JP3600499B2 - Fmパルスドップラーレーダー装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車載用のレーダ等、対象物までの距離を測定するFMパルスドップラーレーダー装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のレーダ装置としては、従来、図10に示す構成のFMパルスドップラレーダー装置が知られている。図10において、1は変調用電圧発生器、2は例えば送信周波数ftx=76〜77GHzの電磁波を発生する電圧制御発振器(三角波発振器)、3は電圧制御発振器2の電磁波の出力先を送信用アンプ4及び受信側ミキサ9の間で切り替えるための送受切り替えスイッチ、4は送受切り替えスイッチ3により供給された電磁波の電力を増幅する送信用アンプ、5は送信用アンプ4により増幅された電磁波を空間に送信する送信用アンテナである。
【0003】
また、6はレーダーによって検知される対象物、7は送信電磁波が対象物6により反射されて帰ってきた電磁波を受信する受信用アンテナ、8は受信した電磁波を増幅する受信用アンプである。
【0004】
さらに、9は送受切り替えスイッチ3により切り替えられた送信用電磁波と、対象物6の反射電磁波とをミキシングし、対象物6の距離、相対速度に応じたビート信号を出力するミクサ、10はカットオフ周波数が送信パルス時間幅の逆数となるローパスフィルタ、11は反射波の受信電力に応じてゲインを調整できるAGCアンプ、12はビート信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、13はA/D値により対象物6の距離、相対速度を計算する距離演算装置である。
【0005】
次に、上記のように構成された従来の装置の電磁波送信動作を説明する。
まず、変調用電圧発生器1からの電圧信号に応じて、電圧制御発振器2は、例えば図2のように変調された電磁波(三角波信号)を出力する。電圧制御発振器から出力された電磁波は送受切り替えスイッチ3により送信用アンプ4に供給され増幅される。そして、送信用アンプ4により増幅された電磁波は送信用アンテナ5から空間に出力される。
【0006】
次に、電磁波受信動作を説明する。電磁波送信開始時からパルス時間幅Tg例えば33.3ns(=1/30MHz、距離5m相当)だけ経過した時点で、送受信切替スイッチ3は受信側に切り替わり、電圧制御発振器2とミクサ9を接続する。このとき、送信用アンテナ5から空間に出力された電磁波は33.3nsだけ出力されるパルス波となり、距離Rに存在する対象物6で反射され、送信電磁波に対して距離Rに依存する遅延時間Δtをもって受信用アンテナ7に入力される。
【0007】
対象物6が相対速度を持つとき受信電磁波周波数は送信電磁波周波数に対してfbだけドップラシフトして受信用アンテナ7に入力される。受信用アンテナ7で入力された電磁波は、受信用アンプ8により増幅され、ミクサ9により電圧制御発振器2からの送信用電磁波とミキシングされ、図3に示すビート信号を出力する。得られたビート信号は例えばカットオフ周波数が30MHzのローパスフィルタ10を通過し、AGCアンプ11により増幅されてA/D変換器12に入力され、デジタル信号に変換される。
【0008】
次にA/D変換器12の出力データから距離演算装置13が対象物6の距離、及び相対速度を演算する方法を述べる。
簡単のため、電圧制御発振器2でFM変調を行わず、送信周波数 ftx=76.5GHz固定とする。速度分解能1km/hを得たい場合には、ドップラー周波数の分解能Δfは、
【0009】
【数1】
【0010】
となり、Tm=7.06msの計測時間が必要となる。ここで例えば最大計測距離を150mとした場合、送信波出力周期は33.3ns×(150/5)=1μsとなるので、速度分解能1km/hを得るには上述の装置においてビート信号を、図4のようにレンジゲート毎に送信波出力7060回分を取得し、そのすべてのデータをレンジゲート毎に高速フーリエ変換すると、図5に示すように所定のレンジゲートでドップラシフトfbが出力される。
ここで、距離Rg、相対速度Vは下記式(2)、(3)で計算できる。
【0011】
【数2】
【0012】
【数3】
【0013】
ここで、tgはレンジゲート時間幅(パルス時間幅)、nはレンジゲート番号、Cは光速、fb1はビート周波数、f0は送信周波数(76.5GHz)である。
【0014】
次に、上述の送信電磁波が図2のように変調されていることを考える。上述Tm=7.06msの計測時間に、送信周波数は帯域幅B=150MHz、76.425〜76.575GHzまで一定の割合で上昇しているとする。送信用アンテナ5より電磁波が出力され、対象物6で反射し、受信用アンテナ7に入力されるまでの時間tは、つぎの式(4)で求められる。
