JP3550762B2 - 液晶配向剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液晶表示素子の液晶配向膜を形成するために用いる液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、塗膜表面をラビング処理する際に発生する静電気を速やかに除去することができ、形成される液晶配向膜の表面にラビング処理に伴う傷(以下「ラビング傷」という)がつきにくく、液晶配向性に優れた液晶表示素子を構成することができ、保存安定性にも優れた液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明導電膜を介して液晶配向膜が表面に形成されている2枚の基板の間に、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、前記液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにしたTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型表示素子が知られている。また、最近、TN型表示素子におけるコントラストおよび視角依存性が改善されたSTN(Super Twisted Nematic)型表示素子が開発された。このSTN型表示素子は、ネマチック型液晶物質に光学活性物質であるカイラル剤をブレンドしたものを液晶材料として用い、当該液晶分子の長軸が基板間で連続的に180〜270度にわたって捻れるようにしたことにより生じる複屈折効果を利用するものである。
【0003】
しかして、TN型表示素子、STN型表示素子などの液晶表示素子における液晶の配向は、通常、ラビング処理により液晶分子の配向能が付与された液晶配向膜により実現される。ここに、液晶表示素子を構成する液晶配向膜の材料としては、従来より、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの樹脂が知られている。特にポリイミドは、耐熱性、液晶との親和性、機械的強度などに優れているため多くの液晶表示素子に使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、樹脂表面をラビング処理する際に静電気が発生し、この静電気によって、液晶表示素子を駆動させる電極である透明導電膜や液晶表示素子を駆動させる回路に組み込まれたトランジスタが破損してしまう、という問題がある。また、形成される液晶配向膜の表面にラビング傷が生じ、このラビング傷によって液晶分子の配向が乱され、液晶表示素子の表示不良を招く、という問題もある。
このため、塗膜表面をラビング処理する際に発生する静電気を速やかに除去することができ、ラビング傷がつきにくい塗膜を形成することができる液晶配向剤の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基いてなされたものであって、本発明の第1の目的は、ラビング処理の際に発生する静電気を速やかに除去することが可能な塗膜(配向膜材料)を形成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ラビング処理によって、液晶配向性を阻害するラビング傷がつきにくい塗膜を形成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第3の目的は、ラビング処理によって液晶分子の配向能が確実に付与され、優れた液晶配向性を有する液晶表示素子を構成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第4の目的は、保存安定性に優れた液晶配向剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の液晶配向剤は、〔A〕下記式(1)で示されるテトラカルボン酸の二無水物〔以下「化合物(A)」ともいう〕70〜95モル%、および、〔B〕下記一般式(I)で示される少なくとも1種の芳香環含有テトラカルボン酸二無水物〔以下「化合物(B)」ともいう〕30〜5モル%からなるテトラカルボン酸二無水物と、〔C〕下記一般式(II)で示される少なくとも1種のジアミン化合物〔以下「化合物(C)」ともいう〕とを反応させることにより得られるポリアミック酸〔以下「重合体P」ともいう〕およびそのイミド化重合体〔以下「重合体Q」ともいう〕の少なくとも一方を含有していることを特徴とする。
【0007】
【化4】
【0008】
【化5】
〔上記一般式(I)中、R1 は芳香環を含有する4価の有機基を表す。〕
【0009】
【化6】
〔上記一般式(II)中、R2 は2価の有機基を表す。〕
【0010】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の液晶配向剤は、化合物(A)および化合物(B)からなるテトラカルボン酸二無水物と、化合物(C)とを反応させることにより得られる重合体Pおよび/または重合体Qを含有している。
【0011】
<化合物(A)>
重合体Pの合成に供される化合物(A)は、上記の式(1)で示されるテトラカルボン酸を脱水することなどによって製造することができる。この式(1)で示される2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸の二無水物は、これを用いて調製される液晶配向剤によって形成される液晶配向膜が長期にわたって良好な液晶配向性を有するものとなる。
【0012】
<化合物(B)>
重合体Pの合成に供される化合物(B)は、上記の一般式(I)で示されるテトラカルボン酸二無水物であり、その分子構造中に芳香環を含有する化合物である。化合物(B)が含有する芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などが挙げられる。この化合物(B)としては、1〜9個のベンゼン環または1個のナフタレン環を分子構造中に含有する化合物が好ましく使用される。
【0013】
斯かる化合物(B)の具体例としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
これらの化合物のうち、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンは、これらを用いて調製される液晶配向剤によって形成される液晶配向膜が長期にわたって良好な液晶配向性を有するものとなることから特に好ましい。
【0015】
重合体Pの合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物において、化合物(B)の占める割合は、5〜30モル%とされ、好ましくは5〜20モル%とされる。
化合物(B)の割合が5モル%未満である場合には、得られる液晶配向剤より形成される塗膜において、ラビング処理の際に発生する静電気を速やかに除去することができず、また、当該塗膜から形成される液晶配向膜の表面にラビング傷がつきやすい。一方、この割合が30モル%を超える場合には、得られる液晶配向剤は保存安定性に劣るものとなる。また、この割合が20モル%以下の場合には、長々期にわたる保存が可能で保存安定性に極めて優れたものとなる。
【0016】
<化合物(C)>
重合体Pの合成に供される化合物(C)は、上記の一般式(II)で示されるジアミン化合物である。
【0017】
