JP3618240B2 - 永久磁石モータのセンサレス駆動回路装置 - Google Patents

永久磁石モータのセンサレス駆動回路装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、単相スケルトン形の永久磁石モータの改良に係り、その目的とすることは、前記単相ブラシレスモータを少ない消費電力により効率よく駆動する、省エネルギー機能を具備した単相ブラシレスモータのセンサレス駆動回路装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の永久磁石モータ、例えば、ブラシレスモータをホール素子などの位置検知素子を用いることのないセンサレス駆動回路においては、回転駆動中のモータの電機子巻線に生じる速度起電力と界磁の位置の相関に着目して、前記速度起電力によりモータの転流タイミングを決定していた。そして、特公平7−63232号公報には、速度起電力に基づいて単相ブラシレスモータを駆動する駆動回路が記載されている。
【0003】
前記特公平7−63232号公報に記載される駆動回路においては、図4に示すように、いわゆるスケルトン形の単相ブラシレスモータ100を備えており、界磁としてのロータ101と、電機子としてのステータ102とを備えている。又、モータ100の停止時に、ロータ101の磁極の磁束軸X’がステータ102の磁極の磁束軸Y’と一致して停止しないように(いわゆるロック位置でロータ101が停止しないように)、弱磁界の永久磁石103の磁極(S極)が、その磁束軸Z’をステータ102の磁束軸Y’と直交するようにして、ロータ101の磁極と対向して配置されている。これによりステータ102のコイル104への通電を停止すると、ロータ101は磁束軸X’,Y’が重なるロック位置から角θだけ回動した位置に停止するように構成されている。
【0004】
この駆動回路では、モータ100を所望の方向へ的確に起動させるため、起動前にロータ101を所定の初期位置へセットするようにしている。図5を参照して、モータ100を右方向へ回転させる場合の動作について説明する。
【0005】
モータ100の停止状態では、ロータ101は、永久磁石103の影響により、図5(a)又は(a)’の位置に停止している。この状態から、図5(b)及び(b)’に示すように、所望の回転方向(右方向)とは逆の左方向への回転を生じさせる向きにステータ102へ断続的な通電を行う。図5(b)及び(b)’のいずれの場合にも、ロータ101は、この断続的な通電により左方向へ回動し、図5(c)に示すように、ロータ101の磁束軸X’とステータ102の磁束軸Y’とが一致する位置で停止する。その後、前記断続的な通電を停止すると、ロータ101と永久磁石103との間に吸引力および反発力が作用して、ロータ101は、図5(d)に示す所定の位置に移動し、やがて停止する。これにより、モータ100の起動前におけるロータ101の初期位置へのセットが完了する。
【0006】
ロータ101の初期位置へのセット完了後、図5(e)に示すように、所望の右方向への回転を生じさせるようにステータ102への通電を行うと、ロータ101が右方向へ的確に回転を開始する。なお、ロータ101を左方向へ回転する場合は、ステータ102への通電を、前記図5(b),(b)’,(c)及び(e)の場合とは逆方向に行うことにより達成される。
【0007】
このように特公平7−63232号公報記載の駆動回路においては、ロータ101の停止位置に関わらず、ホール素子などの位置検知素子を用いることなく、センサレスで単相ブラシレスモータ100を所望の方向へ的確に起動することができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図5(c)の状態からステータ102の通電を停止して、図5(d)の状態へ移行する場合、ロータ101の振動は容易に収まらず、ロータ101が初期位置にセットされた状態で停止するまでには相当の時間が必要であった。前記ロータ101の振動が停止するまでの時間は、モータ100のイナーシャなどにより一概に断定することはできないが、長い場合数10秒かかることもあった。一方、ロータ101が振動しているときにモータ100を始動させると、振動の度合によってモータ100が逆回転してしまうこともあった。
【0009】
一方、モータ100の転流タイミングを決定するための速度起電力は、モータ100の電機子巻線電圧を利用して検出していたので、特に、単相ブラシレスモータでは180度通電を行うことができなかった。このため、単相ブラシレスモータでは、始動時に回転子に対して大きなトルクを与えることができず、始動後短時間のうちに前記モータを高速回転させることができなかった。又、単相ブラシレスモータに限らず、高負荷トルク時には、通電切替に伴う電機子電流の還流作用による転流スパイク電圧が増大するので、検出される速度起電力情報に大きな誤差が生じてしまい、その結果、界磁磁極位置の推定に大きなズレが生じて、転流タイミングを適切に決定することができなかった。
【0010】
そこで、本願出願人は、特開平9−37586号に記載するブラシレスモータのセンサレス駆動回路を発明した。かかるモータのセンサレス駆動回路においては、モータ各相の電機子電流波形に着目し、各相の通電領域にあらわれる2つの顕著な電流増加領域のうち第2の電流増加領域を検出し、これを転流タイミングと決定して、転流制御を行うものである。よって、このモータのセンサレス駆動回路では、速度起電力にたよることなく電機子電流に基づいて転流タイミングを決定しているので、単相のブラシレスモータであっても180度通電を行うことができ、かつ、高負荷トルク時でも適切に転流タイミングを決定することができるという優れた点を備えている。
【0011】
