JP3607432B2 - 感光性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
以前よりLSIを初めとする電子部品の製造プロセスでは、フォトリソグラフィーを利用した微細加工技術が採用されており、ここでの微細加工技術にレジストが広く用いられている。さらに近年は、電子部品の高密度集積化に対応するため、電子部品の製造に当って超微細なレジスト膜のパターンを形成することが求められている。
【0003】
従って、最近ではレジスト膜のパターンを形成する際の光源を短波長化することが進められている。すなわち、波長248nmのKrFエキシマレーザ光を光源に使用したり、電子線やX線などの電離放射線を照射することで、超微細なパターンを形成するプロセスが開発されており、上述したような光源に対し高い感度を有するレジストが数多く報告されている。
【0004】
例えば特開昭63−27829号などには、アルカリ可溶性樹脂と溶解抑止剤と光酸発生剤とを含有する組成物からなる化学増幅型レジストが開示されている。すなわちこの種の化学増幅型レジストは、未露光部で溶解抑止剤がレジストのアルカリ現像液に対する溶解性を抑えている一方で、露光部では光酸発生剤が酸を発生し、露光後のベーキング処理でこれが溶解抑止剤を分解する。これによって、露光部のレジストがアルカリ現像液に可溶化するというものである。ここで化学増幅型レジストにおいては、光酸発生剤から発生された酸が微量であっても多数の溶解抑止剤を分解し得るので、一般に高い感度で超微細なパターンを形成することが可能となる。
【0005】
一方LSIなどの高密度集積化に伴い、上述したような微細加工技術は近年サブハーフミクロンオーダーにまで及んでおり、今後こうした微細化はさらに顕著になることが予測されている。このため、フォトリソグラフィーにおける光源の短波長化が進行しており、現在波長193nmのArFエキシマレーザ光や波長218nmのYAGレーザの5倍高調波光による微細なレジストパターンの形成が試みられている。さらに、F2 エキシマレーザー光による露光の研究も試みられ始めている。
【0006】
しかしながら従来の化学増幅型レジストは、通常光酸発生剤としてベンゼン環を有するアリールオニウム塩などが用いられており、こうした光酸発生剤が配合されてなる化学増幅型レジストでは、上述した通りの短波長光に対してベンゼン環の光吸収が大きい傾向がある。したがってレジストパターンの形成に際し、露光時にレジスト膜の基板側にまで光を十分に到達させることが難しく、結果的にパターン形状の良好なパターンを高精度に形成することは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来の化学増幅型レジストは、水銀ランプの輝線であるg線及びi線や、波長248nmのKrFエキシマレーザ光を光源に使用する場合には高い感度で超微細なパターンを形成することが可能であっても、ArFエキシマレーザ光に対してはその透明性が十分でなく、解像性の良好なレジストパターンの形成は困難であった。
【0008】
本発明は、ArFエキシマレーザ光などの短波長光に対する透明性が優れ、高い感度で解像性の良好なレジストパターンを形成することができる感光性組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、ArFエキシマレーザ光およびF2エキシマレーザ光のいずれかにより露光を施しパターンを形成するための感光性組成物であって、酸分解性基を有する化合物と、下記一般式(1)で表される化合物と、アクリル酸またはその誘導体、メタクリル酸またはその誘導体、アクリロニトリル誘導体、4−ヒドロキシマレイミド樹脂、およびポリアミック酸から選択される少なくとも1種のアルカリ可溶性樹脂とを含有する感光性組成物が提供される。
【0010】
【化6】
(式中、Ar1,Ar2は、芳香環または縮合芳香環、R1,R2 は一価の有機基、XはCF3SO3,CH3SO3,CF3COO,ClO4,SbF6およびAsF6からなる群から選択され、ZはCl,Br,I,S−RおよびSe−R(Rは炭素数1以上10以下のアルキル基またはパーフルオロアルキル基)からなる群から選択され、m、nは0または正の整数を示す。)
また、本発明によれば、ArFエキシマレーザ光およびF2エキシマレーザ光のいずれかにより露光を施しパターンを形成するための感光性組成物であって、アクリル酸またはその誘導体、メタクリル酸またはその誘導体、アクリロニトリル誘導体、4−ヒドロキシマレイミド樹脂、およびポリアミック酸から選択され、酸分解性基を有する少なくとも1種のアルカリ可溶性樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とを含有する感光性組成物が提供される。
【0011】
【化7】
(式中、Ar1,Ar2は、芳香環または縮合芳香環、R1,R2 は一価の有機基、XはCF3SO3,CH3SO3,CF3COO,ClO4,SbF6およびAsF6からなる群から選択され、ZはCl,Br,I,S−RおよびSe−R(Rは炭素数1以上10以下のアルキル基またはパーフルオロアルキル基)からなる群から選択され、m、nは0または正の整数を示す。)
【0012】
本発明の感光性組成物としては、例えばアルカリ可溶性樹脂とアルカリ溶液に対する溶解抑止能を有する酸分解性基ば導入された化合物(以下、溶解抑止剤と称す)と光酸発生剤とを含有するポジ型の化学増幅型レジストが挙げられる。このとき、溶解抑止剤を配合するかわりに溶解抑止能を有する酸分解性基でアルカリ可溶性樹脂中のアルカリ可溶性基を保護し、こうした樹脂と光酸発生剤とを含有する感光性組成物とすることもできる。
【0013】
一方、本発明ではネガ型の化学増幅型レジストとして、アルカリ可溶性樹脂と酸の存在下この樹脂を架橋する酸架橋性基を有する化合物と光酸発生剤とを含有する組成のものが挙げられる。またここでは、酸架橋性基が導入されたアルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤とを含有する感光性組成物であってもよい。
【0014】
本発明の感光性組成物において、上述したようなアルカリ可溶性樹脂としては、ヒドロキシ基が導入された芳香環または縮合芳香環を有する樹脂、あるいはカルボキシル基を有する樹脂などを用いることができる。具体的には、アクリル酸またはその誘導体、メタクリル酸またはその誘導体、アクリロニトリル誘導体、4−ヒドロキシマレイミド樹脂、ポリアミック酸や、これらにケイ素原子を適宜導入したものなどが挙げられる。本発明では、感光性組成物のアルカリ溶解性の調整などの観点から、こうしたアルカリ可溶性樹脂を単独または2種以上混合して用いることができる。
【0015】
さらに本発明においては、ArFエキシマレーザ光など短波長光に対する透明性を損なうことなく感光性組成物のドライエッチング耐性を向上させる観点から、アルカリ可溶性樹脂として好ましくはヒドロキシ基が導入された縮合芳香環、あるいは必要に応じて酸性置換基が導入された脂環式骨格を有するものを用いることが望まれる。ここでの縮合芳香環としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などが例示され、具体的にはナフトールまたはその誘導体をホルムアルデヒドなどのカルボニル化合物で縮合してなるナフトールノボラック樹脂や、ビニルナフタレン、ビニルナフトール、ビニルアントラセン、ビニルアントールの重合体などを用いることができる。
【0016】
一方上述したような脂環式骨格としては、一般式Cp H2p(pは3以上の整数)で表わされる環状シクロ化合物や環状ビシクロ化合物、及びそれらの縮合環などが挙げられ、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環やこれらに橋かけ炭化水素が導入されたもの、スプロヘプタン、スピロオクタンなどのスピロ環;ノルボニル環、アダマンチル環、ボルネン環、メンチル環、メンタン環などのテルペン環;ツジャン、サビネン、ツジョン、カラン、カレン、ピナン、ノルピナン、ボルナン、フェンカン、トリシクレン、コレステリック環などのステロイド骨格、タンジュウサン、ジギタロイド類、ショウノウ環、イソショウノウ環、セスキテルペン環、サントン環、ジテルペン環、トリテルペン環、およびステロイドサポニン類などが例示される。このとき具体的には、脂環式骨格を有する重合性化合物とアルカリ可溶性基を有するビニル系化合物との共重合体などがアルカリ可溶性樹脂として用いられる。
