JP3610042B2 - 低分子量pvdf/hfp樹脂から作られたelパネル - Google Patents

低分子量pvdf/hfp樹脂から作られたelパネル Download PDF

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Description

【0001】
本発明の背景
本発明は、エレクトロルミネセント(EL)ランプに関し、そして特に、PVDF/HFP樹脂から作られたELパネルに関する。本明細書で用いられる、EL“パネル”は、一つまたはそれ以上の発光領域を含む単一の基材であり、各発光領域がEL“ランプ”である。
【0002】
ELランプは、基本的には、二つの伝導性電極(その一つは透明である)の間に誘電体層を有するキャパシタ(capacitor) である。この誘電体層は、発光体(phosphor)粉末を含むかまたは、その誘電体層と一つの電極の間に発光体粉末の分離層が存在するかのいずれかである。この発光体粉末が、極く弱い電流を用いる強い電場の存在下で光を放射する。
【0003】
最近(1990以降)のELランプは、普通、厚さ約7.0 ミル(0.178mm) のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、PET)あるいはポリカーボネートの透明な基板を含む。この基板の上に、インジウム・スズオキシド(ITO)の透明なフロント電極が1000オングストロームまたはその程度の厚さまで真空蒸着される。このフロント電極の上に、発光体の層がスクリーン印刷され、そしてその発光体層の上に誘電体層がスクリーン印刷される。リア電極が、その誘電体層の上にスクリーン印刷される。リア絶縁層が、スクリーン印刷層の形または接着性被膜を有するテープの形で付加されてもよい。
【0004】
スクリーン印刷に用いられるインキは、バインダー、溶媒および充填剤を含んでおり、その充填剤が、この印刷された層の性質を決める。典型的な溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAC)である。バインダーは、標準的には、ポリフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン(PVDF/HFP)のようなフッ素樹脂、ポリエステル、ビニル樹脂またはエポキシ樹脂である。発光体層は、普通、米国特許第5,418,062号[バッド(Budd)]に説明されているように、溶媒、バインダーおよびドープされた硫化亜鉛発光体粒子を含むスラリー(インキ)からスクリーン印刷される。誘電体層は、普通、溶媒、バインダーおよびチタン酸バリウム(BaTiO )粒子を含むスラリー(インキ)からスクリーン印刷される。
【0005】
リア(不透明)電極は普通、溶媒、バインダーおよび、銀、炭素あるいは黒鉛またはそれらの混合物のような導電性粒子、を含むスラリー(インキ)からスクリーン印刷される。各層用の溶媒とバインダーが、化学的に同じ物であるか、または類似物である場合には化学的相溶性があり、そして隣接層の間の接着は良好である。それぞれの層は、例えば、スクリーン印刷またはロールコーティングにより塗布され、次いで、硬化または乾燥される。
【0006】
概説すると、ELランプの製造それ自身は簡単なように見える。残念ながら、事情を複雑にする二三の些細な問題がある。銀は、フロント電極からリア電極に向かって移行する傾向があり、ランプ中の黒ハン(black spots) またはショート(short:短絡)の原因になる。かくして、高温で高湿度の厳しい環境条件に曝されることがある高性能ELランプでは、銀は、リア電極用よりも、そのランプ領域から離れた位置にあるバスバー(bus bars)用に用いられている。
【0007】
銀ベースのリア電極は、炭素ベースのリア電極より抵抗が小さい。従って、銀を排除すると、炭素リア電極では大面積ランプの面を横断しての明るさが不均一になるので、ELパネルの面積が限定される傾向にある。パネルのペリメータの回りに銀のバスバーを取付けると、或る程度の助けにはなるが、パネルの中長もしくは最長寸法を横断するバスバーを取付けた場合には程遠い。しかも、このバスバーからの銀は、従来技術のランプ材料を用いているリア電極を通り抜けてマイグレーションするであろう。
【0008】
大半のELランプは、例えばロールコーティングによって連続的に製造されるよりは、むしろバッチ方式で製造される。いずれの方法でも材料の層は、普通、そのインキに溶ける樹脂(バインダー)の量が少ないことに因り、二つまたは三つの逐次層を形成している。若し一つの層がワンパス(single pass) で作製できるなら、製造速度は、有意に速くなるに違いなく、そして必要な装置の量も減るであろう。
