≦2であり、さらに好ましくは0.95≦B/A≦1.8である。
【0021】
120〜290℃の熱処理温度で熱処理した後のPAS樹脂被覆層の結晶化度は、10〜40%の範囲内であることが好ましい。本発明の被覆層は、PAS樹脂が分子鎖配向しているため、結晶化度が例えば30%以上になるまで熱処理されていても、十分な伸度を有している。すなわち、熱処理後のPAS樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度(B)は、好ましくは降伏強度(A)の0.95倍以上であり、また、熱処理後のPAS樹脂層の破断伸度は、好ましくは30%以上である。
【0022】
金属基材上に、このような物性を有するPAS樹脂被覆層を形成する方法としては、PAS樹脂の伸長粘度(λ400)に合わせて、被覆時の面積引き落とし率(R1)を選択する方法がある。一般に、PAS樹脂の伸長粘度が小さいほど面積引き落とし率を高く設定し、逆に、PAS樹脂の伸長粘度が高いほど面積引き落とし率を低く設定すればよい。すなわち、分子量や分岐度が大きいほど、面積引き落とし率が小さくても、被覆層のPAS樹脂が配向し易くなる。ここで、面積引き落とし率(R1)とは、押出機のダイから溶融押出した樹脂の断面積を被覆層の断面積で割った値である。被覆電線の場合を例にとると、面積引き落とし率は、次式で示される。
面積引き落とし率(R1)=[(ダイ内径) −(マンドレル外径)]/[(被覆電線外径 −(導線外径)
【0023】
本発明では、PAS樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度(B)は、降伏強度(A)の0.93倍以上であることが好ましいので、B/A≧0.93となる面積引き落とし率(R1)を伸長粘度(λ400)との関係で選択することが望ましい。後記の各実施例及び比較例の実験データを解析すると、対数曲線の変換式モデルが良好に適合することが判明した。そして、金属基材上に、PAS樹脂を被覆する場合、下記の関係式(1)及び(2)を満足するように、使用するPAS樹脂の伸長粘度(λ400)と面積引き落とし率(R1)を選定すればよいことが判明した。
【0024】
【数1】
Figure 0003618485
式中の各記号の意味は、以下のとおりである。
A:PAS樹脂被覆層の降伏強度(MPa)、
B:PAS樹脂被覆層のひずみ10%時の強度(MPa)、
λ400:310℃、剪断速度400/秒におけるPAS樹脂の伸長粘度(Pa・s)、
R1:PAS樹脂の被覆時の面積引落し率(%)。
【0025】
この式を適用するには、例えば、PAS樹脂の伸長粘度(λ400)とB/Aの値を定め、それらの値を満足する面積引き落とし率(R1)の値を式(2)から算出する。式(2)は、好ましくはB/A≧0.95〔式(3)〕である。これらの式(1)及び(2)を満足する条件下で被覆を行い、ΔTc≦−6℃の要件を満足させると、良好な結果を得ることができる。
本発明では、被覆層の結晶化度及び機械的物性をコントロールし、所望の被覆金属体を得るために、押出機のダイから溶融樹脂を押し出し、パリソンを形成して金属基材を被覆した後、ピンチローラへ至るまでの間で、必要に応じ加熱ゾーンを設けて被覆金属体を熱処理することができる。被覆金属体の熱処理温度は、通常、120〜290℃、好ましくは130〜270℃である。熱処理時間(すなわち、加熱ゾーンでの滞在時間)は、生産性、被覆膜厚、引き取り速度、樹脂の結晶化速度、及び結晶化温度により変わり、一概には規定できないが、通常、0.1秒以上10分間以下の時間である。
【0026】
また、本発明では、被覆層の結晶化度及び機械的物性をコントロールし、所望の被覆体を得るために、一旦引き取った被覆金属体を必要に応じ熱処理することができる。この場合、被覆金属体の熱処理温度は、通常、120〜290℃、好ましくは130〜270℃の範囲である。熱処理時間は、生産性、膜厚、引き取り速度、樹脂の結晶化速度及び結晶化温度により変わり、一概には規定できないが、通常1秒以上100時間以下の時間である。120℃未満の温度で熱処理を行うと、十分に結晶化することができず、高温での寸法安定性あるいは表面性が損なわれることがあるため好ましくない。290℃を越える温度で熱処理を行うと、被覆層の変形により、表面性が損なわれることがある。熱処理時間が1秒未満では、十分に結晶化することができず、高温での寸法安定性あるいは表面性が損なわれることがあり、好ましくない。また、熱処理時間が長過ぎると、被覆層の変形により表面性が損なわれるので、好ましくない。
【0027】
熱処理による被覆層の樹脂の結晶化度は、被覆層のPAS樹脂の配向が小さい場合には、通常、30%以下とすることが好ましいが、伸長粘度が10,000Pa・以上のPAS樹脂を使用し、適切な面積引き落とし率を選択して配向を高めると、熱処理により結晶化度を30%を越えて高めても、十分な伸度を保持し、被覆層が脆くなるおそれがない。被覆層の樹脂の結晶化度は、好ましくは15〜40%、より好ましくは17〜35%の範囲とすることが好ましい。
【0028】
本発明における樹脂、被覆金属体においては、本発明の目的を損なわない範囲において、PAS樹脂の他に、混合可能な少量の別の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、シリカ、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ガラス等の、粒状、粉末状あるいは鱗片状の無機充填剤、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化・六フッ化エチレンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー等のフッ素系樹脂、ガラス繊維、炭素繊維、マイカセラミック繊維等の繊維状の無機充填剤、シリコン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等の耐衝撃剤、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、カップリング剤、滑剤、離型剤、安定剤、核剤等が例示される。
