JP3602998B2 - トンネルの構築方法およびトンネル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はトンネルの構築方法およびトンネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、トンネルを掘削する場合、掘削された空間の周辺地盤は、その瞬間からゆるみが始まり、時間とともに、地山内部に拡大していく。周辺地盤は、ゆるみの進行に伴なって、間隙、含水分の増大により、強度低下を招き、土圧を増大させ、時間的にこれが一層拡大し、土砂の流出、背面、上部層に空洞化を促し、破壊が進めば、地表沈下、陥没、地滑り等の重大な影響を与える。
【0003】
このため、掘削面の防護、ゆるみ拡大を防止し、地盤の安定を図るために、補助工法による対応策が講じられてきた。
補助工法には、切羽前方の天井部分に、鋼管を一定間隔または、連続的に挿入設置し、鋼管による防護屋根を構築するパイプルーフ工法等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、パイプルーフ工法では、薬液を注入しようとしても、切羽側から、または、地上からしか注入できないので、薬液注入範囲が限られている。
また、地山中に挿入される鋼管の長さは、あまり長くすることができない。
【0005】
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものでその目的とするところは、トンネルを掘削する場合、切羽からかなりの距離まで、天井部等の崩落を防止でき、また、広い範囲に薬液注入等が行えるトンネルの構築方法およびトンネルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために本発明は、トンネルの切羽から、未掘削部分の計画断面の外周部に、掘削装置を備えた複数の推進管を圧入し、前記推進管の内部より前記推進管の周囲に薬液を注入するトンネルの構築方法であって、前記推進管は、側面に複数の注入孔を具備した推進管を複数継ぎ足したものであり、前記薬液の注入は、前記注入孔より、前記推進管の周囲に向けて薬液の一次注入を行い、一次薬液注入範囲を形成する工程と、前記注入孔より前記薬液の一次注入範囲の外側に向けて削孔を行い、前記薬液の一次注入範囲の周辺に薬液の二次注入を行い、二次薬液注入範囲を形成する工程とからなり、前記一次薬液注入範囲と、前記二次薬液注入範囲で防護屋根を構築し、天井の落下を防止することを特徴とするトンネルの構築方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、トンネルの全体図、図2は、図1のA−A断面図、図3は、トンネルの概略斜視図である。
図1から図3に示すように、地山101内に、計画トンネル103を掘削する場合において、地山101が、シラス等の軟弱地盤であり切羽での崩落や出水が懸念される地盤であるときには、地山101の安定のために補助工法が必要となる。
【0009】
本実施の形態においては、計画トンネル103の掘削に先行して、計画トンネル103の計画断面の外周部に位置する地山101に、発信基地1より、推進管3がアーチ状に並ぶように、推進管3を圧入し、更に、圧入後の推進管3の内部より、薬液を地山101に注入することにより、薬液注入範囲45、47を設け、計画トンネル103の防護屋根を構築する。
この防護屋根により、計画トンネル103掘削時の地山101の緩み、崩落等を防止する。
推進管3の圧入方法、および薬液の注入方法については、詳しく後述する。
【0010】
発信基地1は、計画トンネル103の手前の上半部107に設けられる。推進管3の圧入および、薬液の注入完了後、上半部107の計画トンネル103を掘削し、次に、上半部107から下半部109の外側に薬液注入範囲51を設け、下半部109の計画トンネル103を掘削する。105は、SL(スプリングライン)を示す。
【0011】
次に、推進管3の圧入方法を説明する。図4は、発進基地1の断面図であり、図5は、図4のB−B断面図である。
図4、図5に示すように、発信基地1は、計画トンネル103の切羽102部分に吹付けコンクリート113を設け、計画トンネル103の天井部分に推進反力受けコンクリート111を設けて構築される。発進基地1の床部、切羽102前面には、ステージ23が設けられる。
【0012】
