JP3606724B2 - 乳蛋白含有粉末 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳蛋白含有粉末に関し、詳しくは、ホエー蛋白質濃縮物と糖アルコールとを含有し、水または温水で溶解して飲用する乳蛋白含有粉末に関する。本発明の乳蛋白含有粉末は、溶解性が改良され、低カロリー高蛋白で且つ嗜好性良好な粉末飲料として用いられる。
【0002】
【従来の技術】
四訂食品成分表によれば、コーヒー牛乳は、蛋白質1.8重量%、カロリー54Kcal/100g、ヨーグルトは、蛋白質3.0重量%、カロリー75Kcal/100g、乳酸菌飲料は、蛋白質1.2重量%、カロリー69Kcal/100g、コーヒー飲料は、蛋白質0.8重量%、カロリー46Kcal/100gである。
【0003】
また、市販されている乳蛋白含有粉末としては、牛乳の粉末化品である全脂粉乳、脱脂品である脱脂粉乳の他、育児用の調整粉乳がある。これらの乳蛋白含有粉末は、脂肪、乳糖、その他の糖を含有しており、水または温水に溶解して飲用する場合のカロリーは、四訂食品成分表によれば、次の通りである。
【0004】
すなわち、全脂粉乳は、蛋白質2.9重量%において59Kcal/100g、脱脂粉乳は、蛋白質3.6重量%において51Kcal/100g、調整粉乳は、蛋白質3重量%において115Kcal/100gである。
【0005】
上記の様に、飲料のカロリーは、蛋白質0.8〜3.0重量%において46〜75Kcal/100gであり、飲用する場合の乳蛋白含有粉末のカロリーは、蛋白質2.9〜3.6重量%において51〜115Kcal/100gであり、何れも高カロリーである。しかも、動物性油脂や乳糖を含有しているため、肥満防止や成人病予防、乳糖不耐症の観点から、特に近年、問題になっている。
【0006】
また、高蛋白化のため、例えば、全脂粉乳や脱脂粉乳を濃厚にした乳蛋白含有飲料は、質感が重くなり飲み難いばかりか、カロリーが高い等の問題がある。
一方、既に市販されているホエー蛋白粉末は、水または温水に分散溶解して飲食されるが、その際、まま粉を生じ極めて溶け難い欠点を有しており、更に、ホエー臭が強くて嗜好上も好ましくない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、高蛋白かつ低カロリーであり、しかも、質感があっさりとして飲み易い乳蛋白含有粉末を提供することにある。また、本発明の他の目的は、乳糖不耐症の人にも飲用可能であり、蛋白量、カロリー、味覚の面において優れた乳蛋白含有粉末を提供することにある。本発明の更に他の目的は、ホエー蛋白粉末の場合の問題点である溶解性が改良された、低カロリー且つ高蛋白で嗜好性良好な乳蛋白含有粉末を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなち、本発明の要旨は、ホエー蛋白質濃縮物と糖アルコールとを含有して成る乳蛋白含有粉末であって、ホエー蛋白質の含量が17〜70重量%であり、糖アルコールの含量が17〜70重量%であることを特徴とする乳蛋白含有粉末に存する。
【0009】
本発明の乳蛋白含有粉末は、必要に応じ、高甘味度甘味料および食物繊維、澱粉分解物、粉末フレーバ等を含有してなり、水または温水に溶解後に飲用する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。一般的なホエーの組成の一例は次の表1に示す通りである。なお、表中の%は重量%を示す。
【0011】
【表1】
Figure 0003606724
【0012】
本発明で用いるホエー蛋白質濃縮物(Whey Protein Concentrate、以下「WPC」と略す)は、チーズやカゼインを製造する際に副生してくる上記の様な組成のホエーを濃縮し、結晶する乳糖を分離した液の乾燥処理物である。通常、WPCの組成は、蛋白質が80重量%以上、乳糖が約4重量%、脂肪が約5重量%、水分が約4重量%である。WPCは、ホエー粉末に比し特に乳糖が少なく、典型的な場合、乳糖が実質的に含まれていない点が特徴である。また、WPCよりも高純度に分離されたホエー蛋白質分離物(Whey Protein Isolate「WPI」として市販されている)もWPC同様に用いることが出来る。従って、本発明において、上記のWPIはWPCに含まれるものとする。
