JP3614186B2 - アンモニア性窒素含有水の処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アンモニア性窒素含有水の処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、精密な制御を必要とすることなく、排水中のアンモニア性窒素を、接触酸化分解法によって無害な窒素ガスとし、安定した水質の処理水を効率良く得ることができるアンモニア性窒素含有水の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
染料排水、半導体排水、肥料工場排水などには、アンモニアがかなりの量含まれており、このアンモニアの除去方法として、例えば、生物学的硝化脱窒素法、アンモニアストリッピング法、塩素酸化法、接触分解法などが知られている。
前記のアンモニアの除去方法の中で、生物学的硝化脱窒素法は、硝化細菌によりアンモニアを亜硝酸性又は硝酸性窒素に酸化したのち、脱窒素細菌により窒素ガスに還元する方法である。しかしながら、この方法は、微生物反応であるため、種々の変動要因に対して分解活性が不安定である上、広い設置面積が必要であり、かつ汚泥の後処理が必要であるなどの欠点を有している。また、アンモニアストリッピング法は、アルカリ性条件下に大量の空気と接触させて、アンモニアを大気中に放散させる方法である。しかしながら、この方法はアルカリコストが高く、かつ放散させたアンモニアを再度吸着濃縮する必要があり、経済的でない。一方、塩素酸化法は、塩素添加により、アンモニウムイオンをクロラミンを経由して窒素ガスに酸化する方法である。この方法は塩素添加量がアンモニアの10倍程度必要であり、アンモニア濃度の高い排水処理には不向きである上、残留塩素の後処理が必要である。
これらの方法に対し、接触分解法は、装置の設置面積が小さい、汚泥や残留塩素といった後処理を必要とする物質が生成しない、などの優れた特徴を有する処理方法であり、例えば、特開平4−293553号公報には、アンモニアを含む排水に酸化剤として亜硝酸又は亜硝酸塩を添加したのち、触媒の存在下で加熱することにより、アンモニアを酸化分解する方法が提案されている。この場合、被処理水中のアンモニア性窒素は次の反応式にしたがって分解され窒素ガスが発生する。
NH4 ++NO2 − → NH4NO2 → N2+2H2O
この方法においては、安定した水質の処理水を得るためには、原水中のアンモニア性窒素濃度を精密に測定し、それに応じて酸化剤の添加量を厳密に制御することが必要である。例えば、アンモニア性窒素濃度1000mg/リットルの原水を処理して、処理水中のアンモニア性窒素濃度を安定して10mg/リットル以下にするには、窒素濃度測定と酸化剤の添加量制御を誤差1%以下の精度で行う必要がある。すなわち、アンモニア性窒素を含有する水に亜硝酸塩を添加して、触媒の存在下で分解する場合、厳密にアンモニアと当量の亜硝酸塩を添加しないと、処理水中にアンモニア又は亜硝酸イオンが残留する。そのため、安定した水質の処理水を得るためには、原水中のアンモニア性窒素濃度の測定および酸化剤の添加量の制御をきわめて厳密に行う必要があり、接触酸化分解によるアンモニア性窒素含有水の処理を実用化する上で障害となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アンモニア性窒素含有水の接触酸化分解による処理において、原水中のアンモニア性窒素濃度の測定及び酸化剤の添加量の制御を、誤差10%程度の精度で行っても、安定した水質の処理水を得ることができるアンモニア性窒素含有水の処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アンモニア性窒素を含有する排水中のアンモニアを接触酸化分解する方法において、処理水を曝気し、揮散したアンモニアを原水に戻せば、安定した水質の処理水を容易に得ることができることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)アンモニア性窒素含有水に酸化剤を添加し、130〜300℃の温度での接触酸化分解によりアンモニア性窒素を窒素ガスとする処理方法において、接触酸化分解後の常温以上で180℃以下の処理水を該処理水中の窒素ガスの気泡によって曝気し、水中のアンモニアガスを揮散除去し、曝気ガス中のアンモニアガスを原水に吸収せしめ、再度接触酸化分解処理することを特徴とするアンモニア性窒素含有水の処理方法、