【0017】
またここで、脂環式骨格中に必要に応じて導入される酸性置換基としては、25℃の水溶液中でのpKaが7以上11以下のものが好ましい。具体的には、プロパノンオキシム基、プロパナールオキシム基、ヒドロキシイミノペンタノン、ジメチルグリオキシムなどケトンオキシム構造を含む有機基;サクシンイミド、ピロリジンジオンなどジカルボン酸イミドあるいはN−ヒドロキシサクシンイミド構造を含む有機基;シクロペンテン1,3−ジオン、アセチルアセトン、3−メチル−2,4− ペンタジオンなどジカルボニルメチレン構造を含む有機基;ヘキサンチオールなどチオールを含む有機基;ヒドロキシシクロペンテノンなど互変異性のアルコール、フルフリルアルコールを含む有機基;アミック酸構造を含む有機基;フェノール、クレゾール、サリシルアルデヒドなどフェノール性水酸基を含む有機基;トリアジン骨格を含む有機基などが挙げられる。
【0018】
なお、本発明で上述したようなアルカリ可溶性樹脂の平均分子量は、500〜500,000の範囲内に設定されることが好ましい。何となれば、アルカリ可溶性樹脂の平均分子量が500未満だと、機械的強度の十分なレジスト膜を成膜するうえで不利となり、逆にアルカリ可溶性樹脂の平均分子量が500,000を越えると、解像性の良好なレジストパターンを形成することが困難となるからである。
【0019】
また本発明においてアルカリ可溶性樹脂の配合量は、感光性組成物の固形分中5〜85wt%程度に設定されることが好ましい。すなわち配合量が5wt%未満だと、感光性組成物の塗膜性が低下する傾向があり、逆に85wt%を越えると、充分な感度を得ることが困難となるおそれがある。
【0020】
上述した通り本発明の感光性組成物は、ポジ型の化学増幅型レジストとして使用する場合、アルカリ溶液に対する溶解抑止能を有する酸分解性基が導入された化合物が、通常溶解抑止剤として配合される。本発明で用いられるこのような溶解抑止剤としては、アルカリ溶液に対する充分な溶解抑止能を有するとともに、酸による分解後の生成物がアルカリ溶液中で−(C=O)O−,−OS(=O)2 −,または−O−を生じ得る酸分解性基を有する化合物が例示される。こうした化合物は、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、フェノールフタレイン、クレゾールフタレイン、チモールフタレイン、カテコール、ピロガロール、ナフトール、ビスナフトールA、ビスナフトールF、安息香酸誘導体などの低分子芳香族系化合物やコレート、ステロイド類、テルペノイド誘導体、糖類などの低分子脂肪族アルコール類に酸分解性基を導入することで得ることができる。
【0021】
具体的には、フェノール性化合物をt−ブトキシカルボニルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、3−ブロモテトラヒドロピラニルエーテル、1−メトキシシクロヘキシルエーテル、4−メトキシテトラヒドロピラニルエーテル、1,4−ジオキサン−2− イルエーテル、テトラヒドロフラニルエーテル、2,3,3a,4,5,6,7, 7a− オクタヒドロ−7,8,8− トリメチル−4.7− メタノベンゾフラン−2− イルエーテル、t−ブチルエーテル、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジメチルイソプロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、ジメチルセキシルシリルエーテル、t−ブチルジメチルシリルエーテルなどで変性した化合物が挙げられる。これらのうちでは、フェノール性化合物の水酸基をt−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、あるいはテトラヒドロピラニル基などで保護した化合物が好ましい。
【0022】
さらに本発明における溶解抑止剤は、多価カルボン酸のイソプロピルエステル、テトラヒドロピラニルエステル、テトラヒドロフラニルエステル、メトキシエトキシメチルエステル、2−トリメチルシリルエトキシメチルエステル、t−ブチルエステル、トリメチルシリルエステル、トリエチルシリルエステル、t−ブチルジメチルシリルエステル、イソプロピルジメチルシリルエステル、ジ−t− ブチルメチルシリルエステル、オキサゾール、2−アルキル−1,3− オキサゾリン、4−アルキル−5− オキソ−1,3− オキサゾリン、5−アルキル−4− オキソ−1,3− ジオキソランなどであってもよい。また、以下に示す化合物を用いることもできる。本発明では、こうした溶解抑止剤を単独または2種以上混合して用いることができる。
【0023】
【化6】
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
式中、tBocは−(C=O)O−C(CH3 )3 を示す。
【0029】
【化12】
【0030】
【化13】
【0031】
【化14】
【0032】
【化15】
【0033】
【化16】
【0034】
本発明においてはこれらの溶解抑止剤のうち、共役多環芳香族系化合物が短波長光に対する透明性が優れる点で好ましい。なお共役多環芳香族系化合物とは、不飽和結合がひとつおきに配列した骨格とすることで複数の芳香環が平面的に連結された非縮合多環系や縮合多環系の化合物である。すなわちこうした化合物は、π電子の共役安定化に起因して光吸収帯が長波長側にシフトしており、本発明では特に共役多環芳香族系化合物を溶解抑止剤として用いることで、短波長光に対し優れた透明性を有するとともに、耐熱性および耐ドライエッチング性も充分な感光性組成物を得るうえで有利となる。逆に、本発明でベンゼン環を有する化合物を溶解抑止剤として配合する場合は、このような共役多環芳香族系化合物や酸分解性基が導入された低分子脂肪族アルコール類などと併用することが望まれる。
【0035】
共役多環芳香族系化合物の具体例としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ナフタセン環、クリセン環、3,4−ベンゾフェナントレン環、ペリレン環、ペンタセン環、ピセン環、ピロール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、クロメン環、キノリンジンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、チアントレン環、インドリジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、フルオレン環などを有する化合物が挙げられ、中でもナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などを有する縮合多環系の化合物は、波長193nmの光に対する透明性の点で優れている。したがって、これら縮合芳香環を有するポリヒドロキシ化合物の水酸基を、t−ブチルカーボネート基、t−ブチルエステル基、テトラヒドロピラニルエーテル基、アセタール基、トリメチルシリルエーテル基などで保護したものは、溶解抑止剤として特に好ましい。
【0036】
本発明の感光性組成物において、溶解抑止剤の配合量はアルカリ可溶性樹脂に対し、0.1〜40wt%さらには0.5〜10wt%の範囲内に設定されることが好ましい。これは溶解抑止剤の配合量が0.1wt%未満だと、解像性の良好なレジストパターンを形成することが困難となり、逆に40wt%を越えると、感光性組成物の塗膜性などが損なわれるおそれがあるうえ、露光部のレジスト膜をアルカリ溶液で溶解・除去するときの溶解速度が大きく低下する傾向があるからである。
