JP3570391B2 - 小型無線機の振動発生装置用振動子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話等の小型無線機の振動発生装置に組みこまれる振動子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ページング方式の小型無線呼び出し機やPHSあるいは携帯式電話機等の小型無線機の一種として、モータの回転軸に高比重金属製の振動子を偏心させて結合してなる振動発生装置を内蔵した形式のものが普及しつつある。このような振動発生装置を内蔵した小型無線呼び出し機等によれば、呼び出し音を発する代わりに、振動子の回転によって振動を発生させるため、例えば、人込みの中や会議中などにおいても他人に知られることなく受信を確認することができる。
【0003】
この種の小型無線機の振動発生装置は、小型無線機の信号発生回路に接続された小型モータの回転軸に、非円筒状に形成された振動子を一体的に結合させた構成となっている。ここで、上記従来の振動子は、粉末冶金法によって成形された高比重金属製のものであり、横断面略扇状の偏心荷重部に円筒状のボス部が一体形成されたものである。そして、上記振動子は、上記ボス部に形成された取付孔に回転軸を差し込み、当該ボス部を加締めて塑性変形させることにより、ボス部と回転軸とを密着させて回転軸に一体的に結合されている。
【0004】
このような従来の振動子を用いた振動発生装置によれば、振動子自体を加締めて回転軸に直接的に結合させているため、それまでの接着剤や他の結合部品を介して振動子を回転軸に固定したものと比較して、部品点数および製造に要する工数の削減が可能になるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の振動子にあっては、円筒状をなすボス部の内部に、取付孔を形成しなければならないため、粉末原料をプレスして振動子を成形する際に、特に外周が薄肉となるボス部の成形型部分に粉末原料を充填することが難しく、歩留まりの低下をもたらすという問題があった。
【0006】
また、近年における小型化の要請から、振動子自体を小径に形成しようとすると、取付孔の周囲のボス部が極薄肉になるために、大きな力で加締めるとクラックを発生しやすく、逆に加締め力が小さいと所望の引抜き強度が得られないために、当該加締め力の調整が困難になるという問題点もあった。
【0007】
そこで、図11に示すように、従来の他の振動発生装置用振動子1として、その扇型状をなす偏心荷重部2の円弧中央部に、回転軸3が嵌まり込む断面U字状の溝部4を形成し、この溝部4に沿って偏心荷重部2から膨出することにより溝部4の両側縁部となる側壁5を一体に形成したものが知られている。
上記振動子1によれば、側壁5の先端部における軸線方向の中央部分6を、先端がR形状や直方体状に形成された加締めパンチによって、溝部4の開口側から底側に向けて加締めることにより回転軸3に一体的に結合することができる。
【0008】
上記振動子1においては、取付孔が形成されたボス部を有する振動子よりも成形が容易であり、よって製造歩留まりを向上させることができるとともに、振動子1自体が小径になった場合においても、上記ボス部の外周部のような薄肉部分を加締める場合と比較して、クラックを生じるおそれが少ないという利点がある。
【0009】
しかしながら、図11に示した従来の振動発生装置用振動子1にあっては、側壁5の先端部端面を加締める際に、側壁5の溝側6aの部分は回転軸3によって剛性が高くなっているために、塑性変形する際に、もっぱら自由端となる外周6b側に膨出してしまい、この結果溝側6aへの変形量が小さくなって、大きな加締め力が必要になるにも拘わらず、高い引抜き強度が得られないという問題点があった。
【0010】
また、振動子1を小径にした場合には、所望の振動を得るために、タングステンの含有量を増加させる必要がある。ところが、タングステンの含有量が増加すると、振動子1自体が材質的に一層脆くなるために、上述した大きな加締め力によって、側壁5にクラックを生じやすくなるという問題点もあった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、小さな加締め力によっても高い引抜き強度でモータの回転軸に結合させることができ、よって装置全体の一層の小型化を図ることが可能となる小型無線機の振動発生装置用振動子を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の小型無線機の振動発生装置用振動子は、タングステンを主成分とする粉末材料によって成形された超重合金からなり、小型無線機の振動発生装置のモータ回転軸に、加締めによって一体的に結合される振動子であって、偏心荷重部の外周部に、回転軸が挿通される溝部が形成されているとともに、偏心荷重部から膨出して上記溝部の両側縁部を形成する側壁が形成され、かつ上記溝部は、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と当該溝部の開口との間に形成され、回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成されてなり、上記側壁の先端部端面のうち当該側壁の外周側部分を残した上記溝部側の部分が溝部の開口側から底側に向けて加締められることにより上記回転軸に固定されるようになっていることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、請求項2に記載の発明は、上記溝部の立壁部が、上記軸挿通部内の上記回転軸の軸線から上記開口に至る長さ寸法Tと回転軸の直径Dとの比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記溝部は、開口の幅寸法Wと回転軸の直径Dとの比(W/D)が、0.50〜0.95の範囲になるように形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項1〜3のいずれかに記載の小型無線機の振動発生装置用振動子においては、回転軸が挿通される溝部を、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と当該溝部の開口との間に形成され、回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成しているので、上記溝部近傍が、いわば従来の振動子が加締められて塑性変形した後の形状に近付いた形状に形成されていることになる。このため、上記溝部の両側方を溝部の開口側から底側に向けて加締めると、当該溝部の両側方が塑性変形して、回転軸の外径寸法よりも狭い間隔の立壁部間が一層幅狭になるとともに、上記回転軸を溝部の底部および立壁部近傍の軸挿通部の天井部とによって強固に挟むことにより、振動子を回転軸に高い引抜き強度で固定することができる。
【0015】
したがって、上記構成からなる振動子によれば、図11に示した従来の振動発生装置用振動子1に比べて、より小さな加締め力によって振動子を回転軸に結合させることができ、よって振動子の製造が容易であることに加えて、さらに振動子が小型化した場合においても、クラックを生じることなく、確実に高い引抜き強度で当該振動子をモータの回転軸に固定することができる。この結果、振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することが可能になる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子のクラックの発生を防ぐことができるために、振動発生装置の生産性を向上させることができるとともに、振動子の高比重化による振動効率の向上も可能となる。
【0016】
さらに、請求項1に記載の発明においては、上記偏心荷重部に、これから膨出して溝部の両側縁部を形成する側壁を形成し、この側壁の先端部端面を溝部の開口側から底側に向けて加締めることにより、上記回転軸に固定するようになっているので、より一層必要とされる加締め荷重を軽減することができるとともに、回転軸と偏心荷重部の重心との距離を大きくして、振動効率を向上させることが可能になる。
【0017】
ここで、上記溝部の立壁部は、請求項2に記載の発明のように、上記軸挿通部内の上記回転軸の軸線から開口に至る長さ寸法Tと回転軸の直径Dとの比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成することが好ましい。ちなみに、上記比(T/D)が0.5に満たないと、加締め時における塑性変形量が小さくなり、回転軸の抜け強度が低下するとともに、立壁間を塞ぐ量が少なくなって回転軸が外れ易くなるからであり、逆に1.4を超えると、下方の軸挿通部まで塑性変形させて充分な抜け強度を得るために、必要となる加締め荷重が過大になり、逆にクラックを生じる虞があるとともに、偏心荷重部において、回転軸に対し重心と反対側に位置する部分の重量が大きくなる結果、振動効率の低下を招くからである。
【0018】
また、上記溝部の開口の幅寸法Wに付いても、請求項3に記載の発明のように、当該幅寸法Wと回転軸の直径Dとの比(W/D)が、0.50〜0.95の範囲になるように形成すれば、加締めた後において、溝部近傍の塑性変形により、一層効果的に溝部の開口部を塞いで振動子を強固に固定することができるため好適である。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態を示すもので、図中符号10が振動子である。この振動子10は、円弧半径が数mmの横断面略扇型状に成形された超重合金製のものであり、その扇状部分全体が偏心荷重部11となっている。この振動子10は、偏心荷重部11の扇状を描く外周円弧の中心部に、例えば、SUS420などのステンレス製のモータの回転軸12が嵌まり込む溝部13が形成されている。また、この溝部13の両側には、偏心荷重部11から膨出して溝部13の両側縁部を形成する側壁14が一体に形成されている。
【0020】
この溝部13は、回転軸12の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部13aと、この軸挿通部13aと溝部13の開口15との間に形成された立壁部13bとによって構成されている。ここで、立壁部13bは、回転軸12の外径寸法よりも狭い間隔を介して平行に対向するように形成されており、さらに軸挿通部13a内の回転軸12の軸線Oから開口15に至る長さ寸法Tと、回転軸12の直径Dとの比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成されている。
