JP3611896B2 - デファレンシャル装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、車両のデファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平5−280596公報に図8のようなデファレンシャル装置201が記載されており、図9はこのデファレンシャル装置201のギヤ組を示している。このデファレンシャル装置201は、デフケース203、同軸配置された出力側のヘリカルサイドギヤ205、207、これらの径方向外側に配置された長短のヘリカルピニオンギヤ209、211などを備えている。ピニオンギヤ209はデフケース203の収納孔213に摺動回転自在に収納され、ピニオンギヤ211は他の収納孔に摺動回転自在に収納されている。各ピニオンギヤ209、211は、それぞれの第1ギヤ部215、217がサイドギヤ205、207と各別に噛み合い、第2ギヤ部219、221が互いに噛うことによりサイドギヤ205、207を連結している。長いピニオンギヤ209は第1と第2のギヤ部215、219を連結する小径の軸部223を持っている。エンジンの駆動力はデフケース203を回転させ、ピニオンギヤ209、211からサイドギヤ205、207を介して車輪側に伝達される。
【0003】
トルクを伝達している間、ピニオンギヤ209、211はサイドギヤ205、207との噛み合い反力により歯先を各収納孔の壁面に押し付けられて摩擦抵抗が生じると共に、ヘリカルギヤの噛み合いスラスト力によって、サイドギヤ205、207の間で、あるいはピニオンギヤ209、211やサイドギヤ205、207とデフケース203との間で摩擦抵抗が生じ、これらの摩擦抵抗によりトルク感応型の差動制限機能を得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9、10、11の矢印225は車両が前進走行するときのデフケース203の回転方向である。一対のピニオンギヤ209、211のうち長いピニオンギヤ209はデフケース203の回転方向に対して先行して公転するように配置されている。図9のように、デフケース203がこの方向に回転するとピニオンギヤ209の第1ギヤ部215とピニオンギヤ211の第1ギヤ部217にはそれぞれの収納孔から破線の矢印のような回転トルク227、229が掛かると共に、実線の矢印のようにその反力の負荷トルク231、233が各収納孔を介してデフケース203に与えられる。
【0005】
このとき、図10、11に示すように、各ピニオンギヤ211、209の第2ギヤ部221、219では、互いの噛み合いによる反対方向の噛み合い反力F1、F2が生じ、図11に示すように、各第1ギヤ部217、215では、サイドギヤ207、205との噛み合いによる同方向の噛み合い反力F3、F4が生じる。
【0006】
このように、デフケースの回転方向に対し後行して公転する短いピニオンギヤ211では反力F1、F3が略同方向側であるのに対して、先行して公転する長いピニオンギヤ209では反力F2、F4が反対方向になって転倒トルクが生じるときがある。長いピニオンギヤ209および短いピニオンギヤ211は、歯先でデフケース203の収納孔に回転自在に収納されており、収納孔とピニオンギヤ209、211の歯先との間には僅かの隙間を有しているため、こうして生じた転倒トルクを受けて長いピニオンギヤ209には回転中心軸に対する倒れが生じ、図9に示すように、無負荷時の位置から負荷を受けたときの位置まで端部が移動する。
【0007】
ここで、デフケース203に駆動トルクが入力し矢印225の方向に回転した場合、ピニオンギヤ211はデフケースの収納孔より直接駆動トルクを受けて略同方向の反力が生じるため高反力側のピニオンギヤと呼び、ピニオンギヤ209はピニオンギヤ211よりデフケースの回転方向に対して先行して公転する側に配置されているため、ピニオンギヤ209の第2のギヤ部219へはピニオンギヤ211の第2ギヤ部221から駆動トルクを受け、反対方向の反力が生じるため低反力側のピニオンギヤと呼ぶことにする。
【0008】
図12のように、長いピニオンギヤ209が倒れると、第1ギヤ部215はサイドギヤ205と、また、第2ギヤ部219は短いピニオンギヤ211の第2ギヤ部とそれぞれが矢印235、237で示す部分で局部当たりを起こす。この局部当たりによって、図13に示すように、各歯面の各歯当たり部239、241にピッチング(歯面が荷重を受けて歯面の表面が薄片となって剥離する現象)が生じ、ピニオンギヤ209、211およびサイドギヤ205等の耐久性が低下し、最終的にはデファレンシャル装置201自体の耐久性が低下することになる。また、デフケース203が矢印225と反対方向に回転する後進走行時は、ピニオンギヤ209が第1ギヤ部219および第2ギヤ部215でデフケースの収納孔より直接駆動トルクを受けるため、ピニオンギヤ209に略同方向の反力が生じて高反力側となる。このため、先行して公転する短いピニオンギヤ211が倒れ、短いピニオンギヤ211の局部当たりが生じてピッチングが発生し耐久性が低下することになる。
【0009】
ピニオンギヤの倒れ角は、収納孔との隙間が適正値に保たれている間は小さいが、経時変化によって隙間が広がるに従って倒れ角が大きくなり、やがてはピッチングによって耐久性を低下させることになる。
【0010】
そこで、この発明は、デフケースの収納孔でピニオンギヤ歯先を支承するように構成されたデファレンシャル装置において、ピニオンギヤの片当たりを防止し、耐久性を向上させるデファレンシャル装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1のデファレンシャル装置は、エンジンの駆動力により回転駆動されるデフケースと、デフケースの内部に回転自在に支承された一対のサイドギヤと、これらサイドギヤの径方向外側に配置され、サイドギヤと各別に噛み合う第1ギヤ部および互いに噛み合う第2ギヤ部とを有する少なくとも一対のピニオンギヤと、デフケースに形成され各ピニオンギヤを摺動回転自在に収納する収納孔とを備え、少なくともいずれか一方のピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部のいずれか一方または両方のギヤを軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とした事を特徴とする。
【0012】
請求項2のデファレンシャル装置は、前記ピニオンギヤはヘリカルギヤとして形成され、ギヤ部に形成されたテーパ形状は、回転方向左右の歯面角度が異なる角度で形成されている事を特徴とする請求項1記載のデファレンシャル装置である。
【0013】
請求項3のデファレンシャル装置は、前記ギヤ部がテーパ形状として形成されたピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部は小径の軸部を介して分割され、第1ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度および第1ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度が等しく形成されている事を特徴とする請求項1または2記載のデファレンシャル装置である。
【0014】
請求項4のデファレンシャル装置は、前記テーパ形状は直線形状として形成されている事を特徴とする請求項1または2または3記載のデファレンシャル装置である。
【0015】
請求項5のデファレンシャル装置は、前記テーパ形状は連続する曲線形状として形成されている事を特徴とする請求項1または2または3記載のデファレンシャル装置である。
【0016】
請求項6のデファレンシャル装置は車両用に用いられ、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤは車両が前進走行する際の回転方向に対し、一対のピニオンギヤのうち先行回転側に配置された事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載されたデファレンシャル装置である。
