JP6831569B2 - 紫外・赤外線吸収剤 - Google Patents

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Description

本発明は、紫外・赤外線吸収剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、特定の層状複水酸化物を構成成分として含む紫外・赤外線吸収剤に関する。
層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide:LDH)は、次の組成式:
[M1 2+ 1-x2 3+ x(OH-)][An- x/n・mH2O]
(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオン、An-はn価の陰イオン、Xは0.2〜0.4、nは1〜3、mはホスト層とゲスト層の単位繰り返しに含まれる層間水分子の平均数である)
で表される粘土鉱物の一種である。
この組成式のようにLDHは、それぞれ[ホスト層]および[ゲスト層]と呼ばれる2層からなり、ゲスト層の陰イオンが置換し得るアニオン交換体であり、このLDHのアニオン交換性を利用して、染料の除去、硝酸性窒素、リン酸、ヨウ素イオンなどの吸着による環境浄化、資源回収への応用が検討されている。
LDHのアニオン交換性を利用し、特定の機能を有するアニオンをLDHの層間に挿入(インターカレーション処理)する研究がなされている。
例えば、特開2002−167570号公報(特許文献1)には、紫外線を吸収する化合物がLDHの層間に取り込まれた複合体およびそれを含有する外用剤が開示されている。
特許文献1には、一般式
[M2+ 1-x3+ x(OH)2x+[An- x/n・yH2O]x-
(式中、M2+は2価金属イオン、M3+は3価金属イオン、An-はn価のアニオン、0.2≦x≦0.4)
で表されるLDHが記載され、具体的には、M2+=Zn、M3+=Al、An-=CO3 2-のLDHが記載されている。
また、特許文献1の複合体は、紫外線を吸収する化合物の紫外線吸収効果と共に、LDHの紫外線反射散乱効果により、紫外線の皮膚への悪影響を軽減できることから、軟膏剤、クリーム剤、乳剤などの外用剤として有用であるとされている。
また、LDHは、合成樹脂の強度や耐久性を向上させるためのフィラーとしても広く用いられている。
例えば、ハウスやトンネルなどの温室栽培に用いられる農業用フィルムは、昼間の太陽光線を高い透過率で効率よく透過させる一方、夜間には地面や植物から輻射される赤外線を吸収や反射などによりハウスやトンネルの外に放出させないなどの特性が要求される。
一方、紫外線による劣化防止および保温効果を有する添加剤がフィラーとしてフィルム樹脂と併せて用いられている。
また、農業用フィルムは、透明性、強度、防曇性、防露性、保温性、長期耐久性などが要求されている。そこで、フィルムのフィラーとして、強度や耐久性の向上のため、セラミックスが利用され、フィルム樹脂に分散させるため、可塑性に優れる粘土鉱物も広く利用されている。
特開2002−167570号公報
しかしながら、赤外線吸収能が高く、樹脂に配合した場合に分散性に優れ、屈折率が樹脂の屈折率に近いと共に、透明性の優れた赤外線吸収剤および該赤外線吸収剤が配合されて保温性に優れ、さらには透明性が既存品に比べて著しく優れた農業用フィルムは、現在、最も要求されているところであるが、この要求を満たすような農業用フィルムは未だに提供されていない。
そこで、本発明は、透光性に優れ、紫外・赤外線吸収能を有して熱吸収性が高い紫外・赤外線吸収剤、特に樹脂添加の際に分散性に優れた、樹脂用セラミックス添加剤(フィラー)を提供することを課題とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の層状複水酸化物が上記課題を解決できることを意外にも見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、
[Zn1-xAl2-x(OH)][An- x/n・H2O]
(式中、Aは硝酸根およびホウ酸根から選択されるアニオン、Xは0.2〜0.4、nはアニオンの価数である)
で表されるZn−Al系LDHを構成成分として含む紫外・赤外線吸収剤が提供される。
本発明によれば、透光性に優れ、紫外・赤外線吸収能を有して熱吸収性が高い紫外・赤外線吸収剤、特に樹脂添加の際に分散性に優れた、樹脂用セラミックス添加剤(フィラー)を提供することができる。
ZnOなどの従来から公知のセラミックス紫外線吸収剤では、波長370〜400nmで透過率が低下(吸収率が増加)するところ、本発明のZn−Al系LDHでは、波長410〜420nmで透過率が低下し始める点が大きな特徴である。
本発明の紫外・赤外線吸収剤は、少なくとも次のいずれか1つの要件を満足する場合に、上記の効果をさらに発揮する。
