JP3603813B2 - 炊飯器の蓋構造及び蓋製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炊飯ジャー、電気炊飯器といった炊飯器の蓋構造及び蓋製造方法に係り、詳しくは、断熱作用が高められた蓋体を得る技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最初に一般的な炊飯器の基本構造について概略説明する。図1に示すように、一例としてのIH式の電気炊飯器は、内鍋5を着脱自在にセットする内ケース2と、これとの間に空間部3を形成する外ケース4、及び底ケース20とを備えた二重構造の炊飯本体1と、この炊飯本体1の上部開口を開閉自在な蓋体6とを備えて構成されている。
【0003】
内ケース2の周囲には、この内ケース2を取り囲む環状の上、中、下の誘導コイル7,8,9が配設されるとともに、その上方には保温用のヒータ10が周設されている。又、内鍋5の最上端部の外側位置には肩ヒータ21が周設されている。内ケース2の下端部の中心には、内鍋5の底面に接する状態に突設された温度検出センサー11が装備され、炊飯本体1後部の空間部3には、コードリール12が縦向きに配置されている。
【0004】
炊飯本体1前部の空間部3には、その上部において傾斜配置されるマイコン用基盤13、内ケース2に寄せて縦向き配置された制御用基盤14、その前方側に配置されるパワー用基盤15が配置されるとともに、マイコン用基盤13の前方側には液晶表示ユニット16や操作スイッチ17を有した操作部18が配置されている。19は、外ケース4に枢支された取っ手である。
【0005】
蓋体6は、PP(ポリプロピレン)等の合成樹脂材で成る蓋ケース22と、蓋体6の下面を形成すべく実質的に蓋ケース22にネジ止めされる板金等の熱良導体から成る放熱板23と、上下一対の板材から成る中間蓋24と、蒸気逃し弁25等を有して構成されており、後部に設けた支点軸26を有したヒンジ部27により、揺動開閉自在に炊飯本体1に枢支されている。尚、操作部18の直上位置には、蓋体6を閉じロック自在なロック機構28が装備されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、蓋体6と放熱板23との間に中間蓋24を介装することで断熱作用が発揮されるようにしてあり、それによって蓋ケース22は樹脂材で成る1枚板構造のものに構成されている。しかしながら、炊き具合を向上すべく内鍋の板厚増加や、優れた保温機能の実現、或いは省エネルギー化を推進する場合、現状の蓋体の構造では、内鍋内の熱を逃がさないようにする点では更なる改善の余地があるように思える。
【0007】
本発明の目的は、蓋体の構造を見直して工夫することにより、より断熱性に優れる蓋構造を有した炊飯器を提供する点にある。
【0008】
【課題を解決する手段】
本発明の構成は、内部に内鍋が着脱自在にセットされる炊飯本体の上部開口を開閉自在な蓋体を、内鍋の上部開口を閉鎖自在な放熱板と、蒸気逃し弁と、これら放熱板と蒸気逃し弁とえを支持し、かつ、上面部材となる蓋ケースとから構成してある炊飯器の蓋構造において、
蓋ケースと放熱板との上下間、又は蓋ケース部における蒸気逃し弁の周囲部に、平面視で環状の環状部を設けてあることを特徴とする。
【0009】
本発明の構成によれば、平面視で環状の環状部を、蓋ケースとの上下間、又は蓋ケース部分に設けたので、環状部の有する断熱作用が新たに加えられたことにより、蓋体として発揮される断熱作用が強化されるので、内鍋の熱が蓋体から逃げ難くなった分、炊飯時や保温時の熱エネルギーが少なくて済むようになる。又、熱源である蒸気逃し弁を取り囲む状態で環状部が存在するので、蒸気の熱が蓋体の周辺部に伝わり難くなってその熱影響を少なくすることが可能であるから、蓋体の熱変形料が軽減され、閉じ状態に維持するロック機構や炊飯本体との開閉作動が良好に機能し続けられるようになる。
