JP3607403B2 - 遮水用シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一般廃棄物処分場、産業廃棄物処分場や家畜の屎尿処分場あるいは貯水池、護岸用等に用いられる遮水用シートおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
遮水用シートは処理場や貯水池からの水の漏洩、透過を防止することを目的とするものであって、各種廃棄物の処理場からの汚水の漏出防止や貯水池、護岸の漏水防止のために土面に排水用シートを敷き詰めることが行われている。
これら遮水用シートに要求される主な実用上の特性は、(1)廃棄物の処理場や貯水池のような広大な面積を大型のシートを継ぎ合わせて敷き詰めることになるために、シート相互の熱融着性に優れ、現場での施工性等に優れることが要求され、ヒートシール性が容易で熱融着性に優れることが必要であること、(2)一般廃棄物処理場、産業廃棄物処理場、屎尿処分場等では廃棄物からでる油や薬品、腐敗等に対する抵抗性、すなわち、耐油性、耐薬品性や直射日光、風雨等の長期に亘る耐候性等の化学的性質に優れること、(3)地盤の変動や地面の凹凸に追随しうる柔軟性に優れること、(4)土中の岩角、廃棄物中の金属などの突起物等に対する抵抗性、すなわち、突刺強度、引裂強度等の機械的強度に優れること、(5)安価で経済的な優位性を有していること等が望まれている。
【0003】
従来このような遮水用シートには、主としてゴムシート、軟質ポリ塩化ビニルシート、高密度ポリエチレンシート等が用いられているが、ゴムシートは柔軟性や突刺強度に優れるものの、ヒートシール性に劣り熱溶着性に難点を有する。軟質ポリ塩化ビニルシートは、時間の経過と共に可塑剤がブリードアウトし、脆化し柔軟性がなくなり、機械的強度が低下や耐候性、耐薬品性、耐油性等が劣るものとなる。また、焼却処分の際には塩素ガスを発生するという問題点を有する。高密度ポリエチレンシートは、耐候性、耐薬品性、耐油性等の化学的性質や機械的性質に優れるものの、柔軟性に劣るという問題点を有している。また、他の樹脂シートとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、熱可塑性樹脂エラストマー(TPE)等が提案されているが、LDPEシートは、突刺強度等の機械的強度や柔軟性もいまだ充分でなく、追随性などに問題を有している。LLDPEシートは、柔軟性と低温ヒートシール性に多少難点を有している。また、EVAシートは、柔軟性と低温ヒートシール性に優れているが、突刺強度等の機械的強度が不充分である。TPEシートは、上述の(1)〜(4)の特性を比較的満足しているものの、シール強度がいまだ十分でなく、かつシート同士のブロッキングが生じ、取扱性に問題があり、価格が高いという難点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記遮水用シートとしての特性を満足させるものであって、低温ヒートシール性を有し、熱融着性に優れ、耐候性、耐薬品性、耐油性等の化学的性質、機械的強度、経済性等に優れる遮水用シートを提供することを目的とするものである。他の目的は厚手の多層構造からなる幅広のシートを容易に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願第1発明は、下記(D1)〜(D5)の触媒形成成分を相互に接触させて得られる触媒の存在下で、エチレンまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを(共)重合して得られる下記(イ)〜(へ)の性状を満足する(A)エチレン(共)重合体5〜95重量%と(B)他のエチレン系重合体95〜5重量%からなる樹脂組成物層(I)と該(A)エチレン(共)重合体、(B)他のエチレン系重合体またはそれらの組成物からなる層(II)を少なくとも含む多層構造からなることを特徴とする遮水用シートである。
<触媒形成成分>
D1:一般式Me1R1 p(OR2)qX1 4−p−qで表される化合物
(式中Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR2は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X1はハロゲン原子を示し、pおよびqは各々0≦p<4,0≦p+q≦4の範囲を満たす整数である)、
D2:一般式Me2R3 m(OR4)nX2 z−m−nで表される化合物
(式中Me2は周期律表第I〜III族元素、R3およびR4は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2が水素原子の場合はMe2は周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMe2の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ0≦m+n≦zである)、
D3:共役二重結合を持つ有機環状化合物、および
D4:有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物、
D5:無機担体および/または粒子状ポリマー担体。
<性状>
(イ)密度0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn) 1.5〜4.5
(ニ)組成分布パラメーターCb 2.00以下
(ホ)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(wt%)と密度dおよびMFRが次の関係を満足すること
1)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR≧0.93の場合
X < 2.0
2)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR<0.93の場合
X < 9.8×103×(0.9300−d+0.008×logMFR)2+2.0
(へ)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること
