JP4005665B2 - 振動発生モータの振動子固定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば携帯通信機器等の呼び出し機能に用いられる振動発生モータの振動子固定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来は、実公平4−13860号公報、実公平7−35500号公報および特許第2518781号公報のように振動子に回転軸を挿入して振動子の取付部材でかしめて回転軸を固定する方法、実開平6−48369号公報のように振動子に回転軸を圧入して固定する方法、或いは特開平6−98496号公報のように振動子に回転軸を挿入して溶接で固定する方法などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、特に実公平4−13860号公報および実公平7−35500号公報のように、振動子には回転軸を挿入するための軸収容孔が設けられ、この軸収容孔を取り囲んで所定の肉厚の固定部が形成されている。ここで、固定部は振動子の重心の反対側に位置するので、固定部の重量だけ振動子の重心は回転軸に近づくこととなる。このため、振動子の振動効率が低下して、振動子が回転しても必要な振動が得られないことがあり問題であった。
【0004】
また、従来の振動子固定方法は、取付部材でかしめる際に回転軸を曲げてしまうことがあり問題であった。特に、携帯通信機器等に収容するためにモータを小型化すると回転軸の径も小さくなり、回転軸の曲がりがより顕著になった。このように回転軸が曲がると振動子の回転半径が広くなり、モータを収容する携帯通信機器等のケース内壁に振動子が接触して振動子が破損することがあった。
【0005】
ここで、携帯通信機器等のケース内部に回転軸の曲がりを吸収できるだけのスペースがあればケース内壁への振動子の接触を防止できるが、携帯通信機器等の小型化が要請されている今日では、ケース内部に余分なスペースを確保するのは難しい。そこで、ケース内部の少ないスペースの中で振動子を十分に回転させて振動を発生させるためには、回転軸の僅かな曲がりがトラブルの原因になる。このような軸の曲がりを修正しようとすることは、新たに加工工程の増加を招くこととなり好ましくないものである。
【0006】
本発明は、以上の問題を解決し、モータが小型になっても、高い振動効率が得られ、且つ、回転軸を曲げることなく回転軸に振動子を固定できる振動子固定方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の振動発生モータの振動子固定方法は、軸固定面を有するブロック状の振動子を振動発生モータの回転軸に偏芯固定させる方法において、
軸固定面に沿って形成され、開口端部が内側に張り出した軸挿入溝に対して、圧入部材の押圧面によって回転軸の露出部分の略全体を押すことにより、回転軸を軸固定面の上方から圧入して、開口端部を一時的に押し広げながら回転軸を軸挿入溝内に押し込むことにより、回転軸に振動子を固定させることを特徴とする。
【0008】
このような構成を採用した場合、軸固定面の上方から軸挿入溝に向けて回転軸を圧入すると、軸挿入溝の開口端部は押し広げられて、回転軸は軸挿入溝内に押し込められる。回転軸が軸挿入溝内に収容されると軸挿入溝の開口端部の間隔は狭まり、回転軸は軸挿入溝の内壁面に挟み込まれる。その結果、振動子は回転軸に確実に固定される。
【0009】
特に、モータが小型になると回転軸の径が小さくなるので、回転軸の一部をかしめて固定していた従来の固定方法では、力が加わった部分で回転軸が曲がることがあった。請求項1の固定方法は、回転軸の露出部分の略全体に力を加えて回転軸を軸挿入溝に圧入しているので回転軸が曲がることはない。その結果、回転軸に固定された振動子の回転半径が広がることはなく、小型のケースに振動子を収容してもケース内壁に振動子が接触しない。
【0010】
請求項2において、回転軸の径に対して軸挿入溝の開口の幅が、圧入分だけ小さいことを特徴とする。このような構成を採用した場合、適度な力で軸挿入溝に回転軸を圧入することができ、回転軸及び軸挿入溝の開口端部に過剰な力が加わることがない。このため、回転軸および振動子に歪みが生じることはない。
【0011】