【0015】
【数4】
【0016】
この時間t間に送信周波数は上昇しているため、ビート周波数fbuは、距離に応じた送信周波数と受信周波数の差fb2、および相対速度によるドップラー周波数fb1の和となる。
【0017】
【数5】
【0018】
同様に、次のTm=7.06msの計測時間には送信周波数は帯域幅B=150MHz、76.425〜76.575GHzまで一定の割合で下降しているとする。送信用アンテナ5より電磁波が出力され、対象物6で反射し、受信用アンテナ7に入力されるまでの時間t間に送信周波数は下降しているため、ビート周波数fbdは、距離に応じた送信周波数と受信周波数の差fb2’、および相対速度によるドップラー周波数fb1’の和となる。周波数上昇、下降時の間、距離、相対速度は周波数上昇時と変わらないとしても問題ない。周波数一定で、さらに上昇、下降の割合は等しいため、fb1=fb1’、fb2’=−fb2となる。よってfbdは式(6)のようになる。
【0019】
【数6】
【0020】
このように送信周波数を上昇、下降させ、それぞれのビート周波数fbu、fbdが得られれば、距離に応じた送信周波数と受信周波数の差fb2、および相対速度によるドップラー周波数fb1を式(7)のように求めることができる。
【0021】
【数7】
【0022】
fb2は、式(4)の時間t間に上昇または下降した周波数を表しているので、式(8)の関係が成り立つ。
【0023】
【数8】
【0024】
式(4)、(8)より、式(9)のようにfb2より距離Rbを求めることができる。
【0025】
【数9】
【0026】
式(9)より、距離とfb2は比例の関係にあることがわかる。距離分解能をΔR、fb2の周波数分解能をΔf(=1/(Tm/2))とすると、
【0027】
【数10】
【0028】
となる。B=300MHzとすれば、分解能ΔRは0.5mとなり、式(2)で求められた距離Rgより分解能を上げることができる。
【0029】
また、何らかの原因でノイズが発生し、あるレンジゲートにノイズによるビート周波数が検出されたとしても、式(2)により求めた距離Rgと式(9)により求めた距離Rbの差がレンジゲート幅5m以上の差があれば、ノイズと判断して除去することができる。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
式(2)、式(9)で求められた距離はレンジゲート幅の範囲で等しくなるはずである。ところが実際には送信周波数の帯域幅Bが素子のばらつきや温度変化により誤差を生じる。このため式(9)の方法で求めた距離Rbに誤差が生じる。
【0031】
例えば、素子のばらつきにより、送信周波数の帯域幅Bが1.1倍になった場合、式(9)により距離を求めると、
【0032】
【数11】
【0033】
となり、正しい距離に対して1/1.1倍となってしまう。
同様に、温度変化により送信周波数の帯域幅Bが0.9倍〜1.2倍に変化する場合、式(9)により求めた距離は正しい値に比べて1/0.9倍〜1/1.2倍となってしまう。
【0034】
これらの問題を解決するためには、素子のばらつきや温度変化を極力少なくすれば良い。しかし、そのためには、高価な素子を使う必要が生じたり、組立時に個々に帯域幅Bの誤差を測定し調整する必要が生じる。
【0035】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、送信周波数の帯域幅Bに誤差がある場合でも、その誤差を検知することができ、この誤差に基づいて適切に補正を行い、さらにこの誤差が大きい場合には装置の異常と判断するFMパルスドップラーレーダー装置を得ることを目的とする。
【0036】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るFMパルスドップラーレーダー装置は、上昇・下降を繰り返す周波数をもった変調波をパルス変調して送信し、対象物で反射された反射波をパルス幅と同じ間隔のレンジゲート毎に受信し、各レンジゲートに相当する距離と、送信波の周波数と受信波の周波数の差から対象物の距離と相対速度とを求めるFMパルスドップラーレーダー装置において、自車速度を測定する自車速度測定手段と、検知したレンジゲートに相当する距離と、送信波の周波数と受信波の周波数差から求めた距離とを比較し、自車速度と相対速度に基づいて、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検出する比較検出手段とを備えている。