【0017】
請求項7のデファレンシャル装置は、一対のピニオンギヤが、小径の軸部を介して第1と第2のギヤが連結された長いピニオンギヤと、第1と第2のギヤ部が連続して形成された短いピニオンギヤとから成る請求項1から6のいずれかに記載されたデファレンシャル装置である。
【0018】
【作用】
請求項1のデファレンシャル装置は、少なくともいずれか一方のピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部のいずれか一方または両方のギヤを軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状として形成した。
【0019】
トルクの伝達中、ピニオンギヤの歯先はサイドギヤとの噛み合い反力により収納孔の壁面に押し付けられることにより摩擦抵抗が生じ、トルク感応型の差動制限機能が得られる。
【0020】
この時、ピニオンギヤに第1ギヤ部と第2ギヤ部で生じる噛み合い反力が反対方向の反力として発生しピニオンギヤに倒れが生じても、ギヤが軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状に形成されていることにより、ギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生しない。このため、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0021】
また、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤの何れか一方のピニオンギヤに施すだけでも良く、一方のみとした時には加工が容易となり、コストの上昇が抑えられる。
【0022】
請求項2記載のデファレンシャル装置は、請求項1に加え、ピニオンギヤはヘリカルギヤとして形成され、ギヤ部に形成されたテーパ形状は、回転方向左右の歯面角度が異なる角度で形成されているため、ピニオンギヤとサイドギヤの噛み合いによるスラストを利用できるため、差動制限機能がより一層強力となる。
【0023】
請求項3記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2に加えて、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部は小径の軸部を介して分割され、第1ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度および第1ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度が略等しく形成されているため、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤのいずれか一方のピニオンギヤに施したすだけの場合であっても、デフケースの回転方向に係わり無くギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生せず、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0024】
請求項4記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3に加え、テーパ形状は直線形状として形成されているため、ピニオンギヤに倒れが生じた際の歯面での歯当たり面積が一層増大できより一層の耐久性向上が図れる。
【0025】
請求項5記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3に加え、テーパ形状は連続する曲線形状として形成されている事により、駆動トルクが小さくピニオンギヤの倒れが生じない状態から、ピニオンギヤに倒れが生じた状態までギヤの歯面での歯当たり面積が均等になり、ピニオンギヤで生じる噛み合い反力が変化しないため、常時等しい差動制限機能が得られる。
【0026】
請求項6記載のデファレンシャル装置は、請求項1から5のいずれかに加え、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤは車両が前進走行する際の回転方向に対し、一対のピニオンギヤのうち先行回転側に配置した事により、実質的に充分な耐久性の向上効果を得ることができる。
【0027】
請求項7記載のデファレンシャル装置は、請求項1から6のいずれかに加え、一対のピニオンギヤが、小径の軸部を介して第1と第2のギヤが連結された長いピニオンギヤと、第1と第2のギヤ部が連続して形成された短いピニオンギヤとから構成されているため、デファレンシャル装置の小型化が図れる。
【0028】
【実施例】
図1、2、3により本発明の第1実施例を説明する。この実施例は請求項1、2、3、5、6、7の特徴を備えている。図1はこの実施例のデファレンシャル装置1を示している。なお、左右の方向は図1、2、3での左右の方向であり、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0029】
図1のように、デファレンシャル装置1のデフケース3はケーシング本体5とカバー7とをボルト9で固定して構成されている。デファレンシャル装置1はデフキャリヤの内部に配置されており、デフケース3の左右のボス部11、13はベアリングを介してデフキャリヤに支承されている。デフキャリヤにはオイル溜りが設けられており、デファレンシャル装置1は、静止状態では下部がこのオイル溜りに浸されており、回転するとオイル溜りからオイルを撥ね上げる。
【0030】
デフケース3の内部には、それぞれヘリカルギヤで構成された左右のサイドギヤ15、17(出力側サイドギヤ)が配置されている。
【0031】
各サイドギヤ15、17の中空のボス部19、21はデフケース3の支承部23、25によって回転自在に支承されている。ボス部19、21の内側に形成された大径部27、29には、これらの内周に跨がってスラストブロック31が配置され、サイドギヤ15、17の各自由端を支承しセンターリングしている。
【0032】
左右の車輪側出力軸はそれぞれデフケース3のボス部11、13を貫通し、サイドギヤ15、17のボス部19、21にスプライン連結されている。サイドギヤ15、17とデフケース3との間にはそれぞれスラストワッシャ33が配置されており、サイドギヤ15、17の間(スラストブロック33の外周側)にはスラストワッシャ35が配置されている。
【0033】
デフケース3には長短の収納孔37、39が周方向に複数組形成されている。これらの収納孔37、39にはそれぞれヘリカルギヤで構成された長短のピニオンギヤ41、43が摺動回転自在に収納されている。
【0034】
長いピニオンギヤ41は、第1と第2のギヤ部45、47とこれらを連結する小径の軸部49とからなり、第1ギヤ部45は右のサイドギヤ17と噛み合っている。又、短いピニオンギヤ43は、互いの間に軸部を持たない第1と第2のギヤ部51、53からなり、第1ギヤ部51は左のサイドギヤ15と噛み合い、第2ギヤ部53はピニオンギヤ41の第2ギヤ部47と噛み合っている。
【0035】
デフケース3を回転させるエンジンの駆動力は、ピニオンギヤ41、43からサイドギヤ15、17を介して左右の出力軸側に分配される。又、例えば悪路走行中に、出力軸間に駆動抵抗差が生じると各ピニオンギヤ41、43の自転によってエンジンの駆動力は左右各側に差動分配される。
【0036】
トルクの伝達中、各ピニオンギヤ41、43の歯先はサイドギヤ17、15との噛み合い反力により収納孔37、39の壁面に押し付けられて摩擦抵抗が発生する。又、ヘリカルギヤの噛み合いスラスト力によって各ピニオンギヤ41、43の端面とデフケース3との間で摩擦抵抗が発生し、スラストワッシャ33を介してサイドギヤ15、17とデフケース3との間で、又スラストワッシャ35を介してサイドギヤ15、17の間で摩擦抵抗が発生する。これらの摩擦抵抗により、トルク感応型の差動制限機能が得られる。
【0037】
