JP3600254B2 - 日焼け止め剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、日焼け止め剤、即ち、290〜400nmの範囲の波長の紫外線を吸収可能な化合物に関する。本発明はさらに、日焼け止め剤を配合したヒトの皮膚に適用するための日焼け止め組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に言えば、高層大気を通り抜けて地表に達する有害な紫外(UV)線、特に日光から生じた紫外線は次のように分類され得る:
i.真皮の真上で吸収され、紅斑及び皮膚の色素沈着の原因となる、皮膚に対して強力な生理病理学的活性を有する富エネルギーUV−B線(波長290〜320nm);並びに
ii.そのエネルギーは非常に低く、引き起こす光生物学的作用は自然では非常に長期に及び、例えば皮膚の老化を促す、皮膚の深層(真皮まで及びそれ以上)にまで透過するUV−A線(波長320〜400nm)。
【0003】
日焼け止め組成物はUV−A及びUV−B線の両方に対する保護を提供することが望ましいが、UV−A照射に起因する長期光生物学的作用を防止するためにUV−A線に対する保護が特に望ましい。
【0004】
天然鉱物性ヒドロタルサイトは、層状(layerd)複水酸化物として時折公知の種類の物質の一例であって、一般式:
【0005】
【化3】
Figure 0003600254
【0006】
を有する。
【0007】
上記式中、Nは1つ又はそれ以上の3価の金属イオンである。Mは1つ又はそれ以上の2価の金属イオンであるかあるいは1価のリチウムである。
【0008】
Mが2価の場合にはy=nであり、Mが1価の場合にはy=n−mである。Xは陰イオンの1つ又は混合物である。
【0009】
これらの物質中で、金属イオンは、金属イオンがOH基を介して一緒に結合している層中に存在する。陰イオンXは金属イオンの層の間の中間層に位置する。xは陰イオン上の電荷であり、yは混合金属ヒドロキシ陽イオン上の電荷である。
【0010】
層状複水酸化物は、Meyn et al.,Inorganic Chemistry,29 5201(1990)及びMiyata,Clays and Clay Minerals,31,305(1983)を含めた多数の文献に記載されている。これらの文献を参照すると、陰イオンXが他の陰イオンと交換され得ることがこれらの複水酸化物の特性であることが判る。天然ヒドロタルサイトそれ自体においては、中間層陰イオンは炭酸塩である。今までに合成された多数の複水酸化物においては、中間層陰イオンは無機であるが、種々の脂肪族及び芳香族カルボキシレートを含めた有機陰イオンの混入についてもいくつかの開示がある。Meyn等(上記参照)は、金属が亜鉛/アルミニウム、亜鉛/クロム又はリチウム/アルミニウムである場合、中間層陰イオンとしてナフタレン−1−スルホネート、サリチレート及びいくつかの他の有機物質を混入することを開示している。Chibwa,ケンブリッジ大学のPhD論文(1989)は、中間層陰イオンとしてクロロシンナメートの混入を開示している。
【0011】
層状複水酸化物の種々の応用が、特に化学触媒としての使用を含めて、科学文献に示されている。
【0012】
広義には、本発明は、日焼け止め剤として使用される、中間層陰イオンの少なくともいくつかが290〜400nmの範囲の紫外線を吸収する層状複水酸化物を提供する。
【0013】
第一の態様において、本発明は、式:
【0014】
【化4】
Figure 0003600254
【0015】
(式中、Nは3価の金属イオンの1つ又は混合物であり、Mは2価の金属イオンの1つ又は混合物であるかあるいはリチウムであって、Mが2価の場合にはy=nであり、Mがリチウムの場合にはy=(n−m)であり、Xはその少なくともいくつかが290〜400nmの範囲の波長の少なくとも一部で紫外線吸収を示す中間層陰イオンを表す)
の層状複水酸化物を配合した化粧品的に許容可能なビヒクルを含むヒトの皮膚に適用するための日焼け止め組成物を提供する。
【0016】
第二の態様において、本発明は、日焼け止め剤としての上記した層状複水酸化物の使用を提供する。
【0017】
第三の態様は、本発明は、陰イオンXの大部分がクロロシンナメート、サリチレート又はナフタレン−1−スルホネートである公知の物質を除く、上記した層状複水酸化物を提供する。
【0018】
本発明のある好ましい形態は、層状複水酸化物に混入したときにその混入前に当該陰イオンが示すUV−A吸収に比して高いUV−A吸収を示す中間層陰イオンを含む層状複水酸化物に関する。
【0019】
本発明において、3価金属は、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、マンガン及びスカンジウムのうちの1つ又はそれ以上である。
【0020】
2価金属は、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン及び鉄のうちの1つ又はそれ以上である。
【0021】
考えられ得るイオンのリストから判るように、遷移金属のニッケル、マンガン及び鉄は2価又は3価の状態をとり得る。これらの金属の少なくともいくつかは同一物質中に2価イオンと3価イオンとを提供することができる。
【0022】
層状複水酸化物において、1価又は2価イオン対3価イオンの比率は、m/n比で示される。本発明で用いる層状複水酸化物の金属イオンMが2価の場合には、m/n比は好ましくは1〜5の範囲である。1価イオンMの場合には、m/nは好ましくは0.33〜0.5の範囲である。
【0023】
zの値は、一般的にはmとnの和の0〜10倍、さらに好ましくは0〜2倍の範囲である。これは次のように表され得る:
【0024】
【数1】
Figure 0003600254
【0025】
さらに好ましくは
【0026】
【数2】
Figure 0003600254
【0027】
概して、紫外線吸収性陰イオンは290〜400nmの所定の範囲の少なくとも一部でかなり強力な吸収を示すのが望ましい。これは、酸形態又は単純アルカリ金属もしくはアンモニウム塩の陰イオンが、290〜400nmの所定の波長範囲の少なくとも一部で少なくとも2×10、好ましくは3×10、さらに好ましくは少なくとも5×10、もっと好ましくは8×10のモル吸光係数の吸収を示すという要件として明記される。
【0028】
このような陰イオンを層状複水酸化物中に中間層陰イオンとして混入した場合、その紫外線吸収は概してほとんど変わらずに保持されるということが判明した。
【0029】
しかし、本発明のある好ましい態様において、使用する陰イオンは、層状複水酸化物に混入した場合にその混入前に当該陰イオンが示したUV−A吸収に比して高いUV−A吸収を示す陰イオンである。したがって、本発明の好ましい態様においては、UV−A防止の増強は、複水酸化物中に特定の陰イオン(さらに詳しく後述する)を混入することにより得られる。
