JP3604043B2 - 積層セラミック電子部品及びその製造方法 - Google Patents

積層セラミック電子部品及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層セラミックコンデンサなどのようなセラミック素体内に内部電極が設けられている積層セラミック電子部品及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セラミック素体内に複数の内部電極を有する積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品は、従来より、セラミックグリーンシート上に印刷して塗布したり、あるいはプラスチックフィルム上に薄膜形成法により形成した内部電極パターンを転写したりすることにより、セラミックグリーンシート上に内部電極を設け、これを積層した後焼成することにより製造されている。
【0003】
ところで、積層セラミックコンデンサ等に対しては、近年、小型でかつ静電容量の大きなものが要望されているが、誘電体材料自身の比誘電率の改善には限界がある。従って、内部電極間の厚みを薄くしたり、内部電極の面積を拡げることにより静電容量を大きくする方法が検討されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、内部電極間の厚みを薄くするためには、グリーンシートの厚みを薄くする必要があり、グリーンシートの厚みを薄くすると、グリーンシート自体の欠陥が増加し、製品の不良率が高くなるという問題を生じる。
【0005】
また内部電極の面積を拡げると、グリーンシート間の密着性が悪くなり、デラミネーション等の問題が生じ、このような方法にも限界があった。
また積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品においても、内部電極間の厚みを薄くしようとする場合に、同様の問題があった。
【0006】
また、従来、積層セラミックコンデンサなどにおいては、チタン酸バリウム系セラミックスに代表される焼成温度の高いセラミック材料が誘電体として用いられていた。そのため、内部電極を構成する材料についても、PdやWといった高融点の金属材料や該金属材料を含む導電性材料が用いられていた。
【0007】
しかしながら、より低温での焼成を可能とするために、誘電体材料として鉛系複合ペロブスカイト系セラミックスを用いることが試みられている。その結果、Ag、Ag−Pd合金のような比較的低融点の材料が、内部電極材料として使用されてきている。
【0008】
しかしながら、Ag−Pd合金などの比較的低融点の金属材料は熱膨張係数が大きい。例えば、Pdが11×10−6cm/℃であるのに対し、Agは17.1×10−6cm/℃、Ag及びPdを重量比で7対3の割合で含むAg−Pd合金では15.0×10−6cm/℃、Ag及びPdを重量比で3対7の割合で含むAg−Pd合金は12.7×10−6cm/℃と大きい。なお、上記金属材料の熱膨張率に対し、例えば鉛系複合ペロブスカイト材料からなるセラミックスの場合、熱膨張係数は、2.0〜3.0×10−6cm/℃程度とかなり小さい。その結果、上記のようなセラミック材料と金属材料を用いて積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品に用いられる焼結体を調製すると、熱膨張係数差に起因する内部応力により、セラミック層と内部電極とが剥離することがあるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、セラミック素体内に複数の内部電極が設けられた積層セラミック電子部品において、内部電極間の実効的な素子の厚みを小さくすることができる積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、セラミック素体内に複数の内部電極が設けられた積層セラミック電子部品において、内部電極とセラミック層との熱膨張差に起因する層間剥離等の内部欠陥の発生を抑制し得る積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するために成されたものであり、それぞれ、下記の構成を備えることを特徴とし、それによって、上記双方の課題を達成することができる。
【0012】