【0029】
本発明のPAS樹脂は、金属基材との密着性に優れているが、例えば、被覆電線などのように、作業上、被覆層が金属基材に対して適度なストリップ性を有することが要求される分野では、少量の離型剤を樹脂中に含有させることができる。離型剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジアステアリルペンタエリスリトールジホスフェートなどの脂肪酸エステル類を挙げることができる。このような離型剤を配合することにより、金属基材と樹脂被覆層との間の密着性を適度に弱めて、ストリップ性を有する樹脂被覆金属部材を得ることができる。離型剤は、樹脂100重量部に対して、通常、0.1〜3重量部の割合で使用する。安定剤としては、PAS樹脂用の公知のものを用いることができるが、樹脂を押出機のダイから安定的に溶融押出して被覆するには、例えば、水酸化バリウムなどが好ましい。安定剤は、樹脂100重量部に対して、通常、0.1〜3重量部の割合で使用する。
【0030】
金属基材としては、電線等の金属導体(金属導線)、金属棒、金属管、ワイヤー等の長尺の金属基材が挙げられる。PAS樹脂被覆層の厚みは、各用途及び所望の物性に応じて適宜定めることができる。
本発明によれば、耐熱性、耐フレオン性、難燃性、耐薬品性、耐放射線性、低温物性、電気絶縁性、機械的物性等に優れたPAS樹脂からなる被覆層が形成された被覆電線などの樹脂被覆金属部材が得られる。その具体例としては、自動車や船舶のコントロールケーブル用索導管やコントロールケーブル用内索、耐熱性コイルやモーターの巻線、自動車ソレノイドリード線、コンプレッサーの耐フレオン電線、変圧器の巻線、原子力発電所用の耐放射線性機器配線、及びケーブル、金属棒、金属管、その他の耐熱配線、シース管、ワイヤー等の被覆金属部材が挙げられる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各種物性の測定法は、次のとおりである。
(1)伸長粘度
・試験機:東洋精機社製キャピログラフ
・測定温度:310℃
・キャピラリー:▲1▼径=1mm、長さ20mm、流入角90度、▲2▼径=0.3mm、長さ0.2mm、流入角180度
・伸長粘度の算出:F.N.Cogswellのモデルを仮定し、算出した。
(2)引張試験
・試験機:島津製作所社製オートグラフAG−2000E
・測定温度:23℃
・標線間距離:50mm
・引張速度:50mm/min
・強度は、荷重を試験前の断面積で除して算出した。
(3)昇温結晶化温度(Tc
・試験機:パーキン・エルマー社製DSC7
・温度時間プロファイル:30℃で3分間保持した後、200℃まで20℃/分の温度で昇温した。
・試料重量:5〜6mg
(4)結晶化度
密度勾配管法により被覆樹脂の密度を測定し、結晶密度1.43/cm及び非晶密度1.3195g/cmを基準にして、体積分率により、測定密度から結晶化度を算出した。
【0032】
[実施例1]
ポリマー合成例1(ポリマーP1)
含水硫化ソーダ(純度46.10%)373kg、及びN−メチルピロリドン(以下、NMPと略記)800kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約200℃まで昇温しながら、54.4モルの硫化水素と共に、水142kgを留出させた。次に、p−ジクロルベンゼン(以下、p−DCBと略記)320.6kg、1,2,4−トリクロルベンゼン0.796kgとNMP274kgとの混合溶液を供給して、220℃にて1時間重合反応を行った後、230℃に昇温し、3時間重合反応を行った。次に、水76.5kgを圧入し、255℃で1時間反応を行った後、240℃に降温して3時間重合を継続した。冷却後、反応混合液を目開き150μm(100メッシュ)のスクリーンで篩分けして粒状ポリマーを分離し、アセトン洗、水洗をそれぞれ4回行った後、脱水し、乾燥したポリマーを得た。
【0033】
ペレット化
ポリマー(P1)を44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度(λ400)は、33,000Pa・sであった。310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度ηは、360Pa・sであった。
【0034】
電線被覆実験
上記で得られたペレットを電線被覆用ダイを備えた卓上二軸押出機(ツバコー・APV社製MP−2015)へ供給し、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6g/分、引き取り速度33m/分、面積引き落とし率(R1)72、パリソン長40mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。また、被覆ダイのサイズはマンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。得られた被覆体の外径は0.62mmφで表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は56MPaであり(B/A=1.02)、最大強度は67MPa、破断伸度は250%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシート(無配向非晶シート)の各昇温結晶化温度の差を測定した。その結果、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を11℃下回った(ΔTc=−11℃)。
【0035】
被覆体を表1に示す条件で熱処理した後、被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 0003618485
【0037】
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は91MPaで、ひずみ10%の強度(B)は94MPaであり(B/A=1.03)、最大強度は98MPa、破断伸度は80%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度は、34%であった。
【0038】
