JP3617685B2 - 船外機の水飛散防止装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、船外機前部に当たって飛散した水が船外機上部にかかるのを防ぐ船外機の水飛散防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の船外機としては、船体の船尾板から後上方に飛散する水飛沫や船外機ケーシングの前面が水を切ることにより生じる水飛沫が船外機上部のカウリング内や船内に入り込むのを抑えるために水飛沫抑制板を備えたものがある。この水飛沫抑制板は、船外機ケーシングの前部における水面より僅かに上側となる部位に船外機前方へ向けて略水平に突出しており、前記水飛沫が上方へ飛散するのを遮るように構成されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、このように水飛沫抑制板を使用したとしても、船外機上部に水飛沫が飛散することがあった。これは、航走時には船尾板の直後で水が船尾板に対して上側に盛り上がるようになって船外機前方での水位が上昇するからであった。すなわち、船外機側の水飛沫抑制板よりも上方に水が流れることがあり、この水が船外機ケーシングに当たって上方へ向けて飛散してしまう。
【0004】
水が船外機ケーシングの前面に沿って上方へ飛散すると、この水がカウリングと船外機ケーシングとの隙間からカウリング内に浸入してエンジンにかかったり、ケーシング前面を伝うように上昇した水がカウリングの下面に当たって跳ね返され、その一部がカウリング下面に沿うように前方へ飛散し船尾板を乗り越えるようにして船体内に入ってしまう。
【0005】
このような不具合は、水が船尾板の直後で上側に盛り上がるのを防ぐ何らかの遮蔽物を設ければ解消することができる。しかし、この遮蔽物を設けるに当たっては取付構造が問題であった。すなわち、船尾板や船外機のクランプ装置などに特別の加工を施さなくても済むようにしければならない。
【0006】
本発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、船外機ケーシングに当たった水が上方に飛散するのを船尾板の近傍に設けた遮蔽物によって防ぐに当たり、船尾板や船外機のクランプ装置などに特別な加工を施さなくても済むようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、船外機と船体の船尾板との間に水押え板を配設し、この水押え板を、船外機のクランプブラケットと前記船尾板で挟圧保持される上板部と、この上板部の下端から船外機のケーシングと対向する部位に延在する水押え部とから形成し、前記水押え板の上板部に上下方向に長い切欠きを形成し、この切欠きにクランプブラケット用固定ボルトを挿通し、前記水押え部を、前記ケーシングにおけるこの水押え部が対向する部位の左右幅より幅広に形成し、前記ケーシングの下部に船外機の前方および側方に向けて突出する鍔状に形成されたアンチスプラッシュプレートを指向するように後下がりに傾斜させたものである。
【0009】
第2の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、第1の発明に係る船外機の水飛散防止装置において、水押え板を、水押え部の下面が船体の船底下面と段差なく連なるように配置したものである。
【0010】
第3の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、第1または第2の発明に係る船外機の水飛散防止装置において、船外機のケーシング前部に、このケーシング前部の左右幅より幅広に形成されかつ船外機の前方に向って突出する遮蔽板を立設し、この遮蔽板の下方に水押え板の水押え部を延在させたものである。
第4の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、第3の発明に係る船外機の水飛散防止装置において、水押え板における水押え部の左右幅を遮蔽板の左右幅より大きく設定したものである。
【0011】
【作用】
第1の発明によれば、水押え板は船体および船外機の既存の部位を利用して船体に固定される。
第1の発明によれば、船尾板の直後で上側へ盛り上がろうとする水が水押え板の水押え部によって上方から押えられる。
【0012】
第1の発明によれば、水は水押え板に沿って流れることによりアンチスプラッシュプレートに当たる。
第1の発明によれば、クランプブラケットに対する水押え板の上下位置が変更可能になる。
【0013】
第2の発明によれば、船底下面側から水押え板の水押え部に向かう水の流れが乱れ難い。
第3の発明によれば、船外機のケーシング前面が水を切ることによって生じる上方へ向かう水飛沫は遮蔽板によって遮られる。
第4の発明によれば、遮蔽板の左右幅より広い範囲にわたって水押え板の水押え部により水が押えられる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図1ないし図4によって詳細に説明する。
