JP3606074B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関し、さらに詳しくは表面滑り性、耐摩耗性、電気特性に優れている電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンタ−の分野でも広く使われ応用されてきている。電子写真技術の中核となる感光体については、その光導電材料として従来からのセレニウム、ヒ素−セレニウム合金、硫化カドミニウム、酸化亜鉛といった無機系の光導電体から、最近では、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体が開発されている。
【0003】
有機系感光体の中でも電荷発生層、及び電荷輸送層を積層した、いわゆる積層型感光体が考案され、研究の主流となっている。
積層型感光体は、それぞれ効率の高い電荷発生物質、及び電荷輸送物質を組合せることにより高感度な感光体が得られること、材料の選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、また塗布の生産性が高く比較的コスト面でも有利なことから、感光体の主流になる可能性も高く鋭意開発されている。
【0004】
しかし従来の技術では有機系の積層型感光体は、感度、帯電性といった電気的特性に於いては十分な性能を持つが感光体表面の物理的強度に於いて不十分であるため実用上限られた耐刷性能に留まっているのが現状である。このような感光体表面の物理的強度をほぼ決定するのは積層型感光体に於いては電荷輸送層の機械的特性である。
【0005】
これまで機械的強度を高めるために例えばオーバーコート層を設ける(特開昭61−72256号公報)、耐摩耗性の高いバインダーポリマーを使用する(特開昭63−148263号公報、特開平3−221962号公報)等が提案されているが、いずれもこれらの効果が十分でなかったり、電気特性などの特性に悪影響を及ぼすなどの問題を含んでいるのが現状である。
【0006】
また近年、画質の向上に伴いより表面滑り性の良好な感光体が望まれている。表面の滑り性を改良する為、ポリシロキサンブロック共重合体をバインダーに用いる(特開昭61−132954号公報、特開平2−240655号公報)、低分子量のポリシロキサン末端化合物を用いる(特開平7−261440号公報)、フッ素原子含有ポリカーボネートを用いる(特開平5−306335号公報、特開平6−32884号公報、特開平6−282094号公報)等が提案されているが、いずれも効果が十分でなかったり、電気特性や耐刷性に悪影響を及ぼすなどの問題を含んでいるのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は電気特性や耐刷性に悪影響を及ぼすことなく、感光体表面の滑り性を改善することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、これらの現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、感光層にポリシロキサンを末端に有する特定の分子量のポリカーボネート樹脂を含有させることにより、他の特性を損なわずに表面の滑り性が著しく高まることを見いだし、長期の繰り返し使用においても摩耗が少なく、クリーニング性および傷に対する耐久性に優れる電子写真感光体を提供することができる本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明の要旨は、導電性基体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層中のバインダー樹脂の少なくとも一部が下記一般式(1)で表される構造を主たる繰り返し単位として有し、かつ末端の一方又は両方が一般式(2)で示される構造を含むポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂の一部又は全部に用いた電子写真感光体であって、バインダー樹脂中のポリシロキサン部位(一般式(2)で表される構造中のW及びR13を除いた部分)が全バインダー樹脂に対し0.01重量%以上5重量%以下であることを特徴とする電子写真感光体、に存する。
【0010】
【化5】
【0011】
(式(1)中、Y1 〜Y8 は各々独立に水素原子、炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数3以上10以下の不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、アルコキシル基、炭素数6以上20以下の置換されていても良い芳香族炭化水素基を示す。Xは
【0012】
【化6】
芳香環 , 単結合 , ラクトン , フルオレン
【0013】
を示し、R1 〜R7 は各々独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3以上10以下の不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン、アルコキシル基、置換基を有していても良い炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、Zは炭素数3以上20以下の置換または非置換の脂肪族炭化水素基を示し、aは0以上4以下の整数、lは1以上6以下の整数、mは2以上20以下の整数を示す。式(2)中、R13は脂肪族及び/又は芳香族を含む2価の有機残基を表し、Wは単結合、O、CO、COO、NH、NHCO、S、SO、SO2 を示す。またR8 〜R12はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基又は置換基を有していても良い炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、nは1以上500以下の整数である。)
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記一般式(1)中、Xは好ましくは
【0015】
【化7】
【0016】