【0006】
本願第2発明は、該(A)エチレン(共)重合体5〜95重量%と(B)他のエチレン系重合体95〜5重量%の樹脂組成物層(I)と該(A)エチレン(共)重合体、(B)他のエチレン系重合体またはそれらの組成物層(II)を少なくとも含む多層構造からなるシートをインフレーション法で成形することを特徴とする遮水用シートの製造方法である。
【0007】
以下本発明を更に詳細に述べる。
本発明の遮水用シートを形成する(A)エチレン(共)重合体とは、エチレンまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体である。この炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、好ましくは3〜12のものであり、具体的にはプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。また、これらのα−オレフィンは一種でも二種以上を併用してもよく、その含有量は、合計で通常30モル%以下、好ましくは3〜20モル%の範囲で選択されることが望ましい。
【0008】
本発明の特定の(A)エチレン(共)重合体は、(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3 、好ましくは0.89〜0.95g/cm3 の範囲である。密度が0.86g/cm3 未満では剛性耐熱性が劣り、0.97g/cm3 以上では耐衝撃性が十分でない。
また、(A)エチレン(共)重合体の(ロ)メルトフローレートは0.01〜50g/10分、好ましくは0.03〜30g/10分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では成形加工性が劣り、50g/10分以上では強度が低下する。
【0009】
本発明のエチレン(共)重合体の(ハ)Mw/Mnは1.5〜4.5であり、好ましくは1.8〜4.0、さらに好ましくは2.0〜3.0の範囲にあることが望ましい。Mw/Mnが1.8未満では成形加工性が劣り、3.5以上では耐衝撃性が劣る。
本発明のエチレン(共)重合体の分子量分布(Mw/Mn)の算出方法は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、この比Mw/Mnを求めるものである。
【0010】
本発明のエチレン(共)重合体の組成分布パラメーターの測定法は下記の通りである。
試料に耐熱安定剤を加え、ODCBに濃度0.2重量%となるように135℃で加熱溶解する。溶液を、けい藻土(セライト545)を充填したカラムに移送し、0.1℃/minで25℃まで冷却し、試料をセライト表面に沈着する。次に、ODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を5℃きざみに120℃まで段階的に昇温し、試料を溶出させ試料を分別する。溶液をメタノールで再沈後、ろ過、乾燥し、各溶出温度の試料を得る。各試料の重量分率および分岐度(炭素数1000個あたりの分岐数)を測定する。分岐度(測定値)は13C−NMRにより求める。
【0011】
30℃から90℃のフラクションについては次のような、分岐度の補正を行う。すなわち、溶出温度に対して測定した分岐度をプロットし、相関関係を最小自乗法で直線に近似し、検量線を作成する。この近似の相関係数は十分大きい。この検量線により求めた値を各フラクションの分岐度とする。溶出温度95℃以上では溶出温度と分岐度に必ずしも直線関係が成立しないのでこの補正は行わない。
【0012】
次にそれぞれのフラクションの重量分率wi を、溶出温度5℃当たりの分岐度bi の変化量(bi −bi−1 )で割って相対濃度ci を求め、分岐度に対して相対濃度をプロットし、組成分布曲線を得る。この組成分布曲線を一定の幅で分割し、次式より組成分布パラメーターCbを算出する。
【0013】
【数1】
【0014】
ここでcj とbj はそれぞれj番目の区分の相対濃度と分岐度である。組成分布パラメーターCbは試料の組成が均一である場合に1となり、組成分布が広がるに従って値が大きくなる。
【0015】
ポリマーの組成分布を測定する方法は多くの提案がなされている。例えば特開昭60−88016号では、試料を溶剤分別して得た各分別試料の分岐数に対して、累積重量分率が特定の分布(対数正規分布)をすると仮定して数値処理を行い、重量平均分岐度(Cw)と数平均分岐度(Cn)の比を求めている。この近似計算は、試料の分岐数と累積重量分率が対数正規分布からずれると精度が下がり、市販のLLDPEについて測定を行うと相関係数R2 はかなり低く、値の精度は充分でない。また、このCw/Cnの測定法は、本発明のCbのそれと異なるが、あえて数値の比較を行えば、Cw/Cnの値は、Cbよりかなり大きくなる。
【0016】
本発明のエチレン(共)重合体の(ニ)組成分布は2.00以下であり、共重合体の場合には、1.08〜2.00の範囲であり、好ましくは1.10〜1.80、さらに好ましくは1.12〜1.70の範囲にあることが望ましい。
該共重合体の(ニ)組成分布が1.08未満では、シート成形加工性が劣り、2.00以上では、機械的強度の格段なる改良が望めない恐れがある。したがって、組成分布が1.30以下の場合には後述のエチレン系重合体を配合することが望ましい。
【0017】
本発明のエチレン(共)重合体の25℃のおけるODCB可溶分(X重量%)は、下記の方法により測定する。
試料0.5gを20mlのODCBに加え135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液のメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1付近の吸収ピーク面積を求め、あらかじめ作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分を求める。
【0018】
