JP3611716B2 - 熱重合性組成物及びその用途 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高イオン伝導性高分子固体電解質を得るための熱重合性組成物、この熱重合性組成物を重合することによって得られる高分子固体電解質、並びに、この高分子固体電解質を用いた電池及び電気二重層コンデンサ及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アイオニクス分野でのダウンサイジング及び全固体化という流れの中で、従来の電解質溶液に代わる新しいイオン伝導体として、固体電解質を用いた全固体一次電池や二次電池及び電気二重層コンデンサの実用化が望まれている。
すなわち、従来の電解質溶液を用いた電池では、電池外部への液漏れあるいは電極物質の溶出などが発生しやすいために長期信頼性に問題がある。最近期待されているフレキシブルなシート状電池においても、電解質溶液を用いた場合には、電池容器内での電解液のかたよりや液枯れによる内部インピーダンスの上昇あるいは内部短絡の問題がある。
また、近年、比表面積の大きい炭素材料を分極性電極としてその間にイオン伝導性溶液を配置する電気二重層コンデンサが、メモリーバックアップ電源用などに多用されるようになってきているが、このような電気二重層コンデンサにおいても、現在の電解質溶液では、長期間の使用において、あるいは高電圧が印加された場合に、コンデンサ外部への液漏れ等が発生し易く長期使用や信頼性に問題がある。また、従来の無機系イオン伝導性物質を用いた電気二重層コンデンサは、イオン伝導性物質の分解電圧が低く、出力電圧が低いという問題もある。
【0003】
これに対して、高分子固体電解質を用いた電池及び電気二重層コンデンサでは液漏れや電極物質の溶出等の問題はなく、種々の形状に加工でき、封止も簡単である。また、より薄型化することも容易である。さらに、ポリホスファゼン系有機高分子をイオン伝導性物質の主成分とした電気二重層コンデンサでは、無機系イオン伝導性物質に比較して出力電圧が高くなる例が報告されている(例えば、特開平4−253771号公報)。
しかし、一般的に検討されている高分子固体電解質のイオン伝導度は、室温における値で10−4〜10−5S/cm程度まで改善されたものの、溶液系イオン伝導性物質に比較するとなお2桁以上低い水準にとどまっている。これは、近年注目されているオリゴオキシエチレン鎖を導入した高分子固体電解質についても同様である(例えば、特開平4−211412号公報)。また、0℃以下の低温になると、一般に極端にイオン伝導性が低下するという問題がある。
【0004】
また、固体電解質を電池や電気二重層コンデンサに組み込む方法として、固体電解質の溶液を電極等の基質上に塗布延伸し、次いで溶媒を乾燥除去するいわゆるキャスト法が行われてきたが、この手法では加工操作が複雑である上、電極との密着性が十分ではない。高分子ゲル電解質を用いる方法、電解液が含浸された架橋系高分子固体電解質を用いる方法(例えば、米国特許第4,792,504号)も提 案されているが、イオン伝導度を満足させるために多量の電解質液を含む場合には、硬化性や成膜性に劣り、さらに膜強度が十分でない。また、流動性が付与されて完全な固体としては取り扱えず、電気二重層コンデンサや電池に応用すると短絡が起こり易いうえ、溶液系イオン伝導性物質同様に封止上の問題が発生する。
【0005】
そこで、高分子固体電解質の主成分として電解質及び重合可能な化合物を用い、これを液状またはゲル状として電池あるいはコンデンサの構造体内に装入し、しかる後に硬化させて複合を行う硬化法が検討されている。
このような重合性組成物の硬化法としては、従来、活性光線による硬化法が盛んに研究開発され、特に、経済的に有利である紫外線光重合開始剤を用いた高分子固体電解質が検討されている。しかし、光照射では電池の構成上、正極、負極及び/またはセパレータの各要素と固体電解質用重合性組成物とを同時に複合一体化することが困難である。特に、正極、固体電解質、負極を積層するタイプや捲き回すタイプは、各要素が光透過性でないため一体化が難しい。活性光線の不透過による硬化不良を避けるために、正極、負極の各要素と固体電解質用重合性組成物をそれぞれ複合化し、しかる後に積層等を行うことも考えられるが、活性光線が電極材料により遮蔽され、電極内部の重合性組成物の硬化が不十分となり、電極の深さ方向で重合が不均一に起こるという問題、あるいは機械的強度や電極間ギャップを補償するために使用されるセパレータを介在させた場合にセパレータの裏側まで均一に硬化させることが難しいという問題がある。さらに、重合性組成物が接する雰囲気により酸素阻害を受け易く、硬化不良につながるという問題を含んでいた。
【0006】
このため、正極、負極及び/またはセパレータの各要素と固体電解質とを硬化と同時に複合一体化でき、電池の内部インピーダンスを小さくすることが構成上可能である熱硬化による方法も提案されている。この方法では、活性光線による光硬化法では困難な、正極、固体電解質、負極を積層するタイプや捲回するタイプにおいて優位性を有する。しかし、熱重合開始剤を用いた高分子固体電解質用重合性組成物においては、開始剤は所望する硬化温度によって決められることが多い。したがって、例えば、電解液中に低沸点溶媒を含有する場合には、その溶媒の揮発による溶液組成変化を避けるためラジカル発生温度が高温の開始剤の使用が制限される。この結果、室温から中温で硬化させるべく重合促進剤を併用することになるが、これらの重合促進剤(還元剤であることが多い。)やその分解生成物は、高分子固体電解質のイオン伝導性などの電流物性やサイクル寿命など特性の劣化をもたらす。重合促進剤を用いずに加熱のみで硬化させると、硬化速度が熱重合開始剤の熱分解速度に依存するため、低い温度では硬化に至るまでに時間がかかる。
【0007】
重合開始剤量を増やして発生ラジカル量を増やし効率よい硬化を行うことも一般に行われているが、未反応の開始剤や分解生成物が増えるため、イオン伝導性等の電流特性あるいはサイクル特性等の電気化学的特性に悪影響を及ぼすという問題がある。さらに、電極上及び/または電極内部と固体電解質を複合する場合、重合開始剤の種類によってはガス状の分解物が発生し、このガスによって、集電体からの電極材の剥離や電極膨張等による電池形状変化が生じたり、界面抵抗の増大やサイクル特性の劣化など電気化学的特性に悪影響が及ぶ問題もある。
熱重合開始剤としてパーオキシジカーボネートを用いてガス発生の問題を解消することも提案されているが(例えば、特開平6−203841号公報)、低温でも優れた導電性を有し、硬化物の強度及び可撓性においても十分な熱硬化性組成物は知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、熱重合開始能が高い重合開始剤及び硬化性の良好な重合性化合物を組み合わせて、室温及び低温でのイオン伝導性及び硬化性に優れ、かつ十分な強度を有する高分子固体電解質用熱重合組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記熱重合性組成物から得られる架橋及び/または側鎖基を有する高分子及び電解質を含む高イオン伝導性で安定性の良好な高分子固体電解質を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、電池内部に上記高分子固体電解質を用いた高容量、高電流で作動でき、高寿命で信頼性に優れ安価に製造できる一次電池及び二次電池を提供することを目的とする。
さらにまた、本発明はコンデンサ内部に上記高分子固体電解質を用いた、出力電圧が高く、取り出し電流が大きく、加工性が良好で、高寿命で信頼性に優れ安価に製造できる電気二重層コンデンサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合性化合物と、有機過酸化物である熱重合開始剤を組み合わせることにより、硬化性の非常に高い熱重合性組成物が得られることを見出し、電極内部または活性光線が届かない材料内部でも高分子固体電解質が製造されること、また、得られた高分子固体電解質は電極との密着性が良好であることを確認して、本発明を完成するに至った。また、本願出願人が先に提案している、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を原料として得られる室温及び低温でのイオン伝導性に優れた高分子固体電解質(特開平9−73907号公報等)を上記の重合性化合物として 用いることにより、さらに、室温及び低温でも優れたイオン伝導度が実現されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の熱重合性組成物、この熱重合性組成物を重合することによって得られる高分子固体電解質、並びにこの高分子固体電解質を用いた電池、電気二重層コンデンサ及びそれらの製造方法を提供する。
【0011】
1)重合することにより架橋及び/または側鎖形構造を有する高分子となる重合性官能基を有する少なくとも一種の熱重合性化合物、少なくとも一種の電解質、少なくとも一種の重合開始剤、及び少なくとも一種の無機微粒子を含む熱重合性組成物であって、
熱重合性化合物が以下の一般式(1)及び/または一般式(2)
【化3】
Figure 0003611716
[式中、R1及びR3は水素またはアルキル基を表わし、R2及びR5はオキシアルキレン、フルオロカーボン、オキシフルオロカーボン及び/またはカーボネート基を含む2価の基、R4は炭素数10以下の2価の基を表わす。R2、R4及びR5はヘテロ原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状または環状のいずれの構造を有するものでもよい。xは0または1〜10の整数を示す。但し、同一分子中に複数個の上記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基が含まれる場合、それぞれの重合性官能基中のR1、R2、R3、R4、R5及びxは、同一でもよいし異なってもよい。]で表される重合性官能基を2つ以上有する化合物を含んでおり、
重合開始剤が以下の一般式(3)
【化4】
Figure 0003611716
[式中、Xは置換基を有してもよいアルキル基またはアルコキシ基を表わし、Yは置換基を有してもよいアルキル基を表わす。X及びYは、直鎖状、分岐状または環状のいずれの構造を有するものでもよい。m、nはそれぞれ0または1であるが、(m,n)=(0,1)の組み合わせは除く。]で表される有機過酸化物であり、
