JP3612104B2 - 作業用車両 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車体の上部前側に運転者用キャビンを備えた作業用車両に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記のような作業用車両としては、例えば、図6に示すものがある。この車両61は、大型のダンプ車であり、車体上部の前部左端に運転者用キャビン63が配設され、車体後部には土砂を積むバケット65が配設されている。また、車体上部のキャビン63の右側には、エンジン等を収納したエンジンルーム64が配設されている。このような車両においては、運転者は、キャビン63の側面ドア(昇降口)66を開けて地面とキャビン63との間で乗り降りする。この際、地面からキャビン63までの高さが相当あるので、運転者は、キャビン63の側面下方に設けられた昇降用梯子67を登り降りする。
【0003】
ところで、このような車両において、例えば走行中にエンジン等が故障したときは、運転者は一旦昇降用梯子67を使って地面に降り、車体の前方を回って車体の反対側(右側)に移動し、そこに設けられた点検用梯子68を登ってエンジンルーム64に行くしかなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように梯子を降りたり登ったりしなくてはエンジンルーム等にたどり着けないのでは、運転者の労力負担が大きいという問題がある。また、エンジン等の点検修理が終了して運転を再開するためにキャビンに戻ろうとする際にも、同様のことが言える。
【0005】
本発明では、このような問題に鑑みてなされたものであり、車体から降りることなくキャビンとエンジンルーム等との間を楽に移動できるようにした作業用車両を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】
上記の目的を達成するために、本発明では、走行可能な車体と、この車体の上部前側における左右いずれか一方の側に設けられるとともに外側側面に乗降ドアを有した運転者用のキャビンと、車体の上部前側における左右の他方の側に設けられたエンジンルームとを備えた作業用車両において、車体の上部前側に、運転者用キャビンの前側部分およびエンジンルームの前側部分を繋いで左右に延びる通路が設けられており、キャビンの前面における前面窓を含む部分が、運転者が出入り可能に開閉自在に構成され、前面窓を含む部分を開放してキャビンから通路に出て、この通路を通ってエンジンルームにアクセスすることが可能なように構成されている
【0007】
このような車両では、キャビンに搭乗した運転者は、キャビン前面の開閉自在な部分(以下、開閉部という)を開けてその前側に設けられている通路上に出れば、この通路の上を移動してエンジンルームにアクセスすることができる。このため、従来のようにいちいち地面に降りなくても、車体上部前側の通路を通って直接エンジンルーム等に行くことができる。また、エンジンルーム等から直接キャビンに戻って来ることもできる。このため、運転者の労力負担を軽減することができる。
【0008】
また、上記構成を採用する場合には、キャビンの両側部に、キャビンの前面に沿って上下方向に延びるとともにキャビンの内側においてこのキャビンの天井面に沿って前後方向に延びるガイドレールを設け、開閉部を、この開閉部の上下端部が上記ガイドレールに案内されて開閉移動するようにするのが望ましい。
【0009】
このような開閉部の開閉ガイド構造によれば、開閉移動する開閉部の下端部はガイドレールのキャビン前面に沿って延びる部分によって案内される。このため、開閉部の下部がキャビンの前面から前方にほとんど突出することがなく、車体上部におけるキャビンの前に手摺り等があっても、これに対する開閉部の干渉を避けることができる。したがって、このような開閉部と手摺り等との干渉を考慮する必要がなくなり、開閉部を運転者が出入りし易い大きなものとすることが可能である。
【0010】
