JP3618329B2 - 連動式吊戸装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数枚の引戸を横に重ねて、戸枠上部にて開閉方向にスライド可能に吊持し、手前側の引戸をスライドさせると、奥側に隣接する引戸が順次連動して摺動し開口部を開閉する連動式吊戸装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の連動式吊戸装置は、たとえば図8に示すように、2枚引戸a・bの上端面における戸尻側と戸先側に吊車体1を搭載し、それら吊車体1の戸車1aを戸枠eの上部に固着したガイドレール2に転動自在に係合して引戸a・bを吊持し、開時は、引戸収容位置dにおいて壁wの横に重ねて配列した構造になっている。
【0003】
このような従来の連動式吊戸装置には、引戸a・bの下端面にチャンネル部材3・4を凹設して長さ方向にガイド溝3a・4aを形成する一方、それらガイド溝3a・4aにガイドローラ5・6を転動自在に嵌め込んで、引戸a・bの下部側を案内するガイド機構gを備えている。このガイド機構gにおいて、壁wに対し奥側の第1引戸aを案内するガイドローラ5は、引戸収容位置dの戸先側で床面f上に立設し、手前側の第2引戸bを案内するガイドローラ6は、第1引戸aの戸先側に固着したアングルプレート7の曲げ板片7a上に立設している。
【0004】
そして、開閉時は、壁wに対し手前側の第2引戸bを開閉方向にスライドさせると、続いて奥側の第1引戸aが連動して摺動することにより、開口部を開閉するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の連動式吊戸装置では、開閉時、引戸a・bの上部側は、ガイドレール2に対し長さ方向左右の2点で戸車1aを係合して案内するが、下部側は、ガイド溝3a・4aに対し、それぞれ片側の1点でのみガイドローラ5・6を係合して案内する構造である。したがって、たとえば閉止時、引戸a・bを引き出してスライドさせるときに、図9に鎖線で示すように、引戸a・bの下部側が、最も戸尻側のガイドローラ5を基点として横振れを起し、その結果、引戸開閉の操作性が極めて悪いという問題があった。
【0006】
そこで、従来、他の連動式吊戸装置の中に、たとえば図10に示すように、引戸a・b・cの下端面に、それぞれ戸車8aを枢支したガイド体8を凹設する一方、開口部下方の床面f上には、引戸a・b・cの走行路(敷居部)上にガイドレール9を敷設し、これらガイドレール9の凹溝9aにガイド体8の戸車8aを係合し、開閉時に、引戸a・b・cの下部側が横振れしないように案内する構成にしたものがある。
【0007】
しかし、この従来の連動式吊戸装置では、敷居部上に複数のレール用の長溝を凹設し、そこにガイドレール9をいちいち敷設する必要があり、それだけガイド機構全体の構築に著しく手間を要し、しかも、床面f上にガイドレール9が突出し、その段差が車椅子等の通行の障害になってバリアフリー化の妨げにもなるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、連動式吊戸装置において、引戸下部のガイド機構を組み付ける手間を少なくし、且つ開口部でのバリアフリー化の妨げにならず、開閉時の引戸の横振れ発生を確実に防止して開閉操作性を向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
したがって、請求項1に記載の発明は、上述した目的を達成すべく、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、複数枚の引戸を、それぞれ開閉方向にスライド可能に戸枠の上部にて吊持するとともに、引戸収容位置で横に重ねて配列する一方、開閉時、各引戸の下部をガイド機構で案内しながら、手前側の引戸をスライドさせると、隣接する引戸が順次連動して摺動し開口部を開閉する連動式吊戸装置において、前記ガイド機構を、対向する長尺なレール体の係合部を係合させて互いにスライド自在に連結したスライドレールを用いて構成し、前記引戸の中で、開時に引戸収容位置の最も奥側に位置する第1引戸は、その下端面の長さ方向に前記スライドレールに有する一側のレール体を固着し、その一側のレール体を、床面上の引戸