(2)アンモニア性窒素含有水又は該アンモニア性窒素含有水に酸化剤を添加した混合液のpHを6〜8に調整したのち、接触酸化分解する第(1)項記載のアンモニア性窒素含有水の処理方法、及び
(3)アンモニア性窒素含有水中のアンモニア性窒素1モル当たり亜硝酸塩を0.5〜0.99モル添加した第(1)項又は第(2)項記載のアンモニア性窒素含有水の処理方法、
を提供するものである。
【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明方法においては、アンモニア性窒素含有水に、酸化剤を添加したのち、加温下に金属触媒と接触させてアンモニアを分解させる。使用する酸化剤には特に制限はなく、例えば、亜硝酸塩、過酸化水素、酸素、オゾンなどを用いることができるが、アンモニアとの反応性が良好であり、かつ、添加量の制御が容易であることから、亜硝酸塩の使用が特に好ましい。
次に、本発明方法実施の一態様を、酸化剤として亜硝酸塩を用いた例を挙げ、図面により詳細に説明する。図1は、本発明方法を実施するための装置の一例の概略図である。
本発明方法において、原水槽1へ導かれたアンモニア性窒素含有水は、ポンプ2により調製槽3へ送られる。調製槽において、原水中に含まれるアンモニア性窒素1モル当たり0.5〜1モル、好ましくは0.8〜0.99モルの亜硝酸塩を添加する。亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムのような亜硝酸のアルカリ金属塩を好適に用いることができる。亜硝酸又は亜硝酸塩の使用量が、アンモニア性窒素1モル当たり0.5モル未満であれば、原水中のアンモニアを十分除去することができない。また、亜硝酸又は亜硝酸塩の使用量が、アンモニア性窒素1モル当たり1モルを超えると、アンモニアを除去した後の処理水中に残る亜硝酸イオンの量が多くなるので好ましくない。アンモニア性窒素と亜硝酸塩のモル数の差に相当するアンモニアは、触媒塔で接触酸化分解されることなく処理水中に残るが、後の曝気工程において揮散し、曝気工程を終えた処理水中には残存しない。なお、水中のアンモニア性窒素の量は、原水槽、配管及び調製槽において測定することができる。
本発明方法において、亜硝酸塩を添加したアンモニア性窒素含有水は、必要に応じ、調製槽において、酸又はアルカリを加えることによりpHを調整する。pH調整に用いる酸としては、例えば、硫酸又は塩酸を好適に使用することができる。pH調整に用いるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属の炭酸塩を好適に使用することができる。亜硝酸塩を添加したアンモニア性窒素含有水のpHは6〜8とすることが好ましい。pHが6未満であると、硝酸及び一酸化窒素が生成するおそれがあり、pHが8を超えると、触媒塔における反応が遅くなるので好ましくない。また、アンモニア性窒素含有水のpH調整は、亜硝酸塩の添加に先立って、原水槽1において行うこともできる。
【0006】
本発明方法において、亜硝酸塩を添加し、pHを調整したアンモニア性窒素含有水は、次いでポンプ4により、金属担持触媒を充填した触媒塔6へ送られる。必要に応じ、触媒塔へ送る過程で、熱交換器7及びヒータ5などにより、アンモニア性窒素含有水を予熱することができる。この触媒塔で、アンモニアは亜硝酸塩と反応して無害な窒素ガスとなる。