本発明のエチレン(共)重合体は、(ホ)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(wt%)と密度dおよびMFRが密度dおよびMFRの値が d−0.008×logMFR≧0.93を満たす場合は、Xは2重量%未満であり、 d−0.008×logMFR<0.93の場合はX< 9.8×103 ×(0.9300−d+0.008 ×log MFR)2+2.0の関係を満足しており、好ましくは、密度dおよびMFRの値が d−0.008×logMFR≧0.93を満たす場合は、Xは1重量%未満であり、 d−0.008×logMFR<0.93の場合はX< 7.4×103 ×(0.9300−d+0.008 ×log MFR)2+1.0であり、さらに好ましくは、密度dおよびMFRの値が d−0.008×logMFR≧0.93を満たす場合は、Xは0.5重量%未満であり、 d−0.008×logMFR<0.93の場合はX< 5.6×103 ×(0.9300−d+0.008 ×log MFR)2+0.5関係を満足していることが望ましい。
【0019】
25℃におけるオルソジクロロベンゼン可溶分は、ポリマーに含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下、成形品表面のベタツキの原因となるためこの含有量は少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、コモノマーの含有量および分子量に影響される。従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合したコモノマーのうち、ポリマーの高分岐度成分に含まれるものの割合が少ないことを示す。
【0020】
本発明の(A)成分がエチレン共重合体の場合は、(ヘ)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数であることが好ましく、これらの溶出温度は85℃から100℃の間にピークが存在することが特に好ましい。これらのピークが存在することにより、成形体の耐熱性および剛性が向上する。また、図1には本発明の共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示し、図2は一般的なメタロセン触媒による共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示したものである。この図から明らかなように本発明の(A)成分のエチレン(共)重合体は、一般のメタロセン触媒によるエチレン−α−オレフィン共重合体とは明確に区別されるものである。
【0021】
本発明にかかわる連続昇温溶出分別法(TREF)の測定方法は下記の通りである。試料に耐熱安定剤を加え、ODCBに濃度0.05重量%となるように135℃で加熱溶解する。試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/minの冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温し、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料について、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm−1に対する吸収を赤外検出機で検出し、定量分析する。この値から、溶液中PEの重量濃度定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。TREF分析は極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出出来ない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0022】
本発明の特定のエチレン(共)重合体は、以下のD1〜D5からなる触媒を用いて重合して得られた上記(イ)〜(へ)の性状を満足するものである。
【0023】
すなわち、D1:一般式Me1 R1 p (OR2 )q X1 4−p−qで表される化合物(式中Me1 はZr、Ti、Hfを示し、R1 およびR2 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X1 はハロゲン原子を示し、p、qおよびrは各々0≦p<4、0≦p+q≦4の範囲を満たす整数である)、D2:一般式Me2 R3 m (OR4 )n X2 z−m−n で表される化合物(式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素、R3 およびR4 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X2 はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 は周期律表第III 族元素の場合に限る)を示し、zはMe2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである)、D3:共役二重結合を持つ有機環状化合物、およびD4:有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物、D5:無機担体および/または粒子状ポリマー担体を相互に接触させて得られる触媒である。
【0024】
上記触媒成分(D1)の一般式Me1 R1 p (OR2 )q X1 4−p−qで表される化合物の式中Me1 はZr、Ti、Hfを示す。これらの遷移金属の種類は限定されるものではなく、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるZrが含まれることが特に好ましい。R1 およびR2 は各々炭素数1〜24の炭化水素基で、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X1 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示し、pおよびqはそれぞれ0≦p<4、0≦q<4、0≦p+q≦4の範囲を満たし、好ましくは0≦p+q≦4の範囲である。
【0025】
