JP4102526B2 - 塩化銅エッチング液電解再生システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板、リードフレーム等の電子部品の製造工程において劣化したエッチング液を所謂隔膜電解法を利用して再生処理するための装置と再生処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、上記のような電子部品の製造工程において、塩化銅、塩化鉄を主成分とするエッチング液により銅箔を腐食させ、所望のパターンを形成することが工業的に行われている。銅箔を腐食させることで劣化するエッチング液に対しては、一般的には過酸化水素水等の酸化剤を注入して、素材の溶解に伴い生成する1価の銅イオン又は2価の鉄イオンを酸化して再生が図られるとともに、同じく素材の溶解に伴い増加する比重(銅濃度)を水で希釈し、減少する塩素イオンを補充することが行われている。
【0003】
しかしながら、このような方法は、銅イオン又は鉄イオンの酸化力を回復することはできるが、別途塩素イオン補充のための塩酸添加が必要で且つ溶解した銅成分を除去できず水で希釈することから、余剰となるエッチング液を廃液として処分する必要がある。
【0004】
上記のような問題を解決するために、本発明の発明者らは、特開平5−125564号、特開平5−117879号において隔膜電解法による再生方法を提案し、これらの電解再生プロセスに使用する電解槽の構造については特開平6−158359号で提案して実用化もしている。
【0005】
また電解再生によりエッチング液組成を最適条件に保持するためにはエッチング工程における銅の溶解速度と電解再生の速度を一致させる必要があるが、電流一定の条件で、電解再生の速度はほぼ一定にすることができるのに対して、エッチング工程における銅の溶解速度は銅箔の厚み、パターンの違いや生産状況に伴って変動するため、銅の溶解スピードと電解再生のスピードを一致させることが困難であるという問題がある。
【0006】
また塩素ガスで再生される1価の銅イオン、2価の鉄イオンは、容易に空気中の酸素でも酸化される。酸素による酸化が起こると、電解で発生した塩素ガスが余剰となって放出されるため、塩素イオンの損失となり、塩酸の補充量が増えるとともに放出される塩素ガスの処理も必要となる。
【0007】
この問題に対しては、本発明者らは、特開平11−140671号において電解再生法を組み込んだエッチング液組成の管理方法について提案し実用化している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら実際にエッチング液の電解再生を工業的に行うにあたり、エッチング工程における銅の溶解速度と電解再生速度を一致させることが困難で、この不一致に伴う塩化ガス余剰の問題については、エッチング工程の操業条件によっては、特開平11−140671号で提案した不活性ガスによるパージや過酸化水素水添加による方法では、ランニングコストがかかるという問題の他、不活性ガスによる酸欠事故を招来するおそれがある。
【0009】
また隔膜電解再生法を用いるにあたり、陽極液は溶存塩素として塩素ガスを含有しているので、再生処理装置の各容器内の上方空間は、電解槽の稼動中常時塩素ガスを含む空気を保有することとなる。更に陽極室の内圧若しくは電解槽の液面変動により、隔膜を通じて塩素ガスが陰極室に流入する可能性もある。このような塩素ガスは環境対策上外部に放出することができないので、別途処理する必要がある。
【0010】