【0010】
本発明の構成は、環状部は、蓋ケースを部分的に下方に凹入して形成される断熱ケース部と、この断熱ケース部の上側を覆う蓋カバーとで囲まれた部分であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の構成によれば、環状部が閉空間として存在するので、開放空間のものに比べて断熱性をより強化することができるとともに、蓋ケースとは別体の蓋カバーが外観部品として見えるようになり、蓋ケースだけが見える場合に比べて、色、模様、形状等のバリエーションの豊富化が簡単に行え、デザイン面での変更設定がし易い。又、蓋ケースと蓋カバーとの境目が存在するから、蒸気逃し弁から水や炊き汁が零れ出ることがあっても、それら液体が前述の境目にて止まり、そこから先には流れ難いよう食い止める作用も発揮できる。
【0012】
請求項1の構成は、蓋カバーの横幅寸法は、蓋体を揺動開閉自在に支持するヒンジ部側よりも、ヒンジ部側と反対側の方が広いものに構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項1の構成によれば、揺動開閉する蓋体の揺動先端側ほど蓋カバーの横幅寸法が大であるから、蓋カバーによる保護機能を、開閉時の移動量がより大きくなって他物との衝突可能性、及び衝突時の衝撃が大となる揺動先端側ほど強化することが可能なものになる。
【0014】
炊飯器の蓋の構成は、蓋カバーを、蓋ケースの溶着部に等接する脚部を有する金属板で構成するとともに、脚部には、溶けた状態の溶着部が流れ込み可能な孔が形成されていてもよい。
【0015】
炊飯器の蓋の構成は、蓋カバーを金属板製とし、その箇所の強度を改善できるとともに、意匠的な変化を持たせるとか高級感を出すことが容易に行えるようにしてもよい。そして、合成樹脂材による蓋ケースに溶着によって蓋カバーを固定するに当り、溶けた状態の溶着部が流れ込み可能な孔を金属板の脚部に変形してもよく、孔に流れ込んだ部分がストッパーとなって、蓋カバーの蓋ケースからの抜けとめ防止作用を強固に発揮できるようになる。
【0016】
炊飯器の蓋の構成は、環状部は、平面視で環状又は略環状の断熱用空間部としてもよい。
【0017】
炊飯器の蓋の構造が、環状部が平面視で環状又は略環状の断熱用空間部としてもよく、簡単で廉価に環状部を構成することができる。
【0018】
炊飯器の蓋の構成は、蓋カバーを蓋ケースの着脱自在に装備してもよい。
【0019】
炊飯器の蓋の構成は、蓋カバーは蓋ケースに対して着脱自在にしてもよく、両者を互いに分離することで掃除し易いとともに、閉空間となる断熱空間部を物入れとして使うことも可能である。例えば、スープ、タレ、スプーン等を、断熱空間部に入れておけば、蓋体の持つ熱によって温めた状態にする予熱機能や保温機能を発揮させることも可能になる。又、色やデザインの異なる蓋ケースに交換することが容易になる。
【0020】
請求項2の構成は、請求項1の構成において、蓋カバーの内径側周端部又は外径側周端部を、その上面に当接する状態で上方から覆い、かつ、蓋ケースに固定装備されるリング部材を設けてあることを特徴とするものである。
【0021】
請求項2の構成によれば、リング部材によって蓋カバーを蓋ケースに取付け固定することができるので、蓋カバー自体に蓋ケースへの取付け行き能を設けなくて済むとともに、蓋カバーと蓋ケースとの接続境目部分がリング部材によって見えなくなる隠し作用が発揮できるので、前記境目部分を精度良く仕上げ無くても良いようになるか、又は外観を良くすることができる。
【0022】
炊飯器の蓋の構成は、内部に内鍋が着脱自在にセットされる炊飯本体の上部開口を開閉自在な蓋体を、内鍋の上部開口を閉鎖自在な放熱板と、蒸気逃し弁と、これら放熱板と蒸気逃し弁とを支持し、かつ、上面部材となる蓋ケースとから構成してある炊飯器の蓋構造において、