が用いられ、R1 及びR2 は好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基が用いられ、さらに好ましくはメチル基、フェニル基が用いられる。Zは好ましくは炭素数4ないし6の2価の脂肪族炭化水素基、さらに好ましくは炭素数5の2価の脂肪族炭化水素基が用いられる。また、Xの構造式中のR1 〜R8 の飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基への置換基としてはハロゲン原子等が挙げられ、R3 〜R7 は好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基が用いられ、aは好ましくは0、lは好ましくは1、mは好ましくは2ないし4である。Y1 〜Y8 は好ましくは水素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アリル基、フェニル基が用いられ、さらに好ましくは水素原子またはメチル基が用いられる。
一般式(1)は一種類の繰り返し単位でも、2種類以上の構造の繰り返し単位の組み合わせでも良い。特に好ましくは、下記一般式(1a)と(1b)との2種類の構造を繰り返し単位に有する共重合ポリカーボネートである。
【0017】
【化8】
【0018】
上記式中のR16〜R23は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、R16〜R19のうち、少なくとも1つは水素原子ではない。好ましくはR16〜R23は水素原子又はメチル基であり、より好ましくは、R16、R18がメチル基、R17、R19が水素原子又はメチル基、R20、R22が水素原子又はメチル基、R21、R23が水素原子である。(1a)と(1b)の割合には特に制限はなく、通常10:90〜90:10の範囲から選ばれる。
【0019】
また実質的に特性を変えない範囲で、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリビニル等の他の構造を導入させても良い。
上記一般式(2)中、R8 〜R12は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基、又は置換されていてもよい炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示すが、好ましくは、炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の無置換のアルキル基が挙げられ、炭素数6以上20以下の置換されても良い芳香族炭化水素基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。この中で特に、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく用いられる。R13は脂肪族及び/又は芳香族を含む2価の有機残基を表すが、好ましくは、以下の構造が用いられる。
【0020】
【化9】
【0021】
Wは単結合、O、CO、COO、NH、NHCO、S、SO、SO2 を示すがO、COOが好ましく用いられる。
本発明の電子写真感光体の感光層中に含まれるバインダー樹脂中の前記一般式(2)で表される構造のうちポリシロキサン部位(一般式(2)のW及びR13を除いた部分)は、感光層中に含まれる全バインダー樹脂に対し0.01重量%以上〜5重量%以下であり、好ましくは0.1〜4重量%、さらに好ましくは0.3〜3.5重量%である。0.01重量%未満であると感光体表面の滑り性改良効果が不十分であり、5重量%を超えると透明性、電気特性に悪影響が生じる。
【0022】
nは1以上500以下の整数であるが、好ましくは10以上200以下の整数さらに好ましくは、10以上100以下の整数である。nが10未満であると滑り性の改良効果が小さくなり、nが大きすぎると電荷輸送層の光線透過率が低下し好ましくない。
本発明の電子写真感光体に用いる末端にポリシロキサン構造を含むポリカーボネート重合体は、通常、粘度平均分子量が10,000以上300,000以下であり、好ましくは15,000以上100,000以下、さらに好ましくは28,000以上60,000以下である。粘度平均分子量が10,000未満であると樹脂の機械的強度が低下する。また300,000以上であると、電子写真感光体のバインダー樹脂として用いた場合適当な膜厚に塗布する事が困難である。
【0023】
本発明のポリカーボネート重合体の製造方法として、公知のポリカーボネートの重合方法を適用することができる。例えば二官能性ヒドロキシ化合物とホスゲンを反応させ界面重縮合する、二官能性ヒドロキシ化合物とホスゲンを反応させたクロロホルメートに二官能性ヒドロキシ化合物を添加して界面重縮合させる、二官能性ヒドロキシ化合物をジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとエステル交換反応により重合させる方法を用いることができる。
【0024】
さらにポリカーボネートの重合において、反応に著しく悪影響を及ぼさない範囲でテレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、アジピン酸クロリド、セバシン酸クロリド等の酸ハライドやピペラジン等のジアミンを共存させても良いし、またフロログリシン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、或いはテトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどの多価フェノールに代表される分岐剤をゲル化しない程度に共存させることもできる。
【0025】
末端にポリシロキサン構造を含むポリカーボネートの製造方法としては、例えば一官能性フェノール構造を含むポリシロキサンを重合時に共存させる方法を適用することができる。一官能性フェノールはポリシロキサンが結合したものを単独で重合系に共存させても良いし、他の一官能性フェノール例えば、p−tert−ブチルフェノール、フェノール、クミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等と共に用いても良い。或いは他の製造方法として炭素炭素2重結合を末端に有するポリカーボネートへの片末端Si−H構造のポリシロキサンのヒドロシリル化反応によっても製造することができる。