(1)紫外・赤外線吸収剤が、波長400〜800nmの可視光領域において80〜95%の透光性を有し、かつ波長240〜400nmの紫外線領域において90〜80%、および波長900〜2500nmの近赤外領域において80〜30%の吸収を有する。波長400nm以下の紫外線吸収は顕著であるが、410〜420nmから透過性が低下し始めることを特に明記する。
(2)紫外・赤外線吸収剤が、合成樹脂用フィラーである。
硝酸型Zn−Al系LDHのXRDの結果を示す図である。 ホウ酸型および炭酸型のZn−Al系LDHのXRDの結果を示す図である。 炭酸型Zn−Al系LDHのXRDの結果を示す図である。 硝酸型Zn−Al系LDHのFT−IRの結果を示す図である。 ホウ酸型および炭酸型のZn−Al系LDHのFT−IRの結果を示す図である。 炭酸型Zn−Al系LDHのFT−IRの結果を示す図である。 ホウ酸型Zn−Al系LDH3のSEM像(a)およびEDS(b)の結果を示す図である。 炭酸型Zn−Al系LDHのSEM像(a)およびEDS(b)の結果を示す図である。 硝酸型Zn−Al系LDHの粒度分布測定の結果を示す図である。 炭酸型Zn−Al系LDHの粒度分布測定の結果を示す図である。 硝酸型および炭酸型のZn−Al系LDHのUV−Vis−NIRの結果を示す図である。 ホウ酸型および炭酸型のZn−Al系LDHのUV−Vis−NIRの結果を示す図である。 硝酸型Zn−Al系LDHおよび近赤外吸収色素含有硝酸型Zn−Al系LDHのUV−Vis−NIRの結果を示す図である。 人工太陽光照射後の温度変化測定装置の構成を示す写真である。 炭酸型および硝酸型のZn−Al系LDHならびに近赤外吸収色素含有硝酸型Zn−Al系LDHの人工太陽光照射後の放射温度計による温度変化を示す図である。 炭酸型および硝酸型のZn−Al系LDHならびに近赤外吸収色素含有硝酸型Zn−Al系LDHの人工太陽光照射後の白金温度計による温度変化を示す図である。
(1)紫外・赤外線吸収剤
本発明の紫外・赤外線吸収剤は、
[Zn1-xAl2-x(OH)][An- x/n・H2O]
(式中、Aは硝酸根およびホウ酸根から選択されるアニオン、Xは0.2〜0.4、nはアニオンの価数である)
で表されるZn−Al系LDHを構成成分として含むことを特徴とする。
本発明において、各電磁波は、次の波長域を意味する。
紫外線(UV)は波長10〜400nm、さらに真空紫外(VUV)は波長10〜200nmおよび近紫外(NUV)は波長200〜400nmの電磁波をいう。
また、可視光線は波長400〜800nmの電磁波をいう。
さらに、赤外線(IR)は、波長800nm〜1mm、さらに近赤外(NIR)は波長800nm〜2.5μm、赤外(IR)は波長2.5nm〜25μmおよび遠赤外(FIR)は波長2.5nm〜25μmの電磁波をいう。
本発明の紫外・赤外線吸収剤は、波長400〜800nmの可視光領域において80〜95%の透光性を有し、かつ波長240〜400nmの紫外線領域において90〜80%、および波長900〜2500nmの近赤外領域において80〜30%の吸収を有するのが好ましい。
上式におけるXは2価の陽イオンM2+が3価の陽イオンM3+で置換される割合であり、Xが0.2未満では2価の水酸化物M2+(OH)2が生成することがある。一方、Xが0.4を超えると副生成物が生成することがある。好ましいXは、0.25〜0.33である。
可視光領域の透光性が50%未満では、フィラーとしての透明樹脂に添加する場合に好ましくない。このような観点から、可視光領域の透光性の上限は、100%であることが好ましいが、実用上、80%程度である。好ましい可視光領域の透光性は、80〜95%である。
紫外線領域における吸収が80%未満では、十分な紫外線遮へい効果が得られないことがある。一方、400nm以下の紫外線領域(UVA:320〜400nm、UVB:290〜320nm、UVC:200〜290nm)における吸収の上限は、100%であることが好ましいが、従来の遮へい材では400nmから透過率は低下しはじめ、370〜380nmで透過率は10〜20%になる。実用上、10%程度である。好ましい紫外線領域における吸収は、400nm以下で90〜80%である。
近赤外領域における吸収が30%未満では、十分な熱吸収効果が得られないことがある。夕刻から日没後は、太陽による照射がないが、日中の太陽光による地熱からの放射(遠赤外線)を効果的に吸収することで、保温効果が期待される。一方、近赤外領域における吸収の上限は、100%であることが好ましいが、実用上、70%程度である。好ましい近赤外領域における吸収は、80〜30%である。
後述する実施例の結果から明らかなように、紫外線領域における吸収は、アニオンとして炭酸根を有する同類のZn−Al系LDHでは発現しない特異な効果であり、特に硝酸根を有するZn−Al系LDHにおいて顕著である。
本発明者は、後述する実施例の評価(6)「人工太陽光照射による試験」において、本発明のZn−Al系LDHの吸熱効果を確認している。