蓋ケースの上面に置ける蒸気逃し弁の周囲部分に、平面視で環状又は略環状の金属板を設けるに、予め裏面に合成樹脂材によるシート層が形成された金属板を、シート層が蓋ケースの型形成時に溶融することにより、蓋ケースに一体化してもよい。
【0023】
炊飯器の蓋の構成において、熱源となる蒸気逃し弁の周囲における蓋体上面に金属板を設けてもよく、熱影響による蓋ケースの変形防止作用や、内鍋からの熱影響を遮る断熱作用が強化されるようになる。そして、金属板は、その裏面に予め密着されている合成樹脂シート層が、蓋ケースの型形成時に溶融して一体化されることで蓋ケースと蓋カバーとが相対固定されるものであるから、材質の全く異なる二者を、その一方の型成形時に一体化することができ、別体2部品を一体化させるための工程を省くことができる。
【0024】
炊飯器の蓋の構成は、内部に内鍋が着脱自在にセットされる炊飯本体の上部開口を開閉自在な蓋体の上面を形成する炊飯器の蓋製造方法において、
蓋体としての上面を形成するための金属板の裏面に、合成樹脂材製のシートを過熱及び加圧によって密着させてシート層を形成し、そのシート層が形成された金属板を、シート層に溶融合成樹脂材が及ぶ状態に、蓋ケース形成用のインジェクション成形金型にセットしてもよい。
【0025】
炊飯器の蓋製造方法において、金属板の裏面に予め合成樹脂材製のシート層を形成しておき、そのシート層付き金属板を蓋ケース製造用の金型に装備してから蓋ケースのインジェクション成形を行ってもよく、型成形時におけるシート層の溶融により、全く材質の異なる金属板と蓋ケースとを強固に一体化することが可能になる。しかも、その一体化は、蓋ケースの型成形時に一挙に行われるものであるから、金属板と所定形状に成形された蓋ケースとを一体化させる専用の工程を不用にすることもできる。
【0026】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施の形態および参考例を図面に基づいて数例説明する。尚、炊飯本体1については、図1に示す従来品と同じに付き、構造の異なる蓋体についてのみ説明するものとする。
【0027】
参考例1
図2、図3に示すように、蓋体30は、PP樹脂材で成る蓋ケース31と、蓋ケース31における平面視での内鍋5の中心位置に相当する位置に形成された装着孔31aに装備された蒸気逃し弁32と、蓋体30の下面を形成するべく蒸気逃し弁32を介して蓋ケース31にネジ止め固定されたアルミ合金による板金製の放熱板33と、上下一対の板材34a、34bから成る中間蓋34と、蓋ケース31に形成された断熱部Aとを有して構成されている。
【0028】
尚、後部に設けた支点軸26を有したヒンジ部27により、揺動開閉自在に炊飯本体1に枢支されている点、及び、蓋体30を閉じロック自在なロック機構28が操作部18の直上位置に装備されている点は、図1に示す従来品と同じである。
【0029】
断熱部Aは、蒸気逃し弁32の周囲における蓋ケース31を下方に凹入することで一体形成された断熱ケース部35と、この断熱ケース部35の蓋となるステンレス鋼板製の蓋カバー36と、これら断熱ケース部35と蓋カバー36とで形成される断熱用空間部37(環状部K)とから構成されており、空間部37には断熱材38(図5参照)を充填しても良い。断熱材38は、発泡スチロール、発泡ウレタン等の水に濡れても良いものが望ましいが、気密性が良ければグラスウール等の繊維型の断熱材でも装備可能である。
【0030】
断熱ケース部35は、前方側ほど幅広な平面視環状で、かつ、断面受け皿状に形成されるとともに、内端部と外端部の双方に立設された内外のリブ39,40と内外の側壁35a,35bとにより、内外の嵌合溝41,42が形成されている。蓋カバー36は、その内外端を下方に折り曲げて下方に突設される係合片(脚部の一例)43,44を有した断面略下向き「コ」字状のものに形成されている。
【0031】
