JP3605257B2 - 高周波パッケージの接続構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波用半導体素子や、高周波用受動素子などの高周波素子等をキャビティ内に気密封止しつつ、外部電気回路等に形成された導波管に直接接続することのできる高周波パッケ−ジの接続構造に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、社会の情報化が進み、情報の伝達は携帯電話に代表されるように無線化、パ−ソナル化が進んでいる。このような状況の中、さらに高速大容量の情報伝達を可能にするために、ミリ波(30〜300GHz)領域で動作する半導体素子の開発が進んでいる。最近ではこのような高周波半導体素子技術の進歩に伴い、その応用として車間レ−ダ−や無線LANのようなミリ波の電波を用いたさまざまな応用システムも提案されるようになってきた。例えば、ミリ波を用いた車間レ−ダ−(1995年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会、SC−7−6参照)、コ−ドレスカメラシステム(1995年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会、C−137参照)、高速無線LAN(1995年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会、C−139参照)が提案されている。
【0003】
このようにミリ波の応用が進むにつれ、それらの応用を可能とするための要素技術の開発も同時に進められており、特に、各種の電子部品においては、必要な伝送特性を有しながら、いかに小型化と低コスト化を図るかが、大きな課題となっている。
【0004】
このような要素技術の中でも、高周波素子が収納されたパッケージと、外部電気回路とをいかに簡単で且つ小型な構造で接続するかが重要な要素として位置づけられている。とりわけ、伝送損失の最も小さい導波管が形成された外部電気回路と、高周波素子を搭載したパッケージとをいかに接続するかが大きな問題であった。
【0005】
従来における高周波用パッケ−ジを外部電気回路に形成された導波管に接続する方法としては、高周波用パッケージからコネクタを用いて一旦同軸線路に変換して導波管と接続する方法、外部電気回路において、導波管を一旦マイクロストリップ線路等に接続した後、そのマイクロストリップ線路と高周波用パッケージとを接続する方法が採用される。
【0006】
最近では、高周波素子を収納したパッケ−ジを外部電気回路の導波管に直接接続する方法も提案されている(1995年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会、SC−7−5参照)。この提案では、素子をキャビティ内に気密封止する蓋体の一部に石英を埋め込み、その石英埋め込み部を通じて電磁波をキャビティ内に導入し、キャビティ内に設置した導波管−マイクロストリップ線路変換基板と接続したものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように、外部電気回路の導波管を一旦、コネクタやマイクロストリップ線路などの他の伝送線路形態を介して、パッケージと接続する方法では、接続構造自体が複雑化するとともに、コネクタや他の伝送線路を形成する領域を確保する必要があるために、接続構造自体が大型化してしまうという問題があった。しかも、他の線路形態やコネクタを介することにより伝送損失が増大する可能性もあった。
【0008】
これに対して、導波管から電磁波の形でパッケ−ジのキャビティ内部まで直接導入する方法は、接続構造を小型化できる点では有効的であるが、蓋などのキャビティ形成部材を通過する際に電磁波の損失を小さくするために、その通過部を誘電率および誘電正接が小さい材料を使用することが必要であり、そのために、前記文献に記載されるように、石英などの低誘電率、低損失材料を埋め込む処理が必要となる。このような埋め込み処理は、気密封止性の信頼性を損なうばかりでなく、量産には全く不向きである。
【0009】
また、キャビティ形成部材をすべて低誘電率、低損失材料によって構成することも考えられるが、パッケージを構成する材料として、それら電気特性以外にも機械的な強度や気密封止性、メタライズ性など各種の特性が要求され、それら特性をすべて満足し、且つ安価に製造できるような適切な材料は見当たらない。
【0010】
つまり、上記の困難性は、高周波信号を導波管を通じ電磁波のままパッケ−ジのキャビティ内部に導入しようとすることによって生じている。つまり信号が、キャビティ内部に導入される部分において電磁波であるため、この部分の気密封止性と低損失化を両立させなければならないためである。
【0011】
本発明は、前記課題を解消せんとして成されたもので、高周波素子の気密性に影響を及ぼすことなく、外部電気回路に設けられた導波管と直接的に低損失に接続可能な接続部を具備し、外部電気回路に設けられた導波管に対して、低損失に接続可能な高周波パッケージの接続構造を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について鋭意検討した結果、キャビティ内部に収納される高周波素子に接続された高周波伝送線路から、電磁結合、ビア導体などの高周波信号を誘電体を貫通して伝送できる線路構造を用いて、キャビティ外の誘電体基板表面に形成されたパッチ状導体層と接続し、このパッチ状導体層を導波管との接続部とすることにより、高周波素子の封止を確実に行うことができるとともに、導波管に直接接続することを可能としたものである。