【0009】
最近は、異なる用途のランプは、各層で異なる材料を必要とする。例えば自動車用の仕様は、腕時計の中のランプ用の仕様とは全く異なる。自動車用ランプでの機械的必要条件は、腕時計の中のランプ用より遥かに厳しい。自動車用用途では、そのランプ材料は、軟化温度が高いのが望ましい。残念ながら、そのような材料は、一般に、それがELランプ用として望ましくなくなるような他の性質(例えば、小さい溶解性)を有している。小さい溶解性は、その層が数工程(several passes)で作製されなければならないことを意味し、余分の加工工程がパネルのコストに追加される。
【0010】
ITO‐被覆基板は、高温でその基板が収縮するので、温度に敏感である。多くのランプパネルで、この基板は、後の高温(150℃)での硬化操作に対してその基板を安定化するために“予備収縮”される。それ故、 ITO‐被覆基板を予備収縮する必要を無くすために、フィルム形成温度が低いことが極めて望ましい。低いフィルム形成温度を有する多くの材料は、それら材料の他の特性のために、ELランプ用に望ましくない。
【0011】
もう一つの問題は、 ITOが存在している領域内、および ITOが除去された他の領域内での基板への接着である。これらの問題は、シロキサン:例えば、Dow Corning Z6040 のような接着促進剤の添加により克服できる。接着を改善するために、インキにアクリル系樹脂を添加することも知られている。ポリメタクリル酸メチル重合体(PMMA)およびポリメタクリル酸エチル(PEMA)共重合体が、PVDF‐含有樹脂と相溶性である。接着促進剤を塗布するかまたは含有させる余分の加工工程およびその添加される材料は、パネルのコストを増大させる。
【0012】
前述の任意の一つの問題を、現存の材料より、うまく解決する材料が、この技術分野で最も歓迎されるに違いない。特別のタイプのPVDF/HFP共重合体が、前述の全ての問題を解決することが見いだされた。
【0013】
前述のことを考慮に入れて、本発明の一つの目的は、多様な市場、例えば、自動車、通信機器および測時機器を指向するELパネル用の単一構造物を提供することである。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、完全な層がワンパスで形成されるELパネル製造用のインキを提供することである。
本発明のさらなる目的は、素晴らしい環境適応性能を示す一方で、導電性を改善するための銀を含むリア電極を有するELパネルを提供することである。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、そのインキが先行層の前処理もしくは、インキへの接着促進剤の添加を必要としないような、ELパネル製造用のインキを提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、そのインキが素晴らしい高温環境特性を保持しながら、 ITO‐被覆基板の予備収縮を必要としない、ELパネル用インキを提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、そのランプの少なくとも一つの層が低分子量のPVDF/HFP共重合体樹脂バインダーを含む、改良されたELランプを提供することである。
【0018】
本発明の概要
前述の目的は、ELパネルが、実質的に橋架けされていない形であり、DMAC溶媒および/または他の高沸点溶媒/潜在性溶媒(latent solvents)/稀釈剤を含む、PVDF/HFP共重合体樹脂バインダーで作られるところの本発明により達成される。この樹脂バインダーは、工業規格試験法(ASTM D3835)で求めた溶融粘度が 1.0−8.5kP(キロポイズ)であることを特徴とする。この粘度は、従来技術で他の用途に用いられているPVDF/HFP共重合体樹脂の粘度より小さい。
【0019】
添付した図面と組合せて、以下の詳細な説明に配慮することにより本発明のより完全な理解が得られるであろう。
本発明の詳細な説明
図1は、本発明の方法に従って組立てられたELランプの断面図である。これらの数層は、比例して、あるいは案分比例で示されてはいない。ランプ10は、ポリエステルあるいはポリカーボネート材料の透明な基板11を含む。透明電極12が基板11を覆っており、そしてインジウム・スズオキシドを含む。発光体層16が電極12を覆っており、そして誘電体層15が、その発光体層を覆っている。この発光体層と誘電体層は、引用番号13で示されているように、一緒になって単一の層になっていてもよい。誘電体層15を覆っているのが、樹脂バインダー中に銀または炭素のような導電性の粒子を含むリヤ電極18である。
【0020】