[比較例1]
実施例1と同じポリマー(P1)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6g/分、引き取り速度10m/分、面積引き落とし率(R1)22、パリソン長25mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。得られた被覆体の外径は0.95mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は51MPaであり(B/A=0.93)、最大強度は72kPa、被覆膜の破断伸び310%であった。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向ブレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は無配向プレスシートの昇温結晶化温度を5℃下回った(ΔTc=−5℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、最大強度は91MPa、破断伸度は9%であった。また、実施例1と同様にして熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、33%であった。この被覆体は、面積引き落とし率(R1)が小さく、被覆膜の分子鎖配向が不十分であり、その結果、熱老化試験後の伸び(破断伸度)が極めて小さく、耐屈曲性や可撓性に劣るものであった。
【0039】
[実施例2]
実施例1と同じポリマー(P1)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.0g/分、引き取り速度30m/分、面積引き落とし率(R1)37、パリソン長35mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.0mmφ、ダイ内径3.5mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.62mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は54MPaで、ひずみ10%の強度(B)は54MPaであり(B/A=1.00)、最大強度は64MPaで、破断伸度は300%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を8℃下回った(ΔTc=−8℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は91MPaで、ひずみ10%の強度(B)は93MPaであり(B/A=1.03)、最大強度は99MPaで、破断伸度は50%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、35%であった。
【0040】
[実施例3]
実施例1と同じポリマー(P1)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6g/分、引き取り速度60m/分、面積引き落とし率(R1)273、パリソン長45mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径4.0mmφ、ダイ内径7.0mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.53mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は58MPaであり(B/A=1.05)、最大強度は92MPa、破断伸度は210%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を12℃下回った(ΔTc=−12℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は90MPaで、ひずみ10%の強度(B)は98MPaであり(B/A=1.09)、最大強度は130MPa、破断伸度は90%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、35%であった。
【0041】
[実施例4]
実施例1と同じポリマー(P1)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6/分、引き取り速度33m/分、面積引き落とし率(R1)72、パリソン長40mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。
被覆体は、被覆直後、280℃に加熱された約3m長の加熱槽を通し、連続的に熱処理した後、引き取った(熱処理条件=280℃/5.5秒間)。得られた被覆体の外径は0.62mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は85MPaで、ひずみ10%の強度(B)は86MPaであり(B/A=1.01)、最大強度は100MPa、破断伸度は180%であった。被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、12%であった。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を10℃下回った(ΔTc=−10℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は91MPaで、ひずみ10%の強度(B)は94MPaであり(B/A=1.03)、最大強度は97MPa、破断伸度は70%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、33%であった。
【0042】
[比較例2]