【0030】
有効な紫外線吸収は、その最大値が所定の範囲外である吸収帯により提供される。例えば、p−メトキシシンナメートイオンは285nmで吸収最大を示すが、その吸収帯は290nm〜少なくとも約320nmまでの範囲に亘って強力な吸収を提供するのに十分な広さである。
【0031】
260〜360nmの範囲で最大値を有する吸収帯により290〜400nmの範囲の吸収が提供される場合もしばしばある。
【0032】
好ましい陰イオンは、400〜700nmの可視帯、特に450nm以上、、とりわけ450又は500〜650nmの部分で強い吸収を示さない。このような範囲における吸収の吸光係数は、好ましくは当該範囲を通じて5×10以下である。
【0033】
ある物質のモル吸光係数は通常溶液中で測定され、次式:
【0034】
【数3】
Figure 0003600254
【0035】
[式中、Iは試料を透過した放射線の強度であり、
は同一溶媒で構成されるが被験の物質を含有しない参考サンプルを透過した放射線の強度であり、
cはモル濃度(mol/リットル)であり、そして
lは溶液中の路長(cm)である]
で示される。
【0036】
紫外線を吸収する中間層陰イオンXの割合はかなり少なくてもよく、例えば存在する全中間層陰イオンの5モル%であり得るが、存在する中間層陰イオンの大部分のように多くてもよく、100%までということさえある。
【0037】
紫外線を吸収する中間層陰イオンは、下記のもののうちの1つ又はそれ以上である:
パラアミノベンズイミダゾール−5−スルホネート
3−イミダゾール−4−イルアクリレート
サリチレート
p−メトキシシンナメート
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート
3,3,5−トリメチルシクロヘキシル−2−アセトアミドベンゾエート
シンナメート
p−アミノベンゾエート
3,4−ジメトキシフェニルグリオキシレート
α−(2−オキソボルン−3−イリデン)−p−キシレン−2−スルホネート
α−(2−オキソボルン−3−イリデン)トルエン−4−スルホネート
α−シアノ−4−メトキシシンナメート
2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホネート。
【0038】
これらの陰イオンは、遊離状態で290〜400nmの範囲の波長で吸収を示すことが公知である。それらはすべて、日焼け止め剤として用いるのに許容可能な物質とみなされる。
【0039】
上記したように、これらの陰イオンを層状複水酸化物中に中間層陰イオンとして混入すると、紫外線を吸収するその能力は保持されることが判明した。ほとんどの場合、上記の陰イオンを層状複水酸化物中に混入した場合、紫外線吸収スペクトルの変化は無視できる程度である。
【0040】
本発明の目的に適した別の群の有機物質は、分子中にフェノール性陽子又は他の弱酸性陽子を混入することにより弱酸官能価を含有するものである。この陽子を除去すると層状複水酸化物中に混入可能な陰イオンを生成し得るということも判明した。このような化合物に由来する陰イオンは親化合物とは明らかに異なる吸収スペクトルを有するが、これらの陰イオンは層状複水酸化物中に混入すると、290〜400nm(UV−A領域)の光の有意な吸収を示す。事実、本発明の好ましい態様においては、層状複水酸化物の非存在下で親化合物の使用により得られるものより高いUV−A防止が得られるように層状複水酸化物中に混入した場合に、これらの陰イオンが上記したスペクトルを示すという効果が認められている。
【0041】
このようなフェノール系化合物の重要な群としては、ヒドロキシル化ベンゾフェノン誘導体が挙げられる。弱酸性エノール形態で存在し得るある種のジケトン化合物を配合してもよい。本発明の好ましい態様に用いられる陰イオンが得られる化合物として、CTFA名と化学名で示す物質を非限定的に例示する:
Figure 0003600254
Figure 0003600254
【0042】
中間層陰イオンを提供し得る別の化合物としては、Givaudan Corp.からPARSOL 1789として販売されているブチルメトキシジベンゾイルメタンが挙げられる。
【0043】
置換1,3−ジケトン(系統名 1−(4−メトキシ−5−ベンゾフラニル)−3−フェニル−1,3−プロパンジオン)であるPongomolから得られる陰イオン種も本発明のこの形態に含まれる。それは、250〜500nmの範囲内で紫外線吸収帯、並びに5,000〜70,000の吸光係数を有する。ジケトンは、米国特許第5,152,983号に詳細に記載されており、その記載内容は参照により本明細書中に含めるものとする。
【0044】
これらの物質のうち、ベンゾフェノン−4及びベンゾフェノン−9はスルホン酸基により付与される強酸官能価とフェノール性陽子により付与される弱酸官能価とを有する。これらの物質(及びベンゾフェノン−4の一ナトリウム塩であるベンゾフェノン−5)に関しては、その物質の多形態の陰イオンが生成され、層状複水酸化物中に混入され得る。したがって、例えばベンゾフェノン−4を用いると、一及び二陰イオンの両方が層状複水酸化物中に混入される。層状複水酸化物中に混入されるこの物質の一陰イオン及び二陰イオン形態、並びにその任意の組み合わせは日焼け止め剤として有用であって、本発明の範囲内であると考えられる。
【0045】
層状複水酸化物は、水及びその他の溶媒に不溶である。しかしながら、それらは水を含めた溶媒中に分散液として懸濁し得る。したがって本発明の日焼け止め組成物は、ビヒクル中に分散された、紫外線吸収性中間層陰イオンを有する層状複水酸化物を含む。好ましくはビヒクルは水性であって、この中に層状複水酸化物を懸濁する。使用に関しては、本組成物を皮膚に擦り込んで、次に、ビヒクル中に含有される任意の揮発性有機化合物と一緒に水を蒸発させる。これにより、皮膚上に沈着物として層状複水酸化物が残留する。物質の層構造は、皮膚上に連続層として物質を沈着させるのを助ける。
【0046】
水性ビヒクルは、その乳濁液中に懸濁される層状複水酸化物を含む水中油型乳濁液である。多数の層状複水酸化物はこのような乳濁液の水性相に懸濁されるが、いくつかのものは疎水性であって、油相に懸濁する。
【0047】
層状複水酸化物は不溶性物質であり、且つ分子サイズが慣用の日焼け止め剤である有機化合物のサイズに比して大きい高分子である。
【0048】
これらの特性は有利である。その大きな分子サイズ及び/又はその不溶性により、層状複水酸化物は一旦皮膚に沈着されると、皮膚に浸透する傾向も皮膚表面上を移動する傾向も示さない。(皮膚を通って体内に浸透したり、眼のような敏感な領域に移動することは、水溶性日焼け止め剤を用いたときに起り得る危険である。)本発明の物質は不溶性であるため使用者が水泳中も溶け出さないことも利点の1つである。
【0049】