無機微粒子の平均粒径が0.005〜100μmであることを特徴とする熱重合性組成物。
2)有機過酸化物が、ベンゼン環を含まない、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類から選ばれる前記1に記載の熱重合性組成物。
3)有機過酸化物の活性酸素量が熱重合組成物に対して10〜150ppmであり、その活性酸素量の10時間半減期を得るための温度が40℃以上70℃以下である前記1または2に記載の熱重合性組成物。
4)重合性組成物が、さらに炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類、ラクトン類、スルホキシド類、アミド類から選ばれる少なくとも一種の非水有機溶媒を含み、該有機溶媒の含有量が熱重合性化合物に対して300重量%以上である前記1乃至3のいずれかの項に記載の熱重合性組成物。
5)電解質が、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、遷移金属塩、プロトン酸から選ばれる少なくとも一種である前記1乃至4のいずれかの項に記載の熱重合性組成物。
6)少なくとも一種の電解質がLiPF6及び/またはLiBF4及び/またはLiAsF6及び/またはLiN(A−SO22(式中、Aは炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基を表わす。)である前記5に記載の熱重合性組成物。
7)前記1乃至6のいずれかに記載の熱重合性組成物を熱重合することによって得られる高分子固体電解質。
8)前記7に記載の高分子固体電解質、及び電極活物質または分極性材料を含むことを特徴とする電池用または電気二重層コンデンサ用電極。
9)前記7に記載の高分子固体電解質を用いることを特徴とする電池。
10)電池の負極がリチウム、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料またはリチウムイオンを吸蔵放出できる無機化合物からなる前記9に記載の電池。
11)電池の正極が導電性高分子、金属酸化物、金属硫化物、及び/または炭素材料からなる前記9に記載の電池。
12)前記7に記載の高分子固体電解質を用いることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
13)前記1乃至6のいずれかに記載の熱重合性組成物の少なくとも一種を電池構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、加熱して熱重合性組成物を硬化することを特徴とする電池の製造方法。
14)前記1乃至6のいずれかの項に記載の熱重合性組成物の少なくとも一種を電気二重層コンデンサ構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、加熱して熱重合性組成物を硬化することを特徴とする電気二重層コンデンサの製造方法。
【0013】
【発明の実施の態様】
[1]熱重合性組成物
本発明の熱重合性組成物は、基本的には、(a)熱重合性化合物、(b)重合開始剤及び(c)電解質を含む。さらに、(d)非水有機溶媒、(e)無機微粒子を含んでもよ い。
本発明の熱重合性組成物は、上記の(a)〜(c)の3成分、特に(a)と(b)の特定の組み合わせにより特異な効果をもたらす。すなわち、後述の式(1)及び/または(2)の重合性官能基を有する熱重合性化合物は、そのヘテロ原子が電解質塩のイオン化を促進し、固体電解質のイオン伝導性を向上させる。しかも、この熱重合性化合物は、式(3)の重合開始剤と組み合わせた場合、重合開始剤である有機過酸化物の活性酸素量が熱重合性化合物に対して非常に少量であっても効率的に反応が進行し、室温から中温でも硬化が可能で、残存二重結合が非常に少ない。さらに、得られた硬化物は電流特性やサイクル特性に優れ、電気化学的に安定な高分子固体電解質を形成する。さらに驚くべきことに、非水有機溶媒を含む組成物においては、有機溶媒が重合性化合物の300重量%を超える場合でも硬化性が良く、高イオン伝導性で成膜性に優れ、膜強度や電気化学的特性が良好である。
【0014】
以下、本発明の熱重合性組成物の構成成分について詳述する。
(a)熱重合性化合物
(i)熱重合性化合物の構造
本発明で用いる熱重合性化合物は、以下の一般式(1)及び/または一般式(2)
【0015】
【化5】
Figure 0003611716
【0016】
[式中、R、Rは水素またはアルキル基を表わし、R、Rはオキシアルキレン、フルオロカーボン、オキシフルオロカーボン及び/またはカーボネート基を含む2価の基、Rは炭素数10以下の2価の基を表わす。R、R及びRはヘテロ原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状または環状のいずれの構造を有するものでもよい。xは0または1〜10の数値を示す。但し、同一分子中の複数個の上記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基中のR、R、R 、R、R及びxの値は、それぞれ独立であり、同じである必要はない。]
で表わされる重合性官能基を有する化合物である。
【0017】
一般式(1)および(2)で示されるいずれか一つの官能基を有する重合性化合物は、(メタ)アクリレート構造とオキシアルキレン、フルオロカーボン、オキシフルオロカーボン及び/またはカーボネート基を含む部分とからなる。(メタ)アクリレート構造は、重合反応により架橋または主鎖を形成する。オキシアルキレン、フルオロカーボン、オキシフルオロカーボン、カーボネート基を含む部分は重合後、架橋及び/または側鎖形構造を形成する。この側鎖構造等においてヘテロ原子が電解質塩のイオン化を促進させ固体電解質のイオン伝導性を向上させるとともに、ラジカル重合による硬化性をも促進させる。この結果、少ない熱重合開始剤添加量においても残存2重結合が非常に少なく、硬化が完全に進むことが見出された。
【0018】
特に式(2)の構造を含むことが好ましい。熱重合性化合物が一般式(2)で示される重合性官能基を有する場合、化合物を重合して得られる高分子はウレタン基を含んでおり、誘電率が高くなり、高分子固体電解質とした場合のイオン伝導度が高くなるという好ましい特徴をもたらす。さらに、式(2)の構造を含む熱重合性化合物は重合性が良好で、薄膜にしたときの膜強度も大きく電解液の包含量が多くなり好ましい。
【0019】
式(1)のRあるいは式(2)のRに含まれるオキシアルキレンは特に制限されないが、好ましくは次式
【化6】
Figure 0003611716
で表される構造を含むオリゴ乃至ポリオキシアルキレン鎖である。上記式中、Rは水素原子または炭素数10以下のアルキル側鎖である。アルキル側鎖として は好ましくはメチル基である。繰り返し数sは1〜1000、好ましくは1〜50の範囲の整数である。もっとも、Rは各繰り返し単位ごとに異なっていても良い 。
【0020】
式(1)のRあるいは式(2)のRに含まれるフルオロカーボンは特に制限されないが、好ましくは炭素数20以下のアルキレン鎖において炭素に結合する水素がフッ素で置換されたものである。炭素鎖の骨格は直鎖状、分岐状、環状のいずれの構造を有するものでもよい。
【0021】
式(1)のRあるいは式(2)のRに含まれるオキシフルオロカーボンは特に制限されないが、好ましくは次式
【化7】
Figure 0003611716
で示される構造を含むオリゴ乃至ポリオキシフルオロカーボン鎖である。上記式中、Rはフッ素原子、または炭素数10以下のフルオロカーボン側鎖である。 フルオロカーボン側鎖としては、好ましくはペルフルオロメチル基である。繰り返し数tは1〜1000、好ましくは1〜50の範囲の整数である。もっとも、R は各繰り返し単位ごとに異なっていても良い。
【0022】
式(1)のRあるいは式(2)のRに含まれるカーボネート基は特に制限されないが、好ましくは次式
【化8】
Figure 0003611716
で示されるポリまたはオリゴカーボネート鎖である。上記式中、Rは炭素数が 1〜10の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい2価の基を表わし、uは1〜10の整数であり、wは2〜1000の整数である。
【0023】
上記一般式でuが10を越えると、高分子化合物中のカーボネート基が少なくなり、誘電率が低下し、電解質塩が解離しにくくなり好ましくない。好ましいuは1〜5である。
上記一般式でRの炭素数が多すぎると、高分子化合物中のカーボネート基が 少なくなり、誘電率が低下し、電解質塩が解離しにくくなり好ましくない。また、高分子化合物の疎水性が増加し、各種極性溶媒との相溶性が低下し、好ましくない。好ましいRの炭素数は1〜6であり、更に好ましくは1〜4である。繰 り返し数wは2〜1000の範囲であり、3〜100の範囲が好ましく、5〜50が特に好ましい。
【0024】
なお、式(1)のRあるいは式(2)のRの残りの部分は、上記いずれの場合においても、直鎖状、分岐状もしくは環状のいずれの構造を含んでもよく、発明の目的に反しない限りにおいてヘテロ原子を含んでもよい。
また、式(2)のRは、好ましくは(CH(CH(CH))(p及びqはそ れぞれ0または1〜5の整数を示す。但しp=q=0のときはx=0である。)である。[ORにおいてxが2以上の場合、−CH−と−CH(CH)−はそれぞれが連続せずに不規則に配列してもよい。
【0025】
(ii)熱重合性化合物の製造方法
一般式(1)で表される官能基を有する化合物を合成する方法に特に限定はないが、例えば、Rがオキシアルキレン基の場合は、酸塩化物と末端にヒドロキ シル基を有するオリゴオキシアルキレンオールとを反応させることにより容易に得られる。
例えば、一般式(1)で表される官能基を1つ有する化合物は、酸塩化物とモノアルキルオリゴアルキレングリコールとを以下の反応式に従って、1:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
【0026】
【化9】
Figure 0003611716
(式中、Rは一般式(1)と同じ。R及びsは前記の通り。Rは酸塩化物と 反応しない基、例えばアルキル基である。)