しかし、前記特開平9−37586号に示されているセンサレス駆動回路では、前記第2の電流増加領域を、モータの電機子電流の瞬時値が電機子電流の平均値の所定倍(例えば1.2倍)になったことを目安にして検出している。この結果、第2の電流増加領域を検出するためには、電機子電流を平均化する回路と、その平均化された電機子電流を所定倍に増幅する回路等とが必要となり、駆動回路自体のコストを上昇させてしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、前記の種々の問題点を解決するようにしたものであり、電機子電流に基づいて転流タイミングを決定するようにした、安価で、かつ、省エネルギー機能を具備した永久磁石モータのセンサレス駆動回路装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、永久磁石モータの電機子に交番電圧を通電するインバータ回路と、そのインバータ回路により転流を行わせて、前記永久磁石モータを回転させる制御回路とを備えた永久磁石モータのセンサレス駆動回路において、前記永久磁石モータは単相ブラシレスモータで構成されるとともに、その単相ブラシレスモータの制御回路には、単相ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電流を検出しこれを電圧変換する電流検出回路と、前記電流検出回路により検出した電機子電流を電圧変換して得られる電圧を負電圧としてオペアンプにより所定の電圧値に増幅し、前記電流検出回路の検出電流が低減した場合、前記負電圧によりインバータ回路に負帰還をかけるように構成した検出電流増幅回路と、前記インバータ回路のスイッチングパルスをその直流分を除去して交流波形に変換するコンデンサと、負の倍電圧整流回路を構成して前記交流波形を負の直流に変換するダイオードと、更に、前記負の直流からリプル分を除去して定電圧回路を構成するためのツエナーダイオードとによって形成して負電圧を前記検出電流増幅回路に負電源として供給する負電圧発生回路が具備されていることを特徴とする。
【0017】
本発明は、単相ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を電流検出回路により検出してこれを電圧に変換し、この電圧変換した電圧を負電圧として増幅してインバータ回路に負帰還をかけることにより、次の転流タイミングを決定するように構成されているので、電流検出回路にて検出される電流が小電流の場合でも、前記のように、負電圧を増幅してインバータ回路に十分な帰還をかけることができるため、単相ブラシレスモータの起動時においても、大きな始動トルクが得られ、単相ブラシレスモータの起動を円滑・良好に行うことができることはもとより、電流検出回路で使用する電流検出用抵抗の小容量化が可能となり、その熱的損失を良好に軽減することができ利便である。
【0018】
しかも、前記負電圧はインバータ回路のスイッチングパルスを増幅することによって容易に得ることができるため、前記スイッチングパルスを利用することにより、負電圧を生成するための特別な回路を設ける必要がないので、単相ブラシレスモータのセンサレス駆動回路を簡素な構成で安価に、かつ、省エネルギー構造で製作することができ、至便である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を単相ブラシレスモータ(以下、単相モータと称する)に実施した例を図1ないし図5によって説明する。図1において、単相モータ1は、図の上部側に回転子2を回転自在に挿入するための回転子挿入孔3を有し、図の下部側には、分離可能な鉄心部材4を装着して電機子巻線5を巻装した固定子鉄心6と、永久磁石からなる前記回転子2とからなり、固定子鉄心6は電動機に用いる一般的な電磁鋼板を打抜き、所定の積厚に積層することにより形成し、又、回転子2は、例えば磁性粉末を合成樹脂粉末と混合し、これを射出成型手段等により射出形成した、プラスチックマグネットロータ(以下、単に回転子と称する)を具備して、スケルトン形の単相モータ1を構成するものである。
【0020】
そして、前記固定子鉄心6には、図1に示すように、回転子挿入孔3の外側において、回転子挿入孔3の周縁に例えば、約180°の角度間隔を保って、一対の平面形状がU字状をなす切欠部7a,7bが、前記回転子挿入孔3と連通することなく狭隘な隘路(磁路)A,Bを有して形成されている。前記隘路A,Bを形成するのは、電機子巻線5が磁化されていないときに固定子鉄心6に流れる磁束(回転子2により生じる)を前記隘路A,Bに集中させ、回転子2に所要の磁極を形成させるためのものであり、固定子鉄心6に流れる磁束は、隘路A,Bにおいて均等に割り振りされて流れることにより、回転子2の起動時における位置決の動作に貢献するものである。
【0021】
又、前記固定子鉄心6の回転子挿入孔3の周縁には、図1で示すように、前記切欠部7a,7bから約90°の角度間隔を保って回転子挿入孔3と連通可能となした一対の切込部8a,8bが、互いに相対向した状態で約60°の角度範囲を保って弧状に形成されている。この切込部8a,8bは固定子鉄心6に流れる磁束の流れが、前記切込部8a,8bの存在による磁気抵抗の増加により抑制され、回転子2の磁化が最も弱体化しているN極とS極との境界部分aが、前記切込部8a,8bの中間点の位置で停止させることが可能となる。
【0022】
前記固定子鉄心6にU字状の切欠部7a,7bと弧状の切込部8a,8bをそれぞれ形成した場合、回転子2を始動位置に導いたり、所定位置で停止させることができる点は、公知の有限要素法の磁場解析によるコギングトルク解析によって確認することができた。特に、切欠部7a,7bの存在は、回転子2をその停止位置から始動位置近くまで微動させることが可能となり、これが回転子2の回転方向を導き出す上で大いに貢献しているものと思われる。
【0023】
前記の点を更に詳述すると、固定子鉄心6は電機子巻線5への通電により鉄心部材4が直流磁化されると、固定子鉄心6に、例えば図1において右方向(時計方向)に沿って磁束が流れる。この結果、回転子2の磁極は固定子鉄心6に流れる磁束に対して整列しやすい方向に位置を変える(回転)ことになるが、これを、即ち、回転子2の回転を急激に行うと、回転子2自体がどの方向に回転するのか不明となる。このため、固定子鉄心6の鉄心部材4を、比較的高い周波数で交流磁化させ、かつ、直流成分を上乗せすることにより、固定子鉄心6を少しだけ直流磁化させる。
【0024】
前記のようにすると、回転子2は徐々に磁束が整列する方向に移動(回転)し、回転子2のN,S極の境界部分aが、例えば、切欠部7aと切込部8aとの中間位置に近づくように回転しながら停止する。そして、停止した位置が回転子2の始動位置となる。即ち、回転子2の磁石の位置を確定するものである。以上の一連の動作を単相モータ1の起動時における回転子2の位置決め動作(プリセット動作)と言い、これらの動作は有限要素法の磁場解析によるトルク解析によって確認することができた。
