JP3614056B2 - ワイヤハーネスの分岐部へのシートの取付構造および取付方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワイヤハーネスの分岐部へのシートの取付構造および取付方法に関し、詳しくは分岐部の保護のために覆われる樹脂製のシートを簡易な操作により捲れることなく確実に装着できるようにするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ワイヤハーネスにおいてT字状に分岐する分岐部を、車体のバリ等から保護するものとしては、樹脂製のプロテクタを装着して保護するものと、柔軟性のあるシートで保護するものとがある。特に分岐部を屈曲させて車体の所要箇所に取り付ける必要がある場合は、柔軟性のあるシートで保護するのが適している。そして、シートで保護するようにしたものとしては、実開昭57−107225号公報に記載の構造が知られている。これは図6に示すように、分岐部1の上下を軟質の樹脂シート2で挟み、この樹脂シート2を幹線3と分岐線4による角部に沿って、ミシン糸5により縫合することで分岐部1を樹脂シート2で保護するようにしている。
【0003】
一方、特開平8−163742号公報には、図7に示すような分岐部結束用シート12で分岐部11を保護するようにしたものが記載されている。この分岐結束用シート12は、分岐部11の一側面に配置されるシート基部12aと、該シート基部12aより延設状とされると共に、幹線13と分岐線14による角部から他側面側に折り返される2枚の結束片部12bから成っている。そして、シート基部12aおよび結束片部12bを幹線13および分岐線14にテープTによって巻き込み状に固定するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図6に記載のものは、方形の単純形状の樹脂シート2を利用できると共に、装着後の樹脂シート2の捲れを防止することができるが、樹脂シート2を分岐部1に馴染ませて装着するには、ミシン糸5での縫合作業を要し、ワイヤハーネス組立工程において非常に手間を要する。一方、上記図7に記載のものは、シート基部12aおよび結束片部12bを有する特殊形状の分岐結束用シート12を要し、コスト高になると共に、分岐部11への取付作業においても、各結束片部12a、12bを分岐部11に馴染ませると共に、テープTで別途固定しなければならず作業工数が増加する等の問題があった。
【0005】
本発明は上記した問題を解消せんとするもので、ワイヤハーネスにおける分岐部の保護のために装着されるシートを簡易な操作で装着可能とすると共に、装着後の捲れを防止することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、ワイヤハーネスの幹線の途中からT字状に分岐する分岐部を方形の樹脂製のシートで覆って保護するようにした分岐部へのシートの取付構造において、
上記シートは分岐部を挟んで二つ折りに重ねられると共に、分岐線の両側と幹線との間の内角部に、シートの下面部の角部を内側に折り畳んで形成した折り返し部を設け、上記シートの上面部の角部は上記折り返し部を挟み込むようにして下面部の裏側へ折り畳んで押さえ部となし、少なくとも該押さえ部の一部には粘着材が塗布された接着面を有し、該接着面により上記シートの上面部を下面部の裏側で接着していることを特徴とするワイヤハーネスの分岐部へのシートの取付構造を提供している。
【0007】
樹脂製のシートとしては、具体的には、片面の一部または全面に粘着材が塗布されたPVCシートからなっている。上記構成によれば、分岐部を上下のシートで挟んだ状態において、シートの下面部の裏側へ上面部のシートが折り返された状態となるため、分岐部の内角部に上下のシートの合わせ面の端面が露出せず、このため、上下のシートを捲れ難くすることができる。
【0008】
他の発明では、ワイヤハーネスの幹線の途中からT字状に分岐する分岐部を有し、該分岐部を方形の樹脂製のシートで覆って保護するようにした分岐部へのシートの取付方法であって、
上記分岐部の下面に上記シートの略半面をあてがい、分岐線の両側と幹線との間の内角部に位置するシートの角部をそれぞれ内側に折り畳んで折り返し部を形成し、
