JP3614093B2 - 小型無線機の振動発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、携帯電話のような小型無線機の呼び出しなどに用いられる振動発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ページング方式の小型無線呼び出し機やPHSあるいは携帯式電話機等の小型無線機の一種として、モータの回転軸に高比重金属製の振動子を偏心させて結合してなる振動発生装置を内蔵した形式のものが普及しつつある。このような振動発生装置を内蔵した小型無線呼び出し機等によれば、呼び出し音を発する代わりに、振動子の回転によって振動を発生させるため、例えば、人込みの中や会議中などにおいても他人に知られることなく受信を確認することができる。
【0003】
従来、この種の小型無線機の振動発生装置は、小型無線機の信号発生回路に接続された小型モータの回転軸に、非円筒状に形成された振動子を一体的に結合させた構成となっている。ここで、この振動子は、粉末冶金法によって成形された高比重金属製のものであり、横断面略扇状の偏心荷重部に円筒状のボス部が一体形成され、そのボス部に形成された取付孔に回転軸を差し込み、当該ボス部を加締めて塑性変形させることにより、ボス部と回転軸とを密させて回転軸に一体的に結合されている。
【0004】
このような上記従来の振動発生装置によれば、振動子自体を加締めて回転軸に直接的に結合させているため、それまでの接着剤や他の結合部品を介して振動子を回転軸に固定したものと比較して、部品点数の削減が可能になるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の振動発生装置にあっては、振動子の円筒状をなすボス部の内部に、取付孔を形成しなければならないため、粉末原料をプレスして振動子を成形する際に、特に外周が薄肉となるボス部の成形型部分に粉末原料を充填することが難しく、振動子の歩留まりの低下をもたらすという問題があった。
また、近年における小型化の要請から、振動子自体を小径に形成しようとすると、取付孔の周囲のボス部が極薄肉になるために、大きな力で加締めるとクラックを発生しやすく、逆に加締め力が小さいと所望の引抜き強度が得られないために、当該加締め力の調整が困難になるという問題点もあった。
【0006】
そこで、従来の他の振動発生装置として、図10および図11に示すように、振動子1の偏心荷重部2の中央部に、回転軸3が嵌まり込む溝部4を形成し、さらに溝部4に沿って偏心荷重部2から膨出することにより溝部4の両側縁部となる側壁5を一体に形成するとともに、これら側壁5の先端部における軸線方向の中央部分を、先端がR形状や直方体状に形成された加締めパンチ7によって、溝部4の開口側から底側に向けて加締めることにより回転軸3に一体的に結合するものが提案されている。
【0007】
上記従来の振動発生装置によれば、取付孔が形成されたボス部を有する振動子よりも成形が容易であり、よって製造歩留まりを向上させることができるとともに、振動子1自体が小径になった場合においても、上記ボス部の外周部のような薄肉部分を加締める場合と比較して、クラックを生じるおそれが少ないという利点がある。
【0008】
しかしながら、図10および図11に示した従来の振動発生装置においては、側壁5の先端部端面を加締める際に、その溝部4側から外周6側に至る全幅寸法を押し潰しているので、大きな加締め力が必要になるにも拘わらず、側壁5の溝4側の部分は回転軸3によって剛性が高くなっているために、塑性変形する際に、もっぱら自由端となる外周6側に膨出してしまい、この結果高い引抜き強度が得られないという問題点があった。また、大きな加締め力を要する結果、振動子1を小径にした場合においても所望の振動を得るべく、よりタングステンの含有を増加させようとすると、材質的に一層脆くなるために、加締める側壁5にクラックを生じやすくなるという問題点もあった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、振動子の製造が容易で、かつ小さな加締め力によっても高い引抜き強度で振動子をモータの回転軸に結合させることができ、よって装置全体の一層の小型化を図ることが可能となる小型無線機の振動発生装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の小型無線機の振動発生装置は、モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなり、かつ上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸が嵌まり込む溝部が形成され、かつ上記偏心荷重部から膨出してこの溝部の両側縁部を形成する側壁が形成されるとともに、この側壁の先端部端面のうち当該側壁の外周側部分を残した上記溝部側の部分が、上記溝部の開口側から底側に向けて加締められることにより、上記回転軸に一体的に結合されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