[製造方法]
本発明の紫外・赤外線吸収剤は、公知のLDHの製造方法、例えば、共沈法や再構築法により製造することができる。
例えば、硝酸型Zn−Al系LDHは、窒素ガス流通などの還元雰囲気下、pHが9±0.5に維持されるように、硝酸亜鉛と硝酸アルミニウムとの硝酸塩混合溶液と、水酸化ナトリウム溶液とを徐々に加えて反応させ、得られた生成物をろ過、洗浄、乾燥および解砕する共沈法により製造することができる。
また、ホウ酸型Zn−Al系LDHは、共沈法により製造した炭酸型Zn−Al系LDHを大気中で熱処理し、四ホウ酸ナトリウム水溶液に浸漬処理し、得られた生成物をろ過、洗浄、乾燥および解砕する再構築法により製造することができる。
ここで、炭酸型Zn−Al系LDHは、窒素ガス流通などの還元雰囲気下、pHが10±0.5に維持されるように、炭酸ナトリウム水溶液に、硝酸亜鉛と硝酸アルミニウムとの硝酸塩混合溶液と、水酸化ナトリウム溶液とを徐々に加えて反応させ、得られた生成物をろ過、洗浄、乾燥および解砕する共沈法により製造することができる。
製造原料、条件などは、所望のLDHにより適宜選択および設定すればよい。
より具体的な製造方法については実施例に記載する。
[用途]
本発明の紫外・赤外線吸収剤は、その特性を活かして様々な応用に期待できる。
例えば、LDHは、従来から合成樹脂の強度や耐久性を向上させるためのフィラーとしても広く用いられていることから、これらの機械的特性に加えて、合成樹脂に紫外・赤外線吸収特性の機能を付与する添加剤として期待できる。
合成樹脂の添加剤としての応用分野としては、国内で4万haを超えると言われる農業用温室(グリーンハウス)のポリ塩化ビニル、ポリオレフィン系フィルム、フッ素樹脂フィルムの添加剤やテント倉庫や防災用テントのポリエステル、食品パッケージの底材、ふた材の表装のポリプロピレン、ポリアミド、化粧品パッケージのポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィラー、樹脂製の褐色試薬瓶の添加剤などが挙げられ、特に本発明の紫外・赤外線吸収剤は、保温効果が要求される、防災用テントや農業用のビニールハウスなどの樹脂シートの樹脂原料への添加剤として有用である。
したがって、本発明の紫外・赤外線吸収剤は、合成樹脂用フィラーであるのが好ましい。
[応用]
本発明の紫外・赤外線吸収剤は、LDHの特性を活用し、LDHの層間に機能性化合物を挿入するインターカレーション処理により、様々な機能性を付加することが期待できる。
例えば、機能性化合物として近赤外吸収色素や赤外吸収色素をLDHの層間に導入することにより、近赤外線や赤外線の吸収特性を付与することができる。
インターカレーション処理は、構造再正反応やイオン交換法などの公知の方法であり、LDHや機能性化合物の種類や導入量などにより条件を設定し実施すればよい(後述する実施例3および4参照)。
本発明者は、後述する実施例3および4とそれらの評価において、近赤外吸収色素のインターカレーション処理による近赤外線の吸収特性の付与効果を確認している。
本発明を以下の実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
[測定・評価方法]
実施例および比較例において得られたLDHについて、以下の機器および条件でそれらの物性を評価した。
(1)粉末X線回折法(XRD)
得られたLDHの粉末試料にX線を照射し、その回折強度から試料を同定し、格子定数などの結晶学的データを取得する。
X線回折装置(株式会社リガク製、型式:RENT2200)に、ターゲットとしてCo、試料としてめのう乳鉢で微粉砕してガラス試料ホルダーに充填したLDH粉末試料をセットし、下記の条件でLDH粉末試料にX線を照射してその回折強度を測定する。
なお、角度補正のため、内部標準試料として金属ケイ素(Si、三津和化学薬品株式会社製、純度:99.99%)を粉砕し、LDH粉末試料の最大ピークとSiの最大ピークの高さが同程度になるよう加える。
分析ソフト(株式会社リガク製、製品名:JADE6)を用いて、測定データを解析し、結晶相を同定する。
(条件)
測定角 :10〜80°
サンプリング幅 :0.02°
スキャンスピード:1.0°/min
管電圧 :40kV
管電流 :20mA
発散スリット :1°
散乱スリット :1°
受光スリット :0.3mm
(2)フーリエ変換赤外線分光法(FT−IR)
得られたLDHの粉末試料に赤外線を照射し、透過光を分光することにより赤外スペクトルを得、試料に含まれる官能基を解析する。
フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社(JASCO)製、型式:FT/IR−430)に、試料としてKBr微粉末(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)に対して1質量%のLDHを加えてめのう乳鉢で粉砕、均質に混合し、油圧式錠剤成形器(日本分光株式会社(JASCO)製、型式:MP−1)を用いて加圧成型した透明な錠剤をセットし、下記の条件で錠剤試料に赤外線を照射してその透過スペクトルを測定する。
