JP3604573B2 - 金属トナー用乾式現像方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導体パターンを形成するための金属トナー(以下、導体パターン形成用金属トナーと称する場合がある。)の乾式現像方法に関する。
より詳しくは、画像特性に優れた導体パターンを安定して形成することが可能な金属トナーの乾式現像方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、積層コンデンサにおける導体パターン(電極)を形成するのに、スクリーン印刷法が用いられており、具体的には、スクリーン印刷機を用いて、所定の金属粒子を含んだペーストを、セラミック粉末と有機結合剤とからなるセラミックグリーンシート上に塗布していた。
しかしながら、このようなスクリーン印刷法を用いた形成方法では、連続処理することが困難であり、導体パターンの生産性(生産効率)が低いという問題点が見られた。また、スクリーン印刷法においては、メッシュ状の網をスクリーンとして使用するため、いわゆるスクリーンだれが生じ、印刷精度が低下したり、微細な導体パターンを形成することが困難であるという問題も見られた。
【0003】
そこで、このような問題点を解決するために、特開昭59−189617号公報、特開昭59−202682号公報、特開昭60−137886号公報および特開昭60−160690号公報には、電子写真法(乾式現像装置)を用いて、導電性粒子の周囲を絶縁性樹脂で被覆した金属トナー(現像剤)をセラミックシート上に印刷する導体パターンの形成方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、従来の導体パターンの形成方法においては、使用する金属トナー(現像剤)の比重が一般の有機トナーと比較して1.5〜20倍も重く、乾式現像装置内において安定して搬送することが困難であり、また、膜厚規制部材を磨耗しやすく、微細な導体パターンを安定して形成することが困難であった。また、形成された導体パターンにおいてエッジが滲み、画像特性(シャープ性)に乏しかったり、画像濃度が低い(導体抵抗が高い)という問題も見られた。
【0005】
一方、金属トナーを対象としていないが、有機トナーについて優れた画像特性を得るための電子写真法を用いた乾式現像装置が、特開平9−185247号公報や特開昭60−130768号公報に開示されている。
特開平9−185247号公報に開示された乾式現像装置によれば、現像ローラと、感光体ドラムとの間でトナーを現像するに際して、いわゆるジャンピング方式(飛翔方式)を用いているため、比重の重い金属トナーに適用した場合に、金属トナーを安定して飛翔させることが困難であり、事実上、導体パターンを形成することが不可能であった。
【0006】
また、特開昭60−130768号公報に開示された乾式現像装置によれば、感光体ドラムを現像するに際して、現像ローラを用いた接触現像方式を採用しているため、比重の重い金属トナーであっても現像すること自体は可能であったが、画像特性に優れた導体パターンを安定して形成することは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の発明者らは、従来の問題点を鋭意検討したところ、使用する金属トナーの平均粒子径がばらつくとともに、このように比重の重い金属トナーを現像する際の現像ローラと感光体ドラムとの間の接触状態が不十分であることに起因していることを見出した。
すなわち、本発明の発明者らは、使用する金属トナーの平均粒子径を一定範囲内に制限するとともに、金属トナーを現像する際の現像ローラと感光体ドラムとの間の接触ニップ幅を制限することにより、さらには、現像ローラ上の金属トナーからなる薄層の厚さ等を制限することにより、画像特性(シャープ性や画像濃度)に優れた、微細な導体パターンを安定して形成することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
よって、本発明の目的は、画像特性に優れ、微細な導体パターンを安定して形成することができる電子写真方式を用いた金属トナー用乾式現像方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも筒状の磁性搬送部材と、現像ローラと、感光体ドラムとを順次に具備した乾式現像装置を用いた乾式現像方法において、2〜20μmの範囲内の平均粒子径を有する金属粒子または金属酸化物粒子の表面に酸化防止又は密着用表面処理を施し、該表面処理を施した表面に、該金属粒子または金属酸化物粒子の平均粒子径の1/1000〜1/10の大きさを有する帯電性材料が埋設された、0.01〜3μmの範囲内の厚さを有する絶縁性樹脂を被覆した平均粒子径が2.3〜20.4μmの範囲内の値である金属トナー、及び40〜120μmの平均粒子径を有する磁性キャリアを含んだ現像剤を用いて接触現像するとともに、前記現像ローラと前記感光体ドラムとの間の接触ニップ幅を1〜6mmの範囲内の値とすることを特徴とする。このように金属トナーの平均粒子径を一定範囲内に制限することにより、比重の重い金属トナーであっても、安定して搬送および現像をすることができる。そして、このように磁性搬送部材と現像ローラとを組み合わせ、さらに、金属トナーを現像する際の現像ローラと感光体ドラムとの間の接触状態を接触ニップ幅により制限することにより、微細な導体パターンに対応した優れた金属トナーによる画像特性(シャープ性や画像濃度)が得られ、結果として微細な導体パターンを安定してセラミック基板上に形成することができる。
【0009】
なお、現像ローラと感光体ドラムとの接触ニップ幅は、例えば、圧力印字紙を通過させることにより確認することができる。すなわち、圧力印字紙において圧力が負荷された箇所が発色するので、その発色箇所の長さを測定することにより、接触ニップ幅を算出することができる。
また、本発明に使用する金属トナーにおいて、金属粒子または金属酸化物粒子というときは、それぞれを単独で使用しても良く、あるいは組み合わせて使用しても良い。したがって、以下、金属粒子または金属酸化物粒子を、金属粒子等と省略する場合がある。ただし、導体パターンを形成したときに、より均一な導体抵抗が得られることから、金属粒子または金属酸化物粒子は、単核粒子として使用することが好ましい。したがって、この場合、個々の金属粒子または金属酸化物粒子の表面を、絶縁性樹脂により被覆することになる。
【0010】
また、本発明を実施するにあたり、現像ローラ上に、10〜50μmの範囲内の厚さを有る金属トナーの薄層を形成した後に、感光体ドラムに対して金属トナーを接触現像することが好ましい。
現像するにあたり、磁性搬送部材と現像ローラとを組み合わせて使用するだけでなく、現像ローラ上の金属トナーからなる薄層の厚さをこのような範囲に制御することにより、金属トナーをさらに安定して搬送および現像をすることができる。
【0011】
また、本発明を実施するにあたり、現像ローラ上の金属トナーにおける薄層の厚さを、磁性搬送部材に設けた機械的層厚規制手段および磁性搬送部材と現像ローラとの間の電界強度、あるいはいずれか一方により調整あるいは変更することが好ましい。