デフケース3には開口55、57、59が設けられており、ボス部11、13の内周には螺旋状のオイル溝61、61が形成されている。デファレンシャル装置1の回転時はオイル溜りから撥ね上げられたオイルが、又静止時にはオイル溜りのオイルが、開口55、57、59とオイル溝61、61とからデフケース3に流出入し、収納孔37、39や各ギヤの噛み合い部などに供給され、これらを潤滑する。
【0038】
車両が前進走行するとき、デフケース3は短いピニオンギヤ43から長いピニオンギヤ41の方向に回転する。つまり短いピニオンギヤ43が高反力側のピニオンギヤで長いピニオンギヤ41が低反力側のピニオンギヤであり、デフケース3の回転方向に対してピニオンギヤ41は先行して公転する。このとき、前述のように、ピニオンギヤ41には、第1ギヤ部45が右のサイドギヤ17から受ける噛み合い反力と、第2ギヤ部47がピニオンギヤ43の第2ギヤ部53から受ける噛み合い反力とによって転倒トルクが掛かり、倒れが生じる。
【0039】
そこで、長いピニオンギヤ41の第1と第2のギヤ部45、47には、図2に示すように、軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とされている。
【0040】
ここで、
L1:ピニオンギヤ41の総歯幅
L2:総歯幅L1の80%(B部とB′部との間隔)
t :テーパ量(B部とB′部でのテーパの傾斜量)
u :A部(総歯幅L1の中心)でのピッチ径に沿った歯厚
u′:C部とC′部(各ギヤ部45、47の歯幅中心付近)でのピッチ径に沿った歯厚
である。
【0041】
テーパ量を設定する際には、テーパ量を総歯幅L1の80%の位置であるB部とB′部でのテーパ量を設定する。この時、実際にはC部とC′部での歯厚u′が歯厚uより厚くなりテーパ状のギヤになるから、このu′が所定値になるように架空転位係数を設定する。又、テーパ形状によって形成される歯筋面は曲面になるからC部とC′部で接線角度が補正角度になるように、テーパ量を設定する。更に、このテーパ量はピニオンギヤ41と収納孔37との隙間量を勘案して決定される。
【0042】
このようなテーパを施したことにより、図2のように、ピニオンギヤ41の第1ギヤ部45と第2ギヤ部47は、破線で描いた従来のねじれ角形状に対して、太い実線で描いたような凹型のねじれ角形状に成形される。その結果、図3に示すように、第1ギヤ部45と第2ギヤ部47の各歯当たり部63、65は、それぞれサイドギヤ17とピニオンギヤ43の第2ギヤ部53と全面で接触しており、図10に示す従来例の現象と異なって、片当たりとピッチングが防止され、耐久性が大幅に向上する。
【0043】
こうして、デファレンシャル装置1が構成されている。
【0044】
デファレンシャル装置1を搭載した車両は、デファレンシャル装置1のトルク感応型差動制限力によって、発進時や加速時のように大きなトルクを掛けた時の車体の挙動が安定すると共に、デファレンシャル装置1の大きな耐久性によって長期にわたり優れた操縦性と安定性とが得られる。
【0045】
次に、図4乃至6により本発明の第2実施例を説明する。この実施例は請求項1、2、3、4、6、7の特徴を備えている。なお、以下の説明のなかで第1実施例の部材と同機能の部材は同一の符号を与えて引用し、これら同機能部材の説明は省いている。又、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0046】
図4はこの実施例のデファレンシャル装置に用いられた前進走行時にデフケース3の回転方向に対して先行して公転する低反力側の長いピニオンギヤ67を展開した図面で示している。このピニオンギヤ67はデフケース3の収納孔37に摺動回転自在に収納されている。ピニオンギヤ67は第1と第2のギヤ部69、71とこれらを連結する小径の軸部73とからなり、第1ギヤ部69はサイドギヤ17と噛み合い、第2ギヤ部71は短いピニオンギヤ43の第2ギヤ部53と噛み合っている。
【0047】
デフケース3は車両の前進走行時に短いピニオンギヤ43から長いピニオンギヤ67の方向に回転し、長いピニオンギヤ67は第1と第2のギヤ部69、71の噛み合い反力による転倒トルクを受けて回転中心軸に対する倒れが生じる。
【0048】
そこで、ピニオンギヤ67の第1ギヤ部69および第2ギヤ部71は、軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とされており、このテーパ形状は図5に破線で示した通常の歯先と比較して各歯面は傾斜角θ1、θ2の傾斜を有した直線形状とされている。又、図5は第1ギヤ部69のみを記載したが、第2ギヤ部71は第1ギヤ部69を180度回転した形状とされ、第1ギヤ部69での一方の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部71での他方側の歯面での傾斜角度が、又第1ギヤ部69での他方の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部71での一方側の歯面での傾斜角度が等しく形成されている。
【0049】
このようなテーパ形状は、図6に示すように、各ギヤ部の歯幅L1の80%の歯面L2となるBとB′部間のテーパ量tを指定するとともに、歯の厚みは歯幅中心付近Cでのピッチ径に沿った歯厚u′を指定することにより設定される。
【0050】
その結果、第1実施例と比較すると、第1実施例は各ギヤ部45、47の端部からへこみ方向での曲面で歯面が形成されているため、端部が中央部に比較して相手ギヤに若干強く当たるが、本実施例にあっては図3に示した歯当たり部63全面で均等に接触できるため、より一層片当たりによるピッチングが防止でき、デファレンシャル装置の耐久性を向上できる。
【0051】
図7により本発明の第3実施例を説明する。この実施例は請求項1、2、3、5、6、7の特徴を備えている。なお、説明の中で第1実施例の部材と同機能の部材は同一の符号を与えて引用し、これら同機能部材の説明は省いている。
【0052】
図7はこの実施例のデファレンシャル装置に用いられた前進走行時にデフケース3の回転方向に対して先行して公転する低反力側の長いピニオンギヤ91を展開した図面で表している。ピニオンギヤ91はデフケース3の収納孔37に摺動回転自在に収納され、ピニオンギヤ91は軸部で分割され、ピニオンギヤ91の第1ギヤ部93はサイドギヤ17と噛み合い、第2ギヤ部95は短いピニオンギヤの第2ギヤ部53と噛み合っている。
【0053】
そこで、ピニオンギヤ67の第1ギヤ部69および第2ギヤ部71は、軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とされており、このテーパ形状は軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなる連続した曲線形状とされている。なお、この曲線形状は第1実施例と異なり、各ギヤ部での端部から突出方向で形成されている。又、第1ギヤ部93と第2ギヤ部95は第1ギヤ部93を180度回転した形状とされ、第1ギヤ部93での一方の歯面の傾斜形状と第2ギヤ部95での他方側の歯面での傾斜形状が、又第1ギヤ部93での他方の歯面の傾斜形状と第2ギヤ部95での一方側の歯面での傾斜形状が略等しく形成されている。
【0054】
このようなテーパ形成は、各ギヤ部の歯幅L1の80%の歯面L2となるBとB′部間のテーパ量tを指定するとともに、歯の厚みは歯幅中心付近Cでのピッチ径に沿った歯厚u′を指定することにより設定される。
【0055】
その結果、第1実施例と第2実施例を比較すると、第1実施例と第2実施例は各ギヤ部45、47、69、71の端部で極度にピニオンギヤ41、67が傾いた時には各ギヤ部の端部が相手ギヤに強く当たることが考えられるが、本実施例にあっては各ギヤ部93、95の端部が相手ギヤから逃げる形状とされているため、端部でのピッチングが防止でき、デファレンシャル装置の耐久性を向上できる。
【0056】
なお、第1実施例から第3実施例の構成では、テーパ形状を第1ギヤ部45、69、93と第2ギヤ部47、71、95の両方に形成したものを説明したが、テーパ形状を施すギヤを何れか一方のギヤ部のみとしても良い。