本発明方法において使用する触媒としては、例えば、α−アルミナ、γ−アルミナ、チタニア、活性炭、ジルコニア、ゼオライト、ガラス、シリカ、シリカアルミナ、イオン交換樹脂などの担体に、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銀、銅、ニッケル、コバルトなどの金属を担持したものを用いることができる。金属の担持量は0.1〜10重量%であることが好ましい。金属の担持量が0.1重量%未満であるとアンモニアの分解が不十分となりやすい。金属の担持量が10重量%を超えても、担持量の増加に見合ってアンモニアの分解がより容易になることはない。触媒塔の温度は常温〜300℃、好ましくは130〜180℃に保って反応を行う。触媒塔の温度が常温未満であれば、冷却のためのエネルギーが必要であるばかりでなく、接触時間を長くしてもアンモニアの分解が不十分となりやすい。また、触媒塔の温度が300℃を超えると、触媒塔に高い耐圧性が必要になる上に、いたずらにエネルギーを浪費するばかりで、アンモニアの分解効率は向上しないので好ましくない。触媒塔の圧力は常圧〜10kg/cm2−Gとして接触分解反応を行うことが好ましい。
本発明方法において、アンモニアの分解のために必要な全接触時間は、通常は3〜100分間、多くの場合は12〜30分間程度である。SVは通常0.5〜20hr−1、好ましくは2〜8hr−1の範囲が有利である。また、アンモニア性窒素含有水の液流方向は上向流通液とすることが好ましい。触媒塔において接触分解反応が進んだ処理水は、pHが10〜12程度のアルカリ性となっており、また反応で生成した窒素ガスが水に混入している。
【0007】
本発明方法において、触媒塔においてアンモニアの接触分解反応を終わり、なお少量のアンモニア性窒素を含有する処理水は、次いで圧力調整弁8を通じて気液分離槽9へ送られる。気液分離槽において、触媒塔からの処理水が導入されると、水中の窒素ガスが気泡となって分離し気相部に集まる。この際窒素ガスのバブリングにより、水中に残留しているアンモニア性窒素はアンモニアガスとして揮散され気相側に移る。原水中に含まれるアンモニア性窒素1モルあたり0.5〜1モルの亜硝酸塩を添加した場合、揮散する窒素ガスとアンモニアガスの混合ガス中のアンモニアガスの濃度は67〜0容量%となり、また、原水中に含まれるアンモニア性窒素1モルあたり0.8〜0.99モルの亜硝酸塩を添加した場合、揮散する混合ガス中のアンモニアガスの濃度は33〜2容量%となる。アンモニアガスの揮散は、通常はアンモニア性窒素の分解によって生じた窒素ガスのバブリングにより十分に行われるが、必要に応じて、さらに揮散効率を上げるために、スチーム又は空気を吹き込むことも可能である。触媒塔からの処理水からアンモニアガスを気相に揮散させるために、処理水の温度は常温〜180℃とすることが好ましい。また、処理水はアルカリ性であるのでアンモニアガスの揮散は促進され、さらに、加温されている場合にはより効果が上がる。気液分離槽においてアンモニアガスの揮散を行った後の処理水中のアンモニア性窒素は十分に減少しており、例えば、1000mg/リットルのアンモニア性窒素を含有する原水から、アンモニア性窒素含有量が10mg/リットル以下の処理水を容易に得ることができる。アンモニアガスを揮散により除去した処理水は、気液分離槽より圧力調整弁11を通じて次の処理工程へ送られる。
本発明方法において、気液分離槽において分離した混合ガスは、圧力調整弁10を通じて原水槽1に導かれ、混合ガス中のアンモニアガスは原水中に吸収溶解される。アンモニアガスの吸収を完全にするために、混合ガスは原水槽の底部から多数の微小な気泡として放出することにより、混合ガスと原水の接触面積を大きくし、かつ、接触時間を長くすることが好ましい。アンモニアガスの水中への吸収における物質移動係数は大きいので、混合ガスを微小な気泡として原水中へ放出することによりアンモニアガスはほぼ完全に吸収されるが、アンモニアガスの原水への吸収をより完全にするためには、原水を弱酸性としておくことが好ましい。気液分離槽で揮散したアンモニアガスを吸収した原水はポンプ2により調製槽3へ送られ、処理が続けられる。
