JP3616732B2 - 基板の処理方法及び処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,基板を処理する方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの製造工程においては,例えば半導体ウェハ(以下,「ウェハ」という)等の如き基板の表面にアルミニウム配線などの電極配線を多層に形成する,いわゆる多層配線技術が行われている。この多層配線技術においては,積層される電極配線間に,有機高分子などからなる層間絶縁膜を形成させ,電極配線間同士の絶縁性を確保している。
【0003】
従来,層間絶縁膜を形成するために,スピンコート法が行われている。このスピンコート法では,層間絶縁膜の原材料となる塗布液(有機高分子などを含んだ塗布液)をウェハの表面に供給し,ウェハを回転させて遠心力により塗布液をウェハの表面全体に拡散させる。そして,ウェハを更に回転させてスピン乾燥させ,有機高分子などからなる層間絶縁膜をウェハ表面に形成する。更にその後,ウェハは数回の段階加熱によって例えば310℃で加熱処理され,冷却処理される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで,ウェハの表面における塗布液の定着性を向上させるため,塗布液を表面に供給する前に,ADP液をウェハに供給するアドヒージョンプロモータ(ADP)処理が行われるが,このADP処理を行う場合,ADP液の供給によってウェハの表面温度が変動するおそれがある。例えばADP処理を行うことによりウェハの表面温度が低くなりすぎると塗布液の乾燥が進まなくなり,ウェハの周縁部に供給された塗布液がウェハの回転によって遠心力でウェハの周囲に多く振り切られてしまい,振り切られる塗布液が増加して無駄が多くなり,特にウェハの周縁部では充分な厚さの層間絶縁膜が形成され難くなったりしてしまう。また逆に,例えばADP処理を行うことによりウェハの表面温度が高くなり過ぎると,塗布液の乾燥が過度に進むようになり,塗布液はウェハの周縁部にまで均一に拡散しなくなってしまう。このようにウェハの表面温度の変動は,層間絶縁膜の不均一を招き好ましくない。今日ではウェハが大型化しており,これに伴い,このような層間絶縁膜の不均一性や塗布液の使用量の増加による弊害が問題視されている。
【0005】
従って本発明の目的は,基板の表面に密着性の良い層間絶縁膜を均一に形成でき,また塗布液の使用量も少なくできる方法と装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために,膜形成装置を使用して半導体基板の表面に層間絶縁膜を形成する基板の処理方法であって,ADP液を,前記基板の表面に拡散させる前に予め所定の温度に調整する工程と,前記所定の温度に調整されたADP液を基板の表面に拡散させる工程と,前記ADP液を供給し,拡散させた基板の表面を所定の基板温度に調整する工程と,前記所定の温度に調節された基板の表面に層間絶縁膜を形成するための塗布液を拡散させる工程とを有し,前記ADP液の供給から前記塗布液の拡散までの各工程は前記膜形成装置内で一貫して行われることを特徴とする,基板の処理方法が提供される。この請求項1の処理方法にあっては,ADP液を基板の表面に拡散させた後,基板の表面を所定の基板温度に調整する。これにより,基板の表面を所定の基板温度にした状態で,層間絶縁膜を形成するための塗布液を拡散させることができるようになる。
【0011】
請求項によれば,半導体基板の表面に層間絶縁膜を形成する基板の処理装置であって,ケーシング内に備えられた1のカップと,基板の表面に,予め所定の液温度に調整されたADP液を供給する第1の処理液供給ノズルと,基板の表面に,層間絶縁膜を形成するための塗布液を供給する第2の処理液供給ノズルと,
前記カップ内において基板を載置させ,回転させる回転載置台と,基板の表面を所定の基板温度に調整する温度調整機構とを備え,前記ADP液の基板への供給から前記塗布液の基板への供給及び拡散処理までを前記ケーシング内において一貫して行うことを特徴とする,基板の処理装置が提供される。この請求項の処理装置によれば,前述の処理方法を好適に実施することが可能である。
【0012】