【0057】
なお、上記の実施例はいずれも長短のピニオンギヤを用いた例であるが、本発明のデファレンシャル装置において、一対のピニオンギヤはこのような構成に限らず、例えば、サイドギヤの間に設けられた空間で互いに噛み合う等長の短いピニオンギヤで一対のピニオンギヤを構成してもよく、又、サイドギヤの軸方向両側で互いに噛み合う等長の長いピニオンギヤで構成してもよい。
【0058】
又、上記実施例はいずれも長いピニオンギヤにクラウニングを施した例であるが、クラウニングは短いピニオンギヤに施してもよい。前記のように、短いピニオンギヤは倒れ角が大きくなりピッチングが強く起こり易いが、このような場合でも本発明のクラウニングによれば歯当たりが改善されてピッチングの発生が抑えられ、耐久性が大幅に向上する。
【0059】
なお、本発明において、ピニオンギヤとサイドギヤはヘリカルギヤでなくスパーギヤで構成してもよい。
【0060】
又、この発明のデファレンシャル装置はリヤデフ(後輪側の車軸デフ)や、フロントデフ(前輪側の車軸デフ)や、センターデフ(前輪と後輪とにエンジンの駆動力を分配するデファレンシャル装置)のいずれにも用いられる。
【0061】
【発明の効果】
請求項1のデファレンシャル装置は、少なくともいずれか一方のピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部のいずれか一方または両方のギヤを軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状として形成したから、従来例と異なって、ピニオンギヤに第1ギヤ部と第2ギヤ部で生じる噛み合い反力が反対方向の反力として発生しピニオンギヤに倒れが生じても、ギヤが軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状に形成されていることにより、ギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生しない。このため、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0062】
また、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤの何れか一方のピニオンギヤに施すだけでも良く、一方のみとした時には加工が容易となり、コストの上昇が抑えられる。
【0063】
請求項2記載のデファレンシャル装置は、請求項1のデファレンシャル装置において、ピニオンギヤはヘリカルギヤとして形成され、ギヤ部に形成されたテーパ形状は、回転方向左右の歯面角度が異なる角度で形成されているため、請求項1に加えて、ピニオンギヤとサイドギヤの噛み合いによるスラストを利用できるため、差動制限機能がより一層強力となる。
【0064】
請求項3記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2のデファレンシャル装置において、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部は小径の軸部を介して分割され、第1ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度および第1ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度が略等しく形成されているため、請求項1または2に加えて、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤの何れか一方のピニオンギヤに施したすだけの場合であっても、デフケースの回転方向に係わり無くギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生せず、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0065】
請求項4記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3のデファレンシャル装置において、テーパ形状は直線形状として形成されているため、請求項1または2または3に加え、ピニオンギヤに倒れが生じた際の歯面での歯当たり面積が一層増大できより一層の耐久性向上が図れる。
【0066】
請求項5記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3のデファレンシャル装置において、テーパ形状は連続する曲線形状として形成されている事により、請求項1または2または3に加え、駆動トルクが小さくピニオンギヤの倒れが生じない状態から、ピニオンギヤに倒れが生じた状態までギヤの歯面での歯当たり面積が均等になり、ピニオンギヤで生じる噛み合い反力が変化しないため、常時等しい差動制限機能が得られる。
【0067】
請求項6記載のデファレンシャル装置は、請求項1から5のデファレンシャル装置において、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤは車両が前進走行する際の回転方向に対し、一対のピニオンギヤのうち先行回転側に配置した事により、請求項1から5のいずれかに加え、実質的に充分な耐久性の向上効果を得ることができる。
【0068】
請求項7記載のデファレンシャル装置は、請求項1から6のデファレンシャル装置において、一対のピニオンギヤが、小径の軸部を介して第1と第2のギヤが連結された長いピニオンギヤと、第1と第2のギヤ部が連続して形成された短いピニオンギヤとから構成されているため、請求項1から6のいずれかに加え、デファレンシャル装置の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すデファレンシャル装置の断面図である。
【図2】第1実施例に用いられた長いピニオンギヤの側面図である。
【図3】第1実施例においてギヤ部での歯面の歯当たり状況を示す図面である。
【図4】本発明の第2実施例に用いられた長いピニオンギヤを展開して示した図面である。
【図5】第2実施例のギヤを拡大して示した図面である。
【図6】第2実施例のギヤの説明図である。
【図7】本発明の第3実施例に用いられた長いピニオンギヤのギヤの説明図である。
【図8】従来例の断面図である。
【図9】ピニオンギヤの転倒状態を示すギヤ組の斜視図である。
【図10】ピニオンギヤ間の噛み合い反力の方向を示す断面図である。
【図11】長短のピニオンギヤに生じる噛み合い反力の方向を示す斜視図である。
【図12】倒れによって従来のピニオンギヤに生じる片当たり箇所を示す側面図である。
【図13】図11での片当たりにより従来のピニオンギヤの歯当たり部に生じたピッチングを示す側面図である。
【符号の説明】
1 デファレンシャル装置
3 デフケース
15、17 出力側サイドギヤ
37、39 収納孔
41、67 長いピニオンギヤ
43 短いピニオンギヤ
45、51、69 第1ギヤ部
47、53、71 第2ギヤ部
49、73 小径の軸部
F1、F2、F3、F4 噛み合い反力
【産業上の利用分野】
この発明は、車両のデファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平5−280596公報に図8のようなデファレンシャル装置201が記載されており、図9はこのデファレンシャル装置201のギヤ組を示している。このデファレンシャル装置201は、デフケース203、同軸配置された出力側のヘリカルサイドギヤ205、207、これらの径方向外側に配置された長短のヘリカルピニオンギヤ209、211などを備えている。ピニオンギヤ209はデフケース203の収納孔213に摺動回転自在に収納され、ピニオンギヤ211は他の収納孔に摺動回転自在に収納されている。各ピニオンギヤ209、211は、それぞれの第1ギヤ部215、217がサイドギヤ205、207と各別に噛み合い、第2ギヤ部219、221が互いに噛うことによりサイドギヤ205、207を連結している。長いピニオンギヤ209は第1と第2のギヤ部215、219を連結する小径の軸部223を持っている。エンジンの駆動力はデフケース203を回転させ、ピニオンギヤ209、211からサイドギヤ205、207を介して車輪側に伝達される。