尚、図5に示すように、蓋カバー36の内外端に折曲げ部36a,36bを形成して、内外端から若干内側に寄った位置において下方に突設される係合片43,44とを有した断面略下向き「コ」字状のものに形成しても良い。
【0032】
つまり、内係合片43は内嵌合溝41に、かつ、外係合片44は外嵌合溝42に夫々入り込ませた状態で両嵌合溝41,42部分を高周波溶着処理を行うことにより、断熱ケース部35の蓋をする状態で蓋カバー36を蓋ケース31に一体的に装備することができる。この場合、図4に示すように、係合片43,44に複数の孔45を開けておけば、高周波溶着処理時に溶けた樹脂が孔に流れ込むので、蓋カバー36の蓋ケース31からの抜止め作用を強化することができて好都合である。
【0033】
この参考例1の蓋体30では、樹脂材の蓋ケース31にステンレス金属による蓋カバー36が組み込まれているので、デザイン的に新規で意匠効果を増すことができるとともに、蓋体30としての強度アップ、ならびに蓋体30上面での断熱作用の強化を得ることが出来ている。又、蓋カバー36と蓋ケース31との境目の存在により、蒸気逃し弁32から吹き零れた炊き汁、所謂「おねば」がその境目で食い止められ、蓋ケース31の下方にまで流れて汚す不都合が抑制される効果もある。
【0034】
−第1実施形態−
図6、図7に示すように、断熱ケース部35に、内嵌合溝41の内側(外嵌合溝42側)に第2内嵌合溝46を、かつ、外嵌合溝42の内側(内嵌合溝41側)に第2外嵌合溝47を夫々一体形成によって設けて、これら第2内外嵌合溝46,47に嵌合される係合片48a,49aを備えた内外の押えリング(リング部材の一例)48,49を追加して断熱部Aを構成する。この場合は、内外の押えリング48,49を高周波溶着処理、或いは接着によって蓋ケース31に固定して、蓋カバー36の上方への抜け止めを行うので、単に挿入できるだけで良く、蓋カバー36を蓋ケース31に固定する手段が不要である。
【0035】
この第1実施形態の構造による蓋体30によれば、ステンレス鋼の蓋カバー36を切りっぱなしにできる等、端部処理が不用になる分のコストダウンが可能であるとともに、内外の押えリング48,49によって高級感が増せるとか、デザインの変更、豊富化、或いはデザインの新規性が出る等、意匠的な効果を持たせ易くなる利点がある。
【0036】
参考例2
図8、図9に示すように、参考例1による蓋体30において、ステンレス鋼鈑製の蓋カバー36に変えて、合成樹脂材によって形成した蓋カバー50を装着させた断熱部Aを構成する。この構造では、蓋カバー50の内外係合片50a,50b夫々の下端部と、内嵌合溝41,42の底部分とを溶着させることで一体的に組み付けることができる。又、接着剤を用いて係合片50a,50bと嵌合溝41,42部分とを接着しても良い。
【0037】
この参考例2の構造による蓋体30によれば、蓋カバー50を、蓋ケース31と同じPP樹脂や、ABS樹脂、PE樹脂、或いはFRP等種々の材質のものに変更可能である。この手段によれば、蓋ケース31と蓋カバー50と材質の異なり、及び色違い、表面印刷、表面処理等により、デザイン性の向上や豊富化が行える利点がある。
【0038】
参考例3
図10、図11に示すように、蓋ケース31を、蒸気逃し弁32用の装着孔31aを有した内ケース部31Aと、外ケース部31Bとの2部品から構成し、内ケース部31Aの下方側に平面視で環状の断熱用空間51(環状部K)を設けて蓋体30を構成する。この場合の断熱部Aは、内ケース部31Aにおいて上方に凹入させた凸ケース部52とその下方の前記空間部51とで構成されている。
【0039】
この構造では、内ケース部31Aの外周部から垂下した係合片54と、この係合片54が挿入自在に外ケース部31Bに形成された嵌合溝55とを、熱溶着によって相対固定すると良い。図11に仮想線で示すように、例えば、凸ケース部52の下面に貼着することにより、断熱材53を空間部51に設けるようにした構造でも良い。
【0040】
