JP3617346B2 - 半導体圧力センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダイヤフラムが形成されているシリコンチップを用いたダイヤフラム型の半導体圧力センサに係り、特に温度特性及び高温特性に優れた高精度な半導体圧力センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、産業上の様々な分野において、圧力センサが多岐にわたって用いられるようになっている。中でも、信頼性、コスト、小型軽量化の点から、車載関係や家電製品などにおける半導体圧力センサの使用が急増している。
【0003】
ところで、半導体圧力センサの従来技術は、ダイヤフラムを形成したシリコンチップの一方の面に検出した圧力を電位として取り出すピエゾ抵抗を形成した構造が知られている。このシリコンチップは、ガラス台座を介してパッケージに接合されているが、シリコンチップとガラス台座とは陽極接合により接合されており、またガラス台座とパッケージとはメタライズ層を介して半田ろう接合されている。これら物理的に強固な接合により、使用温度領域においてリークのないセンサを得ることができる。
【0004】
上記従来技術は、シリコンチップとガラス台座という異種の材料を接合していることから、両者の熱膨張係数の違いにより温度特性には問題があった。すなわち、熱膨張係数の違いによりシリコンチップとガラス台座間に応力が働き、その結果、ダイヤフラムが変形することにより、オフセット電圧の温度特性が悪くなるという問題があった。
【0005】
このため、従来技術では、ガラス台座の代わりにシリコン台座を用いたプロセスが検討されてきた。例えば図8に示すように、シリコンチップ31とシリコン台座33の間に水硝子や半田等の中間材32を介した接合や、図9に示すように、シリコン台座33上にガラス34をスパッタにて形成した後に、シリコンチップ31を陽極接合する方法や、図10に示すように、オプティカルコンタクト(シリコン鏡面どうしの張り合わせ)を利用してシリコンチップ31とシリコン台座33とを接合する接合方法などが提案されている。
【0006】
しかし、これらの方法は、プロセスが非常に困難であることや、高コストであるという問題点があり、必ずしも量産に適した方法ではなかった。
【0007】
また、ガラス台座に室温でシリコンに熱膨張係数が近い材料(例えば♯7740)を使用した場合、使用温度領域が−40℃〜200℃の場合、図7の関係図(熱膨張曲線図)に示されるように、ガラスの熱膨張係数とシリコンの熱膨張係数が交差する温度領域があるために、特にダイヤフラム式の半導体圧力センサでは、オフセット状態でのダイヤフラムの変形状態が変わり、センサの温度特性に影響を与えることがわかっている。
【0008】
また、この問題を解決するために各温度域において、シリコンとガラスの熱膨張係数を制限したガラスを使用することで、温度特性の改善を図っている(特開平4−83733号、特開平7−247134号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この方法でも半導体圧力センサの温度特性は改善されるが、近年の半導体圧力センサの使用温度域の拡大に伴い、シリコンチップとガラス台座だけではなく、半田やパッケージの熱膨張係数がセンサ特性に及ぼす影響が大きくなっていることから、他の部材についても検討が必要である。仮に、陽極接合時に発生する応力を最小にできたとしても、半田ろう接合のプロセスでは、シリコンやガラスと比較して熱膨張係数が大きい半田材料を使用することから、これらより発生する熱応力(半田溶融状態から凝固する際に発生する熱応力)を効果的に緩和しないと、センサの温度特性に悪影響を及ぼすことが考えられる。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は低コストで温度特性に優れた半導体圧力センサを容易に提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、ダイヤフラムが形成されたシリコンチップと、前記シリコンチップに接合され、圧力導入孔を備えたガラス台座と、前記ガラス台座にメタライズ層を介して半田により接続されたパッケージとを備え、前記ダイヤフラムのたわみ量より圧力を検出するた半導体圧力センサにおいて、−40℃から200℃の温度域で、前記シリコンチップの熱膨張係数が前記ガラス台座の熱膨張係数以下であり、かつ前記メタライズ層の熱膨張係数が前記ガラス台座の熱膨張係数より大きく、かつ前記半田の熱膨張係数が前記メタライズ層の熱膨張係数より大きく、かつ前記パッケージの熱膨張係数が前記半田の熱膨張係数よりも小さくされることを特徴とする。
【0012】