の小型無線機の振動発生装置は、モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、上記振動子は、偏心荷重部が中心角180°未満である切頭扇形状に形成されることにより、回転中心側に平坦面を有し、当該平坦面に上記回転軸が嵌まり込む溝部が形成されるとともに、この溝部の両側縁部を形成する側壁が形成され、上記平坦面のうち側壁の外周側部分を残した溝部側の部分が、溝部の開口側から底側に向けて加締められることにより、上記回転軸に一体的に結合されていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記溝部の開口側から底側に向けて加締められることによって、請求項1における先端部端面または請求項2に記載の発明における平坦面に凹状に形成された加締め部分は、溝部側における軸線方向の長さ寸法が外周側における長さ寸法よりも大きくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の先端部端面または平坦面の溝部側から外周側までの幅寸法Wのうち、上記溝部側の縁部から0.25W〜0.9Wの範囲が加締められていることを特徴とするものであり、さらに請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の振動子の溝部が、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成されているとともに、上記溝部の開口幅W1 が、上記モータの上記回転軸の直径Dとの比(W1 /D)が0.70〜0.95の範囲になるように設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項1〜5のいずれかに記載の小型無線機の振動発生装置においては、溝部内にモータの回転軸を嵌め込み、この溝部の両側縁部を形成する側壁の先端部端面または平坦面のうち、外周側部分を残した溝部側の部分を溝部の底側に向けて加締めているので、図10および図11に示した従来の振動発生装置に比べて、より小さな加締め力によって振動子を回転軸に結合させることが可能となる。この際に、加締められない側壁の外周部分が、加締め部分における塑性変形に対して壁部として作用し、この結果上記加締め部分の大部分が溝部側へと膨出する。そして、上記回転軸を溝部の底部と、膨出した両側壁との3点によって強固に振動子を回転軸に固定することになる。このため、本発明に係る振動発生装置によれば、振動子の製造が容易であることに加えて、さらに小さな加締め力によっても高い引抜き強度で振動子をモータの回転軸に結合させることができる。
【0015】
以上により、請求項1〜5のいずれかに記載の本発明に係る振動発生装置によれば、従来よりも小さな加締め力によって、強固に振動子をモータの回転軸に固定することができるため、振動子の小型軽量化、ひいては振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することができる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子のクラックの発生を防ぐことができる結果、振動発生装置の生産性を向上させるとともに、振動子の高比重化による振動効率の向上が可能となる。
【0016】
ここで、特に請求項3に記載の発明によれば、加締め部の軸線方向の長さ寸法を、当該加締め部分が塑性変形する際に壁部として作用する外周側よりも、その大部分が回転軸側へと膨出する溝部側において大きくなるように形成しているので、より一層小さな加締め力によって、高い引抜き強度で振動子をモータの回転軸に結合させることができる。加えて、製造が容易な、断面円形の加締めパンチを使用することも可能になるとともに、加締めパンチの使用寿命を大幅に伸ばすことができる。
【0017】
また、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、側壁の先端部端面または平坦面のうち、外周側部分を残した溝部側の部分を溝部の底側に向けて加締めるに際しては、請求項4に記載の発明のように、上記先端部端面または平坦面の溝部側から外周側までの幅寸法Wのうち、溝部側の縁部から0.25W〜0.9Wの範囲を加締めるのが好ましい。この際に、加締める幅寸法が小さい場合には、軸線方向の加締め長さ寸法を大きくとればよく、逆に加締める幅寸法が大きい場合には、上記軸線方向の加締め長さ寸法が小さくも十分な引抜き強度が得られる。加締める範囲を0.25W〜0.9Wの範囲に限定したのは、当該範囲が0.25Wより小さいと、モータの回転軸に振動子を強固に固定するための十分な塑性変形量が得難くなり、逆に上記範囲が0.9Wを超えると、加締め部の塑性変形に対して上述した壁部としての作用が減少し、この結果外周部分も外方に変形を強いられて引抜き強度の低下を招くからである。
【0018】