実施例1と同じポリマー(P1)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6g/分、引き取り速度20m/分、面積引き落とし率(R1)6、パリソン長15mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−2cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径0.9mmφ、ダイ内径1.7mmφを用いた。得られた被覆体の外径は0.73mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は48MPaであり(B/A=0.87)、最大強度は60MPa、破断伸度は300%であった。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を2℃下回った(ΔTc=−2℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張り試験を行った。その結果、最大強度は88MPa、破断伸度は5%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、36%であった。この被覆体は、面積引き落とし率(R1)が6で、ΔTcが−2℃と、いずれも小さく、被覆膜の分子鎖配向が不十分であり、その結果、熱老化試験後の伸び(破断伸度)が極めて小さく、耐屈曲性や可撓性に劣るものであった。
【0043】
[実施例5]
ペレット化
前記合成例1で得られたポリマー(P1)100重量部とペンタエリスリトールトリステアレート(日本油脂社製、ユニスターH476)1重量部をタンブラーミキサーで3分間混合した後、44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの剪断速度400/秒における伸長粘度は、32,500Pa・sであった。
【0044】
電線被覆実験
上記ペレット、実施例1と同じ押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6g/分、引き抜き速度33m/分、面積引き落とし率(R1)72、パリソン長40mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.62mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は56MPaで、ひずみ10%の強度(B)は58MPaであり(B/A=1.04)、最大強度は66MPa、破断伸度は260%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を9℃下回った(ΔTc=−9℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は90MPaで、ひずみ10%の強度(B)は92MPaであり(B/A=1.02)、最大強度は103MPa、破断伸度は100%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、35%であった。
【0045】
[実施例6]
ペレット化
前記合成例1で得られたポリマー(P1)100重量部とエポキシ変性ポリシロキサン(東レ社製、SF8411)1重量部をタンブラーミキサーで3分間混合した後、44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの剪断速度400/秒における伸長粘度は、34,000Pa・sであった。
【0046】
電線被覆実験
上記ペレット、実施例1と同じ押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6g/分、引き取り速度33m/分、面積引き落とし率(R1)72、パリソン長32mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.62mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は56MPaで、ひずみ10%の強度(B)は55MPaであり(B/A=0.98)、最大強度は70MPa、破断伸度は260%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を9℃下回った(ΔTc=−9℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は90MPaで、ひずみ10%の強度(B)は92MPaであり(B/A=1.02)、最大強度は110MPa、破断伸度は90%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、33%であった。
【0047】
[実施例7]
ペレット化
合成例1で得られたポリマー(P1)90重量%とエチレン−テトラフルオロエチン共重合体(旭ガラス社製アフロンCOP、C−88A)10重量%との混合物100重量部に対し、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカラー社製A−1100)1重量部を加えた混合物をタンブラーミキサーで3分間混合した後、44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの剪断速度400/秒における伸長粘度は、38,000Pa・sであった。
【0048】
電線被覆実験
上記ペレット、実施例1と同じ押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7.6g/分、引き取り速度33m/分、面積引き落とし率(R1)72、パリソン長35mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.62mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は48MPaで、ひずみ10%の強度(B)は52MPaであり(B/A=1.08)、最大強度は62MPa、破断伸度は240%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を12℃下回った(ΔTc=−12℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は81MPaで、ひずみ10%の強度(B)は85MPaであり(B/A=1.05)、最大強度は110MPa、破断伸度は86%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