この請求項の処理装置において,前記温度調整機構は,請求項に記載したように,ペルチェ素子を備えていても良い。また請求項に記載したように,前記回転載置台に設けられた熱媒を流通させる流路を備えていても良い。更にまた請求項に記載したように,基板に所定の基板温度の気体を吹き付ける気体供給機構を備えていても良い。これらペルチェ素子や,熱媒を流通させる流路,気体供給機構により,基板の表面を所定の基板温度に調整することが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下,本発明の好ましい実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお,本発明の実施の形態にかかる処理方法の一例として,基板としてのウェハW上に層間絶縁膜を形成する膜形成方法を説明する。図1は,本発明の実施の形態にかかる処理装置の一例としての膜形成システム1の平面図であり,図2は,図1に示した膜形成システム1の正面図,図3は図1に示した膜形成システム1の背面図である。
【0014】
膜形成システム1は図1に示すように,例えば25枚のウェハWをカセット単位で外部から膜形成システム1に搬入出したり,カセットCにウェハWを搬入出したりするためのカセットステーション2と,枚葉式に所定の処理を施す各種処理ユニットを多段配置してなる処理ステーション3とを一体に接続した構成を有している。
【0015】
カセットステーション2では,カセット載置台6上の所定の位置にカセットCがウェハWの出入口を処理ステーション3側に向けてX方向(図1中の上下方向)一列に載置自在である。そして,このカセット配列方向(X方向)及びカセットCに収容されたウェハWのウェハ配列方向(Z方向;垂直方向)に移動可能なウェハ搬送体8が搬送路9に沿って移動自在であり,カセットCに対して選択的にアクセスできるようになっている。
【0016】
ウェハ搬送体8はθ方向(Z軸を中心とする回転方向)にも回転自在に構成されており,後述するように処理ステーション3側の第3の処理装置群Gに属するアライメントユニット32及びエクステンションユニット33に対してもアクセスできるように構成されている。
【0017】
処理ステーション3では,その中央部には垂直搬送型の主搬送装置13が設けられ,主搬送装置13の周囲には各種処理ユニットが多段に配置されて処理装置群を構成している。膜形成システム1においては,4つの処理装置群G,G,G,Gが配置可能である。第1及び第2の処理装置群G,Gは膜形成システム1の正面側に配置されており,第3の処理装置群Gはカセットステーション2に隣接して配置されており,第4の処理装置群Gは主搬送装置13を挟んで第3の処理装置群Gと対面するようにして配置されている。また,必要に応じて破線で示した第5の処理装置群Gも背面側に配置可能である。
【0018】
第1の処理装置群Gでは図2に示すように,ウェハWに対してアドヒージョンプロモータ(ADP)処理を行う第1の膜形成装置20,21が上下2段に配置されている。第2の処理装置群Gでは,第1の膜形成装置20,21と基本的に同様な構成を有し,さらにウェハWに対して塗布処理を行う第2の膜形成装置22,23が上下2段に積み重ねられている。
【0019】
第3の処理装置群Gには,温度調整機構としての各ユニットなどが配置されており,図3に示すように,ウェハWを載置台に載せて所定の処理を施すオーブン型の処理ユニット,例えば冷却処理を行うクーリングヒートユニット30,31,ウェハWの位置合わせを行うアライメントユニット32,ウェハWを待機させるエクステンションユニット33,加熱処理を行うベーキングユニット34,35,36,37等が下から順に8段に重ねられている。
【0020】
第4の処理装置群Gには,温度調整機構として,例えばクーリングヒートユニット40,41,42,43,ベーキングユニット44,45,46,47等が下から順に8段に積み重ねられている。
【0021】
第1の膜形成装置20,21の構成について,第1の膜形成装置20を例にとって説明すると,図4に示すように,ケーシング50内に備えられたカップ51内部には,載置させたウェハWを真空吸着し,ウェハWを回転自在に支持するスピンチャック52が備えられている。スピンチャック52の下面のほぼ中央には駆動部53によって昇降及び回転可能な回転軸54が取り付けられている。これにより,スピンチャック52は,図4中で鎖線で示すカップ51の上方側のウェハWの受け渡し位置と図4中で実線で示すウェハWの処理位置との間で昇降すると共に,鉛直な軸のまわりに回転できるようになっている。