分析ソフト(日本分光株式会社(JASCO)製、製品名:Spectra Manager)を用いて、測定データから試料に含まれる官能基を解析する。
(条件)
測定範囲:4000〜400cm-1(2.5〜25μm)
積算回数:100
分解能 :4cm-1
(3)走査型電子顕微鏡像(SEM)観察およびエネルギー分散形X線分光法(EDS)
電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子株式会社製、型式:JSM−6500F)およびエネルギー分散形X線分析装置(EDS、日本電子株式会社製、型式:JFD−2200F)に、試料としてアルミニウム板に導電性テープで固定し、オスミウムプラズマコーター(日本電子株式会社製、型式:OPC60A Filgen)を用いてOsO4を12nmコーティングしたLDH試料をセットし、下記の条件でSEM像観察および元素分析を行う。
(条件)
観察時の加速電圧 :20kV
照射電流 :1.00nA
ワーキングディスタンス:10
対物絞り :4
元素分析のデータ取得時間 :200s(ZAF法)
(4)粒度分布測定
レーザー回折/散乱式粒子径(粒度)分布測定装置(株式会社堀場製作所製、型式:LA−920)に、試料としてイオン交換水に分散させたLDH(水に対する屈折率を1.12に設定)をセットし、装置内の超音波プローブで5分間、超音波処理し、分散媒中での試料粉末の沈降速度を、レーザー光の照射により生じる散乱光の強度分布を検出することにより測定し、Mie散乱理論を用いて粒度分布を求める。
(5)紫外可視近赤外線分光法(UV−Vis−NIR)
紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、型式:SolidSpec−3700)を用いて、予めバックグラウンドを測定した後、試料ホルダーに試料としてLDHを充填し、波長240〜2500nmの反射スペクトルを測定する。
試料として粉体を用いるため、反射スペクトル(反射率%R)を測定することになるが、これは吸光度Aと対応する。
(6)人工太陽光照射後の温度変化測定
図6−1は、人工太陽光照射後の温度変化測定装置の構成を示す写真であり、(a)は装置内部、(b)は段ボール設置後の装置と温度計の配置、(c)はデータロガーの配置を示す図であり、次のように組み立てる。
(a)に示されるように、アングル鋼で測定装置の骨組みを形成し、予め油性シリコンラッカースプレー(株式会社カンペハピオ製、色:ブラック)を用いて表面を黒く塗布しておいた試料台(銅板、寸法:350mm×290mm×3mm)を装置の下部に設置し、試料台の中央部に垂直方向の上部約550mmの位置から人工太陽光が照射されるように、人工太陽照明灯(セリック株式会社製、形式:XC−100E、フィルタ:透明、中央光度:3000cd、ビーム角:約48°、放射波長域:350〜2500nm)を、予め油性シリコンラッカースプレーを用いて内表面を黒く塗布しておいた補助板を用いて設置する。
次いで、(b)に示されるように、予め油性シリコンラッカースプレーを用いて内表面を黒く塗布しておいた段ボール紙で覆い、試料温度測定用の低温用携帯型デジタル放射温度計(株式会社チノー製、形式:IR−AHT、測定温度範囲:−50〜1000℃、精度定格:±2℃)を、測定装置から330mm離し、三脚により高さ770mmおよび入射角48°になるように固定する(放射温度計をその測定距離および測定径に適合するように設置する)。
次いで、(c)に示すように、装置内の気温測定用にデータロガー(アズワン株式会社製、型式:HL3631湿温度ロガー)および試料温度測定用の白金デジタル温度計(株式会社熱研製、形式:SN−3400プラチナサーモ、測定温度範囲:−100〜400℃、精度定格:200℃未満において±0.3℃、図示せず)を、試料台上に設置する。白金デジタル温度計は、試料を載置する試料台の中央部に設置する。
試料台の中央部の直径約10mmの範囲内に試料0.3gを均一に載置し、暗室状態にして装置内の気温(℃)および試料の温度(℃)を測定する。
次いで、人工太陽光を7時間照射し、照射後の装置内の気温(℃)および試料の温度(℃)を測定する。このとき、放射温度計の放射率を0.5および1.0に設定して、2種の温度を測定する。
実施例および比較例において「水」は、特に断りのない限り、超純水製造装置(メルク社製、メルクミリポア 超純水システム Smartシリーズ、機種:Direct−Q UV3)を用いて精製したMilli−Q(登録商標)水「超純水」を意味する。
また、特に断りのない限り、水の秤量には容量200mLのメスシリンダーを、試薬の秤量には電子天秤(アズワン株式会社製、型番:sefi IBA−200)を用いた。