【0027】
同様に、一般式(1)で表わされる官能基を2つ有する化合物は、酸塩化物とオリゴアルキレングリコールとを以下の反応式に従って、2:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
【0028】
【化10】
Figure 0003611716
(式中、R、R及びsは前記と同様。)
【0029】
式(1)の官能基を3個以上有する場合も同様であり、酸塩化物をグリセリン等のトリオール、ペンタエリスリトール等のテトラオール、α−D−グルコピラノースにアルキレンオキサイドを付加重合させたペンタオール、マンニットにアルキレンオキサイドを付加重合させたヘキサオール等とそれぞれ3:1、4:1、5:1、6:1で反応させることにより、式(1)の官能基をそれぞれ1分子中に3個、4個、5個または6個有する重合性化合物が得られる。
【0030】
がオキシフルオロカーボンを有する化合物の製造方法も、水酸基を有する 化合物の炭素骨格に結合した水素がフッ素に置換されているオキシフルオロカーボンを用いる点を除いて上記と同様である。
具体的方法として1つのエチレン性不飽和基を有する化合物、すなわち一般式(1)で表されるユニットを1つ有する化合物は、例えば、上述の酸塩化物と2,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノールのようなモノオールとを1:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
また、2つのエチレン性不飽和基を有する化合物、すなわち一般式(1)で表されるユニットを2つ有する化合物は、例えば、酸塩化物と2,2,3,3−テトラフルオロ−1,4−ブタンジオールのようなジオールとを2:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
一般式(1)で表されるユニットを3つ以上有する化合物についても同様である。
【0031】
本発明の高分子固体電解質に用いられるオキシアルキレン基を有し、一般式(2)で表される官能基を有する化合物を合成する方法に特に限定はないが、例えば、上記の酸塩化物の代わりに、
【化11】
Figure 0003611716
(式中、R、R、xは一般式(2)と同じ。)
で表されるイソシアネート化合物と末端にヒドロキシル基を有するオリゴオキシアルキレンオールとを反応させることにより容易に得ることができる。
【0032】
具体的方法として一般式(2)で表される官能基を1つ有する化合物は、例えば、メタクリロイルイソシアナート系化合物(以下、MI類と略記する。)あるいはアクリロイルイソシアナート系化合物(以下、AI類と略記する。)とモノアルキルオリゴアルキレングリコール等とを、以下の反応式に従って1:1のモル比で反応させることにより、容易に得られる。
【0033】
【化12】
Figure 0003611716
(式中、R、R、R、R、x及びsは前記と同様。)
【0034】
また、一般式(2)で表される官能基を2以上有する化合物についても上記と同様に合成することができる。例えば、MI類あるいはAI類とオリゴアルキレングリコールとを2:1のモル比で反応させることにより一般式(2)で表される官能基を2つ有する化合物が得られ、MI類及び/またはAI類と、グリセリン等の3価アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させたトリオールとを3:1のモル比で反応させることにより一般式(2)で表される官能基を3つ有する化合物が得られ、MI類及び/またはAI類と、ペンタエリスリトール等の4価アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させたテトラオールとを4:1のモル比で反応させることにより一般式(2)で表される官能基を4つ有する化合物が得られ、MI類及び/またはAI類と、α−D−グルコピラノースにアルキレンオキサイドを付加重合させたペンタオールとを5:1のモル比で反応させることにより一般式(2)で表される官能基を5つ有する化合物が得られ、MI類及び/またはAI類と、マンニットにアルキレンオキサイドを付加重合させたヘキサオールとを6:1のモル比で反応させることにより一般式(2)で表される官能基を6つ有する化合物が得られる。
【0035】
オキシアルキレンに代えてフルオロカーボンまたはオキシフルオロカーボンを導入したい場合には、上記の2価乃至多価アルコールにおいて水素をフッ素で置換したものを用いればよい。例えば、MI類あるいはAI類と2,2,3,3−テトラフルオロ−1,4−ブタンジオールのようなジオールとを以下の反応式に従って、2:1のモル比で反応させることにより、一般式(2)で表される官能基を分子中に2個含み、これらがペルフルオロカーボンを介して結合した熱重合性化合物が得られる。
【0036】
【化13】
Figure 0003611716
【0037】
一般式(2)で表されるユニットを3つ以上有する化合物についても同様である。
【0038】
あるいはRがカーボネート基を有する基である具体的な重合性化合物としては、例えば以下の一般式で示される化合物が挙げられる。
【0039】
【化14】
Figure 0003611716
[式中、R10は炭素数1〜20の鎖状、分岐状及び/または環状の、ヘテロ原子を含んでいてもよい基を表わし、その他の記号は前記と同じ意味を表わす。]
【0040】
一般式(1)において、Rがカーボネート基を有する基を表わす重合性化合 物を合成する方法に特に制限はないが、例えば、酸クロライドと末端にヒドロキシル基を有するポリまたはオリゴカーボネートオールとを以下の工程で反応させることにより容易に得られる。
【0041】
【化15】
Figure 0003611716
式中、R、R、u及びwは前記と同じ意味を表わす。
【0042】
一般式(2)において、Rがカーボネート基を有する基を表わす重合性化合 物を合成する方法に特に制限はないが、例えば、
【化16】
Figure 0003611716
で示されるイソシアネート化合物と末端にヒドロキシル基を有するポリまたはオリゴカーボネートオールとを反応させることにより容易に得ることができる。
具体的方法として、一般式(2)で示される官能基を一つ有する化合物は、例えば、前記MI類あるいはAI類とモノアルキルポリまたはオリゴカーボネートオールとを、以下の反応の様に1:1のモル比で反応させることにより容易に得ることができる。
【0043】
【化17】
Figure 0003611716
式中、R11は炭素数1〜10の有機基を表わし、R、R、R、u、w及び xは前記と同じ意味を表わす。
【0044】
また、一般式(2)で示される官能基を二つ有する化合物は、例えば、MI類あるいはAI類とポリまたはオリゴカーボネートジオールとを以下のように2:1のモル比で反応させることにより容易に得られる。
【0045】
【化18】
Figure 0003611716
式中、R、R、R、u、w及びxは前記と同じ意味を表わす。
【0046】
また一般式(2)で表される官能基を三つ有する化合物は、例えば、MI類あるいはAI類とポリまたはオリゴカーボネートトリオールとを3:1のモル比で反応させることにより容易に得られる。
【0047】
(iii)熱重合性化合物の使用形態
本発明で用いる熱重合性化合物は、後述の熱重合開始剤の存在下、加熱により重合して高分子固体電解質を形成する。一般式(1)及び/または(2)で表される重合性官能基を有する化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また前記一般式(1)及び/または(2)で表される重合性官能基を有する重合性化合物の少なくとも一種と他の重合性化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ここで、一般式(1)または(2)で表される官能基を1つしか有さない化合物を重合してできる高分子は、架橋構造を有しておらず膜強度不足のため、薄膜にすると短絡する場合がある。したがって、一般式(1)及び/または(2)で表される官能基を2つ以上有する重合性化合物と共重合し、架橋させるか、一般式(1)及び/または(2)で表される官能基を2つ以上有する重合性化合物から得られる高分子と併用することが好ましい。これら高分子を薄膜として使用する場合、その強度を考慮して、1分子中に含まれる一般式(1)または(2)で表される官能基の数は、3つ以上がより好ましい。
【0049】
前記一般式(1)及び/または(2)で表される重合性官能基を有する重合性化合物と共重合可能な他の重合性化合物としては、特に制限はない。例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、各種ウレタンアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、炭酸ビニレン、(メタ)アクリロイルカーボネート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系化合物、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系化合物、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルアミド系化合物、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルを挙げることができる。これらの中で好ましいのは、(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレートであり、ウレタン(メタ)アクリレートが重合性という観点で特に好ましい。
【0050】
(b)熱重合開始剤
熱重合開始剤には、熱によってホモリシスを起こしラジカルを発生させる系と、2つの物質間で1電子移動反応を起こしてラジカルを発生させる2元系に大きく分類される。前者として、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが、後者としてレドックス開始剤があげられる。
【0051】
本発明においては、一般式(3)
【化19】
Figure 0003611716
