JP3829970B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面の滑り性、摺動性、電気特性に優れた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、近年では複写機の分野にとどまらず、各種プリンタ−の分野でも広く使われ応用されてきている。電子写真技術の中核となる感光体については、その光導電材料として従来からのセレニウム、ヒ素−セレニウム合金、硫化カドミニウム、酸化亜鉛といった無機系の光導電体から、最近では、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電材料を使用した感光体が開発されている。
有機系感光体の中でも電荷発生層、及び電荷輸送層を積層した、いわゆる積層型感光体が主流となっている。
しかし、有機系の積層型感光体は、感度、帯電性といった電気的特性に於いては十分な性能を持つが、感光体表面の物理的強度に於いて不十分であるため、実用上限られた耐刷性能に留まっているのが現状である。このような感光体表面の物理的強度をほぼ決定するのは積層型感光体に於いては電荷輸送層の機械的特性である。
【0003】
これまで機械的強度を高めるために、例えばオーバーコート層を設ける(特開昭61−72256号公報)、耐摩耗性の高いバインダーポリマーを使用する(特開昭63−148263号公報、特開平3−221962号公報)等が提案されているが、いずれもこれらの効果が十分でなかったり、電気特性などの特性に悪影響を及ぼすなどの問題を含んでいるのが現状である。
【0004】
また近年、感光体に対する様々な物理的負荷の増大に耐え、長期に渡って安定した高品質画像を提供する必要性から、表面滑り性の向上が望まれている。バインダー樹脂による表面の滑り性の改良に関しては、ポリシロキサンブロック共重合体をバインダーに用いる(特開昭61−132954号公報、特開平2−240655号公報)、低分子量のポリシロキサン末端化合物を用いる(特開平7−261440号公報)、フッ素原子含有ポリカーボネートを用いる(特開平5−306335号公報、特開平6−32884号公報、特開平6−282094号公報)、アルキル基を側鎖に有するポリカーボネートを用いる(特開平7−13363号公報)等が提案されているが、いずれも効果が十分でなかったり、電気特性や耐刷性に悪影響を及ぼすなどの問題を含んでいるのが現状である。
【0005】
一方、バインダー樹脂以外の組成物による表面の滑り性の改良に関しては、無機フィラーや潤滑性粒子を電荷輸送層に分散させる方法が考案されているが、粒子によって入射光が散乱されるため、粒子の種類・量によっては感度が大きく劣化するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は電気特性に悪影響を及ぼすことなく、感光体表面の滑り性、摺動性、耐傷性を改良するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、これらの現状に鑑み、機械的強度の中で特に感光体表面の滑り性に着目し、クリーニングブレードや現像剤との接触抵抗をできるだけ少なくし感光体に与える機械的ダメージを最小限にするために感光体表面の滑り性を高める手法について鋭意検討を重ねた結果、感光層にアルキルエステル基を有するポリカーボネート樹脂とエステル基を有するワックスとを併用することにより、他の特性を損なわずに表面の滑り性が著しく高まることを見いだし、長期の繰り返し使用においても電気特性の低下が少なく、クリーニング性および傷に対する耐久性に優れる電子写真感光体を提供することができる本発明に至った。すなわち本発明の要旨は、導電性基体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が電荷発生物質、電荷輸送物質、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂およびエステル基を有するワックスを含有し、かつ、Y 1 、Y 2 、Y 3 、Y 4 、Y 5 、Y 6 、Y 7 、Y 8 、Y 9 、Y 10 は各々独立に炭素数4以上30以下の脂肪族アルコールと炭素数1以上10以下のカルボン酸のエステルを含む一価の有機残基を少なくとも一つ含むことを特徴とする電子写真感光体に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の要点は、特定のポリカーボネート樹脂およびワックスを併用する点に有る。
まず、ポリカーボネート樹脂に関して、炭素数4以上の脂肪族アルコールと炭素数1以上のカルボン酸のエステルを含む一価の有機残基で置換されているビスフェノールを構成成分として含むものが用いられる。具体的には、下記一般式(1)で表される。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)中、Xは
【0011】
【化2】
【0012】
芳香環、単結合、ラクトン、フルオレンを示す。Y1 、Y2 、Y3 、Y4 、Y5 、Y6 、Y7 、Y8 、Y9 、Y10は各々独立に好ましくは炭素数4以上の脂肪族アルコールと炭素数1以上のカルボン酸のエステルを含む一価の有機残基を少なくとも一つ含む他、水素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、アリル基、フェニル基、メトキシ基が用いられ、さらに好ましくは炭素数4以上の脂肪族アルコールと炭素数1以上のカルボン酸のエステルを含む一価の有機残基を少なくとも一つと、水素原子、メチル基、フェニル基が用いられる。
【0013】