紫外線吸収性有機中間層陰イオンは水性溶液中で塩化物イオンとイオン交換する傾向がないことが判明し、これはこれらの陰イオンが海水と接触した際にイオン交換により浸出しないことを示している。
【0050】
本発明の層状複水酸化物を含有する日焼け止め組成物は、層状複水酸化物を水性ビヒクル(その最も簡単なものは水である)に添加し、次いで混合して懸濁液を生成することにより調製し得る。層状複水酸化物は自己増粘性及び自己懸濁性を有しており、水に分散された層状複水酸化物が粘度を高め、自動的に懸濁液中の固体の保持を助長する。
【0051】
本発明の日焼け止め組成物は、0.05〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%、もっと好ましくは2〜20重量%の層状複水酸化物を含有する。もちろん、含有量は達成される紫外線吸収の量に影響を及ぼす。したがって、紫外線照射を高度に防止するための日焼け止め組成物に対しては、上限に近い量を用いる。
【0052】
その他の物質を本発明の日焼け止め組成物中に含有してもよい。別の日焼け止め剤を混入することも本発明の範囲内である。考えられるものとしては、非イオン性有機日焼け止め剤、微細二酸化チタンのような無機日焼け止め剤、及び有機ポリマーの粒子が挙げられる。
【0053】
日焼け止め組成物中に含有し得るその他の物質としては、皮膚緩和油、湿潤剤及び平滑性を増強するための液体、特にシリコーン油が挙げられる。任意に存在させる微量成分としては、香料及び防腐剤が挙げられる。
【0054】
紫外線吸収性中間層陰イオンを混入した層状複水酸化物の調製は、一般に2段階で実施する:第一段階はいくつかのその他の陰イオンを有する層状複水酸化物の調製であり、第二段階は少なくともいくつかの陰イオンを紫外線吸収性陰イオンに置換するためのイオン交換である。
【0055】
層状複水酸化物の調製に関しては文献に多数の方法が開示されている。好ましくは高温で、ある金属の酸化物の懸濁液を別の金属の可溶性塩、特に硝酸塩、塩化物又は硫酸塩で処理し、その後固体を濾別するとよいことが判明した。
【0056】
層状複水酸化物は、存在する元素に関する化学分析により及びX線回析によって確認し得る。
【0057】
紫外線吸収性中間層陰イオンを導入するためのイオン交換は、導入したい陰イオンの水性溶液中に層状複水酸化物を懸濁することにより実施し得る。その工程は、反応速度を増大するために高温で実施する。次に層状複水酸化物を濾別する。それは、層状複水酸化物の水性懸濁液に関して実施した化学分析及び紫外線分光分析法によって特徴付けられる。
【0058】
異なる陰イオンは、層状複水酸化物の中間層部位に対して異なる親和性を有する。有機陰イオンは硫酸塩、塩化物及び硝酸塩陰イオンと置換し得、よってそれらをイオン交換により層状複水酸化物中に混入させ得ることが判明した。これに対して、炭酸塩イオンは有機陰イオン及び上記の無機陰イオンと置換する。したがって、中間層陰イオンとして炭酸塩を有する層状複水酸化物は、イオン交換による本発明の日焼け止め剤の調製のための出発物質として選択すべきでない。
【0059】
しかしながら、炭酸塩形態の層状複水酸化物は、望ましい紫外線吸収種が塩としてよりむしろその酸(水素イオン)形態で用いられる場合に、出発物質として用い得る。この場合、炭酸塩陰イオンは、イオン交換によるよりむしろ分解反応により置換される。
【0060】
【実施例】
実施例1:
ヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウムの調製
1リットル容量のねじ蓋付ポリプロピレンびんに加えた250mlの蒸留水に46.8gの酸化マグネシウムを懸濁させた。145.1gの水和硝酸アルミニウム(Al(NO・9HO)を500mlの蒸留水に溶解させ、その結果できた溶液を、撹拌しながら上記の酸化マグネシウム懸濁液に加えた。びんの蓋をして2分間激しく振盪した後、90℃に加熱したサーモスタット付きオーブンに5日間保持した。この後、固形物を濾別し、水で入念に洗浄した後凍結乾燥した。この乾燥物を、飽和塩化ナトリウム溶液を入れたデシケーター中に保持することにより最終的に水蒸気で平衡化した。
【0061】
この物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
Mg/Alのモル比 =2.0、
%MgO+Al =49.8、
%HO(脱ヒドロキシル化により生じる)=16.7、
%NO =23.2。
【0062】
これはMgAl(OH)12(NOの無水物の一般式と一致する。
【0063】
水和物のX線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物はハイドロタルク石に類似した層状複水酸化物(layered double hydroxide)であり、1.48A及び1.51A(以下Aは「オングストローム」を示す)に、特徴的な線間隔(linespacings)が存在すること、
ii)この層間硝酸塩含有物質に特徴的である8.8Aに主要な回折線(major line)があることを示した。
【0064】
この物質を2×10−2g/kg濃度で水に懸濁させた懸濁液のuvスペクトルを250nmから500nmの範囲(当然多少は可視範囲に及ぶ)に亙って測定した結果、吸収帯を示さなかった。
【0065】
実施例2:
イオン交換によるケイ皮酸陰イオンのヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
13.47gのケイ皮酸を150mlの水に溶解/懸濁させた。5.1gの水酸化カリウムを50mlの水に溶解させた後、これを上記の懸濁液に加え清澄溶液を得た。この溶液を、250ml容量のポリプロピレン製ねじ蓋付びんに入れた、実施例1で調製した如き硝酸塩型の層状複水酸化物25gに加えた。びんに蓋をし、2分間振盪した後、90℃で2時間加熱した。固形物を濾別し、温水で洗浄した後凍結乾燥した。この生成物を、飽和塩化ナトリウム溶液を入れたデシケーター中に保持することにより最終的に水蒸気で平衡化した。
【0066】
得られた物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
%MgO+Al=40.4、
%C =23.0。
【0067】
これはMgAl(OH)12(cin)1.4 (NO0.6 (ここでcin=ケイ皮酸イオン(cinnamate)である)の無水物の一般式と一致する。
【0068】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった16.9Aに主要な回折線があることを示した。
【0069】
この物質を1.6×10−2g/kg濃度で水に懸濁させた懸濁液のuvスペクトルを250nmから500nmの範囲に亙って測定した結果、268nmに中心を持つ単一のピークを示した。又、ケイ皮酸ナトリウム及びケイ皮酸の溶液もこの波長に接近した単一のピークを示した。