また、側壁の形状としては、当該側壁を溝部の両側縁から直立させることにより、溝部が全体としてU字状をなすように形成してもよい。この場合には、回転軸を溝部に嵌め込んだ状態において、回転軸は、中心角180°の範囲において溝部に内在されることになる。これに対して、請求項5に記載の発明のように、振動子の溝部を、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成し、かつ上記溝部の開口幅W1 を、上記回転軸の直径Dとの比(W1 /D)が0.70〜0.95の範囲になるように設定すれば、加締めた後において、側壁の塑性変形により、一層効果的に溝部の開口部を塞いで振動子を強固に固定することができるため好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態を示すもので、図中符号10が振動子である。この振動子10は、粉末冶金法によって成形された高比重金属製のものであり、軸線Oを中心とする横断面略扇型状とされ、その軸線Oから偏心する扇状部分全体が偏心荷重部11となっている。この振動子10は、偏心荷重部11の扇状を描く外周円弧の中心部に、モータの回転軸12が嵌まり込む底部が当該回転軸12の直径とほぼ等しい半円形状をなす溝部13が形成されており、さらにこの溝部13の両側縁部には、偏心荷重部11から平行に膨出して溝部13の両側縁部となる側壁14が一体に形成されている。また、この種の振動子10は、一般に偏心荷重部11の円弧半径が数mmと極めて小さく、この結果異なる大きさの振動子との識別が困難であるため、偏心荷重部11の両端面には、当該振動子10の大きさを示すための種々の形状(図では円形)の凹状の識別マーク16が形成されている。
【0020】
そして、上記振動子10は、側壁14の先端部端面14aのうち、軸線O方向の両端部を残した中央部分において、側壁14の外周側部分14bを残した溝部13側の部分14cが、直方体状の加締めパンチ15によって溝部13の開口側から底側に向けて加締められることにより、回転軸12に一体的に結合されている。ここで、加締められる溝部13側の部分14cは、先端部端面14aの溝部13側から外周側までの幅寸法Wのうち、溝部13側の縁部から0.25W〜0.9Wの範囲となるように設定されている。
【0021】
ちなみに、回転軸12としては、例えば、SUS420などのステンレス製のものを用いることができる。また、振動子10は、例えば、W−Ni系、W−Ni−Fe系、W−Ni−Cu系、あるいはW−Mo−Ni−Fe系等の、比重が17〜19g/cm3程度の超重合金材料を用いて、粉末冶金法により成形されたものである。具体例としては、W粉末;89〜98重量%およびNi粉末;1.0〜11重量%からなる組成の混合粉末、あるいは上記重量%の範囲のW粉末およびNi粉末に、Cu;0.1〜6重量%、Fe粉末;0.1〜6重量%、Mo粉末;0.1〜6重量%、およびCo粉末;0.1〜5重量%の1種または2種以上を含有する組成の混合粉末を、1ton/cm2〜4ton/cm2で扇板状に圧粉成形し、この圧粉体を0℃〜−6℃の露点の水素気流中またはアンモニア分解ガス中で液相焼結した後、さらに、真空、中性もしくは還元性のいずれかの雰囲気中において700℃〜1430℃±30℃の温度範囲で加熱した後に、少なくとも300℃まで40℃/min以上の冷却速度で急冷する熱処理を施したものである。
【0022】
このような振動子10の組成において、W(タングステン)の含有量が98重量%を越えると展性が低下するものの高比重となり、また89重量%に満たない場合には所定の比重が得られなくなり、この種の振動子としては不都合となる。また、Ni(ニッケル)の含有量が11重量%を越えた場合にも所定の比重が得られなくなり、それが1.0重量%に満たない場合には焼結性が進まなくなってしまう。さらに、Co(コバルト)は、Niと同様の効果があるものの、それが0.1重量%未満では充分な添加の効果が得られず、一方、それが5重量%を越えても相応の効果が得られずに製造上不経済となる。また、Cu粉末およびFe粉末は、これらを含有させることにより焼結温度を下げることができるものの、上記の上限値以上では所定の比重が得られなくなる。
【0023】
以上の構成からなる小型無線機の振動発生装置によれば、溝部13内にモータの回転軸12を嵌め込み、この溝部13の両側縁部を形成する側壁14の先端部端面14aのうち、外周側部分14bを残して、溝部13側から外周側までの幅寸法Wのうち、溝部13側の縁部から0.25W〜0.9Wの範囲の部分14cを、加締めパンチ15によって溝部13の底側に向けて加締めているので、図10および図11に示した従来の振動発生装置に比べて、より小さな加締め力によって振動子を回転軸に結合させることができる。
【0024】
この際に、加締められない側壁の外周部分14bが、加締め部分14cにおける塑性変形に対して壁部として作用するために、加締め部分14cの大部分が溝部13側へと膨出する結果、回転軸12を溝部13の底部と、膨出した両側壁との3点によって強固に振動子10を回転軸12に固定することができる。このため、振動子10の製造が容易であることに加えて、さらに小さな加締め力によっても高い引抜き強度で振動子をモータの回転軸に結合させることができる。
【0025】