【0015】
即ち、本発明は、高周波用パッケージを導波管と接続するための接続構造として、上記高周波用パッケージを、導波管の電磁気的に開放された開放端部に接続するための構造であって、前記パッケージにおける前記接続部が、前記絶縁基板裏面に形成されたパッチ状導体層を具備し、該パッチ状導体層が前記グランド層を介して、前記高周波伝送線路と接続されてなり、前記導波管の側壁の一部に形成された開口に、前記接続部を前記パッチ状導体層面が前記導波管の中心軸と平行になるように取付けて、前記高周波用パッケージと前記導波管を接続したことを特徴とする。なお、前記高周波用パッケージの前記グランド層が、前記導波管における導体壁または終端壁として機能することを特徴とする。さらには、前記パッチ状導体層が、前記グランド層に形成されたスロット孔を介して前記高周波伝送線路と電磁結合してなることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高周波用パッケージの構造について図1〜図5をもとに説明する。各図によれば、高周波用パッケージは、誘電体基板1と、蓋体2によって形成されたキャビティ3内において、高周波素子4が誘電体基板1表面に接続搭載され、キャビティ3内は気密に封止されている。そして、キャビティ3内の誘電体基板1の表面には、高周波素子4と接続される高周波伝送線路が形成され、この高周波用伝送線路は、キャビティ3外の誘電体基板表面の一部に形成された、接続部と、電磁結合、ビア導体などの変換手段によって接続される。
【0017】
図1は、本発明の高周波用パッケージの一例を説明するためのもので、(a)は概略断面図、(b)はその平面図(但し、蓋体は図示せず)である。
【0018】
図1のパッケージにおいては、誘電体基板1の表面には高周波素子4が搭載され、また、高周波素子4と端部が接続され、誘電体基体1内部に形成されたグランド層5とともにマイクロストリップ線路aを形成する中心導体6が被着形成されている。そして、誘電体基板1の裏面には、パッチ状導体層7が形成されている。そして、マイクロストリップ線路aとパッチ状導体層7は、グランド層5に形成されたスロット孔8によって電磁結合された構造からなる。かかる電磁結合構造は、具体的には、特願平1−266578号に記載されるように、各線路の端部同士が信号周波数の1/4波長の長さでスロット中心から突出する位置に対峙させることにより結合される。
【0019】
また、蓋体2は、誘電体基板1の高周波素子4搭載面を気密に封止すべく、ガラス付け、ロウ付け、有機接着材などにより誘電体基板1に固定される。
【0020】
一方、誘電体基板1の裏面に形成されたパッチ状導体層7は、図2に示すように、正方形、長方形の矩形状であっても、また図2(b)に示すような、円形でも楕円形であってもよい。
【0021】
図3、図4は、図1のパッケージを導波管に接続した時の構造を説明するための図である。そして、このパッケージを導波管に接続する場合、導波管9には、パッケージを接続するための開口が形成されている。図3は、導波管の終端部に形成された開口に接続する場合のもので、(a)はその接続方法を説明するための組み立て斜視図、(b)は接続した時の断面図である。また図4は、導波管の側壁に形成された開口に接続する場合のもので、(a)はその接合方法を説明するための組み立て斜視図、(b)は接続した時の断面図である。
【0022】
図3によれば、導波管9の端部は終端壁が存在しない、電磁気的に開放された開放端部10を有する。この開放端部10に接続する場合、パッケージの接続部によって開放端部10を塞ぐように接続し、パッケージの底面に形成されたパッチ状導体層7面が、導波管9の中心軸Zと垂直に交わる位置に接続される。
【0023】
一方、図4によれば、導波管9の側壁に開口11が形成され、その開口11に対して、パッケージの接続部によって開口11を塞ぐように接続し、パッケージの底面に形成されたパッチ状導体層7面が、導波管9の中心軸Zに対面する位置に接続される。
【0024】
図3および図4の接続構造において、パッケージの底面に形成されたパッチ状導体層7は、導波管内において、いわゆるパッチアンテナとして機能し、パッケージと導波管9とを接続することができる。また、図3、図4の接続構造においては、パッケージのグランド層5は、導波管9に形成された開口を電磁気的に閉じる機能を有し、図3においては、グランド層5は、導波管9の終端壁として機能し、図4においては、導波管9の側壁として機能することになり、これにより、開口からの電磁波のもれを防止することができる。望ましくは、図3(b)または図4(b)に示すように、グランド層5と導波管9とは、直接またはビアホール導体等を用いて電気的に接続することにより、電磁波のもれのない構造を形成できる。
【0025】
また、マイクロストリップ線路a,bの中心導体6、14の端部は、スロット孔8、18を介して良好に電磁結合させる上で、中心導体6、14の端部の線幅を広くしたり、スロット孔8、18形状をドッグボーン型にしたり、グランド層5、17と接続したビアホール導体をスロット孔8、18を囲むように複数形成することが望ましい。
【0026】
図3および図4の接続構造によれば、導波管9を伝送してきた高周波信号は導波管9と接続部におけるパッチ状導体層7への変換構造により、パッチ状導体層7上の信号に変換される。パッチ状導体層7上の信号に変換された高周波信号は、キャビティ内部のマイクロストリップ線路aにグランド層5に形成されたスロット孔8を介して電磁結合により伝送され、高周波素子4に伝送されることになる。このように、本発明の構造によれば、キャビティの封止を確実に行いながら、パッケ−ジを導波管と直接接続できることができる。