また、開閉部の上端部はガイドレールのキャビン天井面に沿って延びる部分によって案内される。このため、開閉部が開閉移動する際には、開閉部の一部の重量がガイドレールによって支えられることになる。したがって、例えば、開閉部を単に上下方向にスライドさせる場合に比べて、開閉操作を楽に行うことができる。さらに、開閉部は、キャビンの内部空間内に迫り出すようにして開閉移動することになるが、大きく迫り出すのは、内部空間のうち上部前側の部分に過ぎない。このため、例えば、キャビン内の前後方向中央部や後部に運転席を設けておけば、この運転席に座った運転者に干渉させることなく開閉部を開閉することができる。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。図1には、本発明に係るダンプ車(作業用車両)1を示している。このダンプ車1は、クローラ式走行台車2を有しており、この走行台車(車体)2の上部における前側左端には、運転者用のキャビン3が配設されている。また、走行台車2の上部におけるキャビン3の右側には、エンジンやこのエンジンに駆動されて走行台車2に作動油を供給する油圧ポンプ等が収納されたエンジンルーム4が配設されている。さらに、走行台車2の後部には、土砂等を積むためのバケット5が配設されている。このバケット5は、バケット5の下部と走行台車2の上部との間に取り付けられた油圧シリンダ(図示せず)の作動により、前部がはね上がるように傾斜し、積んだ土砂等を後端部のあおり部5aを通じて地上に排出することができる。
【0012】
キャビン3の左側面には、運転者が地上とキャビン3との間で乗り降りする際に開ける昇降ドア6が取り付けられている。また、このダンプ車1では、地面からキャビン3までの高さが相当(運転者の背丈程度)あるので、走行台車3における昇降ドア6の下方には、運転者が登り降り可能な昇降用梯子7が取り付けられている。さらに、走行台車2の上部前端には、キャビン3の前からエンジンルーム4の前を経て走行台車2の上部の右側前部に延びる通路9が形成されている。この通路9は、人がスムーズに通れる程度の前後幅を有する。なお、この通路9の前端部におけるキャビン3の前からエンジンルーム4の前までと、通路9の右端部とには、通路9からの人の落下を防止するための手摺10が配設されている。また、走行台車2の前端部右側には、地面と通路9の右部分との間で乗り降りする際に使用可能な点検用梯子8が取り付けられている。
【0013】
次に、キャビン3の詳しい構成について、図2を用いて説明する。このキャビン3は、箱状に形成されており、前後左右には、運転時に外側を見るための窓(運転用窓)が設けられている。そして、前述のように左側面(図2(A)では右側面)には昇降ドア6が開閉自在に取り付けられており、この昇降ドア6にも上記運転用窓の一部が設けられている。また、図2(B)に示すように、キャビン3の内部の後部下側には、運転席11が配設されており、この運転席11に座った運転者Mは、キャビン3の内部の前部下側に配設された操縦レバー12を操作して、ダンプ車1の操縦を行う。
【0014】
図2(A)に示すように、キャビン3の前面(以下、キャビン前面という)3aには、この前面3aの幅よりも若干小さな幅寸法を有するとともに、床面近傍からキャビン3の天井面(以下、キャビン天井面という)3b近傍までの高さ寸法を有する矩形状の開口部3cが形成されている。そして、この図においては、この開口部3cはガラスサッシ(開閉部)15により閉じられている。このガラスサッシ15は、前述した運転用窓のうちの前面窓である。
【0015】
このガラスサッシ15は、矩形状の枠部15aと、この枠部15aにはめ込まれた板ガラス15bとから構成されている。枠部15aは、キャビン3の内側に面する側(内側部分)15a′の外周が、キャビン3の外側に面する側(外側部分)の外周よりも若干大きくなっており、この内側部分15a′の外側部分より大きい部分の前面には、雨や風が吹き込むのを防止するためのパッキン(図示せず)が取り付けられている。また、枠部15aの外面上部には上部把手15cが取り付けられており、枠部15aの外面下部には下部把手15dが取り付けられている。さらに、図2(B)示すように、枠部15aの内面下部には内側把手15eが取り付けられている。
【0016】
そして、このガラスサッシ15は、以下に説明する開閉ガイド機構によって開閉移動され、開口部3cを開閉する。なお、図2(A)に示すように、ガラスサッシ15には、ワイパー16が取り付けられているが、図2(B)では、これを省略している。
【0017】