[式中、Xは置換基を有してもよいアルキル基あるいはアルコキシ基、Yは置換基を有してもよいアルキル基で、それぞれ直鎖状、分岐状、環状構造のいずれからなるものでよい。但し、X、Yはそれぞれ独立であり、同じである必要はない。mおよびnはそれぞれ0または1であるが、(m,n)=(0,1)の組み合わせは除く。]で表される有機過酸化物を用いる。
【0052】
アゾ化合物、例えば、アゾビスジフェニルメタン、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等は、ラジカル発生に伴ってガスが発生し、電極上及び/または電極内部に固体電解質を複合する場合、このガスによって集電体からの電極材剥離や電極膨張など電池形状の変化や、電流特性や界面抵抗の増大やサイクル特性の劣化など電気化学的特性に悪影響を及ぼす問題があるので好ましくない。
【0053】
また、ベンゼン環を有する過酸化物、例えば、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノン系化合物等は、その加熱分解生成物がフェニル基を含むため電気化学的安定性に問題があり、電池としてのサイクル特性劣化が早いこと、また一般にその活性酸素量が半減する温度が高く、電解質や溶剤及び高分子の劣化や分解、溶剤の揮発などが起こりやすく、電気化学的特性や製造工程上の問題が起こりやすいので好ましくない。
【0054】
これに対し、上記(3)で表される重合開始剤は、電流特性の低下やサイクル特性の劣化など電気化学的問題が生じず、またガス発生に伴う集電体からの電極剥離や電極からの高分子固体電解質剥離など内部インピーダンスの上昇をもたらさないことが確認された。
【0055】
一般式(3)で表される有機過酸化物とは、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステルであり、具体的には、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが例示される。
これら有機過酸化物は、単独または任意の組み合わせで本発明に使用することができ、2種以上組み合わせて使っても差し支えない。
【0056】
重合性化合物及び/または重合性組成物の硬化を所望する場合には、その高分子固体電解質の熱安定性の問題や電極など各種構成材と複合における密着性の問題から、室温から中温での硬化が望ましい。室温から中温での硬化を所望する場合には、開始剤と還元性の促進剤を併用するか、あるいは開始剤を熱のみで分解させることが可能であるが、促進剤を併用して活性を示すものよりは、室温において単独で開裂を起こし、あるいは加熱されて初めて分解して遊離ラジカルを発生し活性を示すものが好ましい。熱のみで硬化させる場合は、その開始剤の熱分解速度を最適に選択すれば良く、これら開始剤を組み合わせることも好ましい。
【0057】
本発明の重合性組成物中は、下記式で定義される活性酸素量:
【数1】
活性酸素量(重量%)=(有機過酸化物の量/重合性組成物の量)×(16×過酸化結合の数/有機過酸化物分子量)
【0058】
すなわち有機過酸化物の構造中にある活性酸素(−O−)の原子量をその有機過酸化物の分子量で除した値に重合性組成物中に占める有機過酸化物の重量%を掛けた値が、1ppmから1000ppmであり、10から500ppmが特に好ましく、10〜150ppmがさらに好ましい。活性酸素量が過少であると反応が十分に進行しない。活性酸素量が過剰であると、開始剤によるターミネートが多く、低分子量化し易く膜の強度不足の問題、電流特性やサイクル特性の劣化など電気化学的特性に悪影響を及ぼす。
【0059】
(c)電解質
本発明で用いる電解質の種類は特に限定されるものではなく、電荷でキャリアーとしたいイオンを含んだ電解質を用いればよいが、高分子固体電解質中での解離定数が大きいことが望ましく、LiCFSO、NaCFSO、KCFS Oなどのトリフロロメタンスルホン酸のアルカリ金属塩、LiN(CFSO、LiN(CFCFSOなどのパーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩、LiPF、NaPF、KPFなどのヘキサフロロ燐酸のアルカ リ金属塩、LiClO、NaClOなどの過塩素酸アルカリ金属塩、LiBF、NaBFなどのテトラフロロ硼酸塩、LiSCN、LiAsF、LiI、 NaI、NaAsF、KI等のアルカリ金属塩などが例示される。アンモニウ ム塩としては過塩素酸テトラエチルアンモニウムなどの過塩素酸の四級アンモニウム塩、(CNBFなどのテトラフロロ硼酸の四級アンモニウム塩、(CNPFなどの四級アンモニウム塩、(CHP・BF、(CP・BFなどの4級ホスホニウム塩などが例示される。これら電解質の中では、有機 溶媒中での溶解性、イオン伝導度から、LiPF、LiBF、LiAsF、 パーフロロアルカンスルホン酸イミドのアルカリ金属塩や四級アンモニウム塩が好ましい。
【0060】
本発明の高分子固体電解質中の高分子成分[一般式(1)及び/または(2)で表される官能基を有する熱重合性化合物を重合してなる高分子及び/または該化合物を共重合成分として共重合してなる高分子]と電解質の複合比は、高分子の重量に対し、電解質0.1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%が特に好ま しい。複合に用いる電解質が50重量%以上の比率で存在すると、イオンの移動が大きく阻害され、逆に0.1重量%以下の比率では、イオンの絶対量が不足とな ってイオン伝導度が小さくなる。
【0061】
(d)非水有機溶媒
本発明の高分子固体電解質中に溶媒として非水有機溶媒が含有されていると、高分子固体電解質のイオン伝導度がさらに向上するので好ましい。使用できる非水有機溶媒としては、本発明の高分子固体電解質に用いる一般式(1)及び/または(2)で表される官能基を有する熱重合性化合物との相溶性が良好で、誘電率が大きく、沸点が70℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が適している。
【0062】
そのような溶媒としては、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のオリゴエーテル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、炭酸ビニレン等の炭酸エステル類、プロピオン酸メチルや蟻酸メチル等の脂肪族エステル類、ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、スルホラン等の硫黄化合物、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、リン酸エステル類等が挙げられる。この中で、炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類が好ましく、カーボネート類が特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上混合した混合溶媒として用いても良い。
【0063】
非水有機溶媒の含有量は、多いほどその高分子固体電解質のイオン伝導度が向上する。このため、一般的にはその含有量を増やすことが望ましいが、反面、含有量が過剰であると、硬化性や成膜性、膜の機械強度等が損なわれる。本発明の一般式(1)及び/または(2)で表される重合性官能基を含む重合性化合物と一般式(3)で表される有機過酸化物を組み合わせた重合性組成物は、有機溶媒含有量を高めても硬化性が良く成膜性や膜機械強度に優れる特徴を有するので、高分子固体電解質に用いる重合性化合物重量の200重量%以上を含有させることが可能である。特に300重量%以上がイオン伝導度など電流特性の点から好ましい。
【0064】
(e)無機微粒子
以上、本発明により製造される高分子固体電解質の構成成分を列挙したが、本発明の目的を損なわない限り、他の成分を添加することも可能である。
例えば、各種無機微粒子を添加した複合電解質としても使用でき、そうすることにより強度、膜厚均一性が改善するばかりでなく、無機微粒子と高分子間に微細な空孔が生じることになり、特に溶媒を添加した場合には空孔内にフリーの電解液が複合電解質内に分散することになり、強度改善効果を損ねることなく、逆にイオン伝導度、移動度を増加させることもできる。また、無機微粒子を添加することにより、重合性組成物の粘度が上昇し、高分子と溶媒の相溶性が不十分な場合にもその分離を抑える効果が現われる。
【0065】
使用する無機微粒子としては非電子伝導性、電気化学的に安定なものが選ばれる。またイオン伝導性で有ればさらに好ましい。具体的にはα、β、γ−アルミナ、シリカ等のイオン伝導性または非電導性セラミックス製微粒子が挙げられる。
複合高分子電解質の強度の改善、電解液保液量増加の観点から、無機微粒子は一次粒子が凝集した二次粒子構造をもつものが好ましい。このような構造を持つ無機微粒子の具体例としてはアエロジル(日本アエロジル(株)製)のようなシリカ超微粒子、アルミナ超微粒子が挙げられ、安定性、複合効率からアルミナ超微粒子が特に好ましい。
電解質中の電解質含有液の保有量を多くし、イオン伝導性、移動度を増加させるという目的では、フィラーの比表面積はできるだけ大きいことが好ましく、BET法で5m/g以上が好ましく、50m/g以上がさらに好ましい。
【0066】
このような無機微粒子のサイズとしては、重合性組成物と混合できれば特に限定はないが、平均粒径としては0.01μm〜100μmが好ましく、0.01μm〜20μmが特に好ましい。
また、形状としては球形、卵形、立方体状、直方体状、円筒ないし棒状等の種々の形状のものを用いることができる。
無機微粒子の添加量は多すぎると逆に複合電解質の強度やイオン伝導性を低下させたり、成膜しづらくなるという問題を生じる。従って好ましい添加量としては、複合電解質に対して50重量%以下が好ましく、0.1から30重量%の範囲 が特に好ましい。
【0067】
(f)配合順序
本発明の熱重合性組成物を作製するに際して、熱重合開始剤の添加順序は、特に限定されないが、好ましい例として、以下の方法を挙げることができる。
一般式(3)で表わされる熱重合開始剤は、全てまたはその一部を重合性化合物及び/または溶剤及び/または電解液及び/またはこれらを調製した重合性組成物の何れにも添加できるが、溶解性の面から電解液及び/または重合性組成物に添加することが好ましい。
