JP3603134B2 - 山留め工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、地下部分が深い構造物を構築する場合に好適な山留め工法、特に切梁や腹起しなどの仮設材を可及的に省略ないし削減可能な山留め工法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、地盤改良を併用した山留め工法としては、切梁支保工法に属するものとして、(1)特公昭63−65768号公報に記載された「ソイルストラットプレローディング工法」が公知である。該工法は山留め壁に囲まれた掘削地盤中に予め井桁形状若しくは櫛の歯形状に連続する地盤改良壁を形成すると共に、この地盤改良壁と山留め壁の接合部に膨脹性地盤改良体を施工してプレローディングを働かせることを特徴とする。
【0003】
次に、連続地下壁工法に属する自立山留め工法が、(2)特公平5−43012号公報に記載されて公知である。該工法は平面を方形枠状に構築された連続地下壁(山留め壁)の内部に、一方向の櫛の歯形状に連続する内部連続壁を併設した構成である。
【0004】
次に、(3)特許第3072403号公報(平成12年7月31日に発行)には、山留め壁の内側に複数のバットレスを、改良土壁として硬質地盤へ根入れする深さまで形成した自立山留め工法が開示されている。
【0005】
更に、(4)特開平11−350491号公報には、山留め壁の頭部と外周地盤との間を水平な捨てコンクリート版で結合し、また、前記山留め壁の内側地盤を所定深さまで掘削した後、その掘削底に支保用の捨てコンクリートを打設する山留め工法が記載されている。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
上記(1)の「ソイルストラットプレローディング工法」は、プレローディングによって掘削側地盤の受動抵抗を増大させるが、地盤の掘削深度が増すと腹起しと切梁の仮設が行われる。山留め壁の変形を抑制するためには多段の支保工を仮設する必要があり、そのため手間と時間が掛かり、不経済である。
【0007】
上記(2)の連続地下壁工法は、高価な鉄筋コンクリート壁工法であり、仮設工法の域を遙かに超えたものであり、地盤改良壁工法との比較にならない。施工も難しく、工期も長い。
【0008】
上記(3)のバットレス型山留め工法は、地盤の反力を確保する手段としてバットレス壁を硬質地盤へ根入れさせることが必須条件である。そのため地盤改良壁によるバットレスの形成が深く大きなものとなり、施工面積が大きくなって工事に時間が掛かり、工期が長くなり、工費も増大して不経済である。
【0009】
上記(4)の山留め工法は、地盤を所定深度まで掘削した後に、床付け面に捨てコンクリートを打設するので、捨てコンクリートを掘削時の山留め支保に利用できないことが欠点である。
【0010】
従って、本発明の目的は、少ない地盤改良と支保工で山留め壁を安定化させ、山留め壁の変位を少なくすること、換言すれば、山留め壁内側の地盤掘削に際して、山留め壁を内側から支えるのに相当な土塊部分を残存させ、掘削底に、同掘削底より以深の地中にバットレス形状に形成した複数の地盤改良壁の頭部内縁と接合する繋ぎ梁及び反力スラブを設置して地盤改良壁に内側からの反力を与えることを特徴とする山留め工法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る山留め工法は、
掘削地盤の外周に山留め壁を構築すると共に同山留め壁の内側の掘削側地盤中に、複数の地盤改良壁を一定の間隔をあけてバットレス壁状に、山留め壁に対して直角な配置で、地中の掘削底面より以深に所要の深さまで形成し、
山留め壁内の地盤の掘削は、前記掘削底面より上方に、前記地盤改良壁の頭部内縁から山留め壁の内側面までの間に山留め壁の変形防止に必要な高さの土塊部分を残して掘削底面まで掘削を行い、
掘削底面上に、前記の各地盤改良壁の頭部内縁と接合する繋ぎ梁を設置し、前記繋ぎ梁より内側の掘削底面上に反力スラブを設置し、これらの繋ぎ梁及び反力スラブが強度を発現した後に、前記の土塊部分を掘削底面まで掘削除去することを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した山留め工法において、