【0027】
なお、図3および図4の接続構造において、グランド層5、17と導波管9の導体壁とを接触させて電気的に接続し、同電位にすることが望ましい。また、導波管9に形成される開口10、11はできるだけ小さい方が望ましい。
【0028】
次に、図5は、本発明の高周波用パッケージの他の構造を説明するための概略断面図である。図5によれば、誘電体基板1、蓋体2、およびヒートシンク13によってキャビティ3が形成され、そのヒートシンク13に高周波用素子4が取り付けられている。また、キャビティ4内の誘電体基板1表面には、中心導体14が形成され、誘電体基板1のヒートシンク13との接合面に形成されたグランド層15とともにマイクロストリップ線路bが形成されている。また、誘電体基板1のキャビティ3外の底面には、図1と同様のパッチ状導体層16が形成されている。そして、パッチ状導体層16とキャビティ3内のマイクロストリップ線路bとは、誘電体基板1内に設けられたグランド層17のスロット孔18によって電磁結合された構造からなる。この図5のパッケージにおいても、図3および図4と全く同様な方法によって導波管と接続することができる。しかも、図5の構造は、ヒートシンク13を具備することから、高周波素子から発生する熱を効率的に放熱することが可能である。
【0029】なお、図1および図5のパッケージにおいては、マイクロストリップ線路aとまたはマイクロストリップ線路bとパッチ状導体層7とを、グランド層5、17に設けられたスロット孔8、18によって電磁結合されたものであるが、その他、キャビティ3内のマイクロストリップ線路a,bの中心導体6、14の端部をスロット孔8、18を貫通するスルーホール導体で接続することも可能である。
【0030】
本発明におけるパッケージにおいては、誘電体基板は、Al2O3、AlN、Si3N4などのセラミックス材料や、ガラス材料、あるいはガラスと無機質フィラーとの複合体からなるガラスセラミック材料により原料粉末を用いて成形した後、焼成することにより形成される他、有機系材料からなるプリント基板によって形成することができる。また、信号の伝達を担う各導体線路およびグランド層は、タングステン、モリブデンなどの高融点金属や、金、銀、銅、アルミニウム、白金などの低抵抗金属などにより形成することができ、これらは、従来の積層技術をもって一体的に形成できることも大きな特徴である。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の高周波パッケ−ジの接続構造によれば、キャビティ外部に、パッチ状導体層を接続部として形成し、このパッチ状導体層をパッケージの高周波伝送線路と接続することにより、パッケ−ジの封止構造に影響を与えることなく、導波管との高周波信号の伝送損失の小さい接続構造を実現できる。その結果、この接続構造を構成するパッケージの信頼性と量産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における高周波パッケ−ジの一実施態様を説明するためのもので、(a)は概略断面図、(b)はその平面図(但し、蓋体は図示せず)である。
【図2】本発明における高周波用パッケージのパッチ状導体層の形状を説明するためのもので、(a)がその一例、(b)は他の例である。
【図3】図1の高周波用パッケージを開放端部を有する導波管と接続する場合の構造を説明するためのもので、(a)は、接続方法を説明するための組み立て斜視図、(b)は接続した時の断面図である。
【図4】図1の高周波用パッケージを側壁に開口を形成した導波管に接続する場合の構造を説明するためのもので、(a)は、接続方法を説明するための組み立て斜視図、(b)は接続した時の断面図である。
【図5】本発明における高周波用パッケージの他の一実施態様を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
1 誘電体基板
2 蓋体
3 キャビティ
4 高周波素子
5、15、17 グランド層
6、14 中心導体
a、b,マイクロストリップ線路
7、16 パッチ状導体層
8、18 スロット孔
9 導波管
10 開放端部
11 開口
12 終端部
13 ヒートシンク
Claims (3)
- 誘電体材料からなる誘電体基板と、高周波素子を収納するためのキャビティと、前記キャビティ外の前記誘電体基板表面の一部に形成され、導波管と接続するための接続部と、前記高周波素子と前記接続部とを接続するために前記キャビティ内の誘電体基板の表面に形成された中心導体と、前記誘電体基板内部に設けられたグランド導体とを有する高周波伝送線路と、を具備する高周波用パッケージを、導波管の電磁気的に開放された開放端部に接続するための構造であって、
前記パッケージにおける前記接続部が、前記絶縁基板裏面に形成されたパッチ状導体層を具備し、該パッチ状導体層が前記グランド層を介して、前記高周波伝送線路と接続されてなり、前記導波管の側壁の一部に形成された開口に、前記接続部を前記パッチ状導体層面が前記導波管の中心軸と平行になるように取付けて、前記高周波用パッケージと前記導波管を接続したことを特徴とする高周波用パッケージの接続構造。 - 前記高周波用パッケージの前記グランド層が、前記導波管における導体壁として機能する請求項1記載の高周波用パッケージの接続構造。
- 前記パッチ状導体層が、前記グランド層に形成されたスロット孔を介して前記高周波伝送線路と電磁結合してなる請求項1記載の高周波用パッケージの接続構造。
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