ラジカル重合遅延剤を使用する場合は、重合性化合物及び/または溶剤及び/または電解液及び/またはこれらを調製した重合性組成物のいずれにも添加できるが安定性の面からは、重合性化合物に添加することが好ましい。
【0068】
[2]高分子固体電解質及びその製造方法(熱重合性組成物の重合)
上記の熱重合性組成物を加熱することにより高分子固体電解質が得られる。
熱重合性組成物の好ましい硬化条件としては、所望する成形温度、重合性化合物の種類や硬化性、溶剤の沸点などに応じて熱重合開始剤を選択し、その開始剤の活性酸素量が半分になる半減期に要する温度(半減期温度)を参考に決めることが出来る。熱重合開始剤の半減期と活性化エネルギーを目安に硬化温度と硬化速度を決めれば良く、例えば10時間半減期に要する温度で表せば、室温から100℃以下であり、特に40℃以上70℃以下が好ましい。
また、活性酸素量や活性化エネルギー及び半減期のそれぞれ異なる熱重合開始剤を任意に2種類以上組み合わせて使っても差し支えなく、本発明の目的には、これら指標をもとに、高分子イオン伝導体としての硬化反応に最も適合する開始剤、硬化条件を選ぶことが好ましい。
【0069】
一般式(3)で表される熱重合開始剤を、一般式(1)及び/または(2)で表される重合性化合物、特に式(2)のウレタン結合を有するオキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリレートモノマー混合物を用いた重合体及び電解質からなる複合体を用いたイオン伝導性の高分子固体電解質(特開平6−187822号)と組み合わせたところ、60℃15分加熱で硬化し、このイオン伝導度は、溶媒未添加でも10−4S/cm(室温)と高く、さらに溶媒を添加すると、室温またはそれより低温であっても10−3S/cm以上に改善されることが見出された。しかも、電池や電気二重層コンデンサに応用した場合、加熱によってあらかじめ系内に添加した重合開始剤からラジカルを発生させて熱重合性組成物を硬化させ、高分子固体電解質の全固体化が実現できた。
【0070】
なお、本発明の高分子固体電解質は、例えば、各種多孔性高分子フィルムと複合して複合電解質として使用し、強度改善、膜厚均一性や電極間の短絡防止を行うことも可能である。但し、使用する高分子の種類、フィルム形状、複合割合によっては電解液吸液後のセパレータとしてのイオン伝導度の低下や安定性の悪化を招くので、適したものを選ぶ必要がある。使用するフィルムとしてはポリプロピレン不織布やポリエチレン製ネットのような網状ポリオレフィンシート等が用いられ、セパレーターとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの織布、不織布、ガラス繊維、セラミックス繊維などの不織布、高分子固体電解質膜あるいはこれらの複合体が用いられる。高分子固体電解質膜及び/またはその複合体をセパレーターに用いると本発明の高分子固体電解質との接着性、密着性が良いので特に好ましい。
本発明の高分子固体電解質の使用態様に関しては、以下、電池及び電気二重層コンデンサに関連してより具体的に説明する。
【0071】
[3]電池及びその製造方法
本発明の電池として、薄膜電池の一例の概略断面図を図1に示す。図中、1は正極、2は高分子固体電解質、3は負極、4は集電体、5は絶縁性樹脂封止剤である。
本発明の電池の構成において、正極1に金属酸化物、金属硫化物、導電性高分子あるいは炭素材料のような高酸化還元電位の電極活物質(正極活物質)を用いることにより、高電圧、高容量の電池が得られる。このような電極活物質の中では、充填密度が高く体積容量密度が高くなるという点で、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化バナジウム、酸化ニッケル、酸化モリブデン等の金属酸化物、硫化モリブデン、硫化チタン、硫化バナジウム等の金属硫化物が好ましく、特に酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト等が高容量、高電圧という点から好ましい。
【0072】
この場合の金属酸化物や金属硫化物を製造する方法は特に限定されず、例えば、「電気化学」第22巻,第574頁(1954年)に記載されているような、一般的な電解法や加熱法によって製造される。また、これらを電極活物質としてリチウム電池に使用する場合、電池の製造時に、例えば、LixCoOやLixM nO等の形でLi元素を金属酸化物あるいは金属硫化物に挿入(複合)した状 態で用いるのが好ましい。このようにLi元素を挿入する方法は特に限定されず、例えば、電気化学的にLiイオンを挿入する方法や、米国特許第4,357,215号 に記載されているように、LiCO等の塩と金属酸化物を混合、加熱処理することによって実施できる。
【0073】
また柔軟で、薄膜にしやすいという点では、導電性高分子が好ましい。導電性高分子の例としては、ポリアニリン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチエニレン及びその誘導体、ポリピリジンジイル及びその誘導体、ポリイソチアナフテニレン及びその誘導体、ポリフリレン及びその誘導体、ポリセレノフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフリレンビニレン、ポリナフテニレンビニレン、ポリセレノフェンビニレン、ポリピリジンジイルビニレン等のポリアリーレンビニレン及びそれらの誘導体等が挙げられる。中でも有機溶媒に可溶性のアニリン誘導体の重合体が特に好ましい。
【0074】
本発明の電池の負極3に用いる負極活物質としては、前述のアルカリ金属、アルカリ金属合金、炭素材料、金属酸化物や金属カルコゲナイドのようなアルカリ金属イオンをキャリアーとする低酸化還元電位のものを用いることにより、高電圧、高容量の電池が得られるので好ましい。このような負極活物質の中では、リチウム金属あるいはリチウム/アルミニウム金属、リチウム/鉛合金、リチウム/アンチモン合金等のリチウム合金類が最も低酸化還元電位であるため特に好ましい。また炭素材料もリチウムイオンを吸蔵した場合、低酸化還元電位となり、しかも安定、安全であるという点で特に好ましい。リチウムイオンを吸蔵放出できる材料としては、酸化錫のような無機化合物、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法黒鉛、石油コークス、石炭コークス、ピッチ系炭素、ポリアセン、C60、C70等のフラーレン類等が挙げられる。
集電体4は電子伝導性で電気化学的に耐食性があり、できるだけ比表面積の大きい材料を用いることが好ましい。例えば、各種金属及びその燒結体、電子伝導性高分子、カーボンシート等を挙げることができる。
【0075】
本発明の電池の製造方法の一例について説明する。
正極1、負極3を本発明の熱重合性組成物より得られた高分子固体電解質膜2を介してお互いに接触しないように集電体4を含む電池構成用構造体内に入れる。次に電解液を注入含浸させ、高分子固体電解質を含む電池が得られる。また、電解液の代わりに熱重合性組成物を注入した場合は、加熱により、重合性組成物を硬化させ完全に固体化することにより、電極と均一に密着した高分子固体電解質を含む電池が得られる。その後、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂5で封止する。
また、正極と負極間にセパレータを介在させ、お互いに接触しないよう組み立てた電極間に重合性組成物を注入含浸させた後、加熱により硬化させることでも完全に固体化された電池が得られる。
【0076】
電解液もしくは重合性組成物を正極及び/又は負極に含浸させ、どちらか一方の電極上に本発明の熱重合性組成物を均一な厚みとなるように塗布後、前述した方法で熱重合することにより、電極上に均一な厚みの高分子固体電解質膜を形成する方法を採ってもよい。次いで、もう一方の電極を高分子固体電解質層に貼り合わせ、電池構成用構造体内に入れ、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂で封止することにより目的の電池を得ることもできる。
【0077】
[4]電気二重層コンデンサ及びその製造方法
次に本発明の電気二重層コンデンサについて説明する。
本発明によれば、本発明の前記高分子固体電解質を用いることにより、出力電圧が高く、取り出し電流が大きく、あるいは加工性、寿命、信頼性に優れた電気二重層コンデンサが提供される。
【0078】
本発明の電気二重層コンデンサの一例の概略断面図を図2に示す。この例は、大きさ約1cm×1cm、厚み約0.5mmの薄型セルで、7は集電体であり、集 電体の内側には一対の分極性電極6が配置されており、その間に高分子固体電解質膜8が配置されている。9は絶縁性樹脂封止剤、10はリード線である。
【0079】
分極性電極6は、炭素材料等の分極性材料からなる電極であれば良く、比表面積が大きければ特に制限はない。比表面積の大きいほど電気二重層の容量が大きくなり好ましい。例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック(アセチレンブラックを含む)、チャンネルブラック等のカーボンブラック類や、椰子がら炭等の活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、気相法で製造したいわゆる熱分解黒鉛、ポリアセン及びC60、C70を挙げることができる。
集電体7は電子伝導性で電気化学的に耐食性があり、できるだけ比表面積の大きい材料を用いることが好ましい。例えば、各種金属及びその燒結体、電子伝導性高分子、カーボンシート等を挙げることができる。
電気二重層コンデンサの形状としては、図2のようなシート型のほかに、コイン型、あるいは分極性電極、高分子固体電解質のシート状積層体を円筒状に捲回し、円筒管状のコンデンサ構成用構造体に入れ、封止して製造された円筒型等であっても良い。
【0080】