溶媒に共重合体を溶かし、適宜、充填剤に混合し、得られたインキをスクリーン印刷またはロール・コーティングのような任意の適切な手段により塗布し、そして次いで、その溶液を加熱して、次の層を塗布する前に少なくとも部分的に硬化(乾燥)することにより、一つの層が作られる。その溶媒の沸点を変化させるための成分およびそのインキの流動性を改善するための成分が、そのインキを適用するために選ばれた加工法による要求に応じて添加されてもよい。
【0021】
本発明の一つの態様では、その溶媒は、約80重量%のDMACを含んでおり、そしてその沸点を上げるために、20重量%以下のエチレングリコールモノブチルエーテル・アセテートを含む。その流動性を改善するために、0.5 から1 重量%のエチルアクリレート‐2−エチルヘキシルアクリレート共重合体が添加される。流動性改良剤は、塗布工程において、そのインキのレオロジー特性を制御し、そして得られる層中のピンホールを減らす助けをする。より少ないピンホールは、過電圧に因るランプの絶縁破壊がより少ないことを意味する。
【0022】
発光体層は、その混合物全体に、重量で0.5:1 から4.5:1(望ましくは、1.3:1)の比で分散されている発光体粒子を含む。絶縁性反射層は、その混合物全体に、重量で0.2:1 から5:1(望ましくは、1.8:1)の比で分散されているチタン酸バリウムを含む。この混合物は、5−55%、望ましくは35重量%の、Ausimont USA、から入手できる“ Hylar SN”として知られているPVDF/HFP樹脂を含む。Ausimont社からの Hylar 樹脂、ELF/Atochem 社からの Kynar 樹脂およびSolvay社からの Solef 樹脂のような市場から入手できる形のPVDF/HFP共重合体樹脂が、建築用塗料の製造、ケーブル被覆材および超高純度化学薬品用配管用に用いられる。下でより十分に説明するように、本発明の方法によるELランプの作製に適した樹脂の種類は、低粘度、即ち市場から入手できる樹脂より低分子量であることが見いだされた。
【0023】
得られる最終蒸着フィルムのエレクトロルミネセンス・発光体充填量(ドライベース)とフッ素樹脂バインダー充填量(ドライベース)の比は、0.5:1 から5:1 まで(望ましくは約2.5:1)の範囲である。得られる最終蒸着フィルム中の、次の高誘電性充填剤:BaTiO 、TiO 、SrTiO 、CaTiO など、から選ばれる誘電体微粒子充填量(ドライベース)とフッ素樹脂バインダー充填量(ドライベース)の比は、0.5:1 から5:1 まで(望ましくは約 2:1)の範囲である。
【0024】
幾つかのELパネル用のリア電極は、フッ素樹脂、ビニル樹脂もしくはポリエステルを含むバインダー中に分散された銀粒子で作られる。銀粒子とバインダーの乾燥重量比は、2:1 から5:1 まで(望ましくは約 3:1)の範囲である。あるいはまた、ELパネル中での低い銀のマイグレーションを要求する顧客向けのリア電極は、炭素または黒鉛粒子を含むインキを用いて作られる。
【0025】
本発明の方法に従って、バインダーとして HylarR SNフッ素樹脂を用いて作られたELパネルは、銀ベースのリア電極またはバスバーでは予想外でそして印象的な結果を提供する。標準的フッ素樹脂バインダーと銀のリヤ電極を用いて作ったELランプは、普通、環境に曝した時、特に大気中、85℃、相対湿度95%で連続操業した場合、24時間前に黒はんを示す。このようなランプは、その黒はんの端が普通、十分はっきりしていないことを除いて、図2のランプ20に似ている。
【0026】
環境に約48から72時間さらすと、銀のマイグレーションの最終結果として、フロント電極とリア電極の間に短絡回路が形成される。 Hylar SNフッ素樹脂を用いて作られたELパネルは、少なくとも 300時間の間、最少の黒はんしか示さなかった。図3は、本発明の方法に従って作られたランプの、300 時間試験後の外観を例示している。これらのランプは、銀リア電極を有するELパネル全てで起きるような短絡回路を生成しない。この環境への露出を続けると、ゆっくりと分解が起きるが、このランプはショートするまでに1200時間以上継続使用できる。この結果は、予想外であり、新しい事実であり、そして歓迎すべきである。
【0027】
以下のデータで、明るさ(brightness)は、ランプ上に明瞭な領域が見られ判読できることと理解すべきである。図3に例示されているように、このような領域はサークル21で代表されており、本発明の方法に従って作製されたランプ25上に容易に見つけることができる。ランプ20(図2)では、そのような領域は容易に見付け難い。そうだとしても、この事実は、従来技術に従って作製されたランプは、短絡して消えるという問題を残し、一方、本発明の方法に従って作製されたランプでは、そういう問題は残らない。
