JP3615362B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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  • Secondary Cells (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に関し、特に黒鉛を主材とする負極を備えたリチウム二次電池の負極活物質の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、リチウム二次電池の負極材料として、反応性が高く取り扱いが難しい金属リチウムに替わって、化学的に安定な黒鉛、コークスなどの層状構造を有する炭素材料を用いることが提案されている。特に黒鉛は金属リチウムが示す還元電位近傍の非常に卑な還元電位を示し、電池として高い放電電圧が得られることから、高エネルギー密度リチウム二次電池の負極材料として広く用いられている。
【0003】
黒鉛を負極活物質として用いるリチウム二次電池の場合、正極活物質としては、LiCoO、LiNiO、LiMn等のリチウム含有金属酸化物及びこれらの複合酸化物が一般的に用いられる。
リチウム二次電池の充放電サイクルは、層状或いはトンネル状構造を有するこれらの正極活物質の結晶間隙と、負極活物質である黒鉛の層間との間を、リチウムイオンが往復することによって進行する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、負極活物質に黒鉛系材料を用いた従来のリチウム2次電池は、充放電反応の度に負極活物質に大きな構造変化が起こるために、構造劣化を生じ易く、負極活物質の劣化がサイクル特性に悪影響を及ぼす問題があった。
【0005】
本発明の目的は、充放電反応中のリチウム二次電池の負極活物質における黒鉛の構造変化を抑制し、負極活物質の構造劣化を抑制することによって、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を提供することである。
【0006】
【課題を解決する為の手段】
本発明に係るリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵、放出すべき正極及び負極を備え、負極の活物質として、黒鉛の層間に、V 2 5 、N b 2 5 、及びバナジウム若しくはニオブのオキシハロゲン化物から選ばれた1種以上の化合物が挿入された黒鉛層間化合物を用い、電解液の溶媒として、エチレンカーボネートを含む溶媒を用いている。
黒鉛の層間に挿入される化合物の挿入量は、出発材料である黒鉛の炭素原子数に対して前記化合物の原子数が1%(以下、 mol %という)から8 mol %の範囲であることが望ましい。
【0007】
従来のリチウム二次電池の負極活物質は、充電反応の際にリチウムイオンが負極活物質である黒鉛層間に入り込むことによって膨張し、放電反応の際にリチウムイオンが黒鉛層間から脱離することによって収縮する。従って、充放電反応が進行する度に負極活物質が膨張、収縮を繰り返し、負極の構造が変化するために活物質の構造が劣化し、サイクル特性が悪化する傾向があった。
これに対し、本発明に係るリチウム二次電池の負極は、黒鉛層間化合物を主材とし、放電反応において層間に挿入された前記化合物が黒鉛層間の収縮を阻害するため、充放電サイクルの進行に伴う黒鉛の構造変化が抑制されて、負極活物質の構造が安定する。これによって、サイクル劣化率が低下し、サイクル特性が向上する。
【0011】
上記黒鉛層間化合物は、定法に従いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着剤と混練し、これを合剤として負極に使用する。一方、正極材料は、リチウム含有複合酸化物(例えばLiCoO2)である。正極材料はアセチレンブラック、カーボンブラック等の導電材、及びPTFE、PVdF等の結着剤と混練し、これを合剤として正極に使用する。
又、電解液としてはエチレンカーボネート(EC)に非環状エステルを含有する非水溶媒、より好ましくはジエチルカーボネート(DEC)又はジメチルカーボネート(DMC)を混合したものを使用しても良い。電解質としては、6フッ化リン酸リチウムなど、従来のリチウム二次電池用として使用されている種々の電解質を用いることが可能である。
又、セパレーターとしては、イオン導電性に優れたポリエチレン製やポリプロピレン製の微多孔性膜など、従来のリチウム二次電池用として使用されている種々のものを用いることが可能である。
【0012】
【発明の効果】
本発明に係るリチウム二次電池においては、黒鉛層間に、V 2 5 、N b 2 5 、及びバナジウム若しくはニオブのオキシハロゲン化物から選ばれた1種以上の化合物が挿入された黒鉛層間化合物を負極活物質として用いているので、黒鉛層間の膨張、収縮が抑制される。これによって、負極活物質の構造変化に伴う負極の劣化が抑えられ、優れたサイクル特性を有するリチウム二次電池が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
実施例1
(負極の作製)