【0022】
カップ51の上面にはウェハWが通行可能な開口部55が形成されており,この開口部55は昇降可能なように設けられた蓋56によって開閉されるようになっている。蓋56には,ウェハW上のほぼ回転中心部に,第1の処理液としてのADP液を供給するためのADP液供給ノズル60が取り付けられている。このADP液供給ノズル60から供給されるADP液の温度は,図5に示す温度調節機構120により所定のADP液温度(所定の処理液温度)によって予め調整されるようになっている。
【0023】
即ち図5に示すように,ADP液を貯留しているタンク121は,熱媒122で満たされた温調槽123によって囲まれている。この温調槽123内の熱媒122は,ポンプ124の稼働により,温調槽123内から循環回路125に一旦流れ込んだ後,温調槽123内に再び循環供給されている。また循環回路125には,制御部126によって稼働が制御される温調器127が設けられている。温調槽123内の熱媒122の温度はセンサ128によって検出され,制御部126に入力されている。これにより,制御部126は,センサ128によって検出された温度に基づいて温調器127の稼働を制御し,温調槽123内の熱媒122の温度を所定のADP液温度に維持するように構成されている。そして,このように温調槽123内の熱媒122が所定のADP液温度に維持されることにより,タンク121内に貯留されたADP液の温度が所定のADP液温度に調整されるようになっている。また,こうして所定のADP液温度に調整されたADP液が,回路129を経てADP液供給ノズル60から吐出されるようになっている。
【0024】
図4に示すように,ADP液供給ノズル60の先端部は,ウェハW上のほぼ回転中心に向けて斜め下側を向くようになっている。ADP液は,後述する塗布液とウェハWとの定着性を高めるための役割を果たす。また,カップ51の底部には,ウェハWから飛散したADP液を排液する排液管61と,カップ51内の雰囲気を排気する排気管62が接続されている。なお,第1の膜形成装置21は,第1の膜形成装置20と同様な構成を有しているので,詳細な説明を省略する。
【0025】
図6に示すように,第2の膜形成装置22,23の構成について説明すると,基本的な構成は第1の膜形成装置20,21と同様であり,異なる点は,蓋56にADP液供給ノズル60の代わりに,第2の処理液としての塗布液(有機高分子などを含んだ塗布液)をウェハWの表面に供給する塗布液供給ノズル65が取り付けられている。それ以外の構成は,第1の膜形成装置20,21と同様であり,第2の膜形成装置22,23の構成要素において,第1の膜形成装置20,21に設けられた構成要素と同じものについては,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。なお塗布液は,ウェハW上で層間絶縁膜を形成するための原材料となる液体である。
【0026】
各クーリングヒートユニット30,31,40,41,42,43は何れも同様の構成を備えているため,代表してクーリングヒートユニット30を例にとって説明すると,図7に示すように,クーリングヒートユニット30内には載置台70が設けられている。この載置台70内にはペルチェ素子71が埋め込まれ,このペルチェ素子71は図示しない電源制御部に接続されている。電源制御部がペルチェ素子71を通電し,その通電方向や通電の際の電圧を変えることによって,ペルチェ素子71は載置台70に載置されたウェハWを所望の温度に加熱及び冷却することが可能である。
【0027】
各ベーキングユニット34,35,36,37,44,45,46,47の構成について,ベーキングユニット34を例にとって説明すると,図8に示すように,ベーキングユニット34のほぼ中央には載置台80が設けられている。この載置台80内には例えば熱線81が埋め込まれ,この熱線81は図示しない電源制御部に接続されている。電源制御部が熱線81を通電すると,熱線81は発熱し載置台80に載置されたウェハWを加熱するようになっている。また,この載置台80には,昇降機構82によって昇降自在な3本の支持ピン83,84,85が出没可能なように配置されている。これにより,支持ピン83〜85はウェハWを,図8中で鎖線で示す載置台80の上方側のウェハWの受け渡し位置と図8中で実線で示すウェハWの処理位置との間で昇降するようになっている。