そこで本発明は、以上のような塩素ガスの問題に対して、ランニングコストを上昇させることなく安全に処理できる改良型の電解再生処理方法及び電解再生装置を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記問題点を解決するにあたり、生じる塩素ガスをエッチング液と接触させ、液中の1価の銅イオン、2価の鉄イオンを酸化することで吸収するとともに排ガス中の塩素ガスを洗浄するために、エゼクタと洗浄塔を併用すると、不活性ガスや薬液を併用せずに余剰となる塩素ガスのより確実な吸収を図ることができることを見出した。更に洗浄を2段階として、2段目の排ガス洗浄に、電解槽から排出する銅粉の付着液を使用すれば、余剰塩素ガスの発生を防ぎ、エッチング液の余剰やアルカリ等の別の廃液を発生させることなく電解法によるエッチング液再生システムを実用化できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
【発明の実施の形態】
添付図面に、本発明に係る塩化銅エッチング液電解再生循環システムの概念的な全体図を示す。当該システムは、基本的にエッチング槽1、電解槽2、再生液槽3、排ガス洗浄塔5、これらの間で液送するためのポンプなどからなっている。なお発明的には必須でないが、本例では、陰極液槽4も備えられ、上記電解槽2と再生液槽3との間に配されている。
【0013】
エッチング槽1で素材を溶解し劣化したエッチング液は、エッチング液供給ポンプ8により電解槽2に、再生液槽送液ポンプ9により排ガス吸収塔5を介して再生液槽3に各々供給されるようになっている。
【0014】
陽極室21を隔膜22を介して陰極室23で取り囲むようにして構成された電解槽2に供給されたエッチング液は、陰極室23で銅析出により銅濃度を減じ、陰極室上部の陰極液流出管26からオーバーフローして陰極液槽4へ流入する。一方、例えば織布で構成された隔膜22を介して陰極室23からエッチング液が流入するようになっている陽極室21内には、陽極板(図示せず)表面での塩素ガス発生により塩素濃度を減じた陽極液が滞留し、塩素ガスは塩素ガス流出管24から排出されるが、液中を塩素イオンが移動する速度よりもガス発生により減少する速度の方が速いため、陽極液中の塩素イオン濃度(塩酸濃度)は減少する。このため、濃度減少を抑えるために、滞留する陽極液は、陰極液槽に付設された液面レベル検出手段42による検出結果に基づいて抜き出され、陽極液流出管28を介して再生液槽3へ排出される。陰極液槽が設置されていない場合には、陰極室に付設される液面レベル検出手段による検出結果に基づいて陽極液の抜き出しが行われる。既述のように、陽極室と陰極室とを隔てる隔膜は織布のような液透過が容易な材質でなっているので、液面レベルを検出するのにその検出手段は陰極室側に設けることができるものである。勿論、陽極室側に設けられていても良い。抜き出された陽極液は、エッチング槽1や陰極液槽4に送液されるようになっていてもよい。
【0015】
陰極室23で析出した銅は陰極室底部からバタフライ弁の開閉動作によって銅粉排出管25を経て銅粉スラリーとして排出される。排出された銅粉スラリーは回収銅受槽10に入り、銅粉とともに排出される付着液は銅粉フィルタ11及び付着液ポンプ12で分離回収され、陰極液槽4へ送液される。付着液分離後の銅粉は、回収銅受槽10ごと定期的に搬出、回収されるようになっている。
【0016】
電解槽2の陰極室23には更にオーバーフローにより排出された陰極液を戻すための陰極液流入口27が設置され、陰極液槽4から陰極液ポンプ41で陰極液をポンプアップし、冷却器14を備えた陰極液還流配管を経て上記流入口27から電解槽2へ返送する。上記陰極液ポンプ41は常時稼動している。冷却器14は電解時の、電気抵抗による発熱を冷却するものであって、陰極液の温度を液温検出手段15を用いて計測し、設定温度より液温が上昇したときに冷却器14に冷媒(例えば冷却水)を供給し、陰極液温度を一定の範囲に制御するようになっている。上記設定温度は、50℃±5℃〜70℃±5℃の範囲で決定される。高温にすれば液の電気抵抗が低下するので好ましいが、電極の耐久性も低下するので、液組成毎に、適切な値が設定される。
【0017】