【0037】
また本発明の感光性組成物では、こうした溶解抑止剤を配合するかわりに酸分解性基でアルカリ可溶性樹脂中のアルカリ可溶性基を保護してなる樹脂を用いることもできる。ここでの酸分解性基としては、例えば、イソプロピルエステル、テトラヒドロピラニルエステル、テトラヒドロフラニルエステル、メトキシエトキシメチルエステル、2−トリメチルシリルエトキシメチルエステル、3−オキソシクロヘキシルエステル、イソボルニルエステル、トリメチルシリルエステル、トリエチルシリルエステル、イソプロピルジメチルシリルエステル、ジ−t−ブチルメチルシリルエステル、オキサゾール、2−アルキル−1,3− オキサゾリン、4−アルキル−5− オキソ−1,3− オキサゾリン、5−アルキル−4− オキソ−1,3− ジオキソランなどのエステル類;t−ブトキシカルボニルエーテル、t−ブトキシメチルエーテル、4−ペンテニロキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、3−ブロモテトラヒドロピラニルエーテル、1−メトキシシクロヘキシルエーテル、4−メトキシテトラヒドロピラニルエーテル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルエーテル、1,4−ジオキサン−2− イルエーテル、テトラヒドロフラニルエーテル、2,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロ−7,8,8− トリメチル−4,7− メタノベンゾフラン−2− イルエーテル、t−ブチルエーテル、トリメチルシリルエーテル、トリエチルシリルエーテル、トリフェニルシリルエーテル、トリイソプロピルシリルエーテル、ジメチルイソピロピルシリルエーテル、ジエチルイソプロピルシリルエーテル、ジメチルセキシルシリルエーテル、t−ブチルジメチルシリルエーテルなどのエーテル類;メチレンアセタール、エチリデンアセタール、2,2,2−トリクロロエチリデンアセタール、2,2,2−トリブロモエチリデンアセタール、2,2,2−トリヨードエチリデンアセタールなどのアセタール類;1−t−ブチルエチリデンケタール、イソプロピリデンケタール(アセトニド)、シクロペンチリデンケタール、シクロヘキシリデンケタール、シクロヘプチリデンケタールなどのケタール類;メトキシメチレンアセタール、エトキシメチレンアセタール、ジメトキシメチレンオルソエステル、1−メトキシエチリデンオルソエステル、1−エトキシエチリデンオルソエステル、1,2−ジメトキシエチリデンオルソエステル、1−N,N−ジメチルアミノエチリデンオルソエステル、2−オキサシクロペンチリデンオルソエステルなどのサイクリックオルソエステル類;トリメチルシリルケテンアセタール、トリエチルシリルケテンアセタール、トリイソプロピルシリルケテンアセタール、t−ブチルジメチルシリルケテンアセタールなどのシリルケテンアセタール類;ジ−t− ブチルシリルエーテル,1,3−1’,1’,3’,3’−テトライソプロピルジシロキサニリデンエーテル、テトラ−t− ブトキシジシロキサン−1,3− ジイリデンエーテルなどのシリルエーテル類;ジメチルアセタール、ジメチルケタール、ビス−2,2,2− トリクロロエチルアセタール、ビス−2,2,2− トリブロモエチルアセタール、ビス−2,2,2− トリヨードエチルアセタール、ビス−2,2,2− トリクロロエチルケタール、ビス−2,2,2− トリブロモエチルケタール、ビス−2,2,2− トリヨードエチルケタール、ジアセチルアセタール、ジアセチルケタールなどの非環状アセタール類またはケタール類;1,3−ジオキサン、5−メチレン−1,3− ジオキサン、5,5−ジブロモ−1,3− ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−ブロモメチル−1,3− ジオキソラン、4,3’− ブテニル−1,3− ジオキソラン、4,5−ジメトキシメチル−1,3− ジオキソランなどのサイクリックアセタール類またはケタール類;0−トリメチルシリルシアノヒドリン、0−1−エトキシエチルシアノヒドリン、0−テトラヒドロピラニルシアノヒドリンなどのシアノヒドリン類を挙げることができる。
【0038】
本発明においては、これらの酸分解性基の中でもt−ブチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、t−ブチル−3− ナフチル−2− プロペノエート、イソボルニルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレートのようなエステル類が、酸で容易に分解される点で好ましい。また、ここで例示されたメタクリレートのかわりにアクリレート、α−シアノアクリレートおよびα−メトキシアクリレートが用いられても何ら差し使えない。
【0039】
なお、本発明で上述したような酸分解性基を有する樹脂を用いる場合、こうした樹脂の配合量は、感光性組成物の固形分中5〜95wt%程度に設定されることが好ましい。すなわち配合量が5wt%未満だと、感光性組成物の塗膜性が低下する傾向があり、逆に95wt%を越えると、充分な感度を得ることが困難となるおそれがある。
【0040】
本発明では、この酸分解性基を有する樹脂についても単独または2種以上混合して用いることができる。また、酸分解性基を有する樹脂をアルカリ可溶性樹脂を併用することや、これらの樹脂を共重合させて用いることも可能である。
【0041】
さらに本発明の感光性組成物においては、溶解抑止剤として上述したような酸分解性基を有する化合物以外に、分子量2,000以下程度の低分子量のナフトールノボラックまたはその誘導体が好ましく併用され得る。ただし、本発明で特に酸分解性基を有する樹脂が用いられた場合は、このナフトールノボラックまたはその誘導体を溶解抑止剤として単独で配合しても構わない。
【0042】
一方、本発明の感光性組成物をネガ型の化学増幅型レジストとして使用する場合には、架橋剤として酸の存在下アルカリ可溶性樹脂を架橋する酸架橋性基を有する化合物を、溶解抑止剤にかえて配合すればよい。ここでの架橋剤としては、例えばエポキシ基を側鎖に有するビニル系化合物、アクリル酸またはその誘導体、メチロール置換されたトリアジン、ナフチリジン化合物のようなメラミン系化合物などが用いられ得る。本発明では、こうした架橋剤を単独または2種以上混合して用いることができる。
【0043】
本発明の感光性組成物において、架橋剤の配合量はアルカリ可溶性樹脂に対し、1〜100wt%さらには5〜30wt%の範囲内に設定されることが好ましい。これは架橋剤の配合量が1wt%未満だと、解像性の良好なレジストパターンを形成することが困難となり、逆に100wt%を越えると、感光性組成物の塗膜性などが損なわれるおそれがあるからである。
【0044】
また、本発明の感光性組成物ではこうした架橋剤を配合するかわりに、酸架橋性基をアルカリ可溶性樹脂に導入してもよい。このような酸架橋性基を有する樹脂は、例えばアルカリ可溶性樹脂のアルカリ可溶性基の10〜40mol%程度にビニル基、アリル基などを導入することで得ることができる。
【0045】
本発明で酸架橋性基を有する樹脂を用いる場合、こうした樹脂の配合量は、感光性組成物の固形分中1〜95wt%程度に設定されることが好ましい。すなわち配合量が1wt%未満だと、感光性組成物の塗膜性が低下する傾向があり、逆に95wt%を越えると、充分な感度を得ることが困難となるおそれがある。
【0046】
さらに本発明では、この酸架橋性基を有する樹脂についても単独または2種以上混合して用いることができ、酸架橋性基を有する樹脂をアルカリ可溶性樹脂と併用することや、これらの樹脂を共重合させて用いることも可能である。なお、酸分解性基及び酸架橋性基のいずれを有する樹脂の場合も、その平均分子量はアルカリ可溶性樹脂と同様、500〜500,000程度であればよい。また、感光性組成物のアルカリ溶解性の調整などの観点から、アルカリ可溶性樹脂のアルカリ溶解性基をメチル基など酸分解性基及び酸架橋性基以外の有機基で置換した樹脂を適宜用いてもよく、こうした樹脂を用いる場合についても、上述したようなアルカリ可溶性樹脂や酸分解性基または酸架橋性基を有する樹脂と単に混合してもよいし、共重合させても構わない。