収容位置に固着した他側のレール体と係合し、前記第1引戸以外の第2引戸は、その下端面の長さ方向に前記スライドレールに有する一側のレール体を固着し、その一側のレール体に対して他側のレール体を下方に配置して前記スライドレールを付設するとともに、他側のレール体を、ジョイント部材を介して隣接する引戸と連結してなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の連動式吊戸装置において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記ガイド機構に用いる前記スライドレールは、両側縁に内向きに湾曲した係合部を有するアウターレールと、両側縁に外向きに湾曲した係合部を有するインナーレールとを、前記係合部において、ボールリテナーで保持した多数のボールを介して係合してスライド自在に連結してなることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一例である連動式吊戸装置の全体構成を示す斜視図である。図示例の連動式吊戸装置は、2枚の引戸A・Bを連動的にスライドさせて開口部Sを開閉する2連片引型吊戸装置で、壁W寄り奥側の引戸を第1引戸A、図中手前の引戸を第2引戸Bとする。
【0013】
第1引戸Aには、その上端面において、図中左の戸先側と右の戸尻側に吊車体10・11を搭載し、第2引戸Bには、同様に上端面の戸先側と戸尻側に吊車体12・13を搭載している。
【0014】
第1引戸Aの吊車体10・11には、それぞれ該引戸の上端面に固着した取付プレート14・15上の片側に、戸車16・17を縦向きに組み付け、他側に滑車18・19を横向きに組み付けている。第2引戸Bの吊車体12・13には、それぞれ該引戸の上端面に固着した取付プレート20・21上に、戸車22・23を縦向きに組み付けている。第1引戸Aの滑車18・19と、第2引戸Bの取付プレート21上に固定したワイヤー保持具24間には、1本の有端状ワイヤー25を往復回動可能に掛け回している。ワイヤー25は、その両端部を、壁Wに固設した掛止めリング26に繋ぐと共に、ワイヤー途中を、第2引戸A上のワイヤー保持具24で掴持することにより、両引戸A・Bを連動して往復摺動可能に連結した構造になっている。
【0015】
さらに、第1引戸Aは、戸車16・17を、戸枠Eの上部に固定した断面コ状のガイドレール27に転動可能に係合し、開閉方向にスライド自在に吊持している。第2引戸Bは、戸車22・23を、ガイドレール27の横で平行に戸枠Eの上部に固定したガイドレール28に転動可能に係合し、同様にスライド自在に吊持している。そして、両引戸A・Bは、図2に示すように、開時は、開口部Sの戸尻側に形成した引戸収容位置Dにおいて、壁Wに対し横に2枚重ねで配列される。
【0016】
一方、この連動式吊戸装置には、下部側に、図1に示すように、開閉操作時に引戸A・Bが各々横振れしないように案内するガイド機構Gを備えている。図示例のガイド機構Gは、図3に示すような長尺な金属製スライドレール単体を複数体使用して構成する。該スライドレール単体は、両側縁に内向きに湾曲した係合部32aを有するアウターレール32と、両側縁に外向きに湾曲した係合部33aを有するインナーレール33とを、係合部32a・33aにおいて、ボールリテナー34で転動可能に保持した多数の金属製ボール35を介して係合し、両レール32・33を互いにスライド自在に連結した構造になっている。
【0017】
そこで、ガイド機構Gでは、上記スライドレール単体を1体使用し、図4に示すように、第2引戸Bの下端面に凹設したガイド長溝30に、アウターレール(一側のレール体)32をねじで固着してインナーレール(他側のレール体)33を下向きに配置し、全体にスライドレールR2として付設する。
【0018】
また、ガイド機構Gでは、第1引戸Aを案内するために、上記スライドレール単体を2体使用し、互いのインナーレール33・33′を背中合せに重ねて溶接し、1つのスライドレールR1を組み立てる。そして、第1引戸Aの下端面に凹設したガイド長溝29に、一方のスライドレール単体(一側のレール体)のアウターレール32をねじで固着する。他方のスライドレール単体(他側のレール体)のアウターレール32′は、壁Wに沿って床面F上の引戸収容位置D(図1参照)にねじで固着する。したがって、スライドレールR1は、図5に示すように、最下段で固定のアウターレール32′に対し一体のインナーレール33・33′をスライド自在とし、さらに該インナーレール33・33′とアウターレール32とを互いにスライド自在とする2段スライド構成にし、それだけスライドストロークを長くした構造にしている。