【0049】
[実施例8]
ポリマー合成例2(ポリマーP2)
含水硫化ソーダ(純度46.21%)370kgとNMP800kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約200℃まで昇温しながら、53.4モルの硫化水素と共に、水141kgを留出させた。次に、p−DCB317.4kg、1,2,4−トリクロルベンゼン0.79kgとNMP270kgとの混合溶液を供給して、220℃にて1時間重合反応を行った後、230℃に昇温し、3時間重合反応を行った。次に、水77kgを圧入し、255℃で1時間反応を行った後、240℃に降温して3時間重合を継続した。冷却後、反応混合液を目開き150μm(100メッシュ)のスクリーンで篩分し、粒状ポリマーを分離し、アセトン洗、水洗をそれぞれ4回行った後、脱水し、乾燥したポリマーを得た。
【0050】
ペレット化
上記で得られたポリマー(P2)を44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度は、90,000Pa・sであった。310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度ηは、430Pa・sであった。
【0051】
電線被覆実験
上記で得られたペレットを電線被覆用ダイを備えた卓上二軸押出機(ツバコー・APV社製MP−2015)へ供給し、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量20g/分、引き取り速度25mm/分、面積引き落とし率(R1)21、パリソン長35mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。得られた被覆体の外径は0.97mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は58MPaであり(B/A=1.05)、最大強度は70MPa、破断伸度は260%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を10℃下回った(ΔTc=−10℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は92MPaで、ひずみ10%の強度(B)は97MPaであり(B/A=1.05)、最大強度は115MPa、破断伸度は80%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
【0052】
[実施例9]
実施例8と同じポリマー(P2)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量7g/分、引き取り速度25m/分、面積引き落とし率(R1)59、パリソン長30mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−2cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2.8mmφ、ダイ内径4.9mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.66mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は60MPaであり(B/A=1.09)、最大強度は68MPa、破断伸度は230%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を13℃下回った(ΔTc=−13℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は93MPaで、ひずみ10%の強度(B)は101MPaであり(B/A=1.09)、最大強度は130MPa、破断伸度は100%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
【0053】
[比較例3]
実施例8と同じポリマー(P2)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度330℃、押出量30g/分、引き取り速度25m/分、面積引き落とし率(R1)7、パリソン長35mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2mmφ、ダイ内径3.5mmφを用いた。得られた被覆体の外径は1.15mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は51MPaであり(B/A=0.93)、最大強度は72MPa、破断伸度は290%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を4℃下回った(ΔTc=−4℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は91MPaで、ひずみ10%の強度(B)は85MPaであり(B/A=0.93)、最大強度は92MPa、破断伸度は11%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
この被覆体は、面積引き落とし率(R1)が7で、ΔTcが−4℃と、いずれも小さく、被覆膜の分子鎖配向が不十分であり、その結果、熱老化試験後の伸び(破断伸度)が極めて小さく、耐屈曲性や可撓性に劣るものであった。
【0054】
[実施例10]
ポリマー合成例3(ポリマーP3)
含水硫化ソーダ(純度46.10%)371kgとNMP800kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約200℃まで昇温しながら、54モルの硫化水素と共に、水142kgを留出させた。次に、p−DCB318.9kg、1,2,4−トリクロルベンゼン1.16kgとNMP270kgとの混合溶液を供給して、220℃にて1時間重合反応を行った後、230℃に昇温し、3時間重合反応を行った。次に、水77kgを圧入し、255℃で1時間反応を行った後、240℃に降温して3時間重合を継続した。冷却後、反応混合液を目開き150μm(100メッシュ)のスクリーンで篩分し、粒状ポリマーを分離し、アセトン洗、水洗をそれぞれ4回行った後、脱水し、乾燥したポリマーを得た。