[実施例1]
共沈法によりAn-=NO3 -、x=0.33の硝酸型Zn−Al系LDHを合成した。
2つの口に窒素導入管(ゴム栓付きピペット)と塩化カルシウム管を付けたコンデンサーとを取り付け、他の2つの口を試料投入口および防水ポータブルpHメーター(アズワン株式会社製、型番:AS700)挿入口とする、4つ口セパラブルカバーと容量300mLのセパラブル丸型フラスコとを、それらのガラス栓の接着面にシリコンオイルを塗布して密着させ、ホットスターラー(アズワン株式会社製、型番:REXIM RSH−1DN)に設置した。次いで、フラスコに水200mLおよび撹拌子を入れ、回転数600rpmで水を撹拌しながら、温度95℃に加熱した。
次いで、窒素導入管から高純度窒素ガス(株式会社ネリキガス(現:イワタニファインガス株式会社)製、純度:99.999%以上)を導入し、40分間バブリングした。
さらにバブリングを続けながら、硝酸亜鉛六水和物(キシダ化学株式会社製、特級)5.94g(0.02mol)と硝酸アルミニウム九水和物(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)3.75g(0.01mol)とを100mLの水に溶解させた硝酸塩混合溶液と、1M水酸化ナトリウム溶液とを試料投入口から少しずつ加えた。
pHが9.34になったことを確認した後、試料投入口およびpHメーター挿入口をそれぞれガラス栓とシリコン栓に取り換えて封止し、さらに50分間バブリングを続けた。
バブリング終了時に窒素導入管およびコンデンサーをガラス栓と取り換え、封止した。その後、撹拌を継続し、15時間熟成させた。
熟成後、得られた溶液を、金属アスピレーター(東京理化器械株式会社(EYELA)製、型式:A−3S)を装着し、桐山ロート用ろ紙(有限会社桐山製作所製、60mmΦ、種類:No.5−C)をセットした、桐山ロート(有限会社桐山製作所製、型式:SU−60)を用いて吸引ろ過した。さらに約150mLの水を桐山ロートに満たし、吸引ろ過する操作を4回繰り返して、回収されたケーキを洗浄した。
次いで、得られたケーキ(生成物)を、定温乾燥機(アズワン株式会社製、型番:DO−300PC)を用いて、温度80℃で18時間乾燥させた。乾燥後の生成物をめのう乳鉢で解砕した。
得られた生成物を硝酸型Zn−Al系LDHとする。
[比較例1]
共沈法によりAn-=CO3 2-、x=0.33の炭酸型Zn−Al系LDHを合成した。
水300mLに、炭酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)5.0875gを加え、ガラス棒を用いて手で撹拌し試薬を溶解させ、0.16M炭酸ナトリウム水溶液を調製した。
水100mLに、硝酸亜鉛六水和物(キシダ化学株式会社製、特級)5.9494g(0.2mol)および硝酸アルミニウム九水和物(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)3.7513g(0.1mol)を加え、ガラス棒を用いて手で撹拌し試薬を溶解させ、硝酸塩混合溶液を調製した。
水100mLに、水酸化ナトリウム(キシダ化学株式会社製、特級)8gを加え、ガラス棒を用いて手で撹拌し試薬を溶解させ、2M水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
容量300mLの0.16Mに調製した炭酸ナトリウム水溶液および撹拌子を入れ、ホットスターラー(アズワン株式会社製、型番:REXIM RSH−1DN)に設置し、室温下、回転数800rpmで撹拌しながら、pHが10.5付近で保持されるように、メスピペットを用いて、調製した硝酸塩混合溶液100mLと水酸化ナトリウム水溶液とを少量ずつ交互に加えた。pHの測定には、pHメーター(株式会社堀場製作所製、型式:D−51)を用いた。その後、室温下での撹拌を継続し、24時間熟成させた。
熟成後、実施例1と同様にして、得られた溶液を吸引ろ過し、回収されたケーキを洗浄し、乾燥させた後、解砕した。
得られた生成物を炭酸型Zn−Al系LDHとする。
[実施例2]
炭酸型Zn−Al系LDHを用いて、再構築法によりAn-=B47 -、x=0.33のホウ酸型Zn−Al系DHを合成した。
比較例1と同様にして、炭酸型Zn−Al系LDHを合成した。
得られた生成物を、卓上型電気炉(東京硝子器械株式会社製、型式:F−1404−P)を用いて、昇降温速度10℃/min、保持温度500℃、保持時間3時間の条件で熱処理した。
水200mLに、それぞれ四ホウ酸ナトリウム十水和物(キシダ化学株式会社製、特級)5.339g(0.014mol)、11.44g(0.030mol)、17.92g(0.047mol)を加え、ガラス棒を用いて手で撹拌し試薬を溶解させ、3通りの濃度の四ホウ酸ナトリウム水溶液を調製した。