本発明の電気二重層コンデンサに用いる電解質の種類は特に限定されるものではなく、電荷キャリアーとしたいイオンを含んだ化合物を用いればよいが、高分子固体電解質中での解離定数が大きく、分極性電極と電気二重層を形成しやすいイオンを含むことが望ましい。このような化合物としては、(CHNBF、(CHCHNClO等の4級アンモニウム塩、AgClO等の遷移金属塩、(CHPBF等の4級ホスホニウム塩、LiCFSO、LiPF、LiClO、LiI、LiBF、LiSCN、LiAsF、Li(CFSO、NaCFSO、NaPF、NaClO、NaI、NaBF、NaAsF、KCFSO、KPF、KI等のアルカリ金属塩、パラトルエンスルホン酸等の 有機酸及びその塩、塩酸、硫酸等の無機酸等が挙げられる。この中で、出力電圧が高く取れ、解離定数が大きいという点から、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、アルカリ金属塩が好ましい。4級アンモニウム塩の中では、(CHCH)(CHCHCHCHNBFのような、アンモニウムイオンの窒素上の置換基が異なっているものが、高分子固体電解質への溶解性あるいは解離定数が大きいという点から好ましい。
【0081】
次に本発明の電気二重層コンデンサの製造方法の一例について説明する。
2個の分極性電極6を本発明の熱重合性組成物より得られた高分子固体電解質膜8を介してお互いに接触しないように集電体7を含む電気二重層コンデンサ構成用構造体内に入れる。次に電解液または重合性組成物を注入した後、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂9で封止することにより目的の電気二重層コンデンサを得ることができる。なお、熱重合性組成物を注入した場合には加熱により重合させることによって本発明の高分子固体電解質で完全に固体化された電気二重層コンデンサが得られる。
【0082】
なお、前記電気二重層コンデンサ構成用構造体あるいは前記支持体はSUS等の金属、ポリプロピレン、アルミラミネート熱融着樹脂、ポリイミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、あるいは導電性あるいは絶縁性ガラス等のセラミックス材料であればよいが、特にこれらの材料からなるものに限定されるものではなく、また、その形状は、筒状、箱状、シート状その他いかなる形状でもよい。
【0083】
【実施例】
以下に本発明について代表的な例を示しさらに具体的に説明する。なお、これらは説明のための単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
【0084】
実施例1:熱重合性化合物(化合物3)の合成
下記の反応式にしたがい、グリセリンエステルである化合物1とイソシアネート基を有するメタクリレートである化合物2とを反応させ、以下の手順により、熱重合性化合物(化合物3)を得た。
【0085】
【化20】
Figure 0003611716
【0086】
すなわち、化合物1(KOH価34.0mg/g、p/q=7/3)50.0gと低水分のジメチルカーボネート20gの混合物を、80℃、真空度3mmHgで減圧共沸させ、ジメチルカーボネートとともに水を留去して、50gの低水分の化合物1を得た。カールフィッシャー法により化合物1の水分を測定したところ30ppmであった。次にこの低水分の化合物1(50g)及び化合物2(4.6g) を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(100ml)に溶解した後、0.44gのジブチルチンジラウレートを添加した。その後、15℃で約25時間反応させることにより、無色の粘稠液体を得た。H−NMR、C−NMRから化合物1と化 合物2が1対3で反応し、赤外吸収スペクトルからイソシアナート基の吸収が消失しウレタン結合が生成し、化合物3が生成していることがわかった。
【0087】
実施例2:熱重合性組成物の調製
化合物3(1.0g)と1.3gのジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)1.7g、0.50gのLiPF及び熱重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド(商品名パーロイルL、日本油脂(株)製)2.7mgをアルゴン 雰囲気中でよく混合し、高分子固体電解質用重合性組成物を得た。
この組成物をアルゴン雰囲気下、フッ化カルシウム板(直径2mm、1mm厚)2枚の間に挟み込み、赤外吸収スペクトル測定用セルを作製した。この際、クリアランスを確保するために、5μm厚のポリイミドフィルムの型枠を用いた。次に、このセルを温度調製付きホットステージ(メトラー社製、ホットステージFP82型)にセットし、FT−IR装置(日本分光(株)製、バロアー3型)を用いて、セルを加熱しながら赤外吸収スペクトルを測定し、1630cm−1付近の不飽和結合に相当するピーク面積から、残存2重結合の定量を行った。図3に、加熱曲線と残存2重結合の減少曲線を記す。80℃10分加熱により、残存2重結合は定量限界の0.1%以下であった。
【0088】
実施例3:高分子固体電解質膜Aの調製
化合物3(1.0g)と1.3gのジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)1.7g、0.50gのLiPF及び熱重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(商品名パーロイルTCP、日本油脂(株)製)4.5mgをアルゴン雰囲気中でよく混合し、高分子固体 電解質用重合性モノマー溶液を得た。
次に調製した高分子固体電解質用重合性モノマー溶液にアルゴン雰囲気下、無機微粒子としてアルミニウムオキサイドC(二次粒子平均粒径約0.2μm、日本 アエロジル(株)製、比表面積約100m/g)を0.27g添加し、5分間撹拌 混合することにより、乳白色の無機微粒子入り高分子固体電解質用重合性組成物Aを得た。
この組成物Aをアルゴン雰囲気下、ポリプロピレン(PP)フィルム上に30μm厚に塗布した後さらにPPフィルムを被せ、このPPフィルム一対をさらに1.1mm厚のガラス板2枚間に挟み込んだ。次にこのガラス板組を65℃で30 分加熱した後、ガラス板とPPフィルムを剥離したところ、高分子固体電解質膜Aが約30μmの薄い白濁色の自立膜として得られた。
このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、3×10−3、1.0×10−3S/cmであった。
【0089】
実施例4:高分子固体電解質膜Bの調製
化合物3(1.0g)と2.6gのジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)3.4g、1.0gのLiPF及び熱重合開始剤としてビス(4− t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(商品名パーロイルTCP、日本油脂(株)製)8.0mgをアルゴン雰囲気中でよく混合し、高分子固体 電解質用重合性モノマー溶液を得た。
次に調製した高分子固体電解質用重合性モノマー溶液にアルゴン雰囲気下、無機微粒子としてアルミニウムオキサイドC(二次粒子平均粒径約0.2μm、日本 アエロジル(株)製、比表面積約100m/g)を0.40g添加し、5分間撹拌 混合することにより、乳白色の無機微粒子入り高分子固体電解質用重合性組成物Bを得た。
この組成物Bを、実施例3と同様な方法で65℃30分加熱硬化させ、高分子固体電解質膜Bを約30μmの薄い白濁色の自立膜として得た。
このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、4.3×10−3、1.5×10−3S/cmであった。
【0090】
実施例5:高分子固体電解質膜Cの製造
化合物3(1.0g)と4.3gのジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)5.7g、1.5gのLiPF及び1,1,3,3−テトラメチル ブチルパーオキシネオデカノエート(商品名パーオクタND、日本油脂(株)製)10mgをアルゴン雰囲気中でよく混合し、高分子固体電解質用重合性モノマー溶液を得た。
次に調製した高分子固体電解質用重合性モノマー溶液にアルゴン雰囲気下、無機粒子としてアルミニウムオキサイドC(二次粒子平均粒径約0.2μm、日本ア エロジル(株)製、比表面積約100m/g)を0.55g添加し、5分間撹拌混 合することにより、乳白色の無機微粒子入り高分子固体電解質用重合性組成物Cを得た。
この組成物Cを、実施例3と同様な方法で60℃2時間加熱硬化させ、高分子固体電解質膜Cを得た。
このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、4.3×10−3、1.5×10−3S/cmであった。
【0091】
実施例6:コバルト酸リチウム正極の製造
11gのLiCOと24gのCoを良く混合し、酸素雰囲気下、800℃で24時間加熱後、粉砕することによりLiCoO粉末を得た。このLiC oO粉末とアセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを重量比8:1:1で 混合し、さらに過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、ゲル状組成物を得た。この組成物を約50μmのアルミ箔上に、約75μmの厚さになるように塗布加圧成形し、コバルト酸リチウム正極シートを得た。このシートを36mm角に切断し、電池用の正極とした。
【0092】
実施例7:黒鉛負極の製造
大阪ガス(株)製MCMB黒鉛、昭和電工(株)製気相法黒鉛繊維(平均繊維径:0.3μm,平均繊維長:2.0μm,2,700℃熱処理品)、ポリフッ化ビニリデ ンの重量比8.6:0.4:1.0の混合物に過剰のN−メチルピロリドン溶液を加え、 ゲル状組成物を得た。この組成物を約100μmの銅箔上に約85μmの厚さに塗布加圧成形し、黒鉛負極シートを得た。このシートを40mm角に切断し、電池用の負極とした。
【0093】
実施例8:全固体Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例7で製造したシート状の黒鉛負極電極(40mm角)を実施例5で調製した重合性組成物C中に静置し含浸させた後、余計な負極上の組成物Cをキムワイプ(商品名)で拭き取った。この負極上に実施例5で調製した重合性組成物Cを1ミルのアプリケータを用いて25μmに塗布した。この塗布物の上にPPフイルムさらに0.7mm厚のガラス板を被 せて、これを温度調製器付きホットプレート上で65℃30分加熱して、負極上に高分子固体電解質層を形成させた。