上記触媒成分(D1)一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、ジプロポキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシモノクロロジルコニウム、ジブトキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。
【0026】
上記触媒成分(D2)の一般式Me2 R3 m (OR4 )n X2 z−m−n で表される化合物の式中Me2 は周期律表第I〜III 族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウムなどである。R3 およびR4 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2 はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2 が水素原子の場合はMe2 はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III 族元素の場合に限るものである。また、zはMe2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。
【0027】
上記触媒成分(D2)の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0028】
上記触媒成分(D3)の共役二重結合を持つ有機環状化合物とは、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0029】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0030】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
AL SiR4−L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0031】
上記成分(D3)の有機環状炭化水素化合物の具体例は、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシクロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルインデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシラン等が挙げられる。
【0032】
触媒成分(D4)の有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物とは、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムが得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。また、変性有機アルミニウム化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。
【0033】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0034】
触媒成分(D5)の無機物担体および/または粒子状ポリマー担体とは、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的にはSiO2 、Al2 O3 、MgO、ZrO2 、TiO2 、B2 O3 、CaO、ZnO、BaO、ThO2 等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2 −Al2 O3 、SiO2 −V2 O5 、SiO2 −TiO2 、SiO2 −V2 O5 、SiO2 −MgO、SiO2 −Cr2 O3 等が挙げられる。これらの中でもSiO2 およびAl2 O3 からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、粒子状ポリマー担体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0035】
上記無機物担体および/または粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物などに接触処理させた後に成分(D5)として用いることもできる。
【0036】
本発明の(A)エチレン(共)重合体は、気相法、スラリー法、溶液法等で製造され、一段重合法、多段重合法など特に限定されるものではない。
【0037】
本発明のエチレン系重合体(B)成分は、大別して2種類があり、その第1の成分(B1)は、従来のイオン重合法によるチグラー型触媒またはフイリップス触媒(以下総称してチグラー型触媒という)で得られる密度0.86〜0.97g/cm3 のエチレン重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体であって、具体的には高密度ポリエチレン(HDPE)、線状中密度ポリエチレン(MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられる。
【0038】
上記チグラー型触媒による高密度・線状中・低密度ポリエチレン(HDPE、MDPE、LLDPE)とは、密度が0.91〜0.97g/cm3 、好ましくは0.91〜0.96g/cm3 の範囲であり、MFRが0.005〜20g/10分、好ましくは0.05〜10g/10分、さらに好ましくは0.08〜10g/5分の範囲で選択される。溶融張力は0.3〜40g、好ましくは0.4〜35g、さらに好ましくは0.5〜30gである。Mw/Mnは2.5〜13、好ましくは3〜8である。なおMw/Mnは、GPC分析による重量平均分子量/数平均分子量である。
【0039】