開閉ガイド機構は、図2(A)から分かるように、キャビン3の左右両側に配設されたガイドレール21と、ガラスサッシ15の左右両端の上下端部にそれぞれ取り付けられ、各ガイドレール21内を転動可能なローラ22とから構成されている。ガイドレール21は、キャビン前面3aの内面における開口部3cの左右両側にてキャビン前面3aに沿って上下方向に延びる前面ガイド部21aと、図2(B)に示すように、キャビン3の内部にてキャビン天井面3bに沿って前後方向に延びる天井ガイド部21bと、キャビン3の内部の上部前端において両ガイド部21a、21bを緩やかな角度で連結させる連結部21cとから構成されている。
【0018】
ガラスサッシ15が閉じられた状態では、図2(B)においてAで示すように、下側のローラ22は前面ガイド部21aの下端部に位置する。ここで、前面ガイド部21aの下端部は、この前面ガイド部21aの他の部分よりも前方に迫り出している。このため、下側のローラ22とともにガラスサッシ15の下部が前方に押し出され、ガラスサッシ15の内側部分15a′の外周前面(パッキンが取り付けられている部分)が、キャビン前面3aにおける開口部3cの周囲内面に押し付けられる。
【0019】
一方、上側のローラ22は、前面ガイド部21aと連結部分21cとの境界あたりに位置する。ここで、ガラスサッシ15の枠部15aの上端における左右方向中央には、図3にも分かりやすく示すように、上方に延びる爪(以下、サッシ爪という)15fが取り付けられており、このサッシ爪15fに、後で詳しく説明する開閉操作装置30のラッチ爪35bが係合して、ガラスサッシ15の上部が前方に押し出される。これにより、ガラスサッシ15の上部においても、下部と同様に、ガラスサッシ15の内側部分15a′の外周前面がキャビン前面3aにおける開口部3cの周囲内面に押し付けられる。こうして、ガラスサッシ15を閉じた状態では、ガラスサッシ15の内側部分15a′とキャビン前面3aの内面とが密着され、開口部3cからの雨等の吹き込みやガラスサッシ15自体のガタ付きが防止される。
【0020】
そして、このように閉じられたガラスサッシ15をキャビン3の内側から開けるときには、開閉操作装置30のラッチ爪35bとサッシ爪15fの係合を解除する操作をした上で(この操作については後述する)、運転者Mは内側把手15eを持ってガラスサッシ15を上に引き上げる。これにより、上側のローラ22は、連結部21cを通ってスムーズに天井ガイド部21bに入って後方に移動し始め、下側のローラ22は、前面ガイド部21a内を上方に移動し始める。こうしてガラスサッシ15は、図2(B)にてBで示すように、キャビン3の内側に傾きながら(その傾き角度を徐々に深くしながら)キャビン天井面3bに接近していく。
【0021】
ここで、下側のローラ22がガラスサッシ15の下端部に取り付けられているため、このローラ22が前面ガイド部21a内を上動する際に、ガラスサッシ15の下端部がキャビン3の前方に突出することがない。このため、ガラスサッシ15がキャビン3の前の通路9に設けられた手摺10に干渉することはなく、また、通路9に人がいるような場合でも、不都合なくガラスサッシ15を開けることができる(閉める際も同様である)。
【0022】
一方、上側のローラ22が天井ガイド部21b内を移動するため、ガラスサッシ15の重量の一部はこの天井ガイド部21bによって支えられる。このため、ガラスサッシ15の引き上げ開始当初は、ガラスサッシ15の重量全体を持ち上げられる程度の引き上げ力が必要となるが、その後は、必要な引き上げ力は小さくなる。このため、例えばガラスサッシ15を単に上方にスライドさせる場合に比べて運転者Mの労力負担は小さくて済む。
【0023】
また、図2(B)から分かるように、ガラスサッシ15がキャビン3の内側に傾きながら移動するといっても、キャビン3の内部空間のうち主として前側上部の部分にガラスサッシ15が迫り出すに過ぎない。このため、キャビン3内の前側下部に配設された操縦レバー12や、内側把手15eを引き上げるために前側下部にて屈んだ運転者Mや、その後ガラスサッシ15を後方に移動させながら運転席11に戻った運転者Mにガラスサッシ15が干渉することはない。したがって、運転者Mは、無理なくガラスサッシ15を開けることができる(閉める際も同様である)。
【0024】