また、前記シリコンチップの室温での熱膨張係数をαSi、前記ガラス台座の室温での熱膨張係数をαG、前記メタライズ層の室温での熱膨張係数をαM、前記半田の室温での熱膨張係数をαS、前記パッケージの室温での熱膨張係数をαPとするとき、αG/αSi≒1.04、αG/αM≒0.27、αM/αS≒0.68、αS/αP≒3.5の組み合わせとすることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本発明の基本構成を図1を用いて説明する。図示せぬピエゾ抵抗素子を備えたダイヤフラム6を有するシリコンチップ1は、ダイヤフラム6が形成されていない側がガラス台座2に陽極接合などにより取り付けられている。また、ガラス台座2はメタライズ層3を介して、半田4でパッケージ5と半田ろう接合されている。ガラス台座2及びパッケージ5には、シリコンチップ1に圧力を印加するための圧力導入孔7が形成されており、ダイヤフラム5のたわみによるピエゾ抵抗素子の電気信号により圧力が検出できる。
【0014】
ここで、シリコンチップ1の厚さは約0.3mm、ガラス台座2の厚さは約1〜4mm、メタライズ層3の厚さは約0.9μm、半田4の厚さは約10〜30μmとなる。
【0015】
このように構成される半導体圧力センサの製造方法を示す。まず、図2(a)に示すように、両面に鏡面研磨処理を施した面方位(110)の単結晶シリコン基板11上に熱酸化によりシリコン酸化膜12を形成し、フォトレジストマスクを所定の位置に形成した後、ウェットエッチングにてシリコン酸化膜12をエッチングし、イオン注入および熱拡散を行う。
【0016】
その後、拡散抵抗配線を形成した後、LPCVDにより単結晶シリコン基板11の両面にシリコン窒化膜13を形成し、ドライエッチング、および80℃の水酸化カリウム水溶液による異方性エッチングを行い、図2(b)に示すようにダイヤフラム15を形成する。その後、所定の位置にフォトレジストによりパターニングを行い、図2(c)に示すように、ドライエッチングによりシリコン酸化膜12、シリコン窒化膜13を除去した後、スパッタリングによりアルミ14を形成し、フォトレジストマスクによりパターニングした後、ドライエッチングによりアルミ配線を形成する。
【0017】
その後、図3に示すように、圧力導入孔16aを形成した陽極接合用のガラス基板16(例えば(株)岩城硝子製SW−3ガラス)において、片面を表面の凹凸が小さくなるように研磨処理を行い、また、その反対面にメタライズ層である金属蒸着膜17を蒸着形成したガラス基板16の研磨面と、上述のようにダイヤフラム15が形成された単結晶シリコン基板11とを位置合わせした後、直流電圧600V、400℃、真空雰囲気において陽極接合により接合する。尚、図3では単結晶シリコン基板11表面のアルミなどは図示していない。また、SW−3ガラスの温度に対する線膨張率の関係を図7に示している。
【0018】
そして次に、図4(a)に示すように、ガラス基板16を接合した単結晶シリコン基板11より、ダイシングレーン18にて、個々のガラス台座付きチップ19を切り出す。図4(b)は、ガラス台座付きチップ19を示す斜視図であり、上から順番にシリコンチップ20、ガラス台座21、金属蒸着膜22を示している。
【0019】
そして、図5(a)に示すように、半田23(例えば、Au−Sn系)を用いて360℃にて、ガラス台座付きチップ19と表面に金を蒸着形成したパッケージである支持台24とを、窒素雰囲気中で半田ろう結合する。その後、図5(b)に示すように、ガラス台座付きチップ19の図示せぬパッドと支持台24とをワイヤボンディングにて結線した後、表面に樹脂を塗布しキャップ25で覆い、半導体圧力センサ26を完成する。
【0020】
このとき、上述のように製造される半導体圧力センサ26を構成する各部材の熱膨張係数を、−40℃から200℃の使用温度域において、シリコンチップ20の熱膨張係数がガラス台座21の熱膨張係数以下であり、かつメタライズ層である金属蒸着膜22の熱膨張係数がガラス台座21の熱膨張係数より大きく、かつ半田23の熱膨張係数が金属蒸着膜22の熱膨張係数より大きく、かつパッケージである支持台24の熱膨張係数が半田23の熱膨張係数よりも小さくすることが望ましい。
【0021】
このようにすることで、半田部で発生した熱応力がメタライズ層である金属蒸着膜22、ガラス台座21、シリコンチップ20と伝達する際に徐々に緩和されながら伝達され、また最も熱容量が大きいと考えられるパッケージである支持台24の熱応力がシリコンチップ20に与える影響が小さくなることから、広い温度領域において、温度特性に優れた半導体圧力センサを提供することができる。
【0022】
本実施形態では、ガラス台座21として(株)岩城硝子製SW−3ガラスを用い、金属蒸着膜22はCr−Pt−Auを用いている。また、半田23はAu−20%Snを用い、支持台24はコバール製である。
【0023】
ここで、室温20℃でのシリコンチップ20の熱膨張係数αSiは約2.8ppm/℃、室温20℃でのガラス台座21の熱膨張係数αGは約2.93ppm/℃、室温20℃でのメタライズ層である金属蒸着膜22の熱膨張係数αMは約10.88ppm/℃、室温20℃での半田23の熱膨張係数αSは15.9ppm/℃、室温20℃でのパッケージである支持台24の熱膨張係数αPは約4.5ppm/℃である。
【0024】
そして、各部材の熱膨張係数の比率は、以下のようになる。
熱膨張係数αG/熱膨張係数αSi≒1.04
熱膨張係数αG/熱膨張係数αM≒0.27
熱膨張係数αM/熱膨張係数αS≒0.68