また、上記チグラー型触媒による超低密度ポリエチレン(VLDPE)とは、密度が0.86〜0.91g/cm3 未満、好ましくは0.88〜0.905g/cm3 、MFRは0.01〜20g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分の範囲で選択される。該超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)との中間の性状を示すポリエチレンを有しており、示差走査熱量測定法(DSC)による最大ピーク温度(Tm )60℃以上、好ましくは100℃以上、かつ沸騰n−ヘキサン不溶分10重量%以上の性状を有する特定のエチレン・α−オレフィン共重合体であり、少なくともチタンおよび/またはバナジウムを含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合され、直鎖状低密度ポリエチレンが示す高結晶部分とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムが示す非晶部分とを合わせ持つ樹脂であって、前者の特徴である機械的強度、耐熱性などと、後者の特徴であるゴム状弾性、耐低温衝撃性などがバランスよく共存している。
【0040】
上記チグラー型触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンとしては、炭素数3〜12、好ましくは3〜10の範囲であって、具体的にはプロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等を挙げることができる。
これらα−オレフィンの含有量は3〜40モル%の範囲で選択されることが好ましい。
【0041】
本発明のエチレン系重合体の第2の成分(B2)は、高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体である。
【0042】
上記低密度ポリエチレン(LDPE)は、MFR(メルトフローレート)が、0.05〜20g/10分、好ましくは0.1〜10g/10分、さらに好ましくは1.0〜10g/10分の範囲である。この範囲内であれば組成物の溶融張力が適切な範囲となりシート成形等がし易い。また密度は0.91〜0.94g/cm3 、好ましくは0.912〜0.935g/cm3 、さらに好ましくは0.912〜0.930g/cm3 であり、溶融張力は1.5〜25gは、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。
また、Mw/Mnは3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0である。溶融張力は樹脂の弾性項目であり、上記の範囲であればシート成形等がし易い。
【0043】
本発明のエチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とするプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。これらの中でも特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。すなわち、エチレン50〜99.5重量%、ビニルエステル0.5〜50重量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5重量%からなる共重合体が好ましい。特にビニルエステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。
これらの共重合体のMFRは、0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、溶融張力は2.0〜25g、好ましくは3〜20gである。
【0044】
本発明のエチレンとα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体の代表的な共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体が挙げられ、これらのコモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に(メタ)アクリル酸エステル含有量は3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。
これら共重合体のMFRは、0.1〜20g/10分、好ましくは0.3〜10g/10分であり、溶融張力は2.0〜25g、好ましくは3〜20gである。
【0045】
本発明の遮水用シートは、(A)エチレン(共)重合体5〜95重量%と(B)他のエチレン系重合体95〜5重量%との樹脂組成物の層(I)と該(A)エチレン(共)重合体、(B)他のエチレン系重合体またはそれらの組成物の層(II)を少なくとも含む多層構造からなることを特徴とするものであり、好ましくは(A)エチレン(共)重合体20〜80重量%、(B)他のエチレン系重合体80〜20%、より好ましくは(A)成分60〜40重量%、(B)成分40〜60重量%の範囲とすることにより前記遮水用シートの諸機能を充分満足させることができる。該(A)エチレン(共)重合体が5%未満、(B)他のエチレン系重合体が95重量%を超えると柔軟性、突刺強度、熱融着性、耐薬品性、柔軟性等の特性が損なわれる虞が生じる。
【0046】
また、本発明の遮水用シートは、(A)エチレン(共)重合体5〜95重量%と(B)他のエチレン系重合体95〜5重量%の樹脂組成物の層(I)と該(A)エチレン(共)重合体層(II’)、(B)他のエチレン系重合体層(II’’)またはそれらの組成物の層(II’’’ )を少なくとも含む多層構造からなり、(I)/(II)/(I’)の3層構造で構成されることが好ましい。具体的な例としては、中間層の(A)エチレン(共)重合体の含有量を両外層に比して多くを含有させ、両外層は(A)エチレン(共)重合体の含有量を減少させて、中間層の弾力性、柔軟性を高め、両外層は成形加工性が容易となる構成をとることができる。一方、中間層の(A)エチレン(共)重合体の含有量を両外層に比して少なくし、両外層の(A)エチレン(共)重合体の含有量を多くして土中の角張った岩角や廃棄物中の金属などの突起物が直接触れる両外層の突刺強度を高くする構成とすることもできる。
【0047】
