JP3617945B2 - 誘導加熱装置およびそれを備える画像形成装置 - Google Patents

誘導加熱装置およびそれを備える画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式電子写真機器における定着装置、湿式電子写真機器における乾燥装置、インクジェットプリンタにおける乾燥装置、リライタブルメディア用消去装置等で好適に実施される誘導加熱方式を用いた加熱装置およびそれを備える画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ローラ式の加熱装置において、たとえば電子写真方式の複写機やプリンタに使用されている定着装置では、加熱ローラ内にハロゲンランプを設け、このハロゲンランプによって加熱ローラを加熱するようにした構成が従来から広く用いられている。しかしながら、加熱開始時の立ち上がりが遅いという問題があり、近年、導電層を備えて加熱ローラを形成し、加熱ローラ内に備えられた磁界発生手段からの交番磁界を前記加熱ローラに与えることで、該加熱ローラに発生する渦電流によるジュール熱を用いて該加熱ローラ自体を発熱させるようにした誘導加熱方式の定着装置が注目されている。
【0003】
このような誘導加熱方式の定着装置は、たとえば、登録特許第2616433号に記載される。
【0004】
上述のようなローラ式誘導加熱装置は、前記加熱ローラ自体が発熱するので、前記ハロゲンランプを用いた加熱装置よりも効率がよいものの、さらに効率よく加熱するためには、表皮効果を加味して、加熱ローラの熱容量を少なく、たとえば薄くする必要がある。そのため、加熱ローラの保温性が低下して冷え易くなり、加熱停止後に再加熱する場合、再度規定の温度に設定されるまでに時間を要し、応答性に劣るという問題があった。
【0005】
また、上記の第2616433号公報に開示される定着装置は、図16に示されるようにヒートローラ201と加圧ローラ202から成るローラ対を基本に構成されており、ヒートローラ201は、ローラ外周部に配置された加熱コイル209と絶縁支持体208より成る誘導加熱体207によって発生する交番磁界を受けることで所定の温度に昇温される。
【0006】
一方、現像工程(図示せず)を経て定着部に送られてきた未定着像を有する用紙222は、所定の温度に昇温されたヒートローラ201と加圧ローラ202によって形成された接触ニップ部を通過する。このとき、用紙222上の未定着像は、熱と圧力により用紙222に定着される。
【0007】
このように、ヒートローラ201と加圧ローラ202とから成る標準的な構成の定着装置において、ヒートローラ201を加熱する誘導加熱体207をヒートローラ201の外側に配置すると、加熱コイル209に供給する電力のほとんどがヒートローラ201の温度上昇に用いられるため、加熱効率が高められるという誘導加熱方式の特徴の他に、ヒートローラ201の組付作業の簡略化を実現できるとともに、ヒートローラ201を小径に構成することができ、定着装置およびレーザプリンタの小型化が可能となることが述べられている。
【0008】
しかしながら、上記従来の定着装置には、以下のような問題点があった。
(1)加熱コイル(誘導コイル)は、自身に流れる電流の作用でジュール熱を発生するため、コイルの温度は通電とともに上昇する。そのため、絶縁支持体(絶縁部材)上に加熱コイルを一体成形すると、繰り返し運転時に、熱膨張の差から両者が剥離してしまうなどの問題があった(線膨張係数の差が大きいため)。
(2)加熱コイル部が絶縁支持体上に直接成形されていると、ヒートローラ(加熱部材)からの温度が絶縁支持体を介して直接熱伝導の形で伝わるため、加熱コイルの温度が上昇し、抵抗成分を増加させるので効率が低下するという問題があった。
(3)加熱効率はまだ充分なものではなく、ロスが存在する。そのため、加熱効率を改善しようとすると、コイルのターン数の増加や加熱コイルをヒートローラ(加熱部材)に近接して配置する、などの対応を実施しなければならなかった。
【0009】
しかし、コイルのターン数の増加は、加熱コイルを構成する線素長さの増加を招くため抵抗成分が増加するし、加熱コイルをヒートローラに近接して配置すると、加熱コイルの温度が、ヒートローラからの熱の影響を受けて上昇することにより抵抗成分が増加するので、いずれも加熱コイルでのジュール熱による損失増大を招くため、限度があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、温度変動を抑えるとともに、ウオームアップが速く、熱効率に優れ、低コストで安全性、信頼性の高い誘導加熱装置およびそれを備える画像形成装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、変動磁界中で電流が誘導される導電層、および中空構造を有する加熱部材と、