【0070】
実施例3:
ケイ皮酸及び水酸化カリウムの量を2倍にし(ケイ皮酸26.94g、水酸化カリウム10.2g)、反応時間を18時間に増やしたことを除いては、実施例2と同様の手法を繰り返した。
【0071】
この物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
%MgO+Al=36.29、
%C =27.34。
【0072】
これはMgAl(OH)12(cin)1.84(NO0.16(ここでcin=ケイ皮酸イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0073】
この実施例は、斯く、増加量のケイ皮酸イオンをイオン交換によって導入できることを示している。
【0074】
実施例4:
イオン交換によるp−メトキシケイ皮酸イオンのヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
ケイ皮酸を32.36gのp−メトキシケイ皮酸に置き換えたことを除いては実施例3と同様の手法を繰り返した。
【0075】
得られた物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
%MgO+Al=33.51、
%C =29.05。
【0076】
これはMgAl(OH)12(mcin)1.90(NO0.10(ここでmcin=p−メトキシケイ皮酸イオン(p−methoxy cinnamate)である)の無水物の一般式と一致する。
【0077】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった18.2Aに主要な回折線があることを示した。
【0078】
この物質を2.5×10−2g/kg濃度で水に懸濁させた懸濁液のuvスペクトルを250nmから500nmの範囲に亙って測定した結果、285nmに中心を持つ幅広のピークを示した。
【0079】
実施例5:
イオン交換による2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸イオンのヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
ケイ皮酸を24.9gの2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸に置き換え、水酸化カリウムを3.6gの水酸化ナトリウムに置き換えたことを除いては実施例2と同様の手法を繰り返した。
【0080】
得られた物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
%MgO+Al=35.47、
%C =23.98。
【0081】
これはMgAl(OH)12(pbs)1.14(NO0.86(ここでpbs=2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸イオン(2−phenylbenzimidazole−5−sulphonate)である)の無水物の一般式と一致する。
【0082】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった22Aに主要な回折線があることを示した。
【0083】
この物質を2.5×10−2g/kg濃度で水に懸濁させた懸濁液のuvスペクトルを250nmから500nmの範囲に亙って測定した結果、304nmに最大吸収を持つ幅広のピークを示した。又、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸ナトリウム及び2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸溶液も同様のピークを示した。
【0084】
実施例6:
反応時間を2時間から18時間に増やしたことを除いては、実施例5と同様の手法を繰り返した。
【0085】
得られた物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
%MgO+Al=27.92、
%C =28.08。
【0086】
これはMgAl(OH)12(pbs)1.70(NO0.30(ここでpbs=2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0087】
実施例7:
2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸及び水酸化ナトリウムの量を2倍にしたことを除いては、実施例6と同様の手法を繰り返した。
【0088】
得られた物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
%MgO+Al=27.63、
%C =29.21。
【0089】
これはMgAl(OH)12(pbs)1.78(NO0.22(ここでpbs=2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0090】
実施例8:
イオン交換によるベンゾフェノン−4のヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
7.41gの2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸(ベンゾフェノン−4)を150mlの水に溶解させた。1.35gの水酸化カリウムを50mlの水に溶解させ、これらの2種類の溶液を混合した。この溶液を、250ml容量のネジ蓋付きポリプロピレンびんに入れた、実施例1で得たヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム6.25gに加えた。びんに蓋をして2分間振盪した後、90℃で2時間加熱した。固形物を濾別し、新しく調製した上記と同じ2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸及び水酸化カリウム溶液と接触させた。この混合液を90℃で18時間加熱した。しかる後、固形物を濾別し、温水で洗浄し、凍結乾燥した。この物質を、飽和塩化ナトリウム溶液を入れたデシケーター中に保持することにより最終的に水蒸気で平衡化した。
【0091】
得られた物質の化学組成を分析により決定した。結果は、次のとおりであった:
%MgO+Al=34.57、
%C =25.42。
【0092】
赤外線分光は、この物質中に残存硝酸塩が存在しないことを示した。これはMgAl(OH)12(Benz)1.16(ここでBenzは2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸の陰イオン、即ちベンゾフェノン−4の陰イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0093】