【0003】
トルクを伝達している間、ピニオンギヤ209、211はサイドギヤ205、207との噛み合い反力により歯先を各収納孔の壁面に押し付けられて摩擦抵抗が生じると共に、ヘリカルギヤの噛み合いスラスト力によって、サイドギヤ205、207の間で、あるいはピニオンギヤ209、211やサイドギヤ205、207とデフケース203との間で摩擦抵抗が生じ、これらの摩擦抵抗によりトルク感応型の差動制限機能を得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図9、10、11の矢印225は車両が前進走行するときのデフケース203の回転方向である。一対のピニオンギヤ209、211のうち長いピニオンギヤ209はデフケース203の回転方向に対して先行して公転するように配置されている。図9のように、デフケース203がこの方向に回転するとピニオンギヤ209の第1ギヤ部215とピニオンギヤ211の第1ギヤ部217にはそれぞれの収納孔から破線の矢印のような回転トルク227、229が掛かると共に、実線の矢印のようにその反力の負荷トルク231、233が各収納孔を介してデフケース203に与えられる。
【0005】
このとき、図10、11に示すように、各ピニオンギヤ211、209の第2ギヤ部221、219では、互いの噛み合いによる反対方向の噛み合い反力F1、F2が生じ、図11に示すように、各第1ギヤ部217、215では、サイドギヤ207、205との噛み合いによる同方向の噛み合い反力F3、F4が生じる。
【0006】
このように、デフケースの回転方向に対し後行して公転する短いピニオンギヤ211では反力F1、F3が略同方向側であるのに対して、先行して公転する長いピニオンギヤ209では反力F2、F4が反対方向になって転倒トルクが生じるときがある。長いピニオンギヤ209および短いピニオンギヤ211は、歯先でデフケース203の収納孔に回転自在に収納されており、収納孔とピニオンギヤ209、211の歯先との間には僅かの隙間を有しているため、こうして生じた転倒トルクを受けて長いピニオンギヤ209には回転中心軸に対する倒れが生じ、図9に示すように、無負荷時の位置から負荷を受けたときの位置まで端部が移動する。
【0007】
ここで、デフケース203に駆動トルクが入力し矢印225の方向に回転した場合、ピニオンギヤ211はデフケースの収納孔より直接駆動トルクを受けて略同方向の反力が生じるため高反力側のピニオンギヤと呼び、ピニオンギヤ209はピニオンギヤ211よりデフケースの回転方向に対して先行して公転する側に配置されているため、ピニオンギヤ209の第2のギヤ部219へはピニオンギヤ211の第2ギヤ部221から駆動トルクを受け、反対方向の反力が生じるため低反力側のピニオンギヤと呼ぶことにする。
【0008】
図12のように、長いピニオンギヤ209が倒れると、第1ギヤ部215はサイドギヤ205と、また、第2ギヤ部219は短いピニオンギヤ211の第2ギヤ部とそれぞれが矢印235、237で示す部分で局部当たりを起こす。この局部当たりによって、図13に示すように、各歯面の各歯当たり部239、241にピッチング(歯面が荷重を受けて歯面の表面が薄片となって剥離する現象)が生じ、ピニオンギヤ209、211およびサイドギヤ205等の耐久性が低下し、最終的にはデファレンシャル装置201自体の耐久性が低下することになる。また、デフケース203が矢印225と反対方向に回転する後進走行時は、ピニオンギヤ209が第1ギヤ部219および第2ギヤ部215でデフケースの収納孔より直接駆動トルクを受けるため、ピニオンギヤ209に略同方向の反力が生じて高反力側となる。このため、先行して公転する短いピニオンギヤ211が倒れ、短いピニオンギヤ211の局部当たりが生じてピッチングが発生し耐久性が低下することになる。
【0009】
ピニオンギヤの倒れ角は、収納孔との隙間が適正値に保たれている間は小さいが、経時変化によって隙間が広がるに従って倒れ角が大きくなり、やがてはピッチングによって耐久性を低下させることになる。
【0010】
そこで、この発明は、デフケースの収納孔でピニオンギヤ歯先を支承するように構成されたデファレンシャル装置において、ピニオンギヤの片当たりを防止し、耐久性を向上させるデファレンシャル装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1のデファレンシャル装置は、エンジンの駆動力により回転駆動されるデフケースと、デフケースの内部に回転自在に支承された一対のサイドギヤと、これらサイドギヤの径方向外側に配置され、サイドギヤと各別に噛み合う第1ギヤ部および互いに噛み合う第2ギヤ部とを有する少なくとも一対のピニオンギヤと、デフケースに形成され各ピニオンギヤを摺動回転自在に収納する収納孔とを備え、少なくともいずれか一方のピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部のいずれか一方または両方のギヤを軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とした事を特徴とする。
【0012】
請求項2のデファレンシャル装置は、前記ピニオンギヤはヘリカルギヤとして形成され、ギヤ部に形成されたテーパ形状は、回転方向左右の歯面角度が異なる角度で形成されている事を特徴とする請求項1記載のデファレンシャル装置である。
【0013】
請求項3のデファレンシャル装置は、前記ギヤ部がテーパ形状として形成されたピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部は小径の軸部を介して分割され、第1ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度および第1ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度が等しく形成されている事を特徴とする請求項1または2記載のデファレンシャル装置である。
【0014】
請求項4のデファレンシャル装置は、前記テーパ形状は直線形状として形成されている事を特徴とする請求項1または2または3記載のデファレンシャル装置である。
【0015】
請求項5のデファレンシャル装置は、前記テーパ形状は連続する曲線形状として形成されている事を特徴とする請求項1または2または3記載のデファレンシャル装置である。
【0016】
請求項6のデファレンシャル装置は車両用に用いられ、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤは車両が前進走行する際の回転方向に対し、一対のピニオンギヤのうち先行回転側に配置された事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載されたデファレンシャル装置である。
【0017】
請求項7のデファレンシャル装置は、一対のピニオンギヤが、小径の軸部を介して第1と第2のギヤが連結された長いピニオンギヤと、第1と第2のギヤ部が連続して形成された短いピニオンギヤとから成る請求項1から6のいずれかに記載されたデファレンシャル装置である。
【0018】
【作用】
請求項1のデファレンシャル装置は、少なくともいずれか一方のピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部のいずれか一方または両方のギヤを軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状として形成した。
【0019】
トルクの伝達中、ピニオンギヤの歯先はサイドギヤとの噛み合い反力により収納孔の壁面に押し付けられることにより摩擦抵抗が生じ、トルク感応型の差動制限機能が得られる。
【0020】
