JP3609735B2 - エッチング液の再生方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩化銅や塩酸を主成分とする劣化エッチング液を隔膜電解法と塩素酸化法を併用して再生処理するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板の製造工程において、塩化銅、塩化鉄を主成分とするエッチング液により銅箔を腐食させ所望のパターンを形成することが工業的に行われている。銅箔を腐食させることでエッチング液は劣化するが、一般的にはこの劣化液に対して過酸化水素水を酸化剤として注入し、素材の溶解に伴い生成した塩化第1銅を酸化再生するとともに水で希釈し、塩酸を補充することが行われている。過酸化水素による塩化第1銅の酸化は次のような反応式にしたがう:
2CuCl+H+2HCl→2CuCl+2HO‥‥‥(1)
【0003】
しかしながら、このような過酸化水素による再生法では銅イオンの酸化力を回復することはできるものの、別途塩素イオンの補充のために塩酸添加が必要で且つ溶解した銅成分を除去できず水で希釈することが行われていることから、余剰となるエッチング液を廃液として処分する必要がある。
【0004】
また一方、塩素ガスによる酸化方法もエッチング液の再生に採用されている。塩素ガスによる塩化第1銅の酸化は次のような反応式にしたがう:
2CuCl+Cl→2CuCl‥‥‥‥‥‥(2)
【0005】
塩素ガスによる再生法は、理論上、塩酸の消費がないものの、実行にあたっては工場内に液化塩素ガスを貯蔵する必要があり、その取り扱いが煩雑である等の欠点を有する。
【0006】
上記の問題を解決するために本出願人は、特開平5−125564号、特開平5−117879号において、隔膜電解法による再生方法を提案し、これらの電解再生プロセスに適する電解槽の構造を特開平6−158359号で提案し実用化している。
【0007】
また、電解再生によりエッチング液組成を最適条件に保持するためにはエッチングにおける銅箔の溶解速度と電解再生の速度を一致させる必要があるが、電流一定の条件では、電解再生の速度はほぼ一定になるのに対し、エッチングにおける銅箔の溶解速度は銅箔の厚み、パターンの違いや生産の状況に伴い変動するため、銅箔の溶解スピードと電解再生のスピードを一致させることが困難であるという問題がある。
【0008】
この問題に対して本出願人は、特開平11−140671号において、電解再生法を組み込んだエッチング液組成の管理方法について提案し実用化している。また特願平11−280011号等において、塩化銅と塩酸を主成分とするエッチング液を電解し、エッチング液中の銅イオンを金属銅として回収するとともに生成する塩素ガスをエッチング液の再生に利用するシステム及び装置について提案し実用化している。具体的には、図3に示すように、エッチングマシン12で使用されるエッチング液をポンプ10により再生液槽5を介して循環(途中、排ガス洗浄塔7を通すのが好ましい)し、この再生液槽5からエッチング液を抜き出して供給ポンプ8により陰極液槽2へ送り、ここから循環ポンプ9により電解槽の陰極室1へ連続供給し、当該陰極室1から隔膜を通り陽極室3へ移った分は陽極液として再生液槽5へ、またオーバーフローにより排出した分は陰極液として陰極液槽2へ戻しながら、陰極板表面で金属成分(銅)を電気分解(連続操作で電解)して回収し、一方で電解槽の陽極室3から排出する塩素ガスを気液セパレータ4で分離して、電解槽への供給液とは別に再生液槽5からエゼクタポンプ11により導出するエッチング液と塩素ガスエゼクタ6で接触させ、当該エッチング液中に含有する塩化第1銅を塩素酸化してエッチング液中に吸収させるのである。このような金属成分回収・エッチング液再生システムの提案と共に、その実施のために、電解を行うための直流単極隔膜式の電解槽と塩素酸化を可能とする気液接触手段とを備えたエッチング液電解再生装置を提案する。上記電解槽では、陰極板表面に析出する金属銅を自動的に掻き落とし、銅粉として陰極室底部から排出・回収できるようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなシステムによっても上記余剰塩素ガスの問題の根本的な解決には至っていない。上記システムの実施上の最大の問題は、エッチングマシンで1価の銅イオンが容易に空気酸化されてしまい、電解で発生する塩素ガスが吸収できなくなり、一部を別途処理する必要が生じていることである。