【0019】
さらに、ガイド機構Gは、図1および図4に示すように、第1引戸Aの下端面の戸先側に一端40aをねじ止めしたジョイント部材40の他端40bを、第2引戸Bのインナーレール33にねじ止めし、該ジョイント部材40を介して両引戸A・Bを連結した構成になっている。図示例のジョイント部材40は、一端40aをL形板状に曲げ成形した金属プレートからなる。
【0020】
さて、上述した構成の連動式吊戸装置を作動し、引戸収容位置Dに収容した引戸A・Bを引き出して開口部Sを閉止するときは、まず手前側の第2引戸Bを、取っ手41を持って引き出す。すると、図1に示すが、上記ワイヤー25が図中矢示する一方向に送られて回動し、これにより、第2引戸Bの動き出しに対し連動して第1引戸Aが少し遅れて引き出される。このとき、両引戸A・Bは、上部側において、ガイドレール27・28上を戸車16・17,22・23が転動し、ガイドレール27・28で案内すると同時に、下部側において、ガイド機構Gにより案内しながらスライドする。
【0021】
その際、特にガイド機構Gでは、スライドレールR1のアウターレール32′上をインナーレール33・33′が摺動し、次いで一体のインナーレール33・33′に対し、第1引戸Aがアウターレール32を介して摺動し、これによって、第1引戸Aは、横振れを起すことなく直線的に引き出される。また、第2引戸Bは、スライドレールR2のインナーレール33上を、アウターレール32を介して摺動し、これによって、第2引戸Bも同様に横振れを起すことなく直線的に引き出される。こうして両引戸A・Bが順次連動して引き出され、図6に示すように開口部Sを閉止する。
【0022】
反対に、開口部Sの開時は、第2引戸Bを、取っ手41を持って引き戻すと、今度は、上記ワイヤー25が他方向に送られて回動し、これにより、第2引戸Bの動き出しに対し連動して第1引戸Aが少し遅れて引戸収容位置D側へ摺動する。このとき、上記閉止時と同様に、両引戸A・Bは、その下部側において、ガイド機構Gで案内して直線的に引き戻され、横振れの発生が防止される。
【0023】
ところで、上述した図示実施の形態には、引戸が2枚の吊戸装置の例を示したが、本発明では、引戸が2枚以上の吊戸装置にも適用し得るのは、勿論である。図7に、引戸が3枚の本発明による3連式吊戸装置を示す。
【0024】
この3連式吊戸装置のガイド機構Gでは、最も手前側の第2引戸B′の案内用に、隣りの第2引戸Bと同様に上記スライドレール単体を1体使用し、第2引戸B′の下端面に凹設したガイド長溝31に、アウターレール32をねじで固着してインナーレール33を下向きに配置し、全体にスライドレールR3として付設する。そして、スライドレールR3のインナーレール33に、一端40aを第2引戸Bの戸先側にねじ止めしたジョイント部材40の他端40bをねじ止めし、該ジョイント部材を介して第2引戸B・B′を連結した構成にする。
【0025】
なお、上述したガイド機構Gにおいて、第1引戸Aを案内するスライドレールR1は、図3に示すスライドレール単体を2体使用して組み立てて構成したが、第2引戸B・B′と同様に、上記スライドレール単体を1体用い、たとえば一側のアウターレール32を床面F上で引戸収容位置Dに固着し、他側のインナーレール33を第1引戸Aの下端面に固着して互いに係合させた構成にすることもできる。また、以上の図示実施の形態では、ガイド機構GのスライドレールR1・R2・R3として、アウターレール32とインナーレール33とを、ボールリテナー34で保持した多数のボール35を介し係合して連結した構造のものを使用したが、本発明では、対向する長尺なレール体の係合部を互いに係合させてスライド自在に連結した構成のスライドレールであれば、上記した図示例以外のものを除外するものではない。
【0026】
【発明の効果】