ステージ23上には、推進管3を地山101へ圧入するための可動発進架台21が設けられる。 可動発進架台21には、推進管3を載置し、作業員11が作業することが可能な作業台19が設けられ、作業台19の上部には、推進反力受けコンクリート111と接して支圧板15、推進管3圧入のためのジャッキ13、押輪17が設けられる。可動発進架台21は、ステージ23上を水平方向に移動可能であり、また、作業台19の高さは、ジャッキ27により調節可能である。ジャッキ29は、圧入する推進管3の位置、高さにより、可動発進架台21の位置と高さを調節した後、可動発進架台21を固定する役割をする。
【0013】
先端の推進管3には、地山101の掘削装置であるセミシールド機5が設けられる。長さの短い推進管3が継ぎ足されつつ、1本の推進管3として、地山101に圧入される。推進管3は坑口リング25により切羽102に対して位置決めされる。また、推進管3は、先端にセミシールド機5を設けることにより、管径を大きくすることができ、推進管3の内部に、作業員11が入って作業することが可能である。セミシールド機5の先端に、カッタ7が設けられる。
【0014】
圧入する推進管3の位置、高さにより、可動発進架台21の位置と高さを調節し、ジャッキ29により可動発進架台21を固定する。押輪17を介して、ジャッキ13により、推進管3を継ぎ足しつつ切羽102に圧入する。
同時に、推進管3の先端では、セミシールド機5により地山101を掘削する。
【0015】
尚、セミシールド機5は、到達地点への推進完了後、カッタ7を収納して、セミシールド機5本体を推進管3の内部を引き戻して、回収することができるため、到達回収坑を必要とせず、セミシールド機5の再利用が可能である。
推進管3の圧入を繰り返すことにより、計画トンネル103の天井部外側の地山101内に推進管3によるアーチ状の防護屋根を構築する。
【0016】
このように、セミシールド機5を用いることにより、地山101が、無水層、滞水層に拘わらず、推進管3の蛇行、変形を最小限に抑え、推進長さも100メートル以上とすることができる。
更に、推進管3によるアーチ状の防護屋根を構築することにより、推進管の剛性により、計画トンネル103の掘削時の地山101の変形を抑制することができる。
【0017】
また、推進管3の圧入時に、水ではなく高濃度の泥水を用いるため、地山101の強度が低下しても水と一緒に地山101が流出する恐れがなく、推進管3と地山101との隙間は、高濃度泥水で満たされており、速やかに裏込め注入39を行うことで、掘削に伴なう地山101の緩みを押さえることができる。
更に、推進管3の切羽を、加圧した高濃度泥水で押さえることから、推進時における切羽の崩落が生じにくい。
【0018】
次に、薬液の注入方法について説明する。図6は、推進管3の斜視図であり、推進管3は、複数の推進管3が継ぎ足されて、1本の推進管3となる。
図6に示すように、推進管3同士は、計画トンネル103の周囲に短い間隔で配置されている。推進管3の側面には、注入孔31が設けられている。注入孔31は、薬液注入範囲の不連続ヶ所が発生しないように、ピッチが決められ、更に、千鳥配置に設けられる。
薬液注入は、推進管3と推進管3との隙間からの地山101の崩落防止および、地山101の止水、遮水等の目的で行う。
【0019】
図7から図10は、薬液注入方法の説明図である。
図7に示すように、推進管3の周囲は、圧入時に裏込注入39がなされており、注入孔31には、盲キャップ37が設けられる。
次に、図8に示すように、推進管3の施工後、隣接する推進管3の推進施工前に、薬液の1次注入を行う。注入孔31に注入ホース41を接続したバルブ33を取り付ける。注入孔31より地山101の1次薬液注入範囲45に薬液を浸透注入する。1次薬液注入範囲45は、隣接する推進管3の推進施工の支障とならない範囲とする。薬液1次注入後、他の注入孔31からの注入材の逸脱防止のため注入孔31に盲キャップ37を取付ける。
【0020】
次に、図9に示すように、隣接推進管3の推進施工終了後に計画トンネル103の掘進時における止水および、推進管3同士隙間からの崩落防止のため、薬液の2次注入を行う。バルブ33にドリル型削孔機49を取り付け、2次薬液注入範囲47まで削孔49を設け、スライムを除去する。この時、スライムの硬さ、長さ等の変化により、1次薬液注入範囲45の注入効果を確認する。
【0021】
次に、図10に示すように、バルブ33からドリル型削孔機49を取り外し、注入ホース41をバルブ33へ取り付け、2次薬液注入範囲47へ、薬液の浸透注入を行う。薬液は、ゲル化した1次薬液注入範囲45部分の削孔49を経て、2次薬液注入範囲47に浸透する。2次薬液注入の計画範囲に到達するまで、図9と図10の作業を繰り返す。注入完了後、注入孔31に盲キャップ37を取付ける。