本発明の積層セラミック電子部品は、鉛複合ペロブスカイト系セラミックスからなるセラミック素体内に拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とを含有する複数の内部電極が対向して設けられており、内部電極間の対向距離が10μm以下であり、かつ該内部電極の周囲に、内部電極からセラミック素体に前記拡散しやすい成分が拡散することにより形成されており、実効的な厚みが前記内部電極間の距離の10分の1以上である金属拡散層が設けられていることを特徴としている。
【0013】
本発明の製造方法は、内部電極を介して積層したセラミックグリーンシートの積層体を焼成することによりセラミック素体内に複数の内部電極が対向して設けられており、内部電極間の対向距離が10μm以下である積層セラミック電子部品を製造する方法であり、前記セラミック素体として、鉛複合ペロブスカイト系セラミックスを用い、焼成を900〜1000℃で行い、内部電極として、焼成の際にセラミック素体中に拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とを含有した内部電極を形成し、焼成の際に、拡散しやすい成分を内部電極から拡散させて、内部電極の周囲に、実効的な厚みが前記内部電極間の距離の10分の1以上である金属拡散層を形成することを特徴としている。
【0014】
本発明に従えば、内部電極の周囲に金属拡散層が形成されているので、内部電極間の実効的な素子の厚みは、内部電極間の距離ではなく、セラミック素体を介して対向する金属拡散層間の距離となる。従って、実効的な素子の厚みを内部電極間の距離よりも小さくすることができる。
【0015】
また、本発明に従えば、上記のように内部電極の周囲に金属拡散層が形成されているため、内部電極とセラミック層との間の接合強度が高められる。すなわち、内部電極とセラミック層との界面からセラミック層側の領域にかけてある濃度勾配で内部電極構成金属が拡散しているため、熱膨張係数差に起因する上記界面に加えられる応力が緩和され、それによって層間剥離現象が効果的に抑制される。
【0016】
本発明は、特にグリーンシートの厚みを薄くし、内部電極間の距離を小さくした積層セラミック電子部品において有用であり、内部電極間の距離が10μm以下である積層セラミック電子部品において有用である。また、セラミックグリーンシートの厚みの制限から、内部電極間の距離は2μm未満とすることが難しい。従って、本発明に従う好ましい局面の1つにおいては、内部電極間の距離は2μm以上10μm以下である。
【0017】
本発明を積層セラミックコンデンサに応用した場合、従来はセラミックグリーンシートの厚みにより限界とされた素子の厚みよりもさらに実効的な素子の厚みを薄くすることができ、静電容量を大きくすることができる。
【0018】
本発明における金属拡散層の実効的な厚みは、内部電極間の距離の10分の1以上である。このような実効的な厚みは、例えば、後述するように、金属拡散層が設けられていない積層セラミック電子部品と、本発明に従い金属拡散層が設けられた積層セラミック電子部品の見かけの比誘電率を測定することにより求めることができる。
【0019】
本発明の製造方法によれば、内部電極として、焼成の際にセラミック素体中に拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とを含有した内部電極を形成し、焼成の際に、拡散しやすい成分を内部電極から拡散させることにより、本発明における金属拡散層を形成している。拡散しやすい成分としては、例えばAgを用いることができる。また拡散しにくい成分としては、Pdを用いることができる。従って、例えば、Agを含有した金属粉とPdを含有した金属粉を混合して内部電極形成用ペーストを調製し、これを用いて印刷塗布することにより内部電極を形成することができる。従って、本発明の製造方法に従う局面の1つにおいては、拡散しやすい成分を有する金属粉と、拡散しにくい成分を含有する金属粉とを混合したものから内部電極を形成することができる。
【0020】
また、本発明に従う製造方法においては、焼成前における内部電極中の拡散しやすい成分の含有量を10%以上とすることが好ましい。拡散しやすい成分の含有量が10%未満であると、金属拡散層を十分に形成することができない場合がある。なお本願明細書において%は重量%を意味している。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に従う実施形態の1つを示す拡大断面図である。図1を参照して、セラミック素体1の内部には複数の内部電極2,4が設けられている。図3は、積層セラミック電子部品の全体を示す断面図である。図3に示すように、セラミック素体1内の内部電極2,4は、複数対向するように所定の間隔で設けられている。積層される内部電極2,4は、セラミック素体1の一方端部及び他方端部にそれぞれ交互に延びるように形成されており、一方端部に延びる内部電極2の端部は一方端部の側面に形成された外部電極4と電気的に接続されており、他方端部に延びる内部電極4の端部は他方端部の側面に形成された外部電極5と電気的に接続されている。
