JP3603446B2 - 液晶配向剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子の液晶配向膜を形成するために用いられる液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶表示素子としては、透明導電膜が設けられている基板の当該表面に液晶配向膜を形成して液晶表示素子用基板とし、その2枚を対向配置して、その間隙内に正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、当該液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにした、いわゆるTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型液晶表示素子が知られている。また、最近においては、TN型液晶表示素子に比してコントラストが高くて、その視角依存性の少ないSTN(Super Twisted Nematic)型液晶表示素子が開発されている。このSTN型液晶表示素子は、ネマチック型液晶に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶として用い、当該液晶分子の長軸が基板間で180度以上にわたって連続的に捻れる状態となることにより生じる複屈折効果を利用するものである。これらの液晶表示素子における液晶の配向は、通常、基板上に形成された樹脂膜の表面にラビング処理などの配向処理を施すことによって形成される液晶配向膜により発現されるものである。ここに、前記樹脂膜を構成する樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどが知られており、これらの樹脂のうち、特にポリイミドは、耐熱性、液晶との親和性、機械的強度などに優れているため、液晶表示素子における液晶配向膜の構成材料として多用されている。また、液晶配向膜となる樹脂膜の形成方法としては、上記樹脂を溶媒に溶解してなる液晶配向剤を基板上に塗布し、塗膜を乾燥する方法が一般的に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリイミドなどを含有する従来の液晶配向剤によって液晶配向膜を形成し、当該液晶配向膜が形成された基板を用いて液晶表示素子を作製する場合に、当該液晶表示素子が高い電圧保持率を有するものとならないという問題がある。また、従来公知の液晶配向剤を塗布・乾燥して形成される樹脂膜は均一な膜厚を有するものとならず、当該樹脂膜から形成される液晶配向膜の膜厚のバラツキにより、液晶表示素子の表示特性および電気特性が悪影響を受けるという問題がある。さらに、従来公知の液晶配向剤は、経時的な粘度変化が生じて保存安定性に劣るという問題もある。
【0004】
本発明の第1の目的は、形成される樹脂膜を配向処理することにより、液晶分子の配向能が確実に付与された液晶配向膜を形成することができ、当該液晶配向膜を備えた液晶表示素子において、優れた液晶配向性を発現させることができる液晶配向剤を提供することにある。本発明の第2の目的は、形成される液晶配向膜を備えた液晶表示素子において、高い電圧保持率を発現させることができる液晶配向剤を提供することにある。本発明の第3の目的は、形成される樹脂膜の膜厚均一性に優れ、当該樹脂膜から形成される液晶配向膜を備えた液晶表示素子に、優れた表示特性および電気特性を発現させることができる液晶配向剤を提供することにある。本発明の第4の目的は、保存安定性に優れた液晶配向剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶配向剤は、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させることにより得られるポリアミック酸(以下「ポリアミック酸(A)」ともいう)、および当該ポリアミック酸を脱水閉環させて得られるイミド化重合体(以下「イミド化重合体(B)」ともいう)から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤であって、 前記テトラカルボン酸二無水物は、後記式(8)〜式(17)で表されるテトラカルボン酸二無水物(以下「特定テトラカルボン酸二無水物」ともいう)の少なくとも1種を含有するものであり、
前記ジアミン化合物は、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)および後記式(18)〜(24)で表される化合物から選ばれたものであることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の液晶配向剤は、特定テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種を含有するテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させることにより得られるポリアミック酸(A)、および/または当該ポリアミック酸(A)を脱水閉環させて得られるイミド化重合体(B)を含有してなる。
【0009】
<特定テトラカルボン酸二無水物>
ポリアミック酸(A)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物には、特定テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種が含有されている。この特定テトラカルボン酸二無水物は、下記式(8)〜(17)で示される化合物であり、これらの化合物は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
特定テトラカルボン酸二無水物を使用して合成される重合体〔ポリアミック酸(A)および/またはイミド化重合体(B)〕の少なくとも1種を樹脂成分として液晶配向剤を調製することにより、得られる液晶配向剤の保存安定性の向上、当該液晶配向剤により形成される樹脂膜(液晶配向膜)の膜厚均一性の向上、当該液晶配向膜を備えた液晶表示素子における電圧保持率の向上を図ることができる。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
<併用可能なテトラカルボン酸二無水物>
ポリアミック酸(A)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物は、その全てが特定テトラカルボン酸二無水物により構成されていてもよいが、本発明の効果が損なわれない範囲内において、特定テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を併用することもできる。ここで、合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物に占める特定テトラカルボン酸二無水物の含有割合は、通常10〜100モル%とされ、好ましくは20〜100モル%とされる。
【0013】
併用することのできるテトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−7−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−エチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンなどの脂環式または脂肪族テトラカルボン酸二無水物;
【0014】
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アンヒドロトリメリテート)、3,6−ビス(アンヒドロトリメリテート)コレスタンなどの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0015】
これらのうち、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物および1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が、特に良好な液晶配向性を発現させることができることから好ましい。
これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0016】
<ジアミン化合物>