Lcが1000Å以上の天然黒鉛粉末とV粉末とを反応管に収容し、300℃、真空中で1日間反応させ、前記天然黒鉛に対して4mol%の割合でV(遷移金属酸化物)を層間に挿入した黒鉛層間化合物を得た。そして、この黒鉛層間化合物に結着剤としてPVdFを重量比90:10の比率で混合して負極合剤を得た。次いで、この負極合剤にN−メチル−2−ピロリドンを加えて作製したスラリーを、負極集電体である銅箔に塗布した後、圧延を施した。これによって得られた電極板を幅42cmに切り出して負極を作製した。
【0014】
(正極の作製)
LiCoO粉末と、導電材としての炭素粉末と、結着剤としてのPVdFとを重量比が90:5:5の比率で混合して正極合剤を得た。次いで、この正極合剤にN−メチル−2−ピロリドンを加えて作製したスラリーを、正極集電体であるアルミニウム箔に塗布した後、圧延を施した。これによって得られた電極板を幅40cmに切り出して正極を作製した。
【0015】
(電解液の調製)
ECとDECとの等体積混合溶媒に、電解質である6フッ化リン酸リチウムを1Mの割合で溶解させ、電解液を調製した。
【0016】
(リチウム二次電池の作製)
前記の正極、負極、電解液、及びポリプロピレン製の微多孔性の薄膜からなるセパレーターなどを用いて、図1に示す如く、直径14.2mm、高さ50.0mmの小型円筒形を呈する本発明のリチウム二次電池A1を作製した。
該リチウム二次電池A1は、正極(1)、負極(2)、これらの両電極を隔離するセパレーター(3)、アルミニウム製の正極リード(4)、ニッケル製の負極リード(5)、正極端子(6)、及び負極端子(7)から構成されている。
【0017】
実施例2〜4
天然黒鉛粉末を出発材料として黒鉛層間に夫々Nb25、MoO3、CrO3を4mol%挿入した黒鉛層間化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明に係るリチウム二次電池A2と、比較例となる電池A3、A4を作製した。
【0018】
実施例5〜12
300℃、真空中で天然黒鉛粉末とV粉末とを反応させて、黒鉛層間化合物を得る際に、反応時間を変化させることによって、黒鉛層間への遷移金属酸化物であるVの挿入量を、天然黒鉛に対して、0.5mol%、0.8mol%、1mol%、2mol%、6mol%、8mol%、10mol%、15mol%に夫々変更した8種類の黒鉛層間化合物を得た。これらの黒鉛層間物質を用いた以外は実施例1と同様にして、8種類の本発明に係るリチウム二次電池A5〜A12を作製した。
【0019】
実施例13
天然黒鉛粉末とV粉末とを反応管に収容し、100℃、フッ素ガス雰囲気中で1日間反応させ、バナジウムのオキシハロゲン化物であるVOFを層間に4mol%挿入した黒鉛層間化合物を得た。黒鉛層間化合物としてこの化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明に係るリチウム二次電池A13を作製した。
【0020】
実施例14
天然黒鉛粉末とNb粉末とを反応管に収容し、100℃、フッ素ガス雰囲気中で1日間反応させ、ニオブのオキシハロゲン化物であるNbOFを4mol%挿入した黒鉛層間化合物を得た。この黒鉛層間化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明に係るリチウム二次電池A14を作製した。
【0021】
実施例15
Lcが1000Å程度の人造黒鉛粉末を出発物質として、Vが4mol%挿入された黒鉛層間化合物を得た。この黒鉛層間化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、本発明に係るリチウム二次電池A15を作製した。
【0022】
実施例16
黒鉛層間化合物の作製工程を省いた以外は実施例1と同様にして負極を作製した。この負極を、V粉末を溶融したものを電解質として電気分解を行ない、Vが4mol%挿入された黒鉛層間化合物を含む負極を得た。これを用いて本発明に係るリチウム二次電池A16を作製した。
【0023】
実施例17〜19
電解液としてECとDMC、ECとエチルメチルカーボネート(EMC)、ECと2−ジメトキシエタン(DME)とを、混合した溶媒を3種類調製した。尚、ECとDMC、ECとEMC、ECとDMEは夫々等体積にて混合されている。これらの電解液を用いた以外は実施例1と同様にして3種類の本発明に係るリチウム二次電池A17〜A19を作製した。
【0024】
比較例1
黒鉛層間化合物の作製工程を省いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池B1を作製した。
【0025】
比較例2〜7
天然黒鉛粉末に夫々4mol%のV、Nb、MoO、CrO、VOF、NbOF粉末を単に混合したものを負極活物質とした以外は、実施例1と同様にして6種類のリチウム二次電池B2〜B7を作製した。尚、VOF、NbOFはオキシハロゲン化物である。
【0026】
比較例8
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート(PC)を用いた以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池C1を作製した。
【0027】
下記表1に、上記実施例1〜16及び比較例1〜7の電池を1Cの充放電率で電池電圧4.2Vまで充電した後、2.7Vに至るまで放電したときの初期放電容量(mAh)、100サイクル目の放電容量、及び下記数1を用いて算出したサイクル劣化率を示す。
【0028】
【数1】