炭素数4以上の脂肪族アルコールと炭素数1以上のカルボン酸のエステル基を含む一価の有機残基の、脂肪族アルコール部分は直鎖でも分岐があってもよいが好ましくは炭素数が10以上、さらに好ましくは炭素数15以上30以下である。炭素数が4以下であると十分な滑り性改良効果が得られないことがあり、炭素数が30より大きいと溶解性、他の機械物性に悪影響を及ぼすことがある。またエステルの炭素数1以上のカルボン酸部分は好ましくは炭素数1以上10以下の脂肪族及び芳香族カルボン酸さらに好ましくは、炭素数1以上3以下の脂肪族カルボン酸が用いられる。
前述の一般式(1)中、Xは好ましくは
【0014】
【化3】
【0015】
が用いられ、Y9 及びY10は好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数4以上の脂肪族アルコールと炭素数1以上のカルボン酸のエステルを含む一価の有機残基が用いられ、さらに好ましくはメチル基、フェニル基、炭素数4以上の脂肪族アルコールと炭素数1以上のカルボン酸のエステルを含む一価の有機残基が用いられる。炭素数4以上の脂肪族アルコールと炭素数1以上のカルボン酸のエステル基を含む一価の有機残基の脂肪族アルコール部分は直鎖でも分岐があってもよいが好ましくは炭素数が10以上さらに好ましくは炭素数15以上30以下である。
【0016】
本発明のポリカーボネート中に含まれるエステル基の脂肪族アルコール部分の含有量は、好ましくは1wt%以上50wt%以下、さらに好ましくは5wt%以上30wt%以上である。1wt%未満であると十分な滑り性改良効果が得られず、50wt%以上であると耐熱性が低下して好ましくない。
一般式(1)で表される構造単位は単独でも良いし、他の1種類以上の2官能性フェノール化合物との共重合体でも良い。他の共重合成分を与える2官能性フェノール化合物の具体例としては、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2、2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フェノールフタレイン等を挙げることができる。
【0017】
一般式(1)で表される繰り返し単位は、1種類でも、2種類以上の構造の繰り返し単位の組み合わせでも良い。また実質的に特性を変えない範囲で、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリケトン、ポリビニル重合体、ポリシロキサン等の他の構造を導入させても良い。
また一般式(1)の構造単位を含むポリカーボネートと他の構造のポリカーボネートを任意の割合で混合して用いても良い。この場合、一般式(1)の構造単位を含むポリカーボネートは好ましくは10wt%以上100%以下さらに好ましくは30wt%以上90wt%以下である。10wt%以下であると改良効果が十分に得られない。
【0018】
本発明で用いるポリカーボネート重合体は、好ましくは粘度平均分子量が10,000以上300,000以下であり、さらに好ましくは15,000以上100,000以下であり、特に20,000以上60,000以下が好ましい。粘度平均分子量が10,000未満であると樹脂の機械的強度が著しく低下し、実用に耐えない。また300,000以上であると、塗布液の粘度が高くなりキャストフィルムを適当な膜厚に塗布して作製することが困難である。
本発明で併用するワックスはエステル基を有するものであり、エステル基を分子内にもつものであればいずれでも良いが、好ましくはワックスの原料成分であるカルボン酸もしくはアルコールの少なくとも一方の炭素数が12以上40以下のワックスである。炭素数が大きいほど、融点は高くなり、機械特性は良好になるが、逆に炭素数が大きすぎると塗布液中では析出しやすくなるため上記の範囲の炭素数が好ましい。
【0019】
また、ワックスの感光層中での相溶性を向上させるためにはエステル基を2つ以上有するワックスが好ましい。このようなワックスとしてはジアルコール(またはポリアルコール)とジカルボン酸(またはポリカルボン酸)とモノカルボン酸もしくはモノアルコールとから縮合反応により得られるエステル基を2つ以上有するワックスが好ましい。この場合、原料の少なくとも一つは炭素数12〜40のものを用い、他の原料も炭素数40以下のものとすることが好ましい。
さらに好ましくはワックスのDSC測定において40〜130℃の範囲に吸熱ピークを有するワックスが良い。
ワックスの具体例としてはエステル基を1つ有するものとして
【0020】
【化4】
R1 −COO−R2
【0021】
(式中、R1 、R2 は炭素数が1以上の炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基(直鎖、分岐のいずれでもよく、飽和、不飽和のいずれでもよい)、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基をあらわす。)
これらのうち、R1 は炭素数が11以上39以下、R2 は炭素数が12以上40以下の直鎖飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。このようなワックスの例としてセチルパルミテート、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘニレート、セチルミリステート、パルミチンヘキサデシレート等が例示できる。
ワックスとしてエステル基を2つ以上持つものの例としてはペンタエリスリトールステアリン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールベヘニン酸テトラエステル、ペンタエリスリトールベヘニン酸ジエステル、ペンタエリスリトールベヘニン酸トリエステル、ネオペンチルグリコールベヘニン酸ジエステル、ノナンジオールとセバシン酸とステアリルアルコールの縮合物、デカンジオールとアゼライン酸とステアリルアルコールの縮合物等が挙げられる。