【0028】
実施例1
樹脂バインダーに何を使うかということを除いて、複数のランプを同じように作製した。グループAのランプは、 Hylar SNバインダーを用いて作り、そしてグループBのランプは、 ELF/Atochem Kynar ADS/9301樹脂を用いて作った。これらランプは、80ボルト、400Hz で同じように、そして連続的に使用し、そして85℃/95%相対湿度にさらし、次の結果を得た。各グループでの第2欄は、初期輝度のパーセントである。
【0029】
【表1】
Figure 0003610042
【0030】
この試験の終りにグループAのランプは、僅かな(<5−10 %)黒はんの徴候を示したがその大きさは、極めて小さく(直径<0.25mm)、ランプの短絡は見られなかった。それに比べて、グループBは、大きい黒はんを示し、72時間後には殆ど100 %を覆った。その時点で、はん点の直径は、1−2mm であるが、幾つかは非常に大きい(5mm) 。これらランプは、約150 時間でショートした。
【0031】
実施例2
僅かに低い温度(65℃)でのもう一つの試験で次の結果が得られた。温度を除いて、全ての条件は、実施例1の場合と同じである。
【0032】
【表2】
Figure 0003610042
【0033】
この試験の終りに、グループAのランプは、小さい斑点による軽い黒はん化(<10%)を示したが、ランプの短絡は見られなかった。また点灯領域は、オフ‐ホワイトよりむしろベージュ色への変色が認められた。グループBでの従来のランプは、第2リーディング(reading) と第3リーディングの間で黒はん化が始まり、このランプは200+時間後にショートした。この黒はん化は大規模で、173 時間までに殆ど 100%になった。その点灯領域は褐色から灰色であった。これは、ランプにとって困難な試験であるが、本発明に従って作られたランプは、従来技術で作られたランプに比べて非常に良好であった。
【0034】
Hylar SNは、市場から入手できる他PVDF/HFP共重合体より、大きい重量パーセントでDMAC溶媒に溶けて、重合体相の重量パーセントが同じ場合で、より低い溶液粘度を示す。これはスクリーン印刷またはロールコーティング時の材料の流動性を非常に改善し、そしてワンパスで一つの層の作製を可能にする。 Hylar SN樹脂で作られたインキは Kynar ADS/9301樹脂に似た流動特性を有するが、高温/高湿度特性は、遥かに高い溶融温度を有する樹脂に似ている。
【0035】
高い溶解度は、普通、低結晶度と低融点に結び付いている。しかし Hylar SNは、 Kynar ADS/9301樹脂より高い融点を有しているが、それでも約12%という低いパーセントの結晶度を有しており、通常、良好な熱的性質と良好な溶解性の組合せが可能である。 Hylar SNは、 Kynar ADS/9301樹脂に比べて、溶解度が僅かに小さく、結晶度は似ている。
【0036】
この層は、中程度、例えば、約 120−125℃に加熱することにより硬化される。この熱硬化は、厚さの薄い均一なフィルムを与え、そして最も重要なことは ITO基材への優れた接着性である。シロキサンを用いなくてもITO/PET 基板へ十分接着することは、低コストで、インキを量産することを可能にする。この硬化の温度は、 Kynar SL/7201 樹脂のような従来技術で用いられる高性能樹脂より低い。より低い温度での硬化は、認められる収縮をより小さくし、より厳密な寸法制御を実行することが可能になり、そしてカールがより少なくなる。
【0037】
図4は溶融粘度(キロポイズ、kP)/溶融温度[示差走査熱量測定計(DSC)]のチャートである。 Hylar SNは 1−15kP(D3835)の範囲の溶融粘度を有する。市場から入手できる他の用途向けのPVDF/HFP共重合体は、ELランプの製造用に適していることが見いだされた Hylar SNより大きい溶融粘度を有している。特に長方形31で示されているように、1.0−8.5kP の粘度と103−115 ℃の溶融温度を有する樹脂が、ELランプを作製するのに適している。望ましい範囲は、長方形32で示されているように、2.5−4.5kP および105−109 ℃である。
【0038】
図4中の丸い点は、市場から入手できる樹脂を示している。例えば、下の左側の隅の点35は、時計およびページャー(pagers)用ランプの製造に適している Kynar ADS/9301樹脂を示している。この樹脂は、自動車用ELパネルの作製には適していないと考えられる。点36は自動車用に用いられている Kynar SL/7201樹脂を示している。三角形の点は Hylar SN樹脂を示しており、その全部ではないが、市場から入手できる。市場から入手できる分子量がより大きくそして粘度がより大きいPVDF/HFP共重合体樹脂は、上述のように他の目的に利用される。