本発明方法において、処理対象となるアンモニア性窒素含有水は、アンモニアを窒素として10〜5000mg/リットルの範囲で含有するものが適当であり、このようなアンモニア性窒素含有水としては、染料排水、半導体排水や肥料工場の排水などが挙げられる。
【0008】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。
実施例1
硫酸アンモニウムをアンモニア性窒素が1000mg/リットルになるように純水に添加した液を原水とし、図1に示す装置を用いてアンモニア性窒素含有水の処理を行った。原水のpHは6.5であった。調製槽において、酸化剤として亜硝酸ナトリウムを亜硝酸性窒素が950mg/リットルとなるように添加した。
この亜硝酸ナトリウムを添加した原水を、熱交換器及びヒータにより予熱したのち、触媒として0.5wt%Pt/チタニア球1.5mmを充填した触媒塔へ送り、温度140℃、SV=4.5hr−1、圧力8kg/cm2−Gで接触分解反応を行った。
触媒塔からの処理水を、熱交換器により100℃まで冷却し、その後圧力調整弁で2kg/cm2−Gまで減圧し、気液分離槽に導入した。気液分離槽で分離した混合ガスは、0.5kg/cm2−Gまでさらに減圧し、原水槽底部に導入し微小な気泡として放出した。気液分離槽で分離した処理水は、常温まで冷却した。
得られた処理水は、pH約10であり、アンモニア性窒素含量は10mg/リットル以下であり、亜硝酸性窒素含量も1mg/リットル以下であった。
比較例1
実施例1における触媒塔からの処理水を気液分離槽に導くことなく、そのまま冷却、減圧したところ、この処理水は、pH約10であり、アンモニア性窒素含量は約50mg/リットル、亜硝酸性窒素含量は、1mg/リットル以下であった。
実施例1の結果及び比較例1の結果を比較すると、実施例1の気液分離槽による曝気を行った本発明方法による処理水は、原水中のアンモニア性窒素と添加した亜硝酸ナトリウムのモル比が1:0.95であるにもかかわらず、アンモニア性窒素は十分に除去されているのに対し、気液分離槽による曝気を行わない比較例1の処理水は、亜硝酸ナトリウムの不足分に対応する量のアンモニア性窒素がそのまま残存していることが分かる。
【0009】
【発明の効果】
本発明方法によれば、アンモニア性窒素含有水の接触酸化分解処理において、操業上、アンモニア性窒素含有量の精密な測定及び酸化剤の添加量の厳密な制御を行うことなく、アンモニア性窒素含有量に対して、添加する酸化剤の当量比が少ない場合でも、十分にアンモニア性窒素を除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明方法を実施するための装置の一例の概略図である。
【符号の説明】
1 原水槽
2 ポンプ
3 調整槽
4 ポンプ
5 ヒータ
6 触媒塔
7 熱交換器
8 圧力調整弁
9 気液分離槽
10 圧力調整弁
11 圧力調整弁
Claims (3)
- アンモニア性窒素含有水に酸化剤を添加し、130〜300℃の温度での接触酸化分解によりアンモニア性窒素を窒素ガスとする処理方法において、接触酸化分解後の常温以上で180℃以下の処理水を該処理水中の窒素ガスの気泡によって曝気し、水中のアンモニアガスを揮散除去し、曝気ガス中のアンモニアガスを原水に吸収せしめ、再度接触酸化分解処理することを特徴とするアンモニア性窒素含有水の処理方法。
- アンモニア性窒素含有水又は該アンモニア性窒素含有水に酸化剤を添加した混合液のpHを6〜8に調整したのち、接触酸化分解する請求項1記載のアンモニア性窒素含有水の処理方法。
- アンモニア性窒素含有水中のアンモニア性窒素1モル当たり亜硝酸塩を0.5〜0.99モル添加した請求項1又は2記載のアンモニア性窒素含有水の処理方法。
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