【0022】
図1に戻り、それぞれの内部電極2,4の周囲には、金属拡散層3a、3b及び5a,5bが形成されている。この金属拡散層3a,3b及び5a,5bは、内部電極2,4からセラミック素体1内に金属が拡散することにより形成されている。金属拡散層3a,3b及び5a,5bは、それぞれ内部電極2,4と電気的に接続した状態である。従って、内部電極2と内部電極4の間に電圧が印加されると、セラミック素体1を挟み対向する金属拡散層3aと金属拡散層5bとの間で電圧が印加されることとなる。従って、実効的な素子の厚みは、金属拡散層3aと金属拡散層5bの間の距離T となり、内部電極2と内部電極4との間の距離T より小さくなる。従って、本発明に従い、金属拡散層3a,3b及び5a,5bを設けることにより、実効的な素子の厚みを薄くすることができる。よって積層セラミックコンデンサ等においては、静電容量を大きくすることができる。
【0023】
図1に示すように、金属拡散層3a,3b及び5a,5bは、実効的な厚みとしてT で示される厚みを有している。従って、内部電極2及び4の間の実効的な素子の厚みは、上述のように内部電極2,4間の距離T よりも2T 小さなT の厚みとなる。ところで、金属拡散層は、図2に模式的に示すように、内部電極2から拡散しやすい金属成分がセラミック素体1中に拡散することにより形成されるものである。従って、内部電極2の近傍においては、高い濃度であるが、内部電極2から離れるに従って徐々に濃度が低下する。従って、金属拡散層3a,3bの外側の境界は実際には明確なものではない。本発明において、金属拡散層の実効的な厚みは、図1に示すT の値とし、内部電極間の距離T から素子の実効的な厚みT を差引き、これを2分の1にすることによって求められる値であるとする。従って、金属拡散層の実効的な厚みは各内部電極の片側での厚みである。
【0024】
金属拡散層を実質的に有しない積層セラミック電子部品における、みかけ比誘電率は、内部電極間の距離T に対応しており、本発明に従う積層セラミック電子部品のみかけ比誘電率は図1に示すT の厚みに対応している。素子の厚みとみかけ比誘電率は逆比例するので、金属拡散層を実質的に有しない積層セラミック電子部品のみかけ比誘電率と、本発明に従う金属拡散層を有する積層セラミック電子部品のみかけ比誘電率を測定することにより、金属拡散層の厚みT を求めることができる。本発明においては、このようにして求められる金属拡散層の実効的な厚みT が内部電極間の距離T の10分の1以上であることが好ましい。
【0025】
また、本発明において、上記のように内部電極とセラミック層との層間剥離現象を金属拡散層を設けることにより抑制するには、好ましくは、内部電極を構成する金属材料が合金化していないことが望ましい。すなわち、例えばAg及びPdを含む導電ペーストを用いて内部電極を構成する場合、Ag−Pd合金とはならず、内部電極が未合金の状態でAg及びPdを含んでいることが望ましい。例えば、X線回折により分析した場合に、Ag及びPdが独立して確認される状態で内部電極を構成していることが望ましい。内部電極が合金化している場合には、後述の実施例から明らかなように、層間剥離現象のような内部欠陥が生じがちとなる。
【0026】
本発明における金属拡散層は、内部電極からセラミック素体に金属が拡散することにより形成されるものであり、焼成の際の加熱により、内部電極から、拡散しやすい成分がセラミック素体中に拡散することにより形成することができる。従って、焼成前の内部電極中に拡散しやすい成分を含有させておくことにより、内部電極からこの成分を拡散させて金属拡散層を形成することができる。焼成の際の焼成温度及び保持時間を調整することにより、内部電極から拡散成分を拡散させ、金属拡散層を形成する。従って、焼成温度及びその保持時間は、拡散成分の種類及びセラミック素体の密度や内部電極間の距離などに応じて決定されるものである。
【0027】
また、上記金属拡散層を設けることにより、熱膨張係数差に起因する層間剥離現象などの内部欠陥を抑制するには、好ましくは、焼成雰囲気を炭素雰囲気などのような酸化性雰囲気とし、焼成に際しての最高温度で3時間以上保持することが望ましい。窒素雰囲気のような還元性雰囲気化で焼成を行った場合には、後述の実施例から明らかなように、層間剥離現象などの内部欠陥発生率が高くなり、かつ最高温度に維持する時間が3時間未満の場合においても、内部欠陥発生率が高くなる。