このような手段あるいは方法を採用することにより、金属トナーからなる薄層の厚さを容易に調整あるいは変更することができる。なお、現像ローラ上の薄層の厚さを、間接的に調整しているのは、例えば、現像ローラに機械的層厚規制手段を設けて、厚さを直接的に調整しようとすると、当該機械的層厚規制手段に金属トナーが付着して、却って厚さの調整が困難となる傾向があるためである。
【0012】
また、本発明を実施するにあたり、現像ローラ上の金属トナーにおける薄層の厚さを、感光体ドラムへの現像時と非現像時とで異ならせることが好ましい。
このように実施すると、現像ローラ上の金属トナーを常にリフレッシュさせる(新しい金属トナーと置き換える)ことができ、いわゆるチャージアップを有効に防止することができる。
【0013】
また、本発明を実施するにあたり、磁性搬送部材と、現像ローラとの間の距離を、0.2〜2.0mmの範囲内の値とすることが好ましい。
磁性搬送部材と現像ローラとの間隔をこのような距離に制御することにより、金属トナーをより容易に搬送し、現像ローラ上に金属トナーからなる所定厚さの薄層を容易に形成することができる。
【0014】
また、本発明を実施するにあたり、感光体ドラムに対する現像ローラの線速比を、1.1〜5.0倍の範囲内の値とすることが好ましい。
このように現像ローラの線速を、感光体ドラムの線速に対して一定範囲内の値に制御することにより、金属トナーをさらに安定して搬送および現像することができる。
【0015】
また、本発明を実施するにあたり、磁性搬送部材が、磁石集成体を内包した導電性非磁性スリーブから構成されており、かつ、現像ローラに対する磁性搬送部材の線速比を、1.1〜5.0倍の範囲内の値とすることが好ましい。
このように特定の磁性搬送部材を使用するとともに、磁性搬送部材の線速を、現像ローラの線速に対して一定範囲内の値に制御することにより、金属トナーをさらに安定して搬送することができる。
【0016】
また、本発明を実施するにあたり、現像ローラとして、NBRゴム、ウレタンゴム、またはシリコンゴムからなる弾性体現像ローラを使用することが好ましい。
これらの材料からなる現像ローラは適度な硬さを有する一方で、耐クリープ性に優れており、長期間にわたって安定して金属トナーを現像することができ。しかも、現像ローラと感光体ドラムとの間の接触ニップ幅を比較的長く設定しても、現像ローラが変形する傾向が少ない。
【0017】
また、本発明を実施するにあたり、現像剤が、40〜120μmの平均粒子径を有する磁性キャリアを含むことが好ましい。
このように特定範囲の平均粒子径を有する磁性キャリアを含んで二成分現像とすることにより、現像電位を低下させることができる。また、現像ローラや感光体ドラムの耐久性を著しく向上させることができ、さらには、現像ローラに対してクリーニング部材を設ける必要もなくなる。
【0018】
また、本発明を実施するにあたり、金属トナーに使用する金属粒子または金属酸化物粒子の球状度を0.5以上の値とすることが好ましい。
このように金属粒子または金属酸化物粒子の球状度を制限することにより、金属トナーの粒度分布を狭くすることができる。したがって、現像性を向上させることができ、滲みが少ない、シャープな画像特性の導体パターンを得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明における導体パターンを形成するための金属トナーを現像するのに適した乾式現像方法についての実施形態を、図1〜3を参照しつつ、具体的に説明する。すなわち、本発明の実施形態は、図1〜3に示すような乾式現像装置10を用いて金属トナー4を接触現像する乾式現像方法であり、現像剤として、所定範囲内の平均粒子径を有する金属トナー4を使用し、かつ、現像ローラ30と感光体ドラム7との間の接触ニップ幅を所定範囲内の値としてある。
なお、図1は、乾式現像方法により感光体ドラム7に現像された金属トナー4をセラミックグリーンシート13に対して転写する様子を示す概略図であり、図2は、乾式現像方法に使用する乾式現像装置10の部分断面図であり、図3は、感光体ドラム7に現像されるまでの金属トナー4の状態を示す説明図である。
【0020】
(1)金属トナー
(金属トナーに使用する金属粒子および金属酸化物粒子)
金属トナーに使用する金属粒子および金属酸化物粒子の種類は特に制限されるものではないが、例えば、好ましい金属粒子として、銅、タングステン、ニッケル、銀等が挙げられる。また、好ましい金属酸化物粒子として、酸化ルテニウム(RuO)、ルテニウム酸鉛(PbRu7−n、nはPbおよびRuの価数の合計値)、酸化銅、酸化銀、酸化錫、インジウム錫酸化物(ITO)等が挙げられる。これらの金属粒子あるいは金属酸化物から得られた導体パターンは、導体抵抗が低く、パターン精度に優れているという特徴がある。
【0021】
また、好ましい金属粒子の種類として、湿式法により製造された金属粒子が挙げられる。湿式法により製造された金属粒子は、粒度分布が狭く、その表面に均一な厚さを有する絶縁性樹脂層や帯電付与層を形成することができる。したがって、得られる金属トナーの粒度分布を狭くすることができ、結果として、安定して搬送や現像を行うことができ、滲みの少ないシャープな導体パターンの画像特性を得ることができる。
【0022】
ここで、湿式法は、乾式法と対比される製法であり、金属粒子を製造するのに水あるいは有機溶媒を使用することを特徴としている。したがって、水あるいは有機溶媒を使用して製造された金属粒子であれば、その種類は特に制限されるものではないが、例えば、アトマイズ法や沈殿析出法により得られた金属粒子がより好ましい。これらの方法で製造された金属粒子は、特に粒度分布が狭く、球状度も高いという特徴がある。
なお、アトマイズ法とは、金属を液滴化後、水中等に噴霧することにより、物理的に微細な粒子とする方法であり、一方、沈殿析出法は、水中等において無機金属溶液から微細な金属粒子を化学的に析出させる方法である。
【0023】
また、好ましい金属粒子または金属酸化物粒子として、体積換算の粒度分布において、金属粒子または金属酸化物粒子の70〜100vol%が、平均粒子径±平均粒子径の40%の範囲内であるものが好ましく、平均粒子径±平均粒子径の30%の範囲内であるものがより好ましい。この理由は、このような種類の金属粒子等を使用することにより、安定して搬送や現像を行うことができ、シャープな導体パターンの画像特性を得ることができる。
【0024】
(金属トナーに使用する金属粒子および金属酸化物粒子の球状度)
次に、金属トナーに使用する金属粒子および金属酸化物粒子の球状度について説明する。金属トナーに使用する金属粒子および金属酸化物粒子を選択するにあたり、金属粒子および金属酸化物粒子の球状度を0.5(−)以上の値、より好ましくは、0.7(−)以上の値とすることが好ましい。この理由は、金属粒子および金属酸化物粒子の球状度が0.5(−)未満となると、絶縁性樹脂層や帯電性付与層の厚さの均一性が乏しくなり、さらには安定して搬送や現像を行うことが困難となる傾向があるためである。