2つの口に窒素導入管(ゴム栓付きピペット)と塩化カルシウム管を付けたコンデンサーとを取り付け、他の1つの口を試料投入口とする、3つ口セパラブルカバーと容量300mLのセパラブル丸型フラスコとを、それらのガラス栓の接着面にシリコンオイルを塗布して密着させ、ホットスターラー(アズワン株式会社製、型番:REXIM RSH−1DN)に設置した。次いで、フラスコに調製した四ホウ酸ナトリウム水溶液200mlおよび撹拌子を入れ、室温下、回転数600rpmで水を撹拌しながら、窒素導入管から高純度窒素ガス(株式会社ネリキガス(現:イワタニファインガス株式会社)製、純度:99.999%以上)を導入し、バブリングした。
バブリング開始から30分後、熱処理した炭酸型Zn−Al系LDH1.0gを四ホウ酸ナトリウム水溶液に加え、さらに30分間バブリングを続けた。
バブリング終了時に窒素導入管および試料投入口をガラス栓と取り換え、封止した。その後、室温下、撹拌を継続し、6時間熟成させた。
熟成後、実施例1と同様にして、得られた溶液を吸引ろ過し、回収されたケーキを洗浄し、乾燥させた後、解砕した。
得られた生成物を四ホウ酸ナトリウムの濃度0.014mol、0.030molおよび0.047molに対してそれぞれホウ酸型Zn−Al系LDH1、ホウ酸型Zn−Al系LDH2およびホウ酸型Zn−Al系LDH3とする。
(実施例3)
近赤外吸収色素を用いて硝酸型Zn−Al系LDHをインターカレーション処理した。
実施例1と同様にして、硝酸型Zn−Al系LDHを合成した。
2つの口に窒素導入管(ゴム栓付きピペット)と塩化カルシウム管を付けたコンデンサーとを取り付け、他の1つの口を試料投入口(ガラス栓で封止)とする、3つ口セパラブルカバーと容量300mLのセパラブル丸型フラスコとを、それらのガラス栓の接着面にシリコンオイルを塗布して密着させ、ホットスターラー(アズワン株式会社製、型番:REXIM RSH−1DN)に設置した。次いで、フラスコにアセトン(キシダ化学株式会社製、1級)200mLおよび撹拌子を入れ、室温下、回転数800rpmでアセトンを撹拌しながら、窒素導入管から高純度窒素ガス(株式会社ネリキガス(現:イワタニファインガス株式会社)製、純度:99.999%以上)を導入し、バブリングした。
バブリング開始から1時間後、硝酸型Zn−Al系LDH1.0gと、近赤外吸収色素としてテトラブチルアンモニウムビス(3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオラト)ニッケラート(東京化成工業株式会社製、CAS番号:87314−1−5、純度:98%以上、構造式:下式参照、以下「T3204」という)0.1gを加え、さらに30分間バブリングを続けた。
バブリング開始から30分後、窒素導入管をガラス栓と取り換え、封止した。その後、室温下、6時間撹拌を継続した。
その後、実施例1と同様にして、得られた溶液を吸引ろ過し、回収されたケーキを洗浄し、乾燥させた後、解砕した。但し、乾燥時間を20時間とした。
得られた生成物を硝酸型Zn−Al系LDH(T3204)とする。
(実施例4)
近赤外吸収色素を用いて硝酸型Zn−Al系LDHをインターカレーション処理した。
実施例1と同様にして、硝酸型Zn−Al系LDHを合成した。
2つの口に窒素導入管(ゴム栓付きピペット)と塩化カルシウム管を付けたコンデンサーとを取り付け、他の1つの口を試料投入口(ガラス栓で封止)とする、3つ口セパラブルカバーと容量300mLのセパラブル丸型フラスコとを、それらのガラス栓の接着面にシリコンオイルを塗布して密着させ、ホットスターラー(アズワン株式会社製、型番:REXIM RSH−1DN)に設置した。次いで、フラスコにジクロロメタン(キシダ化学株式会社製、1級)100mL、ジエチルエーテル(キシダ化学株式会社製、1級)100mLおよび撹拌子を入れ、室温下、回転数800rpmでアセトンを撹拌しながら、窒素導入管から高純度窒素ガス(株式会社ネリキガス(現:イワタニファインガス株式会社)製、純度:99.999%以上)を導入し、バブリングした。
バブリング開始から1時間後、硝酸型Zn−Al系LDH1.0gと、近赤外吸収色素としてテトラブチルアンモニウムビス(4−メチル−1,2−ベンゼンジチオラト)ニッケラート(東京化成工業株式会社製、CAS番号:15492−42−9、純度:98%以上、構造式:下式参照、以下「T3220」という)0.1gを加え、さらに30分間バブリングを続けた。
バブリング開始から30分後、窒素導入管をガラス栓と取り換え、封止した。その後、室温下、6時間撹拌を継続した。
その後、実施例1と同様にして、得られた溶液を吸引ろ過し、回収されたケーキを洗浄し、乾燥させた後、解砕した。但し、乾燥時間を20時間とした。
得られた生成物を硝酸型Zn−Al系LDH(T3220)とする。
図1−1〜1−3は、それぞれ硝酸型、ホウ酸型および炭酸型のZn−Al系LDHのXRDの結果を示す図である。