【0037】
また、比較検出手段は、検知したレンジゲート幅と、送信波の周波数と受信波の周波数差から求めた距離から逆算して求めたレンジゲート幅との差から、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検出する。
【0038】
また、比較検出手段は、複数の対象物により求めた送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を時間的に積算し平均を求める。
【0039】
また、比較検出手段は、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知し、該距離誤差に基づいて距離演算結果を補正する。
【0040】
また、比較検出手段は、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知し、該距離誤差に基づいて送信周波数の帯域幅の誤差を修正することで、距離演算結果を補正する。
【0041】
また、比較検出手段は、誤差を求める対象物を停止物に限定して送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。
【0042】
また、比較検出手段は、自車が停止しており、かつ誤差を求める対象物も停止している場合にのみ、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。
【0043】
また、比較検出手段は、誤差を求める対象物を自車が追従する走行車両に限定し、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。
【0044】
また、比較検出手段は、各レンジゲートでの送信波の周波数と受信波の周波数の差から求めた対象物までの距離を、一定時間積算し、その度数分布から送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。
【0045】
さらに、比較検出手段は、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差が所定の値を超えた場合に装置の異常とする。
【0046】
【発明の実施の形態】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1のFMパルスドップラーレーダー装置を示すブロック図である。図1において、1は変調用電圧発生器、2は例えば送信周波数ftx=76〜77GHzの電磁波を発生する電圧制御発振器(三角波発振器)、3は電圧制御発振器2の電磁波の出力先を送信用アンプ4及び受信側ミキサ9の間で切り替えるための送受切り替えスイッチ、4は送受切り替えスイッチ3により供給された電磁波の電力を増幅する送信用アンプ、5は送信用アンプ4により増幅された電磁波を空間に送信する送信用アンテナである。
また、6はレーダーによって検知される対象物、7は送信電磁波が対象物6により反射されて帰ってきた電磁波を受信する受信用アンテナ、8は受信した電磁波を増幅する受信用アンプである。
【0047】
さらに、9は送受切り替えスイッチ3により切り替えられた送信用電磁波と、対象物6の反射電磁波とをミキシングし、対象物6の距離、相対速度に応じたビート信号を出力するミクサ、10はカットオフ周波数がパルス時間幅の逆数となるフィルタ、11は反射波の受信電力に応じてゲインを調整できるAGCアンプ、12はビート信号をデジタル信号に変換するAD変換器、13はA/D値により対象物6の距離、相対速度を計算する距離演算装置である。
【0048】
そして、14は距離演算装置13により算出された対象物6の距離、相対速度、レンジゲート、及び車速センサ15の測定する自車速度に基づいて、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検出する比較検出手段としての距離補正装置であり、15は自車速度を測定する自車速度測定手段としての車速センサである。
【0049】
次に、上述のように構成された本実施の形態の装置の電磁波送信動作を説明する。
まず、変調用電圧発生器1からの電圧信号に応じて、電圧制御発振器2は、例えば図2のように変調された電磁波(三角波信号)を出力する。その電磁波は送受切り替えスイッチ3により送信用アンプ4に供給され増幅される。そして、送信用アンプ4により増幅された電磁波は送信用アンテナ5から空間に出力される。
【0050】