なお、球状度は、顕微鏡写真における粒子面積から求められる粒子直径(Da)を、同様に粒子周長から求められる粒子直径(Ds)で徐した比(Da/Ds)で表される。したがって、例えば、金属粒子が真球の場合には、球状度は1となる。
【0025】
(金属粒子および金属酸化物粒子の表面処理)
また、金属粒子等の酸化を有効に抑制し、かつ金属粒子等と帯電容易な絶縁性樹脂との密着力を向上させることができることから、金属粒子または金属酸化物粒子の表面を、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、チタンカップリング剤、シランカップリング剤およびアルミニウムカップリング剤からなる群から選択される少なくとも一つの表面処理剤で予め処理することが好ましい。
【0026】
また、表面処理剤の使用量についても特に制限されるものではないが、例えば、金属粒子等100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、表面処理剤の使用量が0.01重量部未満となると、酸化防止効果や密着力向上効果が確実に得られない傾向があり、一方、20重量部を超えると、逆に帯電容易な絶縁性樹脂との密着力が低下する傾向があるためである。
【0027】
(金属トナーに使用する絶縁性樹脂)
次に、金属トナーに使用する絶縁性樹脂の種類について説明する。使用する絶縁性樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂(スチレン−アクリル系樹脂を含む。)、スチレン系樹脂、フッ素系樹脂(フッ素アクリル系樹脂を含む。)、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂およびエステル系樹脂等が挙げられる。このような絶縁性樹脂を使用することにより、図5および図6に示すような金属粒子等の表面に均一な厚さを有する薄膜の樹脂層を、機械的表面処理方法等を用いて、容易かつ経済的に設けることができる。すなわち、図5に示す金属トナーは、内側から順次に金属粒子等65、絶縁性樹脂層67および帯電性付与層69から構成されており、図6に示す金属トナーは、内側から順次に金属粒子等65、絶縁性樹脂層67およびこの絶縁性樹脂層67に埋設された帯電性付与層69から構成されている。したがって、金属トナーにおいて高い絶縁抵抗値、例えば1×1014Ω・cm以上の値を得ることができ、比重が重いとしても、優れた搬送性や現像特性を得ることができる。
【0028】
特に、金属トナーに使用する絶縁性樹脂として、エチレン系樹脂およびプロピレン系樹脂を使用すると、より均一な厚さを有する薄膜の被覆層を設けることができる。したがって、金属トナーにおいて、より高い絶縁抵抗値、例えば1×1015Ω・cm以上の値を得ることができ、さらには、導体パターンを形成した場合に、より低い導体抵抗値を得ることもできる。
また、スチレン系樹脂およびアクリル系樹脂を組み合わせたスチレン−アクリル系絶縁性樹脂を使用すると、1×1015Ω・cm以上の高い絶縁抵抗値が得られるばかりか、帯電性樹脂との優れた密着力を得ることができる。
【0029】
次に、金属トナーに使用する絶縁性樹脂の被覆量について説明する。この絶縁性樹脂の被覆量についても特に制限されるものではないが、例えば、金属粒子等の体積を100体積部としたときに、帯電容易な絶縁性樹脂の被覆量を20〜250体積部の範囲内の値とすることが好ましく、30〜240体積部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜230体積部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、帯電容易な絶縁性樹脂の被覆量が20体積部未満となると、金属トナーにおける帯電レベルの調節が困難となり、絶縁抵抗値が低く、例えば、1×1014Ω・cm未満の値となりやすいためである。したがって、金属トナーの現像性が低下して、導体パターンが形成された場合に、滲みやすくなり、シャ―プな画像を得ることが困難となりやすい。一方、帯電容易な絶縁性樹脂の被覆量が250体積部を超えると、導体パターンの導体抵抗が著しく上昇したり、断線が生じやすくなるためである。
【0030】
次に、絶縁性樹脂として粒子(絶縁性樹脂粒子)を用いた場合の平均粒子径について説明する。この絶縁性樹脂粒子の平均粒子径については、得られる金属トナーにおける帯電レベル等を考慮して決定されるが、具体的に、0.01〜1μmの範囲内とするのが好ましく、0.1〜0.9μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、絶縁性樹脂粒子の平均粒子径が0.01未満となると、粒子同士が凝集しやすくなり、均一な厚さの被覆層を形成することが困難となりやすいためである。一方、絶縁性樹脂粒子の平均粒子径が1μmを超えると、帯電レベルが低下したり、あるいは絶縁性樹脂層の厚さが不均一になりやすいためである。
【0031】
次に、絶縁性樹脂層(被覆層)の厚さについて説明する。かかる絶縁性樹脂層の厚さについては、金属トナーにおける帯電レベル等を考慮して決定されるが、具体的に、0.01〜3μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.05〜2μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜1.5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、絶縁性樹脂層の厚さが0.01μm未満となると、金属トナーにおける帯電レベルや現像性が低下する傾向があり、一方、絶縁性樹脂層の厚さが3μmを超えると、逆に帯電レベルが低下したり、カブリが発生したり、あるいは画像濃度が低下しやすくなる傾向があるためである。
【0032】
なお、上述した絶縁性樹脂を、金属粒子および金属酸化物粒子表面に被覆する方法は特に制限されるものではないが、機械的表面処理方法、例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーヘンシェルミキサ、メカノミル、オングミルまたはハイブリダイザーを用いて被覆することが好ましい。このように機械的表面処理方法により被覆して構成された金属トナーは、電気絶縁特性が均一であり、優れた帯電性、搬送性および現像性を得ることができる。
【0033】
(金属トナーの帯電性)
次に、金属トナーの帯電性を向上させる方法について説明する。この方法を実施するにあたり、被覆する絶縁性樹脂中に帯電性材料を含むことも好ましいし、絶縁性樹脂を構成する分子内に帯電性を有する官能基を導入することも好ましいし、あるいは、絶縁性樹脂と帯電性材料との共重合体を使用することも好ましい。
なお、絶縁性樹脂中に帯電性材料を含有して帯電性を向上させる場合、使用する帯電性材料としては、金属トナーにおける帯電レベレを向上させるもの、例えば、金属トナーをブローオフ法での帯電量として10〜30μC/gの範囲内の値に帯電可能な材料を使用することが好ましい。このような範囲内の値に帯電させることにより、金属トナーのカブリを防止しながら、優れた画像特性を得ることができる。