ベンゾフェノン−4陰イオンは、一部は一価のイオン種として、また一部は二価のイオン種として構造式中に存在すると考えられる。
【0094】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった20A及び13.4Aに主要な回折線があることを示した。(20A線は主に一価のイオン種を含む層に相当し、13.4A線は二価のイオン種を含む層に相当する)。
【0095】
この物質を5×10−2g/kg濃度で水に懸濁させた懸濁液の、250nmから500nmの範囲に亙って測定したuvスペクトルは、約250、285、320及び365nmに中心をもつピークを有する幅広い吸収帯を有する。
【0096】
実施例9:
イオン交換によるベンゾフェノン−4のヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
28gのベンゾフェノン−4及び7.2gの水酸化ナトリウムを200mlの蒸留水に溶解させ、鮮黄色の溶液を得た。この溶液を、250ml容量のネジ蓋付きポリプロピレンびんに入れた、実施例1で調製した如き硝酸塩型の層状複水酸化物25gに加えた。びんに蓋をして2分間振盪した後、90℃で2時間加熱した。固形物を濾別し、温水で洗浄した後、凍結乾燥した。この生成物を、飽和塩化ナトリウム溶液を入れたデシケーター中に24時間保持することにより最終的に水蒸気で平衡化した。
【0097】
得られた物質の化学組成を分析により決定した。結果は、次のとおりであった:
%MgO+Al=40.47、
%C =20.90、
%N =0.82。
【0098】
これはMgAl(OH)12(Benz)0.81(NO)0.38(ここでBenzはベンゾフェノン−4の陰イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0099】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった13.3Aに主要な回折線があることを示した。(これは二価の陰イオンのベンゾフェノン−4を主として含む層に相当する)。
【0100】
この物質を4×10−2g/kg濃度で水に懸濁させた懸濁液の、250nmから500nmの範囲に亙って測定したuvスペクトルは、約250、285及び365nmに中心をもつピークを有する幅広い吸収帯を有する。
【0101】
実施例10:
イオン交換によるベンゾフェノン−4のヒドロキシ塩化アルミニウムマグネシウム中への導入
ヒドロキシ塩化アルミニウムマグネシウム(掘削泥水添加物XUS50165.04L)の試料をDow Chemical Companyから入手した。この物質は、欧州特許出願公開第207810号及び対応の米国特許第4664843号、第4790954号及び第5094778号に記載される種類のものである。この物質のX線回折分析は、主要な結晶相が7.8Aの基礎間隔を有する層状複水酸化物であることを示した。
【0102】
4.95gのベンゾフェノン−4及び1.29gの水酸化ナトリウムを40mlの蒸留水に溶解させ、鮮黄色の溶液を得た。この溶液を、250ml容量のネジ蓋付きポリプロピレンびんに入れた、上記のDOW社の原料10gに加えた。びんにをして2分間振盪した後、90℃で2時間加熱した。固形物を濾別し、温水で洗浄した後、凍結乾燥した。この生成物を、飽和塩化ナトリウム溶液を入れたデシケーター中に24時間保持することにより最終的に水蒸気で平衡化した。
【0103】
得られた物質の化学組成を化学分析により決定した。結果は、次のとおりであった:
%MgO+Al=46.63、
%C =18.01。
【0104】
これはMgAl(OH)16(Benz)0.8 (Cl,OH)0.4 の無水物の一般式と一致する。
【0105】
X線回折パターンは、
i)存在する主要な結晶相は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった13.8Aに主要な回折線があることを示した。
【0106】
実施例11:
イオン交換によるベンゾフェノン−3のヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
4.5gのNaOH及び17.1gのベンゾフェノン−3を350mlの脱イオン水に溶解させた。しかる後、この溶液を、実質的に実施例1で述べた如く調製したヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム14.1gを有するびんに加えた。この混合液を振盪し、室温で18時間静置した。得られた黄色固形物を中位の多孔度のフリット漏斗中、80℃で1500mlのエタノール続いて1000mlの水で洗浄した。得られた固形物を濾過及び凍結乾燥し、自由流動性の乾燥黄色粉末固形物を得た。
【0107】
この物質の化学組成を化学分析により決定した。結果は次の通りである:
%MgO+Al=54.5、
%C =5.25。
【0108】
これはMgAl(OH)12(Bz3)0.15(NO0.49(OH)1.36(ここでBz3はベンゾフェノン−3から誘導される陰イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0109】
X線回折データは、
i)存在する唯一の結晶物質は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった11.8Aに主要な回折線があることを示した。
【0110】
実施例12:
イオン交換によるベンゾフェノン−3のヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
8.6gのベンゾフェノン−3を50mlのエタノールに溶解させ、これを、50mlの蒸留水に溶解した1.5gの水酸化ナトリウムに加え、黄色溶液を得た。この溶液を、250ml容量のネジ蓋付きポリプロピレンびんに入れた、実施例1と同様に調製した硝酸塩型の層状複水酸化物10gに加えた。びんに蓋をして2分間振盪し、90℃で20分間加熱した後、室温で穏やかに3時間撹拌した。固形物を濾別した後、エタノール次に熱水で繰り返し洗浄した。固形生成物を凍結乾燥し、水蒸気で平衡化した。
【0111】
得られた物質の化学組成を化学分析により決定した。結果は、次のとおりであった:
%MgO+Al=47.47、
%C =12.45、
%N =1.35。
【0112】
これはMgAl(OH)12(Bz3)0.41(NO0.53(OH)1.06(ここでBz3はベンゾフェノン−3から誘導される陰イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0113】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物質は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった、ベンゾフェノン−3交換物質の特徴である11.5Aに主要な回折線があることを示した。