【0025】
なお、本発明において、前記回転子2は電機子巻線5の無通電状態では、回転子2の磁束軸Xが固定子鉄心6の磁束軸Yと一致するロック位置から、偏角θを保つ2箇所の位置(図1の位置、および、図1の回転子2のN極とS極とが逆になった位置)に停止されるように構成されている。
【0026】
又、電機子巻線5は、例えば、固定子鉄心6の鉄心部材4のみに巻装された一組の中間子付巻線(センタタップ巻線)より構成され、2つの端子e,fと中間端子gとの計3つの端子を備えている。また、その巻線仕上げは、2本の導線を束ねて同時に巻く、いわゆる「パイファイラ巻き」により行われている。なお、単相モータの場合には、中間タップがあれば良く、必ずしもパイファイラ巻きである必要は無い。
【0027】
次に、本発明の単相モータ1を駆動制御するセンサレス駆動回路装置について説明する。図2において、前記センサレス駆動回路装置(以下単にモータ駆動回路という)11は、大別すると、インバータ回路12と、電流検出回路13と、帰還回路14と、ロータプリセット回路15と、始動補償回路16と、負電圧発生回路17と、検出電流増幅回路18とを備えて概略構成されている。
【0028】
このモータ駆動回路11には、10〜30ボルトの直流電圧を出力可能な直流電源50が接続され、そのプラス側入力端Pは、ダイオードDのアノードに接続されている。このダイオードDは、単相モータ1の転流動作時に発生する逆起電力による還流電流が直流電源50に流れ込むのを防止する。又、ダイオードDのカソードは、前記還流電流を充電するコンデンサC(50V、100μF)のプラス側端子に接続され、そのコンデンサCのマイナス側端子は、直流電源50のマイナス側入力端Nに接続されている。なお、還流電流をコンデンサCに充電することは、モータ駆動回路11から外部に発振される電磁ノイズ(ElectroMagnetic Interference)の量の減少を図るとともに、直流電源50と端子PN間の配線抵抗での電力損失の低減及び還流電流の再利用による電力利用率の向上(効率)を図るためのものである。
【0029】
前記ダイオードDのカソードは、単相モータ1の中間端子gに接続され、単相モータ1の端子e,fは、インバータ回路12に接続されている。インバータ回路12は、無安定マルチバイブレータ動作(自励発振動作)を行って、単相モータ1の各コイルL(g−e巻線),L(g−f巻繰)に、交互に直流電圧を印加するための回路である。このインバータ回路12は、高耐圧のNPN形パワートランジスタQ,Qと、10kΩの抵抗R,Rとを備えて構成されている。
【0030】
前記インバータ回路12の両トランジスタQ,Qのコレクタ端子は、単相モータ1の両端子e,fにそれぞれ接続されるとともに、抵抗R,Rを介して、それぞれ他方のトランジスタQ,Qのベース端子に交叉接続されている。この接続により、一方のトランジスタのオンにより他方のトランジスタがオフされ、かつ、そのオン・オフが繰り返されるという、無安定マルチバイブレータ動作(いわゆる自励発振動作)が行われる。また、両トランジスタQ,Qのコレクタ・エミッタ端子間には、ダイオードD,Dがアノード端子をエミッタ端子側にしてそれぞれ接続されており、これらダイオードD,Dにより、単相モータ1の転流動作時に発生する逆起電力エネルギーが還流電流として還流される。
【0031】
ここで、前記インバータ回路12の無安定マルチバイブレータ動作について説明する。図2において、直流電源50の投入により、例えば、トランジスタQがオンし、トランジスタQがオフしたとすると、コイルLを介して電流が流れ、トランジスタQのコレクタ電流が増加する。やがてコレクタ電流がトランジスタQのベース電流と電流増幅率とで定まる飽和電流値に達すると、トランジスタQのコレクタ電流の増加率が低下し、トランジスタQのコレクタ・エミッタ間電圧が上昇し始める。トランジスタQのコレクタ電圧がエミッタ端子を基準にして0.6ボルト付近に達すると、抵抗Rを介して、トランジスタQにベース電流が流れ始めトランジスタQがオンを開始する。このトランジスタQのオンに伴って、トランジスタQのコレクタ電圧が低下し、抵抗Rを介してトランジスタQに供給されるベース電流が減少する。このベース電流の減少とともに、トランジスタQの飽和電流値も減少するので、トランジスタQのコレクタ電流が更に減少する。これにより、トランジスタQのコレクタ電圧が更に上昇し、トランジスタQのベース電流を増加させて、トランジスタQのオンを加速する。一方、トランジスタQのオンにより、トランジスタQのコレクタ電圧が低下し、トランジスタQのベース電流が更に減少して、トランジスタQのオフが加速される。このように、急速に、トランジスタQがオフ、トランジスタQがオンの状態に変化する。
【0032】
トランジスタQがオン、トランジスタQがオフとなった後は、トランジスタQのコレクタ電流が飽和電流値に達するまでその状態を維持する。そして、トランジスタQのコレクタ電流が飽和電流値に達すると、上記とは逆に、トランジスタQのオン、トランジスタQのオフが急速に行われ、その状態が変化する。このように、トランジスタQ,Qのオン・オフ動作が繰り返され、その結果、インバータ回路12は「無安定マルチバイブレータ動作」(自励発振動作)を行うのである。
【0033】
インバータ回路12の両トランジスタQ,Qのエミッタ端子と、直流電源50のマイナス側入力端Nとの間には、電流検出回路13が設けられている。電流検出回路13は、2Ω(4W)のシャント抵抗Rsにより構成され、インバータ回路12を介して単相モータ1の電機子巻線L,Lに流れる電流(以下「電機子電流」という)を、シャント抵抗Rsに流れるシャント電流として検出し、電圧に変換するための回路である。この電圧変換されたシャント電流は、後述する帰還回路14によってインバータ回路12へフィードバック(帰還)され、前記した無安定マルチバイブレータ動作の発振周期を決定する。
【0034】
前記帰還回路14は、電流検出回路13によって検出され電圧に変換されたシャント電流(電機子電流)を、インバータ回路12へフィードバックする回路であり、2つのダイオードD,Dと、2.2kΩの抵抗Rと10kΩの抵抗Rとからなり、前記抵抗R,Rは直列に接続され、抵抗R側の一端はシャント抵抗Rsの電圧を増幅した検出電流増幅回路18の出力端に接続され、抵抗R側の他端はダイオードD,Dのカソードに接続されている。又、ダイオードD,Dの各アノードは、インバータ回路12の各トランジスタQ,Qのベース端子にそれぞれ接続されている。