【0055】
ペレット化
上記で得られたポリマー(P3)100重量部とペンタエリスリトールトリステアレート(日本油脂社製、ユニスターH476)1重量部をタンブラーミキサーで3分間混合した後、44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度は、150,000Pa・sであった。310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度ηは、550Pa・sであった。
【0056】
電線被覆実験
上記で得られたペレットを電線被覆用ダイを備えた卓上二軸押出機(ツバコー・APV社製MP−2015)へ供給し、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度340℃、押出量7.6g/分、引き取り速度33m/分、面積引き落とし率(R1)37、パリソン長35mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2mmφ、ダイ内径3.5mmφを用いた。得られた被覆体の外径は0.62mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は54MPaで、ひずみ10%の強度(B)は65MPaであり(B/A=1.20)、最大強度は110MPa、破断伸度は220%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を18℃下回った(ΔTc=−18℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は90MPaで、ひずみ10%の強度(B)は110MPaであり(B/A=1.22)、最大強度は150MPa、破断伸度は90%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、33%であった。
【0057】
[実施例11]
実施例10と同じポリマー(P3)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度340℃、押出量9g/分、引き取り速度20m/分、面積引き落とし率(R1)19、パリソン長20mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−2cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径2mmφ、ダイ内径3.5mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.77mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は54MPaで、ひずみ10%の強度(B)は62MPaであり(B/A=1.15)、最大強度は103MPa、破断伸度は240%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を14℃下回った(ΔTc=−14℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は91MPaで、ひずみ10%の強度(B)は106MPaであり(B/A=1.16)、最大強度は130MPa、破断伸度は110%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、33%であった。
【0058】
[実施例12]
ポリマー合成例4(ポリマーP4)
含水硫化ソーダ(純度46.10%)373kgとNMP800kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約200℃まで昇温しながら、53.8モルの硫化水素と共に、水143kgを留出させた。次に、p−DCB320.7kg、1,2,4−トリクロルベンゼン0.39kgとNMP266kgとの混合溶液を供給して、220℃にて1時間重合反応を行った後、230℃に昇温し、3時間重合反応を行った。次に、水77.5kgを圧入し、255℃で1時間反応を行った後、240℃に降温して3時間重合を継続した。冷却後、反応混合液を目開き150μm(100メッシュ)のスクリーンでし分し、粒状ポリマーを分離し、アセトン洗、水洗をそれぞれ4回行った後、脱水し、乾燥したポリマーを得た。
【0059】
ペレット化
上記で得られたポリマー(P4)を4mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度は、11,100Pa・sであった。310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度ηは、340Pa・sであった。
【0060】
電線被覆実験
上記で得られたペレットを電線被覆用ダイを備えた卓上二軸押出機(ツバコー・APV社製MP−2015)へ供給し、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度325℃、押出量8.8g/分、引き取り速度40m/分、面積引き落とし率(R1)156、パリソン長50mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径4mmφ、ダイ内径7mmφを用いた。得られた被覆体の外径は0.6mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は51MPaであり(B/A=0.93)、最大強度は95MPa、破断伸度は300%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を7℃下回った(ΔTc=−7℃)。