この2部品から蓋ケース31を構成する構造では、内ケース部31Aと外ケース部31Bとの材質、色、表面処理等を互いに異ならせることでデザイン性を向上させることが自在であるとともに、内ケース部31A又は外ケース部31Bを変更することで、異なる機種に適合する蓋体30を構成することも可能であり、ケースの共通化によるコストダウン、並びに、内ケース部31Aや外ケース部31B各々の部品としての汎用性が向上する等の効果が得られる。
【0041】
参考例4
図12、図13に示すように、参考例2の蓋体30における内外のリブ39,40が省略されたような構造の断熱部Aを構成する。即ち、蓋カバー50の内外係合片50a,50bと、断熱ケース部35の内外の側壁35a,35bとは圧入状態となるように嵌め合い寸法が設定されており、蓋カバー50は取り外し可能に蓋ケース31に圧接保持状態で装備されている。断熱材38は、発泡スチロール、発泡ウレタン等の水にぬれても良いものが望ましい。
【0042】
この構造において、内外係合片50a,50bと内外の側壁35a,35bとの嵌め合い交差をマイナスに設定して、蓋カバー50を着脱自在に落とし込み装着する手段でも良い。そうすれば、断熱用空間部37を、スプーンやその他の小物類の収納スペースとして用いることができる。着脱自在構造とするときには、図12に仮想線で示すように、蓋カバー50に凹入した引っ掛け部60を形成しておき、指先やコイン等で引っ掛け易いようにしておけば好都合である。
【0043】
又、空間部37の温度が50〜60℃になることを利用して、食物の保温固庫や再加熱手段として用いることも可能である。尚、この参考例4の構成による外観に関する作用効果は、参考例2又は参考例3の場合と同様なものが得られる。
【0044】
−第2実施形態−
図14、図15に示すように、蓋ケース31の上面にステンレス鋼板によるケースカバー56が一体的に装備して蓋体30を構成している。ケースカバー56は、蒸気逃し弁32の周囲を囲んで蓋体30の前端にまで達する比較的大きな面積を有した前広がり状のものに形成されている。このケースカバー56の上面には、抗菌コート等の処理によるコーティング層61を形成しておくと良い。
【0045】
ケースカバー56が積層されている載置面57は、ケースカバー56が積層されない部分58よりもケースカバー56の板厚分だけ低くしてあり、ケースカバー56の上面56aと、非積層部分58の上面58aとは互いに同じ高さレベルとなり、一続きの面画形成される状態に設定してある。次に、ケースカバー56付き蓋カバー31の製造方法について説明する。
【0046】
先ず、1.ステンレス板56の裏面に、熱と圧力を作用させてPPラミネートフィルム(シート層の一例)59を予め密着(貼着)しておき、2.その裏面にラミネートフィルム59が貼着されたステンレス板56をプレス成形して所定の局面形状に形成する。3.そのプレス成形されたステンレス板56を、蓋ケース31製造用のインジェクション成形金型に固定し、それから溶融状態のPP樹脂を金型に流し込むインサート成形を行うのである。このとき、位置決めとして、蒸気孔用の凹部56cに角孔56bを形成(図14参照)してある。
【0047】
つまり、ステンレス鋼板56の裏面にラミネートされているPPフィルムの下層側(蓋ケース側)が、流し込まれたPP樹脂の熱によって再溶融して一体化されるようになり、それによってステンレス鋼板56が蓋ケース31の表面にしっかりと一体装備することが可能となっている。このステンレス鋼板付き蓋ケースの採用により、断熱性能向上、デザイン性向上、高級感のアップが可能になるとともに、抗菌効果も得ることができる。ケースカバー56は、アルミ合金、亜鉛ダイカスト等、種々の金属板に変更自在である。
【0048】