こうして、ガラスサッシ15がキャビン天井面3bに接近し続けると、やがて下側のローラ22は連結部21cを通って天井ガイド部21b内に入る。この段階で、ガラスサッシ15を後方に押せば、ガラスサッシ15はキャビン天井面3bとほぼ平行な状態で格納される(図2(B)におけるCで示す状態になる)。また、これと同時に、開口部3cが全開される。キャビン3内の運転者Mは、この全開された開口部3cを通ってキャビン3の前の通路9に出ることができる。そして、この通路9を通ってエンジンルーム4の前等に移動することができる。したがって、例えば、ダンプ車1の走行中又はダンプ作業中にエンジンや油圧ポンプ等に不調・故障が生じた場合には、いちいち昇降ドア6から地面に降りたり点検用梯子8を登ったりしなくても、通路9を通って直接エンジンルーム4の前に行くことができる。即ち、回り道しなくてよい分、運転者Mの労力負担を軽く済ませることができる。
【0025】
なお、通路9側(キャビン3の外側)からガラスサッシ15を開ける場合は、開閉操作装置30のラッチ爪35bとサッシ爪15fの係合を解除する操作をした上で(この操作については後述する)、下部把手15dを持ってガラスサッシ15を引き上げればよい。この場合のガラスサッシ15の動きは、キャビン3の内側から開ける場合と全く同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0026】
次に、全開したガラスサッシ15をキャビン3の内側から閉める場合には、内側把手15eを持って一旦ガラスサッシ15を前方に押した後(下側のローラ22を連結部21cに移動させた後)、内側把手15eから手を離すか又は内側把手15eを持ったままガラスサッシ15をゆっくり下方に降ろせばよい。また、ガラスサッシ15を通路9側から閉める場合には、下部把手15eを持って同様にすればよい。
【0027】
ガラスサッシ15が完全に下まで降りた段階(下側のローラ22が前面ガイド部21aの下端に達した段階)で、キャビン3の内側からの場合はガラスサッシ15の内面上部を前方に押し、通路9側からの場合は上部把手15cを手前に引く。これにより、前述した開閉操作装置30のラッチ爪35bとサッシ爪15fとが係合し、ガラスサッシ15は完全に閉まる。
【0028】
ここで、本発明に係る開閉操作装置30について詳しく説明する。開閉操作装置30は、図2に示すようにキャビン3の前部上端(周囲部)に取り付けられている。なお、図3に拡大して示すように、この開閉操作装置30を取り付けるために、キャビン3の前部上端における内側には、上端がキャビン天井面3bに固定されてキャビン前面3aと平行に下方に延びる長尺部31aと、前端がキャビン前面3aに固定されてキャビン天井面3bとほぼ平行に後方に延びる短尺部31bとからなるL字形の支持部材31が配設されている。そして、この開閉操作装置30は、キャビン前面3aの外側に配設された外ハンドル32と、キャビン前面3aと上記支持部材31とによって囲まれた空間(以下、ラッチ取付空間という)31c内に配設された内側および外側プレート33、34およびラッチ35と、支持部材31よりもキャビン3の内方に配設された内ハンドル36とから構成されている。
【0029】
外ハンドル32は、キャビン前面3aの外側から内側に向かって前後方向に延びるシャフト32aと、このシャフト32aの前部(キャビン前面3aの外側に突出した部分)に取り付けられ、キャビン前面3aに平行に延びる手握部32bとから構成されている。シャフト32aは、キャビン前面3aの外面に取り付けられた台座36によって回動自在に保持されている。また、シャフト32aの後部(ラッチ取付空間31c内に突出する部分)は角柱形状に形成されており、この部分に内側プレート33が取り付けられている。
【0030】
外側プレート33は、図4に詳しく示すように、円板形状に形成された円板部33aと、この円板部33aの一部(円板部33aの上端を0度の位置としたときに、反時計回り90度の位置)から径方向外方に延びるように形成されたアーム部33bとから構成されている。円板部33aの中央には、ここを貫通する角形の孔(以下、角孔という)33cが形成されている。また、円板部33aの外周近傍における上記0度の位置から時計回りほぼ60度の位置には、ここを貫通して周方向に繭形に延びる溝33dが形成されている。角孔33cには、シャフト32aの後部が圧入される。このため、シャフト32aが回動すると、これと一体となって外側プレート33も回動する。