【0013】
発明で用いる糖アルコールとしては、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、粉末還元麦芽糖水飴などが挙げられる。これらの中では、エリスリトールとマルチトールが好ましい。
【0014】
エリスリトールは、四炭糖の糖アルコールであり、水に溶け、非常に結晶化し易く、その結晶は美麗で白色である。エリスリトールは、甘味の強さが蔗糖の75〜85%であり、食すると爽やかな冷感を与える。また、エリスリトールは、天然にも存在し、カロリーが0という特徴を有する。マルチトールは、その甘味質が良好であり、また、甘味の強さが蔗糖の0.85倍、カロリーが蔗糖の1/2であることから、低カロリー甘味料と言える。
【0015】
本発明の乳蛋白含有粉末において、WPCの含有量は、ホエー蛋白質含有量として表した場合に17〜70重量%である。ホエー蛋白質の含有量が上記範囲未満の場合は、飲用時に水ぽくなり、また、上記範囲を超える場合は、質感が重く且つ糊ぽくなり、何れも嗜好上好ましくない。
【0016】
本発明の乳蛋白含有粉末において、糖アルコールの含有量は、乳蛋白含有粉末の低カロリー性、好ましい風味などの観点から、17〜70重量%である。ところで、マルチトールは、大量摂取により下痢を生ずる場合もあるため、一般に金属1缶相当量(350g用)飲用する場合の含有量は20g以下とするのが好ましい。
【0017】
WPCは、水または温水に分散溶解する際、直ちにまま粉を生じて極めて溶け難いが、糖アルコール粉末との粉体混合物にすることにより、分散溶解性が著しく改良される。例えば、水100gにWPC5gを攪拌しながら添加しところ、溶解に4分以上を要するが、WPC5gとエリスリトール粉末4gとの粉体混合物は2分以内に溶解する。
【0018】
本発明においては、甘味料として、必要に応じ高甘味度甘味料を併用する。高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、ステビアの他、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン、アセスルファムカリウム等が挙げられるが、特にステビア又はアスパルテームが好ましい。ステビアとしては、ステビオサイド、レバウデオサイドA、α−グリコシルステビオサイドが用いられる。高甘味度甘味料の含有量は、乳蛋白含有粉末の0.03〜0.2重量%とするのが好ましい。なお、低カロリー性を損なわない範囲であれば、例えば、ぶどう糖、マルチトール、水飴、異性化糖、果糖、砂糖などの糖類および/またはカップリングシュガー、パラチノース等のスクロース由来の糖類を用いてもよい。
【0019】
また、本発明の乳蛋白含有粉末には、嗜好性を高めるため、以下の様な各種の食品材料を添加することが出来る。
【0020】
乳蛋白含有粉末に、こく味を与え、質感を向上させるには、油脂を添加すればよいが、カロリーが増加するため油脂の添加には限界がある。本発明者は、食物繊維(特に水溶性食物繊維)又は澱粉分解物を添加することにより、こく味および質感が著しく向上することを見出した。
【0021】
食物繊維としては、各種の天然食物繊維を適宜選択することが出来る。特に、松谷化学工業(株)製の澱粉由来の水溶性植物繊維(商品名「ファイバーソルー」又は「パインファイバー」)、日本食品化工(株)製のとうもろこしの種皮から抽出した増粘多糖類含有水溶性コーンファイバー(商品名「日食セルエースG」、「日食セルファー」)、不二製油(株)製の大豆由来の水溶性大豆多糖類(商品名「ソヤファイブーs」)、その他、グアーガム分解物、海藻を原料としたアルギン酸などの水溶性天然食物繊維は、飲料用途に好ましい。一般に食物繊維は低カロリーであり、更に好ましいことには、エリスリトールと同様、異味、異臭のマスキング効果があり、具体的にはホエー臭をマスキングして嗜好性を向上させる。