【0022】
ワックスの添加量は、少なすぎると機械特性に効果が無く、多すぎると電気特性を悪化させたり、塗膜表面の平滑性等の性状に悪影響を与える。そこで、添加量は表面層の全固形分重量に対し、0.01%から30%の範囲が好ましく、0.1%から10%がより好ましい。
ワックスは異なったものを2種類以上用いることも可能で、この場合、塗布、乾燥後のワックスの析出を抑える効果がある。
【0023】
上記の特定のポリカーボネート樹脂とワックスを併用することにより生じる効果としては、ポリカーボネート樹脂の側鎖に脂肪族エステル基が存在することにより、ワックス、特にエステル系ワックスの樹脂に対する相溶性が向上することが挙げられる。これによってワックスがより均一に感光層中に存在可能になり、より高重量部数の添加が可能になる。これによって滑り性が改良されると共に、相溶性向上による光透過率向上、および電気特性の悪化防止効果が観測される。このうち滑り性に関しては、前記ポリカーボネート樹脂を単独で使用した場合、あるいは側鎖に前記エステル基の無いポリカーボネート樹脂にワックスを用いた場合の、それぞれの効果の加算以上に、滑り性の向上に対する相乗効果が観測される場合が多く見られる。
【0024】
次に、本発明に関わる電子写真感光体の構成について説明する。
本発明において感光層は導電性支持体上に設けられる。導電性支持体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料やアルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫合金)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙などが主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
【0025】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法、例えば酢酸ニッケルなどの封孔剤で処理するなどの封孔処理を施すことが望ましい。
支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
【0026】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルックカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0027】
また、下引き層に用いる金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましいのは、10nm以上25nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
【0028】
バインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選べるが、樹脂100重量部の対居、10重量部から500重量部の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性から0.1μmから20μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
本発明の感光層の具体的な構成として、
・電荷発生物質を主成分とする電荷発生層、電荷輸送物質及びバインダ−樹脂を主成分とした電荷輸送層をこの順に積層した積層型感光体、
・電荷輸送物質及びバインダ−樹脂を主成分とした電荷輸送層、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層をこの順に積層した逆二層型感光体、
・電荷輸送物質及びバインダ−樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた分散型感光体、
の様な構成が基本的な形の例として挙げられる。
【0029】
積層型感光体の場合、その電荷発生層に使用される電荷発生材料としては例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、中でもフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。電荷発生層は蒸着によって形成することもできるが、これらの材料の微粒子をたとえばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用することが好ましい。この場合の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して30から500重量部の範囲より使用され、その膜厚は通常0.05μmから3μm、好ましくは0.1μmから1μm、特に好ましくは0.15μmから0.6μmである。
【0030】
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類が使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基などがあげられる。特に感度の高い、X型、τ型の無金属フタロシアニン、α型、β型、Y型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、β型、α型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit.Kristallogr.159(1982)173)、β型は安定型として知られているものである。Y型は、特公平7−91486号公報などに記載されているCuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理、磨砕処理、溶剤処理等が知られている。