このように、上記振動発生装置によれば、従来よりも小さな加締め力によって、強固に振動子10を回転軸12に固定することができるため、振動子10の小型軽量化、ひいては振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することができる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子10の特に側壁14におけるクラックの発生を防ぐことができるため、振動発生装置の生産性を向上させるとともに、振動子10の高比重化による振動効率の向上が可能となる。
【0026】
【実施例】
図1〜図3に示した本発明に係る加締めによって回転軸12に固定された振動子10と、図10および図11に示した従来の加締めによって回転軸3に固定された振動子1とにおける引抜き強度を比較する試験を行なった。なお、対比にあたっては、それぞれ同形の振動子1、10および回転軸3、12を用いて各5組の振動発生装置を製造した。
上記実験に使用した上記振動子1、10は、偏心荷重部2、11の外径が3mm、軸線O方向の長さが5mm、溝部4、13の内径が0.4mm、溝部4、13の底部からの側壁5、14の高さ寸法が1.1mm、各側壁5、14の幅寸法Wが0.7mmであり、回転軸3、12の外径寸法は0.8mmであった。
【0027】
また、従来の振動発生装置においては、加締めパンチ7によって、側壁5をその全幅寸法にわたって軸線方向に2.6mmの長さ押し潰したのに対して、本発明に係る振動発生装置においては、幅寸法1.4mmの加締めパンチ15を用いて、各側壁14における溝部13側から0.3mmの範囲(0.43W)を軸線方向に2.0mmの長さ押し潰した。
このようにして得られた、各5組の振動発生装置について、振動子1、10の引抜き試験を行なったところ、従来の振動発生装置においては、それぞれ抜去力(kgf)が、5.3、4.9、5.5、5.5、5.4(平均5.3)であったのに対し、本発明に係る振動発生装置においては、それぞれの抜去力(kgf)が、10.3、11.0、10.5、10.3、10.2(平均10.5)と、軸線方向の加締め長さが0.6mm短いにも拘わらず、従来と比較して略2倍近い引抜き強度が得られることが判った。
【0028】
(第2の実施の形態)
図4および図5は、本発明の第2の実施形態を示すもので、この振動発生装置においては、振動子20の偏心荷重部21に底部22aがほぼ半円形状をなす溝部22が形成されるとともに、この溝部22の両側壁を形成する側壁23が、溝部22内に嵌め込まれたモータの回転軸24の露出部分を軸線O方向の両側から間隔をおいて覆うように一体に形成されている。この結果、振動子20の溝部22は、回転軸24の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成されている。そして、対向する側壁23間における溝部22の開口幅W1 は、回転軸24の直径Dとの比(W1 /D)が0.70〜0.95の範囲になるように設定されている。
【0029】
このような範囲となる具体例を示せば、回転軸24の直径D(mm)が、それぞれ0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0である場合には、側壁23間における溝部22の開口幅W1 (mm)を、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9に設定すればよい。
そして、上記振動子20は、図5に示すように、側壁23の先端部端面23aのうち、軸線O方向の両端部を残した中央部分において、側壁23の外周側部分23bを残した溝部22側の部分23cが、直方体状の加締めパンチ25によって溝部22の開口側から底側に向けて加締められることにより、回転軸24に一体的に結合されている。この際に、加締められる溝部22側の部分23cは、第1の実施形態と同様に、先端部端面23aの溝部22側から外周側までの幅寸法Wのうち、溝部22側の縁部から0.25W〜0.9Wの範囲となるように設定されている。
【0030】
以上の構成からなる振動発生装置においても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果が得られる他、特に本実施形態に示す振動子20においては、振動子20の溝部22を、回転軸24の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成し、かつ溝部22の開口幅W1 を、回転軸24の直径Dとの比(W1 /D)が0.70〜0.95の範囲になるように設定しているので、振動子20は、溝部22の底部22aと、両側壁23の底部23dとの3点において、回転軸24に強固に固定される。この結果、より一層小さな加締め力によって強固に振動子20を回転軸24に固定することができる。
【0031】
(第3の実施形態)
