JP3604569B2 - 樹脂管用サドル分水栓 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂製本管に不断水の状態で分岐管を設けるための樹脂管用サドル分水栓に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水道用本管やガス本管にサドル分水栓を固定し、この分水栓に分岐管を接続して分岐する場合、本管の穿孔穴とサドル取付面との間にガスケットを装着して分水栓と穿孔穴との密封性を図っている。
【0003】
この本管が鋳鉄管や鋼管等の金属製であれば、このガスケットによってサドル取付面の密封性が保持されるが、本管がポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂管である場合、サドルをボルト・ナットで締付けた状態で長期間使用すると、樹脂管の残留応力等により、管がクリープ変形してガスケットのシール性が低下し、その結果、水等の流体がこの部分からリークする事態が起きるおそれがある。
【0004】
そこで、従来より、これらの欠点を解決するため、特開平10−196871号公報等に記載された対応策が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−196871号公報は、本管の穿孔穴にコアをタッピングする手段を採用しているが、このコア装着具は、送り量と回転がそれぞれ独立しているため、樹脂管の穿孔穴にコア自体が確実に喰いつかないと共に、コア外周のおねじは、穿孔穴の内径にねじの山部のみが係止するようにタッピングされて穿孔穴に不完全な状態で装着されるため、依然として流体の漏れ現象が起きる等の課題を有している。
【0006】
本発明は、従来の問題点を解決するために開発したもので、その目的とするところは、コアを分水孔に圧入しながらタッピングすることにより、確実にコアを装着して樹脂管のクリープ変形によるシール性の低下を防止すると共に、穿孔とタッピングを同時に一工程で行うことも可能とした樹脂管用サドル分水栓を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、軟質の樹脂本管に固定して流体通路を分岐するサドル分水栓において、分水栓本体の内周面に形成しためねじ部に穿孔刃の上部外周に形成したおねじ部を螺合し、この円筒状の穿孔刃の外周に筒状コアを嵌着すると共に、この筒状コアの外周に形成したネジ部のピッチと前記穿孔刃の回転送りピッチとを一致させ、前記穿孔刃と筒状コアと同時に回転下降させて穿孔刃の刃部で前記樹脂本管を穿孔しながらこの孔より大径の筒状コアのネジ部が分水孔に圧入状態でセルフタッピングして、前記穿孔刃で穿孔する分水孔に筒状コアを固定し、かつ筒状コアを分水栓本体に嵌合した樹脂管用サドル分水栓である。
【0008】
そして、穿孔とタッピングを一工程で行う場合には、前記筒状コアと穿孔刃が穿孔方向で噛合い、穿孔方向とは逆方向の回転で噛合わない伝達部を筒状コアと穿孔刃との一部に設けた。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明における樹脂管用サドル分水栓の好ましい実施形態を図面に従って説明する。
図1〜図3は、樹脂管の穿孔と筒状コアの装着を同時に行う工程をそれぞれ示した縦断面図である。
【0010】
図中1は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の軟質の樹脂本管であり、例えば、水道水等を供給する本管であって、この樹脂本管1の外周面には、本管1の流体通路を分岐するサドル分水栓2を固定している。
【0011】
この分水栓2は、樹脂本管1の外周面をバンドとサドル3で囲んで、図示しないボルト・ナットで締付け固定し、サドル3に形成した取付突部4の内周面に樹脂本管1に穿孔した分水孔6を密封シールする環状のガスケット5を装着し、更に、取付突部4のめねじ部4aに、T字形状の分水栓本体7のおねじ部7aを螺合して固着することによりサドル3に分水栓本体7を固定している。
【0012】
分水栓本体7の分岐部8に継手9を介して分岐管10を接続し、分水栓本体7の上端をシール材11aを介して挿入孔11bを有するナット11を螺着している。
【0013】
また、分水栓本体7の下部穴の内周にリング状の顎部12を設け、分水栓本体7の縦管内周面にめねじ部7bを形成している。