【0031】
ラッチ35は、一般にドアノブ用に用いられるものと同様に構成されており、図3に示すように、支持部材31の長尺部31aにおけるラッチ取付空間31cに面する側に固定されハウジング35aと、このハウジング35aの下部に上下移動可能に取り付けられたラッチ爪35bと、ハウジング35aを前後に貫通するよう配設されたシャフト(シャフト)35cとを有する。ラッチ爪35bは、その前面が上下にまっすぐ延び、後面が後方下側に向かって凸となるよう円弧状に形成されている。このラッチ爪35bは、ハウジング35a内に収容された付勢機構(図示せず)によって常時下動方向に付勢されており、シャフト35cがこの付勢力によって所定の回動位置(開位置)に位置するときは、ラッチ爪35bはハウジング35aに対して下動した位置に位置する(この状態を以下、ラッチ35の閉状態という)。下動位置に位置したラッチ爪35bは、支持部材31の短尺部31bに形成された貫通孔(付番せず)を通して短尺部31bの下方に突出している。一方、シャフト35cが所定方向(具体的な方向については後述する)に回動すると、ハウジンク35a内に収容された駆動機構(図示せず)によってラッチ爪35bは上動される(この状態を以下、ラッチ35の閉状態という)。
【0032】
シャフト35cにおけるハウジング35aから前方に突出した前端部には、内側プレート34が取り付けられ、また、ハウジング35aから後方に突出して支持部材31の長尺部31aに設けられた貫通孔(付番せず)を貫通した後端部には、内ハンドル36が取り付けられている。
【0033】
内側プレート34は、図4に示すように、円板形状に形成された円板部34aと、この円板部34aの上部に取り付けられ、前方(外側プレート33に近付く方向)に延びる円柱形状の連動ピン(突起)34bとから構成されている。円板部34aの中央には、ここを貫通する角形の孔(角孔)34cが形成されている。この角孔34cには、シャフト35cの前端部が圧入される。このため、シャフト35cが回動すると、これと一体となって内側プレート34も回動する。さらに連動ピン34bは、外側プレート33の溝33dに挿入される。連動ピン34bは、溝33d内をその周方向に移動することができ、この連動ピン34bの溝33dに対する移動が許容される範囲で、内側プレート34は外側プレート33に対して独立して回動することができる。
【0034】
ここで、図3は開閉操作装置30の閉状態を示しており、同じ状態を示すのが図5(A)である。この図から分かるように、閉状態では、内側プレート34の連動ピン34bは上側に位置し、外側プレート33のアーム部33bは左方に延びる。また、外ハンドル32は右方に延びている。
【0035】
内ハンドル36は、図3に示すように、シャフト35cの後端部に圧入されており、支持部材31の長尺部31aに平行に延びる手握部36aを有している。なお、閉状態においては、図5(A)に示すように、内ハンドル36は上下に延びている。
【0036】
さらに、この開閉操作装置30には、ロック部40が設けられている。このロック部40は、図5(A)に示すように、正面視における開閉操作装置30の左側に取り付けられており、キャビン前面3aの内側(但し、図5ではキャビン前面3aを省略して示している)に配置されるロックプレート41と、キャビン前面3aの外側に取り付けられた施錠機構42と、図3にも示すように、キャビン前面3aの内面に固定され、ラッチ取付空間31c内後方に突出するロックピン43とから構成されている。
【0037】
ロックプレート41は、矩形状に形成された板材からなり、キャビン前面3aに平行に延びるよう配置される。施錠機構42は、前面に鍵穴42aを有し、この鍵穴42aに挿入した鍵(図示せず)を回動操作することにより、キャビン前面3aを貫通してキャビン3の内側に延びる回動部(図示せず)を180度回動させることができるように構成されている。そして、この回動部は、ロックプレート41の一端に連結されている。こうして施錠機構42の操作により、ロックプレート41を右方に延びるロック位置と左方に延びるロック解除位置との間で回動させることができる。また、ロックピン43は、円筒状に形成されており、図5(A)から分かるように、外側プレート33の左下(円板部33aの外周近傍におけるアーム部33bの下側)に配置されている。