【0028】
載置台80の周囲には,載置台80を取り囲むようN気体噴出管86が配置されている。載置台80の上方には,載置台80との間で密閉空間を形成するように蓋体87が配置されている。この蓋体87は,図示しない昇降機構により昇降可能となっている。また,蓋体87は,中心に向かって上方に傾斜する構造となっており,蓋体87の中心には排気口88が設けられている。この排気口88は,図示しない真空ポンプ等の排気装置に接続されている。
【0029】
以上のように構成された膜形成システム1で行われる層間絶縁膜の形成方法について説明する。図9に,層間絶縁膜の形成方法のフローチャートを示す。
【0030】
まず,未処理のウェハWを,例えばクーリングヒートユニット30に搬入して冷却もしくは加熱処理し,ウェハWの表面温度を所定の温度例えば35℃に調整する(S1)。その後,ウェハWを第1の膜形成装置20に搬入し,スピンチャック52にウェハWに真空吸着させてカップ51内に収納する。次にADP液供給ノズル60から,予め図5で説明した温度調節機構120によって所定のADP液温度に温度が調整されたADP液をウェハWの表面に供給し,スピンチャック52によりウェハWを回転させる。ウェハWを回転させた際の遠心力によってADP液を拡散させてウェハWの表面全体にADP液を拡散させる(S2)。この後,ウェハWを回転させ続けてウェハWをスピン乾燥し(S3),ADP処理を終了する。
【0031】
ここで,ADP処理に伴ってウェハWの表面温度が変動する。そこで,塗布液を拡散させる工程の前に,予めウェハWをクーリングヒートユニット30に搬入して加熱もしくは冷却し,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整する(S4)。即ち,先の工程においてADP液供給ノズル60からウェハWの表面に供給されたADP液の温度(ADP液温度)が所定の基板温度よりも高い場合は,ウェハWの表面温度は所定の基板温度よりも高くなっているので,クーリングヒートユニット30において,電源制御部によりペルチェ素子71を冷却させる通電方向に通電し,その通電電圧を適宜制御して載置台70上に載置されたウェハWを冷却することにより,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整する。一方,逆に先の工程においてADP液供給ノズル60からウェハWの表面に供給されたADP液の温度(ADP液温度)が所定の基板温度よりも低い場合は,ウェハWの表面温度は所定の基板温度よりも低くなっているので,クーリングヒートユニット30において,電源制御部によりペルチェ素子71を加熱させる通電方向に通電し,その通電電圧を適宜制御して載置台70上に載置されたウェハWを加熱することにより,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整する。
【0032】
次いで,ウェハWを第2の膜形成装置22に搬入し,第1の膜形成装置20と同様に,スピンチャック52にウェハWに真空吸着させてカップ51内に収納する。次に塗布液供給ノズル65から塗布液をウェハWの表面に供給し,スピンチャック52によりウェハWを回転させる。ウェハWを回転させた際の遠心力によって塗布液を拡散させてウェハWの表面全体に塗布液を拡散させる(S5)。この場合,ウェハWの表面温度が所定の基板温度に維持されているため,ウェハW上では塗布液の乾燥が適度に進み,ウェハWの周縁部に拡散した塗布液は,ウェハWの回転に伴ってウェハWから振り切られ難くなって,ウェハW表面に残りやすくなる。従って,ウェハW上に塗布液を均一に塗布することができる。しかも,このようにウェハWの表面温度を制御することによって塗布液を円滑に拡散でき,振り切られ難くなるので,塗布液の使用量を従来よりも低減することができる。塗布液を拡散させた後,ウェハWをスピン乾燥し(S6),塗布処理を終了する。
【0033】