このような範囲の一例を示せば、回転軸12の直径D(mm)が、それぞれ0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0である場合に、立壁部13bの上記寸法T(mm)は、それぞれ0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.7に設定されている。
【0021】
また、溝部13は、開口15の幅寸法Wと回転軸12の直径Dとの比(W/D)が、0.50〜0.95の範囲になるように形成されている。同様に、当該範囲内の一例を示せば、回転軸12の直径D(mm)が、それぞれ0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0である場合に、溝部13の開口15の幅W(mm)は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9に設定されている。
【0022】
このような形状を有する振動子10は、例えば、W−Ni系、W−Ni−Fe系、W−Ni−Cu系、あるいはW−Mo−Ni−Fe系等の、比重が17〜19g/cm3程度の超重合金材料を用いて、粉末冶金法または射出成形法により成形されたものである。粉末冶金法による具体例としては、W粉末;89〜98重量%およびNi粉末;1.0〜11重量%からなる組成の混合粉末、あるいは上記重量%の範囲のW粉末およびNi粉末に、Cu;0.1〜6重量%、Fe粉末;0.1〜6重量%、Mo粉末;0.1〜6重量%、およびCo粉末;0.1〜5重量%の1種または2種以上を含有する組成の混合粉末を、1ton/cm2〜4ton/cm2で扇板状に圧粉成形し、この圧粉体を0℃〜−6℃の露点の水素気流中またはアンモニア分解ガス中で液相焼結した後、さらに、真空、中性もしくは還元性のいずれかの雰囲気中において700℃〜1430℃±30℃の温度範囲で加熱した後に、少なくとも300℃まで40℃/min以上の冷却速度で急冷する熱処理を施したものである。
【0023】
上記振動子10の組成において、W(タングステン)の含有量が98重量%を超えると展性が低下し、また89重量%に満たない場合には所定の比重が得られなくなり、この種の振動子としては不都合となる。また、Ni(ニッケル)の含有量が11重量%を越えた場合にも所定の比重が得られなくなり、それが1.0重量%に満たない場合には焼結性が進まなくなってしまう。さらに、Co(コバルト)は、Niと同様の効果があるものの、それが0.1重量%未満では充分な添加の効果が得られず、一方、それが5重量%を越えても相応の効果が得られずに製造上不経済となる。また、Cu粉末およびFe粉末は、これらを含有させることにより焼結温度を下げることができるものの、上記の上限値以上では所定の比重が得られなくなる。
【0024】
そして、上記構成からなる振動子10は、図2および図3に示すように、側壁14の先端部端面14aのうち、軸線O方向の両端部を残した中央部分において、側壁14の外周側部分14bを残した溝部13側の部分14cが、直方体状の加締めパンチ18によって溝部13の開口15側から底側に向けて加締められることにより、回転軸12に一体的に結合されるようになっている。
【0025】
以上の構成からなる小型無線機の振動発生装置用振動子10によれば、回転軸12が挿通される溝部13を、回転軸12の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部13aと、この軸挿通部13aと開口15との間に形成され、回転軸12の外径寸法よりも狭い間隔Wを介して平行に対向する立壁部13bとによって形成しているので、予め側壁14における溝部13近傍が、従来の振動子を加締めて塑性変形した後の形状に近付いた形状に形成されていることになる。
【0026】
この結果、側壁14の先端部端面14aを溝部13の開口15側から底側に向けて加締めると、図2に示すように、側壁14が塑性変形して回転軸12の外径寸法よりも狭い間隔Wの立壁部13b間が一層幅狭になるとともに、回転軸12を溝部13の底部16および立壁部13bの近傍に位置する軸挿通部13aの天井部17との3点によって強固に挟むことにより、振動子10を回転軸12に高い引抜き強度で固定することができる。
【0027】
したがって、上記構成からなる振動子10によれば、図11に示した従来の振動発生装置用振動子1に比べて、より小さな加締め力によって振動子10を回転軸12に結合させることができる。ちなみに、本発明者等の実験によれば、従来の略1/3といった浅い加締め量にも拘わらず、従来と比較して1.5〜2.5倍の引抜き強度を得ることができた。したがって、上記振動子10にあっては、その製造が容易であることに加えて、さらに振動子10が小型化した場合においても、クラックを生じることなく、確実に高い引抜き強度でモータの回転軸12に固定することができる。この結果、振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することが可能になる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子10の側壁14におけるクラックの発生を防ぐことができるために、振動発生装置の生産性を向上させることができ、かつ振動子10の高比重化による振動効率の向上も可能となる。
【0028】
(第2〜第4の実施の形態)