サイクル劣化率(%/サイクル)={[(初期放電容量−nサイクル目の放電容量)/初期放電容量]/n}×100
【0029】
【表1】
Figure 0003615362
【0030】
上記表1より明らかなように、負極活物質として黒鉛層間に遷移金属酸化物が挿入された黒鉛層間化合物を用いた本発明に係るリチウム二次電池A1及びA2は、単なる黒鉛を負極活物質として用いた比較電池B1と比べてサイクル劣化率が低く、優れたサイクル特性が得られている。
又、層状化合物ではないCrO3を黒鉛層間に挿入した場合と、層状化合物であるV25、Nb25、MoO3を黒鉛層間に挿入した場合を比較すると、層状化合物が挿入された黒鉛層間化合物を使用することが、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を得る上で好ましく、特にV25、Nb25を挿入した黒鉛層間化合物を用いた場合、著しくサイクル劣化率の低いリチウム二次電池が得られることが明らかとなった。
更に、本発明に係るリチウム二次電池A1、A5〜A12についての実験結果から、層状化合物の黒鉛層間への挿入量が1mol%〜8mol%であるものが放電容量、サイクル劣化率何れの点についても好ましいことが明らかとなった。
【0031】
本発明に係るリチウム二次電池A13、A14についての実験結果より、遷移金属酸化物に限らず、そのオキシハロゲン化物であるVOF若しくはNbOFが挿入された黒鉛層間化合物を使用することによっても、サイクル特性に優れたリチウム二次電池を得られることが明らかとなった。
【0032】
更に、遷移金属酸化物若しくはそのオキシハロゲン化物を挿入した黒鉛層間化合物を負極活物質として用いた本発明に係る電池A1、A2、A13、A14と、対応する各々の化合物を単に混合した比較例B2、B3、B6、B7の電池における実験結果を比較すると、初期放電容量、サイクル劣化率何れについても黒鉛層間化合物を用いた電池の方が良好な結果が得られている。従って、黒鉛層間への前記化合物の挿入がサイクル特性を改善する上で必要である。
【0033】
上記実施例では本発明における黒鉛の一例として、天然黒鉛を挙げているが、本発明に係る電池A15に示すように、人造黒鉛を負極活物質に用いた場合にも天然黒鉛を用いた場合と同様な結果が得られる。従って、本発明は黒鉛系炭素材料を負極主材とするリチウム二次電池一般に広く適用し得る。
又、黒鉛層間化合物の合成方法としては、本発明に係るリチウム二次電池A1、A2、A5〜A15で用いた真空混合熱処理法の他に、本発明に係るリチウム二次電池A16で用いた溶融電解法による合成法を用いることも可能である。
【0034】
下記表2に、上記実施例1、17〜19及び比較例8の電池を1Cの充放電率で電池電圧4.2Vまで充電した後、2.7Vに至るまで放電したときの初期放電容量(mAh)、100サイクル目の放電容量、及びサイクル劣化率を示す。
【0035】
【表2】
Figure 0003615362
【0036】
上記表2の結果から明らかなように、非水溶媒にECを用いることがサイクル特性に優れたリチウム二次電池を得る上で好ましく、又、非水溶媒に非環状エステルを用いた本発明に係るリチウム二次電池A1、A17、A18が、放電容量、サイクル特性に優れている。
更に、非水溶媒にDEC又はDMCを用いることが、放電容量、サイクル特性において優れるリチウム二次電池を得る上でより好ましいことが明らかとなった。
【0037】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、電池の形状については特に制限はなく、本発明は広く扁平形、角形など種々の形状のリチウム二次電池に実施することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリチウム二次電池の断面図である。
【符号の説明】
(1)正極
(2)負極
(3)セパレーター
(4)正極リード
(5)負極リード
(6)正極端子

Claims (4)

  1. リチウムイオンを吸蔵、放出すべき正極及び負極を備えたリチウム二次電池において、負極の活物質として、黒鉛の層間に、V 2 5 、N b 2 5 、及びバナジウム若しくはニオブのオキシハロゲン化物から選ばれた1種以上の化合物が挿入された黒鉛層間化合物を用い、電解液の溶媒として、エチレンカーボネートを含む溶媒を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 電解液の溶媒として、エチレンカーボネートに、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジメトキシエタンから選択される1種以上を混合したものを用いる請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 電解液の溶媒として、エチレンカーボネートに、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネートから選択される1種以上を混合したものを用いる請求項1に記載のリチウム二次電池。
  4. 前記1種以上の化合物の挿入量が、1mol%から8mol%の範囲である請求項1乃至請求項3の何れかに記載のリチウム二次電池。
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