以後,ウェハWを,例えばN雰囲気で満たされているベーキングユニット34に搬入して例えば310℃で加熱処理し(S7),最後に冷却処理する(S8)。このように,この実施の形態にかかる膜形成方法によれば,ウェハWの表面のADP液をスピン乾燥した後に,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整しているので,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に維持した状態で,次の塗布液を拡散させる工程を行うことができる。このため,ウェハW上に層間絶縁膜が均一に形成されるようになる。なお,最初に行われる温度調整処理(S1)は,特に必要がなければ省略してもかまわない。
【0034】
かくして,本発明の実施の形態にかかる膜形成方法によれば,少量の塗布液で,塗布液を均一にウェハWの表面に拡散させることができる。従って,ウェハWが大型化しても塗布液の使用量を抑えることができ,資源を節約しながら高品質な半導体デバイスの製造が可能となる。
【0035】
なお,先に説明した実施の形態では,未処理のウェハWの表面温度を所定の温度に調整する工程(S1)や,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整する工程(S4)において,ウェハWを加熱する場合と冷却する場合の何れにもクーリングヒートユニット30を用いる例を説明したが,例えばウェハWを冷却する場合は,ウェハWをクーリングヒートユニット30に搬入して冷却し,またウェハWを加熱する場合は,ウェハWをベーキングユニット34に搬入して加熱することによって,ウェハWの表面温度を調整することも可能である。
【0036】
また先に説明した実施の形態では,ADP処理液を拡散させた後にスピン乾燥を行っていたが,このスピン乾燥を行わないで,ADP処理液を拡散させた後に,直ぐに温度調整処理を行っても良い。このときのフローチャートを図10に示す。この図10に示す場合は,まず未処理のウェハWを,例えばクーリングヒートユニット30に搬入し,ウェハWの表面温度を所定の温度例えば35℃に調整する(S1)。なおこの場合も先と同様に,ウェハWを冷却する場合はクーリングヒートユニット30でウェハWを冷却し,加熱する場合はベーキングユニット34でウェハWを加熱しても良い。
【0037】
その後,ウェハWを第1の膜形成装置20に搬入し,スピンチャック52にウェハWに真空吸着させてカップ51内に収納する。ADP液供給ノズル60からADP液を供給し,スピンチャック52によりウェハWを回転させる。ウェハWを回転させた際の遠心力によってADP液を拡散させてウェハWの表面全体にADP液を拡散させる(S2)。こうしてADP処理を終了する。
【0038】
ここで,ADP処理に伴ってウェハWの表面温度が変動するので,塗布液を拡散させる工程の前に,予めウェハWをクーリングヒートユニット30に搬入して加熱もしくは冷却し,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整する(S3)。即ち,ウェハWの表面温度が所定の基板温度よりも高くなっている場合は,ペルチェ素子71によってウェハWを冷却し,逆にウェハWの表面温度が所定の基板温度よりも低くなっている場合は,ペルチェ素子71によってウェハWを加熱することにより,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整する。なおこの場合も先と同様に,ウェハWを冷却する場合はクーリングヒートユニット30でウェハWを冷却し,加熱する場合はベーキングユニット34でウェハWを加熱しても良い。
【0039】
次いで,ウェハWを第2の膜形成装置22に搬入し,第1の膜形成装置20と同様な工程を行って,ウェハW上に塗布液を拡散させる(S4)。塗布液を拡散させた後,ウェハWをスピン乾燥し(S5),塗布処理を終了する。以後,ウェハWを,例えばN雰囲気で満たされているベーキングユニット34に搬入して例えば310℃で加熱処理し(S6),最後に冷却処理する(S7)。こうして,ウェハW上に層間絶縁膜が均一に形成される。なお,最初に行われる温度調整処理(S1)は,特に必要がなければ省略してもかまわない。
【0040】