加熱部材を外囲するように配置され、導電層に変動磁界を発生させるための磁界発生手段と、
加熱部材に対向配置され、加熱部材との間にシート状の被加熱材を挟圧搬送するための加圧部材と、
加熱部材の内壁との間に空気層を介し、加熱部材の内部空間に配置される熱容量が大きい蓄熱部材とを備えたことを特徴とする誘導加熱装置である。
【0012】
本発明に従えば、誘導加熱で効率よく加熱するためには、表皮効果を加味して加熱ローラ(加熱部材)の熱容量を少なくする必要がある。そのため、冷え易くなるという欠点があった。そこで、加熱ローラの蓄熱を行おうとする場合、磁界発生手段が加熱ローラ内に配置されていると、コイルの温度も高くなり、コイルの絶縁被覆が困難になるだけでなく、ジュール損が増加するという問題が生じる。コイルの抵抗値をR、コイルに流れる電流値をIとした場合、ジュール損は、IRで表わされる。
【0013】
このため、加熱ローラを中空形状として、前記磁界発生手段を該加熱ローラを外囲するように配置し、空いた加熱ローラの内部空間に、空気層を介して熱容量が大きい蓄熱部材を設け、該加熱ローラを熱し易く冷え難くして、加熱終了後の放熱を抑え、温度低下を少なくする。すなわち、蓄熱部材を空気層を介して配置するので、加熱時に、加熱ローラの熱が直接蓄熱部材に流れ込むことがないので、立ち上がり時間には殆ど影響を与えることはなく、また加熱時のエネルギの増加を招くこともなく、蓄熱効果のみを発揮させる。
【0014】
これによって、再加熱時には、蓄熱部材の保熱効果と併せて加熱ローラを規定の温度値に立ち上げる時間を短縮することができるとともに、待機時の予熱運転に必要な電力を少なくすることができる。以上の効果により、たとえば省エネルギ即熱定着装置を実現できる。
【0015】
また本発明は、上記蓄熱部材を支持する支持部材の断面積は、蓄熱部材から離れるとともに変化することを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、支持部材の断面積を蓄熱部材との距離に応じて変化させるので、支持部材の熱抵抗が途中で変化し、蓄熱部材が蓄えた熱を、外部に逃げ難くすることができる。
【0017】
また本発明は、上記支持部材は、断熱性を有する材料で構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、支持部材を熱伝導の低い部材で構成することで、蓄熱部材が蓄えた熱を、外部に逃げにくくすることができる。
【0019】
また本発明は、上記加熱部材の開口部に空気の流出入を制限する封止部材を配設することを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、空気の流出入を抑えることで、蓄熱部材が蓄えた熱を、外部に逃げにくくすることができる。
【0023】
また本発明は、前記誘導加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0024】
本発明に従えば、前述の優れた効果を達成する画像形成装置を得ることができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1実施形態の誘導加熱装置である乾式電子写真機器における定着装置101の軸直角方向での断面図であり、図2(a)はその定着装置101の軸線方向での断面図である。定着装置101は、大略的に、加熱ローラ(加熱部材)102と、加圧ローラ(加圧部材)103と、磁界発生部材(磁界発生手段)104と、蓄熱部材105とを備えている。加熱ローラ102は、中空構造を有し、被加熱材を加熱する。加圧ローラ103は、加熱ローラ102に対向配置され、図示しない弾性部材によって加熱ローラ102を押圧する方向に付勢されている。磁界発生部材104は、加熱ローラ102を外囲するように配置される。蓄熱部材105は、加熱ローラ102内に空気層を介して配置される。
【0040】
こうした構成の定着装置101は、加熱ローラ102と加圧ローラ103との間に被加熱材であるシート状の記録紙106を挟圧搬送することによって、記録紙106に転写されたトナーを、加熱溶融させて記録紙106に定着させる。図1では、定着前のトナー107は、定着後のトナー108に変化している。
【0041】