【0035】
この帰還回路14は、電流検出回路13及び、ベース抵抗R,RとトランジスタQ,Qとの電流増幅率の相互作用を利用して、電機子電流の急増領域を検出し、その急増領域でインバータ回路12による転流が行われるようにしている。電機子電流は、回転子2が固定子鉄心6に最も吸着される位置、即ち、回転子2の磁場ベクトルと、電機子巻線5への通電により生じる磁場ベクトルとが整列する位置(モータの発生トルクがゼロとなる位置)で急増する。これは、回転子2が前記位置に達することにより、発電電圧がほぼ「0」となるからである。従って、前記急増領域の現出を転流タイミングとして決定することにより、単相モータ1を適確に同期駆動(回転)することが可能となる。
【0036】
具体的には、シャント抵抗Rsの電圧降下を、インバータ回路12の各トランジスタQ,Qのベース端子へフィードバック(帰還)させることである。すると、電機子電流の急増領域では、シャント抵抗Rsの電圧降下が大きくなる結果、その分、ベース電流が帰還回路14側へ流れて少なくなり、コレクタ電流の飽和電流値が小さくなるものの、その際、流れているコレクタ電流が飽和電流値と一致すると、両トランジスタQ,Qのオン・オフ状態が切替えられ、転流動作が円滑に行われるのである。
【0037】
なお、かかる転流周期(タイミング)、即ち、上記したインバータ回路12の発振周期は、この帰還回路14の抵抗値により変化させることができる。具体的には、帰還回路14の抵抗値を小さくすると、インバータ回路12の発振周期が短くなり(発振周波数が大きくなり)、抵抗値を大きくすると発振周期が長くなる(発振周波数が小さくなる)のである。帰還回路14の抵抗値を小さくすることにより、トランジスタQ,Qのベース端子への帰還量が多くなるので、電機子電流の急増を僅かに検出した場合でも、前記転流動作を確実に行わせることができる。
【0038】
次に、ロータプリセット回路15は、単相モータ1の停止時(待機時)に、微少量の直流電流成分を流して、回転子2を所定の停止位置(例えば、図3(a)に示す位置)に保持しておくための回路である。即ち、単相モータ1の一方のコイルLに通電する時間と、他方のコイルLに通電する時間との比率(デューティ比)をアンバランスとして、単相モータ1に直流電流成分を通電する。この直流電流成分は、帰還回路14とロータプリセット回路15との合成抵抗値(並列抵抗値)をトランジスタQ,Qの各オン時に大小させるとともに、インバータ回路12の発振周期を長短させることにより生成することができる。。
【0039】
このように、前記ロータプリセット回路15によって回転子2が所定の停止位置に保持されるので、単相モータ1の始動時にインバータ回路12のいずれのトランジスタQ,Qがオンしても、単相モータ1を必ず所定の方向へ回転させることができるのである。例えば、ロータプリセット回路15によって、始動前のロータ2が図3の(a)に示す位置に保持されていると、単相モータ1は必ず左方向へ回転する。
【0040】
このロータプリセット回路15は、インバータ回路12のトランジスタQのコレクタ端子に接続された抵抗R(32kΩ)を備え、その抵抗Rの一端は、10kΩの抵抗Rの一端とトランジスタQのベース端子とに接続されている。一方、トランジスタQのコレクタ端子は1kΩの可変抵抗VRの摺動子に接線され、前記可変抵抗VRの一端は帰還回路14のダイオードD,Dのカソードに接続されている。又、可変抵抗VRの他端は、抵抗Rの他端と、トランジスタQのエミッタ端子と、スイッチSWの「待機」端子とに接続され、スイッチSWのコモン端子は、帰還回路14と同様に、始動補償回路16および検出電流増幅回路18に接続されている。
【0041】
ロータプリセット回路15は、直流電源50が投入された状態で、スイッチSWを「運転」端子から「待機」端子へ切り替えることにより作動する。即ち、スイッチSWを「待機」端子に切り替えると、帰還回路14の抵抗R,Rに可変抵抗VR及びトランジスタQのエミッタ端子が並列接続されて合成抵抗値が減少するとともに、かかる合成抵抗値は、インバータ回路12のトランジスタQのオン時とQのオン時とで大小するので、トランジスタQのオン時とQのオン時とでインバータ回路12の発振周期が長短し、その結果、単相モータ1へ直流電流成分が流れる。
【0042】
具体的には、トランジスタQがオフ、Qがオンの場合、トランジスタQはオフし、帰還回路14の合成抵抗値は0.92kΩ(VR(R+R)/(VR+R+R))となる。逆に、トランジスタQがオン、Qがオフした場合、トランジスタQはオンし、可変抵抗VRの抵抗値が減少する。例えば、可変抵抗VRの摺動子が半分程移動した位置にある場合には、可変抵抗VRの抵抗値は0.5kΩとなるので、帰還回路14とロータプリセット回路15との合成抵抗値は0.48kΩとなる。前記した通り、インバータ回路12の発振周期は、帰還回路14とロータプリセット回路15との合成抵抗値が大きいほど長く、小さいほど短いので、トランジスタQのオン時間はQのオン時間に比べて短くなる。従って、その差分の微小量の直流電流成分が単相モータ1に流され、その直流電流成分によって、単相モータ1の回転子2が所定の位置に保持されるのである。
【0043】
なお、アンバランスとするデューティ比は、直流電流成分が20%(60%対40%)〜50%(75%対25%)の範囲となるように設定することが一般的に好ましい。又、回転子2を保持する所定の位置としては、回転子2の磁束軸Xが固定子鉄心6に設けられた2つの切欠部7a,7bを結ぶ線と直交する位置よりやや水平側に傾いた位置が好適である(図1参照)。即ち、直流電源50をオフからオンした場合に、回転子2の磁束軸Xがやや水平側に回転するような挙動を示す位置に設定するのが好ましい。即ち、回転子2は直流電源50のオフ後、前記位置に保持され易く構成されているからである。
【0044】
つづいて、始動補償回路16は、単相モータ1の始動時に、充分な始動トルクを発生させる上で必要な電機子電流を流して、単相モータ1の始動動作を確実に行うための回路である。従って、この始動補償回路16は、単相モータ1の始動時と始動後において帰還回路14の抵抗値を大小させ、始動時には転流周期を長くして、単相モータ1へ充分な電機子電流を流し、始動後は前記転流周期を短くして単相モータ1を高速回転させるようにしている。