陰極室23からオーバーフローにより陰極液槽4へいったん送った上で電解槽2へ戻すことで陰極液循環を実現して液組成を均一化するとともに、陰極液槽2に付設された陰極液ポンプ41の吐出側を分岐してバルブ開閉により必要に応じて陰極液流通を可能にした、冷却器流通経路とは別の平行な経路に液比重検出手段17を設け、測定された液比重が設定下限値を下回ったときに前記エッチング液供給ポンプ8を起動し(または供給液量を増加させ)、設定上限値以上となった段階で停止する(または供給液量を減少させる、設定下限値と設定上限値は同値であってもよい)。エッチング液の供給はこのように電解槽に直接行ってもよいが、間接的に陰極液槽に供給することもできる。
【0018】
更に上記別の経路に陰極液の塩酸濃度検出手段18を設け、測定された塩酸濃度が設定値を下回ったときに塩酸を陰極液流通経路中に配量補充する。上記設定値は30g/リットルである。塩酸濃度は当該下限値を上回り、最大でも120g/リットル程度に調整されるべきである。あるいは陰極液、陽極液中の塩素イオン濃度減少に伴って電解電圧が上昇するので、電解電流を供給する直流電源装置(図示せず)に電圧検出手段を設け、電解電圧が設定値に上昇すると電圧上限信号を発信し、塩酸を補充するようにしてもよい。
【0019】
既述のように、陰極液槽4には液面レベル検出手段42が付設されており、当該陰極液槽4に受け入れる液の量から電解槽2へ補充返送する液量を差し引いた増量分が、陰極液槽4の液面レベルが一定範囲内に収まるように、液面レベルが設定上限値に達すると上記液面レベル検出手段42から上限信号が発信され、陽極室21から陽極液排出管28を介して液を再生液槽3へ抜き出すようになっている。陽極液が抜き出されることにより、陽極液室21の液面レベルが低下し、陰極液が隔膜22を介して陽極室21に流入し、塩酸濃度の低下した陽極液の入れ替えが実現する。陰極液槽4の液面レベルが設定下限値に達すると上記陽極液の抜き出しが中止される。再生液槽3のエッチング槽1からのエッチング液の受け入れは、洗浄塔5を介して再生液槽3へ至る洗浄塔ルートの他、エゼクタ31を介して再生液槽3へ至るエゼクタルートや、再生液槽3への直接ルートによっても、可能である。再生液槽3にも液面レベル検出手段33、返送ポンプ34が付設され、エッチング槽1へ再生液を戻すことができるようになっている。
【0020】
既述のように、陽極室21上部からは排出管24を介して塩素ガスが、下部からは排出管28を介して陽極液が各々分離されて排出されるようになっている。塩素ガスは、再生液槽3に付設されたエゼクタ31で発生する負圧により吸引され、エゼクタ駆動液としてエゼクタポンプ32により再生液槽3からエゼクタ31を経て再生液槽3へ自己循環するエッチング液と接触し吸収される。既述のように、陽極液は陰極液槽4の液面レベル上限信号により抜き出されるようになっているが、タイマ等により一定時間毎に抜き出しても、電解電圧の上限信号により抜き出しても良く、更にはこれらの手段を組み合わせるようにしても良い。抜き出される陽極液は既述のように、図示の例では再生液槽3に送液されるが、エッチング槽1や陰極液槽4に送液されても良く、陰極液が抜き出される場合はエッチング槽1又は再生液槽3に送液される。
【0021】
電解槽2の陰極室23、再生液槽3、陰極液槽4のそれぞれ上部には排気管29,39,49が設置されており、これら排気管からの排ガスは排ガス洗浄塔5で、エッチング槽1から再生液槽3へ受け入れるべきエッチング液と接触し、エゼクタ31で吸収されない塩素ガスがあればエッチング液中に吸収される。
【0022】