加熱ローラ102は、交番磁界中で発熱する導電層109を少なくとも1層備え、その外周面が離型層110で被覆されて形成された中空の筒状体の両端が、ベアリング111によって図示しない機体に回転自在に支持されて構成されている。導電層109は、ニッケル・クロム等の金属材料およびSi−Fe合金(ケイ素鋼)・Al−Fe合金・Ni−Fe合金・Co−Fe合金等のフェライト合金系の材料などの磁束当りの発熱量の大きい材料から成る。また、離型層110は、シリコーンゴムおよびPFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂などの溶着トナーの剥離性の良好な材料から成る。加熱ローラ102は、たとえば外径30mm、内径28mmに形成され、離型層110は、導電層109と磁界発生部材104とが近接するように、たとえば50μmに形成される。
【0042】
加圧ローラ103は、たとえば直径15mmのアルミニウム製の芯材に、厚さ7.5mmのシリコーンゴムから成る弾性体層を設けて形成される。また加圧ローラ103は、ばね等の弾性部材にて加熱ローラ102に対し、たとえば荷重100Nで圧接する。これによって、定着ニップ部Y(定着ニップ幅3.5mm)が形成される。さらに、加熱ローラ102は、図示しない駆動手段によって回転するよう構成されており、加熱ローラ102の回転に従動して加圧ローラ103が回転する構成となっている。
【0043】
蓄熱部材105は、熱容量の大きい部材であればよく、たとえばアルミニウム・鉄等の金属やPPS(ポリフェニルサルファイド)・PI(ポリイミド)等の耐熱樹脂などから成る。特に、鉄で構成することによって、漏れ磁束によって加熱されるので、蓄熱効果をより大きくすることができる。筒状に形成されるこの蓄熱部材105は、その両端部に嵌まり込む大径の板状部112aと、前記機体側で回転自在に軸支される小径の軸部112bとから成る断熱部材112によって、図示しない前記機体に回転自在に支持されるとともに、その内部が気密に封止される。
【0044】
断熱部材112は、たとえばPPSやPI・フッ素樹脂などの一般的な耐熱樹脂から成る。蓄熱部材105の内部は、図1および図2(a),図2(b)では中空になっているけれども、中実であってもよい。また、中空の場合、内部は空気層のままであってもよく、また液体等を封入してもよい。さらにまた、図2(a)では、蓄熱部材105と断熱部材112とが別部材で構成されているが、図2(a)から明らかなように、軸直角方向の断面積が、蓄熱部材105側(大径の板状部112a)と断熱部材112側(小径の軸部112b)とで異なり、前記機体側への熱伝導を制御できる場合には、同一材質で構成してもよい。また、図2(b)に示すように、断熱部材112側の断面積をさらに小さくするようなスリット117を構成してもよい。
【0045】
磁界発生部材104は、たとえば、図3(a)に示すようにアルミニウムの中実線で表面に絶縁被膜(たとえば樹脂・酸化膜)が塗布された素線が、空芯で巻回された構成のものが使用される。あるいは、図3(b)に示すように、パーマロイ・センダスト・ミューメタル・純鉄・ケイ素鋼等から成るコア114を有し、PPS(ポリフェニルサルファイド)・PI(ポリイミド)等の耐熱樹脂から成るボビン115に、コイル116を巻回して構成したものを用いてもよい。磁界発生部材104は、励磁回路118に接続されている。加熱ローラ102の外周面には、ニップ部Y近傍に、サーミスタ等から成る温度検知素子113が当接しており、その検知結果および画像形成要求などに応答して、前記磁界発生部材104に高周波電流が印加され、予め規定された温度となるように制御される。
【0046】
磁界発生部材104は、ニップ部Yを除いて、加熱ローラ102を外囲するように、かつ近接して配設されている。したがって、誘導コイル(磁界発生部材104)を加熱ローラ102内に配置する構成に比べて、単位電流当りに加熱ローラ102を通過する磁束を増加させることができ、高効率であるとともに、組立てが容易で、ローラ径を小径にできる等、製造や設計の自由度を向上することができる。
【0047】
次に、上記のように構成された定着装置101の動作について説明する。まず、ウォームアップ時において、励磁回路118がONとなり、誘導コイルが励磁され、加熱ローラ102の導電層109に交流渦電流が誘起され、ジュール熱により発熱する。このときの発熱量は、たとえば800Wである。また、励磁回路118による通電が開始すると同時に、加熱ローラ102が回転駆動することにより加圧ローラ103が従動回転する。加熱ローラ2の表面温度は温度検知素子113によって常時検知され、加熱ローラ102の表面温度が規定の温度(たとえば180℃)に達すると、ウォームアップが完了し、励磁回路118による誘導コイルへの通電がON−OFF制御に切換わり、加熱ローラ102の表面温度が前記の規定温度に維持される。
【0048】