次に、電磁波受信動作を説明する。電磁波送信開始時からパルス時間幅Tg例えば33.3ns(=1/30MHz、距離5m相当)だけ経過した時点で、送受信切替スイッチ3は受信側に切り替わり、電圧制御発振器2とミクサ9を接続する。このとき、送信用アンテナ5から空間に出力された電磁波は33.3nsだけ出力されるパルス波となり、距離Rに存在する対象物6で反射され、送信電磁波に対して距離Rに依存する遅延時間Δtをもって受信用アンテナ7に入力される。
【0051】
対象物6が相対速度を持つとき受信電磁波周波数は送信電磁波周波数に対してfbだけドップラシフトして受信用アンテナ7に入力される。受信用アンテナ7で入力された電磁波は受信用アンプ8により増幅され、ミクサ9により電圧制御発振器2からの送信用電磁波とミキシングされ、図3に示すようにビート信号を出力する。得られたビート信号は例えばカットオフ周波数が30MHzのフィルタ10を通過し、AGCアンプ11により増幅されてAD変換器12に入力され、デジタル信号に変換される。
【0052】
次にA/D変換器12の出力データから距離演算装置13が対象物6の距離、及び相対速度を演算する方法を述べる。
簡単のため、電圧制御発振器2でFM変調を行わず、送信周波数 ftx=76.5GHz固定とする。速度分解能1km/hを得たい場合には、ドップラー周波数の分解能Δfは
【0053】
【数12】
【0054】
となり、Tm=7.06msの計測時間が必要となる。ここで例えば最大計測距離を150mとした場合、送信波出力周期は33.3ns×(150/5)=1μsとなるので、速度分解能1km/hを得るには上述の装置においてビート信号を、図4のようにレンジゲート毎に送信波出力7060回分を取得し、そのすべてのデータをレンジゲート毎に高速フーリエ変換すると、図5に示すように所定のレンジゲートでドップラシフトfbが出力される。
ここで、距離Rg、相対速度Vは下記式(13)、(14)で計算できる。
【0055】
【数13】
【0056】
【数14】
【0057】
ここで、tgはレンジゲート時間幅(パルス時間幅)、nはレンジゲート番号、Cは光速、fb1はビート周波数、f0は送信周波数(76.5GHz)である。
【0058】
次に、上述の送信電磁波が図2のように変調されていることを考える。上述Tm=7.06msの計測時間に、送信周波数は帯域幅B=150MHz、76.425〜76.575GHzまで一定の割合で上昇しているとする。送信用アンテナ5より電磁波が出力され、対象物6に反射し、受信用アンテナ7に入力されるまでの時間tは、つぎの式(15)で求められる。
【0059】
【数15】
【0060】
この時間t間に送信周波数は上昇しているため、ビート周波数fbuは、距離に応じた送信周波数と受信周波数の差fb2、および相対速度によるドップラー周波数fb1の和となる。
【0061】
【数16】
【0062】
同様に、次のTm=7.06msの計測時間には送信周波数は帯域幅B=150MHz、76.425〜76.575GHzまで一定の割合で下降しているとする。送信用アンテナ5より電磁波が出力され、対象物6に反射し、受信用アンテナ7に入力されるまでの時間t間に送信周波数は下降しているため、ビート周波数fbdは、距離に応じた送信周波数と受信周波数の差fb2’、および相対速度によるドップラー周波数fb1’の和となる。周波数上昇、下降時の間、距離、相対速度は周波数上昇時と変わらないとしても問題ない。周波数一定で、さらに上昇、下降の割合は等しいため、fb1=fb1’、fb2’=−fb2となる。よってfbdは式(17)のようになる。
【0063】
【数17】
【0064】
このように送信周波数を上昇、下降させ、それぞれのビート周波数fbu、fbdが得られれば、距離に応じた送信周波数と受信周波数の差fb2、および相対速度によるドップラー周波数fb1を式(18)のように求めることができる。
【0065】
【数18】
【0066】
fb2は式(15)の時間t間に上昇または下降した周波数を表しているので、式(19)の関係が成り立つ。
【0067】
【数19】
【0068】
式(15)、(19)より、式(20)のようにfb2より距離Rbを求めることができる。
【0069】
【数20】
【0070】
式(20)より、距離とfb2は比例の関係にあることがわかる。距離分解能をΔR、fb2の周波数分解能をΔf(=1/(Tm/2))とすると、
【0071】
【数21】
【0072】
となる。B=300MHzとすれば、分解能ΔRは0.5mとなり、式(13)で求められた距離Rgより分解能を上げることができる。
【0073】
また、何らかの原因でノイズが発生し、あるレンジゲートにノイズによるビート周波数が検出されたとしても、式(13)により求めた距離Rgと式(20)により求めた距離Rbの差がレンジゲート幅5m以上の差があれば、ノイズと判断して除去することができる。