【0026】
本発明の電子写真感光体に用いられるポリカーボネートは、用いるすべてのポリカーボネートの末端基の一方または両方が前記一般式(2)であらわされるポリシロキサンを含むポリカーボネートでも良いし、ポリシロキサン構造を含まないポリカーボネートと末端基の一方または両方がポリシロキサン構造を含むポリカーボネートとの組成物でも良い。
【0027】
本発明の電子写真感光体の感光層中に含まれる前記一般式(2)中のポリシロキサン部位は、感光層中のバインダー含有量及び一般式(2)の構造により決定され、好ましくは0.01〜4重量%、さらに好ましくは0.1〜2重量%である。0.01重量%未満であると感光体表面の滑り性改良効果が不十分であり、4重量%を超えると透明性、電気特性に悪影響が生じる。ポリシロキサン部位を含まないポリカーボネートとの組成物の場合には、全バインダー樹脂中に占めるポリシロキサン部位の割合を前記範囲とする。
【0028】
本発明において感光層は導電性支持体上に設けられる。導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料、あるいは、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料やアルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラスもしくは紙などが主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
【0029】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
導電性支持体と感光層との間には、接着性、ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
【0030】
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いる粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子、窒化珪素、炭化珪素等の酸化物以外の粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの粒子の中で金属酸化物粒子が好ましく、酸化チタンおよび酸化アルミニウムがより好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又は脂肪族カルボン酸、ポリオール、ポリシロキサン、有機シラン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルックカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0031】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、平均一時粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上25nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
【0032】
下引き層中のバインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選べるが、10wt%から500wt%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性から0.1μmから20μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
【0033】
本発明の感光層の具体的な構成として
・電荷発生物質を主成分とする電荷発生層、電荷輸送物質及びバインダ−樹脂を主成分とした電荷輸送層をこの順に積層した積層型感光体。
・電荷輸送物質及びバインダ−樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた分散型感光体。
の様な構成が基本的な形の例として挙げられる。
【0034】
積層型感光体の場合、その電荷発生層に使用される電荷発生材料としては例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料が好ましく、更にフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。これらの微粒子をたとえばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して30から500重量部の範囲より使用され、その膜厚は通常0.1μmから2μmである。
【0035】
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニンまたは、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、もしくはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類が使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基などがあげられる。特に感度の高いX型もしくはτ型の無金属フタロシアニン、オキシチタニウムフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ヒドロキシシリコンフタロシアニン等が好適である。なお、オキシチタニウムフタロシアニンは各種の結晶型が用いられ、W.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されているもの(Zeit.Kristallogr.159(1982)173)、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示す結晶型などが用いられる。フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。
【0036】
