JP3604494B2 - 定着温度制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学式(CCDを使用しない)の画像形成装置における定着装置の定着温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機等の画像形成装置では、未定着トナーを転写紙に安定定着させる機能が要求されており、このため定着装置の温度(設定温度又は定着温度、以下同じ)を一定に保持することが行われている。
かかる観点から、例えば特開平5−150684号公報には、サーミスタで検出される温度データをCPUで制御目標温度と比較し、制御目標温度より高い回数が所定回続くと、又は制御目標温度より低い回数が所定回続くと、ヒータへの通電、又は通電停止を行って温度リップル(変化する定着温度のmaxとminの温度幅)を小さくする技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
光学式(CCDを使用しない)の複写機においては、光学スキャン中にヒータの通電を開始すると、通電開始時に一時的ではあるが電圧降下がおき、そのため光学スキャナの照明ランプがその瞬間暗くなり、その部分が帯状に黒くなるという不具合が発生する。
このため、通常、光学スキャン中は定着温度が低くなっても新たにヒータへの通電開始(以下、ONと記す)はできないようにしている。
【0004】
最近では、定着ローラの立ち上がり時間を早くするため、薄肉ローラを採用するようになっている。このため、定着ローラの熱容量は小さくなり、定着ローラの温度リップルが大きくなる傾向にある。
そして、上述のように、光学スキャン中は新たにヒータにONできないため、例えばA3のように画像面積の大きい転写紙に定着する場合には、定着ローラ温度はかなり下がってしまい、定着不良を引き起こす。
これを具体的に説明すると、図7に示すように、ヒータがONする位置は、温度カーブの谷底の手前P点であり、温度が上がるまで多少時間がかかるのとサーミスタの応答の遅れでヒータON後1〜2℃下がる。OFFする温度はONする温度+0〜5℃である(ON、OFFの温度が同じでもサーミスタの応答の遅れやヒータONしてから時間がかかることで矛盾は生じず、制御可能である)。
このP位置で読み取りスキャンが開始すると、ヒータにONできないために定着温度が極端に下がり、図に示すように定着不良域の温度を越えてしまう。これは特に、10℃のような低温環境下で顕著である。
S位置で読み取りスキャンが終了してヒータがONされた場合、温度がかなり下がった分、次の山部はオーバーシュートしてしまう。
【0005】
上記特開平5−150684号公報記載の技術は、通電・通電停止、すなわち、ON・OFFを条件としているため、ヒータのON・OFFを自由にできるプリンタや、CCDを使用した複写機には、定着温度のリップルを小さくするのに有効であり得るが、本発明が対象とするCCDを使用しない複写機には上記制約が存在するために適用できない。
【0006】
そこで、本発明は、光学ユニットが読み取り又は書き込みスキャンしている間に、新たにヒータにONできない画像形成装置において、温度低下による定着不良を防止することを、その目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、制約段階に入る直前にヒータに通電して設定温度を上昇させ、これによって温度降下の底上げをして定着不良を防止する、という考えに基づいている。
具体的には、請求項1記載の発明では、1枚のコピー動作時間内に複数の設定温度を有し、コピー開始時には一つの設定温度A°Cにし、光学ユニットによるスキャン直前に設定温度B(A+α)°Cに切り替える定着温度制御方法において、
β =〔(感光体への光学照射位置から転写位置までの感光体の周長l +転写位置から定着ローラ位置までの距離l −定着ローラの周長)÷感光体線速〕
β =〔(感光体への光学照射位置から転写位置までの感光体の周長l +転写位置から定着ローラ位置までの距離l )÷感光体線速〕
とした場合に、上記設定温度B°Cで制御するのが、上記光学ユニットによるスキャン直前からスキャン終了直後β 〜β の時間内である、という手順を採っている。
【0008】
請求項2記載の発明では、1枚のコピー動作時間内に複数の設定温度を有し、コピー開始時には一つの設定温度A°Cにし、光学ユニットによるスキャン直前に設定温度B(A+α)°Cに切り替える定着温度制御方法において、
連続通紙枚数が増えた場合、設定温度A°Cが自動的に下げられるとともに、設定温度B°Cも同じ温度幅で下げられる、という手順を採っている。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図1乃至図6に基づいて説明する。
図1に概略的に示すように、複写機2には、感光体4と転写器6が備えられているとともに、定着装置8が備えられている。感光体4側と定着装置8との間には、転写紙9を定着装置8に送るための搬送ガイド板10と、入口ガイド板12が設けられており、定着装置8の外方には出口ガイド板14が設けられている。