【0047】
本発明の感光性組成物においては、光酸発生剤として上記一般式(1)で表される化合物が用いられる。ここで、この化合物は2つのベンゼン環のオルト位が直接化学的に結合された点が特徴的であり、これにより光吸収帯が長波長側にシフトして、ArFエキシマレーザー光などの短波長光に対する透明性が改善される。
【0048】
すなわち、従来化学増幅型レジストにおける光酸発生剤としては、ベンゼン環を有するアリールオニウム塩が一般的であるが、こうした光酸発生剤では、上述した通り短波長域でベンゼン環の光吸収が大きく、短波長光を光源とした場合には解像性の良好なレジストパターンは形成し難いという問題がある。これに対し本発明者らは、アリールオニウム塩のベンゼン環の共役長を長くできれば、π−π* の光吸収のピークが長波長側にシフトされて短波長域での透明性が改善されるという知見を得た。さらに、このような知見に基づき本発明者らは、上記一般式(1)で表される化合物においては、2つのベンゼン環のオルト位を化学的に結合することで、これらベンゼン環の相対的な回転が妨げられて平面的に配置されることになり、結果的に2つのベンゼン環のπ電子雲が互いに共役してエネルギー状態が低下し、ひいてはArFエキシマレーザー光の波長193nm付近に透過率の窓が開くことを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0049】
上述したように、本発明で用いられる上記一般式(1)で表される化合物は、光酸発生剤として放射線の照射により酸を発生する際の量子収率が高く、アリールオニウム塩のベンゼン環にかえてナフタレン環などの縮合芳香環を導入しπ電子雲の共役を広げた場合と比較しても、ArFエキシマレーザー光などの短波長光に対する透明性に優れている。なおここで、アリールオニウム塩のベンゼン環を単にアルキル基で置換した化合物についても、充分な量子収率が得られ難く、光酸発生剤として満足できるものではない。
【0050】
一方、光酸発生剤から発生した酸による酸分解性基あるいは酸架橋性基の反応効率、換言すれば光酸発生剤の触媒能は、そのカチオン部分の構造にはさぼど依存せず主としてアニオン種X− で決定されるので、上記一般式(1)で表される化合物においては、こうした触媒能も従来の光酸発生剤であるベンゼン環を有するアリールオニウム塩と何ら遜色ない。したがって本発明においては、上記一般式(1)で表される化合物を光酸発生剤として用いることで、短波長光に対しても極めて高感度の化学増幅型レジストを得ることが可能となる。
【0051】
このような本発明で用いられる光酸発生剤において、上記一般式(1)中のAr1 ,Ar2 は、上述した通り芳香環または縮合芳香環であり、具体的にはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、フェナントレン環、ピレン環などが挙げられる。さらに、短波長光に対する感度を考慮すると、特にAr1 ,Ar2 はベンゼン環であることが好ましい。また、これらの芳香環、縮合芳香環にR1 ,R2 として適宜導入される1価の有機基としては、メチル基、メトキシ基、ヒドロキシル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基などが例示される。
【0052】
さらに本発明においては、これらの有機基の水素原子が、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などで置換されたものであってもよい。ただし、ArFエキシマレーザ光などの短波長光に対する透明性を考慮すると、R1 ,R2 はベンゼン環を有していない有機基であることが好ましく、かつ解像性の良好なレジストパターンを形成するうえでは、炭素数6以下のアルキル基であることが好ましい。
【0053】
また本発明では、上記一般式(1)中のZがS−RまたはSe−Rである場合、Rとしては炭素数1以上10以下のアルキル基またはパーフルオロアルキル基が導入される。なお、こうしたRがベンゼン環を有するアリール基であると、ここでのベンゼン環は分子内で回転し、Ar1 ,Ar2 として導入される芳香環または縮合芳香環と適宜非平面的に配置され得るので、このベンゼン環のπ電子雲の共役は広がらず、ArFエキシマレーザー光などの短波長光に対する透明性を改善することができない。さらに、感光性組成物の溶媒可溶性及びレジストパターンを形成したときのパターン形状の点では、Rはパーフルオロアルキル基であることが好ましい。したがってこれらの点を鑑みると、本発明の感光性組成物における光酸発生剤としては、下記一般式(2),(3)及び(4)で表わされる化合物の少なくとも1種が特に好ましく用いられる。
【0054】
【化8】
(式中、R1,R2 は一価の有機基、XはCF3SO3,CH3SO3,CF3COO,ClO4,SbF6およびAsF6からなる群から選択され、m、nは0または正の整数を示す。)
本発明において上述したような光酸発生剤の配合量は、ポジ型の化学増幅型レジストの場合、樹脂及び溶解抑止剤中の酸分解性基に対し0.1mol%以上であることが好ましい。なおこの量は、用いられる樹脂の種類などによっても異なるが、一般に感光性組成物の固形分中0.01wt%以上程度に相当する。さらに、光酸発生剤のより好ましい配合量は、酸分解性基に対し0.5〜5mol%である。一方ネガ型の化学増幅型レジストの場合には、光酸発生剤の配合量は樹脂及び架橋剤中の酸架橋性基に対し1mol%以上とするのが好ましく、これは用いられる樹脂の種類などによっても異なるが、一般に感光性組成物の固形分中2〜5wt%以上程度に相当する。さらに、このときの光酸発生剤のより好ましい配合量は、酸架橋性基に対し5〜20mol%である。
【0055】
なお本発明で、光酸発生剤の好ましい配合量を上述したような範囲内に規定したのは、光酸発生剤の配合量が少なすぎると、感光性組成物において充分な感度を得ることが困難となり、光酸発生剤の配合量が多すぎると、感光性組成物の塗膜性が低下する傾向があるからである。また本発明では、こうした光酸発生剤を単独または2種以上混合して用いることができる。
【0056】
本発明の感光性組成物は、以上の各成分を有機溶媒に溶解させ濾過することで、通常ワニスとして調製される。ただし本発明の感光性組成物においては、これらの成分以外にエポキシ樹脂、プロピレンオキシド−エチレンオキシド共重合体、ポリスチレンなどのその他のポリマーや、耐環境性向上のためのアミン化合物、ピリジン誘導体などの塩基性化合物、塗膜改質用の界面活性剤、反射防止剤としての染料などが適宜配合されても構わない。
【0057】
ここでの有機溶媒には、例えばシクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、γ−ブチロラクトン、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのグリコール系溶媒、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒や、溶解性向上のためこれらにジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアルデヒド、N−メチルピロリジノンなどを添加した混合溶媒を用いることができる。また、メチルプロピオン酸メチルなどのプロピオン酸誘導体、乳酸エチルなどの乳酸エステル類やPGMEA(プロピレングリコールモノエチルアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなども、低毒性であり好ましく用いられ得る。なお本発明において、このような溶媒は単独または2種以上を混合して用いることができ、さらにイソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール、ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどの脂肪族アルコールや、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒が含有されていても構わない。