図1は本発明に係る船外機の水飛散防止装置を示す側面図で、同図は水押え板および船体後部を破断して描いてある。図2は船外機前部の遮蔽板取付け部分を拡大して示す正面図、図3は図2における遮蔽板およびロアーマウントブラケットのIII−III線断面図、図4は図1におけるIV−IV線断面図である。なお、図4中には図1中の破断部分の破断位置をI−I線によって示してある。
【0015】
これらの図において、1はこの実施例による船外機で、この船外機1はエンジン(図示せず)を上部に搭載するアッパーケーシング2と、このアッパーケーシング2の下端部に取付けたロアーケーシング3と、このロアーケーシング3の下端部に装着したプロペラ(図示せず)と、前記アッパーケーシング2の上部に取付けてエンジンの周囲を覆うカウリング4とを備え、クランプ装置5を介して船体6の船尾板7に操舵自在かつチルト自在に取付けている。8は操舵軸、9はチルト軸である。
【0016】
前記クランプ装置5は従来周知のように、船尾板4に固定する左右一対のクランプブラケット10と、このクランプブラケット10にチルト軸9を介して上下方向に揺動自在に連結したスイベルブラケット11とを備え、このスイベルブラケット11における上下方向に延びるボス部分11aに前記操舵軸8が回動自在に支持させてある。このボス部分11aおよび操舵軸8は船外機1の左右方向の中心に位置づけられており、操舵軸8の上端部にアッパーマウントブラケット12を介してアッパーケーシング2を連結し、操舵軸8の下端部にロアーマウントブラケット13を介してアッパーケーシング2を連結している。
【0017】
前記ロアーマウントブラケット13は、図2および図3に示すように、操舵軸8の下端から船外機1の左右両側方に延出するように形成し、左右の延出端部を固定ボルト14によってアッパーケーシング2に連結している。この固定ボルト14はアッパーケーシング2に図示していないクッションゴムを介して結合させるとともに船外機1の前方に向けて突出するように設けており、ロアーマウントブラケット13に貫通させた状態で前端に袋ナット15を螺着させることによって、ロアーマウントブラケット13をアッパーケーシング2に締結している。なお、前記固定ボルト14の基部に設けるクッションゴムは、図1および図2中に符号14aで示すカバーによって覆っている。
【0018】
本実施例では、この固定ボルト14を使用して遮蔽板16をロアーマウントブラケット13の前部に固定している。
遮蔽板16は、アッパーケーシング2の前面に沿って水飛沫が上方へ飛散するのを防ぐためのもので、表面が防食処理された一枚のアルミニウム合金製板材を曲げ加工することによって形成している。詳述すると、この遮蔽板16は、水平方向に延在してロアーマウントブラケット13より船外機1の前方および左右両側方へ突出する水平延在部17と、この水平延在部17の後側左右両端部から起立するように折曲げられて前記固定ボルト14が貫通する左右一対の取付け部18とから形成している。
【0019】
前記水平延在部17の船外機前後方向への長さ寸法は、図1に示すようにこの遮蔽板16をロアーマウントブラケット13に固定した状態で前縁がロアーケーシング3のアンチスプラッシュプレート3aより前方へ突出するように設定している。前記アンチスプラッシュプレート3aは、ロアーケーシング3の外壁を部分的に前方および側方に突出させることによって鍔状に形成している。なお、このアンチスプラッシュプレート3aの下方に位置する符号3bで示すものはキャビテーションプレートである。
【0020】
また、前記水平延在部17の前縁は、船外機1を操舵したときに後述する水押え板と干渉するのを防ぐために、図3に示すように前方へ向けて凸となるように湾曲させて形成している。さらに、水平延在部17の左右方向中央部には、船外機1の後方に向けて開放するように切欠き17aを形成している。そして、この切欠き17aに、ロアーケーシング3の前部上面から上方へ延出する船速測定用水圧導管19が通してある。
【0021】
このように構成した遮蔽板16と対向する船底板7には、船尾板7より後方において水を下方へ押すための水押え板20が取付けてある。この水押え板20は、表面が防食処理されたアルミニウム合金製板材を曲げ加工することによって断面略L字状に形成している。すなわち、この水押え板20は、図1および図4に示すように、L字状の上辺を構成する上板部21と、この上板部21の下端から後下がりに延在する水押し部22とから形成している。
【0022】
この水押え板20は、前記上板部21を左右のクランプブラケット10と船尾板7との間に挟み、各クランプブラケット10を上下2本の固定ボルト23,24により船尾板7に締結させることによって、クランプブラケット10と船尾板7とで挟圧保持している。なお、この水押え板20の取付け位置は、後下がりに延在する水押し部22の下面が船体6の船底下面6aと段差なく連なるように位置づけられている。