【0031】
電荷輸送層に含まれる電荷輸送材剤としては、2,4,7−トリニトロフルオレノンなどの芳香族ニトロ化合物、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、チアジアゾール誘導体などの複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン化合物、これらの化合物が複数結合されたもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質が挙げられる。電荷輸送材料は単独で用いても良いし、いくつかを混合してもちいてもよい。これらの電荷輸送材料がバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
【0032】
バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して30〜200重量部、好ましくは40〜150重量部の範囲で使用される。また膜厚は一般に5〜50μm、好ましくは10〜45μmがよい。なお、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤などの添加物を含有させても良い。
酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
分散型の場合、バインダー樹脂100重量部に対して電荷発生材料は1〜50重量部、電荷輸送材料は30〜150重量部の範囲より使用されるのが好ましい。また膜厚は通常5〜50μm、好ましくは10〜30μmが好適である。また必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
分散型感光層の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、前出の電荷発生物質が分散される。
【0033】
その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、例えば好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。感光層の膜厚は通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコ−ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
【0034】
感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で保護層を設けても良い。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはワックスに加えてフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
これらの感光体を構成する各層は、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等により塗布して形成される。
各層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。
【0035】
本発明の電子写真感光体を使用する複写機・プリンター等の電子写真装置は、少なくとも帯電、露光、現像、転写の各プロセスを含むが、どのプロセスも通常用いられる方法のいずれを用いても良い。帯電方法(帯電器)としては、例えばコロナ放電を利用したコロトロンあるいはスコロトロン帯電、導電性ローラーあるいはブラシ、フィルムなどによる接触帯電などいずれを用いても良い。このうち、コロナ放電を利用した帯電方法では暗部電位を一定に保つためにスコロトロン帯電が用いられることが多い。現像方法としては、磁性あるいは非磁性の一成分現像剤、二成分現像剤などを接触あるいは非接触させて現像する一般的な方法が用いられる。転写方法としては、コロナ放電によるもの、転写ローラーあるいは転写ベルトを用いた方法等いずれでもよい。転写は、紙やOHP用フィルム等に対して直接行っても良いし、一旦中間転写体(ベルト状あるいはドラム状)に転写したのちに、紙やOHP用フィルム上に転写しても良い。
通常、転写の後、現像剤を紙などに定着させる定着プロセスが用いられ、定着手段としては一般的に用いられる熱定着、圧力定着などを用いることができる。これらのプロセスのほかに、通常用いられるクリーニング、除電等のプロセスを有しても良い。
【0036】
【実施例】
以下実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中「部」は「重量部」を表す。
実施例1
[感光体の製造]
β型オキシチタニウムフタロシアニン10重量部を、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 150重量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行った。
また、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の5% 1,2−ジメトキシエタン溶液100部及びフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHH)の5% 1,2−ジメトキシエタン溶液100部を混合してバインダー溶液を作製した。
先に作製した顔料分散液160重量部に、バインダー溶液100重量部、適量の1,2−ジメトキシエタンを加え最終的に固形分濃度4.0%の分散液を調製した。
この様にして得られた分散液を表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚が0.2μmになるように塗布して電荷発生層を設けた。