4CuCl+O+4HCl→4CuCl+2HO‥‥‥(3)
【0010】
酸素による酸化が起こると、エッチングで溶解し増加した銅をすべて回収するにあたっては、塩素ガスが余剰となるため、これを廃ガスとして取り扱えば塩素イオンの損失となり、塩酸の補充量が増える。それとともに放出される塩素ガスを吸収するためにアルカリ等を消費する必要が出てくる。別のエッチング液に吸収させれば、この分が余剰となる。
【0011】
一方、1価の銅イオンの空気酸化でエッチング液に吸収できる塩素ガス量が制限されるのに合わせ、外部に放出される塩素ガスをゼロになるように調整すると、回収できない溶解に起因した銅イオンがエッチング液中に残る。エッチング液の組成を一定範囲に保持するには、当該エッチング液に塩酸と水を注入して希釈する必要が生じ、余剰エッチング液が発生して、塩酸が消費されることとなる。
【0012】
一般的なエッチングマシンでは、上部がエッチング液を吹き付けるためのスプレーを配した空間で且つ下部が液槽となっているエッチングチャンバーと呼ばれる室内を、製品となるべきプリント配線素材板がコンベアで搬送され通過する間に当該素材板をエッチングする構成となっている。エッチングチャンバー内で、エッチング処理により溶解した銅は1価の銅イオンとなり、エッチング液中に蓄積される。このように蓄積された1価の銅イオンが空気中の酸素により酸化される反応はエッチング液中の1価の銅イオン濃度が高いほど高速で起こるので、空気酸化を低減するためにはエッチング液中の1価の銅イオン濃度をできる限り低くすることが好ましいが、一方で電解で発生する塩素ガスを完全にエッチング液中に吸収するためには、発生塩素ガスと接触させるためエッチングマシンから導出するエッチング液の液量を大流量とせざるを得ず、大規模な循環配管及び循環ポンプを備える必要がある。
【0013】
例えば、電解槽(陽極室)から発生する塩素ガスの量が20kg/時、エッチング液中の1価の銅イオン濃度0.5g/リットルの場合、塩素ガスを完全にエッチング液中に吸収させるためには約750リットル/分の流量でエッチング液を導く必要があり、このための設備工事費用、ポンプの運転に必要な電気料金は当該再生装置の実施を妨げる大きな原因となる。
【0014】
また複数のエッチングマシンを有する工場に上記再生装置を設置する場合、各エッチングマシンに上記再生装置を1:1で対応させることが、余剰塩素の発生防止及びエッチングマシンの工程管理(特に各エッチングマシンの液組成の最適値が異なるために個別に管理したい場合)上好ましいが、これを実施しようとするとき、上記設備費用、電気料金は高額となり、費用対効果の面で当該再生装置の実施が困難となるのである。
【0015】
そして銅イオンの空気酸化を、上記システムを実施しながらゼロにすることは、上記のようなエッチングマシンの構造、更には上記システムを実施するためにエッチングマシンとの間で循環経路を備えた装置構造を根本的に変えない限り不可能である。
【0016】
更に、エッチングで溶解し増加した銅を電解によって金属銅としてすべて回収するためには、できる限り一定の負荷で連続操業することが好ましい。陰極板表面における銅の析出状態及び銅析出の電流効率が陰極の電流密度によって変化するからである。またエッチングによる銅箔の溶解速度に対応するために電解槽への通電を頻繁に停止することは、析出した金属銅の再溶解による回収効率の低下、装置寿命の低下を助長する。よって、かかる理由からも一定負荷による連続電解を行うことが好ましい。
【0017】
しかしながら、従来法では、エッチング液中の1価の銅イオン濃度に対応して電解槽への通電を制御する必要があるため、一定負荷で連続運転することは不可能である。
【0018】