図4〜図6は、それぞれ本発明の第2〜第4の実施形態を示すものである。
図4に示す第2の実施形態における振動子20は、その偏心荷重部21の全体が、中心角180°未満の扇形状に形成されるとともに、その円弧中心部分が除かれてなる横断面切頭扇形状に形成されている。これにより振動子20の回転中心側には、平坦面22が形成され、この平坦部22の中央に溝部23が形成されている。
【0029】
この結果、この溝部23の両側に当該溝部23の両側縁部を形成する側壁24が形成されるとともに、側壁24の外周面24aは、この偏心荷重部21の外側面21aに連続して円弧状の外周面21bに至る傾斜平面状に形成されている。
そして、上記溝部23は、第1の実施形態に示したものと同様に、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部23aと、この軸挿通部23aと溝部23の開口25との間に形成された立壁部23bとによって構成されている。また、立壁部23bは、軸挿通部23a内の回転軸の軸線から開口25に至る長さ寸法Tと、回転軸の直径Dとの比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成され、かつ溝部23は、開口25の幅寸法Wと回転軸の直径Dとの比(W/D)が、0.50〜0.95の範囲になるように形成されている。
【0030】
他方、図5に示す第3の実施形態における振動子30は、偏心荷重部31が、横断面視において略半円形状に形成されており、その平坦面32の中央部に溝部33が形成されている。そして、この溝部33にあっても、第1および第2の実施形態と同様に、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部33aと、この軸挿通部33aと溝部33の開口35との間に形成された立壁部33bとによって構成されている。また、立壁部33bは、軸挿通部33a内の回転軸の軸線から開口35に至る長さ寸法Tと、回転軸の直径Dとの比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成され、かつ溝部33は、開口35の幅寸法Wと回転軸の直径Dとの比(W/D)が、0.50〜0.95の範囲になるように形成されている。
【0031】
図6は、本発明の第4の実施形態を示すもので、この振動子40は、偏心荷重部41が横断面視略半円形状に形成されるとともに、その平坦面42の中央部に、軸線方向に延在する一対の側壁44が一体に形成され、これら側壁44間に溝部43が形成されたものである。ここで、この振動子40にあっても、上記溝部43が、第1〜第3の実施形態に示したものと同様の、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と溝部33の開口35との間に形成された立壁部とによって構成されている。
【0032】
そして、この振動視40は、側壁44の先端部端面44aのうち、外周側部分14bを残した溝部13側の部分14cが、軸線方向の両端部に至る全長にわたって直方体状の加締めパンチによって溝部43の開口45側から底側に向けて加締められることにより、回転軸12に一体的に結合されている。
以上の第2〜第4の実施形態に示した振動子20、30、40にあっても、第1の実施形態に示した振動子10と同様の作用効果を得ることができる。
【0033】
なお、これらの振動子10、20、30、40をモータの回転軸12に固定するための加締め方法としては、図3および図6に示したものに限るものではなく、例えば図7に示すように、側壁14の先端面14aを、軸線方向の中央部において溝部13側から外周側の全幅寸法にわたって加締めたり、あるいは軸線方向の長さ寸法が小さい場合には、上記先端面14aの全長にわたって、その全幅寸法を加締めたりしてもよい。
【0034】
さらには、図8あるいは図9に示すように、側壁14の先端部端面14aのうち、軸線方向の両端部を残した中央部分において、側壁14の外周側部分14bを残した溝部13側の部分14cを、円柱状の加締めパンチ50や直方体状の加締めパンチ51によって溝部13の開口15側から底側に向けて加締めることにより、回転軸12に一体的に結合してもよい。
【0035】
また、溝部13、23、33、34の形状に付いても、図1〜図9に示した形状の他、回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と開口との間に形成され、回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成されたものであれば、例えば図10(a)〜(d)に示すような各種の形状のものを適用することが可能である。
【0036】
すなわち、図10(a)に示す溝部60は、回転軸12が挿通される軸挿通部60aが、中心角180°以上の範囲を内在させる対向する一対のV字状壁面によって全体として内角が90°の略菱形状に形成され、この軸挿通部60aと開口65との間に回転軸12の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部60bが形成されたものであり、この立壁部60bは、軸挿通部60a内の回転軸12の軸線から開口65に至る長さ寸法Tと回転軸12の直径Dとの比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成されている。