図1−3は、典型的な炭酸型Zn−Al系LDH:[Zn1-nAlx(OH)2][An-・mH2O](An-=CO2-、x=0.33)の回折線図(ICDD PDF♯48−1025)と比較すると、最強ピーク(003)はやや低角にあるが、回折角と強度はほぼ近く、それ以外のピークも観察されない。ピークは比較的シャープであり、結晶性は比較的高いと考えられる。(003)面の面間隔はd003=7.58Åである。
図1−1の硝酸型は、ピークがブロードであり、周期構造のばらつきを示唆している。最強ピークも左右非対称であるが、(003)面であると仮定すれば、面間隔はd003=8.214Åであり、炭酸型より大きな値を示す。これは、炭酸根が−2価であり硝酸根が−1価であるためと考えられる。
図1−2の(b)〜(d)はそれぞれがホウ酸型Zn−Al系LDH1〜3であり、回折ピークの位置および強度の関係が(a)の炭酸型(参考のため併記)にほぼ同じであり、同様の層状構造を持つ化合物と考えられる。最強ピークが(003)面であると仮定すれば、それぞれの面間隔はd003=7.701Å、7.568Åおよび7.622Åであり、炭酸型の面間隔d003=7.58Åに近い値を示す。
図2−1〜2−3は、それぞれ硝酸型、ホウ酸型および炭酸型のZn−Al系LDHのFT−IRの結果を示す図である。
図2−3の炭酸型では、3400cm-1近傍および900〜1100cm-1付近の吸収ピークがそれぞれのシートの水酸基の水素結合の伸縮振動および変角振動、3000cm-1付近の吸収ピークが層間水分子とアニオンの水素結合、1500cm-1および1650cm-1の吸収ピークが層間水分子の伸縮振動および炭酸根の吸収ピーク(1340〜1380cm-1、850〜880cm-1、670〜690cm-1)であることが確認された。1800cm-1付近にC=Oの吸収ピークが確認できた。400〜800cm-1にはM−O、O−M−O(M=Zn、Al)の格子振動の吸収ピークが観察される。552cm-1がAl−OH、615cm-1はZn−OHの吸収ピークである。
図2−1の硝酸型(a)では、炭酸型(c)と同様に、3400cm-1近傍および900〜1100cm-1付近の吸収ピークがそれぞれのシートの水酸基の水素結合の伸縮振動および変角振動、3000cm-1付近の吸収ピークが層間水分子とアニオンの水素結合、1500cm-1および1650cm-1の吸収ピークが層間水分子の伸縮振動によるものであることが確認された。また、硫酸根の吸収ピーク(1080〜1160cm-1、970〜1000cm-1、580〜660cm-1、440〜460cm-1)と炭酸根の吸収ピークが確認できた。XRDの結果と併せて、硝酸型(a)は層間に硫酸根と炭酸根を含むZn−Al系LDHであると考えられる。
図2−2の(b)〜(d)はそれぞれがホウ酸型Zn−Al系LDH1〜3であり、これらにおいて、B47 2-による吸収ピークと考えられる1150cm-1付近の吸収ピークが観察され、四ホウ酸ナトリウムの仕込み量が多い程、明確に表れているものと考えられる。また、これらにおいて、(a)の炭酸型(参考のため併記)にみられる1400cm-1付近の炭酸根の吸収ピークが小さくなっており、これらは炭酸根がホウ酸根で置換されていることを示唆している。XRDの結果と併せて、ホウ酸型Zn−Al系LDH1〜3では、ホウ酸イオンが層間に含まれる可能性が示唆され、粒子表面あるいは粒子間にも存在するものと考えられる。
図3−1および3−2は、それぞれホウ酸型Zn−Al系LDH3および炭酸型Zn−Al系LDHのSEM像(a)およびEDS(b)の結果を示す図である。
図3−2の炭酸型では、SEM像(a)において、1μm前後の小さな粒子と10μm前後の粒子が観察され、後者は板状の結晶が重なったようであり、層状構造であることを示唆している。また、EDS(b)の元素分析の結果からZn/Al=3.0であることがわかった。
図3−1のホウ酸型では、SEM像(a)において、1〜10μmほどの粒子があり、より小さな粒子が凝集しているような状態が観察される。これらは二次粒子であると考えられるが、炭酸型と比べて全体的に微細である。炭酸のほかホウ酸を含むことから、一次粒子が分散しやすくなっているとも考えられる。また、EDS(b)の元素分析の結果によれば、ホウ素の割合が炭素に次いで高く、ホウ酸が層間ないし粒子表面に付着していると考えられる。
図4−1および4−2は、それぞれ硝酸型および炭酸型のZn−Al系LDHの粒度分布測定の結果を示す図である。
図4−2の炭酸型では、粒度分布のピークが粒径0.5μmおよび8.0μm近傍の2か所に見られ、SEMによる観察結果とほぼ一致している。板状の結晶が積層した後者から剥がれ、微細化したようにも見える。
図4−2の硝酸型では、粒度分布のピークが0.5μmおよび22μm付近に見られ、SEM観察において、数μm〜20μmの粒子が観察されたことに対応している。
図5−1および5−2は、それぞれ硝酸型と炭酸型のZn−Al系LDHおよびホウ酸型と硝酸型のZn−Al系LDHのUV−Vis−NIRの結果を示す図である。