【0074】
例えば、対象物6の距離を52m、相対速度0km/hとする。このとき式(13)により求めた距離はRg=50mとなり、式(20)により求めた距離Rbは52mとなる。
【0075】
ここで電圧制御発振器2に与える電圧の誤差、電圧制御発振器2の電圧−発信周波数変換の誤差が、素子のばらつきや温度変化などの原因により発生し、帯域幅Bが0.9倍になった場合、式(13)により求めた距離はRg=50mとなるが、式(20)により求めた距離Rbは52/0.9≒58mとなる。
【0076】
式(13)により求めた距離Rgと式(20)により求めた距離Rbに差が生じたとき、その差の原因は、上述したようにノイズであるのか、距離誤差であるのか判別できない。
【0077】
一方、車速センサ15により自車速度=0km/hと判断されたとき、周囲の停止物に対する相対速度は0km/hとなる。一般に、エンジン始動時などの停車時には、対象物としての周囲の対象物は停止していることが多い。そして、このように、自車速度=0km/hでかつ相対速度=0km/hの場合には、ノイズが発生する確率が低いことが一般的に解っている。そのため、本実施の形態の距離補正装置14は、自車速度=0km/hでかつ相対速度=0km/hの場合に限り、式(13)により求めた距離Rgと式(20)により求めた距離Rbに差が生じたとき、その差の原因を、距離誤差のためであると判断する。すなわち、自車速度=0km/hでかつ相対速度=0km/hであって、式(13)と式(20)で求めた距離Rg、Rbがレンジゲート幅5m以上異なる場合は、帯域幅Bに誤差が生じていると判断する。
【0078】
また、上述の対象物が、距離52m、相対速度0km/hの場合には式(13)により求めた距離はRb=58mとなるが、この距離からレンジゲートnを逆算すると、式(13)より、n=11になる。一方、実際のレンジゲートはn=10である。そのため、補正値を
【0079】
【数22】
【0080】
とする。この補正値kにより式(13)で求めた距離Rbを式(23)のように補正し、距離誤差を減らすことができる。
【0081】
【数23】
【0082】
尚、帯域幅Bに誤差が生じている確率が高い場合は、上述の自車速度=0km/hでかつ相対速度=0km/hの場合のみではない。自車速度=相対速度、すなわち、自車が走行中であり対象物が止まっている場合にも、帯域幅Bに誤差が生じている確率が高い。
【0083】
そしてさらに、自車が先行車に追従走行している、すなわち、自車と対象物が走行中であり、相対速度=0km/hの場合にも、帯域幅Bに誤差が生じている確率が高い。そのため、距離補正装置14は、自車速度=相対速度の場合と、自車と対象物が走行中でかつ相対速度=0km/hの場合も、式(13)と式(20)により求めた距離の差の原因を、距離誤差のためであると判断する。
【0084】
また、距離補正のための目標となる対象物が複数存在している場合、それぞれの補正値を別々に求め、これらを平均することで誤差検出の精度を高めることができる。
【0085】
さらに、測定周期毎に補正値を積算し、これを所定の一定時間内で平均化したり、フィルターをかけることで精度を高めることができる。
【0086】
さらにまた、補正値があらかじめ決められた値より大きく、または小さくなった場合に、装置の異常が発生したと判断することができる。
【0087】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2のFMパルスドップラーレーダー装置を示すブロック図である。図6において、16は距離演算装置により算出された対象物6の距離、相対速度、レンジゲートや、車速センサ15からの自車速度などを元に補正帯域幅B’を算出し、電圧制御発振器が補正帯域幅B’の電磁波を発生するように変調用電圧発生器1を制御する比較検出手段としての帯域幅補正装置である。その他の構成は、概略実施の形態1と同様である。
【0088】
本実施の形態において、比較検出手段としての帯域幅補正装置16は、誤差0のときの帯域幅B、誤差があるときの帯域幅B’、帯域幅補正値bとしたとき、式(24)のように補正する。
【0089】
【数24】
【0090】
式(20)、(22)、(24)より帯域幅補正値bは、つぎの式(25)で求めることができる。
【0091】
【数25】
【0092】
例えば、変調用電圧発生器1の発生電圧幅ΔVと帯域幅Bの関係が式(26)のようになっている場合、
【0093】
【数26】
【0094】
