JP3582074B2 - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶表示素子の液晶配向膜を形成するために用いられる液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、液晶配向性が良好であり、かつ液晶表示素子に優れた残像特性をもたらす液晶配向膜を与え、しかも印刷時の塗膜均一性および保存安定性に優れた液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、透明導電膜を介して液晶配向膜が表面に形成されている2枚の基板の間に、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶の層を形成してサンドイッチ構造のセルとし、前記液晶分子の長軸が一方の基板から他方の基板に向かって連続的に90度捻れるようにしたTN(Twisted Nematic)型液晶セルを有するTN型表示素子が知られている。このTN型表示素子などの液晶表示素子における液晶の配向は、通常、ラビング処理により液晶分子の配向能が付与された液晶配向膜により実現される。ここに、液晶表示素子を構成する液晶配向膜の材料としては、従来より、ポリイミド、ポリアミドおよびポリエステルなどの樹脂が知られている。特にポリイミドは、耐熱性、液晶との親和性、機械的強度などに優れているため多くの液晶表示素子に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来知られているポリアミック酸やそれを脱水閉環したイミド系重合体を含有する液晶配向剤を用いて液晶表示素子などを作製した場合、液晶表示素子の残留電圧が大きいため残像が生じてしまったり、印刷時の膜厚ムラが±50Åと大きかったり、液晶表示素子の表示特性が劣るというような問題を有している。また、液晶配向剤溶液の保存中に溶液の粘度変化が生じ、印刷時に膜厚のバラツキを生じてしまうという問題を有している。
【0004】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、本発明の第1の目的は、ラビング処理によって液晶分子の配向能が確実に付与され、優れた液晶配向性を有する液晶配向膜を備えた液晶表示素子を与えることができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第2の目的は、印刷時の塗膜均一性に優れ、表示特性および電気特性に優れる液晶表示素子を構成することができる液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第3の目的は、保存安定性に優れた液晶配向剤を提供することにある。
本発明の第4の目的は、残像特性に優れた液晶表示素子のための液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明の上記目的は、次記の液晶配向剤により達成される。
(1)1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンおよびピロメリット酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物(以下、「化合物(I)」とする)と、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよび3,5−ジアミノ安息香酸コレステリルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物(以下、「化合物(II)」とする)とを反応させて得られるポリアミック酸(以下、「特定重合体(I)」とする)およびポリアミック酸を脱水閉環して得られる構造を有するイミド化重合体(以下、「特定重合体(II)」とする)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を、
(2)N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1の溶剤と、
(3)常圧での沸点が200〜300℃であるモノアルコール系溶剤であり且つエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルおよびジプロピレングリコールモノプロピルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2の溶剤
とを含有してなる溶剤に溶解してなることを特徴とする液晶配向剤によって達成される。
【0006】
以下、本発明についてその詳細を説明する。
本発明で用いられる液晶配向剤は、化合物(I)と化合物(II)とを反応させることにより得られる特定重合体(I)および/または特定重合体(II)よりなるものである。
【0007】
<化合物(I)>
化合物(I)は、テトラカルボン酸二無水物である。
【0009】
化合物(I)は、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンおよびピロメリット酸二無水物である。これらは、特に良好な液晶配向性を示すことから好ましい。
これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0010】
<化合物(II)>
化合物(II)は、ジアミン化合物である。化合物( II )は、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよび
【0011】
下記式(1)
【0012】
【化1】
【0013】
で表わされるステロイド骨格を含有するジアミンである。これらは、特に良好な液晶配向性を示すことから好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。また、これらジアミンは、市販品をそのまま使用しても再還元して使用してもよい。
【0014】
<化合物(I)と化合物(II)の使用割合>
特定重合体(I)の合成反応に供される化合物(I)と化合物(II)との使用割合は、化合物(II)に含まれるアミノ基1当量に対して、化合物(I)に含まれる酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.4当量となる割合である。化合物(I)に含まれる酸無水物基の割合が0.2当量未満の場合および2当量を超える場合のいずれにおいても、得られる重合体の分子量が小さくなりすぎ、液晶配向剤の塗布性が劣るものとなる場合がある。