【0028】
本発明の製造方法は、上記本発明の積層セラミック電子部品を製造することができる方法であり、焼成前の内部電極に、焼成の際にセラミック素体中に拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とを含有させておき、焼成の際に、拡散しやすい成分を内部電極から拡散させて金属拡散層を形成する。従って、図1に示す内部電極2,4から拡散した金属により金属拡散層3a,3b及び5a,5bが形成される。従って、一般的には、焼成後においては、内部電極2,4に拡散しにくい成分が多く存在し、金属拡散層3a,3b及び5a,5bに拡散しやすい成分が多く存在する。
【0029】
本発明の製造方法に従う好ましい実施形態の1つにおいては、拡散しやすい成分からなる金属粉と拡散しにくい成分からなる金属粉とを混合し、この混合粉を原料として内部電極形成用ペーストを調製し、この内部電極形成用ペーストをグリーンシートに塗布することにより内部電極を形成する。例えば、拡散しやすい成分の金属粉としてAg粉末を用い、拡散しにくい成分の金属粉としてPd粉末を用い、これらの混合粉を原料とする内部電極形成用ペーストをグリーンシートに塗布して内部電極を形成する。このようにして内部電極を形成したセラミックグリーンシートの積層体を、例えば900℃〜1000℃の温度で焼成することにより、拡散しやすいAg成分をセラミック素体中に拡散させ、金属拡散層を形成することができる。拡散しにくい成分としては、相対的に融点の高い金属または合金を用いることができ、Pdのほか、Ni、W、Au、Ptが挙げられる。また拡散しやすい成分としては、相対的に融点の低い金属または合金を用いることができ、Agの他、Ag−Pd合金などが挙げられる。なお、本発明における金属拡散層は、広義の金属が拡散される層を意味しており、合金成分が拡散して形成される層も含まれる。
【0030】
本発明の製造方法に従えば、拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とを内部電極に含有させることにより、焼成の際に、拡散しやすい成分を拡散させて金属拡散層を形成する。このため、拡散しやすい成分によって金属拡散層が形成されるとともに、拡散しにくい成分が内部電極内に残るため、内部電極切れの発生を少なくすることができる。従って、本発明の製造方法に従えば、内部電極切れの発生を抑えながら、金属拡散層を形成することができる。
【0031】
本発明の積層セラミック電子部品は、上記本発明の製造方法により製造される積層セラミック電子部品に限定されるものではない。すなわち、上記本発明の製造方法においては、内部電極に、焼成の際に拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とが含有されているが、本発明の積層セラミック電子部品においては、内部電極に、拡散しやすい成分のみを含有させてもよい。例えば、拡散しやすい成分としてAg成分を用いる場合、Agのみから内部電極を形成し、焼成条件をコントロールすることにより内部電極切れを生じることなく、内部電極からAg成分を拡散させ金属拡散層を形成させることも可能である。
【0032】
本発明の積層セラミック電子部品は、鉛複合型ペロブスカイト材料などの誘電体セラミック電子部品のみならず、半導体セラミック電子部品、圧電体セラミック電子部品、及び磁性体セラミック電子部品などにも適用することができるものである。従って、積層セラミックコンデンサのみならず、内部電極を有したサーミスタ、バリスタ、圧電素子、フィルタなど幅広い分野に応用することが可能なものである。
【0033】
【実施例】
ここでは、本発明を積層セラミックコンデンサに応用した実施例について説明する。セラミック素体の材料としては、鉛複合ペロブスカイト材料を用い、内部電極形成材料としては、表1に示すようなAg含有量(残りPd)の材料を用い、表1に示す内部電極間距離となるような厚みにセラミックグリーンシートを形成し、これに内部電極を印刷して形成し、この積層体を表1に示す焼成温度で焼成し、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0034】
表1に示す実験例No. 1は、内部電極を有しないものであり、電子部品素子の外側に電極を形成し、この電極間の距離を0.8mmとしたものである。
また実験例No. 2〜9においては、表1に示すようなAg粉末の含有量で、残りがPd粉末の含有量である内部電極形成用ペーストを作製し、このペーストを塗布することにより内部電極を形成した。