電荷輸送層に含まれる電荷輸送材剤としては、2,4,7−トリニトロフルオレノンなどの芳香族ニトロ化合物、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チアジアゾール誘導体などの複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体などの公知の化合物を用いることができる。これらのうち、特にトリアリールアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体が好ましい。電荷輸送材料は単独で用いても良いし、いくつかを混合してもちいてもよい。これらの電荷輸送材料がバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
【0037】
バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して30〜200重量部、好ましくは40〜150重量部の範囲で使用される。また膜厚は一般に5〜100μm、好ましくは10〜50μm、より好ましくは15〜45μmである。なお電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤などの添加物を含有させても良い。
【0038】
酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
分散型の場合、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生材料は1〜50重量部、電荷輸送材料は30〜150重量部の範囲より使用されるのが好ましい。また膜厚は通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmが好適である。また必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0039】
分散型感光層の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、前出の電荷発生物質が分散される。
その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、例えば好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコ−ンオイル、フッ素系オイルその他
の添加剤が添加されていても良い。
【0040】
感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けても良い。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
【0041】
本発明の感光体は、上記のような層構成のいずれでもよいが、上記一般式(2)で表わされる構造を末端に有するポリカーボネート樹脂が表面層に含まれるものが好ましい。表面層とは単層型(分散型)の場合には感光層全体を、積層型では電荷輸送層を、保護層を設けた場合には保護層を示す。特に積層型感光体が電気特性の面で好ましい。
【0042】
これらの感光体を構成する各層は、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等により塗布して形成される。
各層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。
【0043】
本発明の電子写真感光体を使用する複写機・プリンター等の電子写真装置は、少なくとも帯電、露光、現像、転写の各プロセスを含むが、どのプロセスも通常用いられる方法のいずれの方法を用いても良い。帯電方法(帯電器)としては、例えばコロナ放電を利用したコロトロンあるいはスコロトロン帯電、導電性ローラーあるいはブラシ、フィルムなどによる接触帯電などいずれを用いても良い。このうち、コロナ放電を利用した帯電方法では暗部電位を一定に保つためにスコロトロン帯電が用いられることが多い。現像方法としては、磁性あるいは非磁性の一成分現像剤、二成分現像剤などを接触あるいは非接触させて現像する一般的な方法が用いられる。転写方法としては、コロナ放電によるもの、転写ローラーあるいは転写ベルトを用いた方法等いずれでもよい。転写は、紙やOHP用フィルム等に対して直接行っても良いし、一旦中間転写体(ベルト状あるいはドラム状)に転写したのちに、紙やOHP用フィルム上に転写しても良い。
【0044】
通常、転写の後、現像剤を紙などに定着させる定着プロセスが用いられ、定着手段としては一般的に用いられる熱定着、圧力定着などを用いることができる。これらのプロセスのほかに、通常用いられるクリーニング、除電等のプロセスを有しても良い。
【0045】
【実施例】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例−1
[ポリカーボネートの製造]
1−(1).ビスフェノールCオリゴマーの製造
【0046】
【表1】
上記混合物を撹拌機付き反応機に仕込み、撹拌した。これにホスゲン83部を吹き込み反応を行った。反応終了後ポリカーボネートオリゴマーを含有する塩化メチレン溶液のみを補集した。得られたオリゴマーの塩化メチレン溶液の分析結果は下記の通りであった。
【0047】
(注1)蒸発乾固させて測定した。
(注2)アニリンと反応させて得られるアニリン塩酸塩を0.1規定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。
(注3)塩化メチレン、四塩化チタン、酢酸溶液に溶解させた時の発色を546nmで比色定量した。
【0048】
1−(2).ビスフェノールPオリゴマーの製造
1−(1).のビスフェノールCに変えて、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(=ビスフェノールP)を用いて以下の組成で1−(1)と同様に行った。
【0049】
【表2】
【0050】
得られたオリゴマーの塩化メチレン溶液の分析結果は下記の通りであった。
【表3】
【0051】
1−(3).ポリカーボネートの重合
【表4】
【0052】
【化10】
【0053】
水56.4L、トリエチルアミン10.02gを撹拌機付き重合槽に仕込み、20℃にて撹拌した。続いて25重量%水酸化ナトリウム水溶液15.83Lを加え7時間界面重合を行った。