【0037】
また、図10(b)に示す溝部70は、回転軸12が挿通される軸挿通部70aが、底面と垂直な側壁とによって全体として略正方形状に形成され、この軸挿通部70aと開口75との間に、回転軸12の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部70bが形成されたものである。さらに、図10(c)に示す溝部80は、上記溝部70の変形例であり、軸挿通部80aの立壁部80bに隣接する部分を、回転軸12の直径と曲率がほぼ等しい円弧状壁面によって形成したものである。
【0038】
また、図10(d)に示す溝部90は、図10(c)に示した溝部80の変形例であり、軸挿通部90aの底部をV字状の底面によって形成したものである。そして、これらの溝部70、80、90にあっても、図10(a)に示したものと同様に、上記比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成されている。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜3のいずれかに記載の小型無線機の振動発生装置用振動子によれば、従来の振動子と比較して、より一層小さな加締め力によって振動子を回転軸に結合させることができ、よって振動子の製造が容易であることに加えて、さらに振動子が小型化した場合においても、クラックを生じることなく、確実に高い引抜き強度で当該振動子をモータの回転軸に固定することができる。この結果、振動発生装置および小型無線機全体の小型軽量化を実現することが可能になる。また、加締め荷重を小さくし、かつ振動子のクラックの発生を防ぐことができるために、振動発生装置の生産性を向上させることができるとともに、振動子の高比重化による振動効率の向上も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の振動子の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の振動子を回転軸に加締める状態を示す図3のII―II線視横断面図である。
【図3】図1の振動子を回転軸に固定した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す正面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態を示す正面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態における振動子を回転軸に固定した状態を示す斜視図である。
【図7】図1の振動子を他の加締め方法によって回転軸に固定した状態を示す斜視図である。
【図8】図1の振動子を他の加締め方法によって回転軸に固定した状態を示す斜視図である。
【図9】図1の振動子を他の加締め方法によって回転軸に固定した状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の振動子の他の実施形態における溝部の形状を示す正面図である。
【図11】従来の振動子を回転軸に加締めて固定した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
10、20、30、40 振動子
11、21、31、41 偏心荷重部
12 モータの回転軸
13、23、33、43、60、70、80、90 溝部
13a、23a、33a、43a、60a、70a、80a、90a 軸挿通部
13b、23b、33b、43b、60b、70b、80b、90b 立壁部
15、25、35、45、65、75 開口
O 回転軸の軸線
W 溝部の開口幅
T 立壁部の長さ寸法
Claims (3)
- タングステンを主成分とする粉末材料によって成形された超重合金からなり、小型無線機の振動発生装置のモータ回転軸に、加締めによって一体的に結合される振動子であって、
偏心荷重部の外周部に、上記回転軸が挿通される溝部が形成されているとともに、偏心荷重部から膨出して上記溝部の両側縁部を形成する側壁が形成され、かつ上記溝部は、上記回転軸の中心角180°以上の範囲を内在させる軸挿通部と、この軸挿通部と当該溝部の開口との間に形成され、上記回転軸の外径寸法よりも狭い間隔を介して対向する立壁部とによって形成されてなり、上記側壁の先端部端面のうち当該側壁の外周側部分を残した上記溝部側の部分が上記溝部の上記開口側から底側に向けて加締められることにより上記回転軸に固定されるようになっていることを特徴とする小型無線機の振動発生装置用振動子。 - 上記溝部の立壁部は、上記軸挿通部内の上記回転軸の軸線から上記開口に至る長さ寸法Tと上記回転軸の直径Dとの比(T/D)が、0.5〜1.4の範囲になるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の小型無線機の振動発生装置用振動子。
- 上記溝部は、開口の幅寸法Wと上記回転軸の直径Dとの比(W/D)が、0.50〜0.95の範囲になるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の小型無線機の振動発生装置用振動子。
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