【0034】
また、絶縁性樹脂の帯電性を向上させるための帯電性材料としては、具体的に、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂および金属錯体からなる群から選択される少なくとも一つの材料が好ましい。
また、4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、トリフェニルメタン、カルボン酸塩化合物、フェノール系樹脂縮合物、塩化ビニル系樹脂、セルロイド樹脂も、帯電レベレを向上させることができることから、帯電性材料として、好適に使用あるいは併用することができる。
【0035】
また、使用する帯電性材料の形態についても、特に制限されるものではないが、例えば、金属粒子等における平均粒子径の1/10〜1/1000の大きさを有する帯電性粒子を使用することが好ましい。
このような帯電性粒子を使用することにより、絶縁性樹脂とともに、均一な厚さの被覆層を形成することができる。また、帯電性粒子であれば、機械的表面処理により、絶縁性樹脂層の周囲または内部に容易に固着させることができる。
【0036】
また、帯電性材料を添加する場合の添加量(体積量)についても特に制限されるものではないが、例えば、絶縁性樹脂層の体積を100体積部としたときに、帯電性材料の体積量を1〜200体積部の範囲内の値とすることが好ましく、5〜150体積部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜150体積部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、帯電性材料の添加量が1体積部未満となると、金属トナーにおける帯電レベルの調節が困難となりやすいためであり、そのため、金属トナーの現像性が低下して、画像濃度が低下しやすい。一方、帯電性材料の添加量が200体積部を超えると、逆に帯電レベルが低下したり、カブリが発生したり、あるいは画像濃度が低下しやすくなる。
【0037】
(金属トナーの平均粒子径)
次に、金属トナーの平均粒子径について説明する。金属トナーを選択するにあたり、平均粒子径を2.3〜20.4μmの範囲内の値とすることが必要である。この理由は、金属トナーの平均粒子径が2.3μm未満と小さくなると、凝集しやすくなり、取り扱いが困難となるばかりか、金属トナーにおける帯電レベルの調節が困難となり、結果として、金属トナーを安定して搬送したり、現像したりすることが困難になるためである。一方、金属トナーの平均粒子径が20.4μmを超えると、金属トナーにおける帯電レベルの調節がやはり困難となり、安定して搬送したり、現像することが困難となり、いわゆる地かぶりが発生しやすくなる。したがって、金属トナーにおける帯電レベルの調節がより良好で、安定して搬送したり、現像したりすることができることから、金属トナーの平均粒子径を3〜18μmの範囲内の値とすることがより好ましく、4〜10μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
(金属トナーの嵩密度)
次に、金属トナーの嵩密度について説明する。金属トナーを選択するにあたり、金属粒子および金属酸化物粒子の嵩密度を0.5〜5.0g/ccの範囲内の値とすることが好ましく、より好ましくは、1.0〜3.0g/ccの範囲内の値とすることである。
この理由は、金属粒子および金属酸化物粒子の嵩密度が0.5g/cc未満となると、搬送性が低下したり、現像した際の金属トナーの充填率が低くなり、結果として形成された導体パターンの抵抗が高くなる傾向があるためであり、一方、嵩密度が5.0g/ccを超えると、逆に安定して搬送や現像を行うことが困難となる傾向があるためである。
【0039】
(磁性キャリア)
次に、金属トナーに併用する磁性キャリアについて説明する。この磁性キャリアは、金属トナーの帯電性を補充するとともに、搬送する際の比重を低下させることにより、金属トナーの搬送性や現像性を向上させるために添加される。好ましい磁性キャリアとして、例えば、フェライト、マグネタイトまたは鉄粉、あるいはこれらの微粒子表面に絶縁性樹脂を被覆した組成物、さらには絶縁性樹脂中にこれらの微粒子を配合した組成物が挙げられる。
【0040】
また、金属トナーに併用する磁性キャリアの平均粒子径を40〜120μmの範囲内の値とするのが好ましい。この理由は、磁性キャリアの平均粒子径が40μm未満となると、搬送性が低下する傾向があり、かつ金属トナーと一緒に現像してしまう傾向があるためであり、一方、磁性キャリアの平均粒子径が120μmを超えると、金属トナーの帯電性を補充することが困難になる傾向があるためである。また、このような磁性キャリアを使用すると、現像電位を低下させ、現像ローラや感光体ドラムの耐久性を著しく向上させることができる。
【0041】
また、磁性キャリアと金属トナーとの混合比率は、金属トナーの搬送性や現像性等を考慮して決定されるが、具体的に、金属トナーの混合比率を、全体量に対して5〜400重量%の範囲内の値とするのが好ましく、10〜350重量%の範囲内の値とするのがより好ましく、45〜300重量%の範囲内の値とするのがさらに好ましい。この理由は、金属トナーの混合比率が10重量%未満では、所望の厚さを有する金属トナーからなる薄膜を得ることが困難となる傾向があるためであり、一方、金属トナーの混合比率が400重量%を超えると、金属トナーの帯電性を補充することが困難になったり、搬送性や現像性が低下する傾向があるためである。
【0042】
(2)乾式現像装置
図1に示す乾式現像装置10は、本発明の金属トナー用乾式現像方法が適用される概略構成を示しており、感光体ドラム7、帯電装置8、露光装置9、転写装置11およびクリーニング部材12等を適当に配置して構成してある。なお、これらの部材を用いた電子写真法による複写工程については、既知であるため、ここでの説明は省略する。
また、図2および図3に示す乾式現像装置10は、図1に示す乾式現像装置10をさらに具体化したものである。乾式現像装置10の動作を簡単に説明すると、この装置を始動させることにより、感光体ドラム7が回転するとともに、現像ローラ30、磁性搬送部材40およびクリーニング部材50が、それぞれ所定の回転方向に回転するように配置、構成してある。例えば、感光体ドラム7は、右方向に回転し、磁性搬送部材40およびクリーニング部材50は左方向に回転するように構成してあり、それぞれ図2および図3中に回転方向を矢印で示してある。
【0043】
ここで、乾式現像装置10の感光体ドラム7等を回転させるに際して、金属トナー4の搬送性や現像効率、あるいは耐久性の観点から回転数(線速比)を決定することが好ましい。したがって、金属トナー4の帯電量を増加させて搬送性を向上させ、所定範囲の現像量を得て現像効率を向上させ、さらには現像ローラ30を過度に劣化させないように、感光体ドラム7に対する現像ローラ30の線速比を、1.1〜5.0倍の範囲内の値とすることが好ましく、1.2〜4.0倍の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、同様の観点から、現像ローラ30に対する磁性搬送部材40の線速比を、1.1〜5.0倍の範囲内の値とすることが好ましく、1.2〜4.0倍の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0044】