次に、未定着トナー107の像が転写された記録紙106が定着ニップ部Yに搬送され、加熱ローラ102の熱および加圧ローラ103の圧力によりトナー108の像に溶融定着され、記録紙106上に固定され堅牢な画像となる。
【0049】
図4は、定着装置101の一適用例であるカラー画像形成装置150の概略断面図である。カラー画像形成装置150は、4色の可視像形成ユニット140Y,140M,140C,140Bを記録紙106の搬送路に沿って配列した、いわゆるタンデム式のプリンタである。具体的には、記録紙106の供給トレイ120と定着装置101とを繋ぐ記録紙106の搬送路に沿って、4組の可視像形成ユニット140Y,140M,140C,140Bを配設し、記録紙搬送手段130の搬送ベルト133によって搬送される記録紙106に、各色トナーを多重転写した後、定着装置101によってこれを定着してフルカラー画像を形成するものである。記録紙搬送手段130は、一対の駆動ローラ131およびアイドリングローラ132によって架張され、所定の周速度(本実施では134mm/s)に制御されて回動する無端状の搬送ベルト133を有し、このベルト上に記録紙106を静電吸着させて搬送する。各可視像形成ユニット140Y,140M,140C,140Bは、感光体ドラム141の周囲に、帯電ローラ142、レーザ光照射手段143、現像器144、転写ローラ145、クリーナ146を配置して構成されており、各ユニットの現像器にはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各トナーがそれぞれ収容されている。各可視像形成ユニット140Y,140M,140C,140Bは、以下の工程によりトナー画像を記録紙106上に形成する。
【0050】
すなわち、感光体ドラム141表面を帯電ローラ142で一様に帯電した後、レーザ光照射手段143により感光体ドラム141表面を画像情報に応じてレーザ露光し、静電潜像を形成する。その後、現像器144により感光体ドラム141上の静電潜像に対しトナー像を現像し、この顕像化されたトナー像をトナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された転写ローラ145により記録紙搬送手段130によって搬送される記録紙106に順次転写するようになっている。
【0051】
その後、記録紙106は駆動ローラ131の曲率により搬送ベルト133から剥離された後、定着装置101に搬送される。そこで前述のとおり、規定の温度に保たれた加熱ローラ102および加圧ローラ103により適度な温度と圧力が与えられる。トナーは溶解し記録紙106に固定され、堅牢な画像となる。
【0052】
以上のように本発明の誘導加熱式の定着装置101は、加熱ローラ102を中空形状として、磁界発生部材104を該加熱ローラ102を外囲するように配置し、その加熱ローラ102内に、空気層を介して、蓄熱部材105を備えている。
【0053】
したがって、誘導加熱で効率よく加熱するために、表皮効果を加味して加熱ローラ102の熱容量を少なくしても、蓄熱部材105によって加熱ローラ102の放熱を抑え、温度低下を少なくすることができるとともに、加熱時には、加熱ローラ102で発生した熱が直接蓄熱部材105に流れ込むことがないので、立ち上がり時間には殆ど影響を与えることはなく、また加熱時のエネルギの増加を招くこともない。このようにして、加熱ローラ102を熱し易く冷え難くすることができ、再加熱時の立ち上げ時間を短縮することができるとともに、待機時の予熱運転に必要な電力を少なくすることができ、省エネルギな熱定着装置を実現することができる。
【0054】
また、蓄熱部材105を支持する断熱部材112の断面積が、該蓄熱部材105側の大径の板状部112aと、機体側の小径の軸部112bとで異なるように形成されているので、蓄熱部材105が蓄えた熱を、外部に逃げにくくすることができる。
【0055】
なお、特許第2616433号公報には、加熱ローラを外囲するように磁界発生手段を配置することが記載されているけれども、加熱ローラの内部は中空のままであり、前記ハロゲンランプを用いた加熱装置よりも効率がよいものの、加熱ローラの熱容量を小さくして始動時の立ち上げ時間を短縮すると、加熱ローラは冷え易くなり、再加熱時の立ち上げに長時間を要し、応答性に劣る。これに対して、熱容量を大きくすると、再加熱時の応答性は向上するけれども、始動時の立ち上げ時間が長くなってしまう。
【0056】
図5は、本発明の第2実施形態の定着装置151における加熱ローラ102部分の軸線方向断面図である。定着装置151において、前述の定着装置101に類似し、対応する部分には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。注目すべきは、この定着装置151では、加熱ローラ102の両端の開口部に、空気の流出入を制限する封止(遮断)部材152を設けていることである。