かくして,この実施の形態にかかる膜形成方法によれば,少量の塗布液で,塗布液を均一にウェハWの表面に拡散させることができる。従って,ウェハWが大型化しても塗布液の使用量を抑えることができ,資源を節約しながら高品質な半導体デバイスの製造が可能となる。また,ウェハWの表面温度を所定の温度に調整するだけでなく,塗布液も所定の温度に調整するようにすれば,塗布液の拡散均一性を更に向上することができる。
【0041】
また,設置スペースの節約等の観点から,ADP液と塗布液の何れもウェハWに供給できるような装置を構成しても良い,図11に示す膜形成装置90はその例である。この膜形成装置90は,蓋56にAPD液供給ノズル60と塗布液供給ノズル65が取り付けられている。また,カップ51の側壁部には,カップ51内にN気体を供給するN気体供給管91,92が接続されている。それ以外の構成は,この膜形成装置90は,先に図4で説明した第1の膜形成装置20,21と同様であり,この膜形成装置90の構成要素において,第1の膜形成装置20,21に設けられた構成要素と同じものについては,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0042】
かかる膜形成装置90によれば,ADP液の塗布及び拡散,スピン乾燥を行った後,一旦ウェハWを搬出する。ウェハWがクーリングヒートユニット若しくはベーキングユニットで温度調整されている間,カップ51内ではNパージが行われる。これにより,カップ51内にADP液の雰囲気が残らない状態で,次の塗布液を塗布及び拡散させる工程を行うことができる。
【0043】
また図12に示すように,膜形成装置100にウェハWの表面温度を所定の温度に調整できる機能を付加しても良い。本実施の形態にかかる膜形成装置100は,蓋56にADP液供給ノズル60と塗布液供給ノズル65の両方を備えているだけでなく,スピンチャック101内に熱媒としての温調水を流通させる流路102を形成している。流路102には,温調水供給装置103によって所定の基板温度に調整された温調水が,二重管104を介して駆動部53の回転軸54を貫通して循環供給されている。それ以外の構成は,この膜形成装置100は,先に図4で説明した第1の膜形成装置20,21と同様であり,この膜形成装置100の構成要素において,第1の膜形成装置20,21に設けられた構成要素と同じものについては,同一符号を付することにより,重複説明を省略する。
【0044】
かかる膜形成装置100によれば,ADP処理を行った後も,そのままウェハWをスピンチャック101に真空吸着させる。そして,流路102に温調水を流通させ,ウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整すると共に,各N気体供給管91,92によってNパージが行われ,カップ51内の雰囲気をN雰囲気に置換する。その後,塗布液を塗布及び拡散させる工程が行われる。このように膜形成装置100では,ADP処理から塗布液の拡散処理までを一貫して行えるので,先に説明した膜形成装置90などに比べてウェハWを搬入出する手間が省け,スループットを向上させることができる。
【0045】
また,図13に示すように,膜形成装置110は,スピンチャック52に温調機能を持たせる代わりに,基板に対して所定の基板温度の気体を吹き付ける気体供給機構を設けている。即ち,N気体供給管91に温度調整素子111が設けられ,N気体供給管92に温度調整素子112が設けられている。かかる構成によれば,N気体は,カップ51内に供給される前に,温度調整素子111,112によって所定の基板温度に調整される。そして,カップ51内はこのような所定の基板温度のN気体で満たされ,これによりウェハWの表面温度を所定の基板温度に調整することができる。もちろん,膜形成装置100と同様に,スループットを向上させることができる。
【0046】
なお,基板は上記した本実施の形態のウェハWに限定されず,例えばLCD基板やCD基板等の他の基板であってもよい。
【0047】
【実施例】
次に本発明の実施例を行った。図1〜図7で説明した膜形成システムを作成し,ウェハ上に塗布液の膜を形成した。ウェハの表面温度と塗布液の膜の均一性との関係を調べた。この場合,従来の膜形成方法と本発明の膜形成方法のいずれも行って,その結果を比較する。実験対象を,直径200ミリのウェハとし,ADP液の成分には,PGME PMAが含有され,塗布液の成分には,シクロヘキサンが含有されている。