ポリアミック酸(A)の合成反応に供されるジアミン化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、2,7−ジアミノフルオレンなどの芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェンなどのヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7 ]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族ジアミンまたは脂環式ジアミン;下記式(18)〜(24)で表されるステロイド骨格を含有するジアミン化合物;下記式(25)で表されるジアミノオルガノシロキサンを挙げることができる。
【0017】
【化5】
【0018】
【化6】
【0019】
【化7】
【0020】
〔式(25)中、R6 は炭素数1〜12の炭化水素基を示し、pは1〜3の整数であり、qは1〜20の整数である。〕
【0021】
これらのうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)および上記式(18)〜(24)で表されるジアミンは、特に良好な液晶配向性を発現させることができることから好ましい。
【0022】
これらのジアミン化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらのジアミン化合物は、市販品をそのまま使用しても、市販品を再還元してから使用してもよい。
【0023】
<ポリアミック酸(A)>
本発明の液晶配向剤を構成するポリアミック酸(A)は、特定テトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種を含有するテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させることにより合成される。
【0024】
ポリアミック酸(A)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.4当量となる割合である。使用割合をこのような範囲に規定することにより、好適な分子量のポリアミック酸(A)が得られ、これにより、調製される液晶配向剤に優れた塗布性を発現させることができる。
【0025】
ポリアミック酸(A)の合成反応は、有機溶媒中において、通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。反応温度が0℃未満であると、反応物質(テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物)の溶解性が低下する傾向があり、反応温度が150℃を超えると、得られるポリアミック酸(A)の分子量が低下する傾向がある。
【0026】
ポリアミック酸(A)の合成に用いられる有機溶媒としては、反応物質および生成するポリアミック酸(A)を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばγ−ブチロラクトン,N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)としては、反応物質の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0027】
なお、前記有機溶媒には、ポリアミック酸(A)の貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸(A)が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコール−i−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコール−n−ヘキシルエーテルアセテート、プレピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−エチル−3−メトキシブタノール、2−メチル−2−メトキシブタノール、2−エチル−2−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−エチル−3−エトキシブタノール、2−メチル−2−メトキシブタノール、2−エチル−2−エトキシブタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
【0028】
以上の合成反応によって、ポリアミック酸(A)を溶解してなる反応溶液が得られる。そして、この反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することによりポリアミック酸(A)を得ることができる。また、このポリアミック酸(A)を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出させる工程を1回または数回行うことにより、ポリアミック酸(A)の精製を行うことができる。
【0029】
以上のようにして得られるポリアミック酸(A)は、その対数粘度(ηln)の値が0.05〜10dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5dl/gとされる。なお、この明細書における重合体の対数粘度(ηln)の値は、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として用い、濃度が0.5g/100ミリリットルである溶液について30℃で粘度の測定を行い、下記数式によって求められるものである。
【0030】
【数1】
【0031】
<イミド化重合体(B)>
本発明の液晶配向剤を構成するイミド化重合体(B)は、下記方法(1)〜(3)により調製することができる。なお、該イミド化重合体は、一般的にはポリイミドを意味するが、下記方法(2)において、ポリイソイミドが生成する場合があり、本明細書におけるイミド化重合体は「ポリイミド」と「ポリイソイミド」とを意味するが、合成の容易性からポリイミドであることが好ましい。
【0032】
方法(1):上記ポリアミック酸(A)を加熱する方法。
この方法における反応温度は、通常60〜250℃とされ、好ましくは100〜170℃とされる。反応温度が60℃未満では脱水閉環が十分に進行せず、反応温度が250℃を超えると得られるイミド化重合体(B)の分子量が低下する傾向がある。
【0033】
方法(2):上記ポリアミック酸(A)を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法。
この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸(A)の繰り返し単位1モルに対して1.6〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの第3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。なお、脱水閉環に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸(A)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環の反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは60〜150℃とされる。また、このようにして得られる反応溶液に対し、ポリアミック酸(A)の精製方法と同様の操作を行うことにより、イミド化重合体(B)を精製することができる。
【0034】
方法(3):テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネート化合物とを混合し、必要に応じて加熱することによって縮合させる方法。
この方法に使用されるジイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;ジフェニルメタン−4,4’ −ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’ −ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’ −ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4’ −ジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタン−p,p’ −ジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−p,p’ −ジイソシアネート、2,2−ジフェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−p,p’ −ジイソシアネート、2,2−ジフェニルブタン−p,p’ −ジイソシアネート、ジフェニルジクロロメタン−4,4’ −ジイソシアネート、ジフェニルフルオロメタン−4,4’ −ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’ ジイソシアネート、N−フェニル安息香酸アミド−4,4’ −ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物を挙げることができ、これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、この方法には特に触媒は必要とされず、反応温度は、通常50〜200℃、好ましくは100〜160℃である。