前記上板部21は、クランプブラケット10の下半部によって挟圧保持させており、上下2本の固定ボルト23,24のうち下側の固定ボルト24を通すために、上方に向けて開放する切欠き21aを形成している。この切欠き21aは上下方向に細長く、固定ボルト24が挿通される部位より下方へ十分に長く延在するように形成している。
【0023】
このように切欠き21aを形成することによって、この水押え板20のクランプブラケット10に対する上下位置を変えることができるから、本実施例とは固定ボルトの上下位置が異なるクランプブラケットを備えた船外機を使用するときであっても、この水押え板20を使用することができる。
【0024】
また、前記水押え部22は、平面視において船体6の左右方向に長い長方形状に形成し、後端が前記遮蔽板16の下方において前記アッパーケーシング2の下部前面2aと対向する位置に延在している。なお、水押え部22の左右方向の寸法は、本実施例では図4に示すようにアッパーケーシング2における遮蔽板取付け部分の横幅より大きくなるように設定している。
【0025】
上述したように船外機1側に遮蔽板16を取付けるとともに、船体6側に水押え板20を取付けた状態で船体6を前進させると、船底下面6aに沿って相対的に船体6の後方へ流れる水のうち船外機1に向かう水は、水押え板20の水押え部22によって船底下面6aの後端から遮蔽板16の下方に強制的に流されるようになる。また、水押え部22を遮蔽板16の下方であってケーシングに対向する部位へ後下がりに延在させたため、水を下方へ押すことによってスプラッシュプレート3aに当てて後方に逃がすことができる。したがって、遮蔽板16に直接向かう水流がなくなる。なお、航走時の船外機近傍の水面位置を図1中に二点鎖線Lで示す。
【0026】
このように遮蔽板16の下方に流された水は、アッパーケーシング2の下部前面2aに当たって左右および上下に分散する。このとき、下部前面2aから上方へ向かう水飛沫が生じるが、この水飛沫は、上方に位置する遮蔽板16によって遮られて遮蔽板16より上方へは飛散しない。
したがって、水飛沫が飛散してカウリング4の下端部やスイベルブラケット11のボス部11aにかかるのを確実に防ぐことができる。なお、船外機1を図1に示した通常航走状態より前傾させたとしても、遮蔽板16の上面には水がかからないので前記同様に水飛沫の飛散防止を図ることができる。
【0027】
また、本実施例で示したように遮蔽板16をロアーマウントブラケット用固定ボルト14、袋ナット15を使用してロアーマウントブラケット13の前面側に固定すると、船外機1の主要構成部品を分解もしくは取外すことなく着脱させることができる。すなわち、船外機1を組立てるときには遮蔽板16の代わりにこれと同じ厚みのワッシャを装着しておき、船体に取付けた後に必要に応じて前記ワッシャを遮蔽板16に交換することによって、遮蔽板16を容易に組み付けることができる。
【0028】
さらに、本実施例では水押え板20を船体6に固定するに当たってクランプブラケット10と船尾板7とで挟圧保持することにより行ったので、船体6およびクランプ装置5に特別な加工が不要である。このため、水押え板20も容易に後付けすることができる。その上、水押え板20に細長い切欠き21aを形成し、この切欠き21aにクランプブラケット用固定ボルト24を挿通したので、固定ボルト24の上下位置が異なるクランプブラケットを有する船外機を使用する場合であっても、水押え板20を最適な位置、すなわち水押え部22が船底下面6aと段差なく連なるような位置に配置することができる。なお、このように水押え部22と船底下面6aとの間に段差をなくすことにより、船底下面6a側から水押え部22に向かう水の流れが乱れ難くなって水の抵抗が小さい。
【0029】
加えて、前進時に水押え板20によって水が下方に押されることから、船外機1のプロペラが水面に近い場合であっても、プロペラが確実に水をとらえることができるという利点もある。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように第1の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、船外機と船体の船尾板との間に水押え板を配設し、この水押え板を、船外機のクランプブラケットと前記船尾板で挟圧保持される上板部と、この上板部の下端から船外機のケーシングと対向する部位に延在する水押え部とから形成し、前記水押え部を、前記ケーシングにおけるこの水押え部が対向する部位の左右幅より幅広に形成したため、水押え板は船体および船外機の既存の部位を利用して船体に固定されるから、船外機ケーシングに当たった水が上方に飛散するのを船尾板の近傍に設けた水押え板によって防ぐに当たり、船尾板や船外機などに特別な加工を施さなくてもよい。
【0031】