【0058】
次に、本発明の感光性組成物を用いたパターン形成方法について、ポジ型の化学増幅型レジストの場合を例に挙げ説明する。まず、上述したような有機溶媒に溶解されたレジストのワニスを回転塗布法やディッピング法などで所定の基板上に塗布した後、150℃以下好ましくは70〜120℃で乾燥してレジスト膜を成膜する。なおここでの基板としては、例えばシリコンウェハ;表面に各種の絶縁膜や電極、配線などが形成されたシリコンウェハ;ブランクマスク;GaAs、AlGaAsなどの III−V族化合物半導体ウェハ;クロムまたは酸化クロム蒸着マスク;アルミ蒸着基板;IBPSGコート基板;PSGコート基板;SOGコート基板;カーボン膜スパッタ基板などを使用することができる。
【0059】
次いで、所定のマスクパターンを介して化学線を照射するか、またはレジスト膜表面に化学線を直接走査させて、レジスト膜を露光する。上述した通り本発明の感光性組成物は、短波長光をはじめ広範囲の波長域の光に対して優れた透明性を有しているので、ここでの化学線としては紫外線、X線、低圧水銀ランプ光のi線、h線、g線、キセノンランプ光、KrFやArFのエキシマレーザ光、F2 エキシマレーザ光などのdeepUV光や紫外線、シンクロトロンラジエーション(SR)、シンクロトロンオービタルラジエーション(SOR)、電子線(EB)、γ線、イオンビームなどを使用することが可能である。特に、本発明の感光性組成物は、光源としてArFのエキシマレーザ光またはF2 エキシマレーザ光を用いた際に、その効果を発揮する。
【0060】
続いて、ホットプレート上やオーブン中での加熱あるいは赤外線照射などにより、レジスト膜に50〜180℃、好ましくは60〜120℃程度のベーキング処理を適宜施す。なおこのときの温度が50℃未満だと、露光部において光酸発生剤から発生した酸による化学的な反応をさほど促進させることができず、逆に180℃を越えると未露光部についても光酸発生剤が分解されて酸が生じ、解像性の良好なレジストパターンを形成できなくなるおそれがある。ただしレジスト膜を露光した後、現像に先立ちレジスト膜を十分長時間放置する場合は、上述したようなベーキング処理を省略することも可能である。
【0061】
次に浸漬法、スプレー法などでレジスト膜を現像し、露光部または未露光部のレジスト膜をアルカリ溶液に選択的に溶解・除去して、所望のレジストパターンを形成する。このときアルカリ溶液の具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムハイドロキシド水溶液、コリン水溶液などの有機アルカリ水溶液や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ水溶液、これらにアルコールや界面活性剤などを添加した溶液が挙げられる。なおここでのアルカリ溶液の濃度は、露光部と未露光部とで溶解速度の差を充分なものとする観点から、15重量%以下であることが好ましい。
【0062】
こうして、本発明の感光性組成物を用いて形成されたレジストパターンは極めて解像性が良好であり、例えばこのレジストパターンをエッチングマスクとしたドライエッチングで、露出した基板などにクォーターミクロン程度の超微細なパターンを忠実に転写することができる。なお、上述したような工程以外の他の工程が付加されても何ら差支えなく、例えばレジスト膜の下地としての平坦化層形成工程、レジスト膜と下地との密着性向上のための前処理工程、レジスト膜の現像後に現像液を水などで除去するリンス工程、ドライエッチング前の紫外線の再照射工程を適宜施すことが可能である。
【0063】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
まず図1に、本発明で用いられる光酸発生剤または従来の光酸発生剤を住友化学社製の樹脂S−lecに対し、2μmol/gの配合量で配合してなる組成物の紫外吸収スペクトルを示す。図中、1〜4がそれぞれ本発明の感光性組成物における光酸発生剤である、S−(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウムトリフルオロメタンスルホン酸(PAG−1)、Se−(トリフルオロメチル)ジベンゾセレノフェニウムトリフルオロメタンスルホン酸(PAG−2),I−ジベンゾヨードノフェニウムトリフルオロメタンスルホン酸(PAG−3)及びS−(パーフルオロエチル)ジベンゾチオフェニウムトリフルオロメタンスルホン酸(PAG−4)を配合したときの紫外吸収スペクトル図であり、5,6が従来の光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホン酸(TPS・OTf)、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸(DPI・OTf)を配合したときの紫外吸収スペクトル図である。ただし図1には、上述したような各組成物の塗膜の吸光度を、厚さ1μmに規格化した値を示している。なお、ここで用いた光酸発生剤の化学式を以下に示す。
【0064】
【化18】
【0065】
図1に示されるように、従来の光酸発生剤を配合した組成物では波長193nm付近に大きな光吸収のピークを有している。一方、(PAG−1)〜(PAG−4)の光酸発生剤を配合した組成物においては、いずれも波長193nm付近に透過率の窓が開き、短波長域での透明性に優れていることが明らかである。
【0066】
次にこれら各光酸発生剤について、ポリサイエンス社製のポリメチルメタクリレート(PMMA)(分子量20,000)中波長193nmの光子1個当りの量子収率を、以下の式に則して算出した。この結果、(TPS・OTf)の量子収率が0.036、(DPI・OTf)の量子収率が0.032であったのに対し、(PAG−1)〜(PAG−4)の量子収率はそれぞれ0.16,0.09,0.22,0.13であり、本発明の感光性組成物における光酸発生剤では、充分な量子収率を得ることができた。
【0067】
量子収率=(光酸発生剤から発生した酸の数)/(光酸発生剤に吸収された光子数)
なおここで、酸の数はポリマーマトリックス中に発生した単位体積当りの酸の数として定義されており、具体的には、テトラブロモフェノールブルーナトリウム塩をエチルセロソルブアセテートに7.9×10−5mol溶解した指示薬の退色を、UV分光器で測定することで求めた。また光酸発生剤に吸収された光子数は、PMMAに光酸発生剤を混合する前後での透過率の差から計算した。
【0068】
さらに、上述したような(PAG−1)〜(PAG−4)の光酸発生剤を、それぞれ酸分解製基を有する樹脂に配合して本発明の感光性組成物を調製し、その紫外吸収スペクトルを測定した。なおここでは、アルカリ可溶性樹脂であるポリアクリル酸に対しそのカルボキシル基の30mol%に酸分解性基としてt−ブチル基を導入してなる樹脂(重量平均分子量:20,000)を用い、光酸発生剤の配合量は図1の場合と同様に2μmol/gとした。
【0069】
一方比較例として、ポリヒドロキシスチレンの水酸基の20mol%にt−ブチル基を導入してなる樹脂(重量平均分子量:7,000)に対し、光酸発生剤として(TPS・OTf)を2μmol/g配合してなるKrFエキシマレーザ光用の感光性組成物、及びクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量:5,500)に感光剤として2,3,4,4’− テトラヒドロキシベンゾフェノン−4− ナフトキノンジアジドスルフォン酸エステルを2μmol/g配合してなるi線用の感光性組成物についても同様に紫外吸収スペクトルを測定した。結果を図2に示す。
【0070】