【0015】
<特定重合体(I)の合成>
本発明における液晶配向剤を構成する特定重合体(I)は、化合物(I)と化合物(II)との反応により合成される。特定重合体(I)の合成反応は、有機溶媒中で、通常、0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。反応温度が0℃以下であると化合物の溶剤に対する溶解性が劣る場合があり、150℃を超えると得られる重合体の分子量が低下する場合がある。
【0016】
特定重合体(I)の合成に用いられる有機溶媒としては、化合物(I)、化合物(II)および反応で生成する特定重合体(I)を溶解し得るものであれば特に制限はなく、例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホリルトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。
【0017】
有機溶媒の使用量(a)は、反応原料である化合物(I)と化合物(II)との総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
【0018】
なお、前記有機溶媒には、特定重合体(I)の貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成する特定重合体(I)が析出しない範囲で併用することができる。かかる貧溶媒の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−エチル−3−メトキシブタノール、2−メチル−2−メトキシブタノール、2−エチル−2−メトキシブタノール、3−メチル−3−エトキシブタノール、3−エチル−3−エトキシブタノール、2−メチル−2−エトキシブタノール、2−エチル−2−エトキシブタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
以上の合成反応によって、特定重合体(I)を溶解してなる重合体溶液が得られる。そして、この重合体溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥することにより特定重合体(I)を得ることができる。また、この特定重合体(I)を再び有機溶媒に溶解させ、次いで貧溶媒で析出する工程を1回または数回行うことにより、特定重合体(I)の精製を行うことができる。
【0020】
<特定重合体(II)>
本発明の液晶配向剤を構成する特定重合体(II)は、ポリアミック酸である特定重合体(I)を脱水閉環して得られる構造を有するイミド化重合体である。特定重合体(II)は、下記方法(1)〜(3)により調製することができ、通常、ポリイミドおよび/またはポリイソイミドである。
【0021】
方法(1):特定重合体(I)を加熱して脱水閉環する方法。
この方法における反応温度は、通常、60〜200℃とされ、好ましくは100〜170℃とされる。反応温度が60℃未満ではイミド化反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られる特定重合体(II)の分子量が小さくなることがある。
【0022】
方法(2):特定重合体(I)を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤およびイミド化触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法。
この方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、特定重合体(I)の繰り返し単位1モルに対して1.6〜20モルとするのが好ましい。また、イミド化触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。イミド化触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.5〜10モルとするのが好ましい。なお、イミド化反応に用いられる有機溶媒としては、特定重合体(I)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、イミド化反応の反応温度は、通常、0〜180℃、好ましくは60〜150℃とされる。
【0023】
方法(3):化合物(I)とジイソシアネート化合物とを混合し、縮合させる方法。
この方法に使用されるジイソシアネート化合物の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタン−p,p’−ジイソシアネート、2,2−ジフェニルプロパン−p,p’−ジイソシアネート、2,2−ジフェニル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−p,p’−ジイソシアネート、2,2−ジフェニルブタン−p,p’−ジイソシアネート、ジフェニルジクロロメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルフルオロメタン−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、N−フェニル安息香酸アミド−4,4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物を挙げることができ、これらは単独でまたは2種以上組合せて用いることができる。なお、この方法には特に触媒は必要とされず、反応温度は、通常、50〜200℃、好ましくは100〜160℃である。
このようにして得られる重合体溶液に対し、特定重合体(I)の精製方法と同様の操作を行うことにより、特定重合体(II)を精製することができる。
【0024】
<重合体の固有粘度>
以上のようにして得られる特定重合体(I)および特定重合体(II)の固有粘度(30℃、N−メチル−2−ピロリドン中で測定。以下において同じ。)は、通常0.05〜10dl/g、好ましくは0.05〜5dl/gである。
【0025】
<末端修飾型の重合体>
本発明の液晶配向剤を構成する特定重合体(I)および/または特定重合体(II)は、末端修飾型の重合体であってもよい。この末端修飾型の重合体は、分子量が調節され、本発明の効果を損うことなく、液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。末端修飾型の重合体は、特定重合体(I)を合成する際に、酸無水物、モノアミン化合物またはモノイソシアネート化合物を反応系に添加することにより合成することができる。