【0022】
澱粉分解物は、例えば澱粉を加水分解して得られ、その種類は特に制限されないが、松谷化学(株)の商品「パインデックス」等の還元澱粉分解物が推奨される。
【0023】
食物繊維または澱粉分解物の含有量は、乳蛋白含有粉末の5〜15重量%とするのが好ましい。そして、エキス粉末などを添加しない白物の乳蛋白含有粉末の場合は、食物繊維または澱粉分解物と共に、通常、食塩を0.4〜0.8重量%程度含有させる。
【0024】
本発明の乳蛋白含有粉末が油脂を殆ど含んでいない場合は、やや透明感があり、牛乳の様な白濁感に欠ける。油脂を添加すれば、より白濁するが、カロリーが増加して好ましくない。本発明者は、粒径40μm以下の炭酸カルシウムを1.5〜6重量%存在させることにより、飲用時に白濁感があり、カルシウムリッチな乳蛋白含有粉末が得られることを見出した。
【0025】
上記の様なカルシウム剤としては、炭酸カルシウム以外の他の水不溶性カルシウム塩を用いることも出来る。その具体例としては、リン酸カルシウム(ピロリン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸三カルシウム)、貝殻焼成カルシウム、卵殻焼成カルシウム、骨焼成カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、クエン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0026】
本発明の乳蛋白含有粉末は、乳脂肪を殆ど含有していないために風味上ミルク感が弱い。そこで、本発明の乳蛋白含有粉末には、必要に応じてミルク風味を付与するため、ミルクフレーバーを添加することが出来る。また、カロリーに影響しない範囲で、粉末クリーム、全脂粉乳、脱脂粉乳などの乳製品を添加することも可能である。更に、本発明の乳蛋白含有粉末には、例えば、紅茶、コーヒー等のエキス粉末、ココア粉末、抹茶、有機酸、粉末果汁などの各種粉末状食品材料、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル等の栄養成分を添加してもよい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものでない。なお、下記実験例で使用した主要材料は次の表2に示す通りである。
【0028】
【表2】
Figure 0003606724
【0029】
また、各種甘味料の甘味度及びカロリー値は表3の値を基準として算出した。表3中、甘味度は各甘味料のパンフレットより引用し、カロリーは、「平成8年3月4日厚生省生活衛生局保健課 公衆衛生審議会 健康増進栄養部会 参考資料」から引用した。
【0030】
【表3】
Figure 0003606724
【0031】
実施例1〜2及び比較例1〜2
下記表4に示した組成(重量%)で、WPCと糖アルコール粉末、その他の材料を加えて粉体混合し、乳蛋白含有粉末を調製した。そして、蛋白質含量が6重量%になる様に上記の粉末を温水に攪拌溶解して飲料を調製し、90℃で10分間加熱した後、更に、5℃の冷蔵庫で24時間保存後に官能評価に供した。
【0032】
【表4】
Figure 0003606724
【0033】
【表5】
Figure 0003606724
【0034】
全脂粉乳で調製した比較例1の飲料(蛋白質6重量%)のカロリーは117Kcal/100g、脱脂粉乳で調製した比較例2の飲料のカロリーは63Kcal/100gであり、しかも、両者共に質感が重く飲み難い。これに対し、実施例1及び2の飲料(蛋白質6重量%)は、カロリーが低く、しかも、質感が軽く且つあっさりして非常に飲み易い。更に、実施例1及び2の飲料は、乳糖が殆ど含有されていないため特に乳糖不耐症の人に好ましい。