定着装置8は、ファクシミリ、プリンタ、デジタル複写機、光学式複写機等の電子写真装置に用いられるもので、転写紙9上のトナーに少なくとも熱と圧力を加えて転写紙9にトナーを定着させるタイプのものである。
その構成は、概略、ヒータ16を有する駆動ローラとしての定着ローラ18と、この定着ローラ18に対向配置された弾性ローラ20とからなり、弾性ローラ20は一端を装置本体に固定された圧接手段としてのスプリング22で定着ローラ18へ向けて付勢されている。これによって弾性ローラ20を従動回転する。また、定着ローラ18の近傍には、定着ローラ18の温度を検知するサーミスタ24が設けられているとともに、定着ローラ18から転写紙9を分離するための分離爪26がスプリング28で付勢された状態で設けられている。
【0011】
また、図2に示すように、定着ローラ18は両端を定着軸受30,30で支持されており、その一端側には図示しない駆動源からの駆動力を入力するための定着ギヤ32が固定されている。
【0012】
定着ローラ18は、A4通紙の装置でローラ長さを240〜310mm、A3通紙の装置で320〜390mmに設定されるもので、直径φ10〜φ40mm、肉厚0.4〜1.0mmのアルミニウム管(A5052,A5056,A6063,A3003 又はそれをベースとした合金)、又はステンレス管(SUS304,SUS430,SUS416又はそれをベースとした合金)、又は肉厚0.25〜0.5mmの炭素鋼鋼管(STKM11,STKM12 )が用いられる。
そして、A4通紙の装置で長さ218〜300mmの範囲に、A3通紙の装置で長さ299〜380mmの範囲にフッ素樹脂コーティングをしている。フッ素樹脂の種類としては、四フッ化エチレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、パーフルオロエチレンプロピレン樹脂のいずれか、又はその混合樹脂を採用することができる。
【0013】
また、弾性ローラ20は、直径φ10〜φ40mmで肉厚3〜10mmのシリコーンゴムで形成されており、ゴム硬度は、JISA8〜10の間で同一硬度としている。ゴム部の長さは、A4通紙の装置で220〜240mm、A3の通紙で305〜340mmとした。なお、ゴム表面上へのフッ素樹脂の被覆の有無は問わない。
ヒータ16は、ハロゲンヒータを使用し、A4機で350W〜900W、A3機で500〜1200Wのものを使用している。
【0014】
上記サイズ等の選定範囲において、本実施例で使用する詳細は以下の通りである。
定着ローラ18(直径=25mm、材質は肉厚0.4mmの炭素鋼鋼管STKM11、ローラ長=365〜375mm、表面にパーフルオロアルコキシ樹脂を主材料とする被覆有り)
弾性ローラ20(直径=25mm、ゴム肉厚4.5〜5mm、ゴム部長さ=310〜320mm)
ヒータ16(900W)
【0015】
また、図3に示すように、複写機2にはマイクロコンピュータとしてのCPUからなる制御手段34が備えられている。制御手段34はコピースタートボタン38を有する操作パネル36やサーミスタ24等からの出力信号を取り込み、ヒータ16を制御するようになっている。
既述の通り、CCDを使用しない複写機においては、光学読み取りスキャン中は、ヒータに新たに通電開始(以下、ONと記載)をできない。もちろん、ON中はONを継続可能で、あらかじめ決めた温度(設定温度)に達した時にOFFできる。
【0016】
以上を踏まえ、本実施例を具体的設定温度を交えて図4のフローチャートに基づいて説明する。
待機時の定着ローラ18の温度はU=165°Cに設定されており、コピースタートボタン38が押されてコピー開始の信号が制御手段34に入ると(STEP1=ST1、以下同じ))、制御手段34は、定着ローラ18の設定温度(定着温度)をA=190°Cとして温度制御する(ST2)。そして、制御手段34によって、スキャン直前(スキャン開始1ms〜1000ms前)(ST3)、設定温度B(A+α)=200〜220°Cとする(ST4)。
本実施例における定着装置8の待機時の温度リップル幅(平均値)は、10°Cである(図5)。
αを温度リップル幅の10°Cより大きい値、望ましくは温度リップル幅+5°Cであるので、α=15°Cとし、B=A+15=205°Cとした。温度リップルより大きい幅で設定温度を上げているので、スキャン前に必ずヒータ16はONし、定着ローラ18の温度を上げることができる。
設定温度を上げることにより、図6に示すように、ヒータ16がOFFして新たにONできなくても、読み取りスキャン終了後の温度(S位置)が定着不良域の温度より高いため、低温環境でも温度は下がらず、定着不良は防止される。しかし、220℃を越えると機内温度が高くなりすぎる等の不具合が生じる。
【0017】
制御手段34によって、読み取りスキャン終了後、更に0.8〜1.8秒後に(ST5)、設定温度がA=190°Cに戻される(ST6)。0.8〜1.8秒の算出理由は次の通りでる。図1において、感光体4への光学照射位置Lから転写位置までの感光体4の周長をl、転写位置から定着ローラ18までの距離をlとした場合、β=(l+l−定着ローラの周長)÷感光体線速=(42+120−93)÷90=0.8秒となる。