次にこのフィルム上に、次に示す正孔輸送性化合物[1]70部と、
【0037】
【化5】
【0038】
次に示すワックス(W−1)2部と、
【0039】
【化6】
【0040】
次に示すワックス(W−1)2部、
【0041】
【化7】
【0042】
および下記構造式[A]の粘度平均分子量34,000のポリカーボネート樹脂100部、
【0043】
【化8】
【0044】
およびレベリング剤としてシリコーンオイル0.03部をトルエン、テトラヒドロフランの混合溶媒に溶解させた液を塗布し、125℃で20分間乾燥し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設けた。
【0045】
[摩擦試験]
トナーを上記で作成した感光体の上に0.1mg/cm2 となるよう均一に乗せ接触させる面にクリーニングブレードと同じ材質の肉厚2mmのウレタンゴムを1cm幅に切断したものを用い45度の角度で用い、荷重200g、速度5mm/sec、ストローク20mm、繰り返し回数100回の条件で動摩擦係数を協和界面化学(株)社製全自動摩擦摩耗試験機DFPM−SSで測定した。結果を表1に示す。
【0046】
[電気特性]
前記作製した感光体を感光体測定機(川口電気(株)製、モデルEPA−8100)に装着し、アルミニウム面への流れ込み電流を50μAになるように帯電させた後、露光、除電を行い、その時の半減露光量(E1/2 、単位μJ/cm2 、基準電位:−450V)、残留電位(Vr、単位V)を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例2
前記実施例1におけるワックス(W−1)2部とワックス(W−2)2部に代えて、ワックス(W−1)4部を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表1に示す。
実施例3
前記実施例1におけるワックス(W−1)2部とワックス(W−2)2部に代えて、ワックス(W−1)4部およびワックス(W−2)2部を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
比較例1
前記実施例1において使用された構造式[A]で表されるポリカーボネート樹脂に代えて、下記構造式[B]で表され、m/n=50/50(モル比)、粘度平均分子量33,000のポリカーボネート樹脂を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【化9】
【0050】
比較例2
前記実施例1において使用された構造式[A]で表されるポリカーボネート樹脂に代えて、上記構造式[B]で表され、m/n=50/50(モル比)、粘度平均分子量33,000のポリカーボネート樹脂を用い、さらにワックス(W−1)およびワックス(W−2)を除いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例3
前記実施例1において使用されたワックス(W−1)およびワックス(W−2)を除いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例4
前記実施例1において使用されたβ型オキシチタニウムフタロシアニンに代えてY型オキシチタニウムフタロシアニンを使用して電荷発生層を作製し、また前記構造式[A]で表されるポリカーボネート樹脂に代えて、下記構造式[C]で表され、m/n/l=27/63/10(モル比)、粘度平均分子量49,000のポリカーボネート樹脂を、また正孔輸送性化合物[1]70部に代えて下記構造式の正孔輸送性化合物[2]40部を用いた以外は実施例1と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【化10】
【0055】
比較例4
前記実施例4において使用された構造式[C]で表されるポリカーボネート樹脂に代えて、下記構造式[D]で表され、m/n=30/70(モル比)、粘度平均分子量24,100のポリカーボネート樹脂を用いた以外は実施例4と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
【化11】
【0057】
比較例5
前記実施例4において使用された構造式[C]で表されるポリカーボネート樹脂に代えて、上記構造式[D]で表され、m/n=30/70(モル比)、粘度平均分子量24、100のポリカーボネート樹脂を用い、さらにワックス(W−1)およびワックス(W−2)を除いた以外は実施例4と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表2に示す。
比較例6
前記実施例4において使用されたワックス(W−1)およびワックス(W−2)を除いた以外は実施例4と同様に感光体を製造し、摩擦係数及び電気特性を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、電気特性に悪影響を及ぼすことなく電子写真感光体表面の滑り性・摺動性を著しく向上させることができるためクリーニングブレードや現像剤などによる傷が付きにくくなり感光体の長寿命化にきわめて効果的であり高速の複写機や省電力型の複写機、プリンターなどに有用である。
Claims (3)
- エステル基を有するワックスの原料成分であるカルボン酸もしくはアルコールの少なくとも一方の炭素数が12以上のワックスであることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- ワックスがエステル基を2つ以上有するワックスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
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