【0114】
実施例13:
イオン交換によるベンゾフェノン−8のヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
9.2gのベンゾフェノン−8を50mlのエタノールに溶解させ、これを、50mlの蒸留水に溶解した1.5gの水酸化ナトリウムに加え、濃オレンジ色の溶液を得た。この溶液を、250ml容量のネジ蓋付きポリプロピレンびんに入れた、実施例1と同様に調製した硝酸塩型の層状複水酸化物10gに加えた。びんに蓋をして2分間振盪し、90℃で1時間加熱した後、室温で穏やかに2時間撹拌した。固形物を濾別した後、エタノール次に熱水で繰り返し洗浄した。固形生成物を凍結乾燥し、水蒸気で平衡化した。
【0115】
得られた物質の化学組成を化学分析により決定した。結果は、次のとおりであった:
%MgO+Al=48.67、
%C =9.42、
%N =1.64。
【0116】
これはMgAl(OH)12(Bz8)0.3 (NO)0.63(OH)1.07(ここでBz8はベンゾフェノン−8から誘導される陰イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0117】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物質は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった、ベンゾフェノン−8交換物質の特徴である17.0Aに主要な回折線があることを示した。
【0118】
実施例14:
イオン交換によるブチルメトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789)のヒドロキシ硝酸アルミニウムマグネシウム中への導入
11.62gのParsol 1789を1:1(重量による)の蒸留水−エタノール混合液100mlに懸濁させ、これを、50mlの蒸留水に溶解した1.5gの水酸化ナトリウムに加え、鮮黄色溶液/懸濁液を得た。これを、250ml容量のネジ蓋付きポリプロピレンびんに入れた、実施例1で得た硝酸塩型の層状複水酸化物10gに加えた。びんに蓋をして2分間振盪し、90℃で6時間加熱した。固形物を濾別した後、アセトン次に熱水で繰り返し洗浄した。固形生成物を凍結乾燥し、水蒸気で平衡化した。
【0119】
得られた物質の化学組成を化学分析により決定した。結果は、
%MgO+Al=37.58、
%C =27.68、
%N =0.72。
【0120】
これはMgAl(OH)12(Par)0.81(NO0.36(OH)0.83(ここでParはParsol 1789の陰イオンである)の無水物の一般式と一致する。
【0121】
X線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物質は層状複水酸化物であること、
ii)出発物質には存在しなかった、Parsol 1789交換物質の特徴である14.9A及び11.4Aに主要な回折線があることを示した。
【0122】
実施例15:
ヒドロキシ硝酸アルミニウム亜鉛の調製
酸化マグネシウムを94.5gの酸化亜鉛に完全に置き換えたことを除いては実施例1に記載の方法によって、ヒドロキシ硝酸アルミニウム亜鉛を調製した。
【0123】
この物質の化学組成を分析により決定した。結果は次のとおりである:
Zn/Alのモル比 =2.0、
%ZnO+Al =61.5、
%HO(脱ヒドロキシル化により生じる)=12.9、
%NO =17.8。
【0124】
これはZnAl(OH)12(NOの無水物の一般式と一致する。
【0125】
水和物のX線回折パターンは、
i)存在する唯一の結晶物はハイドロタルク石に類似した層状複水酸化物であり、1.51A及び1.53Aに、特徴的な線間隔が存在すること、
ii)この層間硝酸塩含有物質の特徴である8.8Aに主要な回折線があることを示した。
【0126】
実施例16イオン交換による2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸イオンのZn/Al層状複水酸化物中への導入
2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホネート19.65gを水150mlに溶解/懸濁した。水酸化ナトリウム2.87gを水50mlに溶解した後、該懸濁物に添加して透明な溶液を得た。次いで、この溶液を、250ml容のポリプロピレン製ねじ蓋付びん中の、実施例15で得た硝酸塩型の層状複水酸化物25gに添加した。そのびんに蓋をし、2分間攪拌した後、90℃で18時間加熱した。固体を濾別し、温水で洗浄後、凍結乾燥した。この物質を、飽和塩化ナトリウム溶液が入ったデシケータ中で保管することにより最終的に水蒸気で平衡化した。
【0127】
その物質の化学組成物は、熱および元素分析により決定した。結果は次の通りである:
%ZnO+Al=37.27、
%C =26.30。
【0128】
これは、ZnAl(OH)12(pbs)1.94(NO0.06の無水物の理想的な式と一致し、X線回折パターンから、
i)存在する唯一の結晶性物質は、層状複水酸化物であること、
ii)主要な回折線が22Aにあり、これは出発物質では存在しないことがわかった。
【0129】
実施例17イオン交換によるベンゾフェノン−4のヒドロキシ硝酸アルミニウム亜鉛中への導入
水酸化ナトリウム5.6gを室温で脱イオン水225mlに溶解した。これに、21.5gのベンゾフェノン−4を添加した。その混合物を攪拌してベンゾフェノン−4を完全に溶解した。次いで、得られた溶液を、実施例15の記載に従って調製したヒドロキシ硝酸アルミニウム亜鉛25gを含むびんに移した。この混合物を浸盪し、95℃のオーブン中に18時間置いた。固体を濾過し、80℃の水1500mlで洗浄し、再び濾過し、最後に凍結乾燥した。自由流動性の黄色粉末が得られた。
【0130】
この物質の化学組成物は、分析により決定した。結果は次の通りである:
%ZnO+Al=49.0、
%C =18.0。
【0131】
これは、ZnAl(OH)12(Benz)0.94(NO0.05の無水物の式[式中、Benzはベンゾフェノン−4から誘導されるアニオンである。]と一致した。この場合、ベンゾフェノン−4は、構造中に主にジアニオン形で存在すると考えられる。このことは、X線回折データにより支持される。
【0132】
X線回折データからは、
i)存在する唯一の結晶性物質は、層状複水酸化物であること、
ii)主要な回折線が13.5Aにあり、これは出発物質では存在しない(13.5Aの線は、主として2価のイオン種を含む層に対応する。)ことがわかった。
【0133】
そのような2価のイオン種は、組成物によるUV−A保護を高めたい場合に好ましい。