斯かる化合物(C)の具体例としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミン類;ジアミノテトラフェニルチオフェンなどのヘテロ原子を有する芳香族ジアミン類;1,1−メタキシリレンジアミン、1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02.7 ]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族または脂環族ジアミン類;さらに、下記の一般式で示されるジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらジアミン化合物は市販品をそのまま使用してもよいし、市販品を再還元してから使用してもよい。
【0018】
【化7】
〔式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基などから選ばれたアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基またはフェニル基などのアリール基のような炭素数1〜12の炭化水素基を示す。mは1〜3の整数であり、nは1〜20の整数であり、rは1〜3の整数である。〕
【0019】
これらの化合物のうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリンなどは、これらを用いて調製される液晶配向剤によって形成される液晶配向膜が長期にわたって良好な液晶配向性を有するものとなることから特に好ましい。
【0020】
<反応原料の使用割合>
重合体Pの合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物〔化合物(A)および化合物(B)〕と、ジアミン化合物〔化合物(C)〕との使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.4当量となる割合である。テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基の割合が0.2当量未満の場合および2当量を超える場合のいずれにおいても、得られる重合体Pの分子量が小さくなりすぎ、液晶配向剤の塗布性が劣るものとなる。
【0021】
<重合体Pの合成>
本発明の液晶配向剤を構成する重合体Pは、テトラカルボン酸二無水物〔化合物(A)および化合物(B)〕と、ジアミン化合物〔化合物(C)〕との反応により合成される。重合体Pの合成反応は、有機溶媒中において、通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。
【0022】
重合体Pの合成に用いられる有機溶媒としては、当該重合体Pを溶解し得るものであれば特に制限はなく、例えばγ−ブチロラクトン,N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。
有機溶媒の使用量(a)としては、反応原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0023】
なお、前記有機溶媒には、重合体Pの貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類を、生成する重合体Pが析出しない範囲で併用することができる。斯かる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコール−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコール−i−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、エチレングリコール−n−ヘキシルエーテルアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
【0024】
以上のようにして、重合体Pを溶解してなる重合体溶液が得られる。そして、この重合体溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することにより重合体Pを得ることができる。また、この重合体Pを再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出する工程を1回または数回行うことにより、重合体Pの精製を行うことができる。
【0025】
<重合体Q>
本発明の液晶配向剤を構成する重合体Qは、ポリアミック酸である重合体Pをイミド化反応に供することにより得られるイミド化重合体である。
イミド化反応は、重合体Pを加熱することにより、または、重合体Pを有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤およびイミド化触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。
【0026】
重合体Pを加熱する方法における反応温度は、通常60〜200℃とされ、好ましくは100〜170℃とされる。反応温度が60℃未満ではイミド化反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が小さくなることがある。
【0027】
一方、重合体Pの溶液中に脱水剤およびイミド化触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、重合体Pの繰り返し単位1モルに対して1.6〜20モルとするのが好ましい。また、イミド化触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。なお、イミド化反応に用いられる有機溶媒としては、重合体Pの合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。イミド化反応の反応温度は、通常0〜180℃、好ましくは60〜150℃とされる。また、このようにして得られる重合体溶液に対し、重合体Pの精製方法と同様の操作を行うことにより、重合体Qを精製することができる。
【0028】
<重合体の固有粘度>
以上のようにして得られる重合体Pおよび重合体Qの固有粘度(30℃,N−メチル−2−ピロリドン中で測定。以下において同じ。)は、通常0.05〜10dl/g、好ましくは0.05〜5dl/gである。
【0029】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、重合体Pおよび/または重合体Qが有機溶媒中に含有されて構成される。
本発明の液晶配向剤を構成する有機溶媒としては、重合体Pの合成反応やイミド化反応に用いられるものとして例示した非プロトン系極性溶媒やフェノール系溶媒を挙げることができる。また、重合体Pの合成の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
【0030】
本発明の液晶配向剤における重合体Pおよび/または重合体Qの濃度は、粘性、揮発性、環境への影響などを考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲とされる。
すなわち、重合体溶液からなる液晶配向剤は、印刷法、スピンコート法などにより基板表面に塗布され、次いで、これを乾燥することにより、配向膜材料である塗膜が形成されるのであるが、重合体濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得ることができない。一方、重合体濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得ることができず、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性に劣るものとなる。
【0031】