次いで上記シートの他方の半面を分岐線側に折り返して分岐部を挟み込むと共に、上記折り返し部の上に被せ、さらに該折り返し部からはみ出たシートの両角部を折り返し部の裏面側に折り返し、該裏面側で折り返し端部を接着するようにしたことを特徴とするワイヤハーネスの分岐部へのシートの取付方法を提供している。
【0009】
上記方法によれば、分岐部を挟み込み状に覆う方形のシートにおにおいて、下面部の角部と上面部の角部とをそれぞれ折り返し操作するのみの簡易な操作により、分岐部へシートを取り付けることができる。この場合、分岐部の内角部においては、上下のシートが三角コーナー状に折り畳まれて幹線から分岐する分岐線を分岐方向に沿って保持できるため、シートにより分岐部を保護できると共に、分岐部の形態を整えることができる。上記のようにして分岐部のシートが装着されている部分では、シートの捲れを防止できるので、別途テープ等でシートを固定する必要がなく、作業工程を一層簡素化することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は、ワイヤハーネスの分岐部へのシートの取付構造の第一実施形態を示し、分岐部21としては、ワイヤハーネスW/Hを構成する幹線23の途中から分岐する分岐線24がT字状に分岐する部位をシート22の取付対象としている。一方、シート22は、ワイヤハーネスW/Hの外装保護用の樹脂シートとして一般に用いられるPVCシートとし、シート22は分岐部21を覆うのに十分な面積を有する方形の小片とされ、内面には全面に粘着材が塗布された接着面22aを有している。
【0011】
なお、本実施形態の分岐部21には、幹線23の一方および分岐線24に対し、PVCの補助シートA、Bが、分岐部21の中心部に対し突き当て状態で巻き付けられ、所要箇所をテープTにて固定している。なお、これらの補助シートA、Bは、ワイヤハーネスW/Hの使用部位に応じて二重の保護が必要な箇所に選択的に使用されるものである。
【0012】
分岐部21を保護するために上記シート22を取り付けるには、図2(A)に示すように、接着面22aを分岐部21に対向するようにして該分岐部21の下面側に上記シート22の略半面をあてがう。次いで、図2(B)に示すように、分岐線24の両側と幹線23との間の内角部24aに位置するシート22の下面部22bの角部をそれぞれ内側に三角状に折り畳んで折り返し部22dを形成する。その後、図3(A)に示すように、上記シート22の他方の半面を分岐線24側に二つ折り状に折り返して上面部22cとなし、該上面部22cと下面部22bとの間で分岐部24を挟み込んで折り返し部22dの上に被せる。
【0013】
この状態においては、シート22の下面部22bの両角部に折り返し部22dが形成されているため、折り重ねられた上面部22cの両角部22eは折り返し部22dからはみ出した状態となっている。次いで、図3(B)に示すように、上面部22cの両角部22eを折り返し部22dの裏面側に折り返し、その後、両角部22eを下面部22bの裏面に対し接着面22aで接着するようにしている。
【0014】
上記の実施形態では、シート22の内面全面に接着面22aが設けられているため、分岐部21を挟んで折り返されたシート22は、各部位で相互に接着され、分岐部21におけるT字状の外郭部が、シート22の上面部22cと下面部22bとの間の接着面22aで包囲され、その形態が確実に維持固定される。また、幹線23および分岐線24に対しシート22の内面が接する部分では、内面全体に接着面22aを有するので、別途テープTにてシート22を固定しなくてもよい。
【0015】
上記のようにしてシート22で保護された分岐部21は、両側の内角部24aにシート22の三角状の折り返し部22dが介在しているため、分岐線24の方向性を維持させることができる。また、折り返し部22dにおいては、図1(B)に示すように、シート22の上面部22cの角部22eが裏側へ折り返された状態となって二重に補強されているため、捲れの原因となる合わせ端面が露出せず、このため、折り返し部22dにおけるシート22の捲れを確実に防止することができる。
【0016】