引続き水80L及びメチレンクロライド450Kgを加え30分間撹拌後、反応混合物を分液した。ポリカーボネート樹脂を含む塩化メチレン溶液を水酸化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液、脱塩水を用いて洗浄し、最後に塩化メチレンを蒸発させて樹脂を取りだし、以下の構造式[A]の末端ポリシロキサンポリカーボネートであることを 1H−NMRにより確認した。
【0054】
【化11】
【0055】
この樹脂の粘度平均分子量(注4)は31,600であった。
(注4:粘度平均分子量の測定)
試料を塩化メチレンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製した。溶媒(塩化メチレン)の流下時間t0 が136.21秒のウベローデ型毛管粘度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定した。以下の式に従って粘度平均分子量Mv を算出した。
a=0.438×ηsp+1
b=100×ηsp/C
ηsp=t/t0 −1
C =6.00(g/L)
η=b/a
Mv =3207×η1.205
【0056】
[感光体の製造]
オキシチタニウムフタロシアニン10重量部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行った。
また、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の5% 1,2−ジメトキシエタン溶液100部及びフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の5% 1,2−ジメトキシエタン溶液100部を混合してバインダー溶液を作製した。
【0057】
先に作製した顔料分散液160重量部に、バインダー溶液100重量部、適量の1,2−ジメトキシエタンを加え最終的に固形分濃度4.0%の分散液を調製した。
この様にして得られた分散液を表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚が0.2μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。次にこのフィルム上に、次に示すヒドラゾン化合物[1]56部、ヒドラゾン化合物[2]14部と
【0058】
【化12】
【0059】
次に示すシアノ化合物1.5部
【0060】
【化13】
【0061】
および前記構造式[A]の構造の末端ポリシロキサンポリカーボネート樹脂100部、酸化防止剤として下記構造のIrganox1076を4部をジオキサン、テトラヒドロフランの混合溶媒に溶解させた液を塗布し、125℃で24分間乾燥し、乾燥後の膜厚が18μmとなるように電荷輸送層を設けた。
【0062】
【化14】
【0063】
[摩擦試験]
トナーを上記で作成した感光体の上に0.1mg/cm2 となるよう均一に乗せ接触させる面にクリーニングブレードと同じ材質のウレタンゴムを1cm幅に切断したものを用い45度の角度で用い、荷重200g、速度5mm/sec、ストローク20mmでウレタンゴムを3回移動させたときの3回目の動摩擦係数を協和界面化学(株)社製全自動摩擦摩耗試験機DFPM−SSで測定した。結果を表−1に示す。
【0064】
[電気特性]
前記作製した感光体を感光体測定機(川口電気(株)製、モデルEPA−8100)に装着し、帯電時の電位が750±10Vとなるようにアルミニウム面への流れ込み電流を設定し帯電させた後、露光、除電を行い、その時の半減露光感度E1/2 を測定した。結果を表−1に示す。
【0065】
実施例−2
[ポリカーボネートの重合]
【表5】
【0066】
を2Lセパラブルフラスコに仕込み、室温にて撹拌した。続いて25重量%水酸化ナトリウム水溶液48mLを加え3時間界面重合を行った。
引続き水292mL及びメチレンクロライド474mLを加え30分間撹拌後、静置し反応混合物を分液した。ポリカーボネート樹脂を含む塩化メチレン溶液を水酸化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液、脱塩水を用いて洗浄し、最後に塩化メチレンを蒸発させて樹脂を取りだし、前記構造式[A]の構造の末端ポリシロキサンポリカーボネートであることを 1H−NMRにより確認した。この樹脂の粘度平均分子量は32,900であった。
この樹脂を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表−1に示す。
【0067】
実施例−3
(ポリカーボネートの重合)
実施例−2の2−ベンゾイル−5−(3−ポリジメチルシロキサンプロポキシ)フェノール 2.0gを2−(3−ポリジメチルシロキサンプロピル)フェノール(平均重合度=36)1.0gに、4−tert−ブチルフェノールの仕込量を0.224gに変えた以外は同様にして、以下の構造式[B]の末端ポリシロキサンポリカーボネートを重合した。この樹脂の粘度平均分子量は29,900であった。
【0068】
【化15】
【0069】
この樹脂を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表−1に示す。
実施例−4
[ポリカーボネートの重合]
実施例−3の2−(3−ポリジメチルシロキサンプロピル)フェノール(平均重合度=36)の仕込量1.0gを2.0gに、4−tert−ブチルフェノールの仕込量を0.175gに変えた以外は同様にして、前記構造式[B]の末端ポリシロキサンポリカーボネートを重合した。この樹脂の粘度平均分子量は30,200であった。
この樹脂を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表−1に示す。
【0070】
比較例−1
[ポリカーボネートの重合]
実施例−1の2−ベンゾイル−5−(3−ポリジメチルシロキサンプロポキシ)フェノールを仕込まずに、4−tert−ブチルフェノールの仕込量を0.138Kgに変えた以外は同様にして、下記構造式[C]のポリカーボネートを重合した。この樹脂の粘度平均分子量は28,200であった。