掘削底面より以上の掘削側地盤中に、山留め壁の変形防止に必要な高さの土塊部分に含まれる地盤改良体を形成しておくことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載した山留め工法において、
掘削底面より以上の地盤改良体は、掘削底面より以深の各地盤改良壁の延長線上に一連の壁状に形成することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1に記載した山留め工法において、
反力スラブは、捨てコンクリート又は地盤改良体として設置することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施形態】
以下に、請求項1〜4記載の発明に係る山留め工法の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
先ず図1は、掘削地盤1の外周に山留め壁2を平面が閉鎖形状(例えば図5参照。但し、方形の限りではない。)に構築すると共に、同山留め壁2の内側の掘削側地盤中に、複数の地盤改良壁3を一定の間隔をあけてバットレス壁状に、山留め壁2に対しては直角な配置で、しかも地中の掘削底面4より以深に所要の深さまで形成している。そして、掘削底面4より以上の掘削側地盤中に、山留め壁2の変形防止に必要な高さの土塊部分5に含まれる地盤改良体6を形成した段階を示す(請求項1と2記載の発明)。
【0018】
地盤改良壁3の平面的な配置間隔A及び水平長さB(図5)は、掘削底4の深度が15mである場合に、それぞれA=6m、B=12m位の規模とされる。よって図5の山留め壁2の長辺(横辺)が80m、短辺(縦辺)が60mの規模である場合に、地盤改良壁3は、横辺に5本、縦辺に3本位の割合で形成されている。この地盤改良壁3の施工深度h1は、山留め壁2が変形しないように支持できれば良く、基本的には山留め壁2の施工深度と同等程度とされ、決して硬質地盤へ到達させることは要しない。具体的にh1は10m程度に施工されている。一方、山留め壁2の変形防止に必要な土塊部分5の高さh2 は、掘削底4より以上に、前記の条件下で5m程度に形成する。
【0019】
前記地盤改良壁3の改良強度は、圧縮強度を10kg/cm2ぐらいに施工する。一方、前記山留め壁2の変形防止に必要な土塊部分5に含まれる地盤改良体6の改良強度は、山留め壁2の変形抑止効果と施工時の土塊の安定化を目標に、原地盤の圧縮強度よりも少し大きい圧縮強度5kg/cm2位に施工する。なお、図1〜図4及び図7の実施例では、地盤改良壁3による山留め壁2の変形抑止効果(抵抗力F)が優れるように考慮して、水平長さにして内側約半分の施工深度を山留め壁2の先端から更にh3=6m位深く形成して階段構造としているが、この限りではない。逆に図8に示すように、内側に向かって段々と浅くなる階段状に施工して反力スラブ9に抵抗力Fを伝達しやすい形状として実施することも可能である。
【0020】
山留め壁2の変形防止のための土塊部分5に含まれる地盤改良体6は、前記したように山留め壁2の変形防止と施工時の土塊の安定化を達成することを目標に、極端には全面改良することや地盤改良壁3の配置とは無関係に施工することもあり得る。しかし、施工上の効率化の観点からは、掘削底面4より以深の各地盤改良壁3の延長線上に、地盤改良体6を一連の壁状に形成する施工法が好ましい(請求項3記載の発明)。地盤改良の施工は、地盤1の掘削前に、地表面に地盤改良機を据え付けて、地表面から掘削攪拌を進めてゆき、セメントミルク等の固化剤の注入量及び注入時期(注入深度)の制御により、地盤改良壁3の延長線上に、地盤改良体6を一連の壁状に形成することが容易に可能であり、効率的な施工を進められるからである。前記地盤改良体6より以上の土部分についても改良を施すか否かは、現場の作業条件に応じて検討する設計事項である。
【0021】
次に、図2A、Bは、山留め壁2の内側地盤1を掘削底面4の位置まで掘削を行うにあたり、前記掘削底面4より上方に、前記地盤改良壁3の頭部内縁3aから山留め壁2の内側面までの間に同山留め壁2の変形防止に必要な高さh2、つまり、山留め壁2の変形を防止するのに必要な大きさの土圧を働く土塊部分5を残して、山留め壁2内の地盤の掘削を行った段階を示している。土塊部分5は前記地盤改良体6を含む内容である。しかも土塊部分5は内側の法面勾配を3/5程度の傾斜面に形成して台形状に残した形態とされている。なお、掘削底面4の深度が地下15mに達する程深い場合には、安全対策として図2A中に点線で示したように切梁支保工を仮設するのが好ましい。掘削が地下10m位の深度では切梁支保工の仮設は特に必要でない。