図中、1´〜4´がそれぞれ(PAG−1)〜(PAG−4)の光酸発生剤を配合した本発明の感光性組成物の紫外吸収スペクトル図、5´がKrFエキシマレーザ光用の感光性組成物の紫外吸収スペクトル図、6´がi線用の感光性組成物の紫外吸収スペクトル図である。なおここでは図1と同様に、上述したような各感光性組成物からなるレジスト膜の吸光度を、厚さ1μmに規格化した値を示す。
【0071】
図2に示される通り、本発明の感光性組成物はいずれも波長193nmでの吸光度が1以下であり、ArFエキシマレーザ光に対して優れた透明性を有している。一方、比較例の感光性組成物は波長193nmにおける吸光度が約30にも及んでおり、ArFエキシマレーザ光に対してはその透明性が全く不充分であることが判る。
【0072】
次に、これら本発明の感光性組成物及び比較例としてのKrFエキシマレーザ光用の感光性組成物について、ArFエキシマレーザ光に対する感度を調べた。すなわち、まず上述したような感光性組成物からなる厚さ0.6μmのレジスト膜をそれぞれ成膜して、これに感度測定用のマスクを介してArFエキシマレーザ光を照射したうえで100℃、90秒間のベーキング処理を施し、引き続いて0.28Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液で現像した後のレジスト膜の残膜厚さを測定した。こうして得られた各感光性組成物の感度曲線を、図3に示す。なお図3におけるレジスト膜の残膜厚さは、レジスト膜の成膜時の厚さに対する比で規格化している。
【0073】
図中、1´〜4´がそれぞれ(PAG−1)〜(PAG−4)の光酸発生剤を配合した本発明の感光性組成物の感度曲線、5´がKrFエキシマレーザ光用の感光性組成物の感度曲線である。この図3から明らかなように、比較例のKrFエキシマレーザ光用の感光性組成物がArFエキシマレーザ光にはほとんど感光しないのに対し、本発明の感光性組成物はArFエキシマレーザ光を光源とした場合でも高い感度が得られている。
(実施例1)
上述した通りのポリアクリル酸にt−ブチル基を導入してなる樹脂1.2gに(PAG−1)の光酸発生剤0.06gを配合し、さらにこれらの成分をエチルセロソルブアセテート8.8gに溶解させ、実施例1の感光性組成物を調製した。得られた感光性組成物の溶液を、シリコンウエハ上に3000回転/分で30秒間回転塗布し、次いでホットプレート上で110℃、100秒間乾燥して厚さ0.5μmのレジスト膜を成膜した。
【0074】
次に、波長193nmのArFエキシマレーザ光を光源として所定のラインアンドスペースパターンのパターン光をレジスト膜に露光し、さらに100℃、180秒間のベーキング処理を施した。この後、0.28Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液でレジスト膜を25℃、60秒間現像した。本実施例の感光性組成物では、こうしてポジ型のレジストパターンを形成した結果、38mJ/cm2の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例2)
(PAG−1)にかえて(PAG−2)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果、本実施例においては、60mJ/cm2の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例3)
(PAG−1)にかえて(PAG−3)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果、本実施例においては、31mJ/cm2の露光量で0.30μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例4)
(PAG−1)にかえて(PAG−4)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果、本実施例においては、40mJ/cm2の露光量で1.0μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例5)
(PAG−1)の光酸発生剤のかわりにI−ジベンゾヨードノフェニウムトリフルオロ酢酸を同様用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、100mJ/cm2の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例6)
(PAG−1)の光酸発生剤のかわりにI−ジベンゾヨードノフェニウムメタンスルホン酸を同様用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、80mJ/cm2の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例7)
(PAG−1)の光酸発生剤のかわりにI−ジベンゾヨードノフェニウムヘキサフルオロアンチモネートを同様用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、22mJ/cm2の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例8)
(PAG−1)の光酸発生剤のかわりにI−ジベンゾヨードノフェニウムテトラフルオロボレートを同様用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、15mJ/cm2の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例9)
(PAG−1)の光酸発生剤のかわりにI−ジベンゾヨードノフェニウムヘキサフルオロホスフェートを同様用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、25mJ/cm2の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例10)
(PAG−1)の光酸発生剤のかわりにI−ジベンゾヨードノフェニウムヘキサフルオロアルサネートを同様用いた以外は実施例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、15mJ/cm2の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(参考例1)
アルカリ可溶性樹脂であるポリヒドロキシスチレンの水酸基の26mol%に酸分解性基としてt-ブトキシカルボニル基を導入してなる樹脂(重量平均分子量:5,100)2.5gに、(PAG−1)の光酸発生剤0.05gを配合し、さらにこれらの成分をエチルセロソルブアセテート7.5gに溶解させ、実施例11の感光性組成物を調製した。得られた感光性組成物の溶液を、シリコンウエハ上に3000回転/分で30秒間回転塗布し、次いでホットプレート上で110℃、100秒間乾燥して厚さ0.94μmのレジスト膜を成膜した。
【0075】
次に、波長248nmのKrFエキシマレーザ光を光源として所定のラインアンドスペースパターンのパターン光をレジスト膜に露光し、さらに120℃、90秒間のベーキング処理を施した。この後、0.28Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液でレジスト膜を25℃、60秒間現像した。本実施例の感光性組成物では、こうしてポジ型のレジストパターンを形成した結果、38mJ/cm2の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(参考例2)
PAG−1)にかえて(PAG−2)の光酸発生剤を同量用いた以外は参考例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、35mJ/cm2の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(参考例3)