【0035】
以上のようにして得られるイミド化重合体(B)は、その対数粘度(ηln)の値が0.05〜10dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜5dl/gとされる。
【0036】
本発明の液晶配向剤を構成する重合体〔ポリアミック酸(A)および/またはイミド化重合体(B)〕は、末端修飾型のものであってもよい。末端修飾型のポリアミック酸(A)およびイミド化重合体(B)を用いることにより、分子量が調節され、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型のものは、ポリアミック酸(A)を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物およびモノイソシアネート化合物を反応系に添加することにより合成することができる。
【0037】
ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0038】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸(A)およびイミド化重合体(B)から選ばれる少なくとも1種の重合体が有機溶媒中に溶解含有されて構成される。この液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、ポリアミック酸(A)の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、ポリアミック酸(A)の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
【0039】
本発明の液晶配向剤を構成する重合体〔ポリアミック酸(A)および/またはイミド化重合体(B)〕の濃度は、粘性、揮発性などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲とされる。すなわち、本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、塗膜を乾燥することにより、液晶配向膜となる樹脂膜が形成されるが、重合体の濃度が1重量%未満である場合には、この樹脂膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができず、重合体の濃度が10重量%を超える場合には、樹脂膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が劣るものとなる。
【0040】
本発明の液晶配向剤には、ポリアミック酸(A)および/またはイミド化重合体(B)の基板表面に対する接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。かかる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0041】
<液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えば印刷法によって塗布し、次いで、塗膜面を加熱することにより有機溶媒を除去して樹脂膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2 )からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2 O3 −SnO2 )からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法が用いられる。なお、液晶配向剤の塗布方法としては、印刷法のほか、ロールコーター法、スピンナー法などを適用することもできる。
【0042】
液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜に対する樹脂膜の接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。加熱温度は80〜250℃とされ、好ましくは120〜200℃とされる。形成される樹脂膜の膜厚は、通常0.001〜1μmであり、好ましくは0.005〜0.5μmである。なお、ポリアミック酸(A)を含有する本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって液晶配向膜となる樹脂膜を形成するが、さらに当該樹脂膜を加熱することによって脱水閉環を進行させ、イミド化された樹脂膜とすることもできる。
【0043】
(2)基板表面に形成された樹脂膜面を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能が樹脂膜に付与されて液晶配向膜となる。また、ラビング処理による方法以外に、樹脂膜表面に偏光紫外線を照射して配向能を付与する方法や、一軸延伸法、ラングミュア・ブロジェット法などで樹脂膜を得る方法などにより、液晶配向膜を形成することもできる。
【0044】
なお、上記のようにして形成された液晶配向膜に、紫外線を部分的に照射することによってプレチルト角を変化させるような処理(例えば特開平6−222366号公報,特開平6−281937号公報参照)、液晶配向膜の表面にレジスト膜を部分的に形成し、先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後に前記レジスト膜を除去して、液晶配向膜の配向能を変化させるような処理(特開平5−107544号公報参照)を施すことにより、液晶表示素子の視野角特性を改善することができる。
【0045】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向、すなわち配向処理方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
【0046】
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができ、その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
また、液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、▲1▼ 樹脂膜の膜厚均一性、▲2▼ 液晶表示素子の液晶配向性、▲3▼ 液晶表示素子の電圧保持率、▲4▼ 液晶配向剤の保存安定性について評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0048】
〔樹脂膜の膜厚均一性〕
液晶配向剤を基板表面に印刷塗布し、塗膜を乾燥して形成された樹脂膜について、触針式の膜厚計「アルファステップ」(米国TENCOR INSTRUMENTS社製)を用いて測定し、当該樹脂膜の膜厚の平均値および最大較差(最大膜厚と最小膜厚との差)を求めることにより評価した。
【0049】
〔液晶表示素子の液晶配向性〕
電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの発生の有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判定した。
【0050】
〔液晶表示素子の電圧保持率〕
90℃の恒温槽内に設置させた液晶表示素子に5Vの電圧を印加した後、当該電圧の印加を解除してから16.7×10−3秒経過後における電圧保持率を「VHR−1」〔(株)東陽テクニカ製〕を用いて測定した。
【0051】
〔液晶配向剤の保存安定性〕
5℃の恒温槽内に液晶配向剤を6カ月間放置し、放置前と放置後のそれぞれにおける液晶配向剤の粘度をE型粘度計を用いて測定した。