【0039】
より低い溶融温度、例えば100 ℃以下では、PVDF/HFP樹脂は、より軟らかく、より粘着性でゴム状になることもある。より高い温度、例えば 130−135℃以上の温度では、樹脂は、その塗布と硬化の前にPET 基板の予備収縮を必要とする。ELランプは、理論的には、図4に示されている任意の樹脂から作ることができるが、それらランプの幾つかは、実際には、手造りするかまたは大きいバッチから注意して選び出さなければならない:即ち、全ての樹脂が商業的に実用可能なわけではない。より大きい点線の長方形内の樹脂が、商業的に実用可能であり、そしてより小さい点線の長方形内の樹脂が、特に推奨される(特にその理由は、このような樹脂は全てのタイプのランプに使用できるからである。)。
【0040】
長い貯蔵寿命などの幾つかの利点は、この Hylar SN樹脂インキ調合物は意識して橋架けされていないという事実に由来する。これは、例えば、パネルの誘電体層あるいは発光体層に硬化剤を添加できないことを意味するものではない。この技術分野で知られているように、アクリル系樹脂は、樹脂層を硬化するために添加され、そして Hylar SN樹脂は、PMMAおよびPEMAのような樹脂と相溶性である。
【0041】
この技術分野で知られているように、所定の電圧での輝度は、バインダー材料の誘電定数に依存する。 Hylar SNは、ELランプ用にこの技術分野で用いられているフッ素樹脂の最良の物と同等の誘電率を有し、そして多くの共重合体型フッ素樹脂より良好である。
【0042】
以下に、ELパネル用の各層の望ましい態様を示す。三層全てが Hylar SN樹脂を用いているが、これは必要条件ではない。これらの層は、別々の態様と考えるべきである。
【0043】
発光体インキおよび層
17.6g の Hylar SNフッ素樹脂、2gのアクリロイド(Acryloid )B44 アクリル樹脂、0.4gのモダフロー(Modaflow )流動性改良剤および 41gのジメチルアセトアミド溶媒を組合せる。樹脂が完全に溶解するまで混合する。39g の硫化亜鉛発光体を加え、最初機械的に激しく撹拌し、そしてローラ上の密閉ジャーの中で、数時間連続でかき混ぜる。
【0044】
このインキをポリエチレンテレフタレート基板上の透明な ITO導電体の上にスクリーン印刷し、そして乾燥して、重量%で大体次の組成の発光体層を得る:66%の発光体、30%のフッ素樹脂、3 %のアクリル樹脂、0.7 %のModaflow。
【0045】
誘電体/反射体インキおよび層
35.3g の Ti−Pure R−700 二酸化チタン、0.18g の Disperbyk 111 界面活性剤および42.7g のジメチルアセトアミドを組合せ、二酸化チタンが十分分散されるまで、機械的に激しく撹拌する。0.44g のModaflow 流動性改良剤と21.4g の Hylar SNフッ素樹脂を加える。得られた混合物を、その樹脂が完全に溶解するまで密閉ジャーの中で連続的にロール混合すると、滑らかな(smooth)インキができる。
【0046】
下層である発光体層上にこのインキをスクリーン印刷し、そして乾燥して、重量%で大体次の組成の均質な誘電体/反射体が得られる:62%の二酸化チタン、37%のフッ素樹脂、0.77%のModaflow、0.3 %の Disperbyk 111 。
【0047】
銀導体インキおよび層
13g の Hylar SNフッ素樹脂、1.8gのAcryloid B44 アクリル樹脂、0.28g のModaflow 流動性改良剤および 27gのジメチルアセトアミド溶媒を組合せる。樹脂が完全に溶解するまで混合する。58g の銀フレーク#7(Degussa−Huls Corporation) を加える。混合物を、ペイント・シェーカー上、密閉容器中で滑らかで均一な分散物が得られるまで振りまぜる。
【0048】
下層である誘電体層上にこのインキをスクリーン印刷すると、重量%で大体次の乾燥組成の均質な導体層が得られる:80%の銀、17%のフッ素樹脂、2.6 %のアクリル系樹脂、0.4 %のModaflow。
【0049】
かくして本発明は、多様な市場、例えば、自動車、通信機器および測時機器を指向するELパネル用の単一構造物を提供する。このインキは、反応性のシロキサンを必要としないので、貯蔵寿命が長く、そしてこの重合体は橋架けされないので触媒が添加されない。先行層を前処理することなしに、ワンパス(single pass) で層を形成できる。最少のマイグレーションで、改善された伝導性を得るために銀粒子を使用することができる。このインキは ITO被覆基板の予備収縮を必要としない。