図6および図7は、本発明の第3の実施形態における振動子30を示すもので、この振動子30は、その偏心荷重部31の全体が、中心角180°未満の扇形の図中点線で示す中心部分が除かれてなる、横断面切頭扇形状に形成されている。これにより振動子30の回転中心側には、平坦面32が形成され、この平坦部32の中央に、上記回転軸が嵌まり込むU字状の溝部33が形成されている。この結果、この溝部33の両側に当該溝部33の両側縁部を形成する側壁34が形成されるとともに、側壁34の外周面34aは、この偏心荷重部31の外側面31aに連続して円弧状の外周面31bに至る傾斜平面状に形成されている。
【0032】
そして、上記振動子30は、第1の実施形態に示したものと同様に、側壁34の先端部端面となる上記平坦面32のうち、軸線方向の両端部を残した中央部分において、側壁34の外周面34a側部分を残した溝部33側の部分が、直方体状の加締めパンチによって溝部33の開口側から底側に向けて加締められることにより、回転軸に一体的に結合されている。なお、この振動子30においても、加締められる溝部33側の部分は、平坦面32の溝部33側から外周側までの幅寸法Wのうち、溝部33側の縁部から0.25W〜0.9Wの範囲となるように設定されている。
【0033】
上記構成からなる振動発生装置においても、第1の実施形態に示したものと同様の作用効果が得られる他、振動子30の全体を、中心角180°未満であって中心部に平坦部32が形成された横断面切頭扇形状に形成しているので、当該振動子30を粉末成形によって形成する際の金型形状が単純化されて、製造が容易になるとともに、重心を回転軸から外方に偏心した位置に設定することができるために、所望の振動を得ることもできるといった効果が得られる。
【0034】
(第4の実施の形態)
図8および図9は、それぞれ本発明の第4の実施形態およびその変形例を示すもので、図中符号40が振動子である。この振動子40は、第1の実施形態に示したものと略同形状のもので、その軸線から偏心する扇状部分全体が偏心荷重部41となっている。そして、この振動子40は、偏心荷重部41の扇状を描く外周円弧の中心部に、モータの回転軸42が嵌まり込む底部が当該回転軸42の直径とほぼ等しい半円形状をなす溝部43が形成され、この溝部43の両側縁部に、偏心荷重部41から平行に膨出して溝部43の両側縁部となる側壁44が一体に形成されている。
【0035】
そして、上記振動子40は、側壁44の先端部端面44aのうち、軸線方向の両端部を残した中央部分において、側壁14の外周側部分44bを残した溝部43側の部分44cが、円柱状の加締めパンチ45によって溝部43の開口側から底側に向けて加締められることにより、回転軸42に一体的に結合されている。ここで、円柱状の加締めパンチ45によって加締めた結果、先端部端面44aに形成された凹状の加締め部44cは、各々略半円形状になり、溝部43側における軸線方向の長さ寸法Lが外周側における長さ寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0036】
また、図9に示す振動子40は、先端部端面44aの中央部分において、側壁44の外周側部分44bを残した溝部43側の部分44c´が、断面正方形状の加締めパンチ46の角部を外周側に位置させた状態で当該加締めパンチ46によって加締められることにより、回転軸42に一体的に結合されている。これにより、加締めパンチ46によって加締められて形成された凹状の加締め部44c´は、溝部43側を底辺とした三角形状に形成されている。
【0037】
この結果、図8および図9に示す上記振動発生装置によれば、第1および第2の実施形態に示したものと同様の作用効果が得られることに加えて、加締め部44c、44c´の軸線方向の長さ寸法を、当該加締め部分44c、44c´が塑性変形する際に壁部として作用する外周側よりも、その大部分が回転軸42側へと膨出する溝部43側において大きくなるように形成しているので、全体として塑性変形させる体積が小さくなり、より一層小さな加締め力によって、高い引抜き強度を得ることができる。加えて、製造が容易な、断面円形の加締めパンチ45を使用することができるとともに、加締めパンチ45、46の使用寿命も大幅に伸ばすことができる。
【0038】
なお、上記第1〜第4の実施形態においては、振動子10、20、30、40として、いずれも断面略扇形状あるいは断面切頭扇形状の偏心荷重部11、21、31、41が形成されたものを用いた場合についてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、例えば断面略半円状等の各種形状の偏心荷重部を有するものを用いることが可能である。
また、溝部13、22、33、43についても、底部が断面半円状のものに限るものではなく、断面略方形状や断面略台形状等の各種の断面形状に形成することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜5のいずれかに記載の小型無線機の振動発生装置によれば、従来よりも小さな加締め力によって、強固に振動子をモータの回転軸に固定することができるため、振動子の小型軽量化、ひいては振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することができるとともに、加締め荷重を小さくし、かつ振動子のクラックの発生を防ぐことができる結果、振動発生装置の生産性を向上させることができ、かつ振動子の高比重化による振動効率の向上が可能となる。