【0022】
図3は、掘削底面4に、各地盤改良壁3の頭部内縁3aと接合して山留め壁2の変形抑止の反力を伝達可能な繋ぎ梁8を設置し、更に前記繋ぎ梁8より内側の掘削底面上に反力スラブ9を設置した段階を示している。図4は、前記の繋ぎ梁8及び反力スラブ9が強度を発現した後に、前記の土塊部分5を地盤改良体6と共に掘削底面まできれいに掘削除去した段階を示している(請求項1に記載した発明)。繋ぎ梁8及び反力スラブ9が強度を発現した後には、図4中に山留め壁2の変形に対する抵抗力(抑止力)を矢印Fで示し、その反力を繋ぎ梁8及び反力スラブ9が与える応力範囲を点線10で示したように、前記土塊部分5に代わる山留め壁2の支持効果が十分に得られ、変位を抑止することができる。図4の平面図を図5に示している。図6は、反力スラブ9に、必要に応じて必要数の開口13を設けた実施例を示している。
【0023】
繋ぎ梁8は通例コンクリート構造として設置するが、反力スラブ9は、捨てコンクリート又は地盤改良体として設置する(請求項4記載の発明)。
【0024】
なお、反力スラブ9と地盤改良壁3との接合部が、山留め壁2の変形抑止応力に充分耐えられるときは、図7に示したように、繋ぎ梁8を省略した構成で実施することもできる。
【0025】
上記図4〜図8のように掘削を完了した後に、構造物の構築が行われる。
【0026】
【本発明が奏する効果】
請求項1〜4に記載した発明に係る山留め工法によれば、繋ぎ梁8及び反力スラブ9の先行設置により、山留め壁2の変形を抑止する掘削底4より以深の地盤改良壁3及び同掘削底4より以上の地盤改良体6などの地盤改良施工総量及び支保工の仮設をかなり少なくでき、コストの低減と工期の短縮化を図れる。それでいて山留め壁2の変形防止効果は十分に大きいから、費用の削減と工期の短縮を達成できるほか、構造物の建築施工時に仮設材が邪魔になる度合も少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】山留め壁の構築と、地盤改良壁等の形成を行った段階の断面図である。
【図2】AとBは山留め壁の変形を防止する土塊部分を残して掘削した状態の断面図と斜視図である。
【図3】掘削底に反力スラブなどを設置した段階の断面図である。
【図4】山留め壁の変形を防止する土塊部分も掘削した段階の断面図である。
【図5】図4の平面図である。
【図6】図5とは異なる実施例の平面図である。
【図7】図4とは異なる実施例の断面図である。
【図8】図4とは異なる実施例の断面図である。
【符号の説明】
1 掘削地盤
2 山留め壁
3 地盤改良壁
4 掘削底
5 土塊部分
6 土塊部分の地盤改良体
8 繋ぎ梁
9 反力スラブ
Claims (4)
- 掘削地盤の外周に山留め壁を構築すると共に同山留め壁の内側の掘削側地盤中に、複数の地盤改良壁を一定の間隔をあけてバットレス壁状に、山留め壁に対して直角な配置で、地中の掘削底面より以深に所要の深さまで形成し、
山留め壁内の地盤の掘削は、前記掘削底面より上方に、前記地盤改良壁の頭部内縁から山留め壁の内側面までの間に山留め壁の変形防止に必要な高さの土塊部分を残して掘削底面まで掘削を行い、
掘削底面上に、前記の各地盤改良壁の頭部内縁と接合する繋ぎ梁を設置し、前記繋ぎ梁より内側の掘削底面上に反力スラブを設置し、これらの繋ぎ梁及び反力スラブが強度を発現した後に、前記の土塊部分を掘削底面まで掘削除去することを特徴とする、山留め工法。 - 掘削底面より以上の掘削側地盤中に、山留め壁の変形防止に必要な高さの土塊部分に含まれる地盤改良体を形成しておくことを特徴とする、請求項1に記載した山留め工法。
- 掘削底面より以上の地盤改良体は、掘削底面より以深の各地盤改良壁の延長線上に一連の壁状に形成することを特徴とする、請求項2に記載した山留め工法。
- 反力スラブは、捨てコンクリート又は地盤改良体として設置することを特徴とする、請求項1に記載した山留め工法。
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