例えば、中間層を(A)エチレン(共)重合体35〜50重量%、(B)LDPE50〜65重量%とし、両外層を(A)エチレン(共)重合体40〜55重量%、(B)LDPE60〜45重量%とすることによりバランスのとれた遮水用シートが得られる。特に(B)他のエチレン系重合体として、LDPE、LLDPE、EVAの再生樹脂や(A)成分と(B)成分との再生組成物を使用することにより優位な経済性を確保することができる。尚本発明において好ましく用いられる再生樹脂はそれぞれの樹脂またはその成形物の製造過程で分離されたものである。
【0048】
これら遮水用シートの層の厚み比は通常1〜10、好ましくは1〜5の範囲であり、特に中間層を厚くし、両外層を薄く成形することが好ましい。
本発明の遮水用シートの製造法は特に限定されないが、インフレーション法により製造されることが望ましい。すなわち、インフレーション法では厚みのある幅広のシートを高速で成形することができ、かつ多層化や再生樹脂との組み合わせ等の多様化したシートの製造が可能であり、経済性に優れるものとなる。該厚みは一般的には200μm以上、特に300μm以上が望ましい。
【0049】
上記遮水用シートの超柔軟性グレードとしては、ヤング率が約200N/mm2 以下、より好ましくは100N/mm2 以下に調整することが望ましい。
【0050】
本発明の遮水用シートは、耐候性を向上させる目的で、前記樹脂成分に100重量部に対して、(C)カーボンブラックを0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部配合することが好ましい。上記(C)カーボンブラックとしては、好ましくはファーネスブラックで、平均粒子径が1〜200mμ、好ましくは3〜100mμ、さらに好ましくは5〜50mμの範囲のものを選択することが望ましい。
該(C)カーボンブラックの粒子径・配合量が前記範囲以外であると耐候性の効果が小さかったり、あるいは遮水用シートの性能に支障をきたす虞が生じる。
【0051】
本発明の遮水用シートを取り扱う場合には、例えば巻回した状態で廃棄処分場の敷設現場まで運び、処分場内でシートを展開し、処分場の表面を完全に覆うように多数の遮水用シートを敷設した後、それらの遮水用シートを相互に接合する。接合方法は、任意の公知技術を使用することができる。例えば、接着剤による接合、粘着剤性シーリング材と高熱を利用した熱板式接合、シート同志を高熱で溶融して接合する熱風溶着法、溶接棒を用いる溶接式溶着法などが挙げられるが、特に熱風溶着法および溶接式融着法が好ましい。また、溶接式法により接合する場合には、遮水用シートを相互に重ね、重なる部分に遮水用シートと同一の材質からなる樹脂を溶接棒として利用し、熱により融着させて一体化する。この方法によれば、接合部の劣化を生じるような異材質の溶剤や接着剤を使用しないため、融着部分は遮水用シートと全く同一の強度、遮水性および耐久性をもつことになる。本発明の遮水用シートは、熱により容易かつ完全に接合を行うことができるため有利である。
【0052】
本発明の遮水用シートは、前記の樹脂成分、もしくは樹脂成分にカーボンブラックを配合し、そのまま用いることができるが、その性能を変えない範囲内で、天然ゴム、各種合成ゴム、熱可塑性エラストマー、あるいは粘着付与材、架橋剤、さらには炭酸カルシウム、タルク、シリカ、金属繊維、炭素繊維等の各種フィラーや酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、着色剤、架橋剤などを必要に応じて配合してもよい。
【0053】
【作用】
本発明の遮水用シートは、低温ヒートシール、ヒートシール強度等のヒートシール特性や引裂強度等の機械的強度等に優れる特定のエチレン(共)重合体とLDPE、LLDPE、EVA等の従来の重合体あるいはそれらの再生樹脂との混合組成物層を含む多層構造の遮水用シートとすることにより、廃棄物処分場や屎尿処分場や貯水池や護岸用などの漏水防止はもちろんであるが、耐候性、耐薬品性、耐油性などの耐久性、地面形状に合わせて変形できる柔軟性、引裂強度や突刺強度などの機械的強度、さらに広大な敷地面積にこれら遮水用シートを熱融着して敷き設するための熱融着性に優れるものであり、経済性にも優位性を有するものである。
【0054】
【実施例および比較例】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、得られた遮水用シートの性能は以下の方法で評価した。
【0055】
<引張破壊強さ、引張伸度、ヤング率>
JIS K−7127に準拠して測定した。
使用した試験片は、一号ダンベル、試験速度は、ヤング率:50mm/min.、引張破壊強さ:500mm/min.で行った。
<シール強度>
JIS K−7127で規定した一号ダンベルの形状のシートを、それぞれの温度毎に圧力2.0Kg/cm2 、シール時間5秒の条件でヒートシールした試験片を各々各5個ずつ測定してその平均値で評価した。
<突刺強度>
70mm×70mmに切断した遮水用シートを装置に両面テープで取り付け100mm/分の速度異で先端部の半径が0.25mmおよび0.45mmの針で突き刺して破れたときの荷重で評価した。
【0056】
(A)成分:
実施例で用いる<エチレン(共)重合体>は以下の方法で重合した。
(固体触媒の調製)
窒素下で電磁誘導攪拌機付き触媒調製器1に精製トルエンを加え、ついでジプロポキシジクロロジルコニウム(Zr(OPr)2 Cl2 )28gおよびメチルシクロペンタジエン48gを加え、0℃に系を保持しながらトリデシルアルミニウムを45gを滴下し、滴下終了後、反応系を50℃に保持して16時間攪拌した。この溶液をA液とする。次に窒素下で別の攪拌器付き触媒調製器2に精製トルエンを加え、前記A溶液と、ついでメチルアルミノキサン6.4molのトルエン溶液を添加し反応させた。これをB液とする。
次に窒素下で攪拌器付き調製器1に精製トルエンを加え、ついであらかじめ400℃で所定時間焼成処理したシリカ(富士デビソン社製、グレード#952、表面積300m2 /g)1400gを加えた後、前記B溶液の全量を添加し、室温で攪拌した。ついで窒素ブローにて溶媒を除去して流動性の良い固体触媒粉末を得た。これを触媒Cとする。
【0057】
(試料A1の重合)