次いで、PPフィルムとガラス板を剥がし、この複合負極に実施例4で調製した組成物Bをあらかじめ含浸させた実施例6で製造したコバルト酸リチウム正極を貼り合わた。これをPP/Al/PET3層ラミネートで作製した袋(外装体)に入れ、両面から1.1mm厚のガラス板を用いて加圧しながら65℃30分加 熱し、電極間に高分子固体電解質が複合された電池を得た。
この電池を、25℃及び10℃で、作動電圧2.75〜4.1V、電流7mAで充放 電したところ、最大放電容量は29mAh、27mAhであった。その際、充放電時の電流をモニターしたところ、充放電電流以外に、未硬化物や開始剤分解物由来の反応電流は観測されなかった。また、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、充 電7mA、放電35mAで充放電を繰り返したところ、300サイクルを越えても容量の極端な低下は見られず初期容量の70%以上であった。
【0094】
実施例9:全固体Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例7で製造したシート状の黒鉛負極電極及び実施例6で製造したシート状のコバルト酸リチウム正極及び38mm角のポリオレフィンマイクロポーラスフィルムを実施例5で調製した重合性組成物C中に静置し含浸させた後、この正極と負極を、ポーラスフィルムを介在させて貼り合わせた。この際、ポーラスフィルムが正極のエッジ(4辺)からそれぞれ若干はみ出すよう貼り合わせた。これをPP/Al/PET3層ラミネートで作製した袋(外装体)に入れ、両面から1.1mm厚のガラス板を用いて加圧しなが ら60℃2時間加熱し、電極間に高分子固体電解質が複合された電池を得た。
この電池を、25℃及び10℃で、作動電圧2.75〜4.1V、電流7mAで充放 電したところ、最大放電容量は30mAh、28mAhであった。その際、充放電時の電流をモニターしたところ、充放電電流以外に、未硬化物や開始剤分解物由来の反応電流は観測されなかった。また、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、充 電7mA、放電35mAで充放電を繰り返したところ、300サイクルを越えても容量の極端な低下は見られず初期容量の70%以上であった。
【0095】
実施例10:全固体Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例7で製造したシート状の黒鉛負極電極及び実施例6で製造したシート状のコバルト酸リチウム正極を実施例5で調製した重合性組成物C中に静置し含浸させた後、この正極と負極を、実施例3で製造した高分子固体電解質Aを介在させて貼り合わせた。この際、高分子固体電解質膜Aが正極のエッジ(4辺)からそれぞれ若干はみ出すよう貼り合わせた。これをPP/Al/PET3層ラミネートで作製した袋(外装体)にいれ、両面から1.1mm厚のガラス板を用いて加圧しながら60℃2時間加熱し、電極間 に高分子固体電解質膜が複合された全固体電池を得た。
この電池を、25℃及び10℃で、作動電圧2.75〜4.1V、電流7mAで充放 電したところ、最大放電容量は28mAh、26mAhであった。その際、充放電時の電流をモニターしたところ、充放電電流以外に、未硬化物や開始剤分解物由来の反応電流は観測されなかった。また、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、充 電7mA、放電35mAで充放電を繰り返したところ、300サイクルを越えても容量の極端な低下は見られず初期容量の70%以上であった。
【0096】
実施例11:Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例7で製造したシート状の黒鉛負極電極(40mm角)を、1モルのLiPF塩を含むエチレンカーボネートと ジエチルカーボネートの混合(1:1容積比)電解液に静置し含浸させた後、余計な負極上の電解液をキムワイプ(商品名)で拭き取った。この負極上に実施例4で調製した重合性組成物Bを1ミルのアプリケータを用いて25μmに塗布した。この塗布物の上にPPフイルムさらに0.7mm厚のガラス板を被せて、これ を温度調製器付きホットプレート上で65℃30分加熱して、負極上に高分子固体電解質層を形成させた。
次いで、PPフィルムとガラス板を剥がし、この複合負極に実施例5で調製した組成物Cをあらかじめ含浸させた実施例6で製造したコバルト酸リチウム正極を貼り合わた。これをPP/Al/PET3層ラミネートで作製した袋(外装体)に入れ、両面から1.1mm厚のガラス板を用いて加圧しながら65℃30分加 熱し、電極間に高分子固体電解質が複合された電池を得た。
この電池を、25℃及び10℃で、作動電圧2.75〜4.1V、電流7mAで充放 電したところ、最大放電容量は28mAh、26mAhであった。その際、充放電時の電流をモニターしたところ、充放電電流以外に、未硬化物や開始剤分解物由来の反応電流は観測されなかった。また、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、充 電7mA、放電35mAで充放電を繰り返したところ、300サイクルを越えても容量の極端な低下は見られず初期容量の70%以上であった。
【0097】
実施例12:全固体電気二重層コンデンサの製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、活性炭電極(14mg)1cm×1cmに実施例5で調製した組成物Cを含浸した電極を2個用意した。次に、実施例3で製造した高分子固体電解質膜Aを介在させて前記2枚の電極を貼り合わせた。さらに電極リード線を接合したAl箔集電体(厚み50μm,大きさ1cm×1cm)を貼り合わせ、コンデンサ端部をエポキシ樹脂で封止後、80℃で30分加熱することにより、図2に示すような電気二重層コンデンサを製造した。
このコンデンサを、作動電圧0〜2.0V、電流0.2mAで充放電を行なったところ、最大容量は430mFであった。また、この条件で充放電を50回繰り返してもほとんど容量に変化はなかった。
【0098】
比較例1:ベンゼン環含有化合物過酸化物を用いた全固体Liイオン二次電池の製造
熱重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの代わりにベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBW、日本油脂(株)製)4.5mgを用いたほかは実施例3と同様にして高分子固体電解質D を調製し、これを実施例10と同様にアルゴン雰囲気グローブボックス内で、シート状黒鉛負極電極(実施例7)及びシート状コバルト酸リチウム正極(実施例6)を重合性組成物D(固体電解質Dを硬化する前の液体)中に静置し含浸させた後、この正極と負極を、高分子固体電解質Dを介在させて貼り合わせた。この際、高分子固体電解質膜Dが正極のエッジ(4辺)からそれぞれ若干はみ出すよう貼り合わせた。これをPP/Al/PET3層ラミネートで作製した袋(外装体)に入れ、両面から1.1mm厚のガラス板を用いて加圧しながら60℃2時間 加熱し、電極間に高分子固体電解質膜が複合された全固体電池を得た。
この電池を、25℃及び10℃で、作動電圧2.75〜4.1V、電流7mAで充放 電したところ、最大放電容量は28mAh、26mAhであった。その際、充放電時の電流をモニターしたところ、充放電電流以外に、4.1V定電圧充電時に未 硬化物や開始剤分解物由来の微少な反応電流が観測された。また、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、充電7mA、放電35mAで充放電を繰り返したところ、1 00サイクルを越えると容量が低下し初期容量の50%以下となった。
【0099】
比較例2:オキシアルキレン構造を含まない高分子固体電解質膜Eの調製
化合物3に代えてグリセロールと1,12−ドデカンジオールから合成した下記式
【0100】
【化21】
Figure 0003611716
【0101】
で示される1,2,3−トリ(ヒドロキシドデシルオキシ)プロパントリメタクリレート(オキシアルキレン構造を含まないアクリレート化合物)1.0gを用い た他は実施例3と同様にして高分子固体電解質用重合性モノマー溶液を得た。
次に調製した高分子固体電解質用重合性モノマー溶液にアルゴン雰囲気下、無機微粒子としてアルミニウムオキサイドC(二次粒子平均粒径約0.2μm、日本 アエロジル(株)製、比表面積約100m/g)を0.27g添加し、5分間撹拌 混合することにより、乳白色の無機微粒子入り高分子固体電解質用重合性組成物Eを得た。
この組成物Eをアルゴン雰囲気下、ポリプロピレン(PP)フィルム上に30μm厚に塗布した後さらにPPフィルムを被せ、このPPフィルム一対をさらに1.1mm厚のガラス板2枚の間に挟み込んだ。次にこのガラス板組を65℃で3 0分加熱した後、ガラス板とPPフィルムを剥離したところ、高分子固体電解質膜Eが約30μmの薄い白濁色の自立膜として得られた。
このフィルムの25℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、1×10−4S/cmであり、液がしみ出しやすかった。
【0102】
実施例13:化合物4の合成
【化22】
Figure 0003611716
【0103】
上式に従い、常法で1,3−プロパンジオールに窒素下、10℃以下で過剰のホスゲンガスを吹き込み、約5時間反応させ、化合物4を合成した。同定はGC−MSで行なった。
【0104】
実施例14:化合物4のオリゴマー化(化合物5の合成)
【化23】
Figure 0003611716
【0105】
上式に従い、常法で実施例13で合成した化合物4と1,3−プロパンジオールとを、ピリジン存在下、25℃以下、ジクロロメタン中で約6時間反応させた後、過剰の水を加え、残クロロホルメート末端を水酸基化し、両末端に水酸基を有するオリゴカーボネート(化合物5)を合成した。
GPC分析により求めた、重量平均分子量(Mw)、平均繰り返し数zは以下の通りであった。
Mw:〜約1200、z:〜約10。
【0106】
実施例15:重合性化合物6の合成
【化24】
Figure 0003611716
【0107】