【0026】
末端修飾型の重合体を得るため特定重合体(I)を合成する際の反応系に添加される酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。また、反応系に添加されるモノアミンとしては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。また、モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
【0027】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、代表的には、上記の特定重合体(I)および/または特定重合体(II)を、後述する第1の溶剤に溶解し、得られる溶液にさらに第2の溶剤を添加して溶液とすることによって調製される。
しかし、この方法に限られるものではなく、例えば特定重合体を第1の溶剤と第2の溶剤との混合物中に溶解する方法、特定重合体を第2の溶剤に溶解して得られる溶液に第1の溶剤を添加する方法、特定重合体の一部を第1の溶剤に溶解して得られる溶液と、特定重合体の残部を第2の溶剤に溶解して得られる溶液とを混合する方法など、種々の方法を採用することができる。
そして、本発明の液晶配向剤は、ポリアミック酸またはイミド化重合体よりなる特定重合体を含有することにより、液晶配向膜を形成することができる。
【0028】
<特定重合体の濃度>
液晶配向剤を構成する特定重合体の溶液において、当該特定重合体の含有割合は、特定重合体、第1の溶剤および第2の溶剤の合計重量を基準にして、通常、1〜10重量%であり、3〜8重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満の場合には、形成される液晶配向膜の膜厚が過少となって薄膜にピンホールが形成される場合があり、一方、10重量%を越える場合には、当該液晶配向剤溶液組成物の粘度が高すぎて膜厚均一性の高い薄膜を形成することが困難となる場合がある。
【0029】
<第1の溶剤>
第1の溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンのうち少なくとも1種が用いられる。
【0030】
その使用割合は、液晶配向剤において、特定重合体、第1の溶剤および第2の溶剤の合計重量を基準にして、通常、39〜95重量%であり、50〜95重量%であることが好ましい。この第1の溶剤の使用割合が39重量%未満では、特定重合体を十分溶解させることが困難な場合があり、一方、この割合が95重量%を越える場合には、相対的に第2の溶剤の使用割合が小さくなるため、膜厚均一性の高い薄膜を形成することが困難となる場合がある。
【0031】
<第2の溶剤>
第2の溶剤としては、常圧での沸点が200〜300℃であるモノアルコール系溶剤が用いられる。
【0032】
かかる溶剤は、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルおよびジプロピレングリコールモノプロピルエーテルである。これらは少なくとも1種で用いられる。
【0033】
これらの第2溶剤は特に長期に渡る保存安定性の観点から好ましい。
【0034】
この第2の溶剤の使用割合は、液晶配向剤において、特定重合体、第1の溶剤および第2の溶剤を合計重量を基準にして、通常、4〜60重量%であり、4〜50重量%であることが好ましい。この割合が60重量%を越えると、相対的に第1の溶剤の使用割合が小さくなるため、特定重合体が十分に溶解されず、得られる溶液が析出物やゲル分が生じたものとなる場合があり、一方、この割合が4重量%未満では、膜厚均一性の高い薄膜を形成することが困難となる場合がある。
【0035】
本発明の液晶配向剤は、特定重合体(I)および/または特定重合体(II)を含有するものであるが、基板表面との接着性を向上させる観点から、官能性シラン含有化合物をさらに含有することができる。
【0036】
このような官能性シラン含有化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0037】
<液晶表示素子の製造>
本発明の液晶表示素子は、例えば次の方法によって製造することができる。
【0038】
(1)パターニングされた透明電極が設けられた基板の透明電極側に、液晶配向剤をロールコーター法、スピンナー法、印刷法などで塗布し、80〜250℃、好ましくは120〜200℃の温度で加熱して塗膜を形成させる。この塗膜の膜厚は、通常、0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μmである。上記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックフィルムからなる透明基板を用いることができる。
【0039】
(2)形成された塗膜には、配向処理が施される。この配向処理としては、例えばナイロン、レーヨンなどの合成繊維からなる布を巻き付けたロールで塗膜表面を一定方向に擦るラビング処理や、偏光紫外線を照射する方法、Langmuir−Blodgett法、一軸延伸法などで薄膜を得る方法などが挙げられる。この配向処理により、液晶分子の配向能が付与されて液晶配向膜が形成される。
【0040】
(3)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、その2枚をそれぞれの液晶配向膜における配向方向が直交または逆平行となるよう間隙(セルギャップ)を介して対向させ、基板の周辺部をシール剤でシールし、液晶を充填し、充填孔を封止して液晶セルとする。この液晶セルの外表面に、偏光方向がそれぞれ基板の液晶配向膜のラビング方向と一致または直交するように偏光板を張り合わせることにより液晶表示素子とされる。
【0041】
上記シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有したエポキシ樹脂などを用いることができる。
上記液晶としては、ネマティック型液晶、スメクティック型液晶などを挙げることができ、その中でもネマティック型液晶を形成させるものが好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などが用いられる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶や商品名C−15、CB−15(メルク・ジャパン社製)として販売されているようなカイラル剤などを添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶も使用することができる。