【0052】
〔合成例1〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物30.23g(0.10モル)とp−フェニレンジアミン10.45g(0.097モル)と3,5−ジアミノ安息香酸コレステリル1.56g(0.003モル)とをN−メチル−2−ピロリドン300gに溶解させ、室温で6時間反応させた。
次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、沈殿物を分離してメチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、対数粘度(ηln)0.86dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−1)」とする。〕38.44gを得た。
【0053】
〔合成例2〕
合成例1で得られたポリアミック酸(A−1)30.0gをγ−ブチロラクトン570gに溶解し、この溶液にピリジン34.41gと無水酢酸26.62gとを添加し、110℃で3時間加熱することにより脱水閉環させた。
次いで、合成例1と同様にして、反応生成物の沈殿・分離・洗浄・乾燥を行うことにより、対数粘度(ηln)0.91dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−1)」とする。〕27.0gを得た。
【0054】
〔合成例3〕
p−フェニレンジアミンに代えて4,4’−ジアミノジフェニルメタン19.23g(0.097モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.78dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−2)」とする。〕45.41gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−2)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.85dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−2)」とする。〕26.2gを得た。
【0055】
〔合成例4〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(9)で表される特定テトラカルボン酸二無水物45.45g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.93dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−3)」とする。〕52.29gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−3)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.95dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−3)」とする。〕28.2gを得た。
【0056】
〔合成例5〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(10)で表される特定テトラカルボン酸二無水物27.63g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.98dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−4)」とする。〕35.51gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−4)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.99dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−4)」とする。〕28.4gを得た。
【0057】
〔合成例6〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(11)で表される特定テトラカルボン酸二無水物30.03g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.91dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−5)」とする。〕38.41gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−5)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.92dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−5)」とする。〕28.2gを得た。
【0058】
〔合成例7〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(12)で表される特定テトラカルボン酸二無水物37.64g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.93dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−6)」とする。〕45.41gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−6)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.94dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−6)」とする。〕28.1gを得た。
【0059】
〔合成例8〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(13)で表される特定テトラカルボン酸二無水物45.54g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.88dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−7)とする。」〕53.31gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−7)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.89dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−7)」とする。〕28.3gを得た。
【0060】
〔合成例9〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(14)で表される特定テトラカルボン酸二無水物27.62g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.95dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−8)とする。」〕35.47gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−8)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.99dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−8)」とする。〕28.0gを得た。
【0061】
〔合成例10〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(15)で表される特定テトラカルボン酸二無水物40.04g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.92dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−9)」とする。〕48.48gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−9)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.94dl/gのイミド化重合体(B)〔これを「イミド化重合体(B−9)」とする。〕28.3gを得た。