また、β=(l+l)÷感光体線速=(42+120)÷90=1.8秒となる。
【0018】
すなわち、低温時で弾性ローラ20が冷えている時でも、B°CからA°Cに変更し、実質ヒータ16がOFFするのを転写紙9の未定着部分が定着ローラ18の1回転未満になった時にしているので、定着中は極端に温度が下がったりせず、定着不良を起こす温度まで下がらないので、定着不良を防止できる。
また、転写紙9が定着ローラ18、弾性ローラ20を抜けるまでに定着温度を下げ、ヒータ16はOFFさせるので、転写紙9が抜けたときに、オーバーシュートして高温になるのを防止し(転写紙9が抜けると、熱を奪うものが無くなりオーバーシュートする。そして、設定温度を高くしているので220°C以上の高温になってしまう。)、温度リップルが大きくなることを防止できる。これによって、定着部品の破損や寿命の低下を防止できる。
設定温度をB°Cに切り替えた後、読み取りスキャンが終了し、且つ、β〜β秒経過するまでは設定温度はB°Cに維持され、この間の制御はB°Cに達したときのOFFのみである。
【0019】
一枚のコピー動作が完了すると、制御手段34によってまだコピーする必要があるかないかが判断され(ST7)、ない場合には排紙されてコピーが終了する(ST8)。コピー終了後、30秒〜5分後に待機モードに入り、設定温度はU℃となる。コピーする必要がある場合には、連続枚数K までか否かが判断される(ST9)。K は、弾性ローラ20がある程度暖まって、それにあまり熱をとられないために定着ローラ18の温度が下がりにくくなる枚数で、本実施例では12枚としている。連続枚数が12枚以内の場合には、上記制御・動作が繰り返される。
【0020】
連続枚数が12枚を越える場合には、制御手段34によって設定温度がA=A−γ=190−5=185°Cに下げられ(ST10)、スキャン直前(ST11)には、B=B−γ=205−5=200°Cに上げられる(ST12)。すなわち、連続通紙枚数が増えた場合、設定温度A,Bが同じ温度幅だけ自動的に下げられる。以下の動作は、上記12枚以下コピーと同様である。そして、連続枚数がK=20を越える場合には、制御手段34によって設定温度がA=A−γ=185−3=182°Cに下げられ、スキャン直前には、B=B−γ=200−3=197°Cに上げられる。本実施例ではK=30枚より多くてもそれ以降は同温度制御とした。
,γは実験等によって得られる最適値である。このように、弾性ローラ20の暖まり具合や、定着装置8回りの雰囲気温度等を加味して定着温度を設定することによって、定着不良をなくせるとともに機内温度上昇を防止できる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、スキャン動作が始まって新たに通電開始できなくても、定着温度を高く設定するので、スキャン動作終了時点においても定着不良域温度に達することを回避でき、定着不良を防止することができる。
また、低温時で弾性ローラが冷えている時でも、元の設定温度に戻してOFFするのを転写紙の未定着部分が定着ローラの1回転未満になった時にしているので、定着中は温度が極端に下がらず、よって定着不良を防止することができる。
請求項2記載の発明によれば、設定温度を枚数や環境条件等に基づいて調整するので、コピー枚数にかかわりなく定着不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定着温度制御方法の実施に使用される複写機の要部概要側面図である。
【図2】定着装置の概要正面図である。
【図3】制御手段を示す概要図である。
【図4】制御動作を示すフローチャートである。
【図5】定着温度のリップル幅を示すグラフである。
【図6】通電タイミングを示すタイムチャートである。
【図7】従来の定着ローラ温度の定着中における変化を示すグラフである。
【符号の説明】
2 画像形成装置としての複写機
16 ヒータ
18 定着ローラ

Claims (2)

  1. 1枚のコピー動作時間内に複数の設定温度を有し、コピー開始時には一つの設定温度A°Cにし、光学ユニットによるスキャン直前に設定温度B(A+α)°Cに切り替える定着温度制御方法において、
    β =〔(感光体への光学照射位置から転写位置までの感光体の周長l +転写位置から定着ローラ位置までの距離l −定着ローラの周長)÷感光体線速〕
    β =〔(感光体への光学照射位置から転写位置までの感光体の周長l +転写位置から定着ローラ位置までの距離l )÷感光体線速〕
    とした場合に、上記設定温度B°Cで制御するのが、上記光学ユニットによるスキャン直前からスキャン終了直後β 〜β の時間内であることを特徴とする定着温度制御方法。
  2. 1枚のコピー動作時間内に複数の設定温度を有し、コピー開始時には一つの設定温度A°Cにし、光学ユニットによるスキャン直前に設定温度B(A+α)°Cに切り替える定着温度制御方法において、
    連続通紙枚数が増えた場合、設定温度A°Cが自動的に下げられるとともに、設定温度B°Cも同じ温度幅で下げられることを特徴とする請求項1記載の定着温度制御方法。
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