ステンレスカバーを蓋部に同体的に設けることの目的及び課題は以下のとおりである。蓋体上面にステンレス等からできた薄板金属板を設けることにより、デザイン性の向上を図るとともに、蓋部の強度向上を図る。また、蓋部着脱丸洗いタイプにおいては、蓋丸洗い時に蓋部とステンレス部の隙間に水や洗剤などが侵入するなどの問題が生ずるが、本発明の構成をすることによりそれらの問題点を解消できる。また、蒸気弁からの熱が直接蓋ケース31に伝わるのを保護する効果があり、金属製なので熱に強い。
【0049】
次に、単にステンレス板をプレス成形し、所定形状にした後、インジェクション成形した場合、金属と樹脂の熱収縮係数の違いや樹脂の流れが、均一に流れず、ステンレス板の裏面や当接面に樹脂がうまく流れず、同時成形面がきれいに仕上がらず密着性が悪い。それらを解決するために薄板ステンレス板の裏面にあらかじめ蓋部と同質材料のPPラミネートフィルムを貼着したものを、所定形状に加工した後、インジェクション成形機でインサート成形を行うことにより蓋とステンレス裏面のラミネート部が溶融し、一体感のある表面にステンレスカバーがついた、高級感があり、強度があり、丸洗いしても水の侵入のない炊飯器の蓋部を形成することができる。尚、請求項に言う環状部Kとは、蓋カバー36,50,64、内ケース部31A、ケースカバー56等の総称である。
【0050】
〔別実施形態〕
《1》 図16、図17に示すように、内ケース31Aに部分的に下方に凹入した凹部62を形成しておき、しゃもじ63等の付属部品を載置できるようにしておけば便利である。
《2》第1実施形態による蓋体30の蓋ケース31に、第2実施形態に採用された製造方法によってステンレス鋼鈑が表面側に一体装備しても良い。
《3》図18に示すように、図3に示す参考例1のものにおいて、断熱ケース部35が省略されたような断熱部Aでも良い。即ち、内外のリブ65,66を幅の広いものとして、それらリブ65,66の上面に蓋カバー64の内側脚部64a,64bが載置自在に構成するとともに、内側脚部64a,64bの上側部分を内外の押えリング48,49の上面と蓋カバー64の上面とが同じ高さでレベルで一続きの面となるように設定するのである。
【0051】
【発明の効果】
請求項1および請求項2に記載の炊飯器の蓋構造では、蓋ケースと放熱板との上下間、又は蓋ケース部分における蒸気逃し弁の周囲部分に、平面視で環状部を設けることにより、炊飯器としての保温性向上、省エネルギー化の促進が行えるとともに、蓋体の熱による変形が軽減されることから、開閉機能や閉じロック機能等の基本機能が良好に発揮し続けられるようになり、取り扱い性や信頼性を向上させることができた。
【0052】
請求項1および請求項2に記載の炊飯器の蓋構造では、前記効果を奏するとともに、蒸気逃し弁からの液体吹き零れによる被害(吹き出た液体で蓋体上面が汚れる等)抑制効果や、蓋体の外観向上やデザインの変更等の意匠面の自由度増大、並びに、断熱性能の強化が行える利点がある。
【0053】
請求項1に記載の炊飯器の蓋構造では、前記効果を奏するとともに、蓋かカバーの横幅寸法を揺動開閉自在先端側ほど幅広に設定することにより、比較的損傷の可能性の高くなる箇所ほどプロテクト効果(保護効果)も高めることができる合理的なものにできた。
【0054】
炊飯器の蓋構造において、蓋カバーを、蓋ケースの溶着部に当接する脚部を有する金属板で構成するとともに、脚部には、溶けた状態の溶着部が流れ込み可能な孔を形成することにより、蓋カバーの金属板化による強度や高級感のアップを図りながら、その金属板の脚部に孔を設ける工夫により、蓋ケースの取付強度を高めることができる合理的なものにできる。
【0055】
炊飯器の蓋構造において、環状部が平面視で環状又は略環状の断熱用空間部にすると、簡単で廉価に環状部を構成することができる。
【0056】
炊飯器の蓋構造において、蓋ケースを着脱自在化にすれば、掃除等のメンテナンス性の改善、物入れ機能、並びに蓋体の有する熱を利用した予熱、保温機能が得られ、デザインバリエーションの豊富化も可能にできる。
【0057】