(PAG−1)にかえて(PAG−3)の光酸発生剤を同量用いた以外は参考例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、24mJ/cm2の露光量で0.30μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(参考例4)
(PAG−1)にかえて(PAG−4)の光酸発生剤を同量用いた以外は参考例1と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果、本実施例においては、44mJ/cm2の露光量で1.0μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例15)
酸分解性基を有する樹脂としてのメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、t-ブチルメタクリレート及びナフチルメタクリレートの30:30:30:10の4元共重合体(重量平均分子量:16,000)1.5gに、(PAG−1)の光酸発生剤0.06gを配合し、さらにこれらの成分をエチルセロソルブアセテート8.5gに溶解させ、実施例15の感光性組成物を調製した。得られた感光性組成物の溶液を、シリコンウエハ上に3000回転/分で30秒間回転塗布し、次いでホットプレート上で110℃、100秒間乾燥して厚さ0.55μmのレジスト膜を成膜した。
【0076】
次に、波長193nmのArFエキシマレーザ光を光源として所定のラインアンドスペースパターンのパターン光をレジスト膜に露光し、さらに100℃、180秒間のベーキング処理を施した。この後、0.014Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液でレジスト膜を25℃、15秒間現像した。本実施例の感光性組成物では、こうしてポジ型のレジストパターンを形成した結果、230mJ/cm2 の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例16)
(PAG−1)にかえて(PAG−2)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例15と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、260mJ/cm2 の露光量で0.18μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例17)
(PAG−1)にかえて(PAG−3)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例15と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、180mJ/cm2 の露光量で0.20μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例18)
(PAG−1)にかえて(PAG−4)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例15と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、150mJ/cm2 の露光量で1.0μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例19)
酸分解性基を有する樹脂としてのアクリル酸メチル、t−ブチルメタクリレート及びメンチルメタクリレートの35:35:30の3元共重合体(重量平均分子量:13,000)1.2gに、(PAG−1)の光酸発生剤0.06gを配合し、さらにこれらの成分をシクロヘキサノン8.8gに溶解させ、実施例19の感光性組成物を調製した。得られた感光性組成物の溶液を、シリコンウエハ上に3000回転/分で30秒間回転塗布し、次いでホットプレート上で110℃、100秒間乾燥して厚さ0.50μmのレジスト膜を成膜した。
【0077】
次に、波長193nmのArFエキシマレーザ光を光源として所定のラインアンドスペースパターンのパターン光をレジスト膜に露光し、さらに120℃、180秒間のベーキング処理を施した。この後、0.14Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液でレジスト膜を25℃、15秒間現像した。本実施例の感光性組成物では、こうしてポジ型のレジストパターンを形成した結果、55mJ/cm2 の露光量で0.55μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例20)
(PAG−1)にかえて(PAG−2)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例19と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、72mJ/cm2 の露光量で0.45μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例21)
(PAG−1)にかえて(PAG−3)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例19と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、34mJ/cm2 の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例22)
(PAG−1)にかえて(PAG−4)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例19と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、30mJ/cm2 の露光量で1.5μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例23)
酸分解性基を有する樹脂としてのアクリル酸メチル、t−ブチルメタクリレート及びメンチルメタクリレートの35:35:30の3元共重合体(重量平均分子量:13,000)0.9gに、溶解抑止剤としてナフトールノボラック(重量平均分子量:1,000)0.9gと、(PAG−1)の光酸発生剤0.06gを配合し、さらにこれらの成分をシクロヘキサノン8.8gに溶解させ、実施例23の感光性組成物を調製した。得られた感光性組成物の溶液を、シリコンウエハ上に3000回転/分で30秒間回転塗布し、次いでホットプレート上で110℃、100秒間乾燥して厚さ0.48μmのレジスト膜を成膜した。
【0078】
次に、波長193nmのArFエキシマレーザ光を光源として所定のラインアンドスペースパターンのパターン光をレジスト膜に露光し、さらに120℃、180秒間のベーキング処理を施した。この後、0.28Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液でレジスト膜を25℃、30秒間現像した。本実施例の感光性組成物では、こうしてポジ型のレジストパターンを形成した結果、35mJ/cm2 の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例24)
(PAG−1)にかえて(PAG−2)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例23と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、42mJ/cm2 の露光量で0.30μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例25)
(PAG−1)にかえて(PAG−3)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例23と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、30mJ/cm2 の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例26)