化合物5(平均分子量1200)(60.0g)及び化合物2(15.5g)を窒素雰囲気中でよく精製したTHF(200ml)に溶解した後、ジブチルチンジラウレート(0.44g)を添加した。その後、25℃で約15時間反応させることにより、無色生成物を得た。そのH−NMR、IR及び元素分析の結果から、化合物5 と化合物2は1対2で反応し、化合物2のイソシアナート基が消失し、ウレタン結合が生成しており、化合物6が生成していることがわかった。
【0108】
実施例16:高分子固体電解質膜Fの製造
化合物6(1.0g)と4.3gのジエチルカーボネート(DEC)、エチレンカーボネート(EC)5.7g、1.5gのLiPF及び商品名パーオクタND(日本油 脂(株)製)10mgをアルゴン雰囲気中でよく混合し、高分子固体電解質用重合性モノマー溶液を得た。
この組成物Fを、実施例3と同様な方法で60℃2時間加熱硬化させ、高分子固体電解質膜Fを得た。
このフィルムの25℃、−10℃でのイオン伝導度をインピーダンス法にて測定したところ、それぞれ、5.3×10−3、1.7×10−3S/cmであった。
【0109】
実施例17:全固体Liイオン二次電池の製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、実施例7で製造したシート状の黒鉛負極電極及び実施例6で製造したシート状のコバルト酸リチウム正極及び38mm角のポリオレフィンマイクロポーラスフィルムを実施例16で調製した重合性組成物F中に静置し含浸させた後、この正極と負極を、ポーラスフィルムを介在させて貼り合わせた。この際、ポーラスフィルムが正極のエッジ(4辺)からそれぞれ若干はみ出すよう貼り合わせた。これをPP/Al/PET3層ラミネートで作製した袋(外装体)にいれ、両面から1.1mm厚のガラス板を用いて加圧し ながら60℃2時間加熱し、電極間に高分子固体電解質が複合された電池を得た。
この電池を、25℃及び10℃で、作動電圧2.75〜4.1V、電流7mAで充放 電したところ、最大放電容量は33mAh、30mAhであった。その際、充放電時の電流をモニターしたところ、充放電電流以外に、未硬化物や開始剤分解物由来の反応電流は観測されなかった。また、25℃で作動電圧2.75〜4.1V、充 電7mA、放電35mAで充放電を繰り返したところ、300サイクルを越えても容量の極端な低下は見られず初期容量の75%以上であった。
【0110】
実施例18:全固体電気二重層コンデンサの製造
アルゴン雰囲気グローブボックス内で、活性炭電極(14mg)1cm×1cmに実施例16で調製した組成物Fを含浸した電極を2個用意した。次に、実施例16で製造した高分子固体電解質膜Fを介在させて前記2枚の電極を貼り合わせた。さらに電極リード線を接合したAl箔集電体(厚み50μm,大きさ1cm×1cm)を貼り合わせ、コンデンサ端部をエポキシ樹脂で封止後、80℃で30分加熱することにより、図2に示すような電気二重層コンデンサを製造した。
このコンデンサを、作動電圧0〜2.0V、電流0.2mAで充放電を行なったところ、最大容量は450mFであった。また、この条件で充放電を50回繰り返してもほとんど容量に変化はなかった。
【0111】
【発明の効果】
本発明の高分子固体電解質用熱重合性組成物は、電流特性やサイクル特性など電気化学的に安定性が高い熱重合性開始剤及び重合性の非常に良好な特定の重合性化合物を用いており、少ない開始剤添加量において室温から中温でも重合が完全に進み、電池や電気二重層コンデンサの安定性に悪影響を及ぼさない硬化性の優れた重合性組成物である。
本発明の高分子固体電解質は、上記熱重合性組成物から得られる架橋及び/または側鎖基を有する高分子及び電解質を含む高イオン伝導性で残存二重結合や残存副生成物が少ない安定性の良好な高分子固体電解質である。
本発明の電池は、上記高分子固体電解質を用いることにより薄膜化が容易であり、さらに正極及び/または負極及び/またはセパレータの各要素と簡便に複合化できることで、高容量及び高電流で作動でき、高寿命で信頼性に優れる。
また、本発明の電池は、全固体型としては高容量及び高電流で作動でき、あるいはサイクル性が良好で、安全性と信頼性に優れた電池であり、ポータブル機器用主電源、バックアップ電源をはじめとする電気製品用電源、電気自動車用、ロードレベリング用大型電源として使用可能である。また、薄膜化が容易にできるので、身分証明書用カード等のペーパー電池としても使用できる。
本発明の電気二重層コンデンサは上記高分子固体電解質を用いたことにより、出力電圧が高く、取り出し電流が大きく、加工性が良好で、高寿命で信頼性に優れる。
さらに、本発明の電気二重層コンデンサは、従来の全固体型コンデンサと比較して、高電圧、高容量、高電流で作動でき、あるいはサイクル性が良好で、安全性、信頼性に優れた全固体電気二重層コンデンサである。このため、バックアップ電源だけでなく、小型電池との併用で、各種電気製品用電源として使用可能である。また、薄膜化等の加工性に優れており、従来の固体型電気二重層コンデンサ以外の用途にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電池の一態様を示す薄型固体電池の模式的断面図。
【図2】本発明による固体電気二重層コンデンサの一態様を示す模式的断面図。
【図3】本発明による熱重合性組成物の加温と残存2重結合の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1 正極
2 高分子固体電解質
3 負極
4 集電体
5 絶縁性樹脂封止剤
6 分極性電極
7 集電体
8 高分子固体電解質
9 絶縁性樹脂封止剤
10 リード線

Claims (14)

  1. 重合することにより架橋及び/または側鎖形構造を有する高分子となる重合性官能基を有する少なくとも一種の熱重合性化合物、少なくとも一種の電解質、少なくとも一種の重合開始剤、及び少なくとも一種の無機微粒子を含む熱重合性組成物であって、
    熱重合性化合物が以下の一般式(1)及び/または一般式(2)
    Figure 0003611716
    [式中、R1及びR3は水素またはアルキル基を表わし、R2及びR5はオキシアルキレン、フルオロカーボン、オキシフルオロカーボン及び/またはカーボネート基を含む2価の基、R4は炭素数10以下の2価の基を表わす。R2、R4及びR5はヘテロ原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状または環状のいずれの構造を有するものでもよい。xは0または1〜10の整数を示す。但し、同一分子中に複数個の上記一般式(1)または(2)で表される重合性官能基が含まれる場合、それぞれの重合性官能基中のR1、R2、R3、R4、R5及びxは、同一でもよいし異なってもよい。]で表される重合性官能基を2つ以上有する化合物を含んでおり、
    重合開始剤が以下の一般式(3)
    Figure 0003611716
    [式中、Xは置換基を有してもよいアルキル基またはアルコキシ基を表わし、Yは置換基を有してもよいアルキル基を表わす。X及びYは、直鎖状、分岐状または環状のいずれの構造を有するものでもよい。m、nはそれぞれ0または1であるが、(m,n)=(0,1)の組み合わせは除く。]で表される有機過酸化物であり、
    無機微粒子の平均粒径が0.005〜100μmであることを特徴とする熱重合性組成物。
  2. 有機過酸化物が、ベンゼン環を含まない、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類から選ばれる請求項1に記載の熱重合性組成物。
  3. 有機過酸化物の活性酸素量が熱重合組成物に対して10〜150ppmであり、その活性酸素量の10時間半減期を得るための温度が40℃以上70℃以下である請求項1または2に記載の熱重合性組成物。
  4. 重合性組成物が、さらに炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類、ラクトン類、スルホキシド類、アミド類から選ばれる少なくとも一種の非水有機溶媒を含み、該有機溶媒の含有量が熱重合性化合物に対して300重量%以上である請求項1乃至3のいずれかの項に記載の熱重合性組成物。
  5. 電解質が、アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、遷移金属塩、プロトン酸から選ばれる少なくとも一種である請求項1乃至4のいずれかの項に記載の熱重合性組成物。
  6. 少なくとも一種の電解質がLiPF6及び/またはLiBF4及び/またはLiAsF6及び/またはLiN(A−SO22(式中、Aは炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基を表わす。)である請求項5に記載の熱重合性組成物。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の熱重合性組成物を熱重合することによって得られる高分子固体電解質。
  8. 請求項7に記載の高分子固体電解質、及び電極活物質または分極性材料を含むことを特徴とする電池用または電気二重層コンデンサ用電極。
  9. 請求項7に記載の高分子固体電解質を用いることを特徴とする電池。
  10. 電池の負極がリチウム、リチウム合金またはリチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料またはリチウムイオンを吸蔵放出できる無機化合物からなる請求項9に記載の電池。
  11. 電池の正極が導電性高分子、金属酸化物、金属硫化物、及び/または炭素材料からなる請求項9に記載の電池。
  12. 請求項7に記載の高分子固体電解質を用いることを特徴とする電気二重層コンデンサ。
  13. 請求項1乃至6のいずれかに記載の熱重合性組成物の少なくとも一種を電池構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、加熱して熱重合性組成物を硬化することを特徴とする電池の製造方法。
  14. 請求項1乃至6のいずれかの項に記載の熱重合性組成物の少なくとも一種を電気二重層コンデンサ構成用構造体内に入れ、または支持体上に配置した後、加熱して熱重合性組成物を硬化することを特徴とする電気二重層コンデンサの製造方法。
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