【0038】
以上のように構成された開閉操作装置30の作動について次に説明する。図5(A)には、ロック部40がロック状態にある場合を示している。この場合には、ロックプレート41がロック位置にあり、その右端下面が、閉状態にある開閉操作装置30における外側プレート33のアーム部33bの左端上面に当接している。一方、アーム部33bのすぐ下側にはロックピン43が存在する。このため、図示のように右方に延びる外ハンドル32に回動力を加えても、外側プレート33の回動は、アーム部33bとこれらロックプレート41およびロックピン43との当接により阻止される。したがって、キャビン3の外側からはラッチ35を動かすことはできず、閉まったガラスサッシ15を開けることもできない。これにより、昇降ドア6もロックしておけば、イタズラ目的を有した者等のキャビン3の内部への侵入を防止することができる。
【0039】
また、図5(B)には、ロック部40がロック解除状態にある場合を示している。この場合には、ロックプレート41がロック解除位置にあり、外側プレート33のアーム部33bとは当接しなくなる。このため、図示のように外ハンドル32を時計回り(開方向)に回動させることによって外側プレート33を同方向に回動させることができる。この際、溝33dの周方向上端によって連結ピン34bが押されるため、内側プレート34も同方向に回動する。これにより、内側プレート34に取り付けられたラッチ35のシャフト35cも回動され、ラッチ爪35bが上動してサッシ爪15fとの係合が解除される。したがって、キャビン3の外側からガラスサッシ15を開けることができる。なお、この場合、シャフト35cに取り付けられた内ハンドル36も一緒に回動する。また、外ハンドル32の操作を止めれば、付勢機構の付勢力によってシャフト35cが元に戻されてラッチ爪35bが下動され、同時に外ハンドル32および内ハンドル36が元の位置に戻る。
【0040】
さらに、図5(C)には、ロック部40がロック状態にある場合を示している。この場合には、図5(A)において説明したように、ロック部40をロック解除状態にしない限りキャビン3の外側からはガラスサッシ15を開けることはできない。しかし、キャビン3の内側から内ハンドル36を開方向に操作すれば、ガラスサッシ15を開けることができる。これについて詳しく説明すると、図5(C)において上下に延びて位置する内ハンドル36に開方向の回動力を加えると、この回動力はシャフト35cを介して内側プレート34に伝わるのであるが、このとき連結ピン34bは外側プレート33の溝33d内をその下端に向かって移動できる。このため、外側プレート33の回動がロック部40によって阻止されていても、これに関係なく内側プレート34の回動が許容される。即ち、内ハンドル36の回動操作によりシャフト35cを回動させることができ、ラッチ爪35bを上動させてサッシ爪15fとの係合を解除することができる。したがって、キャビン3の内部からは、いちいちロック部40をロック解除状態にしなくてもガラスサッシ15を開けることができる。もちろん、ロック部40がロック解除状態にある場合でも、同様にしてキャビン3の内側からガラスサッシ15を開けることができる。
【0041】
一方、開けたガラスサッシ15を閉める場合には、ガラスサッシ15とともにサッシ爪15fが前方に移動するのであるが、この際サッシ爪15fの上部前端がラッチ爪35bの後面に当接してここを滑りながら、前述したラッチ35の付勢機構の付勢力に抗してラッチ爪35bを押し上げる。ここで、一般のドアノブ用のラッチと同様に、ラッチ爪35bが押し上げられてもシャフト35cは回動しない。このため、ラッチ爪35bは、本来的にロック部40の状態にかかわらずスムーズにサッシ爪15fによって押し上げられる。そして、サッシ爪15fがラッチ爪35bの下端よりも前方に移動した段階でラッチ爪35bは上記付勢力によって下動し、サッシ爪15fと係合する。
【0042】
なお、ラッチ35が、ラッチ爪35bが押し上げられることによってシャフト35cも図5における時計回りに回動する構造となっている場合でも、図5(C)を用いて説明したのと同様に、ロック部40の状態に関係なくシャフト35cの時計回りの回動が許容されるため、ラッチ爪35bはサッシ爪15fによってスムーズに押し上げられ、ガラスサッシ15を確実に閉めることができる。