【0014】
13は、金属、硬質樹脂、セラミック製等の硬質材料から成る筒状コアであり、この筒状コア13の上部に顎部12に係合する環状の鍔部14を形成し、この筒状コア13の外周面には、ネジ部15を設け、分水栓本体7の下部穴に筒状コア13を嵌合し、鍔部14を顎部12に係合してコア13の筒状部13aを下方に突出させている。この筒状部13aに形成したネジ部15は、ネジ形状は特に限定されないが、例えば、図4に示すように、上側を平面状態に形成すれば、分水孔6との圧入によるタッピング結合がより強固になる。
【0015】
更に、筒状コア13の筒状部13aの外径は、樹脂本管1に穿孔した分水孔6の内径より大径に形成して、筒状部13aを分水孔6に圧入状態でタッピングすることにより樹脂本管1に筒状コア13を強固に固定するようにしている。
【0016】
16は、円筒状の金属製穿孔刃であり、この穿孔刃16の上部には、外周におねじ部16aを形成し、上端に穿孔工具17の回転軸17aの下端六角部を係合する六角穴の係合部16bを設け、穿孔刃16の下方内周に樹脂本管1の穿孔切片1aを保持するための内周突条部16cを設けている。本例の穿孔刃16は、後述の通り一度しか使えないので焼入れ等は省略できる。
【0017】
この穿孔刃16の外周に筒状コア13をOリング18を介して軸方向に対して仮固定し、コア13の筒状部13aの下端より刃部16dを突出させている。
【0018】
また、穿孔刃16のおねじ部16aの回転送りピッチと筒状コア13の外周のネジ部15のピッチを一致させており、両者のピッチを一致させることによって、穿孔工具17の回転軸17aを回転させると、筒状コア13のネジ部15は、分水孔6内にセルフタッピングしながら強固に螺入される。
【0019】
更に、筒状コア13と穿孔刃16とは、穿孔方向で噛合い、逆方向では噛合わない伝達部19を設けており、本例においては、図5及び図6に示すように、筒状コア13と穿孔刃16のおねじ部16aの下端部に対をなす傾斜面19aと係止部19bをそれぞれ有する一対のワンウェイクラッチ構造としている。
この伝達部19は、本例のようなワンウェイクラッチ構造に限定されることなく、正転方向に共回り回転し、逆転時には確実に伝達しない構造の伝達部が用いられる。
【0020】
なお、図9に示すように、穿孔刃16側の伝達構造は、突起構造19cによって伝達部19を構成するようにしても良い。図6に示す20は、ナット11の挿入孔を閉じる蓋である。
【0021】
次に、上記実施形態の作用を説明する。
穿孔工具17の回転軸17aの下端六角部17bを分水栓本体7のめねじ部7bに螺入した穿孔刃16の係合部16bに係合し、穿孔工具17を手動又は自動で回転させて穿孔刃16のおねじ部16aを螺入しながら穿孔刃16を回転下降させると、穿孔刃16の外周に嵌着した筒状コア13も同時に回転下降して図1に示す状態に位置する。
【0022】
次いで、図1の状態から穿孔工具17を回転させて、更に、穿孔刃16と筒状コア13を回転下降させると、穿孔刃16の刃部16dが樹脂本管1を穿孔しながら穿孔切片1aを穿孔刃16の内周突条部16cに保持して分水孔6が穿孔される。
【0023】
この時、同時に穿孔刃16による外径の穴をあけながら、この穴より大径の筒状コア13のネジ部15が一体的に回転しながら圧入されつつ下降すると、穿孔刃16のおねじ部16aのネジピッチと同一ピッチの筒状コア13のネジ部15が分水孔6にセルフタッピングしながら螺入される。
【0024】
更に、回転下降して螺入してゆき、筒状コア13の鍔部14が分水栓本体7の下方に設けた顎部12に当接した時に、図2の状態になり挿入完了となる。
【0025】
次いで、図2の状態から、穿孔工具17の回転軸17aを逆回転すると、穿孔刃16の伝達部19が筒状コア13から離脱し、筒状コア13は分水孔6に確実に圧入されたままの状態で固定され、穿孔刃16のみが内部に穿孔切片1aを保持しながら、分水栓本体7内を回転上昇して図3に示す状態になり、その後、回転軸17aを取り外して穿孔刃16を内蔵したままナット11に蓋部20を取付けることによって、穿孔作業と筒状コア13の取付け作業を1工程で完了することができる。
【0026】