熱膨張係数αS/熱膨張係数αP≒3.5
このとき、室温での各熱膨張係数は図6で示すとおりになる。尚、金属蒸着膜22は、下から順番にCr、Pt、Auで構成され、各熱膨張係数は4.9ppm/℃、8.8ppm/℃、14.1ppm/℃であり、各熱膨張係数値にCr、Pt、Auの厚みを乗じて平均を出した値がメタライズ層である金属蒸着膜22の熱膨張係数10.88ppm/℃となる。
【0025】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載の半導体圧力センサによれば、ダイヤフラムが形成されたシリコンチップと、前記シリコンチップに接合され、圧力導入孔を備えたガラス台座と、前記ガラス台座にメタライズ層を介して半田により接続されたパッケージとを備え、前記ダイヤフラムのたわみ量より圧力を検出するた半導体圧力センサにおいて、−40℃から200℃の温度域で、前記シリコンチップの熱膨張係数が前記ガラス台座の熱膨張係数以下であり、かつ前記メタライズ層の熱膨張係数が前記ガラス台座の熱膨張係数より大きく、かつ前記半田の熱膨張係数が前記メタライズ層の熱膨張係数より大きく、かつ前記パッケージの熱膨張係数が前記半田の熱膨張係数よりも小さくされるようにしたので、半田部で発生した熱応力がメタライズ層、ガラス台座、シリコンチップと伝達する際に徐々に緩和されながら伝達され、またパッケージの熱応力がシリコンチップに与える影響が小さくなることから、シリコンチップ−ガラス台座間、ガラス台座−メタライズ層間、メタライズ層−半田間、半田−パッケージ間で発生する熱応力を効果的に緩和し、広い温度領域にわたり温度特性に優れた半導体圧力センサを低コストで実現できる。
【0026】
また、前記シリコンチップの室温での熱膨張係数をαSi、前記ガラス台座の室温での熱膨張係数をαG、前記メタライズ層の室温での熱膨張係数をαM、前記半田の室温での熱膨張係数をαS、前記パッケージの室温での熱膨張係数をαPとするとき、αG/αSi≒1.04、αG/αM≒0.27、αM/αS≒0.68、αS/αP≒3.5の組み合わせとなるようにしたので、請求項1と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体圧力センサの基本構成を示す構成図である。
【図2】(a)(b)(c)はそれぞれ本発明の半導体圧力センサを構成するシリコンチップの製造過程中の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の半導体圧力センサの製造過程中のシリコン基板にガラス基板を接合した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の製造過程中の半導体圧力センサを示す図であり、(a)はガラス基板が接合されたシリコン基板を示す上面図、(b)は個々のガラス台座付きチップの構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の製造過程中の半導体圧力センサを示す図であり、(a)はガラス台座付きチップの支持台への接合状態を示す断面図、(b)は完成した半導体圧力センサの断面図である。
【図6】本発明の半導体圧力センサを構成する各部材の室温での熱膨張係数を示す関係図である。
【図7】各物体の温度に対する線膨張率の関係を示す関係図である。
【図8】従来の半導体圧力センサの一部の構造を示す断面図である。
【図9】従来の他の半導体圧力センサの一部の構造を示す断面図である。
【図10】従来の更に他の半導体圧力センサの一部の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 シリコンチップ
2 ガラス台座
3 メタライズ層
4 半田
5 パッケージ
6 ダイヤフラム
7 圧力導入孔

Claims (2)

  1. ダイヤフラムが形成されたシリコンチップと、前記シリコンチップに接合され、圧力導入孔を備えたガラス台座と、前記ガラス台座にメタライズ層を介して半田により接続されたパッケージとを備え、前記ダイヤフラムのたわみ量より圧力を検出するた半導体圧力センサにおいて、
    −40℃から200℃の温度域で、前記シリコンチップの熱膨張係数が前記ガラス台座の熱膨張係数以下であり、かつ前記メタライズ層の熱膨張係数が前記ガラス台座の熱膨張係数より大きく、かつ前記半田の熱膨張係数が前記メタライズ層の熱膨張係数より大きく、かつ前記パッケージの熱膨張係数が前記半田の熱膨張係数よりも小さくされることを特徴とする半導体圧力センサ。
  2. 前記シリコンチップの室温での熱膨張係数をαSi、前記ガラス台座の室温での熱膨張係数をαG、前記メタライズ層の室温での熱膨張係数をαM、前記半田の室温での熱膨張係数をαS、前記パッケージの室温での熱膨張係数をαPとするとき、
    αG/αSi≒1.04
    αG/αM≒0.27
    αM/αS≒0.68
    αS/αP≒3.5
    の組み合わせとすることを特徴とする請求項1記載の半導体圧力センサ。
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