【0042】
液晶セルの外表面に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例により作製された各液晶表示素子について、▲1▼液晶表示素子の液晶配向性、▲2▼液晶表示素子の残留電圧、▲3▼液晶配向剤を用いて印刷した塗膜の均一性および▲4▼液晶配向剤の保存安定性について評価した。
【0044】
〔液晶表示素子の配向性〕
電圧をオン・オフさせた時の液晶セル中の異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を「良好」と判定した。
【0045】
[液晶表示素子の残留電圧]
液晶表示素子に、70℃の温度で電圧7Vを2時間印加し、印加を解除した後の液晶表示素子中の残留電圧を測定した。
【0046】
〔液晶配向剤を用いて印刷した塗膜の均一性〕
触針式膜厚計を用いて、塗膜の平均膜厚および最大膜厚と最小膜厚との差(バラツキ)を測定した。
【0047】
〔液晶配向剤の保存安定性〕
5℃の恒温槽中に液晶配向剤を6カ月間放置し、放置前と放置後の液晶配向剤の粘度をE型粘度計を用いて測定した。
【0048】
合成例1
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物44.8g、p−フェニレンジアミン21.0gおよび3,5−ジアミノ安息香酸コレステリル3.1gをN−メチル−2−ピロリドン620gに溶解させ、室温で6時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、固有粘度1.21dl/gの特定重合体(Ia)66.0gを得た。
【0049】
合成例2
合成例1で得られた特定重合体(Ia)30.0gを570gのγ−ブチロラクトンに溶解し、34.4gのピリジンと26.6gの無水酢酸を添加し、110℃で3時間イミド化反応を行った。
次いで、反応生成液を合成例1と同様に沈澱させ、固有粘度1.30dl/gの特定重合体(IIa)27.0gを得た。
【0050】
合成例3
合成例1において、p−フェニレンジアミンの代わりに4,4’−ジアミノジフェニルメタン38.4gとした以外は、合成例1と同様にして特定重合体(Ib)を得、さらにこの特定重合体(Ib)を用いて合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度1.24dl/gの特定重合体(IIb)26.2gを得た。
【0051】
合成例4
合成例1において、テトラカルボン酸二無水物をシクロブタンテトラカルボン酸二無水物39.2g、ジアミンを2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン82.1gとした以外は合成例1と同様にして、固有粘度1.46dl/gの特定重合体(Ic)115.5gを得た。
【0052】
合成例5
合成例1において、テトラカルボン酸二無水物を1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン60.0gとした以外は合成例1と同様にして特定重合体(Id)を得、さらにこの特定重合体(Id)を用いて合成例2と同様にしてイミド化反応を行い、固有粘度1.16dl/gの特定重合体(IId)26.2gを得た。
【0053】
合成例6
合成例1において、テトラカルボン酸二無水物をピロメリット酸二無水物43.6gとした以外は合成例1と同様にして、固有粘度1.66dl/gの特定重合体(Ie)64.5gを得た。
【0054】
実施例1
(1)液晶配向剤の調製
合成例1で得られた特定重合体(Ia)5gをN−メチル−2−ピロリドン96gとエチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点;237℃)24gに溶解させて、固形分濃度4.0重量%の溶液とし、この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過し、液晶配向剤を調製した。
この液晶配向剤において、特定重合体の含有割合は4.0重量%、第1の溶剤の含有割合は76.8重量%、および第2の溶剤の含有割合は19.2重量%である。
【0055】
この液晶配向剤を、ガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明電極上に液晶配向膜塗布用印刷機を用いて塗布し、180℃で1時間乾燥することにより、薄膜を形成した。この薄膜の膜厚の状態は、平均膜厚が500Å、最大較差の値が15Åであった。
【0056】
(3)液晶配向膜の形成
形成された薄膜の表面に対し、レーヨン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いてラビング処理を行うことにより、液晶分子の配向能を当該薄膜に付与して液晶配向膜を形成した。
ここで、ラビング処理条件は、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmであった。
【0057】
(4)液晶表示素子の作製
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚作製し、それぞれの基板の外縁部に、直径17μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、それぞれの液晶配向膜におけるラビング方向が直交するように2枚の基板を間隙を介して対向配置し、外縁部同士を当接させて圧着して接着剤を硬化させた。
基板表面および外縁部の接着剤により区画されたセルギャップ内に、ネマティック型液晶(メルク・ジャパン社製、MLC−2002)を充填し、次いで、注入孔をエポキシ系接着剤で封止して液晶セルを構成した。次いで、液晶セルの外表面、すなわち、液晶セルを構成するそれぞれの基板の他面に、偏光方向が当該基板の一面に形成された液晶配向膜のラビング方向と一致するように偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を作製した。
【0058】