(PAG−1)にかえて(PAG−4)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例23と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、36mJ/cm2 の露光量で1.2μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例27)
アルカリ可溶性樹脂としてのアクリル酸及びメンチルメタクリレートの60:40の共重合体(重量平均分子量:15,000)1.5gに、溶解抑止剤として下記化学式で表されるジt−ブトキシカルボニル化1,5−ナフトジオール0.3gと、(PAG−1)の光酸発生剤0.06gを配合し、さらにこれらの成分をシクロヘキサノン8.2gに溶解させ、実施例27の感光性組成物を調製した。得られた感光性組成物の溶液を、シリコンウエハ上に3000回転/分で30秒間回転塗布し、次いでホットプレート上で110℃、100秒間乾燥して厚さ0.45μmのレジスト膜を成膜した。
【0079】
【化19】
【0080】
次に、波長193nmのArFエキシマレーザ光を光源として所定のラインアンドスペースパターンのパターン光をレジスト膜に露光し、さらに120℃、180秒間のベーキング処理を施した。この後、0.28Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキシド水溶液でレジスト膜を25℃、30秒間現像した。本実施例の感光性組成物では、こうしてポジ型のレジストパターンを形成した結果、50mJ/cm2 の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例28)
(PAG−1)にかえて(PAG−2)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例27と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、65mJ/cm2 の露光量で0.30μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例29)
(PAG−1)にかえて(PAG−3)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例27と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、35mJ/cm2 の露光量で0.25μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例30)
(PAG−1)にかえて(PAG−4)の光酸発生剤を同量用いた以外は実施例27と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、42mJ/cm2 の露光量で1.0μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
(実施例31)
溶解抑止剤としてジt−ブトキシカルボニル化1,5−ナフトジオールのかわりに、下記化学式で表されるジt−ブトキシカルボニル化1,1’− ビス(4−ヒドロキシナフチル)シクロヘキサンを同量用いた以外は実施例27と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、55mJ/cm2 の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
【0081】
【化20】
(実施例32)
溶解抑止剤としてジt−ブトキシカルボニル化1,5−ナフトジオールのかわりに、下記化学式で表されるジt−ブトキシカルボニル化1,1’− ビス(4−ヒドロキシナフチル)シクロペンタンを同量用いた以外は実施例27と全く同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。この結果本実施例においては、52mJ/cm2 の露光量で0.35μmのラインアンドスペースパターンを解像することができた。
【0082】
【化21】
(実施例33)
本発明の感光性組成物を、メチルメタクリレートとt−ブチルメタクリレートとのランダム共重合体に1wt%混合し、エチルセロソルブアセテートに溶解した。この溶液をシリコンウェハー上にスピンコートした後、120℃90秒間のベーキングを施し、膜厚0.3μmのレジスト膜を成膜した。
【0083】
F2 エキシマレーザー光(波長159nm)からの光を直径5mmの光線とし、レジスト膜上に照射した。続いて、100℃90秒間のベーキングを施し、引き続いて0.14Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像した。この結果、レジスト膜が溶解した露光量は、以下の通りであった。
【0084】
【表1】
【0085】
以上の結果から、これらの感光性組成物は、F2エキシマレーザー光に対しても感度があることがわかる。
このように本発明の感光性組成物では、ArFエキシマレーザ光やF2エキシマレーザー光を光源として使用した場合に、高い感度で解像性の良好なレジストパターンを形成することができた。すなわち本発明の感光性組成物は、波長193nmのArFエキシマレーザ光などの短波長光をはじめ広範囲の波長域の光に対し、極めて高感度の化学増幅型レジストとして適用可能であることが確認された。
【0086】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明によれば、波長の極めて短いArFエキシマレーザ光に対する透明性が優れ、高い感度で解像性の良好なレジストパターンを形成することができる感光性組成物を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各光酸発生剤を含有する組成物の紫外吸収スペクトル図。
【図2】本発明及び比較例の感光性組成物の紫外吸収スペクトル図。
【図3】本発明及び比較例の感光性組成物の感度曲線を示す特性図。
Claims (9)
- ArFエキシマレーザ光およびF2エキシマレーザ光のいずれかにより露光を施しパターンを形成するための感光性組成物であって、
酸分解性基を有する化合物と、下記一般式(1)で表される化合物と、アクリル酸またはその誘導体、メタクリル酸またはその誘導体、アクリロニトリル誘導体、4−ヒドロキシマレイミド樹脂、およびポリアミック酸から選択される少なくとも1種のアルカリ可溶性樹脂とを含有する感光性組成物。
- 前記一般式(1)におけるAr1およびAr2がベンゼン環である請求項1に記載の感光性組成物。
- 前記一般式(1)におけるR1およびR2が、炭素数6以下のアルキル基である請求項1または2に記載の感光性組成物。
- 前記一般式(1)で表される化合物の配合量は、酸分解性基または酸架橋性基に対し0.1mol%以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
- 前記一般式(1)で表される化合物の配合量は、酸分解性基または酸架橋性基に対し0.5mol%以上5mol%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
- ArFエキシマレーザ光およびF2エキシマレーザ光のいずれかにより露光を施しパターンを形成するための感光性組成物であって、
アクリル酸またはその誘導体、メタクリル酸またはその誘導体、アクリロニトリル誘導体、4−ヒドロキシマレイミド樹脂、およびポリアミック酸から選択され、酸分解性基を有する少なくとも1種のアルカリ可溶性樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とを含有する感光性組成物。
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