また、図2および図3に示す感光体ドラム7等が回転するのに対応して、磁性搬送部材40に対し、電圧印加手段43によって交流または直流の電圧が印加されると、現像ローラ30と磁性搬送部材40との間に電界が発生するように構成してある。
したがって、図2および図3に示すように、例えば、収納室22に滞留している金属トナー4を、磁性キャリア5の磁力により筒状の磁性搬送部材40の表面に担持させた後、磁性搬送部材40における供給位置S1まで、安定して搬送することができる。
【0045】
なお、図示しないが、収納室22に、金属トナー4および磁性キャリア5の混合撹拌機を設け、摩擦帯電による静電気力で金属トナー4を磁性キャリア5に対して付着させた状態で、磁性キャリア5を磁性搬送部材40に担持させることができる。すなわち、このように構成すると、金属トナー4を均一かつ短時間に帯電させることができ、磁性キャリア5を介して磁性搬送部材40により、金属トナー4を容易に搬送することができる。ただし、図3においては、簡略化のため、金属トナー4が付着した磁性キャリア5についても、一つの粒子で表している。
【0046】
次いで、図3および図4に示すように、磁性搬送部材40上に磁性キャリア5を介して担持された金属トナー4は、現像ローラ30と磁性搬送部材40との間に発生した電界強度に対応して、現像ローラ30の外周面に対して帯電付着し、金属トナー4からなる薄層、例えば10〜50μmの厚さの薄層を現像ローラ30上に形成する。
この点、図4を参照してより詳細に説明する。図4は、磁性搬送部材40から現像ローラ30に搬送されるまでの金属トナー4の状態を示す説明図である。金属トナー4は、摩擦帯電による静電気力で磁性キャリア5の表面に対して付着しており、この状態で磁性搬送部材40の表面に磁性キャリア5を介して担持されている。なお、金属トナー4が付着した磁性キャリア5は、図2および図3に示すように、ブレード60により層厚規制されており、ブレード60の先端部61から、磁性搬送部材40における供給位置まで、磁性キャリア5に付着した金属トナー4が均一に配列されている。
次いで、金属トナー4は、磁性搬送部材40により、磁性キャリア5を介して供給位置S1まで順次に搬送されると、磁性搬送部材40と現像ローラ30との間の電界強度に比例して、磁性キャリア5を残したまま、現像ローラ30へと帯電付着する。この時、金属トナー4の一部は磁性キャリア5に付着したまま現像ローラ30へ帯電付着しない場合があり、図4において、磁性搬送部材40の供給位置S1を通過後にも、磁性キャリア5に金属トナー4が少量残っているのは、このことを示している。
また、現像ローラ30に移動した金属トナー4は、図4に示すように、現像ローラ30における供給位置S2から、一定の厚さ(t)を有する薄層を形成し、順次に、感光体ドラム7に対して搬送されることになる。なお、図4において、金属トナー4からなる薄層は、便宜上単一粒子層と記載されているが、通常は、1〜7個の金属トナー4が積層して形成されている。
【0047】
次いで、図3に示すように、現像ローラ30上の金属トナー4は、現像ローラ30における現像位置までさらに搬送され、所定の接触ニップ幅で感光体ドラム7に対して押圧される。そのため、感光体ドラム7の静電電荷と反対極性に帯電している金属トナー4は、感光体ドラム7の静電電荷に帯電した部位に対して吸引付着され、導体パターンに対応した可視像が形成される。
【0048】
なお、感光体ドラム7に吸引付着されなかった金属トナー4は、クリーニング部材50により、磁性搬送部材40側に掃きおとされ、再び、磁性搬送部材40により、現像ローラ30に対して搬送されるようにしてある。すなわち、クリーニング部材50は、導電繊維を回転軸の周囲に巻回して構成してあり、現像ローラ30の回転方向と反対方向に回転を付与されるとともに、その周速度を現像ローラ30の周速度よりも大きくしてある。したがって、クリーニング部材50が、現像ローラ30に接触して、感光体ドラム7に吸引付着されなかった金属トナー4を掃きおとした場合にも、感光体ドラム7側に落ちて、感光体ドラム7の所望以外の箇所に付着することはない。
ただし、現像ローラ30に対するクリーニング部材50を必要に応じて、省略することができる。
【0049】
次いで、図1に示すように感光体ドラム7上の金属トナー4からなる可視像は、セラミックグリーンシート13に対して押圧されて転写され、金属トナー4からなる導体パターンを形成する。ただし、この状態では、金属トナー4は絶縁性樹脂により被覆されているため導通はしないが、例えば、絶縁性樹脂がオレフィン樹脂であり、金属粒子が銅の場合には800℃以上で加熱することにより、絶縁性樹脂を十分に飛散させるとともに、金属粒子を溶融させることができ、したがって、導体パターンとしての電気的導通を得ることができる。また、このような温度で加熱することにより、セラミックグリーンシート13が焼成されて、耐熱性等に優れたセラミック基板となる。
【0050】
また、図示しないが、金属トナー4をセラミックグリーンシート13に対して転写した状態で、閃光放電あるいは加熱治具を用いて加熱することにより仮定着させることが好ましい。このように、金属トナー4をセラミックグリーンシート13に対して仮定着すると、移動したり振動を与えた場合でも、金属トナー4がセラミックグリーンシート13から脱離することがなく、後に加熱した場合にも、微細な導体パターンを安定して形成することができる。
【0051】
以下、本実施形態における乾式現像装置10の特徴的部分である、磁性搬送部材40および現像ローラ30について、さらに詳細に説明する。
【0052】
(磁性搬送部材)
まず、図2および図3に示す磁性搬送部材40について説明する。この磁性搬送部材40は、図1に示すように筒状であり、表面に多数の磁極を形成した円柱状の磁石集成体41と、当該磁石集成体41の周囲に同心円状に配置された導電性非磁性体からなる導電性スリーブ42とから構成されている。
【0053】
ここで、図3に示す磁石集成体41は、回転可能な構成であっても、固定した構成であっても良い。なお、導電性スリーブ42についても、磁石集成体41が回転可能か否かにかかわらず、磁石集成体41と同一方向または逆方向に回転可能な構成であっても、固定した構成であっても良い。また、磁石集成体41が回転可能な場合、金属トナー4を容易に搬送することができるように、N極およびS極の数を同一とし、さらに、それぞれの磁力を等しくするのが好ましい。図3に示す磁石集成体41は、回転可能な構成としてあり、一例としてN極およびS極の極数をそれぞれ4個とし、最大磁力を650ガウス以上の値としてある。ただし、より好ましくは、磁極の最大磁力を700ガウス以上の値とすることである。一方、磁石集成体41が固定された構成の場合、N極およびS極の極数や磁力を同一とする必要は必ずしもなく、例えば、感光体ドラムに近接した位置における磁力を比較的大きくしたり、現像装置内における磁力を比較的小さくすることにより、金属トナー4の磁性キャリア5からの脱離を容易に行うことができる。