請求項3において、回転軸が軸挿入溝に圧入される際に、軸挿入溝の内壁面に形成されたストッパ凸部が回転軸の外周面に形成されたストッパ凹部に係合することを特徴とする。このような構成を採用した場合、軸挿入溝のストッパ凸部が回転軸のストッパ凹部に係合して固定されるので、振動子が回転軸の軸方向にずれることはない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る振動発生モータの振動子固定方法の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態である振動子固定方法によって振動子が固定された振動発生モータ1を示す斜視図である。図1に示すように、振動発生モータ1は、モータ本体2の回転軸3に偏芯固定された振動子4を備えている。振動子4は、円柱を軸線方向に切断したブロック形状を有しており、この切断面が回転軸3を固定するための軸固定面5となっている。軸固定面5の中央には両端面を貫通する軸挿入溝6が形成され、振動子4における軸挿入溝6の延在方向と直交する断面は半月形状である。このため、振動子4の重心が外周方向に寄るので、振動子4の回転によって発生する遠心力が振動発生に対して最も有利になる。
【0014】
図2に示すように、軸挿入溝6の両側壁7は軸固定面5から突出しており、これらの側壁7の先端である軸挿入溝6の開口端部8は内側に張り出している。そして、軸挿入溝6の内壁面は円弧状に湾曲しており、軸挿入溝6の内壁面の径Bは回転軸3の径をAとすると僅かにA>Bとなる。このため、軸挿入溝6への回転軸3の挿入は、径の小さい軸挿入溝6に径の大きい回転軸3を締まりばめで圧入することとなり、軸挿入溝6の内壁面は常に回転軸3を押圧する。その結果、回転軸3は軸挿入溝6に確実に固定される。
【0015】
また、軸挿入溝6の開口における軸線に直交する方向の幅Cは、軸挿入溝6の内壁面の径Bより狭いのでB>Cとなる。このため、回転軸3が軸挿入溝6に挿入された後は、開口端部8の張り出し部分が回転軸3を軸挿入溝6の底方向に押圧するので、軸挿入溝6の開口から回転軸3が抜け落ちることはない。
【0016】
ここで、回転軸3の径Aと軸挿入溝6の開口の幅Cとの差は、0.02〜0.14mmで、好ましくはA−C≒0.08mmである。回転軸3の径Aと軸挿入溝6の開口の幅Cとはこのように僅かな差しかないので、適度な力で軸挿入溝6に回転軸3を圧入するだけで回転軸3を軸挿入溝6に押し込むことができ、回転軸3及び振動子4に歪みが生じることはない。
【0017】
なお、回転軸3の径Aは0.8mmとし、軸挿入溝6の開口の幅Cは0.7mmとしている。また、回転軸3の材質はステンレスであり、振動子4の材質はタングステン合金である。
【0018】
次に、第1の実施形態である振動子固定方法について説明する。図3(a)に示すように、振動子4は振動子固定台9に載置され、振動子固定台9の上方に圧入部材10が配置されている。圧入部材10の下面は振動子4とほぼ同一の幅を持つ矩形状の押圧面10aになっている。また、圧入部材10の上端は駆動アーム(図示せず)に固定され、駆動アームの上下動によって圧入部材10は上昇及び下降する。
【0019】
図3(b)に示すように、振動発生モータ2の回転軸3を軸挿入溝6上部に配置した状態で駆動アームを駆動させて、圧入部材10を下降させると、圧入部材10の押圧面10aで回転軸3の露出部分の略全体が軸方向に均一な力で押され、軸挿入溝6の開口端部8が押し広げられる。そして、図4(c)に示すように、回転軸3は軸挿入溝6内に締まりばめで圧入され、回転軸3は軸挿入溝6の内壁面に挟み込まれる。その結果、振動子4は回転軸3に確実に固定される。また、回転軸3を軸挿入溝6に圧入した後は、軸挿入溝6の開口端部8は元の状態に復元し、軸挿入溝6の開口の幅が狭くなる。このため、回転軸3が軸挿入溝6の開口から抜け落ちることはない。
【0020】
このような固定方法では、回転軸3には軸方向の不均一な力は加わらないので、たとえモータが小型になっても回転軸3が曲がることはない。また、軸挿入溝6の内壁面全体で回転軸3を挟み込んでいるので、一点をかしめて回転軸3を固定していた従来例のように、回転軸3を挟み込む力が一点に集中することがない。さらに、振動子4の重心の反対側である軸固定面5の上部は大きく開放しているので、振動子4の外周方向に重心が寄り、振動子4の回転によって発生する遠心力が振動発生に対して最も有利になる。さらにまた、軸と直交する方向から力を加えて回転軸3を軸挿入溝6に圧入しているので、モータ本体2に無理な力が加わることもない。
【0021】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態である振動子固定方法によって振動子が固定された振動発生モータ11を示す斜視図である。なお、第1の実施形態と同一又は同等な構成部分については同一符号を付し、その説明は省略する。
【0022】