以上の問題点に鑑み、エッチングによる銅箔の溶解速度に拘らず、電解による金属銅の回収を一定負荷の連続操業で行うことが可能で、塩素ガスの余剰に対してもランニングコストを上昇させることなく安全に取り扱うことができるような、電解法・塩素ガス法によるエッチング液の再生方法を提供することを本発明の課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、エッチング槽から抜き出し隔膜電解槽へ送る塩化第1銅含有エッチング液から、エッチングにより溶解する銅と同量の金属銅を陰極側で電析回収し、上記電解槽の陽極側で発生する塩素ガスから次亜塩素酸塩類の水溶液を得ていったん貯留し、塩化第1銅含有エッチング液の再生のために、上記次亜塩素酸塩類の水溶液を酸で中和して塩素ガスを発生させて、発生ガスにより上記エッチング液を酸化することによって、解決される。
【0020】
電解槽の陽極側で発生する塩素ガスから次亜塩素酸塩類の水溶液を得るために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを含有した現像廃液を用いるのが、好適である。また次亜塩素酸塩類の水溶液を中和するために、エッチング処理(プリント配線板製造など)に由来した廃酸、例えばソフトエッチング液を電解して脱銅した廃硫酸を用いるのが好都合である。
【0021】
本発明の1つの態様としては、エッチング槽から隔膜電解槽の陰極室へ塩化第1銅含有エッチング液を供給して、当該陰極室にて銅を、エッチングにより溶解した銅に相当する量だけ電析回収し、電析により銅濃度を減じた液を隔膜を介して陽極室へ移し、当該陽極室にて塩素ガスを発生させ、塩素ガス発生により塩素濃度を減じた液をエッチング槽に戻しながら、発生塩素ガスをアルカリ液で次亜塩素酸塩類の水溶液としていったん蓄え、必要に応じて酸で中和して塩素ガスに戻し、当該塩素ガスにて塩化第1銅含有エッチング液を酸化する。
【0022】
別の態様としては、エッチング槽から隔膜電解槽の陰極室へ塩化第1銅含有エッチング液を供給して、当該陰極室にて銅を、エッチングにより溶解した銅に相当する量だけ電析回収し、電析により銅濃度を減じた液を隔膜を介して陽極室へ移し、当該陽極室にて塩素ガスを発生させ、発生塩素ガスの一部を塩化第1銅含有エッチング液と接触させて当該エッチング液を酸化再生し、残った塩素ガスをアルカリ液で次亜塩素酸塩類の水溶液としていったん蓄え、必要に応じて酸で中和して塩素ガスに戻し、当該塩素ガスにて塩化第1銅含有エッチング液を酸化する。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明に係る塩化銅エッチング液電解再生循環システムの概念的な全体構成を示す。このシステムにおいて、エッチングマシン12で使用されるエッチング液をポンプ18により陰極液槽2へ送り、ここから循環ポンプ9により電解槽の陰極室1へ連続供給する。当該陰極室1から隔膜を通り陽極室3へ移った分は陽極液として陽極液槽13を介してポンプ20によりエッチングマシン12へ戻す。その際、エッチング液の比重を測定し、所定値(例えば1.28)に達するごとに断続的な戻しとする。またオーバーフローにより排出した分は陰極液として陰極液槽2に戻しながら、エッチング処理により溶解した量に相当する分全てを回収するように連続運転で電解し、陰極板表面で銅を析出させ、陽極で塩素ガスを発生させる。電解槽の陽極室3から排出する塩素ガスを気液セパレータ4で分離して吸収塔14へ全量送り、アルカリ液と接触して次亜塩素酸塩の水溶液を得る。これをポンプ17により受槽16へ送って蓄え、中和用酸受槽15に蓄えられた酸と塩素発生器19において反応させて塩素ガスを発生させ、この発生ガスをエッチング液とエゼクタ21で接触させ、当該エッチング液中に含有する塩化第1銅を酸化する。上記アルカリ液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを含有する使用済みの現像液(レジスト剥離液)を用いることができる。また中和用酸として、ソフトエッチング液を電解して脱銅した廃硫酸や、エッチング工程での洗浄排水、更にはめっき工程で製品を洗浄する際に発生する洗浄排水を用いることができる。