【0054】
また、図3に示す導電性スリーブ42においては、表面に粗面化処理、例えば、サンドブラスト処理を施すことが好ましい。このように導電性スリーブ42の表面を粗面化処理して、凹凸を設けることにより、金属トナー4の帯電性が一部不十分な場合にも、優れた搬送性を得ることができる。特に、導電性スリーブ42の表面の粗面化処理は、金属トナーに前述した磁性キャリアを含まない、いわゆる一成分系の場合に有効な手段である。
【0055】
また、磁性搬送部材40において、磁石集成体41と導電性スリーブ42とは、それぞれ相対的に回転可能としてあり、導電性スリーブ42上に担持されたトナー4を現像ローラ30に搬送することができるようにしてある。すなわち、図3に示す磁性搬送部材40を用いて金属トナー4を搬送する場合、筒状の磁性搬送部材40に内包された磁石集成体41のN極およびS極に対応した磁力により、金属トナー4が磁性キャリア5を介して導電性スリーブ42上に担持された後、磁石集成体41と導電性スリーブ42との相対的な回転により、現像ローラ30の供給位置まで安定して、すなわち、一定時間に一定量だけ搬送される。なお、磁石集成体41と導電性スリーブ42とが、「相対的に回転可能」とは、磁石集成体41および導電性スリーブ42あるいはいずれか一方が回転し、磁石集成体41と導電性スリーブ42との間に相対速度が発生可能な状態をいう。
【0056】
また、磁性搬送部材40には、図3に示すように、交流または直流の電圧印加手段43、あるいはいずれか一方の電圧印加手段43が設けてあり、この電圧印加手段43により、感光体ドラム7の表面に形成された静電電荷と逆極性の交流または直流電圧を磁性搬送部材40に対して印加することができるようにしてある。例えば、図3に示す感光体ドラム7の表面は、プラス(+)側の静電電荷により帯電されているため、この場合には、電圧印加手段43を稼働させ(スイッチON)、マイナス(−)側の直流電圧を磁性搬送部材40に対して印加する。したがって、磁性搬送部材40と現像ローラ30との間に、一定強度の電界が発生し、現像ローラ30上に金属トナーを容易に搬送することができる。なお、交流電圧を印加する場合には、所定周波数範囲に変調した後に印加することも好ましい。
【0057】
また、磁性搬送部材40の近傍に、図2および図3に示すような機械的層厚規制手段60を設けて、磁性搬送部材40に対する機械的層厚規制手段60の位置あるいは圧接力を調整することが好ましい。
このように構成すると、機械的層厚規制手段60の位置あるいは圧接力を調整することにより、磁性搬送部材40上の金属トナーからなる薄層の厚さ、ひいては現像ローラ30上の金属トナーからなる薄層の厚さを所定範囲に容易に制御することができる。
【0058】
なお、機械的層厚規制手段60の形態は特に問わないが、金属トナーを損傷せずに、容易に薄層の厚さ制御をすることができることから、例えば、ゴムやプラスチック樹脂を主成分とした、厚さ0.1〜10mmのブレードであることが好ましい。
また、機械的層厚規制手段60は二つ以上設けても良く、その場合、機械的層厚規制手段60を水平方向に配列したり、あるいは、筒状の磁性搬送部材40の外周面に沿って配列することが好ましい。
【0059】
また、磁性搬送部材40に設けた電圧印加手段43を電圧制御可能とし、磁性搬送部材40と現像ローラ30との間の電界強度を調整することが好ましい。このように構成すると、磁性搬送部材40と現像ローラ30との間の電界強度を所定範囲内に調整することにより、現像ローラ30上の金属トナーからなる薄層の厚さをより容易に制御することができる。
【0060】
さらに、図3に示すように、現像ローラ30と電圧印加手段43との間に、制御回路44を設け、露光装置9による露光工程終了と同時、または感光体ドラム7における帯電部分が現像ローラ30の前面を通過直後に電圧印加手段43からの電圧を遮断(スイッチOFF)することが好ましい。このように構成することにより、金属トナーを現像ローラ30上に容易に搬送させることができる一方、感光体ドラム7に電気的な影響を与えることなく、感光体ドラム7の表面電位をより正確な値に制御することができる。
【0061】
また、磁性搬送部材40は、図4に示すように、現像ローラ30に対して一定距離(d)だけ離して設けてある。この磁性搬送部材40と現像ローラ30との間の距離(d)を0.2〜2.0mmの範囲内の値とするのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.8mmの範囲内の値であり、さらに好ましくは、0.5〜1.5mmの範囲内の値とすることである。
この理由は、磁性搬送部材40と現像ローラ30との間の距離が0.2〜2.0mmの範囲外となると、金属トナー4を安定して搬送することが困難となりやすく、結果として、現像ローラ30上に、金属トナーからなる所定厚さの薄層を正確に形成することが困難となったり、金属トナー4とともに磁性キャリアを使用した場合に、磁性キャリアもまた現像ローラ30上に搬送されてしまう傾向があるためである。
【0062】
(現像ローラ)
次に、図1〜4に示す現像ローラ30について説明する。この現像ローラ30は、導電性ゴムで形成した回転体31と、当該回転体31の外周表面に形成された導電性コート層32とから構成されている。したがって、導電性コート層32が、感光体ドラム7の外周面に対して、所定の接触ニップ幅で接触するように配置するとともに、歯車(図示せず。)等を介して、感光体ドラム7の回転に同期しながら転接回転、すなわち、現像ローラ30が感光体ドラム7と同一の周速度を有して、反対方向に回転するように構成してある。
【0063】
また、この現像ローラ30において、体積抵抗値を1×1011Ω・cm以下の値とすることが好ましく、1×10〜1×10Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましい。この理由は、現像ローラ30の体積抵抗値が1×1011Ω・cmを超えると、感光体ドラム7に対する金属トナー4の現像特性が著しく低下する傾向があるためである。
【0064】
また、現像ローラ30の導電性ゴムを構成するゴム材料として、NBRゴム、ウレタンゴム、またはシリコンゴムあるいはこれらの架橋物を使用することが好ましい。これらの材料は適度な硬さを有する一方で、耐クリープ性に優れており、現像ローラ30と感光体ドラム7との間の接触ニップ幅を所定範囲内の値に制御しても、過度に変形したり、磨耗したりすることが少なく、長期間にわたって安定して金属トナーを現像することができる。しかも、これらのゴム材料は、添加する導電性材料、例えば、カーボンブラックとのなじみが良く、均一な導電抵抗を得ることができる。
【0065】