図5に示すように、振動発生モータ11は、モータ本体2の回転軸3に偏芯固定された振動子4を備えている。振動子4は、円柱を軸線方向に切断したブロック形状を有しており、この切断面が回転軸3を固定するための軸固定面5となっている。軸固定面5の中央には両端面を貫通する軸挿入溝6が形成され、軸挿入溝6の内壁面には環状のストッパ凸部12が内周に沿って形成されている。さらに、回転軸3の外周面にはU溝状のストッパ凹部13が外周に沿って形成されている。
【0023】
次に、第2の実施形態である振動子固定方法について説明する。図6に示すように、振動子4は振動子固定台9に載置され、振動子固定台9の上方に圧入部材10が配置されている。圧入部材10の上端は駆動アーム(図示せず)に固定され、駆動アームの上下動によって圧入部材10は上昇及び下降する。そして、駆動アームを駆動させて圧入部材10を下降させると、圧入部材10の押圧面10aで回転軸3の露出部分の略全体が押され、回転軸3は軸挿入溝6内に締まりばめで圧入される。この圧入によって回転軸3は軸挿入溝6の内壁面に挟み込まれ、回転軸3は軸挿入溝6内に固定される。また、回転軸3の圧入によって軸挿入溝6のストッパ凸部12が回転軸3のストッパ凹部13に係合して固定される。このため、振動子4が回転軸3の軸方向にずれることはなく、振動子4の抜け落ちが効果的に防止される。
【0024】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内において、例えば以下のように変更することも可能である。
【0025】
(1)上記実施形態では、振動子4の断面は、半月形状であったが、長方形状、台形状などであってもよい。
【0026】
(2)上記実施形態では、回転軸3の径Aと軸挿入溝6の開口の幅Cとの差は、そもそも軸径が0.8mmと極小径であることから、A−C≒0.08mmとしていたが、回転軸3及び振動子4の材質に合わせ、また、回転軸3の径に応じてこの数値を変えてもよいことは言うまでもない。
【0027】
【発明の効果】
本発明による振動発生モータの振動子固定方法は、以上のように構成されているため次のような効果を得ることができる。
【0028】
即ち、回転軸の露出部分の略全体に力を加えて回転軸を軸挿入溝に圧入しているので回転軸が曲がることはない。このため、回転軸に固定された振動子の回転半径が広がることはなく、小型のケースに振動子を収容しても、ケース内壁に振動子が接触して振動子が破損することはない。このように、本発明を用いれば、耐久性に優れた振動発生モータが製造できる。
【0029】
また、振動子の重心を回転軸から遠ざけることができるので振動効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の振動子固定方法を用いて製造された振動発生モータを示す斜視図である。
【図2】図1の振動子の要部を示す断面図である。
【図3】(a)(b)は、本発明に係る振動子の固定方法の工程を示す斜視図である。
【図4】(c)は、本発明に係る振動子の固定方法の工程を示す斜視図である。
【図5】本発明の振動子固定方法を用いて製造された振動発生モータを示す斜視図である。
【図6】本発明に係る振動子の固定方法の工程を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,11…振動発生モータ、2…モータ本体、3…回転軸、4…振動子、5…軸固定面、6…軸挿入溝、8…開口端部、10…圧入部材、10a…押圧面、12…ストッパ凸部、13…ストッパ凹部。
Claims (3)
- 軸固定面を有するブロック状の振動子を振動発生モータの回転軸に偏芯固定させる方法において、
前記軸固定面に沿って形成され、開口端部が内側に張り出した軸挿入溝に対して、圧入部材の押圧面によって前記回転軸の露出部分の略全体を押すことにより、前記回転軸を前記軸固定面の上方から圧入して、前記開口端部を一時的に押し広げながら前記回転軸を前記軸挿入溝内に押し込むことにより、前記回転軸に前記振動子を固定させることを特徴とした振動発生モータの振動子固定方法。 - 前記回転軸の径に対して前記軸挿入溝の開口の幅が、圧入分だけ小さいことを特徴とした請求項1記載の振動発生モータの振動子固定方法。
- 前記回転軸が前記軸挿入溝に圧入される際に、前記軸挿入溝の内壁面に形成されたストッパ凸部が前記回転軸の外周面に形成されたストッパ凹部に係合することを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の振動発生モータの振動子固定方法。
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