【0024】
陽極液槽13にいったん貯蔵されエッチングマシン12に戻される陽極液及び受槽16に貯蔵され酸と中和されるべき次亜塩素酸塩の水溶液は、エッチングマシン12の負荷に応じてエッチング液の希釈、1価の銅イオンの酸化にそれぞれ用いられるものである。
【0025】
以上のような構成のシステムにおいて、全Cu濃度135g/リットル、全Cl濃度265g/リットルの塩化銅エッチング液約633ミリリットル/min.を電解槽に供給して電解し、全Cu濃度10.2g/リットル、全Cl濃度122g/リットルの陽極液約610ミリリットル/min.を得、これを陽極液槽13に受けた。電解槽へは電流5000A(定電流)、電圧3.6Vの直流で通電して5時間電解を行った。電解槽の陰極室1から銅粉約23.5kgを回収し、陽極室3で発生した塩素ガスは、約5%の水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ液)約1000リットルに吸収させた。塩素ガス吸収後のアルカリ液中の塩素成分の濃度は28.7g/リットルであった。
【0026】
中和用酸受槽15には約50%の硫酸が約90リットル入っており、塩素吸収後のアルカリ液がエッチングマシン12の操業に応じて約100リットルの容量の次亜塩素酸塩受槽16に回分式に移液された。塩素発生器19には、1バッチ当たり約25リットルの硫酸を中和用酸受槽15から受け入れた。エッチングマシン12では、エッチンッグ液中のCu濃度を測定し、その測定濃度が0.1g/リットルに達したら、硫酸を満たした塩素発生器19へ、次亜塩素酸塩受槽16から塩素吸収後のアルカリ液を注入して塩素ガスを発生させるようにした。アルカリ液の注入量はエッチング液中のCu濃度に応じて変化させ、塩素ガスの発生量の制御を行った。エッチング液中のCu濃度の代わりに酸化還元電位(ORP)値を測定して、ガス発生量の制御を行うようにしてもよい。塩素発生器19で発生した塩素ガスはエッチング液を駆動液とするエゼクタ21により負圧を発生させて吸引し、エッチング液と接触させた。塩素発生器19内の液は、硫酸がアルカリ液により中和され、そのpHが7に達したら抜き出して工場内の排水処理設備に送液して他の排水と共に放流する。中和後の、塩素発生器19から抜き出された液の総量は約1085リットルで、液中のCl濃度は3.06g/リットルであった。
【0027】
エッチングマシン12を約3時間操業した。その間のエッチング液中のCu濃度は最大約1.1g/リットルであった。
図2に塩化銅エッチング液電解再生循環システムの第2例の概念的な全体構成を示す。エッチングマシン12で使用されるエッチング液をポンプ10により再生液槽25を介して循環し、この再生液槽25からエッチング液を抜き出して供給ポンプ8により陰極液槽2へ送り、ここから循環ポンプ9により電解槽の陰極室1へ連続供給し、当該陰極室1から隔膜を通り陽極室3へ移った分は陽極液として再生液槽25へ、またオーバーフローにより排出した分は陰極液として陰極液槽2へ戻しながら、エッチング処理により溶解した量に相当する分全てを回収するように連続運転で電解する。電解により陰極で銅が回収され、陽極では塩素ガスが発生する。陽極室3から排出する塩素ガスを気液セパレータ4で分離して、電解槽への供給液とは別に再生液槽25からエゼクタポンプ11により導出するエッチング液とエゼクタ6で接触させ、当該エッチング液中に含有する塩化第1銅を塩素酸化してエッチング液に吸収させる。エゼクタ6でエッチング液と接触しながら吸収されない塩素ガスを、再生液槽25から改めて抜き出して吸収塔14へ送り、アルカリ液と接触して次亜塩素酸塩の水溶液を得る。これをポンプ17により受槽16へ送って蓄え、中和用酸受槽15に蓄えられた酸と塩素発生器19において反応させて塩素ガスを発生させ、この発生ガスをエッチング液とエゼクタ21で接触させ、当該エッチング液中に含有する塩化第1銅を酸化する。
【0028】