この時、ピニオンギヤに第1ギヤ部と第2ギヤ部で生じる噛み合い反力が反対方向の反力として発生しピニオンギヤに倒れが生じても、ギヤが軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状に形成されていることにより、ギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生しない。このため、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0021】
また、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤの何れか一方のピニオンギヤに施すだけでも良く、一方のみとした時には加工が容易となり、コストの上昇が抑えられる。
【0022】
請求項2記載のデファレンシャル装置は、請求項1に加え、ピニオンギヤはヘリカルギヤとして形成され、ギヤ部に形成されたテーパ形状は、回転方向左右の歯面角度が異なる角度で形成されているため、ピニオンギヤとサイドギヤの噛み合いによるスラストを利用できるため、差動制限機能がより一層強力となる。
【0023】
請求項3記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2に加えて、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部は小径の軸部を介して分割され、第1ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度および第1ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度が略等しく形成されているため、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤのいずれか一方のピニオンギヤに施したすだけの場合であっても、デフケースの回転方向に係わり無くギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生せず、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0024】
請求項4記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3に加え、テーパ形状は直線形状として形成されているため、ピニオンギヤに倒れが生じた際の歯面での歯当たり面積が一層増大できより一層の耐久性向上が図れる。
【0025】
請求項5記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3に加え、テーパ形状は連続する曲線形状として形成されている事により、駆動トルクが小さくピニオンギヤの倒れが生じない状態から、ピニオンギヤに倒れが生じた状態までギヤの歯面での歯当たり面積が均等になり、ピニオンギヤで生じる噛み合い反力が変化しないため、常時等しい差動制限機能が得られる。
【0026】
請求項6記載のデファレンシャル装置は、請求項1から5のいずれかに加え、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤは車両が前進走行する際の回転方向に対し、一対のピニオンギヤのうち先行回転側に配置した事により、実質的に充分な耐久性の向上効果を得ることができる。
【0027】
請求項7記載のデファレンシャル装置は、請求項1から6のいずれかに加え、一対のピニオンギヤが、小径の軸部を介して第1と第2のギヤが連結された長いピニオンギヤと、第1と第2のギヤ部が連続して形成された短いピニオンギヤとから構成されているため、デファレンシャル装置の小型化が図れる。
【0028】
【実施例】
図1、2、3により本発明の第1実施例を説明する。この実施例は請求項1、2、3、5、6、7の特徴を備えている。図1はこの実施例のデファレンシャル装置1を示している。なお、左右の方向は図1、2、3での左右の方向であり、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0029】
図1のように、デファレンシャル装置1のデフケース3はケーシング本体5とカバー7とをボルト9で固定して構成されている。デファレンシャル装置1はデフキャリヤの内部に配置されており、デフケース3の左右のボス部11、13はベアリングを介してデフキャリヤに支承されている。デフキャリヤにはオイル溜りが設けられており、デファレンシャル装置1は、静止状態では下部がこのオイル溜りに浸されており、回転するとオイル溜りからオイルを撥ね上げる。
【0030】
デフケース3の内部には、それぞれヘリカルギヤで構成された左右のサイドギヤ15、17(出力側サイドギヤ)が配置されている。
【0031】
各サイドギヤ15、17の中空のボス部19、21はデフケース3の支承部23、25によって回転自在に支承されている。ボス部19、21の内側に形成された大径部27、29には、これらの内周に跨がってスラストブロック31が配置され、サイドギヤ15、17の各自由端を支承しセンターリングしている。
【0032】
左右の車輪側出力軸はそれぞれデフケース3のボス部11、13を貫通し、サイドギヤ15、17のボス部19、21にスプライン連結されている。サイドギヤ15、17とデフケース3との間にはそれぞれスラストワッシャ33が配置されており、サイドギヤ15、17の間(スラストブロック33の外周側)にはスラストワッシャ35が配置されている。
【0033】
デフケース3には長短の収納孔37、39が周方向に複数組形成されている。これらの収納孔37、39にはそれぞれヘリカルギヤで構成された長短のピニオンギヤ41、43が摺動回転自在に収納されている。
【0034】
長いピニオンギヤ41は、第1と第2のギヤ部45、47とこれらを連結する小径の軸部49とからなり、第1ギヤ部45は右のサイドギヤ17と噛み合っている。又、短いピニオンギヤ43は、互いの間に軸部を持たない第1と第2のギヤ部51、53からなり、第1ギヤ部51は左のサイドギヤ15と噛み合い、第2ギヤ部53はピニオンギヤ41の第2ギヤ部47と噛み合っている。
【0035】
デフケース3を回転させるエンジンの駆動力は、ピニオンギヤ41、43からサイドギヤ15、17を介して左右の出力軸側に分配される。又、例えば悪路走行中に、出力軸間に駆動抵抗差が生じると各ピニオンギヤ41、43の自転によってエンジンの駆動力は左右各側に差動分配される。
【0036】
トルクの伝達中、各ピニオンギヤ41、43の歯先はサイドギヤ17、15との噛み合い反力により収納孔37、39の壁面に押し付けられて摩擦抵抗が発生する。又、ヘリカルギヤの噛み合いスラスト力によって各ピニオンギヤ41、43の端面とデフケース3との間で摩擦抵抗が発生し、スラストワッシャ33を介してサイドギヤ15、17とデフケース3との間で、又スラストワッシャ35を介してサイドギヤ15、17の間で摩擦抵抗が発生する。これらの摩擦抵抗により、トルク感応型の差動制限機能が得られる。
【0037】
デフケース3には開口55、57、59が設けられており、ボス部11、13の内周には螺旋状のオイル溝61、61が形成されている。デファレンシャル装置1の回転時はオイル溜りから撥ね上げられたオイルが、又静止時にはオイル溜りのオイルが、開口55、57、59とオイル溝61、61とからデフケース3に流出入し、収納孔37、39や各ギヤの噛み合い部などに供給され、これらを潤滑する。
【0038】
車両が前進走行するとき、デフケース3は短いピニオンギヤ43から長いピニオンギヤ41の方向に回転する。つまり短いピニオンギヤ43が高反力側のピニオンギヤで長いピニオンギヤ41が低反力側のピニオンギヤであり、デフケース3の回転方向に対してピニオンギヤ41は先行して公転する。このとき、前述のように、ピニオンギヤ41には、第1ギヤ部45が右のサイドギヤ17から受ける噛み合い反力と、第2ギヤ部47がピニオンギヤ43の第2ギヤ部53から受ける噛み合い反力とによって転倒トルクが掛かり、倒れが生じる。
【0039】
そこで、長いピニオンギヤ41の第1と第2のギヤ部45、47には、図2に示すように、軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とされている。