このことは、例えば、図4に示すように、自動車のドア部とフロア部との間のように高低差がある部分に分岐部21を配索するような場合に有効である。即ち、高低差のある部分では、分岐線24が段差状に屈曲して配索されるため、折り重ねられたシート22の合わせ部が開いて捲れ易くなるが、上記のように折り返し部22dに合わせ端面が存在せず、二重の折り返しにより補強されているため、このような使用状況におけるシート22の捲れを確実に防止できる。
【0017】
なお、上記第一実施形態においては、シート22の全面に接着面22aを有する例を示したが、第二実施形態として図5に示すように、シート32における上面部32cの端縁部の内面のみを接着面32aとしたものとしてもよい。第二実施形態においても、第一実施形態と同様の工程により分岐部31に対しシート32を装着する。
【0018】
この場合、端縁の接着面32aは、分岐線24における補強シートBの上面と、シート32の下面部32bの裏面に重ね合わされることで、各部位にシート32の上面部32cの端縁が接着される。接着面32aは部分的ではあるが、シート32の折り重ねた補強構造の特徴によりシート32が捲れ方向に戻ろうとしないため、テープ巻きを省略することができる。なお、シート32における接着面32aの設定箇所は、更に両側部にも設けてもよい。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、分岐部をシートで保護する場合、方形状のシートをそのまま用いることができるためコスト安となり、その装着操作も簡易な方法で行うことができるため、ワイヤハーネスの製造工数を軽減することができる。また、分岐部の内角部は、装着されたシートの三角状の折り返し部の介在により分岐線の方向性を維持でき、その内角部に上下のシートの合わせ端面が存在せず、二重の折り返し構造となるため、分岐部が段差状配索されるような使用状況下においてもシートの捲れを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施形態を示し、(A)は平面図、(B)は、(A)のX−X断面図である。
【図2】(A)(B)は分岐部へのシートの装着工程を示す図である。
【図3】(A)は分岐部へのシートの装着工程を示す図であり、(B)は図1を裏面から見た状態を示す図である。
【図4】分岐部の配索状態の一例を示す図である。
【図5】第二実施形態を示す図である。
【図6】従来例を示す斜視図である。
【図7】(A)(B)は他の従来例の組立工程を示す図である。
【符号の説明】
21、31 分岐部
22、32 シート
22a 接着面
22b、32b 下面部
22c 上面部
24d 折り返し部
22e 角部
23 幹線
24 分岐線
24a 内角部
Claims (2)
- ワイヤハーネスの幹線の途中からT字状に分岐する分岐部を方形の樹脂製のシートで覆って保護するようにした分岐部へのシートの取付構造において、
上記シートは分岐部を挟んで二つ折りに重ねられると共に、分岐線の両側と幹線との間の内角部に、シートの下面部の角部を内側に折り畳んで形成した折り返し部を設け、上記シートの上面部の角部は上記折り返し部を挟み込むようにして下面部の裏側へ折り畳んで押さえ部となし、少なくとも該押さえ部の一部には粘着材が塗布された接着面を有し、該接着面により上記シートの上面部を下面部の裏側で接着していることを特徴とするワイヤハーネスの分岐部へのシートの取付構造。 - ワイヤハーネスの幹線の途中からT字状に分岐する分岐部を方形の樹脂製のシートで覆って保護するようにした分岐部へのシートの取付方法であって、
上記分岐部の下面に上記シートの略半面をあてがい、分岐線の両側と幹線との間の内角部に位置するシートの角部をそれぞれ内側に折り畳んで折り返し部を形成し、
次いで上記シートの他方の半面を分岐線側に折り返して分岐部を挟み込むと共に、上記折り返し部の上に被せ、さらに該折り返し部からはみ出たシートの両角部を折り返し部の裏面側に折り返し、該裏面側で折り返し端部を接着するようにしたことを特徴とするワイヤハーネスの分岐部へのシートの取付方法。
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