以上のような構成のシステムにおいて、全Cu濃度130g/リットル、全Cl濃度253g/リットルの塩化銅エッチング液約300リットル/分の液量でエッチングマシン12と再生液槽25の間を循環させた。電解槽へ供給するエッチング液は、連続的に再生液槽25から抜き出し、陽極室3を介して再生液槽25へ戻した。電解槽へ供給し電解したエッチング液の量は190リットル/5hで、全Cu濃度9.7g/リットル、全Cl濃度108g/リットルの陽極液約180リットル/5hを再生液槽25へ戻した。電解槽へは電流5000A、電圧3.6Vの直流で通電して5時間電解を行った。電解槽の陰極室1から銅粉約22.9kgを回収し、陽極室3で発生した塩素ガスは、再生液槽25において循環するエッチング液を駆動液とする塩素ガスエゼクタ6により負圧を発生させ吸引させる方法で当該循環エッチング液に吸収させるとともに、吸収塔14にて約2.5%の水酸化ナトリウムを原液とする使用済み現像液約1000リットルに吸収させた。塩素ガス吸収後のアルカリ液中の塩素成分の濃度は13.5g/リットルであった。
【0029】
中和用酸受槽15には約50%の硫酸が約50リットル入っており、塩素吸収後のアルカリ液がエッチングマシン12の操業に応じて約100リットルの容量の次亜塩素酸塩受槽16に回分式に移液された。塩素発生器19には、1バッチ当たり約25リットルの硫酸を中和用酸受槽15から受け入れた。エッチングマシン12では、エッチンッグ液中のCu濃度を測定し、その測定濃度が0.5g/リットルに達したら、硫酸を満たした塩素発生器19へ、次亜塩素酸塩受槽16から塩素吸収後のアルカリ液を注入して塩素ガスを発生させるようにした。アルカリ液の注入量はエッチング液中のCu濃度に応じて変化させ、塩素ガスの発生量の制御を行った。塩素発生器19で発生した塩素ガスはエッチング液を駆動液とするエゼクタ21により負圧を発生させて吸引し、エッチング液と接触させた。塩素発生器19内の液は、硫酸がアルカリ液により中和され、そのpHが3に達したら抜き出して工場内の排水処理設備に送液して他の排水と共に放流する。中和後の、塩素発生器19から抜き出された液の総量は約1050リットルで、液中のCl濃度は4.49g/リットルであった。
【0030】
エッチングマシン12を約2時間20分操業した。その間のエッチング液中のCu濃度は最大約0.8g/リットルであった。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、装置としての設置容積、コストの両方とも大きな電解再生装置部分をエッチングマシンから離れた場所(例えば排水処理場)に集約して設置する一方、小規模で安価な塩素発生装置部分をエッチングマシンに隣接設置することができるので、隔膜電解法によるエッチング液再生システムの設置コストを下げ、設置場所の制約を減らすことになる。エッチングマシンを複数備える工場においては、各ラインに隣接して塩素発生装置だけを複数設置させることができるので、各エッチングマシン毎の液組成管理も可能となり、エッチング液中のCuイオン濃度を低くでき、エッチングマシンから電解再生装置部分において起こるCuの空気酸化を抑えることができる。更にエッチングマシンの操業時間に限定して電解装置を運転する必要がないため、例えば昼のみエッチングの操業をする工場で、電解再生については24時間運転が可能となり、設備を小規模化できるとともに安い深夜電力を使用して電解処理を行うことができる。
【0032】
エッチング槽から抜き出し隔膜電解槽へ送る塩化第1銅含有エッチング液から、エッチングにより溶解する銅と同量の金属銅を電析回収する一方で、余剰塩素ガスの発生を前提に、その安全な取り扱いとして次亜塩素酸塩を生じさせるので、エッチングによる銅箔の溶解速度の許容度を高めることができた。つまり、銅箔の溶解速度に拘らず定電流の電解ができた。また上記電解槽の陽極側で発生する塩素ガスから次亜塩素酸塩類の水溶液を得ていったん貯留した後再利用するので、塩素ガスの発生を抑制したり、発生したガスを別途処理することを配慮する必要がない。
【0033】