【0057】
これによって、加熱ローラ102内が気密に封止され、蓄熱部材105が蓄えた熱を、一層外部に逃げにくくすることができる。封止部材152は、前述した断熱部材112と同様の材料が使用される。
【0058】
図6は、本発明の第3実施形態の定着装置161における加熱ローラ102部分の軸線方向断面図である。定着装置161において、前述の定着装置101に類似し、対応する部分には、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。定着装置161では、加熱ローラ102内に蓄熱部材105は設けられておらず、加熱ローラ102の両端の開口部に、空気の流出入を制限する封止部材152が設けられている。
【0059】
これによって、加熱ローラ102内が気密に封止され熱を蓄えることができる。さらに、加熱ローラ102内部に蓄熱部材105を設けていないので、加熱ローラ102の径を小さくする上で制限を受けない。したがって、定着装置161をこのように構成することにより、画像形成装置の小型化が図れる。なお、この場合も、封止部材152は前述した断熱部材112と同様の材料を使用することができる。
【0060】
なお、第2実施形態および第3実施形態についても、第1実施形態と同様に、図4のカラー画像形成装置150に適用可能である。
【0061】
本実施形態による誘導加熱装置は、たとえば電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として適用されるものである。図7は本発明を適用した定着装置の概略断面図であり、これを用いて基本構成について説明する。
【0062】
図7に示すように、本実施形態の定着装置301では、加熱部材に円筒状のローラ(加熱ローラ)302を使用し、加熱ローラ302に当接した加圧ローラ(加圧部材)303と加熱ローラ302によって形成された定着ニップ部Yに、トナーなどの熱溶融樹脂で記録紙(被加熱材)306上に画像を形成した未定着用紙を通過させることで熱と圧力により、記録紙306に画像を固定するよう構成されている。
【0063】
加熱ローラ302を加熱する誘導コイル(磁界発生手段)304は、加熱ローラ302の外周部に配置されている。加熱ローラ302の温度を検知する温度検知素子(サーミスタ)351は、加熱ローラ302上に当接されており、この検知結果をもとに励磁回路352により誘導コイル304を制御する。
【0064】
誘導コイル304は、加熱ローラ302の半円周を覆うような形状を有し、加熱ローラ302と反対側の領域に磁性部材353が配置されている。該磁性部材353と誘導コイル304は、絶縁性のホルダ部354に取付けられている(図10〜図12参照)。
【0065】
以上が、第4実施形態の最も基本的な構成である。次に、図7を用いて第4実施形態を詳細に説明する。
【0066】
加熱ローラ302は、変動磁界を受けて発熱するために少なくとも1層以上の導電層350を有するよう構成されている。該導電層350は、比透磁率の大きいものが適している。たとえば、鉄や磁性ステンレス(SUS430など)、珪素鋼板、電磁鋼板、ニッケル鋼等から構成されることが望ましい。また、比透磁率が低い材料であっても、抵抗率が大きい材料(たとえば非磁性ステンレス:SUS304など)は、渦電流発生時の発熱量が大きいので使用してもよい。あるいは、非磁性のベース部材(たとえば、セラミックなど)に比透磁率の高い前記材料が導電性を有するように配置されているような構成であってもよい。本実施形態では、加熱ローラ302にφ30mm・厚さ0.4mmの鉄ローラ(材質:STKM)を使用している。
【0067】
加熱ローラ302の表面には、トナーがオフセット(加熱ローラ302に付着)するのを防ぐために、離型層309を有するように構成されている。離型層309には、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系の材料やシリコンゴム、フッ素ゴムなどが適している。本実施形態では、PTFEを20μmコートしている。
【0068】
次に、磁界発生手段である誘導コイル304について説明する。誘導コイル304の目的は、加熱ローラ302を渦電流で発熱することにある。図7のように誘導コイル304を加熱ローラ302の外側に配置すると、曲率が存在するため、誘導コイル304の中心側に磁束が集中し、渦電流の発生量が多くなる。加熱ローラ302の材料を高透磁率のものにするとさらに磁束が集中するので、加熱効率が改善されるのは前述の通りである。
【0069】