【0045】
始動補償回路16は、インバータ回路12のトランジスタQ,Qのエミッタ端子および電流検出回路13のシャント抵抗Rsの入力端にアノードが接続されたダイオードDを備え、そのダイオードDのカソードは27kΩの抵抗Rの一端に接続されている。一方、抵抗Rの他端は、トランジスタQのベース端子と、ダイオードDのアノードとコンデンサC(220μF,10V)のプラス側端子と、47kΩのブリーダ抵抗Rの一端とに接続されている。前記トランジスタQのコレクタ端子は帰還回路14の2つの抵抗R,R間に接続され、エミッタ端子は、コンデンサCのマイナス側端子および抵抗Rの他端とにそれぞれ接続されている。更に、ダイオードDのカソードは、スイッチSWの「待機」端子に接続されている。
【0046】
この始動補償回路16は、コンデンサCに所定量の電荷が蓄積されて、その端子間電圧が約0.6ボルトに達するまで、トランジスタQのオフを維持し、帰還回路14の抵抗値を12.2kΩ(抵抗R,R)という大きな値に保ち、単相モータ1の始動時における転流周期を長くしている。これにより、単相モータ1の始動後、コンデンサCの端子間電圧が約0.6ボルトに達するまでの間、単相モータ1の各コイルL,Lへ、始動トルクを発生させるために充分な電機子電流を流すことが可能となる。
【0047】
前記始動補償回路16は、ロータプリセット回路15のスイッチSWが「待機」端子側にあるときは、コンデンサCの端子間電圧は0.6ボルト未満となっておりトランジスタQはオフしている。一方、スイッチSWが「待機」端子から「運転」端子側に切り替えられると可変抵抗VRが帰還回路14から切り離され、帰還回路14の抵抗値が1kΩ弱から12.2kΩと急激に大きくなる。これにより、インバータ回路12の発振周期が長くなり、単相モータ1の転流周期が長くなって、各コイルL,Lには始動トルクを発生させるために充分な電機子電流が流される。
【0048】
前記各コイルL,Lに流れる電機子電流は、そのままシャント抵抗Rsを流れるシャント電流となり、シャント抵抗Rsの両端電圧が、 マイナス側入力端Nを基準として、約0.6ボルト以上になると(ダイオードDの電圧降下分以上になると)、コンデンサCへの充電が開始され、その端子間電圧が徐々に上昇して約0.6ボルトに達すると、トランジスタQがオンして、帰還回路14の抵抗値が、12.2kΩ(抵抗R,R)から2.2kΩ(抵抗R)に減少する。帰還回路14の抵抗値が減少すると、インバータ回路12の発振周期が前記とは逆に短くなり、単相モータ1の転流周期が短くなって単相モータ1が徐々に高速回転を始める。
【0049】
このように、始動補償回路16は、コンデンサCの端子間電圧が約0.6ボルトに達するまでの間、単相モータ1の転流周期を長くして、各コイルL,Lへ始動トルクを発生させるために充分な電機子電流を流し、単相モータ1を確実に始動するようにしている。しかも、コンデンサCへの充電は、シャント電流(電機子電流)に基づいて行われるので、その端子間電圧が約0.6ボルトに達するまでの時間は、固定された時間とはならず、モータの種類や直流電源50の電圧に応じて変化する時間となる。よって、モータの始動に適切な時間だけ、転流周期を長くした始動モードを維持することができる。
【0050】
なお、スイッチSWを「運転」端子から「待機」端子に切り替えられると、ダイオードDを介してコンデンサCのプラス側端子がダイオードDを介してオペアンプOPの出力端に接続されるので、コンデンサCに蓄積された電荷が急速に放電される。従って、コンデンサCは瞬時のうちに初期状態に戻されるため、再度、スイッチSWを「運転」端子に切り替えても、始動補償回路16を確実に作動させることができる。又、その際トランジスタQは、そのコレクタ端子からベース端子へ漏れ電流を生じるが、かかる漏れ電流はブリーダ抵抗Rによりバイパスされるので、始動補償回路16を正常に作動させることができる。
【0051】
次に、負電圧発生回路17について説明する。この負電圧発生回路17は後述する検出電流増幅回路18に所定の負電圧を供給するようにしたもので、単相モータ1と接続するコンデンサC,負の倍電圧整流回路を形成するダイオードD,D10,定電圧回路を形成するツエナーダイオードD11とによって形成されている。
【0052】
そして、前記一端が単相モータ1と接続するコンデンサCの他端は、ダイオードD10のカソードとダイオードDのアノードとに接続されている。又、前記ダイオードD10のアノードは、コンデンサCの一端とツエナーダイオードD11のアノードに接続する。一方、ダイオードDのカソードはコンデンサCの他端とツエナーダイオードD11のカソードと接続して、直流電源50のマイナス側入力端Nに接続されてる。
【0053】
前記負電圧発生回路17は、インバータ回路12のトランジスタQ,Qのオン・オフ動作(発振動作)によって発生する矩形波を、コンデンサCにより直流分を除去して交流波形に変換し、一対のダイオードD,D10よりなる負の倍電圧整流回路によって負の直流に変換し、これを更に、ツエナーダイオードD11にてリプル(交流)分を除去し、後述する検出電流増幅回路18に負電源として供給するものである。
【0054】
つづいて、前記した検出電流増幅回路18について説明する。この増幅回路18は利得を設定するための抵抗R,R10と、電流検出回路13で検出した電流値を電圧に変換することによって得られる電圧を所定の値に増幅するためのオペアンプOPとによって構成されている。そして、シャント抵抗Rsの入力端には抵抗Rの一端が接続され、その他端は前記オペアンプOPの反転入力端と抵抗R10に接続されており、抵抗R10の他端はオペアンプOPの出力端に接続されている。
【0055】
一方、オペアンプOPの非反転入力端はシャント抵抗Rsの出力端,直流電源50のマイナス側入力端Nに接続されている。前記オペアンプOPの電源、即ち、プラス側の電源は単相モータ1の中間端子gに接続され、マイナス側の電源は負電圧発生回路17の出力端(ツエナーダイオードD11のアノード)に接続されている。
【0056】