【0134】
実施例18ヒドロキシ硝酸アルミニウムカルシウムの調製
溶液1:水酸化ナトリウム25gおよび硝酸ナトリウム36.4gを水175mlに溶解した。
【0135】
溶液2:硝酸カルシウム四水和物68.1gおよび硝酸アルミニウム無水和物46.8gを水325mlに溶解した。
【0136】
溶液1を1l容のポリプロピレン製びんに入れた。次いで、溶液2を約1時間かけてそのびんにゆっくり加えた。溶液2の添加中、そのびんの中身を激しく攪拌した。びんに蓋をし、90℃のオーブンに7日間入れておいた。固体を濾別し、水洗、凍結乾燥し、最後に実施例1の記載に従って水蒸気で平衡化した。
【0137】
X線回折から、その物質は、8.5Aの基礎間隔を有する層状複水酸化物を少量の未同定物質とともに含むことがわかった。
【0138】
実施例19イオン交換による2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸イオンのCa/Al層状複水酸化物中への導入
2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホネート13.8gを水150mlに溶解/懸濁した。水酸化ナトリウム2.0gを水50mlに溶解した後、該懸濁物に添加して透明な溶液を得た。次いで、この溶液を、250ml容のポリプロピレン製ねじ蓋付びん中の、実施例18で得た硝酸塩型層状複水酸化物15gに添加した。そのびんに蓋をし、2分間攪拌した後、90℃で18時間加熱した。固体を濾別し、温水で洗浄後、凍結乾燥した。その物質を、飽和塩化ナトリウム溶液が入ったデシケータ中で保管することにより最終的に水蒸気で平衡化した。
【0139】
生成物のX線回折パターンは、出発物質の特徴である8.5Aの回折線を示さなかった。その代わりに、22Aに主要な回折線が存在し、これは、出発物質では存在しなかった。
【0140】
その物質の化学組成物は、熱および元素分析により決定した。結果は次の通りである:
%CaO+Al=43.12%、
%C =23.40%。
【0141】
これは、41重量%の2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホネートを含む物質と一致する。
【0142】
実施例20ハイドロタルク石による陰イオン性日焼け止め保持に対する塩(塩化ナトリウム)の効果
実施例2で調整した物質1gを、塩化ナトリウム0.2g(この塩化物イオンは、ケイ皮酸イオンの化学量論的置換に必要な量より多い)を含む水50mlに分散させた。その懸濁物を室温で2時間攪拌し、固体を濾別した。次いで、濾液の紫外線分光分析を行ってケイ皮酸イオンの存在を調べた。測定量は、層状複水酸化物からほんの3%のケイ皮酸イオンが除去されたことと一致した。
【0143】
実施例21日焼け止め組成物の製造
下記成分を混合して75℃に加熱することにより油相を調製した:
鉱油(Sirius M85) 10.0%、
Nafol 16/18 2.0%、
モノステアリン酸グリセロール 0.5%、
ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル 0.5%。
【0144】
量は、最終物質の重量%で示す。Nafol 16/18はパルミチルアルコールおよびステアリルアルコールの混合物である。
【0145】
水相は、下記成分から調製した:
脱イオン水 74.7%、
グリセロール 2.0%、
キサンタンゴム 0.3%。
【0146】
この水相は、グリセロールを水に添加した後、高せん断ミキサー(Silverson ミキサー)を有するRhodopol中で混合することにより調製した。
【0147】
次いで、両方の相を75℃に加熱し、高せん断ミキサー中で混合した後、層状複水酸化物10%を添加した。
【0148】
次いで、そのエマルジョンを冷却した。
【0149】
層状複水酸化物は上記実施例6で調製したものであるが、上記実施例2〜10、16、17または19のいずれかで調製した層状複水酸化物を使用することも可能である。
【0150】
また、複水酸化物と種々の層間陰イオン(例えば、等量の実施例4および7の物質または等量の実施例7および8の物質)との混合物を使用することもできる。
【0151】
所望により、着色顔料を水相に少量添加して、水をその分だけ少なくすることもできる。
【0152】
実施例22(比較例)および実施例23ベンゾフェノン−4(遊離のものおよびヒドロキシ硝酸アルミニウム亜鉛に取り込まれたものの両方)を含む日焼け止め組成物の製造および特性
下記表Iの組成を有する日焼け止め製品を製造した。これらの日焼け止め製品の製造方法は次の通りである。ブチレングリコール、ジメチコーンコポリオール、EDTA、水、グリセリン、Germabenおよび紫外線吸収剤を、高せん断ホモジナイザーを使用して室温で10分間混合し、混合物Aを得た。実施例22の日焼け止め活性物質は、ベンゾフェノン−4自体であった。実施例23の日焼け止め活性物質は、実施例17で調製した、ヒドロキシ硝酸アルミニウム亜鉛中にベンゾフェノン−4がイオン交換されたものであった。別々の容器中で、オクチルドデシルネオペンタノエート、プロピレングリコールイソセト−3 アセテート、セチルジメチコーンおよびオクチルメトキシシンナメートを一緒に溶解し、上述の混合物Aに添加した。次いで、この混合物のpHを、トリエタノールアミンまたは塩酸水を必要に応じて使用することにより7.6〜7.9に調整した。エマルジョンが得られ、これを使用して下記に述べる in vitro SPF試験を行った。
【0153】
日焼け止め剤において紫外線から守るための組成物の効能を評価するために、充分確立された in vitro Sun Protection Factor (SPF)法を使用した。その方法は、Diffeyらの文献(Diffet, BL, and Robson, J, “A New Substrate to Measure Sunscreen Protection Fsctors throughout the Ultra−violet Spectrum”, J. Soc. Cosmet. Chem., 40, 127−133, (1989)) に記載されている。この方法は、本質的に、標準量の日焼け止め組成物(2mg/cm)を、表面粗さがヒトの皮膚に近い特定のテープ(Transpore ,3M社製)に塗布することから成る。次いで、日焼け止めエマルジョンフィルムの拡散透過率スペクトルを、特別に改造した分光光度計で290〜400nmにわたって測定した。通常の(紅斑)SPFは、Diffeyらによる上記文献に記載された方法でスペクトルデータから計算される。UV−A保護因子は、320〜400nmの波長における、日焼け止めフィルムの平均透過率の逆数として計算される。
【0154】
実施例22および実施例23の日焼け止め組成物に対するこれらの測定結果(各組成物に対して3〜5回反復して行った測定の平均)を下記表IIに示す。