【0062】
〔合成例11〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(16)で表される特定テトラカルボン酸二無水物27.83g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.79dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−10)とする。」〕35.21gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−10)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.84dl/gのイミド化重合体〔これを「イミド化重合体(B−10)」とする。〕28.1gを得た。
【0063】
〔合成例12〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えて、上記式(17)で表される特定テトラカルボン酸二無水物27.42g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)0.93dl/gのポリアミック酸(A)〔これを「ポリアミック酸(A−11)とする。」〕35.21gを得た。
次いで、ポリアミック酸(A−1)に代えてポリアミック酸(A−11)30.0gを使用したこと以外は合成例2と同様にして、対数粘度(ηln)0.88dl/gのイミド化重合体〔これを「イミド化重合体(B−11)」とする。〕28.4gを得た。
【0064】
〔比較合成例1〕
上記式(8)で表される特定テトラカルボン酸二無水物に代えてピロメリット酸二無水物21.81g(0.10モル)を使用したこと以外は合成例1と同様にして、対数粘度(ηln)1.78dl/gのポリアミック酸〔これを「ポリアミック酸(a−1)とする。」〕43.21gを得た。
【0065】
〔実施例1〕
(1)液晶配向剤の調製:
合成例1で得られたポリアミック酸(A−1)5.0gをγ−ブチロラクトン120gに溶解させて固形分濃度4.0重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより本発明の液晶配向剤を調製した。なお、得られた液晶配向剤の粘度を測定したところ33cPであった。
【0066】
(2)樹脂膜の形成:
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明電極上に、上記のようにして調製された本発明の液晶配向剤を塗布用印刷機を用いて塗布し、塗膜を180℃で1時間乾燥(溶媒除去)することにより樹脂膜を形成した。この樹脂膜は、膜厚の平均値が500Å、膜厚の最大較差が15Åであり、膜厚均一性に優れているものであった。
【0067】
(3)液晶配向膜の形成:
形成された樹脂膜の表面を、レーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いてラビング処理を行うことにより、液晶分子の配向能を樹脂膜に付与して液晶配向膜を形成した。ここに、ラビング処理条件は、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmとした。
【0068】
(4)液晶表示素子の作製:
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの基板の外縁部に、直径5μmの酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂系接着剤をスクリーン印刷法により塗布した後、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交するように2枚の基板を間隙を介して対向配置し、外縁部同士を当接させて圧着して接着剤を硬化させた。
基板表面および外縁部の接着剤により区画されたセルギャップ内に、ネマティック型液晶「MLC−2001」(メルク・ジャパン社製)を注入充填し、次いで、注入孔をエポキシ系接着剤で封止して液晶セルを構成した。その後、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面に、偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致するように偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を作製した。
【0069】
(5)液晶表示素子の評価:
以上のようにして作製された液晶表示素子は、動作電圧をオン・オフしたときの異常ドメインは認められず、良好な液晶配向性を有するものであった。また、この液晶表示素子の電圧保持率は97.3%と高い値を示した。
【0070】
(6)液晶配向剤の保存安定性:
上記(1)により調製された液晶配向剤を5℃の恒温槽内に6カ月間放置し、粘度を測定したところ33cPと放置前と同一の粘度であった。従って、この実施例により得られた液晶配向剤は、保存安定性に優れているものであることが確認された。
【0071】
〔実施例2〜12〕
下記表1に示す処方に従って、ポリアミック酸(A−1)に代えて、合成例2〜12により得られたイミド化重合体(B)5.0gを使用したこと以外は実施例1と同様にして、本発明の液晶配向剤を調製し、当該液晶配向剤による液晶配向膜を備えた液晶表示素子を作製した。各実施例における、樹脂膜の膜厚均一性、液晶表示素子の液晶配向性、液晶表示素子の電圧保持率および液晶配向剤の保存安定性についての評価結果を実施例1の評価結果と併せて表1に示す。
【0072】
〔比較例1〕
下記表1に示す処方に従って、ポリアミック酸(A−1)に代えて、比較合成例1により得られたポリアミック酸(a−1)5.0gを使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較用の液晶配向剤を調製し、当該液晶配向剤による液晶配向膜を備えた液晶表示素子を作製した。この比較例における、樹脂膜の膜厚均一性、液晶表示素子の液晶配向性、液晶表示素子の電圧保持率および液晶配向剤の保存安定性についての評価結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【発明の効果】
(1)本発明の液晶配向剤によれば、膜厚の均一性に優れた樹脂膜を形成することができる。
(2)本発明の液晶配向剤により形成される樹脂膜を配向処理することにより、液晶分子の配向能が確実に付与された液晶配向膜を形成することができる。
(3)本発明の液晶配向剤により形成される液晶配向膜を備えた液晶表示素子は、優れた液晶配向性を有するとともに、高い電圧保持率を有するものとなる。
(4)本発明の液晶配向剤は、長期間保存しても粘度が変化せず、保存安定性に優れている。
【0075】
本発明の液晶配向剤により形成される液晶配向膜は、TN型液晶表示素子、STN型液晶表示素子のみならずSH(Super Homeotropic)型液晶表示素子、強誘電性液晶表示素子および反強誘電性液晶表示素子など種々の液晶表示素子を構成するために好適に使用することができる。また、当該液晶配向膜を備えた液晶表示素子は、液晶の配向性および信頼性にも優れ、種々の装置に有効に使用することができ、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶テレビなどの表示装置として好適に用いることができる。
Claims (1)
- テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン化合物とを反応させることにより得られるポリアミック酸、および当該ポリアミック酸を脱水閉環させて得られるイミド化重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤であって、
前記テトラカルボン酸二無水物は、下記式(8)〜式(17)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1種を含有するものであり、
前記ジアミン化合物は、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)および下記式(18)〜(24)で表される化合物から選ばれたものであることを特徴とする液晶配向剤。
Priority Applications (1)
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