この被覆体を150℃で96時間熱処理したところ、被覆膜の降伏強度(A)は88MPaで、ひずみ10%の強度(B)は84MPaとなり(B/A=0.95)、破断伸度は100%で、結晶化度は28%となった。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は92MPaで、ひずみ10%の強度(B)は91MPaであり(B/A=0.99)、最大強度は98MPa、破断伸度は43%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
【0061】
[実施例13]
実施例12と同じポリマー(P4)のペレット、押出機、及び導線を用いて、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度325℃、押出量8.8g/分、引き取り速度80m/分、面積引き落とし率(R1)299、パリソン長53mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径4mmφ、ダイ内径7mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.52mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は55MPaで、ひずみ10%の強度(B)は53MPaであり(B/A=0.96)、最大強度は97MPa、破断伸度は260%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を10℃下回った(ΔTc=−10℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は91MPaで、ひずみ10%の強度(B)は92MPaであり(B/A=1.01)、最大強度は105MPa、破断伸度は56%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、35%であった。
【0062】
[比較例4]
実施例12と同じポリマー(P4)のペレット、押出機、及び導線を用い、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度325℃、押出量8.8g/分、引き取り速度15m/分、面積引き落とし率(R1)59、パリソン長40mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径4mmφ、ダイ内径7mmφを用いた。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。得られた被覆体の外径は0.86mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は58MPaで、ひずみ10%の強度(B)は48MPaであり(B/A=0.83)、最大強度は86MPa、破断伸度は320%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を4℃下回った(ΔTc=−4℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、最大強度は76MPaで、破断伸度は6%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
この被覆体は、面積引き落とし率(R1)が59で、ΔTcが−4℃と、いずれも小さく、被覆膜の分子鎖配向が不十分であり、その結果、熱老化試験後の伸び(破断伸度)が極めて小さく、耐屈曲性や可撓性に劣るものであった。
【0063】
[比較例5]
ポリマー合成例5(ポリマーP5)
含水硫化ソーダ(純度46.40%)390kgとNMP800kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約200℃まで昇温しながら、57.2モルの硫化水素と共に、水147kgを留出させた。次に、p−DCB337.5kgとNMP219kgとの混合溶液を供給し、220℃にて4.5時間重合反応を行った。次に、水80.8kgを圧入し、255℃で2時間反応を行った後、245℃に降温して11時間重合を継続した。冷却後、反応混合液を目開き150μm(100メッシュ)のスクリーンで篩分し、粒状ポリマーを分離し、アセトン洗、水洗をそれぞれ4回行った後、脱水し、乾燥したポリマーを得た。
【0064】
ペレット化
上記で得られたポリマー(P5)を44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜330℃にて混練を行い、ペレットを作製した。得られたポリマーの310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度は、8,990Pa・sであった。310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度ηは、390Pa・sであった。
【0065】
電線被覆実験
上記で得られたペレットを電線被覆用ダイを備えた卓上二軸押出機(ツバコー・APV社製MP−2015)へ供給し、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度325℃、押出量8.8g/分、引き取り速度40m/分、面積引き落とし率(R1)156、パリソン長45mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−1cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JIS C3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径4mmφ、ダイ内径7mmφを用いた。得られた被覆体の外径は0.61mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は53MPaで、ひずみ10%の強度(B)は42MPaであり(B/A=0.79)、最大強度は90MPa、破断伸度は300%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を3℃下回った(ΔTc=−3℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、最大強度は86MPaで、破断伸度は6%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