尚、薬液の1次注入の際にも、2次注入と同様、ドリル型削孔機49を用いて、削孔し薬液を注入してもよい。その場合は、推進管3の裏込注入39の効果確認と緩み域の確認を行うことができる。
【0022】
以上の薬液注入工程を、各注入孔31で繰り返し、順次推進管3の手前から先端部へ薬液注入範囲を広げていく。
この薬液注入工程は、推進管3の内部へ、作業員11が入ることが可能であるため、人力により、薬液注入効果を確認しながら行うことができる。
【0023】
図11は、推進管3の周囲の薬液注入範囲を示す図であり、図12は、計画トンネル103全体の薬液注入範囲を示す図である。
図11に示すように、各々の推進管3においても、薬液注入を行い、推進管3と推進管3との隙間を1次薬液注入範囲45により埋めることができる。このため、推進管3と推進管3との隙間からの地山101の崩落を防止できる。
【0024】
図12に示すように、計画トンネル103全体では、アーチ状の推進管3の周囲に、1次薬液注入範囲45と2次薬液注入範囲47を構成し、計画トンネル103の防護屋根を構築する。
また、図12では、下半部109の外側の地山101は、上半部107の防護屋根の外側から回り込んでくる地下水を止水するため、下半部109の掘削前に、上半部107内から、二重管復相注入51を施工する。
【0025】
以上のように、推進管3内部を作業員が移動できるので、通常の切羽または地上からの薬液注入に比べて、薬液注入を行いたい箇所の近傍から施工することができ、薬液注入の確実性が著しく向上し、また、注入効果の確認が容易である。また、推進管3同士の隙間のように目的の箇所が非常に狭くても、確実に施工でき、注入不良箇所には、再注入が可能である。
さらに、推進管3が100m程度と長いので、切羽からかなり離れた所まで、薬液注入を行うことができる。
【0026】
さらに、低圧での注入が可能であり、構造物への影響が少ない。また、短い注入管で薬液注入が可能となり、水を使用するボーリングではなく、ドリルのような簡易で水を使用しない機械で注入管の設置が可能となるため、水による地山101の強度低下の恐れがない。
尚、薬液注入に代えて、推進管3の周囲を凍結させるようにしてもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明によれば、トンネルを掘削する場合、切羽からかなりの距離まで、天井部等の崩落を防止でき、また、広い範囲に薬液注入等が行えるトンネルの構築方法およびトンネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トンネルの全体図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】トンネルの概略斜視図
【図4】発進基地の断面図
【図5】図4のB−B断面図
【図6】推進管3の斜視図
【図7】薬液注入方法の説明図
【図8】薬液注入方法の説明図
【図9】薬液注入方法の説明図
【図10】薬液注入方法の説明図
【図11】推進管3の周囲の薬液注入範囲を示す図
【図12】計画トンネル103全体の薬液注入範囲を示す図
【符号の説明】
1…発進基地
3…推進管
5…セミシールド機
11…作業員
13、27、29…ジャッキ
21…可動発進架台
31…注入孔
45…1次薬液注入範囲
47…2次薬液注入範囲
101…地山
103…計画トンネル

Claims (5)

  1. トンネルの切羽から、未掘削部分の計画断面の外周部に、掘削装置を備えた複数の推進管を圧入し、前記推進管の内部より前記推進管の周囲に薬液を注入するトンネルの構築方法であって、
    前記推進管は、側面に複数の注入孔を具備した推進管を複数継ぎ足したものであり、
    前記薬液の注入は、前記注入孔より、前記推進管の周囲に向けて薬液の一次注入を行い、一次薬液注入範囲を形成する工程と、前記注入孔より前記薬液の一次注入範囲の外側に向けて削孔を行い、前記薬液の一次注入範囲の周辺に薬液の二次注入を行い、二次薬液注入範囲を形成する工程とからなり、
    前記一次薬液注入範囲と、前記二次薬液注入範囲で防護屋根を構築し、天井の落下を防止することを特徴とするトンネルの構築方法。
  2. 前記一次薬液の注入は、前記推進管の圧入後、隣接する推進管を圧入する前に行う請求項1記載のトンネルの構築方法。
  3. 前記薬液の注入は、前記推進管の手前から先端部へ向けて順次行う請求項1記載のトンネルの構築方法。
  4. 前記注入孔に、盲キャップが取り付けられた請求項1記載のトンネルの構築方法。
  5. 前記推進管の内部で、作業員が作業できる請求項1記載のトンネルの構築方法。
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