図10は、本発明における樹脂管用サドル分水栓の他例を示したもので、穿孔工具の結合関係の雌雄を逆にした例であり、外周にOリング21cを有する穿孔刃21のおねじ部21aを回転させて螺入し、回転軸17cの下端に設けた雌取付部17dと穿孔刃21の上端に設けた雄取付部21bとを着脱自在に設けたものである。
【0027】
図11は、本発明におけるサドル分水栓の更に他例を示したものであり、穿孔工具23側に穿孔刃22を設けたものである。
同図において、分水栓本体26の内部にステム24aで開閉するボール機構24を設け、穿孔工具23を手動ハンドル23a又は自動で回転させ、下端に設けた取付溝23bに外周にOリング22bを有する穿孔刃22のねじ部22aを螺着し、上記の例と同様に、筒状コア13と穿孔刃22を同時に回転させて、1工程で穿孔とコア13の装着をするようにしている。この場合は、装着完了後、分水栓本体26よりキャップ25を取り外して穿孔刃22と共に穿孔工具23を分水栓本体から26から袋ナットを外して抜き、本体26の上端に蓋(図示しない)をして密封シールする。この穿孔刃22は、上記とは異なり使い捨てではないので、焼入れをした刃具用の材料を用いるのが好ましい。
上記例は、分水孔の穿孔と筒状コアの圧入タッピングを一行程で行ったが、予め穿孔したものに筒状コアを圧入タッピングしてもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上のことから明らかなように、筒状コアを分水孔に圧入タッピングすることによって樹脂本管のクリープ変形を防止し、分水孔の外周面に設けたガスケットのシール力を長期間に亘って保持することができ、しかも、筒状コアは、圧入タッピングによって分水孔との結合がより強固になり、信頼性を増大したサドル分水栓を得ることができる。
【0029】
また、1回の工程で穿孔とコア挿入が可能となり、作業が簡素化され、しかも、穿孔時とコア挿入時の芯ずれやサドルのずれ等が起きるおそれがなく、確実に作業を完了することができると共に、流体の漏れ等の事態も防止でき、更には、使用中に樹脂本管に引張力がかかって本管が細くやせるようなことが生じたとしても、ガスケットのシール力が長期間に亘って確実に保持される等の優れた効果を有する。
更に、図1〜図3の実施例では分水栓にコック等の止水機構がいらなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における樹脂管用サドル分水栓の穿孔開始前の状態を示す一部切欠き縦断面図である。
【図2】図1の状態における穿孔とコアの装着時を示す縦断面図である。
【図3】図2の状態において、穿孔刃を上端へ引き上げた状態を示す縦断面図である。
【図4】図2の分水栓のコアと穿孔刃の部分を示す部分拡大図である。
【図5】分水栓と穿孔刃・コアを分解した状態を示す分解斜視図である。
【図6】分水栓とキャップと穿孔刃等を分解した状態を示す分解斜視図である。
【図7】樹脂管の分水孔にコアをタッピングし、分水栓にコアを係合した状態を示す部分拡大図である。
【図8】筒状コアの平面図である。
【図9】穿孔刃の他例を示す伝達構造を示す底面図である。
【図10】本発明における分水栓の穿孔具の他例を示す部分縦断面図である。
【図11】本発明における穿孔工具の更に他例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 本管
2 分水栓
6 分水孔
7、26 分水栓本体
12 顎部
13 鍔部
13a 筒状部
15 ネジ部
16、21、22 穿孔刃
19 伝達部
Claims (2)
- 軟質の樹脂本管に固定して流体通路を分岐するサドル分水栓において、分水栓本体の内周面に形成しためねじ部に穿孔刃の上部外周に形成したおねじ部を螺合し、この円筒状の穿孔刃の外周に筒状コアを嵌着すると共に、この筒状コアの外周に形成したネジ部のピッチと前記穿孔刃の回転送りピッチとを一致させ、前記穿孔刃と筒状コアと同時に回転下降させて穿孔刃の刃部で前記樹脂本管を穿孔しながらこの孔より大径の筒状コアのネジ部が分水孔に圧入状態でセルフタッピングして、前記穿孔刃で穿孔する分水孔に筒状コアを固定し、かつ筒状コアを分水栓本体に嵌合したことを特徴とする樹脂管用サドル分水栓。
- 前記筒状コアと穿孔刃が穿孔方向で噛合い、穿孔方向とは逆方向の回転で噛合わない伝達部を筒状コアと穿孔刃との一部に設けた請求項1に記載の樹脂管用サドル分水栓。
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