【0155】
層状複水酸化物中にイオン交換されたベンゾフェノン−4を含む実施例23の日焼け止め物質が、広範囲の波長にわたって、ベンゾフェノン−4が層状複水酸化物中にイオン交換されていない比較例22の日焼け止め物質よりもかなり良好に紫外線から守ることができることがわかる。
【0156】
【表1】
Figure 0003600254
【0157】
【表2】
Figure 0003600254

Claims (18)

  1. (i)化粧品的に許容可能なビヒクル、及び
    (ii)下記式Iの0.05重量%から50重量%の層状複水酸化物が、
    式I:
    Figure 0003600254
    (式中、Nはアルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、マンガン及びスカンジウムのうちの3価の金属イオンの1つ又は混合物であり、Mはマグネシウム、亜鉛、カルシウム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン及び鉄のうちの2価の金属イオンの1つであるかあるいはリチウムであって、Mが2価の場合にはy=nであり、Mがリチウムの場合にはy=(n−m)であり、Xは290〜400nmの範囲の波長の少なくとも一部で2×10以上のモル吸光係数の紫外線吸収を示す5モル%から100モル%の中間層陰イオンを表す)
    で表わされ、該層状複水酸化物は該ビヒクル中に分散されている、有効量の上記(i)(ii)を含むヒトの皮膚に適用するための日焼け止め組成物。
  2. 3価金属がアルミニウムである請求項1記載の組成物。
  3. 金属Mがマグネシウム、亜鉛またはカルシウムから選択される請求項1記載の組成物。
  4. 金属Mがリチウムである請求項1記載の組成物。
  5. 中間層陰イオンXの少なくとも5モル%が、
    パラアミノベンズイミダゾール−5−スルホネート
    3−イミダゾール−4−イルアクリレート
    サリチレート
    p−メトキシシンナメート
    2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート
    3,3,5−トリメチルシクロヘキシル−2−アセトアミドベンゾエート
    シンナメート
    p−アミノベンゾエート
    3,4−ジメトキシフェニルグリオキシレート
    α−(2−オキソボルン−3−イリデン)−p−キシレン−2−スルホネート
    α−(2−オキソボルン−3−イリデン)トルエン−4−スルホネート
    α−シアノ−4−メトキシシンナメート
    2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホネート
    の1つ又は混合物から選択される陰イオンである請求項1記載の組成物。
  6. 中間層陰イオンXの少なくとも5モル%が200〜400nmの範囲の波長の少なくとも一部で紫外線吸収を示すフェノール系化合物の陰イオンである請求項1記載の組成物。
  7. 中間層陰イオンXがヒドロキシル化ベンゾフェノン部分を含む化合物の陰イオンである請求項6記載の組成物。
  8. 中間層陰イオンXの少なくとも5モル%が、
    ベンゾフェノン−1
    ベンゾフェノン−2
    ベンゾフェノン−3
    ベンゾフェノン−4
    ベンゾフェノン−5
    ベンゾフェノン−6
    ベンゾフェノン−7
    ベンゾフェノン−8
    ベンゾフェノン−9
    ベンゾフェノン−10
    ベンゾフェノン−12
    の1つ又は混合物から選択される化合物の陰イオンである請求項6記載の組成物。
  9. 中間層陰イオンXの大部分がブチルメトキシジベンゾイルメタンの陰イオンである請求項1記載の組成物。
  10. 中間層陰イオンXの大部分が1−(4−メトキシ−5−ベンゾフラニル)−3−フェニル−1,3−プロパンジオンの陰イオンである請求項1記載の組成物。
  11. 中間層陰イオンXの大部分が、
    ホモメンチルサリチレート又は
    2−エチルヘキシルサリチレート
    から選択される化合物の陰イオンである請求項7記載の組成物。
  12. 中間層陰イオンXの大部分が請求項11に定義された群から選択される陰イオンである請求項8記載の組成物。
  13. 中間層イオンの大部分がベンゾフェノン−4の陰イオンである請求項8記載の組成物。
  14. (i)化粧品的に許容可能なビヒクル、及び
    (ii)下記式Iの0.05重量%から50重量%の層状複水酸化物が、
    式I:
    Figure 0003600254
    (式中、Nはアルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、マンガン及びスカンジウムのうちの3価の金属イオンの1つ又は混合物であり、Mはマグネシウム、亜鉛、カルシウム、コバルト、ニッケル、銅、マンガン及び鉄のうちの2価の金属イオンの1つであるかあるいはリチウムであって、Mが2価の場合にはy=nであり、Mがリチウムの場合にはy=(n−m)であり、Xは290〜400nmの範囲の波長の少なくとも一部で少なくとも2×10のモル吸光係数の紫外線吸収を示す5モル%から100モル%の中間層陰イオンを表す)
    で表わされ、該層状複水酸化物は該ビヒクル中に分散されている、有効量の上記(i)(ii)を含むヒトの皮膚に適用する日焼け止め方法。
  15. 3価金属がアルミニウムである請求項14記載の方法。
  16. 金属Mがマグネシウム、亜鉛またはカルシウムから選択される請求項14記載の方法
  17. 金属Mがリチウムである請求項14記載の方法
  18. 中間層陰イオンXの少なくとも5モル%が、
    パラアミノベンズイミダゾール−5−スルホネート
    3−イミダゾール−4−イルアクリレート
    サリチレート
    p−メトキシシンナメート
    2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート
    3,3,5−トリメチルシクロヘキシル−2−アセトアミドベンゾエート
    シンナメート
    p−アミノベンゾエート
    3,4−ジメトキシフェニルグリオキシレート
    α−(2−オキソボルン−3−イリデン)−p−キシレン−2−スルホネ ート
    α−(2−オキソボルン−3−イリデン)トルエン−4−スルホネート
    α−シアノ−4−メトキシシンナメート
    2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホネート
    の1つ又は混合物から選択される陰イオンである請求項14記載の方法
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