本発明の液晶配向剤を構成する重合体Pおよび/または重合体Qは、末端修飾型の重合体であってもよい。この末端修飾型の重合体は、分子量が調節され、本発明の効果が損われることなく、液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。末端修飾型の重合体は、重合体Pを合成する際に、酸無水物やモノアミン化合物を反応系に添加することにより合成することができる。
【0032】
末端修飾型の重合体を得るために重合体Pを合成する際の反応系に添加される酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができ、また、反応系に添加されるモノアミンとしては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。
【0033】
本発明の液晶配向剤は、重合体Pおよび/または重合体Qを含有するものであるが、基板表面との接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物が含有されていてもよい。
【0034】
斯かる官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。さらに、特開昭63ー291922号公報に記載されているテトラカルボン酸二無水物とアミノ基含有シラン化合物との反応物などが含有されていてもよい。
【0035】
<液晶表示素子の製造>
本発明の液晶配向剤を用いて得られる液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
【0036】
(1)透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤を例えば印刷法によって塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックなどからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられた透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2 )からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2 O3 −SnO2 )からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や予めマスクを用いる方法などが用いられる。液晶配向剤の塗布方法としては、印刷法のほか、ロールコーター法、スピンナー法などの方法も用いることができる。
液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板の一面および透明導電膜上に、官能性シラン含有化合物、官能性チタン含有化合物などを予め塗布することもできる。加熱温度は80〜200℃とされ、好ましくは120〜200℃とされる。形成される塗膜の膜厚は、通常0.001〜1μmであり、好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0037】
(2)形成された塗膜面を、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を行う。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。
【0038】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交または逆平行となるように、2枚の基板を、間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填し、注入孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面側に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子が得られる。
ここに、シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶材料としては、ネマティック型液晶およびスメクティック型液晶を挙げることができ、その中でもネマティック型液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック型液晶や商品名「C−15」「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例により作製された各液晶表示素子についての、▲1▼ 液晶配向膜の帯電減衰特性、▲2▼ 液晶配向膜におけるラビング傷の発生状況、▲3▼ 液晶の配向性、▲4▼ 液晶配向剤の保存安定性の評価方法は、以下のとおりである。
【0040】
〔液晶配向膜の帯電減衰特性〕
液晶配向膜表面の帯電圧を、ラビング処理直後から経時的に測定し、ラビング処理直後における帯電圧の半減期を求めた。なお、帯電圧の測定はオネストメータ〔春日電気(株)製〕により行った。
【0041】
〔液晶配向膜におけるラビング傷の発生状況〕
ラビング処理後の液晶配向膜の表面を光学顕微鏡(倍率100倍)で観察し、ラビング処理によるラビング傷の発生の有無を調べた。
【0042】
〔液晶の配向性〕
電圧をオン・オフさせた時の液晶セル中の異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判定した。
【0043】
〔液晶配向剤の保存安定性〕
液晶配向剤を−15℃の冷凍庫内に30日間保管し、液晶配向剤中にゲルが発生していない場合を「良好」と判定した。
【0044】
合成例1〔重合体(P−1)〕
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物38.1g〔化合物(A),0.17モル〕と、ピロメリット酸二無水物6.5g〔化合物(B),0.03モル〕と、p−フェニレンジアミン21.6g〔化合物(C),0.20モル〕とをN−メチル−2−ピロリドン1000gに溶解させ、室温で6時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、固有粘度が1.54dl/gのポリアミック酸〔これを「重合体(P−1)」とする〕62.9gを得た。
【0045】
合成例2〔重合体(Q−1)〕
合成例1で得られた重合体(P−1)30.0gをγ−ブチロラクトン570gに溶解し、この溶液に、ピリジン21.6gと、無水酢酸16.74gとを添加し、120℃で3時間加熱することによりイミド化反応させた。次いで、反応生成液を合成例1と同様にして沈澱させ、固有粘度が1.45dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−1)」とする〕28.0gを得た。
【0046】
合成例3〔重合体(P−2),重合体(Q−2)〕
化合物(A)の使用量を42.6g(0.19モル)に変更し、化合物(B)の使用量を2.2g(0.01モル)に変更したこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−2)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−2)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.36dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−2)」とする〕27.2gを得た。
【0047】
合成例4〔重合体(P−3),重合体(Q−3)〕