【0035】
また、実験例No. 10においては、Pd粉末のみの内部電極形成用ペーストを用いた。
【0036】
【表1】
Figure 0003604043
【0037】
表1において、金属拡散層の実効的な厚みは、実験例No. 1のみかけ比誘電率と、各実験例において測定したみかけ比誘電率から算出した値である。
表1から明らかなように、金属拡散層の実効的な厚みが内部電極間距離の10分の1以上である実験例No. 4、No. 5及びNo. 9は、みかけ比誘電率が著しく大きくなっている。従って、金属拡散層の実効的な厚みとしては内部電極間距離の10分の1以上が好ましいことがわかる。
【0038】
また拡散しやすい成分であるAgを含有していない実験例No. 10においては、実質的な金属拡散層が形成されておらず、みかけ比誘電率の向上が認められないことがわかる。
【0039】
次に、表2に示すように電極間距離を8μmまたは5μmとし、焼成温度及び焼成の最高温度保持時間を変化させて焼成し、得られた積層セラミックコンデンサのみかけ比誘電率を測定した。内部電極としてはAgの含有率が30%のものを形成した。
【0040】
【表2】
Figure 0003604043
【0041】
表2から明らかなように、実験例No. 11、No. 14〜No. 16、及びNo. 18〜No. 19では、金属拡散層の実効的な厚みが内部電極間距離の10分の1以上になっており、みかけ比誘電率が大きくなっている。
【0042】
また実験例No. 11〜13の比較から明らかなように、焼成温度としては950℃よりも、より高い温度である1000℃の方がみかけ比誘電率が高くなっていることがわかる。しかしながら、焼成温度が1050℃になると、急激にみかけ比誘電率が低下している。これは、おそらく焼成温度が高すぎることにより、内部電極切れが発生したものと考えられる。
【0043】
実験例No. 14及びNo. 15の比較、並びに実験例No. 16、No. 18及びNo. 19の比較から明らかなように、最高温度保持時間を長くする程、みかけ比誘電率が高められることがわかる。また実験例No. 14〜No. 19から、最高温度保持時間が同じであれば、焼成温度が高い方がみかけ比誘電率が高くなることがわかる。
【0044】
以上のことから明らかなように、適切な焼成条件で焼成することにより、内部電極の周囲に金属拡散層を形成することができ、内部電極間の実効的な素子の厚みを小さくすることができる。従って、積層セラミックコンデンサに応用した場合、大きな静電容量を得ることができることがわかる。
【0045】
次に、本発明を積層セラミックコンデンサに応用した他の具体的な実施例につき説明する。セラミック素体の材料としては、鉛複合ペロブスカイト材料としてPb(Mg1/3 Nb2/3 )O系セラミックスを用い、内部電極形成材料としては、下記の表3に示す割合(重量比)でAg及びPdを含む材料を用いた。また、セラミックグリーンシートとしては、5.0μmの厚みのものを形成し、該セラミックグリーンシートに上記内部電極形成材料をスクリーン印刷して内部電極を形成し、得られた内部電極が印刷されたセラミックグリーンシートを積層して積層体を得、表3に示す条件で焼成し、焼結体を得た。得られた焼結体の両端面に外部電極を形成し積層セラミックコンデンサを作製した。
【0046】
上記のようにして得た積層セラミックコンデンサにおける焼結体の内部欠陥発生率を、下記の要領で測定し、評価した。結果を下記の表3に併せて示す。
内部欠陥発生率は、超音波画像解析装置により、非破壊で内部欠陥を検出することで算出した。
【0047】
【表3】
Figure 0003604043
【0048】
なお、表3における内部電極状態は、内部電極が最終的にAg−Pd合金となっている状態か、あるいは未合金の状態であるかをX線回折により測定した結果に基づくものである。
【0049】
表3から明らかなように、Ag−Pd合金からなる内部電極が形成されている実験例22〜25では、Ag含有割合が高くなるにつれて、内部欠陥発生率が著しく高くなっていくことがわかる。従って、Ag含有割合を高めた場合には、コストを低減し得るものの、内部欠陥発生率が高くなり、望ましくないことがわかる。
【0050】
これに対して、Ag及びPdを未合金の状態で含む内部電極が形成されている実験例26〜28では、Agの含有割合の如何に係わらず、内部欠陥発生率が5ppm以下と低いことがわかる。従って、Ag及びPdを未合金の状態で含むように構成することにより、Ag含有割合を高めてコストを低減した場合であっても内部欠陥発生率を低減し得ることがわかる。
【0051】