帯域幅補正値がbとなっているときの発生電圧幅ΔVをb倍すれば帯域幅Bは誤差が補正され、次に距離を演算する時には正確な距離が算出される。
【0095】
実施の形態3.
図7は帯域幅Bに誤差がない場合に、一定時間の間、あるレンジゲートnで検知される対象物の距離データの度数分布を示した図である。
【0096】
式(9)より、帯域幅Bが大きくなった場合、 図8のように距離データの度数分布は近方にずれ、帯域幅Bが小さくなった場合には図9のように距離データの度数分布は遠方にずれる。各レンジゲートにおいて、距離データの度数分布を求め、平均値や中央値から距離のずれを求めることで、距離誤差を検知することができる。
【0097】
【発明の効果】
この発明に係るFMパルスドップラーレーダー装置は、上昇・下降を繰り返す周波数をもった変調波をパルス変調して送信し、対象物で反射された反射波をパルス幅と同じ間隔のレンジゲート毎に受信し、各レンジゲートに相当する距離と、送信波の周波数と受信波の周波数の差から対象物の距離と相対速度とを求めるFMパルスドップラーレーダー装置において、自車速度を測定する自車速度測定手段と、検知したレンジゲートに相当する距離と、送信波の周波数と受信波の周波数差から求めた距離とを比較し、自車速度と相対速度に基づいて、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検出する比較検出手段とを備えている。そのため、自車速度と相対速度に基づいて、誤差がノイズによるものなのか距離誤差によるものなのかを判別することができる。
【0098】
また、比較検出手段は、検知したレンジゲート幅と、送信波の周波数と受信波の周波数差から求めた距離から逆算して求めたレンジゲート幅との差から、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検出する。そのため、誤差がノイズによるものなのか距離誤差によるものなのかを、さらに確実に判別することができる。
【0099】
また、比較検出手段は、複数の対象物により求めた送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を時間的に積算し平均を求める。そのため、距離誤差の検知精度を向上させることができる。
【0100】
また、比較検出手段は、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知し、該距離誤差に基づいて距離演算結果を補正する。そのため、補正をした正しい距離演算結果を得ることができる。
【0101】
また、比較検出手段は、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知し、該距離誤差に基づいて送信周波数の帯域幅の誤差を修正することで、距離演算結果を補正する。そのため、さらに正確な距離演算結果を得ることができる。
【0102】
また、比較検出手段は、誤差を求める対象物を停止物に限定して送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。そのため、さらに正確な距離演算結果を得ることができる。
【0103】
また、比較検出手段は、自車が停止しており、かつ誤差を求める対象物も停止している場合にのみ、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。そのため、さらに正確な距離演算結果を得ることができる。
【0104】
また、比較検出手段は、誤差を求める対象物を自車が追従する走行車両に限定し、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。そのため、さらに正確な距離演算結果を得ることができる。
【0105】
また、比較検出手段は、各レンジゲートでの送信波の周波数と受信波の周波数の差から求めた対象物までの距離を、一定時間積算し、その度数分布から送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する。そのため、さらに正確な補正値を得ることができる。
【0106】
さらに、比較検出手段は、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差が所定の値を超えた場合に装置の異常とする。そのため、装置の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1のFMパルスドップラーレーダー装置を示すブロック図である。
【図2】電圧制御発振器の出力する変調された電磁波を示すグラフである。
【図3】ビート信号を説明する説明図である。