第1の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、水押え板の水押え部を後下がりに傾斜させたため、船尾板の直後で上側へ盛り上がろうとする水が水押え板の水押え部によって上方から押えられるから、船外機ケーシングの前面を伝って上方に向かう水を確実に押えることができる。
【0032】
第1の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、水押え板の水押え部を、船外機におけるケーシングの下部に船外機の前方および側方に向けて突出する鍔状に形成したアンチスプラッシュプレートに指向させたため、水は水押え板に沿って流れることによりアンチスプラッシュプレートに当たるから、水をアンチスプラッシュプレートの表面に伝わせて効果的に後方に流すことができる。
【0033】
第1の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、水押え板の上板部に上下方向に長い切欠きを形成し、この切欠きにクランプブラケット用固定ボルトを挿通したため、クランプブラケットに対する水押え板の上下位置が変更可能になるから、前記固定ボルトの上下位置が異なるクランプブラケットを備えた船外機を使用するときにも水押え板を共用できる。
【0034】
第2の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、第1の発明に係る船外機の水飛散防止装置において、水押え板を、水押え部の下面が船体の船底下面と段差なく連なるように配置したため、船底下面側から水押え板の水押え部に向かう水の流れが乱れ難いから、水の抵抗を可及的抑えて水を円滑に後方に流すことができる。
【0035】
第3の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、第1または第2の発明に係る船外機の水飛散防止装置において、船外機のケーシング前部に、このケーシング前部の左右幅より幅広に形成されかつ船外機の前方に向って突出する遮蔽板を立設し、この遮蔽板の下方に水押え板の水押え部を延在させたため、船外機のケーシング前面が水を切ることによって生じる上方へ向かう水飛沫は遮蔽板によって遮られるから、水飛沫が船外機上部に向って飛散するのを確実に防ぐことができる。
【0036】
第4の発明に係る船外機の水飛散防止装置は、第3の発明に係る船外機の水飛散防止装置において、水押え板における水押え部の左右幅を遮蔽板の左右幅より大きく設定したため、遮蔽板の左右幅より広い範囲にわたって水押え板の水押え部により水が押えられるから、水が遮蔽板に至る以前に水押え板で確実に押えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る船外機の水飛散防止装置を示す側面図である。
【図2】船外機前部の遮蔽板取付け部分を拡大して示す正面図である。
【図3】図2における遮蔽板およびロアーマウントブラケットのIII−III線断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV線断面図である。
【符号の説明】
1…船外機、2…アッパーケーシング、3…ロアーケーシング、4…カウリング、5…クランプ装置、7…船尾板、10…クランプブラケット、13…ロアーマウントブラケット、16…遮蔽板、17…水平延在部、20…水押え板、21…上板部、22…水押え部。
Claims (4)
- 船体の船尾板に固定されるクランプブラケットおよびこのクランプブラケットに上下方向に回動可能に支持されたケーシングを備えた船外機と、船体の船尾板との間に水押え板を配設してなり、この水押え板を、前記クランプブラケットと前記船尾板で挟圧保持される上板部と、この上板部の下端から前記ケーシングと対向する部位に延在する水押え部とから形成し、前記水押え板の上板部に上下方向に長い切欠きを形成し、この切欠きにクランプブラケット用固定ボルトを挿通し、前記水押え部を、前記ケーシングにおけるこの水押え部が対向する部位の左右幅より幅広に形成し、前記ケーシングの下部に船外機の前方および側方に向けて突出する鍔状に形成されたアンチスプラッシュプレートを指向するように後下がりに傾斜させたことを特徴とする船外機の水飛散防止装置。
- 請求項1記載の船外機の水飛散防止装置において、水押え板を、水押え部の下面が船体の船底下面と段差なく連なるように配置したことを特徴とする船外機の水飛散防止装置。
- 請求項1または請求項2記載の船外機の水飛散防止装置において、船外機のケーシング前部に、このケーシング前部の左右幅より幅広に形成されかつ船外機の前方に向って突出する遮蔽板を立設し、この遮蔽板の下方に水押え板の水押え部を延在させたことを特徴とする船外機の水飛散防止装置。
- 請求項3記載の船外機の水飛散防止装置において、水押え板における水押え部の左右幅を遮蔽板の左右幅より大きく設定したことを特徴とする船外機の水飛散防止装置。
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