次に、本実施形態で使用した誘導コイル304の形状を図8に示す(平面図・正面図・側面図の3図面)。本実施形態では耐熱性を考慮してアルミニウム単線(表面絶縁層(たとえば酸化膜)あり)を使用しているが、銅線もしくは銅ベースの複合部材線であってもよいし、リッツ線(エナメル線等を撚り線にしたもの)であってもよい。いずれの線材を使用しても、コイルでのジュール損を抑えるためには、誘導コイル304の全抵抗値は0.5Ω以下、望ましくは0.1Ω以下であるほうがよい。また、図示した誘導コイル304は、加熱ローラ302の長手方向に1つしか存在しないが、定着させる記録紙306のサイズに応じて複数個配置してもよい。
【0070】
次に、誘導コイル304のさらに外側に誘導コイル304に沿って配置される磁性部材353について説明する。磁性部材353の材料は、加熱ローラ302よりも高透磁率な材料で構成されることが望ましく、フェライト(ニッケル・マンガン系やマンガン・フェライト系など)や珪素鋼板・電磁鋼板などが適している。磁性部材353は導電性があるとその部分で渦電流が発生するので、焼結で形成することや、積層構造にすることが望ましい。本実施形態では、ニッケル・マンガン系のフェライト焼結合金を使用した。
【0071】
次に、該磁性部材353の配置構造について説明する。図9に示すように、本実施形態において、該磁性部材353は、耐熱樹脂性のホルダ部354を介して前記誘導コイル304に取付けられている。
【0072】
該磁性部材353の断面形状は、加熱ローラ302の長手方向に一定であるが、加熱ローラ302に鎖交する磁束分布が該磁性部材353の影響を受けるという特徴を利用して、加熱ローラ302の長手方向に断面形状を変化させ、磁性部材353の厚さをt1,t2とすると、t1<t2とすることで加熱ローラ302の温度分布を制御してもよい(図10)。また図11に示すように、円周方向の長さに変化をもたせる(周方向の長さをw1,w2とすると、w1<w2とする)形態、誘導コイル304との距離を加熱ローラ302の長手方向に変化させる(図12)などの構成にしても同様の効果を得ることができる。上記各図において、磁性部材353は断面形状を急峻に変化させた場合の例を示しているが、断面形状は滑らかに連続的に変化するように構成してもよい。この場合、該磁性部材353は、形状が異なる部分を別の磁性部材353で構成してもよく、また、比透磁率の異なる複数の磁性部材353を配置してもよい。さらに、上記磁性部材353は、図10〜図12に示した形態をそれぞれ個別に構成してもよく、これらを組合せて構成してもよい。
【0073】
このように磁性部材353を誘導コイル304の外側に配置することで、誘導コイル304の巻き方如何にかかわらず、容易に温度分布を制御できる定着装置301を実現できる。また、誘導コイル304が曲率を有しているため、加熱ローラ302への磁束集中効果が大きいので、少ない該磁性部材353で効果的に磁束を集中させることができる。
【0074】
加圧ローラ303は、鉄・ステンレスもしくはアルミニウムの芯金上に、シリコンゴムなどの耐熱弾性体層を有するように構成されている。表面には、離型層が形成されていてもよい。該加圧ローラ303は、図示しない弾性部材(バネ)によって、加熱ローラ302に100Nの力で圧接されている。これにより加熱ローラ302との間に幅が3.5mm程度の定着ニップ部Yが形成される。
【0075】
次に、上記のように構成された本実施形態の定着装置における定着動作について説明する。まずウォームアップ時において、誘導コイル304に接続された励磁回路352がONとなり、誘導コイル304が励磁され、加熱ローラ302の導電層350に交流渦電流が励起され、ジュール熱により発熱する。このときの発熱量は約800Wである。また、励磁回路352による通電が開始すると同時に、加熱ローラ302が回転駆動することにより加圧ローラ303が従動回転する。加熱ローラ302の表面温度は温度検知素子351によって常時検知され、加熱ローラ302の表面温度が所定の温度(本実施形態では180℃)に達すると、ウォームアップが完了し、励磁回路352による誘導コイル304への通電がON−OFF制御に切換わり、加熱ローラ302の表面温度が所定の温度に維持される。
【0076】
次に、未定着トナー像が転写された記録紙(被加熱材)306が定着ニップ部Yに搬送され、加熱ローラ302の熱および加圧ローラ303の圧力によりトナー像は溶融定着され、記録紙306上に固定され堅牢な画像となる。
【0077】
以上に述べた誘導加熱装置は、定着装置に限らず、湿式電子写真機器における乾燥装置・インクジェットプリンタにおける乾燥装置・リライタブルメディア用消去装置等の加熱装置としても用いることができる。
【0078】