【図4】レンジゲート毎に送信波出力を取得する様子を説明する説明図である。
【図5】所定のレンジゲートでドップラシフトが出力される様子を説明するグラフである。
【図6】この発明の実施の形態2のFMパルスドップラーレーダー装置を示すブロック図である。
【図7】あるレンジゲートnで検知される対象物の距離データの度数分布を示すグラフである。
【図8】帯域幅が大きくなった場合距離データの度数分布が近方にずれる様子を説明するグラフである。
【図9】帯域幅が小さくなった場合距離データの度数分布が遠方にずれる様子を説明するグラフである。
【図10】従来のFMパルスドップラーレーダー装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 変調用電圧発生器、2 電圧制御発振器(三角波発振器)、3 送受切り替えスイッチ、4 送信用アンプ、5 送信用アンテナ、6 対象物、7 受信用アンテナ、8 受信用アンプ、9 ミクサ、10 ローパスフィルタ、11 AGCアンプ、12 A/D変換器、13 距離演算装置、 14 距離補正装置(比較検出手段)、15 車速センサ(自車速度測定手段)、16 帯域幅補正装置(比較検出手段)。
Claims (10)
- 上昇・下降を繰り返す周波数をもった変調波をパルス変調して送信し、対象物で反射された反射波をパルス幅と同じ間隔のレンジゲート毎に受信し、各レンジゲートに相当する距離と、送信波の周波数と受信波の周波数の差から対象物の距離と相対速度とを求めるFMパルスドップラーレーダー装置において、
自車速度を測定する自車速度測定手段と、
検知したレンジゲートに相当する距離と、送信波の周波数と受信波の周波数差から求めた距離とを比較し、上記自車速度と上記相対速度に基づいて、送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検出する比較検出手段と
を備えたことを特徴とするFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、検知したレンジゲート幅と、送信波の周波数と受信波の周波数差から求めた距離から逆算して求めたレンジゲート幅との差から、上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検出する
ことを特徴とする請求項1記載のFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、複数の対象物により求めた上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を時間的に積算し平均を求める
ことを特徴とする請求項1または2に記載FMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知し、該距離誤差に基づいて距離演算結果を補正する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知し、該距離誤差に基づいて送信周波数の帯域幅の誤差を修正することで、上記距離演算結果を補正する
ことを特徴とする請求項4記載のFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、誤差を求める対象物を停止物に限定して上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、自車が停止しており、かつ誤差を求める対象物も停止している場合にのみ、上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、誤差を求める対象物を自車が追従する走行車両に限定し、上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、各レンジゲートでの送信波の周波数と受信波の周波数の差から求めた対象物までの距離を、一定時間積算し、その度数分布から上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差を検知する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のFMパルスドップラーレーダー装置。 - 上記比較検出手段は、上記送信周波数の帯域幅の誤差による距離誤差が所定の値を超えた場合に装置の異常とする
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のFMパルスドップラーレーダー装置。
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