また、現像ローラ30の導電性ゴムを構成する材料は、現像ローラ30の耐久性をより向上させることから、金属トナーにおける帯電の極性を考慮して決定することが好ましい。例えば、金属トナーをプラス(+)側に帯電させる場合には、NBRゴムまたはウレタンゴムを使用することが好ましく、金属トナーをマイナス(−)側に帯電させる場合には、シリコンゴムまたはウレタンゴムを使用することが好ましい。
【0066】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、言うまでもないが、以下の説明は本発明を例示するものであり、特に理由なく、以下の説明に本発明の範囲は限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
(金属トナーおよび現像剤の作製)
オングミルAM−15F(ホソカワミクロン(株)製)の処理槽に、銅粉200gと、絶縁性樹脂としてのアクリル微粒子N−30(日本ペイント(株)製、平均粒子径0.1μm、ガラス転移温度60℃)20gとを収容した。なお、使用した銅粒子は沈殿析出法により得られたものであり、銅粒子の平均粒子径は2.0μm、体積換算の粒度分布において70〜100vol%が、平均粒子径の±30%の範囲内に存在しているものを使用した。
次いで、窒素雰囲気下、処理温度(飽和温度)60℃、セル回転数20m/s、処理時間10分の条件で、機械的処理を行い、銅粒子の表面に絶縁性樹脂の被覆層を形成して、金属トナーとした。
得られた金属トナーの被覆層は、銅粒子100体積部に対して、約100体積部であり、平均粒子径は2.3μmであり、球状度は0.7超〜0.9以下(−)であり、嵩密度は3.8cc/gであった。
次いで、得られた金属トナーに対して、外添剤として0.8重量%となるようなシリカ、および磁性キャリアとして12重量%となるようなフェライト粒子(平均粒子径70μm)をそれぞれ添加し、磁性二成分現像剤とした。
【0068】
(乾式現像方法の実施およびセラミック基板の作製)
得られた現像剤をOPCドラム搭載のマイナス(−)帯電トナー用のプリンター内に収容した。このプリンターは、図3に示すように、筒状の磁性搬送部材40と、現像ローラ30と、感光体ドラム7とを順次に具備しており、磁性搬送部材40には機械的層厚規制手段60が設けられている乾式現像装置10である。そして、現像ローラ30と感光体ドラム7との間の接触ニップ幅を2mmに設定した後に、以下の条件で画像評価パターン(ソリッドパターン)を導体パターンとして出力した。
感光体帯電電位: −700V
露光後電位: −100V
現像電位: −300V
現像ローラ電位: −300V
感光体ドラム線速: 60mm/sec
現像ロール線速: 75mm/sec
磁性搬送部材線速: 150mm/sec
現像ローラ上の薄層の厚さ: 12μm
磁性搬送部材と現像ローラとの間の距離:1.5mm
磁性搬送部材の印加電圧: −600V
【0069】
次いで、金属トナーをセラミックグリーンシート(酸化珪素/SiO 70重量部、アクリル系樹脂 30重量部)上に転写した後、これを温度180℃に保持したホットプレートに2分間載せて、金属トナーを仮定着した。次いで、これを還元雰囲気下のオーブン内で、温度900℃、1時間の条件で焼成し、セラミック基板上に銅からなる導体パターンを形成した。そして、以下に示す基準により導体パターンの画像特性を評価した。得られた結果を表1に示す。
〇:カブリの発生が観察されず、導体パターンの細線部も正確に再現された。
△:カブリの発生が一部観察され、導体パターンの細線部の再現が一部不正確であった。
×:カブリの発生が観察されたり、導体パターンの細線部が正確に再現されなかった。
【0070】
[実施例2〜6]
実施例1において、平均粒子径が2.0μmの銅粒子を使用し、平均粒子径が2.3μmの金属トナーを作製したかわりに、表1に示すような平均粒子径を有する銅粒子およびそれから得られた金属トナーを作製し、実施例1と同様に画像特性についての評価を行った。結果を表1に示す。結果から理解されるように、金属トナーの平均粒子径が2.3〜20.4μmの範囲であれば、優れた導体パターンの画像特性を得ることができることが確認された。
【0071】
【表1】
Figure 0003604573
【0072】
[比較例1〜3]
実施例1において、平均粒子径が2.0μmの銅粒子を使用し、平均粒子径が2.3μmの金属トナーを作製したかわりに、表1に示すような平均粒子径を有する銅粒子およびそれから得られた平均粒子径が2.3μm未満または20.4μm超を有する金属トナーを作製し、実施例1と同様に画像特性についての評価を行った。得られた金属トナーについて、実施例1と同様に画像特性についての評価を行った。結果を表1に示す。結果から理解されるように、金属トナーの平均粒子径が2.3〜20.4μmの範囲外であるため、カブリが発生したり、細線の再現性が乏しいことが確認された。
【0073】
[実施例7〜11]
実施例1において、接触ニップ幅を2mmにしたかわりに、接触ニップ幅を1mm(実施例7)、接触ニップ幅を4mm(実施例8)、接触ニップ幅を5mm(実施例9)、接触ニップ幅を6mm(実施例10)としたほかは、実施例1と同様に導体パターンの画像特性についての評価を行った。結果を表2に示す。結果から理解されるように、接触ニップ幅が1〜6mmの範囲内の値であれば、優れた導体パターンの画像特性を得ることができることが確認された。
【0074】
【表2】
Figure 0003604573
【0075】
[比較例4〜5]
実施例1において、接触ニップ幅を2mmにしたかわりに、接触ニップ幅を0.5mm(比較例4)および接触ニップ幅を7mm(比較例5)としたほかは、実施例1と同様に導体パターンの画像特性についての評価を行った。結果を表2に示す。結果から理解されるように、接触ニップ幅が1〜6mmの範囲外の値であるため、画像濃度が低かったり(抵抗値が高い)、カブリが発生することが確認された。
【0076】
[実施例12〜60]
実施例1において、現像ローラ上の薄層の厚さを12μmとし、感光体ドラムに対する現像ロールの線速比を1.5倍としたかわりに、表3に示すような薄層の厚さおよび現像ロールの線速比に変えたほかは、実施例1と同様に導体パターンの画像特性についての評価を行った。結果を表3に示す。
結果から理解されるように、現像ローラ上の薄層の厚さが10〜20μmの範囲内の値であれば、より優れた導体パターンの画像特性を得ることができることが確認された。また、同様に、感光体ドラムに対する現像ロールの線速比が1.1〜5.0(−)の範囲内の値であれば、より優れた導体パターンの画像特性を得ることができることが確認された。
【0077】
【表3】
Figure 0003604573
Figure 0003604573
Figure 0003604573
Figure 0003604573
【0078】
[実施例61〜70]
実施例1において、磁性搬送部材と現像ローラとの間の距離を1.5mmとしたかわりに、表4に示すように0.1〜2.2mmの範囲内で変えたほかは、実施例1と同様に導体パターンの画像特性についての評価を行った。結果を表4に示す。