洗浄塔5の塔頂からの排気管51は2次洗浄塔6につながり、当該排気管51からの排ガスは、場合によってはエゼクタ31及び排ガス洗浄塔5で吸収されない塩素ガスがあれば当該塩素ガスも、既述の回収銅受槽10で銅粉とともに排出され付着液ポンプ12によって分離回収された付着液の一部により洗浄・吸収される。排ガス洗浄後、2次洗浄塔6から排出される液は回収銅受槽10へ環流される。環流された液は回収銅と接触し、その一部を溶解することにより塩素ガスを吸収するための塩化第1銅含有液となるので、塩素ガスの余剰が多い場合、再度吸収に使用することが可能である。排ガス洗浄塔5を省略して陰極室、再生液槽、陰極液槽からの排ガスを直接2次洗浄塔6で洗浄するようなことも可能である。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、電解槽からエッチング槽への液戻し路に、エゼクタを備えた循環路を有する再生液槽を配設し、上記電解槽から排出された塩素ガスを上記エゼクタによる減圧作用で吸引すると共に上記エッチング槽から上記再生液槽にエッチング液を導入して上記塩素ガスと気液接触し、更にはそれぞれ密閉構造とした上記電解槽と再生液槽の上方空間に滞留するガスを吸引して当該ガス中の塩素ガス成分を除去するための排ガス洗浄手段を設け、当該排ガス洗浄手段に上記エッチング槽からエッチング液を導入して上記吸引したガスと接触して洗浄を行うので、不活性ガスや薬液を併用せずに塩素ガスの吸収を確実に行わしめることができる。
【0024】
上記排ガス洗浄手段から排出される洗浄ガスを導く別の2次洗浄手段を更に設け、上記電解槽から分離回収される金属銅に付着した液を当該2次洗浄手段に導入して上記洗浄ガスを更に洗浄すれば、余剰塩素ガスの発生を一層確実に防ぎ、エッチング液の余剰やアルカリ等の別の廃液を発生させることもない。
【0025】
上記ガスを再洗浄した後の付着液の一部を、上記電解槽から金属銅を分離回収する受け容器に還流して、再度金属銅と接触させて、塩素ガス吸収液を生成すれば、塩素ガスの余剰が多い場合に再度吸収に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る塩化銅エッチング液電解再生循環システムの全体的な概念図である。
【符号の説明】
1:エッチング槽、 2:電解槽、 3:再生液槽
4:陰極液槽、 5:排ガス洗浄塔、 6:排ガス2次洗浄塔、
10:回収銅受槽、 11:銅粉フィルタ、 14:冷却器、
31:エゼクタ
Claims (4)
- 塩化銅エッチング液を有するエッチング槽と、当該エッチング槽との間でエッチング液を送受する電解槽とを備えてなり、上記電解槽が隔膜を介して陰極室と陽極室とに分かれ、受け入れるエッチング液を陰極室へ連続的に供給し当該陰極室でオーバーフローにより陰極液循環しながら電気分解して陽極室からエッチング槽へ返すようになっているエッチング液電解再生システムにおいて、
前記電解槽からエッチング槽への液戻し路に、エゼクタを備えた循環路を有する再生液槽を配設し、上記電解槽から排出された塩素ガスを上記エゼクタによる減圧作用で吸引すると共に上記エッチング槽から導入したエッチング液と上記塩素ガスとを気液接触すること、及び
それぞれ密閉構造とした上記電解槽と再生液槽の上方空間に滞留するガス中の塩素ガス成分を除去するための排ガス洗浄手段を設け、当該排ガス洗浄手段において上記エッチング槽から導入したエッチング液と上記上方空間から吸引したガスとを接触して当該ガス中の塩素ガス成分除去を行うことを特徴とするエッチング液電解再生システム。 - 上記再生液槽へのエッチング液の導入を、排ガス洗浄手段へ導入されるエッチング液を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のエッチング液電解再生システム。
- 上記排ガス洗浄手段から排出される洗浄ガスを導く別の2次洗浄手段を更に設け、上記電解槽から分離回収される金属銅に付着した液を当該2次洗浄手段に導入して上記洗浄ガスを更に洗浄することを特徴とする請求項1又は2に記載のエッチング液電解再生システム。
- 上記ガスを再洗浄した後の付着液の一部を、上記電解槽から金属銅を分離回収する受け容器に還流して、再度金属銅と接触させて、塩素ガス吸収液を生成することを特徴とする請求項3に記載のエッチング液電解再生システム。
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