【0035】
実施例3〜7
下記表6に示した組成(重量%)で、WPCと糖アルコール粉末、食物繊維およびその他の材料を加えて粉体混合し、乳蛋白含有粉末を調製した。そして、蛋白質含量が2〜6重量%になる様に温水に上記の粉末を攪拌溶解して飲料を調製し、蛋白質、油脂、乳糖の含有量(重量%)及び100g当たりのカロリーを求めた。
【0036】
【表6】
Figure 0003606724
【0037】
【表7】
Figure 0003606724
【0038】
実施例3〜7の乳蛋白含有粉末から調製された飲料は、蛋白質が2〜6重量%、カロリーが9〜28Kcal/100gであり、蛋白リッチで且つ低カロリーである。
【0039】
実施例8〜9
下記表8に示した組成(重量%)で、WPCと糖アルコール粉末、澱粉分解物およびその他の材料を加えて粉体混合し、乳蛋白含有粉末を調製した。そして、蛋白質含量が2〜3重量%になる様に温水に上記の粉末を攪拌溶解して飲料を調製し、蛋白質、油脂、乳糖の含有量(重量%)及び100g当たりのカロリーを求めた。
【0040】
【表8】
Figure 0003606724
【0041】
【表9】
Figure 0003606724
【0042】
実施例8〜9から調製された飲料は、蛋白リッチで且つ低カロリーであり、ホエー臭が少なく、ミルク飲料の様な白濁感を有する。
【0043】
実施例10〜12
下記表10に示した組成(重量%)で、WPCと糖アルコール粉末、その他の材料を加えて粉体混合し、コーヒー入り乳蛋白含有粉末を調製した。そして、蛋白質含量が2〜4重量%になる様に温水に上記の粉末を攪拌溶解して飲料を調製し、蛋白質含有量(重量%)及び100g当たりのカロリーを求めた。
【0044】
【表10】
Figure 0003606724
【0045】
【表11】
Figure 0003606724
【0046】
市販コーヒー牛乳は、蛋白質が1.8%、カロリーが54Kcal/100g(女子栄養大学出版 市販食品成分表に記載)であるのに比し、実施例8〜10の粉末を所定量の温水で溶解したコーヒー入り飲料は、蛋白質が2〜4重量%、カロリーが17〜25Kcal/100gであり、蛋白リッチで且つ低カロリーである。
【0047】
実施例13〜15
下記表12に示した組成(重量%)で、WPCと糖アルコール粉末、その他の材料を加えて粉体混合し、ココア入り乳蛋白含有粉末を調製した。そして、蛋白質含量が2重量%になる様に温水に上記の粉末を攪拌溶解して飲料を調製し、蛋白質含有量(重量%)及び100g当たりのカロリーを求めた。
【0048】
【表12】
Figure 0003606724
*三菱化学フーズ(株)製「リョートーシュガーエステル(TM)p−1570」
【0049】
【表13】
Figure 0003606724
【0050】
市販ココアミルク(女子栄養大学出版 市販食品成分表に記載)は、蛋白質が1.5重量%、カロリーが57Kcal/100gであるのに比し、実施例13〜15の粉末を所定量の温水で溶解したココア入り飲料は、蛋白質が2.4〜4.4重量%、カロリーが25〜32.4Kcal/100gであり、蛋白リッチで且つ低カロリーである。
【0051】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、溶解性の改良され、乳糖を殆ど含まない、蛋白リッチで且つ低カロリーの乳蛋白含有粉末が提供される。

Claims (3)

  1. ホエー蛋白質濃縮物と糖アルコールとを含有して成る乳蛋白含有粉末であって、ホエー蛋白質の含量が17〜70重量%であり、糖アルコールの含量が17〜70重量%であることを特徴とする乳蛋白含有粉末。
  2. 食物繊維または澱粉分解物を5〜15重量%含有する請求項1記載の粉末。
  3. 食物繊維が水溶性食物繊維である請求項記載の粉末。
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