【0048】
従来の膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成する場合において,ウェハの表面温度を所定の温度に調整した後に,ADP処理と塗布処理を連続して行った。その結果を図14に示す。また,本発明の膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成する場合において,ウェハの表面温度を所定の温度に調整した後にADP処理を行い,その後に再びウェハの表面温度を所定の温度に調整して塗布処理を行った。その結果を図15に示す。なお,いずれの場合においても,2cc程度の液量のADP液によってADP液の膜を形成し,2cc程度の液量の塗布液によって塗布液の膜を形成した。
【0049】
図14及び図15では,縦軸を塗布液の膜の厚さ(単位:オングストローム)とし,横軸をウェハの直径とし,図14及び図15で示されている各グラフ線は,ウェハ上の塗布液の膜の厚さの変化の様子(塗布液の膜のプロファイル)を示している。図14において,グラフ線aは所定の温度が19℃の時,グラフ線bは所定の温度が23℃の時,グラフ線cは所定の温度が25℃の時,グラフ線dは所定の温度が27℃の時,グラフ線eは所定の温度が29℃の時,グラフ線fは所定の温度が33℃の時の塗布液の膜のプロファイルをそれぞれ示している。また,図15において,グラフ線gは所定の温度が19℃の時,グラフ線hは所定の温度が21℃の時,グラフ線iは所定の温度が23℃の時,グラフ線jは所定の温度が25℃の時の塗布液の膜のプロファイルをそれぞれ示している。
【0050】
図14及び図15から理解できるように,本発明の膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成したほうが,従来の膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成する時に比べて,塗布液の膜のプロファイルが平坦化している。従って,ウェハ上に従来よりも均一な塗布液の膜を形成することができる。また,図14においてグラフ線a,b,c,d,e,fをそれぞれ比較し,図15においてグラフ線g,h,i,jをそれぞれ比較することから理解できるように,所定の温度が上昇するのに伴い,塗布液の膜のプロファイルが平坦化している。これは,ウェハの表面温度が,塗布液が適度に乾燥する温度に近づくためである。なお,図15では,所定の温度が25℃時の塗布液の膜のプロファイルのグラフ線jまでしか示していないが,所定の温度が25℃を越えた時,例えば所定の温度が35℃の時の塗布液の膜のプロファイルのデータをとれば,塗布液の膜のプロファイルがより平坦化していることが予想される。
【0051】
さらに,本発明の膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成する場合において,0.5cc程度の液量の塗布液によってウェハ上に塗布液の膜を形成する際の塗布液の膜のプロファイルを調べた。その結果を図16に示す。図16において,グラフ線kは所定の温度が23℃の時,グラフ線lは所定の温度が25℃の時,グラフ線mは所定の温度が30℃の時の塗布液の膜のプロファイルをそれぞれ示している。図16中のグラフ線k,l,mにおいても,図14及び図15と同様に,所定の温度が上昇するのに伴い,塗布液の膜のプロファイルが平坦化しているのが理解できる。こうして,ウェハの表面温度が30℃程度に調整されていれば,少量の塗布液でウェハ上に塗布液の薄膜を均一に形成することができる。なお,ウェハの表面温度を所定の温度に調整するだけでなく,塗布液も所定の温度に調整するようにすれば,塗布液の膜の均一性が更に向上することが予想される。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば,少量の塗布液で,当該塗布液の膜を均一に基板上に形成することができる。従って,基板が大型化しても塗布液の使用量を抑えることができ,資源を節約しながら高品質な基板の製造が可能となる。
【0053】