【0043】
また、上記実施例においては、作業用車両としてダンプ車を一例として挙げたに過ぎず、本発明に係る作業用車両がこれに限られるものではない。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の作業用車両では、車体の上部前側に、運転者用キャビンの前側部分およびエンジンルームの前側部分を繋いで左右に延びる通路が設けられており、キャビンの前面における前面窓を含む部分が、運転者が出入り可能に開閉自在に構成され、前面窓を含む部分を開放してキャビンから通路に出て、この通路を通ってエンジンルームにアクセスすることが可能なように構成されている。このため、キャビンに搭乗した運転者は、上記開閉部を開けて車体上前部の通路上に出れば、この通路の上を移動してエンジンルームにアクセスすることができ、従来のようにいちいち地面に降りなくても、車体上部を通って直接上記他の位置(エンジンルーム等)に行くことができる。また、エンジンルーム等から直接キャビンに戻って来ることもできる。このため、本作業用車両を用いれば、運転者の労力負担を軽減することができる。
【0045】
また、キャビンの前面に沿って上下方向に延びるとともにキャビンの内側においてこのキャビンの天井面に沿って前後方向に延びるガイドレールを設け、上記開閉部が、その上下端部がこのガイドレールに案内されながら開閉移動するように構成すれば、開閉部の下部がキャビンの前面から前方にほとんど突出することがない。このため、開閉部の開閉時において、開閉部と車体上部におけるキャビンの前に設けられた手摺り等との干渉を考慮せずに済み、その分開閉部を運転者が出入りし易い大きなものとすることができる。また、開閉部の上端部はガイドレールにおけるキャビン天井面に沿って延びる部分によって案内されるため、開閉時には開閉部の一部の重量がガイドレールによって支えられる。したがって、開閉操作を楽に行うことができる。さらに、開閉部は、キャビンの内部空間内に迫り出すようにして開閉移動することになるが、迫り出すのは、内部空間のうち主として上部前側の部分に過ぎない。このため、キャビン内の前側下部や前後方向中央等に車両の操縦装置や運転席を設けておけば、操縦装置や運転席に座った運転者に干渉させることなく開閉部を開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る作業用車両の斜視図である。
【図2】上記作業用車両の運転者用キャビンの正面図および側面断面図である。
【図3】上記キャビンに取り付けられた開閉操作装置の側面断面図である。
【図4】上記開閉操作装置に用いられる第1および第2プレートの斜視図である。
【図5】上記開閉操作装置の作動説明図である。
【図6】従来の作業用車両の斜視図である。
【符号の説明】
3 キャビン
4 エンジンルーム
9 通路
15 ガラスサッシ(開閉部)
21 ガイドレール
22 ローラ
30 開閉操作装置
40 ロック装置

Claims (2)

  1. 走行可能な車体と、前記車体の上部前側における左右いずれか一方の側に設けられるとともに外側側面に乗降ドアを有した運転者用のキャビンと、前記車体の上部前側における左右の他方の側に設けられたエンジンルームとを備えた作業用車両において、
    前記車体の上部前側に、前記運転者用キャビンの前側部分および前記エンジンルームの前側部分を繋いで左右に延びる通路が設けられており、
    前記キャビンの前面における前面窓を含む部分が、運転者が出入り可能に開閉自在に構成され、
    前記前面窓を含む部分を開放して前記キャビンから前記通路に出て、前記通路を通って前記エンジンルームにアクセスすることが可能なように構成されていることを特徴とする作業用車両。
  2. 前記キャビンの両側部に、このキャビンの前面に沿って上下方向に延びるとともに前記キャビンの内側においてこのキャビンの天井面に沿って前後方向に延びるガイドレールを設け、
    前記前面窓を含む部分は、この部分における上下端部が前記ガイドレールに案内されて開閉移動することを特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
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