結果から理解されるように、磁性搬送部材と現像ローラとの間の距離が0.2〜2.0mmの範囲内の値であれば、より優れた導体パターンの画像特性を得ることができることが確認された。
【0079】
【表4】
Figure 0003604573
【0080】
[実施例71〜78]
実施例1において、磁性搬送部材に印加する直流電圧を−600Vとし、磁性搬送部材と現像ローラとの間の距離を1.5mmとしたかわりに、表5に示すように磁性搬送部材に印加する直流電圧を−500〜−800Vの範囲内で変えるとともに、磁性搬送部材と現像ローラとの間の距離を0.5mmおよび1.8mmに設定し、現像ローラ上の薄層の厚さを測定するとともに、実施例1と同様に導体パターンの画像特性についての評価を行った。結果を表5に示す。
結果から理解されるように、磁性搬送部材に印加する直流電圧の値および磁性搬送部材と現像ローラとの間の距離を変えることにより電界強度を調整し、現像ローラ上の薄層の厚さを容易に制御できることが確認された。また、現像ローラ上の薄層の厚さが10〜20μmの範囲内の値であれば、より優れた導体パターンの画像特性を得ることができることが再度確認された。
【0081】
【表5】
Figure 0003604573
【0082】
[実施例79〜83]
金属トナーに使用する銅粒子の球状度を変えたほかは、実施例1と同様に金属トナーを作製し、導体パターンの画像特性についての評価を行った。また、導体パターンを3000枚印刷後においても、同様に画像特性についての評価を行った。得られた結果を表6に示す。
結果から理解されるように、金属トナーに使用する金属粒子の球状度が0.4(−)以上であれば、許容される導体パターンの画像特性を得ることができ、金属粒子の球状度が0.5(−)以上であれば、より優れた導体パターンの画像特性を得ることができることが確認された。
【0083】
【表6】
Figure 0003604573
【0084】
【発明の効果】
本発明の金属トナー用乾式現像方法によれば、少なくとも筒状の磁性搬送部材と、現像ローラと、感光体ドラムとを順次に具備した乾式現像装置を用いて、金属粒子または金属酸化物粒子の表面に絶縁性樹脂を被覆した所定範囲の平均粒子径を有する金属トナーを接触現像するとともに、現像ローラと感光体ドラムとの間の接触ニップ幅を所定範囲内の値に制御することにより、画像特性に優れた導体パターンに対応した金属トナーを安定して現像することができ、結果としてセラミック基板上に微細な導体パターンを容易に形成することが可能となった。
【0085】
また、本発明の金属トナー用乾式現像方法における好ましい態様によれば、現像ローラ上の金属トナーにおける薄層の厚さを、磁性搬送部材に設けた機械的層厚規制手段および磁性搬送部材と現像ローラとの間の電界強度、あるいはいずれか一方により調整あるいは変更することにより、画像特性にさらに優れた導体パターンに対応した金属トナーを安定して現像することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】乾式現像方法により金属トナーを現像し、さらにセラミックグリーンシートに転写する様子を示す概略図である。
【図2】乾式現像方法に使用する乾式現像装置の部分断面図である。
【図3】現像されるまでの金属トナーの状態を示す説明図である。
【図4】磁性搬送部材から現像ローラに搬送されるまでの金属トナーの状態を示す説明図である。
【図5】金属トナーの断面図である(その1)。
【図6】金属トナーの断面図である(その2)。
【符号の説明】
4,63 金属トナー
5 磁性キャリア
7 感光体ドラム
8 帯電装置
9 露光装置
10 乾式現像装置
11 転写装置
12 クリーニング部材
13 セラミックグリーンシート
14 搬送ロール
20 枠体
22 収納室
30 現像ローラ
40 磁性搬送部材
41 磁石集成体
42 導電性スリーブ
43 電圧印加手段
44 制御回路
50 クリーニングロール
60 機械的層厚規制手段(ブレード)
65 金属粒子または金属酸化物粒子
67 絶縁性樹脂層
69 帯電性付与層

Claims (9)

  1. 少なくとも筒状の磁性搬送部材と、現像ローラと、感光体ドラムとを順次に具備した乾式現像装置を用いた乾式現像方法において、
    2〜20μmの範囲内の平均粒子径を有する金属粒子または金属酸化物粒子の表面に酸化防止又は密着用表面処理を施し、該表面処理を施した表面に、該金属粒子または金属酸化物粒子の平均粒子径の1/1000〜1/10の大きさを有する帯電性材料が埋設された、0.01〜3μmの範囲内の厚さを有する絶縁性樹脂を被覆した平均粒子径が2.3〜20.4μmの範囲内の値である金属トナー、及び
    40〜120μmの平均粒子径を有する磁性キャリア
    を含んだ現像剤を用いて接触現像するとともに、
    前記現像ローラと前記感光体ドラムとの間の接触ニップ幅を1〜6mmの範囲内の値とすることを特徴とする金属トナー用乾式現像方法。
  2. 前記現像ローラ上に、10〜50μmの範囲内の厚さを有する金属トナーの薄層を形成した後に、前記感光体ドラムに対して金属トナーを接触現像させることを特徴とする請求項1に記載の金属トナー用乾式現像方法。
  3. 前記現像ローラ上の金属トナーにおける薄層の厚さを、磁性搬送部材に設けた機械的層厚規制手段および磁性搬送部材と現像ローラとの間の電界強度、あるいはいずれか一方により調整することを特徴とする請求項2に記載の金属トナー用乾式現像方法。
  4. 前記現像ローラ上の金属トナーにおける薄層の厚さを、前記感光体ドラムへの現像時と非現像時とで異ならせることを特徴とする請求項3に記載の金属トナー用乾式現像方法。
  5. 前記磁性搬送部材と、前記現像ローラとの間の距離を、0.2〜2.0mmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属トナー用乾式現像方法。
  6. 前記感光体ドラムに対する前記現像ローラの線速比を、1.1〜5.0倍の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の金属トナー用乾式現像方法。
  7. 前記磁性搬送部材が、磁石集成体を内包した導電性非磁性スリーブから構成されており、かつ、前記現像ローラに対する磁性搬送部材の線速比を、1.1〜5.0倍の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属トナー用乾式現像方法。
  8. 前記現像ローラとして、NBRゴム、ウレタンゴム、またはシリコンゴムからなる弾性体現像ローラを使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属トナー用乾式現像方法。
  9. 前記金属トナーに使用する金属粒子または金属酸化物粒子の球状度を0.5(−)以上の値とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属トナー用乾式現像方法。
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