請求項2〜5によれば,本発明の方法を好適に実施することができる。さらに,設置スペースの節約やスループットの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる膜形成方法が実施される膜形成システムの平面図である。
【図2】図1の膜形成システムの正面図である。
【図3】図1の膜形成システムの背面図である。
【図4】第1の膜形成装置の断面説明図である。
【図5】ADP液の温度調節機構の説明図である。
【図6】第2の膜形成装置の断面説明図である。
【図7】クーリングヒートユニットの断面説明図である。
【図8】ベーキングユニットの断面説明図である。
【図9】層間絶縁膜の形成プロセスを示すフローチャートである。
【図10】ADP液の膜が形成された後に温度調整処理が行われる場合の層間絶縁膜の形成プロセスを示すフローチャートである。
【図11】ADP液供給ノズルと塗布液供給ノズルを備えた膜形成装置の断面説明図である。
【図12】ADP液供給ノズルと塗布液供給ノズルを備え,さらにスピンチャックに温度調整機能を付加した膜形成装置の断面説明図である。
【図13】ADP液供給ノズルと塗布液供給ノズルを備え,さらにN気体供給管の途中に温度調整素子を設けた膜形成装置の断面説明図である。
【図14】従来の膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成する場合における,ウェハの表面温度と塗布液の膜のプロファイルとの関係を示すグラフである。
【図15】本発明の実施の形態にかかる膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成する場合における,ウェハの表面温度と塗布液の膜のプロファイルとの関係を示すグラフである。
【図16】本発明の実施の形態にかかる膜形成方法によってウェハ上に塗布液の膜を形成する場合において,0.5cc程度の液量の塗布液でウェハ上に塗布液の膜を形成する際のウェハの表面温度と塗布液の膜のプロファイルとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 膜形成システム
20,21 第1の膜形成装置
22,23 第2の膜形成装置
30,31,40,41,42,43 クーリングヒートユニット
34,35,36,37,44,45,46,47 ベーキングユニット
W ウェハ

Claims (5)

  1. 膜形成装置を使用して半導体基板の表面に層間絶縁膜を形成する基板の処理方法であって,
    ADP液を,前記基板の表面に拡散させる前に予め所定の温度に調整する工程と,前記所定の温度に調整されたADP液を基板の表面に供給し,拡散させる工程と,
    前記ADP液を拡散させた基板の表面を所定の基板温度に調整する工程と,
    前記所定の温度に調節された基板の表面に層間絶縁膜を形成するための塗布液を供給し拡散させる工程とを有し,
    前記ADP液の供給から前記塗布液の拡散までの各工程は前記膜形成装置内で一貫して行われることを特徴とする,基板の処理方法。
  2. 半導体基板の表面に層間絶縁膜を形成する基板の処理装置であって,
    ケーシング内に備えられた1のカップと,
    基板の表面に,予め所定の液温度に調整されたADP液を供給する第1の処理液供給ノズルと,
    基板の表面に,層間絶縁膜を形成するための塗布液を供給する第2の処理液供給ノズルと,
    前記カップ内において基板を載置させ,回転させる回転載置台と,
    基板の表面を所定の基板温度に調整する温度調整機構とを備え,
    前記ADP液の基板への供給から前記塗布液の基板への供給及び拡散処理までを前記ケーシング内において一貫して行うことを特徴とする,基板の処理装置
  3. 前記温度調整機構は,ペルチェ素子を備えることを特徴とする,請求項2に記載の基板の処理装置。
  4. 前記温度調整機構は,前記回転載置台に設けられた熱媒を流通させる流路を備えることを特徴とする,請求項2に記載の基板の処理装置。
  5. 前記温度調整機構は,基板に所定の基板温度の気体を吹き付ける気体供給機構を備えることを特徴とする,請求項2に記載の基板の処理装置。
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