以上のようにして作製された液晶表示素子について、液晶配向性を調べたところ、動作電圧をオン・オフさせた時に液晶表示素子中に異常ドメインは認められず、優れた配向性を有するものであることが認められた。液晶表示素子の残留電圧を測定したところ、0.22Vと小さい値であった。また、当該液晶配向剤について保存安定性を調べたところ、当初の粘度は41cP、5℃で6ヶ月放置後の粘度は41cPであり、優れた保存安定性を有することが認められた。これらの結果を表1に示す。
【0059】
実施例2〜18および比較例1〜4
表1および表2に示す処方に従い、合成例2〜6で得られた特定重合体(I)または特定重合体(II)を用い、実施例1と同様にして液晶配向剤溶液を調製した。次いで、このようにして得られた液晶配向剤溶液の各々を用い、実施例1と同様にして液晶表示素子を作製した。
得られた液晶配向剤溶液の各々について、形成される薄膜の膜厚の状態、液晶表示素子の配向性および残留電圧および保存安定性について評価した。結果を表1および表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1および表2において、「特定重合体」の欄、「第1の溶剤」の欄および「第2の溶剤」の欄における上段は用いたものの種類、下段はその割合を重量%で示す。
【0063】
また、表1および表2において、第1の溶剤、第2の溶剤および比較用の溶剤の種類は次のとおりである。
第1の溶剤
(イ)N−メチル−2−ピロリドン
(ロ)N−エチル−2−ピロリドン
(ハ)γ−ブチロラクトン
(ニ)1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
第2の溶剤
(a)エチレングリコールモノフェニルエーテル(沸点;237℃)
(b)ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(沸点;272℃)
(c)トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点;249℃)
(d)プロピレングリコールモノフェニルエーテル(沸点;243℃)
(e)ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点;212℃)
(h)ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点;193℃)
(i)トリエチレングリコールモノドデシルエーテル(沸点;301℃以上)
(j)ジエチレングリコール(沸点;245℃)
【0064】
【発明の効果】
本発明の液晶配向剤は、特定重合体、特定の第1の溶剤および特定の第2の溶剤が含有されてなるものであるため、膜厚均一性の高い薄膜を形成することができて、良好な液晶配向性と低残像特性を有する液晶配向膜を形成することができ、しかも保温安定性に優れている。
【0065】
また、本発明の液晶配向剤から形成された液晶配向膜に、例えば特開平6−222366号公報や特開平6−281937号公報に示されているような紫外線を照射することによってプレチルト角を変化させるような処理、あるいは特開平5−107544号公報に示されているようにラビング処理を施した液晶配向膜表面にレジスト膜を部分的に形成して先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去して、液晶配向膜の配向能を変化させるような処理を行うことによって、液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。
【0066】
本発明の液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を有する液晶表示素子は、TN型液晶表示素子に好適に使用できる以外に、使用する液晶を選択することにより、STN(Super Twisted Nematic)型、SH(Super Homeotropic)型、強誘電性および反強誘電性の液晶表示素子などにも好適に使用することができる。
さらに、本発明の液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を有する液晶表示素子は、種々の装置に有効に使用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、係数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター、液晶テレビなどの表示装置に用いられる。
【0067】
本発明の好ましい態様を下記に詳述する。
1. 特定重合体(I)および/または特定重合体(II)1〜10重量%と、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1の溶剤49〜95重量%と、常圧での沸点が200℃〜300℃である前記モノアルコール系溶剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2の溶剤4〜50重量%とを含有してなる均一溶液であることを特徴とする液晶配向剤溶液組成物。
Claims (2)
- (1)1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンおよびピロメリット酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよび3,5−ジアミノ安息香酸コレステリルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物とを反応させて得られるポリアミック酸およびポリアミック酸を脱水閉環して得られる構造を有するイミド化重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を、
(2)N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の第1の溶剤と、
(3)常圧での沸点が200〜300℃であるモノアルコール系溶剤であり且つエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテルおよびジプロピレングリコールモノプロピルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の第2の溶剤
とを含有してなる溶剤に溶解してなることを特徴とする液晶配向剤。 - 請求項1記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜を具備してなる液晶表示素子。
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