【0040】
ここで、
L1:ピニオンギヤ41の総歯幅
L2:総歯幅L1の80%(B部とB′部との間隔)
t :テーパ量(B部とB′部でのテーパの傾斜量)
u :A部(総歯幅L1の中心)でのピッチ径に沿った歯厚
u′:C部とC′部(各ギヤ部45、47の歯幅中心付近)でのピッチ径に沿った歯厚
である。
【0041】
テーパ量を設定する際には、テーパ量を総歯幅L1の80%の位置であるB部とB′部でのテーパ量を設定する。この時、実際にはC部とC′部での歯厚u′が歯厚uより厚くなりテーパ状のギヤになるから、このu′が所定値になるように架空転位係数を設定する。又、テーパ形状によって形成される歯筋面は曲面になるからC部とC′部で接線角度が補正角度になるように、テーパ量を設定する。更に、このテーパ量はピニオンギヤ41と収納孔37との隙間量を勘案して決定される。
【0042】
このようなテーパを施したことにより、図2のように、ピニオンギヤ41の第1ギヤ部45と第2ギヤ部47は、破線で描いた従来のねじれ角形状に対して、太い実線で描いたような凹型のねじれ角形状に成形される。その結果、図3に示すように、第1ギヤ部45と第2ギヤ部47の各歯当たり部63、65は、それぞれサイドギヤ17とピニオンギヤ43の第2ギヤ部53と全面で接触しており、図10に示す従来例の現象と異なって、片当たりとピッチングが防止され、耐久性が大幅に向上する。
【0043】
こうして、デファレンシャル装置1が構成されている。
【0044】
デファレンシャル装置1を搭載した車両は、デファレンシャル装置1のトルク感応型差動制限力によって、発進時や加速時のように大きなトルクを掛けた時の車体の挙動が安定すると共に、デファレンシャル装置1の大きな耐久性によって長期にわたり優れた操縦性と安定性とが得られる。
【0045】
次に、図4乃至6により本発明の第2実施例を説明する。この実施例は請求項1、2、3、4、6、7の特徴を備えている。なお、以下の説明のなかで第1実施例の部材と同機能の部材は同一の符号を与えて引用し、これら同機能部材の説明は省いている。又、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0046】
図4はこの実施例のデファレンシャル装置に用いられた前進走行時にデフケース3の回転方向に対して先行して公転する低反力側の長いピニオンギヤ67を展開した図面で示している。このピニオンギヤ67はデフケース3の収納孔37に摺動回転自在に収納されている。ピニオンギヤ67は第1と第2のギヤ部69、71とこれらを連結する小径の軸部73とからなり、第1ギヤ部69はサイドギヤ17と噛み合い、第2ギヤ部71は短いピニオンギヤ43の第2ギヤ部53と噛み合っている。
【0047】
デフケース3は車両の前進走行時に短いピニオンギヤ43から長いピニオンギヤ67の方向に回転し、長いピニオンギヤ67は第1と第2のギヤ部69、71の噛み合い反力による転倒トルクを受けて回転中心軸に対する倒れが生じる。
【0048】
そこで、ピニオンギヤ67の第1ギヤ部69および第2ギヤ部71は、軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とされており、このテーパ形状は図5に破線で示した通常の歯先と比較して各歯面は傾斜角θ1、θ2の傾斜を有した直線形状とされている。又、図5は第1ギヤ部69のみを記載したが、第2ギヤ部71は第1ギヤ部69を180度回転した形状とされ、第1ギヤ部69での一方の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部71での他方側の歯面での傾斜角度が、又第1ギヤ部69での他方の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部71での一方側の歯面での傾斜角度が等しく形成されている。
【0049】
このようなテーパ形状は、図6に示すように、各ギヤ部の歯幅L1の80%の歯面L2となるBとB′部間のテーパ量tを指定するとともに、歯の厚みは歯幅中心付近Cでのピッチ径に沿った歯厚u′を指定することにより設定される。
【0050】
その結果、第1実施例と比較すると、第1実施例は各ギヤ部45、47の端部からへこみ方向での曲面で歯面が形成されているため、端部が中央部に比較して相手ギヤに若干強く当たるが、本実施例にあっては図3に示した歯当たり部63全面で均等に接触できるため、より一層片当たりによるピッチングが防止でき、デファレンシャル装置の耐久性を向上できる。
【0051】
図7により本発明の第3実施例を説明する。この実施例は請求項1、2、3、5、6、7の特徴を備えている。なお、説明の中で第1実施例の部材と同機能の部材は同一の符号を与えて引用し、これら同機能部材の説明は省いている。
【0052】
図7はこの実施例のデファレンシャル装置に用いられた前進走行時にデフケース3の回転方向に対して先行して公転する低反力側の長いピニオンギヤ91を展開した図面で表している。ピニオンギヤ91はデフケース3の収納孔37に摺動回転自在に収納され、ピニオンギヤ91は軸部で分割され、ピニオンギヤ91の第1ギヤ部93はサイドギヤ17と噛み合い、第2ギヤ部95は短いピニオンギヤの第2ギヤ部53と噛み合っている。
【0053】
そこで、ピニオンギヤ67の第1ギヤ部69および第2ギヤ部71は、軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とされており、このテーパ形状は軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなる連続した曲線形状とされている。なお、この曲線形状は第1実施例と異なり、各ギヤ部での端部から突出方向で形成されている。又、第1ギヤ部93と第2ギヤ部95は第1ギヤ部93を180度回転した形状とされ、第1ギヤ部93での一方の歯面の傾斜形状と第2ギヤ部95での他方側の歯面での傾斜形状が、又第1ギヤ部93での他方の歯面の傾斜形状と第2ギヤ部95での一方側の歯面での傾斜形状が略等しく形成されている。
【0054】
このようなテーパ形成は、各ギヤ部の歯幅L1の80%の歯面L2となるBとB′部間のテーパ量tを指定するとともに、歯の厚みは歯幅中心付近Cでのピッチ径に沿った歯厚u′を指定することにより設定される。
【0055】
その結果、第1実施例と第2実施例を比較すると、第1実施例と第2実施例は各ギヤ部45、47、69、71の端部で極度にピニオンギヤ41、67が傾いた時には各ギヤ部の端部が相手ギヤに強く当たることが考えられるが、本実施例にあっては各ギヤ部93、95の端部が相手ギヤから逃げる形状とされているため、端部でのピッチングが防止でき、デファレンシャル装置の耐久性を向上できる。
【0056】
なお、第1実施例から第3実施例の構成では、テーパ形状を第1ギヤ部45、69、93と第2ギヤ部47、71、95の両方に形成したものを説明したが、テーパ形状を施すギヤを何れか一方のギヤ部のみとしても良い。
【0057】
なお、上記の実施例はいずれも長短のピニオンギヤを用いた例であるが、本発明のデファレンシャル装置において、一対のピニオンギヤはこのような構成に限らず、例えば、サイドギヤの間に設けられた空間で互いに噛み合う等長の短いピニオンギヤで一対のピニオンギヤを構成してもよく、又、サイドギヤの軸方向両側で互いに噛み合う等長の長いピニオンギヤで構成してもよい。
【0058】
又、上記実施例はいずれも長いピニオンギヤにクラウニングを施した例であるが、クラウニングは短いピニオンギヤに施してもよい。前記のように、短いピニオンギヤは倒れ角が大きくなりピッチングが強く起こり易いが、このような場合でも本発明のクラウニングによれば歯当たりが改善されてピッチングの発生が抑えられ、耐久性が大幅に向上する。
【0059】
なお、本発明において、ピニオンギヤとサイドギヤはヘリカルギヤでなくスパーギヤで構成してもよい。
【0060】
又、この発明のデファレンシャル装置はリヤデフ(後輪側の車軸デフ)や、フロントデフ(前輪側の車軸デフ)や、センターデフ(前輪と後輪とにエンジンの駆動力を分配するデファレンシャル装置)のいずれにも用いられる。