【0050】
さて本発明を説明したが、この技術分野の習熟者には、本発明の範囲内で多くの修飾がなされ得ることが明らかであるであろう。例えば、DMACの代りに使用することができる他の溶媒に含まれるのは、 DMF(ジメチルホルムアミド)、THF(テトラヒドロフラン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、 NMP(N−メチル‐2−ピロリドン)、アセトンおよびそれらの混合物である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法に従って組立てられたELランプの断面図である。
【図2】図2は、従来技術の方法に従って組立てられ、そして厳しい環境試験に24時間もしくは、それ以下の時間かけられたELランプの平面図である。
【図3】図3は、本発明の方法に従って組立てられ、そして厳しい環境試験にかけられたELランプの平面図である。
【図4】図4は、ELランプ中でバインダーとして用いられている樹脂の粘度/溶融温度のチャートである。

Claims (18)

  1. フロント電極;
    該フロント電極を覆う発光体層;
    該発光体層を覆う誘電体層;および
    該誘電体層を覆う導電性層;
    を含み、これらの層の少なくとも一つが1-8.5kP の溶融粘度を有する VDF HFP の共重合体樹脂を含むELパネル。
  2. 該樹脂が、103-115 ℃の示差走査熱量測定法(DSC)で測定した溶融温度を有することを特徴とする請求項1に記載のELパネル。
  3. 該樹脂が、105-109 ℃の DSC溶融温度を有することを特徴とする、請求項1に記載のELパネル。
  4. 該樹脂が、2.5-4.5kP の溶融粘度を有することを特徴とする請求項1に記載のELパネル。
  5. 該導電性層が、1-8.5kP の溶融粘度を有する VDF HFP の共重合体樹脂を含む請求項1に記載のELパネル。
  6. 該導電性層が、その中に分散された銀粒子を含む請求項に記載のELパネル。
  7. 該導電性層が、その中に分散された炭素粒子を含む請求項に記載のELパネル。
  8. 銀粒子を含み、そして該導電性層を覆うバスバーをさらに含む請求項に記載のELパネル。
  9. バスバーが、該パネルの少なくとも一つの点灯領域を取囲んでいる請求項に記載のELパネル。
  10. バスバーが、点灯領域の少なくとも一部を覆っている請求項に記載のELパネル。
  11. 該誘電体層と該発光体層の少なくとも一つが1-8.5kP の溶融粘度を有する VDF HFP の共重合体樹脂を含む請求項に記載のELパネル。
  12. フロント電極;
    該フロント電極を覆う発光体層;
    該発光体層を覆う誘電体層;および
    該誘電体層を覆う導電性層;
    を含み、これらの層の少なくとも一つが 103-115℃の DSC溶融温度と1-8.5kP の溶融粘度によって特徴付けられるVDF HFP の共重合体樹脂を含むELパネル。
  13. 該樹脂が、105-109 ℃の DSC溶融温度を有することを特徴とし、そして2.5-4.5kP の溶融粘度を有することを特徴とする、請求項12に記載のELパネル。
  14. 該導電性層が、その中に分散された銀粒子を含む請求項12に記載のELパネル。
  15. 該導電性層が103-115 ℃の DSC 溶融温度と 1-8.5kP の溶融粘度によって特徴付けられる VDF HFP の共重合体樹脂を含む請求項14に記載のELパネル。
  16. DMAC、DMF 、THF 、DMSO、 NMP、アセトンおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる溶媒を準備する工程;
    その溶媒に1-8.5kP の溶融粘度を有する VDF HFP の共重合体樹脂から本質的になるバインダーを溶解して5-55重量%のバインダー溶液を調製する工程;および
    その溶液に、エレクトロルミネセンスを発生させるためにドープしたZnS粒子、BaTiO3 粒子、TiO2 粒子、SrTiO3 粒子、CaTiO3 粒子、炭素粒子および銀粒子からなる群から選ばれる充填剤を添加して、スラリーを調製する工程;
    を含む、ELランプ製造用インキを調製する方法。
  17. そのインキに 0-5重量%の流動性調節剤を添加する工程をさらに含む請求項16に記載の方法。
  18. そのインキに0-50重量%のアクリル系樹脂を添加する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
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