JP3600322B2 - 免震建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、事務所ビルや、マンション等の集合住宅等に応用される免震建物に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来、中高層ビル等の建物では、免震構造として、積層ゴムを用いた減衰装置を基礎下に設置し、地震に対する水平力を上部へ極力伝えないようにしている。しかし、満足できる免震性,制震性を得ることが難しい。
この他の免震構造として、各階の床スラブを吊り材で主構造体に吊り下げ、床スラブの周囲と主構造体の間に減衰装置を介在させたものが提案されている。しかし、これによっても十分な免震性を得ることは難しい。
この発明の目的は、免震性,制震性の向上が図れる免震建物を提供することである。
【0003】
【課題を解決するための手段】
この発明の免震建物は、地上に複数階の床を有する免震建物であって、主構造体の上部からダンパまたはばねを介して線材を垂下させ、上記複数階における全ての階の床版を、同じ線材の各高さ位置に個々に吊り、各床版の周囲と前記主構造体の間にダンパまたはばねを介在させ、前記線材の下端にフィン付き部材を設け、このフィン付き部材が浸る粘性流体の貯槽を建物の下部に設けたものである。
前記線材は、鉄筋等の金属ロッドまたはワイヤケーブルとすることが望ましい。フィン付き部材は大質量体であっても良い。また、前記線材は間仕切内に納めても良い。フィン付き部材と前記貯槽の底面の間にはベアリングを介在させても良い。
前記線材は、各階の間仕切り内に納めても良い。
【0004】
この構成によると、各階の床版は、主構造体に対してダンパまたはばねを介して線材で吊られ、周囲と主構造体の間にもダンパまたはばねが介在され、かつ吊り下げ用の線材の下端に設けたフィン付き部材が粘性流体に漬かっているため、これらダンパまたはばねによる減衰作用と、粘性流体による減衰作用との相乗作用で、揺れが最小限に抑制される。
また、線材が鉄筋等の金属ロッドまたはワイヤケーブルである場合、細くて済むため、間仕切内に納めることができ、室内に太い柱型等が突出しなくて室内を広く使用できる。
【0005】
【実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1に基づいて説明する。この免震建物1は、主構造体2の上部2aからダンパまたはばね3を介して線材4を垂下させ、線材4で各階の床版5を吊り、各床版5の周囲と主構造体2の間にダンパまたはばね6を介在させてある。線材4の下端にはフィン付き部材7を設け、このフィン付き部材7が漬かる粘性流体8の貯槽9を建物1の下端の全体に設けてある。
【0006】
建物1は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、または鉄骨鉄筋コンクリート造の建物であり、各隅の柱と上端の梁で鉄骨架構等からなる主構造体2が構成される。コンクリート系とする場合は、前記柱および梁の他、壁スラブおよび屋上の床スラブも主構造体2を構成する。前記貯槽9は、主構造体2の地盤面GLよりも下方の地下部分で構成され、建物1の基礎を兼ねる。なお、貯槽9は、主構造体2やその基礎と別体に構築されたものであっても良い。
【0007】
床版5は、コンクリート系の床スラブであっても良く、また鉄骨製の床梁に床板を張ったものであっても良い。鉄骨製床梁を用いたものである場合は、床梁の部分で線材4に吊る。線材4は、鋼線、鉄筋等の金属ロッドであっても、また鋼線のより線からなるワイヤケーブルであっても良い。線材4は、各階の間仕切10内に納めてある。線材4を吊るダンパまたはばね3と、床版5の周囲に設けるダンパまたはばね6は、粘性流体を使用した粘性ダンパや、高減衰性の弾性部材、あるいは粘弾性部材、弾塑性材等が使用できる。これらの部材の組み合わせをダンパまたはばね3,6に使用しても良い。線材上端のダンパまたはばね3と、床版周囲のダンパまたはばね6との組み合わせも、上記の各部材の任意の組み合わせで良い。
【0008】
フィン付き部材7は、ある程度大質量の部材であり、周囲に放射状にフィンを形成したものとしてある。フィン付き部材7は、下面にローラベアリング等のベアリング11を取付け、貯槽9の底面9a上を転がり自在としてある。
粘性流体8は、ある程度の粘性を有するオイル等からなり、シリコンオイル等が使用できる。
【0009】
この構成によると、各階の床版5は、主構造体2に対してダンパまたはばね3を介して線材4で吊られ、周囲と主構造体2の間にもダンパまたはばね6が介在され、かつ吊り下げ用の線材4の下端に設けたフィン付き部材7が粘性流体8に漬かっているため、これらダンパまたはばね3,6による減衰作用と、粘性流体8の粘性抵抗による減衰作用との相乗作用で、揺れが最小限に抑制される。特に、粘性流体8は、建物1の建築面積の大部分を占める広い範囲の貯槽9に溜めたものであるため、大きな振幅にも対応できる。また、このように各種の減衰要素で減衰作用を得るようにしたため、建物1の固有振動数に近い振動数の振動が加わった場合も、共振が生じ難い。