化合物(A)の使用量を35.8g(0.16モル)に変更し、化合物(B)の使用量を8.7g(0.04モル)に変更したこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−3)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−3)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.56dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−3)」とする〕27.3gを得た。
【0048】
合成例5〔重合体(P−4),重合体(Q−4)〕
化合物(C)として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン39.6g(0.20モル)を用いたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−4)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−4)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.38dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−4)」とする〕27.3gを得た。
【0055】
合成例6〔重合体(P−5),重合体(Q−5)〕
化合物(B)として、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物9.7g(0.03モル)を用いたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−5)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−5)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.46dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−5)」とする〕27.9gを得た。
【0056】
合成例7〔重合体(P−6),重合体(Q−6)〕
化合物(B)として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.8g(0.03モル)を用いたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−6)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−6)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.53dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−6)」とする〕28.3gを得た。
【0057】
合成例8〔重合体(P−7),重合体(Q−7)〕
化合物(B)として、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物8.0g(0.03モル)を用いたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−7)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−7)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.23dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−7)」とする〕28.0gを得た。
【0058】
合成例9〔重合体(P−8),重合体(Q−8)〕
化合物(B)として、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物8.0g(0.03モル)を用いたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−8)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−8)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.22dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−8)」とする〕28.0gを得た。
【0059】
合成例10〔重合体(P−9),重合体(Q−9)〕
化合物(B)として、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン9.0g(0.03モル)を用いたこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−9)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−9)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.21dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−9)」とする〕27.0gを得た。
【0065】
合成例11〔重合体(P−10),重合体(Q−10)〕
化合物(A)の使用量を31.4g(0.14モル)に変更し、化合物(B)の使用量を13.1g(0.06モル)に変更したこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(P−10)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(P−10)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.66dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(Q−10)」とする〕28.3gを得た。
【0066】
合成例12〔重合体(p−11),重合体(q−11)〕
化合物(A)の使用量を44.8g(0.20モル)に変更し、化合物(B)を用いなかったこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(p−11)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(p−11)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.36dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(q−11)」とする〕27.2gを得た。
【0067】
合成例13〔重合体(p−12),重合体(q−12)〕
化合物(A)の使用量を22.4g(0.10モル)に変更し、化合物(B)の使用量を21.8g(0.10モル)に変更したこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(p−12)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(p−12)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.77dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(q−12)」とする〕28.7gを得た。
【0068】
合成例14〔重合体(p−13),重合体(q−13)〕