図13に本発明の第5実施形態を示す。同図に示すように、基本的な構成は、第4実施形態と同じであり、第4実施形態と異なる点は、誘導コイル304と加熱ローラ302との間に絶縁部材355が備えられている点であり、両者が個別に分離できる構成となっている点である。絶縁部材355と誘導コイル304取付け部の詳細図を図14に示す(磁性部材353は省略している)。絶縁部材355は、加熱ローラ302の外周面をカバーするように構成されている。絶縁部材355の材料としては、PPS(ポリフェニルサルファイド)やPI(ポリイミド)、セラミック等の耐熱性を有するものが適している。また、絶縁部材355には、誘導コイル304を保持するコイル取付けリブ356とホルダ部354があり、このコイル取付けリブ356とホルダ部354により誘導コイル304を挟持することにより、誘導コイル304が絶縁部材355と全面で密着しないように構成されている。このような構成(絶縁部材355と誘導コイル304が別の部材で構成されていること、あるいは、誘導コイル304の一部が絶縁部材355に固定されて構成されていること)により、線膨張係数の違いによる両者の熱膨張の差を吸収することができるので、両者を一体化して構成した場合に生じる剥離を防止することができる。
【0079】
また、誘導コイル304と絶縁部材355の接触面積を少なくすることで、加熱ローラ302から絶縁部材355を通して誘導コイル304に伝わる熱を少なくすることができる。すなわち、誘導コイル304の雰囲気温度が下がり、温度上昇に伴って発生するジュール損を低減することができる。
【0080】
図15に、本発明の第6実施形態を示す。この場合も基本的な構成は第4実施形態と同様であり、第4実施形態と異なる点は、誘導コイル304と加熱ローラ302との間に絶縁部材355が備えられており、該絶縁部材355が絶縁層359と断熱部材357と良熱伝導性の非磁性部材358とにより構成されている点である。
【0081】
絶縁層359には、上述したPPS,PIおよびセラミックなどの材料が用いられる。上記断熱部材357は、加熱ローラ302から伝わる熱の伝導性を抑制するために配置されているものである。材料としては、耐熱性を有するシリコン系やウレタン系のスポンジ(発泡体)やアミド系やアラミド系等の耐熱繊維で構成された不織布、ガラスウール等が適している。本実施形態では、シリコン耐熱スポンジを用いている。また、耐熱特性を向上させるために、絶縁部材355自体を多孔質構造を有する部材で構成したり、内部にガラス繊維を含有する複合部材で構成してもよい。
【0082】
本実施形態においては、上記絶縁部材355の加熱ローラ302側に良熱伝導性部材358を配置するのがより望ましい。このように構成することで、加熱ローラ302から誘導コイル304に到達する熱の場所による不均一性を低減することができるので、絶縁部材355の熱の分布によるネジレやたわみを防止することができる。また、誘導コイル304周囲の温度分布が一様になるので、誘導コイル304表面に形成されている表面絶縁層の寿命を延ばすことができる。
【0083】
上記良熱伝導性部材358は、誘導コイル304による変動磁場の影響を受けないように低透磁率の良導電体、たとえば、アルミニウムや銅であることが望ましい。本実施形態においては、アルミニウムの薄膜を使用した。
【0084】
また、上記良熱伝導性部材358は、断熱部材357の加熱ローラ302側、あるいは、誘導コイル304側の何れかの面に少なくとも1層あればよく、定着装置371の外部にまで導くように配置してもよい。このように構成することにより、加熱ローラ302から誘導コイル304に到達する熱流束がさらに抑えられるため誘導コイル304の周囲の温度が低下し、誘導コイル304の表面絶縁層の寿命を延ばすことができる。
【0085】
さらに、加熱ローラ302からの熱輻射を抑えるために、絶縁部材355や断熱部材357、あるいは、良熱伝導性部材358の表面が低放射率になるように表面処理されてもよい。この表面処理としては、アルミニウムや銅を蒸着やスパッタで薄層形成する、白系の耐熱塗料塗布する、表面性をよくする(表面粗さをよくする)などの方法がある。
【0086】
なお、本実施形態では、誘導コイル304の外側に磁性部材353を備えた構成に適用した場合を示しているが、本構成を磁性部材353のない場合に適用しても同様の効果を得ることができる。
【0087】
第4実施形態の定着装置301並びに第5および第6実施形態の定着装置361,371は、図4に示したカラー画像形成装置150に適用可能である。なお、カラー画像形成装置150の動作は、第1実施形態の場合と同様であり、説明は省略する。