線材4が鉄筋等の金属ロッドまたはワイヤケーブルである場合は、細くて済むため、前記のように間仕切10内に納めることができ、室内に太い柱型等が突出しなくて室内を広く使用できる。
【0010】
図2はこの発明の他の実施例を示す。この例は、主構造体2が鉄骨架構からなり、貯槽9が主構造体2とは別体の鉄筋コンクリート製とされたものである。貯槽9は主構造体2の基礎となる。その他の構成は前記実施例と同様である。この構成の場合も、前記実施例と同様に優れた免震性が得られる。
【0011】
【発明の効果】
この発明の免震建物は、主構造体の上部からダンパまたはばねを介して線材を垂下させ、前記線材で各階の床版を吊り、各床版の周囲と前記主構造体の間にダンパまたはばねを介在させ、前記線材の下端にフィン付き部材を設け、このフィン付き部材が漬かる粘性流体の貯槽を建物の下端に設けたため、優れた免震性,制震性が得られる。
線材が鉄筋等の金属ロッドまたはワイヤケーブルである場合は、細くて済むため、間仕切内に納めることができて室内に太い柱型等が突出せず、室内を広く使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施の形態の概略断面図である。
【図2】この発明の他の実施の形態の概略断面図である。
【符号の説明】
1…建物、2…主構造体、3,6…ダンパまたはばね、4…線材、5…床版、7…フィン付き部材、8…粘性流体、9…貯槽
Claims (7)
- 地上に複数階の床を有する免震建物であって、主構造体の上部からダンパまたはばねを介して線材を垂下させ、上記複数階における全ての階の床版を、同じ線材の各高さ位置に個々に吊り、各床版の周囲と前記主構造体の間にダンパまたはばねを介在させ、前記線材の下端にフィン付き部材を設け、このフィン付き部材が漬かる粘性流体の貯槽を建物の下部に設けた免震建物。
- 前記線材が鉄筋等の金属ロッドである請求項1記載の免震建物。
- 前記線材がワイヤケーブルである請求項1記載の免震建物。
- フィン付き部材が大質量体である請求項1記載の免震建物。
- 前記線材を間仕切内に納めた請求項1または請求項2または請求項3または請求項4記載の免震建物。
- フィン付き部材と前記貯槽の底面の間にベアリングを介在させた請求項5記載の免震建物。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、各階の間仕切り内に前記線材を納めた免震建物。
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JP21816195A JP3600322B2 (ja) | 1995-08-02 | 1995-08-02 | 免震建物 |
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JP21816195A JP3600322B2 (ja) | 1995-08-02 | 1995-08-02 | 免震建物 |
Publications (2)
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JPH0941721A JPH0941721A (ja) | 1997-02-10 |
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Family Applications (1)
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JP21816195A Expired - Fee Related JP3600322B2 (ja) | 1995-08-02 | 1995-08-02 | 免震建物 |
Country Status (1)
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Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
1995
- 1995-08-02 JP JP21816195A patent/JP3600322B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0941721A (ja) | 1997-02-10 |
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