この被覆体は、樹脂の伸長粘度とΔTcが小さく、その結果、熱老化試験後の伸び(破断伸度)が極めて小さく、耐屈曲性や可撓性に劣るものであった。
【0066】
[比較例6]
ポリマー合成例6(ポリマーP6)
含水硫化ソーダ(純度46.21%)420kgとNMP720kgをチタン張り重合缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下で徐々に約200℃まで昇温しながら、61.8モルの硫化水素と共に、水160kgを留出させた。次に、p−DCB363.6kgとNMP250kgとの混合溶液を供給し、220℃にて4.5時間重合反応を行った。次に、水56.5kgを圧入し、255℃で2時間反応を行った。冷却後、反応混合液を目開き150μm(100メッシュ)のスクリーンで篩分し、粒状ポリマーを分離し、アセトン3回洗、水洗2回、0.6%の塩化アンモニウム洗1回、水洗2回、0.06%の塩化アンモニウム洗を行った後、脱水し、乾燥したポリマーを得た。
【0067】
ペレット化
上記で得られたポリマー(P6)を44mmφ二軸混練押出機(日本製鋼所製TEX−44)へ供給し、シリンダー温度300℃〜320℃にて混練を行い、ペッレットを作製した。得られたポリマーの310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度は、4,000Pa・sであった。310℃、剪断速度1200/秒で測定した溶融粘度ηは、150Pa・sであった。
【0068】
電線被覆実験
上記で得られたペレットを電線被覆用ダイを備えた卓上二軸押出機(ツバコー・APV社製MP−2015)へ供給し、導線を被覆した。被覆条件は、シリンダー温度310℃、押出量8.8g/分、引き取り速度40m/分、面積引き落とし率(R1)156、パリソン長15mm、導線と被覆膜間のエアー抜き減圧−5cmHgであった。導線は、電線用軟銅線0.4mmφ(JISC 3101)を用いた。被覆ダイのサイズは、マンドレル先端外径4mmφ、ダイ内径7mmφを用いた。導線被覆中、2回/1時間の頻度で樹脂切れが起こった。得られた被覆体の外径は0.61mmφで、表面は凹凸のない被覆体が得られた。
被覆体から導線を抜き取り、被覆膜の引張試験を行った。その結果、降伏強度(A)は54MPaで、ひずみ10%の強度(B)は43MPaであり(B/A=0.80)、最大強度は72MPa、破断伸度は300%であった。被覆体から導線を抜き取り、被覆膜と無配向プレスシートの各昇温結晶化温度の差を求めたところ、被覆膜の昇温結晶化温度は、無配向プレスシートの昇温結晶化温度を2℃下回った(ΔTc=−2℃)。
被覆体を空気循環式オーブン中、180℃で96時間の条件で熱老化試験を行った後、引張試験を行った。その結果、最大強度は78MPaで、破断伸度は4%であった。熱老化試験後の被覆樹脂の結晶化度を測定したところ、34%であった。
この被覆体は、樹脂の伸長粘度とΔTcが小さく、その結果、熱老化試験後の伸び(破断伸度)が極めて小さく、耐屈曲性や可撓性に劣るものであった。
これらの実験結果を表2〜4に一括して示す。
【0069】
【表2】
Figure 0003618485
【0070】
【表3】
Figure 0003618485
(*1)ETFE=エチレン−テトラフルオロエチン共重合体
(*2)PETS=ペンタエリスリトールトリステアレート
EMPS=エポキシ変性ポリシロキサン
γAPES=γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
【0071】
【表4】
Figure 0003618485
(*2)PETS=ペンタエリスリトールトリステアレート
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性、耐フレオン性、難燃性、耐薬品性、耐放射線性、低温物性、電気絶縁性、機械的物性等に優れたPAS樹脂被覆金属部材が提供される。本発明の被覆金属部材は、樹脂切れを起こすことなく、安定して連続被覆することができ、被覆後に熱処理しても、引張強度、可撓性、耐屈曲性などに優れている。

Claims (5)

  1. 金属基材上に、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶融押出法により被覆してなる被覆金属部材において、
    (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂の310℃、剪断速度400/秒における伸長粘度が10,000Pa・s以上であり、
    (B)示差走査熱量計により測定されるポリアリーレンスルフィド樹脂被覆層の昇温結晶化温度がポリアリーレンスルフィド樹脂の無配向非晶シートの昇温結晶化温度よりも6℃以上低く、かつ
    (C)ポリアリーレンスルフィド樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度が降伏強度の0.93倍以上である
    ことを特徴とする被覆金属部材。
  2. 120〜290℃の熱処理温度で熱処理した後のポリアリーレンスルフィド樹脂被覆層の結晶化度が10〜40%の範囲内である請求項1記載の被覆金属部材。
  3. 熱処理した後のポリアリーレンスルフィド樹脂被覆層のひずみ10%の時の強度が降伏強度の0.95倍以上である請求項記載の被覆金属部材。
  4. 熱処理した後のポリアリーレンスルフィド樹脂層の破断伸度が30%以上である請求項3記載の被覆金属部材。
  5. ポリアリーレンスルフィド樹脂が、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物をトリハロ芳香族化合物の存在下に重合して得られる分岐型ポリアリーレンスルフィド樹脂である請求項1ないしのいずれか1項に記載の被覆金属部材。
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