そして、検出電流増幅回路18は電流検出回路13の増幅回路としての役割を果す上から、常時は正の電圧の供給を得ることしかできない関係上、前記負電圧発生回路17から負電圧の供給を受けることにより、前記電流検出回路13からの出力を所定の電圧値(抵抗R,R10により設定される)に増幅して、始動補償回路16に送出することができるように構成されている。なお、負電圧を得るには、インバータ回路12における矩形波の交流波形を利用し、これを直接倍電圧整流することにより得ることができる。更に、前記オペアンプOPの出力端は、抵抗R,R,コンデンサC,スイッチSWの切替端子のそれぞれの一端と、トランジスタQのエミッタに接続されている。
【0057】
次に、上記のように構成されたモータ駆動回路11の動作を説明する。スイッチSWを「待機」端子にした状態で直流電源50が投入(接続)されると、待機モードとなって、ロータプリセット回路15が作動する。具体的には、可変抵抗VRの摺動子位置により定まる帰還回路14とロータプリセット回路15との合成抵抗値に基づいて、インバータ回路12の各トランジスタQ,Qが不均等(アンバランス)なデューティ比でオン・オフされる。このアンバランスなオン・オフにより、単相モータ1に直流電流成分が流され、回転子2が所定の位置(例えば、図3(f)の位置)に保持される。
【0058】
なお、待機モードでは、帰還回路14とロータプリセット回路15との合成抵抗値は1kΩ弱と小さいので、転流周期は非常に短く、電機子電流は微小量となっている。よって、待機モードでの通電により、単相モータ1が回転や振動を起こしたり、騒音を発生することはない。
【0059】
次に、前記待機モード時において回転子2を始動モード(運転開始)位置に移動させて所望の方向に的確に起動させる場合について説明する。図3において、回転子2を左方向に回動する場合について説明すると、回転子2の停止状態では、回転子2はその永久磁石の影響(磁束)により図3(a)の位置で停止している。この状態で、単相モータ1の電機子巻線5に回転子2を所定の回転方向への回転を生じさせる向きに断続的に通電する。
【0060】
前記断続的な通電により固定子鉄心6に図3(a)に1点鎖線で示すように磁束が流れ、回転子2は図3(a),(b)で示すように左方向(矢印方向)に回転し、回転子2の磁束軸Xと固定子鉄心6の磁束軸Yとが一致した位置(図3(b))で一旦停止しようとする。しかし、直流成分の断続通電により固定子鉄心6の回転子挿入孔3には、180°の角度間隔を保って弧状の切込部8a,8bが形成されており、この部位において、切込部8a,8bと回転子2との間で切込部8a,8bの存在によりギャップが生じている関係上、固定子鉄心6に流れる磁束の磁気抵抗が増大して回転子2の磁化が弱まることによりコギングトルクが作用する。
【0061】
一方、前記回転子2は断続通電の続行に伴い、固定子鉄心6に設けた切欠部7a,7bの存在により、この部位(隘路A,B)に固定子鉄心6,回転子2の磁束が集中し、前記隘路A,Bの部位に磁極が生じたような現象が発生して、回転子2を図3(c),(e)で示すように、徐々に磁束が整列する方向に、即ち、特定方向(左方向)への回転を続行させる。
【0062】
そして、回転子2が例えば、180°回転した時点で前記断続的な通電を停止すると、前記回転子2は図3(e)で示すように、N極とS極との境界部分aが切込部8a,8bの位置に達すると、前記コギングトルクが良好に作用して前記図3(a)の位置から図3(e)を経て(f)で示すように、回転子2の境界部分aが切欠部7a,7bと切込部8a,8bとの中間位置に傾いて(回動)回転子2は停止し、この位置(図3(f))で回転子2の極性が確定される。
【0063】
この動作を起動時における位置決め動作(プリセット動作)という。なお、回転子2が図3(f)で示すように、境界部分aが切欠部7a,7bと切込部8a,8bとの中間位置で停止することは、有限要素法の磁場解析によるトルク解析によって確認することができた。
【0064】
以上により、単相モータ1の回転子2における初期位置(始動位置)のセットを完了する。この場合、即ち、回転子2のN極とS極の境界部分aが切欠部7a,7bと切込部8a,8bとの中間位置に達すると、回転子2が停止するという現象は、周知の有限要素法の磁場解析によるコギングトルク解析によって確認することができた。又、固定子鉄心6に切欠部7a,7bを形成することにより、この部位の隘路A,Bに磁束の集中によって磁極が存在(現出)することは、回転子2を特定(所定)方向への回転方向性を導き出すのに大いに貢献していると考えられる。
【0065】
このように、固定子鉄心6にU字状の切欠部7a,7bと弧状の切込部8a,8bを形成することにより、これら切欠部7a,7bと切込部8a,8bとにより、固定子鉄心6に鉄心の飽和現象とリラクタンス特性を生起させ、これにより、鉄心の磁気的方向性を生成させ、これにより、回転子2がそのスタート時(起動時)に少しぐらい逆転したとしても、瞬時正常な回転方向にて回転させることが可能となる。
【0066】
前記のようにして、単相モータ1における回転子2の始動位置を設定したら、スイッチSWを切替端子により待機モードから「運転」端子に切り替えると、始動モードとなる。即ち、スイッチSWを「運転」端子に切り替えることにより、ロータプリセット回路15が帰還回路14から切り離され、その動作を停止する。一方、始動補償回路16は、スイッチSWが「待機」端子にある場合には、コンデンサCの充電がダイオードDによって阻止される停止状態にあるが、この状態からスイッチSWを「運転」端子に切り替えることにより、始動モードとなって、始動補償回路16が作動し、コンデンサCの充電が開始される。
【0067】
前記始動モードでは、帰還回路14の抵抗値が12.2kΩ(抵抗R,R)と大きくされ、その分、転流周期が長くなって、単相モータの各コイルL,Lに始動トルクを発生させるために充分な電機子電流が流される。よって、単相モータ1は徐々に始動を開始する。
【0068】
なお、単相モータ1の回転子2は、待機モードにおいて所定の位置に保持されているので、トランジスタQ,Qのいづれからオン動作が始まっても、必ず一定の方向に回転する。具体的には、待機モードにおいて、回転子2が図3(f)の位置に保持されている場合には必ず左方向へ回転する。単相モータ1は、通電第1波または第2波のうち、回転子2の磁場ベクトルと反発する方向の磁場が与えられる通電(図3(f)において、磁場ベクトルが右から左方向へ向かう通電)により、回転を開始するからである。