【0040】
ここで、特に請求項3に記載の発明によれば、より一層小さな加締め力によって、高い引抜き強度で振動子をモータの回転軸に結合させることができ、しかも製造が容易な、断面円形の加締めパンチを使用することも可能になるとともに、加締めパンチの使用寿命を大幅に伸ばすことができる。
【0041】
また、請求項5に記載の発明によれば、振動子の溝部を、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成し、かつ上記溝部の開口幅W1 を、上記回転軸の直径Dとの比(W1 /D)が0.70〜0.95の範囲になるように設定することにより、加締めた後において、側壁の塑性変形により、一層効果的に溝部の開口部を塞いで振動子を強固に固定することができるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における加締め状態を示す正面図である。
【図2】図1の振動子の縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における振動子の形状を示す正面図である。
【図5】図4の振動子を加締めた状態を示す正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態における振動子の形状を示す正面図である。
【図7】図6の縦断面図である
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す斜視図である。
【図9】第4の実施の形態の変形例を示す斜視図である。
【図10】従来の振動発生装置における加締め状態を示す正面図である。
【図11】図10のように加締められた従来の振動発生装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
10、20、30、40 振動子
11、21、31、41 偏心荷重部
12、24、42 モータの回転軸
13、22、33、43 溝部
14、23、34、44 側壁
14a、23a、44a 先端部端面
14b、23b、44b 外周側部分
14c、23c、44c 溝部側部分(加締め部分)
15、25、45、46 加締めパンチ
32 平坦面
W 側壁先端部端面の幅寸法
W1 溝部の開口幅
L 加締め部の軸線方向の長さ寸法
Claims (5)
- モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、
上記振動子は、偏心荷重部に上記回転軸が嵌まり込む溝部が形成され、かつ上記偏心荷重部から膨出してこの溝部の両側縁部を形成する側壁が形成されるとともに、この側壁の先端部端面のうち当該側壁の外周側部分を残した上記溝部側の部分が、上記溝部の開口側から底側に向けて加締められることにより、上記回転軸に一体的に結合されていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置。 - モータの回転軸に振動子を一体的に結合してなる小型無線機の振動発生装置において、
上記振動子は、偏心荷重部が中心角180°未満である切頭扇形状に形成されることにより、回転中心側に平坦面を有し、当該平坦面に上記回転軸が嵌まり込む溝部が形成されるとともに、この溝部の両側縁部を形成する側壁が形成され、上記平坦面のうち上記側壁の外周側部分を残した上記溝部側の部分が、上記溝部の開口側から底側に向けて加締められることにより、上記回転軸に一体的に結合されていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置。 - 上記溝部の開口側から底側に向けて加締められることによって上記先端部端面または上記平坦面に凹状に形成された加締め部分は、上記溝部側における軸線方向の長さ寸法が上記外周側における長さ寸法よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1まはた2に記載の小型無線機の振動発生装置。
- 上記先端部端面または上記平坦面の上記溝部側から外周側までの幅寸法Wのうち、上記溝部側の縁部から0.25W〜0.9Wの範囲が加締められていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の小型無線機の振動発生装置。
- 上記振動子の溝部は、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる大きさに形成されているとともに、上記溝部の開口幅W1 は、上記モータの上記回転軸の直径Dとの比(W1 /D)が0.70〜0.95の範囲になるように設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の小型無線機の振動発生装置。
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