また、実験例31,33,34,36,38、39と、実験例32,35,37,40との比較から明らかなように、同じAg含有割合で、かつ内部電極が未合金の状態であっても、還元性雰囲気下で焼成した場合には、内部欠陥発生率がかなり高くなることがわかる。これに対して、Ag及びPdが合金の場合で含まれる内部電極を形成し、かつ焼成に際しての雰囲気を酸化性雰囲気、すなわち酸素雰囲気下や空気中で600℃以上の温度にて焼成した場合には、内部欠陥発生率を、Ag含有割合の如何に係わらず、50ppm以下と非常に低くし得ることがわかる。
【0052】
従って、実験例31〜40の結果から、好ましくは、酸化性雰囲気で焼成することにより、内部欠陥発生率を低め得ることがわかる。また、最高温度保持時間が長くなる程、内部欠陥発生率が低くなることもわかる。なお、本願発明者の実験によれば、最高温度保持時間が3時間未満の場合には、酸化性雰囲気下で焼成したとしても、内部欠陥発生率が高くなり本発明の効果を得られないことが確かめられている。
【0053】
【発明の効果】
本発明に従い、内部電極の周囲に金属拡散層を形成することにより、内部電極間の実効的な素子の厚みを小さくすることができる。従って、グリーンシートの厚みを薄くすることなく、実効的な素子の厚みを薄くすることが可能になる。
【0054】
従って、本発明を積層セラミックコンデンサに適用することにより、大きな静電容量を確保することができる。
また、本発明に従って、内部電極の周囲に金属拡散層を形成した場合には、内部電極とセラミック層との界面における熱膨張係数差に起因する内部応力を効果的に緩和することができるため、セラミック層と内部電極との界面における層間剥離のような内部欠陥の発生率を効果的に低めることができる。従って、積層セラミックコンデンサの良品率を高めることができる。特に、鉛系複合ペロブスカイト系セラミックスのような低温焼成可能なセラミックスを用い、比較的低い温度で焼付け得る金属材料を用いて内部電極を構成した場合に、上記のように熱膨張係数差に起因する内部応力を効果的に緩和し得るため、本発明を好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の1つを示す拡大断面図。
【図2】本発明における金属拡散層の拡散状態を模式的に示す断面図。
【図3】本発明に従う実施形態の1つである積層セラミック電子部品を示す断面図。
【符号の説明】
1…セラミック素体
2,4…内部電極
3a,3b,5a,5b…金属拡散層
4,5…外部電極
…内部電極間の距離
…実効的な素子の厚み
…金属拡散層の実効的な厚み

Claims (3)

  1. 鉛複合ペロブスカイト系セラミックスからなるセラミック素体内に拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とを含有する複数の内部電極が対向して設けられている積層セラミック電子部品において、
    前記内部電極間の対向距離が10μm以下であり、かつ該内部電極の周囲に、前記内部電極からセラミック素体に前記拡散しやすい成分が拡散することにより形成されており、実効的な厚みが前記内部電極間の距離の10分の1以上である金属拡散層が設けられていることを特徴とする積層セラミック電子部品。
  2. 内部電極を介して積層したセラミックグリーンシートの積層体を焼成することによりセラミック素体内に複数の内部電極が対向して設けられており、内部電極間の対向距離が10μm以下である積層セラミック電子部品を製造する方法において、
    前記セラミック素体として、鉛複合ペロブスカイト系セラミックスを用い、焼成を900〜1000℃で行い、
    前記内部電極として、焼成の際にセラミック素体中に拡散しやすい成分と拡散しにくい成分とを含有した内部電極を形成し、焼成の際に、前記拡散しやすい成分を前記内部電極から拡散させて、前記内部電極の周囲に、実効的な厚みが前記内部電極間の距離の10分の1以上である金属拡散層を形成することを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
  3. 焼成前における前記内部電極中の前記拡散しやすい成分の含有量が10%以上である請求項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
JP26162195A 1995-07-31 1995-10-09 積層セラミック電子部品及びその製造方法 Expired - Lifetime JP3604043B2 (ja)

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