化合物(A)の使用量を29.1g(0.13モル)に変更し、化合物(B)の使用量を15.3g(0.07モル)に変更したこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(p−13)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(p−13)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.78dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(q−13)」とする〕28.4gを得た。
【0069】
合成例15〔重合体(p−14),重合体(q−14)〕
化合物(A)の使用量を43.7g(0.195モル)に変更し、化合物(B)の使用量を1.1g(0.005モル)に変更したこと以外は合成例1と同様にしてポリアミック酸〔これを「重合体(p−14)」とする〕を得た。
次いで、重合体(P−1)に代えて重合体(p−14)を用いたこと以外は合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度が1.34dl/gのイミド化重合体〔これを「重合体(q−14)」とする〕27.1gを得た。
【0070】
<実施例1>
(1)液晶配向剤の調製
合成例1で得られた重合体(P−1)をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて固形分濃度4重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過して本発明の液晶配向剤を調製した。この液晶配向剤の保存安定性の結果を表1に示す。
【0071】
(2)液晶表示素子の作製
▲1▼ ガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、液晶配向膜塗布用の印刷機を用いて本発明の液晶配向剤を塗布し、180℃で1時間乾燥することにより乾燥膜厚0.05μmの塗膜を形成した。
【0072】
▲2▼ 形成された塗膜面を、レーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いてラビング処理を行うことにより、液晶分子の配向能を塗膜に付与して液晶配向膜を作製した。ここに、ラビング処理条件は、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmとした。この液晶配向膜の帯電減衰特性およびラビング傷の発生状況の結果を表1に示す。
【0073】
▲3▼ 上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの基板の外縁部に、直径17μmの酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂をスクリーン印刷塗布した後、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交となるように2枚の基板を間隙を介して対向配置し、外縁部同士を当接させて圧着して接着剤を硬化させた。
【0074】
▲4▼ 次いで、基板の表面および外縁部の接着剤により区画されたセルギャップ内に、ネマティック型液晶「ZLI−5081」(メルク社製)を注入充填し、次いで、注入孔をエポキシ系接着剤で封止して液晶セルを構成した。次いで、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面に、偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致するように偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を作製した。
この液晶表示素子についての液晶の配向性の結果を表1に示す。
【0075】
<実施例2〜実施例11>
後記表1に示す処方に従って、合成例2〜合成例11により得られた重合体Pおよび重合体Qのそれぞれを用い、実施例1(1)と同様にして本発明の液晶配向剤を調製した。次いで、このようにして得られた液晶配向剤の各々を用い、実施例1(2)と同様にして液晶表示素子を作製した。
各実施例において、液晶配向膜の帯電減衰特性、液晶配向膜におけるラビング傷の発生状況、液晶の配向性、液晶配向剤の保存安定性についての評価した。結果を表1に併せて示す。
【0076】
<比較例1>
合成例12により得られた重合体(q−11)を用い、実施例1(1)と同様にして比較用の液晶配向剤を調製した。次いで、この液晶配向剤を用い、実施例1(2)と同様にして液晶表示素子を作製した。
この比較例1における評価結果を表1に示す。
【0077】
<比較例2>
合成例13により得られた重合体(q−12)を用い、実施例1(1)と同様にして比較用の液晶配向剤を調製した。次いで、この液晶配向剤を用い、実施例1(2)と同様にして液晶表示素子を作製した。
この比較例2における評価結果を表1に示す。
【0078】
<比較例3>
合成例14により得られた重合体(q−13)を用い、実施例1(1)と同様にして比較用の液晶配向剤を調製した。次いで、この液晶配向剤を用い、実施例1(2)と同様にして液晶表示素子を作製した。
この比較例3における評価結果を表1に示す。
【0079】
<比較例4>
合成例15により得られた重合体(q−14)を用い、実施例1(1)と同様にして比較用の液晶配向剤を調製した。次いで、この液晶配向剤を用い、実施例1(2)と同様にして液晶表示素子を作製した。
この比較例4における評価結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【発明の効果】
本発明の液晶配向剤によれば、ラビング処理の際に発生する静電気を速やかに除去することが可能で、かつ、ラビング傷がつきにくい塗膜(配向膜材料)を形成することができる。しかも、ラビング処理により液晶分子の配向能が付与された塗膜は、液晶配向性に優れた液晶配向膜となり、種々の液晶表示素子に好適に用いることができる。また、本発明の液晶配向剤は保存安定性に優れている。
【0082】
本発明の液晶配向剤によって、ラビング処理の際に発生する静電気を速やかに除去することが可能な塗膜(配向膜材料)を形成することができる。また、斯かる塗膜にはラビング傷がつきにくく、そして、ラビング処理によって液晶分子の配向能が付与された塗膜は液晶配向膜となり、この液晶配向膜は、液晶配向性に優れた液晶表示素子を構成する。
【0083】
また、本発明の液晶配向剤により形成される液晶配向膜を備えた液晶表示素子は、基板間に注入充填される液晶材料の種類を選択することにより、SH(Super Homeotropic)、強誘電性、反強誘電性液晶表示素子としても好適に使用することができる。
【0084】
さらに、本発明の液晶配向剤により形成される液晶配向膜を備えた液晶表示素子は、液晶の配向性および信頼性に優れ、種々の装置に有効に使用することができ、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶テレビなどの表示装置として好適に用いられる。
【0085】
以下、本発明の好ましい態様を列挙する。
(イ)反応に供されるテトラカルボン酸二無水物に占める化合物(B)の割合が5〜20モル%である液晶配向剤。
【0087】
(ロ)化合物(B)が、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンからなる群より選ばれた少なくとも1種である液晶配向剤。
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