【0071】
【化16】
【0072】
この樹脂を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表−1に示す。
実施例−5[ポリカーボネートの重合]
【表6】
を2Lセパラブルフラスコに仕込み、室温にて撹拌した。続いて25重量%水酸化ナトリウム水溶液19mLを加え3時間界面重合を行った。
【0073】
引続き水117mL及びメチレンクロライド189mLを加え30分間撹拌後、静置し反応混合物を分液した。ポリカーボネート樹脂を含む塩化メチレン溶液を水酸化ナトリウム水溶液、塩酸水溶液、脱塩水を用いて洗浄し、最後に塩化メチレンを蒸発させて樹脂を取りだし、前記構造式[A]の構造の末端ポリシロキサンポリカーボネートであることを 1H−NMRにより確認した。この樹脂の粘度平均分子量は39,000であった。
この樹脂を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表−1に示す。
【0074】
実施例−6
実施例−1において実施例−1で製造した構造式[A]の末端ポリシロキサンポリカーボネート100部に変えて、実施例−1で製造した構造式[A]の構造の末端ポリシロキサンポリカーボネート50部及び比較例1で製造した構造式[C]のポリカーボネート50部を用いた以外は実施例−1と同様に感光体を製造し、この感光体の摩擦係数を測定した。結果を表−2に示す。
【0075】
[摩耗試験]
感光体フィルムを直径10cmの円状に切断しテーバー摩耗試験機(東洋精機社製)により、摩耗評価を行った。試験条件は、23℃、50%RHの雰囲気下、摩耗輪CS−10Fを用いて、荷重なし(摩耗輪の自重)で1000回回転後の摩耗量を試験前後の重量を比較することにより測定した。結果を表−2に示す。
【0076】
実施例−7
[ポリカーボネートの重合]
実施例−2のポリカーボネートの2−ベンゾイル−5−(3−ポリジメチルシロキサンプロポキシ)フェノールの仕込み量2.0gを1.0gに変え、4−tert−ブチルフェノールの仕込量0.196gを5.29gに変えた以外は同様にして、前記構造式[A]の末端ポリシロキサンポリカーボネートを重合した。この樹脂の粘度平均分子量は9,100であった。
実施例−6において、実施例−1で製造した構造式[A]の構造の末端ポリシロキサンポリカーボネート50部及び比較例1で製造した(C)の構造のポリカーボネート50部を用いる代わりに、粘度平均分子量9,100の上記構造式[A]の末端ポリシロキサンポリカーボネート50部及び比較例1で製造した(C)の構造のポリカーボネート50部を用いた以外は実施例−6と同様に感光体を製造し、この感光体の摩擦係数の測定及び摩耗試験を行った。結果を表−2に示す。
【0077】
【表7】
【0078】
【表8】
【0079】
表1に示すように、本発明の感光体を用いると従来の感光体に比べ、電気特性を良好な値に保ったまま、感光体表面の滑り性を著しく改良することができる。また、表2に示すように、分子量の大きな樹脂を用いることにより滑り性が良好で耐摩耗性が著しく良好な感光体を得ることができる。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、電気特性に悪影響を及ぼすことなく電子写真感光体表面の滑り性・摺動性を著しく向上させることができるためクリーニングブレードや現像剤などによる傷が付きにくくなり感光体の長寿命化にきわめて効果的であり高速の複写機や省電力型の複写機、プリンターなどに有用である。
Claims (6)
- 導電性基体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層中のバインダー樹脂の少なくとも一部が下記一般式(1)で表される構造を主たる繰り返し単位として有し、かつ末端の一方又は両方が一般式(2)で示される構造を含むポリカーボネート樹脂であって、バインダー樹脂中のポリシロキサン部位(一般式(2)で表される構造中のW及びR13を除いた部分)が感光層に含まれる全バインダー樹脂に対し0.01重量%以上5重量%以下であることを特徴とする電子写真感光体。
を示し、R1 〜R7 は各々独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3以上10以下の不飽和脂肪族炭化水素基、ハロゲン、アルコキシル基、置換基を有していても良い炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、Zは炭素数3以上20以下の置換または非置換の脂肪族炭化水素基を示し、aは0以上4以下の整数、lは1以上6以下の整数、mは2以上20以下の整数を示す。式(2)中、R13は脂肪族及び/又は芳香族を含む2価の有機残基を表し、Wは単結合、O、CO、COO、NH、NHCO、S、SO、SO2 を示す。またR8 〜R12はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基又は置換基を有していても良い炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、nは1以上500以下の整数である。) - 感光層中の前記一般式(2)で表される構造を含むポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が10,000以上300,000以下であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 一般式(2)で表わされる末端基を有するポリカーボネート樹脂が感光体の表面層に含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
- 導電性基体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とがこの順に積層されており、前記一般式(2)で表わされる構造を末端として含有するポリカーボネート樹脂が電荷輸送層に含まれることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
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