【0088】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、加熱ローラ(加熱部材)の内部空間に蓄熱部材を配置させることによって、加熱ローラを熱し易く冷え難くして、加熱終了後の放熱を抑え、温度低下を抑えることができる。
【0089】
また本発明によれば、支持部材の断面積を蓄熱部材からの距離に応じて変化させるので、支持部材の熱抵抗が途中で変化し、蓄熱部材が蓄えた熱を、外部に逃げ難くすることができる。
【0090】
また本発明によれば、支持部材を熱伝導の低い部材で構成することで、蓄熱部材が蓄えた熱を、外部に逃げにくくすることができる。
【0091】
また本発明によれば、封止部材を配設し、空気の流出入を抑えることで、蓄熱部材が蓄えた熱を、外部に逃げにくくすることができる。
【0093】
また本発明によれば、前述の優れた効果を達成する画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の誘導加熱装置である定着装置の構造を示す軸直角方向での断面図である。
【図2】図2(a)は、図1で示す定着装置の軸線方向での断面図であり、図2(b)は、断熱部材にスリットを設けた構成を示す図である。
【図3】図1および図2で示す定着装置におけるコイル形状を示す斜視図である。
【図4】定着装置の一適用例であるカラー画像形成装置の概略断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の定着装置における加熱ローラ部分の軸線方向断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の定着装置における加熱ローラ部分の軸線方向断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態である誘導加熱装置の概略構成図(断面図)である。
【図8】図8(a)は、本発明の誘導加熱装置に適用される磁界発生手段(誘導コイル)の概略構成を示す平面図であり、図8(b)はその正面図、図8(c)はその側面図である。
【図9】本発明の誘導加熱装置において、磁性部材を磁界発生手段に取付ける状態を示す図である。
【図10】本発明における磁性部材の形態例を示す図である。
【図11】本発明における磁性部材の別の形態例を示す図である。
【図12】本発明における磁性部材のさらに別の形態例を示す図である。
【図13】本発明の第5実施形態である誘導加熱装置の構成例を示した図である。
【図14】図13に示した誘導加熱装置において、絶縁部材に磁界発生手段を取付ける状態を示す図である。
【図15】本発明の第6実施形態である誘導加熱装置の構成例を示した図である。
【図16】従来の誘導加熱装置の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
101,151,161,301,361,371 誘導加熱装置(定着装置)
102,302 加熱ローラ(加熱部材)
103,303 加圧ローラ(加圧部材)
104,304 磁界発生手段(誘導コイル,磁界発生部材)
105 蓄熱部材
106,306 記録紙(被加熱材)
109,350 導電層
110,309 離型層
111 ベアリング
112,357 断熱部材
152 封止部材
118,352 励磁回路
353 磁性部材
354 ホルダ部
355 絶縁部材

Claims (5)

  1. 変動磁界中で電流が誘導される導電層、および中空構造を有する加熱部材と、
    加熱部材を外囲するように配置され、導電層に変動磁界を発生させるための磁界発生手段と、
    加熱部材に対向配置され、加熱部材との間にシート状の被加熱材を挟圧搬送するための加圧部材と、
    加熱部材の内壁との間に空気層を介し、加熱部材の内部空間に配置される熱容量が大きい蓄熱部材とを備えたことを特徴とする誘導加熱装置。
  2. 上記蓄熱部材を支持する支持部材の断面積は、蓄熱部材から離れるとともに変化することを特徴とする請求項1記載の誘導加熱装置。
  3. 上記支持部材は、断熱性を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の誘導加熱装置。
  4. 上記加熱部材の開口部に空気の流出入を制限する封止部材を配設することを特徴とする請求項1〜3項のいずれかに記載の誘導加熱装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の誘導加熱装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
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