請求項2に記載の炊飯器の蓋構造では、請求項1の構成による前記効果を奏するとともに、蓋カバーに要求される仕上げ寸法精度が緩くなり、その分コストダウンを可能としながら、意匠性アップや外観向上が図れるようにできた。
【0058】
炊飯器の蓋構造において、蓋体上面に金属板を設けることで、デザインや意匠性の豊富化や向上が図れるとともに、内鍋や蒸気逃し弁からの熱影響を抑制して、蓋体の変形を防止して良好に機能する状態が維持でききる信頼性向上が図れるものを、少ない工程によって生産効率が改善されるようにしながら、蓋カバーと蓋ケースとを強固に一体化できる合理的なものとして提供することができる。
【0059】
炊飯器の蓋生産方法において、金属板裏面に予め合成樹脂シート層を形成しておいてから、その金属板がインサートされた蓋ケースの型成形を行うように工夫により、全く材質の異なる金属板と蓋ケースとを強固に一体化しながらも、その生産性の改善によるコストダウンも可能となる利点の多い蓋体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炊飯器の構造を示す断面図である。
【図2】参考例1による蓋体の平面図である。
【図3】図2に示す蓋体の断面図である。
【図4】蓋ケースの脚部を示す部分斜視図である。
【図5】図3に示す蓋ケースの別形状を表す断面図である。
【図6】第1実施形態による蓋体の平面図である。
【図7】図6に示す蓋体の断面図である。
【図8】参考例2による蓋体の平面図である。
【図9】図8に示す蓋体の断面図である。
【図10】参考例3による蓋体の平面図である。
【図11】図10に示す蓋体の断面図である。
【図12】参考例4による蓋体の平面図である。
【図13】図12に示す蓋体の断面図である。
【図14】第2実施形態による蓋体の平面図である。
【図15】図14に示す蓋ケースの断面図である。
【図16】蓋体の別形状を示す平面図である。
【図17】図16に示す蓋体の断面図である。
【図18】図3に示す蓋体の別構造を表す断面図である。
【符号の説明】
1 炊飯本体
5 内鍋
27 ヒンジ部
30 蓋体
31 蓋ケース
32 蒸気逃し弁
33 放熱板
35 断熱ケース部
36 蓋カバー
37 断熱用空間部
43,44 脚部
45 孔
48,49 リング部材
56 ケースカバー、金属板
59 シート層
K 環状部
Claims (2)
- 内部に内鍋が着脱自在にセットされる炊飯本体の上部開口を開閉自在な蓋体を、前記内鍋の上部開口を閉鎖自在な放熱板と、蒸気逃し弁と、これら放熱板と蒸気逃し弁とを支持し、かつ、上面部材となる蓋ケースとから構成してある炊飯器の蓋構造であって、
前記蓋ケースと前記放熱板との上下間、又は前記蓋ケース部分における前記蒸気逃し弁の周囲部分および、前記蓋ケースを部分的に下方に凹入して形成される断熱ケース部と、この断熱ケース部の上側を覆う蓋カバーとで囲まれた部分に、平面視で環状の環状部を設けてある炊飯器の蓋構造において、前記蓋カバーの横幅寸法は、前記蓋体を揺動開閉自在に支持するヒンジ部側よりも、前記ヒンジ部側と反対側のほうが広いものに構成されている炊飯器の蓋構造。 - 内部に内鍋が着脱自在にセットされる炊飯本体の上部開口を開閉自在な蓋体を、前記内鍋の上部開口を閉鎖自在な放熱板と、蒸気逃し弁と、これら放熱板と蒸気逃し弁とを支持し、かつ、上面部材となる蓋ケースとから構成してある炊飯器の蓋構造であって、
前記蓋ケースと前記放熱板との上下間、又は前記蓋ケース部分における前記蒸気逃し弁の周囲部分および、前記蓋ケースを部分的に下方に凹入して形成される断熱ケース部と、この断熱ケース部の上側を覆う蓋カバーとで囲まれた部分に、平面視で環状の環状部を設けてある炊飯器の蓋構造において、前記蓋カバーの内径側周端部又は外径側周端部を、その上面に当接する状態で上方から覆い、かつ、前記蓋ケースに固定装備されるリング部材を設けてある炊飯器の蓋構造。
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