連続式の流動床気相法重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2 Gでエチレンと1−ブテンの共重合を行った。系内のガス組成は、1−ブテン/エチレンモル比0.12、エチレン濃度60mol%とした。前記触媒Cを連続的に供給して重合を行ない、系内のガス組成を一定に保つため、各ガスを連続的に供給した。
なお、生成した共重合体の物性は以下に示した。
A1:エチレン−1−ブテン共重合体
密度:0.910g/cm3
MFR:0.5g/10分
分子量分布(Mw/Mn):2.7
組成分布(Cb):1.24
d−0.008logMFR:0.912
ODCB可溶分:3.0 < 9.8×103 ×(0.9300−d+0.008
log MFR)2+2.0
A2:エチレン−1−ヘキセン共重合体
密度:0.912g/cm3
MFR:0.7g/10分
分子量分布(Mw/Mn):2.6
組成分布(Cb):1.23
d−0.008logMFR:0.913
ODCB可溶分:2.8 < 9.8×103 ×(0.9300−d+0.008
log MFR)2+2.0
【0058】
(B)成分:<エチレン系重合体>
B1:高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレンの再生品
(MFR=1.0〜2.0g/10分)
B2:高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン
(密度=0.921g/cm3 、MFR=0.3g/10分、商品名:
ジェイレクス LDPE 日本ポリオレフィン(株)製)
B3:エチレン−酢酸ビニル共重合体
(密度=0.920g/cm3 、MFR=2.0g/10分、
酢酸ビニル含量:5.0重量%、住友化学工業(株)製)
【0059】
(C)成分:<カーボンブラック>
:ファーネスブラック
(粒径=15mμ、商品名:Vulcan 9 Cabot社製)
【0060】
〔実施例1〕
両外層がB1(LDPE再生品):80重量%とA1:20重量%からなる樹脂組成物、中間層がB1(LDPE再生品):80重量%とA1:20重量%およびカーボンブラック(C)粒径15μmを2.5重量%を各層に添加してなる樹脂組成物になるように、原料樹脂を90mmの押出機(中間層)および50mm押出機(両外層)に供給し、樹脂温度235℃、ブローアップ比1.7の条件で400mmφの環状ダイを用いて共押出して全体厚み500μm(厚み比:外層/中間層/外層=1/2/1)、折径1050mmの3層シートをチューブ状で製膜した。ついで該チューブを切り開き厚み500μm、幅2100mmの遮水用シートとした。該シートの層構成と特性を表1、2に示した。
【0061】
〔実施例2〕
実施例1の両外層をA1をA2に代えた以外は実施例1と同様にして製造し、そのシートの層構成と評価した結果を表1、2に示した。
【0062】
〔比較例1、2〕
比較のためB2=LDPE(比較例1)、B3=エチレン−酢酸ビニル共重合体(比較例2)のみからなる厚み500μmの単層シートを製造し実施例1と同様にして、評価した結果を表1に示した。
【0063】
〔実施例3〜6〕
B2=LDPE、A1、A2を実施例1と同様にして製造し、シートの層構成と評価した結果を表1、2に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【発明の効果】
本発明の遮水用シートは、特定の触媒を用いて得られるエチレン(共)重合体を利用することにより、下記の効果を示すことから、廃棄物処分場、プール、ゴルフ場のウオーターハザード、鑑賞池の遮水用シートとしてきわめて有用である。
<本発明の遮水用シートの効果>
(1)機械的強度及び伸びが大きい。
(2)低温に於ける機械的強度伸びが大きいので、寒冷地でも充分使用することができる。
(3)使用する樹脂成分の密度範囲が広いため、必要に応じていかような硬さのシートでも設定できる。
(4)柔軟性があるシートでは賦形性がよく、外部からの応力に適切に対応することができる。
(5)耐熱性・耐候性、耐薬品性、耐油性に優れる。
(6)低温ヒートシール性に優れ、融着強度が非常に大きい。
(7)可塑剤などの添加剤を必要としないため、環境汚染の心配がない。
(8)多層シートのため機械的特性とシートの柔軟性との調合が取れるため、機械的性能と施工性が共に優れる。
(9)再生樹脂を使用することができるため経済性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエチレン(共)重合体の溶出温度−溶出量曲線を示す。
【図2】一般のメタロセン触媒による共重合体の溶出温度−溶出量曲線を示したものである。
Claims (7)
- 下記(D1)〜(D5)の触媒形成成分を相互に接触させて得られる触媒の存在下で、エチレンまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを(共)重合して得られる下記(イ)〜(へ)の性状を満足する(A)エチレン(共)重合体5〜95重量%と(B)他のエチレン系重合体95〜5重量%からなる樹脂組成物層(I)と該(A)エチレン(共)重合体、(B)他のエチレン系重合体またはそれらの組成物からなる層(II)を少なくとも含む多層構造からなることを特徴とする遮水用シート。
<触媒形成成分>
D1:一般式Me1R1 p(OR2)qX1 4−p−qで表される化合物
(式中Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR2は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X1はハロゲン原子を示し、pおよびqは各々0≦p<4,0≦p+q≦4の範囲を満たす整数である)、
D2:一般式Me2R3 m(OR4)nX2 z−m−nで表される化合物
(式中Me2は周期律表第I〜III族元素、R3およびR4は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2が水素原子の場合はMe2は周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMe2の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ0≦m+n≦zである)、