【0069】
始動モードの継続に伴って、コンデンサCが徐々に充電される。かかる充電により、コンデンサCの端子間電圧が略0.6ボルトに達すると、トランジスタQがオンして、始動モードから定常モードへと移行する。定常モードでは、トランジスタQのオンにより帰還回路14の抵抗値が2.2kΩ(抵抗R)と小さくなるので、インバータ回路12の発振周期が短くなって、転流周期が短くなる。
【0070】
よって、単相モータ1は徐々に高速回転を始め、やがてほぼ定速回転となる。この状態で、直流電源50の投入が続けられることにより、単相モータ1はほぼ定速回転を継続する。なお、略定速時の回転速度は、コイルL,Lに印加される直流電源50の電圧に比例する。即ち、直流電源50の電圧が高いほど高速で回転し、低いほど低速で回転する。よって、直流電源50の電圧値により、ほぼ定速時の回転速度を制御することができる。
【0071】
定常モード(または始動モード)での運転中に、スイッチSWが「運転」端子から「待機」端子に切り替えられると、待機モードへ移行する。即ち、始動補償回路16のコンデンサCがダイオードDにより急速に放電され、トランジスタQがオフされるとともに、ロータプリセット回路15が作動し、単相モータ1へ直流電流成分が流されて、回転子2を所定の位置へ保持するホールディングトルクが加えられる。よって、単相モータ1は徐々に回転を緩め、回転子2を所定の位置にして停止する。
【0072】
この状態で直流電源50がオフされても、回転子2は所定の位置又はその近傍にある。よって、次に直流電源50がオン(接続)された場合に、短時間のうちに回転子2を所定の位置へ保持することができる。回転子2が所定の位置へ保持された後は、単相モータ1をいつでも始動することができるので、単相モータ1を待機モードにしてから直流電源50をオフすることにより、次の単相モータ1の始動までの時間を短縮することができる。
【0073】
前記のように、本実施例のモータ駆動回路11によれば、電流検出回路13と帰還回路14とにより、電機子電流の急増領域を検出して、その検出を転流タイミングとして転流動作を行わせている。よって、速度起電力によらず、電機子電流に基づいて転流タイミングを決定することができるので、単相モータ1であっても180度通電を行うことができ、その始動性を向上することができる。即ち、始動から短時間のうちに高速回転することができるのである。また、電機子電流に基づいて転流タイミングを決定することにより、重負荷時でも、転流に伴う過大なスパイク電圧の影響を受けることなく、的確にモータを駆動(回転)することができるのである。
【0074】
更に、転流タイミングの決定に電機子電流の急増領域を用いているので、電機子電流を平均化する回路や、その平均化された電機子電流を所定倍に増幅する回路が不要となり、回路コストを低減することができる。しかも、インバータ回路12は無安定マルチバイブレータ動作を行うシンプルな回路で構成されるとともに、ロータプリセット回路15や始動補償回路16は、インバータ回路12、電流検出回路13、帰還回路14の各回路と有効に結合して共同動作するように構成されているので、各回路が単独で動作するように構成されている場合に比べて、モータ駆動回路11のコストを大幅に低減することができる。
【0075】
次に、前記説明したモータ駆動回路11は、単相モータ1の電機子巻線5に流れる電機子電流の急増領域が検出され、その電機子電流の急増領域における現出を転流タイミングとして決定することにより、単相モータ1を的確に同期駆動(回転)させるものである。
【0076】
そして、前記単相モータ1において回転時のトルクを得るには、前記回転トルクに見合う電流を電機子巻線5に通電することが必要となり、この電流は電流検出回路13のシャント抵抗Rsにより電圧に変換されて検出される。今、例えば、シャント抵抗Rsが1Aの電流を2Ωの抵抗で検出しようとした場合、2Ωの抵抗を用いることによって生ずる損失は、W=*I*R=2Wとなる。この場合、シャント抵抗Rsを1Ωの抵抗に変更すれば、W=1Wとなり、シャント抵抗Rsによる損失分を半減することが可能となる。
【0077】
前記のように、1Ωのシャント抵抗Rsを用いた場合、その検出電圧は抵抗による損失分を差し引けば半分になる。即ち、抵抗により損失分を減らすには当然のことながら検出電圧も半減する。このため、シャント抵抗Rsに抵抗値の大きいものを使用すれば、この抵抗によって検出される電流の変換により発生する電圧で、インバータ回路12に十分な帰還をかけるための電圧が得られる反面、抵抗値を大きくすることにより、発熱によって生ずる電力の損失は無視することができないものとなっている。
【0078】
一方、シャント抵抗Rsの抵抗値を小さくすれば、発熱による損失はある程度解消することができるものの、検出電圧が小さいため、インバータ回路12に十分な帰還、即ち、負帰還をかけることが難しくなる。本発明は、前記の点を考慮し、電流検出回路13のシャント抵抗Rsによって検出した電機子電流が仮に小電流であっても、これを検出電流増幅回路18により増幅して始動補償回路16に供給し、始動補償回路16からインバータ回路12に十分な負帰還をかけることを可能とした。
【0079】
即ち、本発明は、前記シャント抵抗Rsを抵抗値の小さいものを用いることにより、検出電流が低減したり、あるいは、回転子2の回転スタート時における電機子電流が小電流であっても、シャント抵抗Rsによって検出した電圧を検出電流増幅回路18のオペアンプOPによって良好に増幅して、インバータ回路12に負帰還をかけることができるので、シャント抵抗Rsの発熱による損失が低減でき、電機子電流の検出によって無駄に消費されている電力を良好に軽減し、省エネルギー機能に優れたモータ駆動回路11を提供することができる。
【0080】
又、前記検出電流増幅回路18を機能(駆動)させるには、オペアンプOPに負電圧を供給することが必要となるが、本発明のモータ駆動回路11では、駆動回路11自体が発振動作を常に行っている関係上、正の電源回路より容易に負電圧(負電源)を生成することが可能となる。
【0081】