電解槽の陽極側で発生する塩素ガスから次亜塩素酸塩類の水溶液を得るために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを含有した現像廃液を用いれば、従来廃棄処理されていたこのような廃液の有効利用となる。また次亜塩素酸塩類の水溶液を中和するために、同一工場内で発生するエッチング処理に由来した廃酸、例えばソフトエッチング液を電解して脱銅した廃硫酸を用いることも、廃物の有効利用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る塩化銅エッチング液再生システムの全体的な概念図である。
【図2】本発明に係るエッチング液再生システムの別の態様の全体的な概念図である。
【図3】従来の塩化銅エッチング液再生システムの全体的な概念図である。
【符号の説明】
1:電解槽の陰極室、 3:陽極室、 12:エッチングマシン、
14:吸収塔、 16:次亜塩素酸塩受槽、 19:塩素発生器

Claims (6)

  1. 塩化銅系エッチング液をエッチング槽と隔膜電解槽の間で送受して、電気分解により上記隔膜電解槽の陰極側にて金属銅を析出して回収するとともに陽極側で塩素ガスを発生させ、当該塩素ガスを塩化第1銅含有エッチング液の再生に利用するエッチング液再生方法において、
    エッチングにより溶解する銅と同量の金属銅を陰極側で析出回収し、
    陽極側で発生する塩素ガスから次亜塩素酸塩類の水溶液を得ていったん貯留し、
    塩化第1銅含有エッチング液の再生のために、上記次亜塩素酸塩類の水溶液を酸で中和して塩素ガスを発生させて、発生ガスにより上記エッチング液を酸化する
    ことを特徴とするエッチング液再生方法。
  2. エッチング槽から隔膜電解槽の陰極室へ塩化第1銅含有エッチング液を供給して、当該陰極室にて銅を、エッチングにより溶解した銅に相当する量だけ電析回収し、電析により銅濃度を減じた液を隔膜を介して陽極室へ移し、当該陽極室にて塩素ガスを発生させ、塩素ガス発生により塩素濃度を減じた液をエッチング槽に戻しながら、発生塩素ガスをアルカリ液で次亜塩素酸塩類の水溶液としていったん蓄え、必要に応じて酸で中和して塩素ガスに戻し、当該塩素ガスにて塩化第1銅含有エッチング液を酸化することを特徴とするエッチング液再生方法。
  3. エッチング槽から隔膜電解槽の陰極室へ塩化第1銅含有エッチング液を供給して、当該陰極室にて銅を、エッチングにより溶解した銅に相当する量だけ電析回収し、電析により銅濃度を減じた液を隔膜を介して陽極室へ移し、当該陽極室にて塩素ガスを発生させ、発生塩素ガスの一部を塩化第1銅含有エッチング液と接触させて当該エッチング液を酸化再生し、残った塩素ガスをアルカリ液で次亜塩素酸塩類の水溶液としていったん蓄え、必要に応じて酸で中和して塩素ガスに戻し、当該塩素ガスにて塩化第1銅含有エッチング液を酸化することを特徴とするエッチング液再生方法。
  4. 次亜塩素酸塩類の水溶液を中和することが可能な十分な量の酸を含む酸性水溶液に、次亜塩素酸塩類の水溶液を連続注入し、連続発生する塩素ガスを塩化銅系エッチング液に接触させ、当該エッチング液中に含有する塩化第1銅成分を酸化し塩化第2銅にするにあたり、エッチング液中の塩化第1銅成分の濃度又は酸化還元電位値を測定し、その測定結果に応じて上記連続注入する次亜塩素酸塩類の水溶液の流量を制御して、エッチング液中の塩化第1銅濃度又は酸化還元電位値を一定範囲に維持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエッチング液再生方法。
  5. 電解槽の陽極側で発生する塩素ガスから次亜塩素酸塩類の水溶液を得るために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムを含有した使用済み現像液を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエッチング液再生方法。
  6. 次亜塩素酸塩類の水溶液を中和するために、エッチング処理に由来した廃酸を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエッチング液再生方法。
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