D3:共役二重結合を持つ有機環状化合物、および
D4:有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物、
D5:無機担体および/または粒子状ポリマー担体。
<性状>
(イ)密度0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn) 1.5〜4.5
(ニ)組成分布パラメーターCb 2.00以下
(ホ)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(wt%)と密度dおよびMFRが次の関係を満足すること
1)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR≧0.93の場合
X < 2.0
2)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR<0.93の場合
X < 9.8×10 3 ×(0.9300−d+0.008×logMFR) 2 +2.0
(ヘ)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること - 前記(A)エチレン(共)重合体が(へ)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線の複数のピークの中の高温側のピークが85〜100℃の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の遮水用シート。
- 前記(A)エチレン(共)重合体、(B)他のエチレン系重合体またはそれらの組成物が、再生樹脂または再生組成物であることを特徴とする請求項1または2項に記載の遮水用シート。
- 前記(B)他のエチレン系重合体が、下記(B1)および(B2)のエチレン系重合体から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の遮水用シート。
(B1)チーグラー型触媒による密度0.86〜0.97g/cm 3 のエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体
(B2)高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・α、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体 - 前記樹脂成分100重量部に対して、(C)カーボンブラック0.1 〜10重量部を配合したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の遮水用シート。
- 上記遮水用シートのヤング率が200N/mm 2 以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の遮水用シート。
- 下記(D1)〜(D5)の触媒形成成分を相互に接触させて得られる触媒の存在下で、エチレンまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを(共)重合して得られる下記(イ)〜(へ)の性状を満足する(A)エチレン(共)重合体5〜95重量%と(B)他のエチレン系重合体95〜5重量%からなる樹脂組成物層(I)と該(A)エチレン(共)重合体、(B)他のエチレン系重合体またはそれらの組成物からなる層( II )を少なくとも含む多層構造からなるシートをインフレーション法で成形することを特徴とする遮水用シートの製造法。
<触媒形成成分>
D1:一般式Me 1 R 1 p (OR 2 ) q X 1 4−p−q で表される化合物
(式中Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR2は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X 1 はハロゲン原子を示し、pおよびqは各々0≦p<4,0≦p+q≦4の範囲を満たす整数である)、
D2:一般式Me 2 R 3 m (OR 4 ) n X 2 z−m−n で表される化合物
(式中Me 2 は周期律表第I〜III族元素、R 3 およびR 4 は各々炭素数1〜24の炭化水素基、X 2 はハロゲン原子または水素原子(ただし、X 2 が水素原子の場合はMe 2 は周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMe 2 の価数を示し、mおよびnは各々0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ0≦m+n≦zである)、
D3:共役二重結合を持つ有機環状化合物、
D4:有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウム化合物、
D5:無機担体および/または粒子状ポリマー担体
<性状>
(イ)密度0.86〜0.97g/cm 3
(ロ)メルトフローレート(MFR)0.01〜50g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn) 1.5〜4.5
(ニ)組成分布パラメーターCb 2.00以下
(ホ)25℃におけるオルソジクロロベンゼン(ODCB)可溶分の量X(wt%)と密度dおよびMFRが次の関係を満足すること
3)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR≧0.93の場合
X < 2.0
4)密度dおよびMFRの値がd−0.008×logMFR<0.93の場合
X < 9.8×10 3 ×(0.9300−d+0.008×logMFR ) 2 +2.0
(ヘ)連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個存在すること
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