【0061】
【発明の効果】
請求項1のデファレンシャル装置は、少なくともいずれか一方のピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部のいずれか一方または両方のギヤを軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状として形成したから、従来例と異なって、ピニオンギヤに第1ギヤ部と第2ギヤ部で生じる噛み合い反力が反対方向の反力として発生しピニオンギヤに倒れが生じても、ギヤが軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状に形成されていることにより、ギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生しない。このため、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0062】
また、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤの何れか一方のピニオンギヤに施すだけでも良く、一方のみとした時には加工が容易となり、コストの上昇が抑えられる。
【0063】
請求項2記載のデファレンシャル装置は、請求項1のデファレンシャル装置において、ピニオンギヤはヘリカルギヤとして形成され、ギヤ部に形成されたテーパ形状は、回転方向左右の歯面角度が異なる角度で形成されているため、請求項1に加えて、ピニオンギヤとサイドギヤの噛み合いによるスラストを利用できるため、差動制限機能がより一層強力となる。
【0064】
請求項3記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2のデファレンシャル装置において、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部は小径の軸部を介して分割され、第1ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度および第1ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度が略等しく形成されているため、請求項1または2に加えて、テーパ形状のギヤを一対のピニオンギヤの何れか一方のピニオンギヤに施したすだけの場合であっても、デフケースの回転方向に係わり無くギヤの歯面での歯当たり面積が増大して、各歯面での各歯当たり部でギヤの倒れによる局部当たりが発生せず、局部当たりによるピッチングが防止でき耐久性の向上が図れる。
【0065】
請求項4記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3のデファレンシャル装置において、テーパ形状は直線形状として形成されているため、請求項1または2または3に加え、ピニオンギヤに倒れが生じた際の歯面での歯当たり面積が一層増大できより一層の耐久性向上が図れる。
【0066】
請求項5記載のデファレンシャル装置は、請求項1または2または3のデファレンシャル装置において、テーパ形状は連続する曲線形状として形成されている事により、請求項1または2または3に加え、駆動トルクが小さくピニオンギヤの倒れが生じない状態から、ピニオンギヤに倒れが生じた状態までギヤの歯面での歯当たり面積が均等になり、ピニオンギヤで生じる噛み合い反力が変化しないため、常時等しい差動制限機能が得られる。
【0067】
請求項6記載のデファレンシャル装置は、請求項1から5のデファレンシャル装置において、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤは車両が前進走行する際の回転方向に対し、一対のピニオンギヤのうち先行回転側に配置した事により、請求項1から5のいずれかに加え、実質的に充分な耐久性の向上効果を得ることができる。
【0068】
請求項7記載のデファレンシャル装置は、請求項1から6のデファレンシャル装置において、一対のピニオンギヤが、小径の軸部を介して第1と第2のギヤが連結された長いピニオンギヤと、第1と第2のギヤ部が連続して形成された短いピニオンギヤとから構成されているため、請求項1から6のいずれかに加え、デファレンシャル装置の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示すデファレンシャル装置の断面図である。
【図2】第1実施例に用いられた長いピニオンギヤの側面図である。
【図3】第1実施例においてギヤ部での歯面の歯当たり状況を示す図面である。
【図4】本発明の第2実施例に用いられた長いピニオンギヤを展開して示した図面である。
【図5】第2実施例のギヤを拡大して示した図面である。
【図6】第2実施例のギヤの説明図である。
【図7】本発明の第3実施例に用いられた長いピニオンギヤのギヤの説明図である。
【図8】従来例の断面図である。
【図9】ピニオンギヤの転倒状態を示すギヤ組の斜視図である。
【図10】ピニオンギヤ間の噛み合い反力の方向を示す断面図である。
【図11】長短のピニオンギヤに生じる噛み合い反力の方向を示す斜視図である。
【図12】倒れによって従来のピニオンギヤに生じる片当たり箇所を示す側面図である。
【図13】図11での片当たりにより従来のピニオンギヤの歯当たり部に生じたピッチングを示す側面図である。
【符号の説明】
1 デファレンシャル装置
3 デフケース
15、17 出力側サイドギヤ
37、39 収納孔
41、67 長いピニオンギヤ
43 短いピニオンギヤ
45、51、69 第1ギヤ部
47、53、71 第2ギヤ部
49、73 小径の軸部
F1、F2、F3、F4 噛み合い反力
Claims (7)
- エンジンの駆動力により回転駆動されるデフケースと、デフケースの内部に回転自在に支承された一対のサイドギヤと、これらサイドギヤの径方向外側に配置され、サイドギヤと各別に噛み合う第1ギヤ部および互いに噛み合う第2ギヤ部とを有する少なくとも一対のピニオンギヤと、デフケースに形成され各ピニオンギヤを摺動回転自在に収納する収納孔とを備え、少なくともいずれか一方のピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部のいずれか一方または両方のギヤを軸端部から他方のギヤ部に向けてしだいに歯先が小さくなるテーパ形状とした事を特徴とするデファレンシャル装置。
- 前記ピニオンギヤはヘリカルギヤとして形成され、ギヤ部に形成されたテーパ形状は、回転方向左右の歯面角度が異なる角度で形成されている事を特徴とする請求項1記載のデファレンシャル装置。
- 前記ギヤ部がテーパ形状として形成されたピニオンギヤの第1ギヤ部と第2ギヤ部は小径の軸部を介して分割され、第1ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度および第1ギヤ部の他方側の歯面の傾斜角度と第2ギヤ部の一方側の歯面の傾斜角度が等しく形成されている事を特徴とする請求項1または2記載のデファレンシャル装置。
- 前記テーパ形状は直線形状として形成されている事を特徴とする請求項1または2または3記載のデファレンシャル装置。
- 前記テーパ形状は連続する曲線形状として形成されている事を特徴とする請求項1または2または3記載のデファレンシャル装置。
- デファレンシャル装置は車両用に用いられ、ギヤがテーパ形状として形成されたピニオンギヤは車両が前進走行する際の回転方向に対し、一対のピニオンギヤのうち先行回転側に配置された事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載されたデファレンシャル装置。
- 一対のピニオンギヤが、小径の軸部を介して第1と第2のギヤが連結された長いピニオンギヤと、第1と第2のギヤ部が連続して形成された短いピニオンギヤとから成る請求項1から6のいずれかに記載されたデファレンシャル装置。
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