上述の如く構成した本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、複数枚の引戸の中で、奥側の第1引戸には、下端面にスライドレールの一側レール体を固着し、その一側レール体を、床面上の引戸収容位置に固着した他側レール体と係合し、第1引戸以外の手前側の第2引戸には、下端面に一側レール体を固着して他側レール体を下向きに配置し、その他側レール体を、ジョイント部材を介して隣接する引戸と連結してガイド機構を構成し、開閉時は、ガイド機構のスライドレールのレール体をスライドさせて各引戸を直線的に案内するため、横振れを起すことなく引戸をスムーズに開閉方向に摺動させることができ、その結果、引戸の開閉操作性を一段と向上させることができる。
【0028】
さらに、請求項1に記載の発明によれば、スライドレールに有するレール体の一部は、通行の妨げにならない開口部横の引戸収容位置に固着して引戸を案内する構成であるため、従来の如く敷居部に複数のガイドレールを敷設するなどの手間をなくしてガイド機構の組付けを簡単にし、しかも、開口部でのバリアフリー化の要請に十分に応えることもできる。
【0029】
請求項2に記載の発明によれば、アウターレールとインナーレールとを、互いの係合部において、ボールリテナーで保持した多数のボールを介し係合してスライド自在に連結した構造のスライドレールを用いて、上記ガイド機構を構成することにより、それだけ引戸をスムーズにスライドさせて開閉方向に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例である連動式吊戸装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】引戸を引戸収容位置に収容した状態を説明する平面図である。
【図3】引戸のガイド機構に用いるスライドレール単体の構造を示す斜視図である。
【図4】引戸の下部に備えるガイド機構を示す部分拡大側面図である。
【図5】第1引戸に用いるスライドレールの構造を示す斜視図である。
【図6】引戸を引き出して開口部を閉止した状態を説明する平面図である。
【図7】本発明を連式吊戸装置に適用した場合のガイド機構を示す部分拡大側面図である。
【図8】従来の連動式吊戸装置を示す側面図である。
【図9】従来の連動式吊戸装置における引戸の横振れ状態を説明する平面図である。
【図10】従来の他の連動式吊戸装置を示す部分拡大側面図である。
【符号の説明】
A 第1引戸
B・B′ 第2引戸
D 引戸収容位置
E 戸枠
F 床面
G ガイド機構
R1・R2 スライドレール
S 開口部
W 壁
32・32′ アウターレール
32a アウターレールの係合部
33 インナーレール
33a インナーレールの係合部
34 ボールリテナー
35 ボール
40 ジョイント部材
Claims (2)
- 複数枚の引戸を、それぞれ開閉方向にスライド可能に戸枠の上部にて吊持するとともに、引戸収容位置で横に重ねて配列する一方、開閉時、各引戸の下部をガイド機構で案内しながら、手前側の引戸をスライドさせると、隣接する引戸が順次連動して摺動し開口部を開閉する連動式吊戸装置において、
前記ガイド機構を、対向する長尺なレール体の係合部を互いに係合させてスライド自在に連結したスライドレールを用いて構成し、
前記引戸の中で、開時に引戸収容位置の最も奥側に位置する第1引戸は、その下端面の長さ方向に前記スライドレールに有する一側のレール体を固着し、その一側のレール体を、床面上の引戸収容位置に固着した他側のレール体と係合し、
前記第1引戸以外の第2引戸は、その下端面の長さ方向に前記スライドレールに有する一側のレール体を固着し、その一側のレール体に対して他側のレール体を下方に配置して前記スライドレールを付設するとともに、他側のレール体を、ジョイント部材を介して隣接する引戸と連結してなることを特徴とする、連動式吊戸装置。 - 前記ガイド機構に用いる前記スライドレールは、両側縁に内向きに湾曲した係合部を有するアウターレールと、両側縁に外向きに湾曲した係合部を有するインナーレールとを、前記係合部において、ボールリテナーで保持した多数のボールを介して係合してスライド自在に連結してなることを特徴とする、請求項1に記載の連動式吊戸装置。
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