即ち、本発明は、インバータ回路12に接続する負電圧発生回路17を具備し、かつ、この負電圧発生回路17には、インバータ回路12の発振(オン・オフ)動作によって生ずる矩形波の直流分を除去して交流波形に変換する機能と、この交流波形を負の倍電圧整流回路にて負の直流に変換する機能と、更に、前記負の直流分をリプル分を除去して負の定電圧電源を作る機能とを備えて、常時検出電流増幅回路18に特別に負電圧を供給することができるように構成されているため、モータ駆動回路11の外部から負電圧の供給を必要とせず、モータ駆動回路11を低コストで設計可能とした。
【0082】
以上説明したように、本発明は、電流検出回路13で検出した電機子電流に相当する電圧を検出電流増幅回路18で増幅することにより、電流検出回路13のシャント抵抗Rsによって消費される電力を軽減しても、十分にインバータ回路12に負帰還をかけることを可能にしたので、モータ駆動回路11を低コストで、かつ、省エネルギー化しての製作が可能となる。しかも、前記検出電流増幅回路18に負電圧を供給する場合は、インバータ回路12の発振動作によって生ずる矩形波の交流波形分のみを有効利用し、かつ、これを倍電圧整流することによって容易に負電圧を得ることができるので利便である。
【0083】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、単相ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電機子電流を電流検出回路により検出してこれを電圧に変換し、前記電圧変換した電圧を負電圧として増幅して、インバータ回路に負帰還をかけることにより次の転流タイミングを決定するように構成したので、即ち、本発明は、電流検出回路を構成するシャント抵抗を抵抗値の小さいものを用いることにより、検出電流が低減したり、あるいは、回転子の回転スタート時における電機子電流が小電流であっても、前記シャント抵抗によって検出した電圧を検出電流増幅回路のオペアンプによって良好に増幅して、インバータ回路に負帰還をかけることができるので、シャント抵抗の発熱による損失が低減でき、電機子電流の検出によって無駄に消費されている電力を良好に軽減し、省エネルギー機能に優れたモータ駆動回路を提供することができる。しかも、本発明は前記のように、電流が例え小電流の場合でも、前記のように、負電圧を増幅してインバータ回路に十分な負帰還をかけることができるため、単相ブラシレスモータの起動時においても、大きな始動トルクが得られ、単相ブラシレスモータの起動を円滑・良好に行うことができる。
【0084】
又、前記検出電流増幅回路を機能(駆動)させるには、オペアンプに負電圧を供給することが必要となるが、本発明のモータ駆動回路では、駆動回路自体が発振動作を常に行っている関係上、正の電源回路より容易に負電圧(負電源)を生成することが可能となる。即ち、前記負電圧はインバータ回路のスイッチングパルスを増幅することによって容易に得ることができるため、前記スイッチングパルスを利用することにより、負電圧を生成するための特別な回路を設ける必要がないので、単相ブラシレスモータのセンサレス駆動回路を簡素な構成で安価に、かつ、省エネルギー構造で製作することができる。
【0085】
更に、本発明は、インバータ回路に接続する負電圧発生回路を具備し、かつ、この負電圧発生回路には、インバータ回路の発振(オン・オフ)動作によって生ずる矩形波の直流分を除去して交流波形に変換する機能と、この交流波形を負の倍電圧整流回路にて負の直流に変換する機能と、前記負の直流分をリプル分を除去して負の定電圧電源を作る機能とを備えて、常時検出電流増幅回路に特別に負電圧を供給することができるように構成されているので、モータ駆動回路の外部から負電圧の供給を必要とせず、モータ駆動回路を低コストで設計することができる。しかも、電流検出回路に使用するシャント抵抗は、センサレス駆動回路に前記負電圧発生回路及び検出電流増幅回路を具備させることにより、小容量の抵抗を用いることが可能なため、抵抗値を大きくすることにより発生する熱的損失が軽減できることはもとより、電流検出によって無駄に消費される電力を良好に軽減できるので、省エネルギーに適したセンサレス駆動回路の提供が可能となり利便である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセンサレス駆動回路装置によって駆動するスケルトン形の単相ブラシレスモータの概略的構成図である。
【図2】本発明の実施例として示す永久磁石モータのセンサレス駆動回路装置の回路図である。
【図3】本発明のセンサレス駆動回路装置により始動する回転子の回転位置決め状況を順次説明するための説明図である。
【図4】従来の単相ブラシレスモータを示す概略的な構成図である。
【図5】従来の単相ブラシレスモータの動作状況を順次説明するための説明図である。
【符号の説明】
1 単相ブラシレスモータ
2 回転子
3 回転子挿入孔
5 電機子巻線
6 固定子鉄心
11 センサレス駆動回路装置
12 インバータ回路
13 電流検出回路
14 帰還回路
15 ロータプリセット回路
16 始動補償回路
17 負電圧発生回路
18 検出電流増幅回路

Claims (1)

  1. 永久磁石モータの電機子に交番電圧を通電するインバータ回路と、そのインバータ回路により転流を行わせて、前記永久磁石モータを回転させる制御回路とを備えた永久磁石モータのセンサレス駆動回路において、前記永久磁石モータは単相ブラシレスモータで構成されるとともに、その単相ブラシレスモータの制御回路には、単相ブラシレスモータの電機子巻線に流れる電流を検出しこれを電圧変換する電流検出回路と、前記電流検出回路により検出した電機子電流を電圧変換して得られる電圧を負電圧としてオペアンプにより所定の電圧値に増幅し、前記電流検出回路の検出電流が低減した場合、前記負電圧によりインバータ回路に負帰還をかけるように構成した検出電流増幅回路と、前記インバータ回路のスイッチングパルスをその直流分を除去して交流波形に変換するコンデンサと、負の倍電圧整流回路を構成して前記交流波形を負の直流に変換するダイオードと、更に、前記負の直流からリプル分を除去して定電圧回路を構成するためのツエナーダイオードとによって形成して負電圧を前記検出電流増幅回路に負電源として供給する負電圧発生回路が具備されていることを特徴とした永久磁石モータのセンサレス駆動回路装置。
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