図5−1および5−2における(a)は炭酸型Zn−Al系LDHの結果であり、図5−1における(b)は硝酸型Zn−Al系LDHの結果であり、図5−2における(b)〜(d)はそれぞれホウ酸型Zn−Al系LDH1〜3の結果である。
すべての結果において、近赤外領域1400nmおよび1920nm付近で反射率が低下している。これは、ホスト層内あるいは層間水内の−OHの結合音による吸収に起因するものと考えられる。また、硝酸型およびホウ酸型では、炭酸型(c)では見られない、紫外領域の300nm付近に吸収が観察される。これらは、それぞれ硝酸イオンおよびホウ酸イオンに起因する特異な吸収と考えられる。
図5−3は、硝酸型Zn−Al系LDHおよび近赤外吸収色素含有硝酸型Zn−Al系LDHのUV−Vis−NIRの結果を示す図である。
図5−3における(a)は硝酸型Zn−Al系LDHの結果であり、(b)および(c)はそれぞれ近赤外吸収色素でインターカレーション処理した硝酸型Zn−Al系LDH(T3204)および硝酸型Zn−Al系LDH(T3220)の結果である。
硝酸型Zn−Al系LDH(T3204)および硝酸型Zn−Al系LDH(T3220)において、近赤外領域1400nmおよび1920nm付近で反射率が低く、吸収がみられる。これは、ホスト層内あるいは層間水内の−OHの結合音による吸収に起因するものと考えられる。
また、硝酸型Zn−Al系LDH(T3204)には、近赤外領域にT3204による吸収が観察され、硝酸型Zn−Al系LDH(T3220)には、可視光および近赤外領域にT3220による吸収が観察され、それぞれ近赤外吸収剤を包含していることが確認できる。
このように、硝酸型Zn−Al系LDHに赤外線吸収剤を含有させると、可視光〜近赤外領域に明確な光吸収が観察できる。
なお、本発明者は、硝酸型Zn−Al系LDH(T3204)および硝酸型Zn−Al系LDH(T3220)のX線回折およびFT−IRの結果から、近赤外吸収剤が硝酸型Zn−Al系LDHの層間ではなく、粒子間あるいは粒子表面に吸着しているものと考えている。
実施例1の硝酸型Zn−Al系LDHは、波長400〜800nmの可視光領域において80〜90%の透光性を有し、かつ波長240〜400nmの紫外線領域において90〜80%および波長900〜2500nmの近赤外領域において80〜30%の吸収を有する。
また、実施例2のホウ酸型Zn−Al系LDH1〜3は、可視光領域において80〜90%の透光性を有し、かつ紫外線領域において80〜40%および近赤外領域において80〜25%の吸収を有する。400nm以下で透過率は減少するが、硝酸型の様に、410〜420nmから減少し始め、400nm以下では急激に10〜20%に低下するのでなく、400nm以下で減少し始めるという従来型の紫外線吸収剤と同様の挙動を示す。
一方、比較例の炭酸型Zn−Al系LDHは、可視光領域において90〜80%の透光性を有するものの、紫外線領域において80〜70%および近赤外領域において30〜80%の吸収しか示さない。
このように、実施例1および2の硝酸型およびホウ酸型のZn−Al系LDHは、透光性に優れ、熱吸収性が高い(紫外・赤外線吸収能を有する)ことがわかる。したがって、樹脂添加の際に分散性に優れた、樹脂用セラミックス添加剤(フィラー)としての応用が期待できる。
一方、比較例1の炭酸型Zn−Al系LDHでは、上記のような効果が得られないことがわかる。
図6−2および6−3は、それぞれ放射温度計および白金温度計による、炭酸型および硝酸型のZn−Al系LDHならびに近赤外吸収色素含有硝酸型Zn−Al系LDHの人工太陽光照射後の温度変化を示す図である。
それぞれ左から、炭酸型Zn−Al系LDH[炭酸型]、硝酸型のZn−Al系LDH[硝酸型]、硝酸型Zn−Al系LDH(T3220)[硝酸型+T3220]および硝酸型Zn−Al系LDH(T3204)[硝酸型+T3204]の結果であり、それぞれ左側が人工太陽光照射前、右側が人工太陽光照射後の温度である。
硝酸型は、炭酸型と比べて人工太陽光照射後にやや温度が上昇すること、近赤外吸収色素を含有する硝酸型+T3220および硝酸型+T3204は、硝酸型と比べて人工太陽光照射後にさらに温度が上昇すること、温室用や防災テント用フィラーとして有望であることがわかる。

Claims (3)

  1. [Zn1-xAl2-x(OH)][An- x/n・H2O]
    (式中、Aは硝酸根およびホウ酸根から選択されるアニオン、Xは0.2〜0.4、nはアニオンの価数である)
    で表されるZn−Al系層状複水酸化物を構成成分として含む紫外・赤外線吸収剤。
  2. 前記紫外・赤外線吸収剤が、波長400〜800nmの可視光領域において80〜95%の透光性を有し、かつ波長240〜400nmの紫外線領域において90〜80%、および波長900〜2500nmの近赤外領域において80〜30%の吸収を有する請求項1に記載の紫外・赤外線吸収剤。
  3. 前記紫外・赤外線吸収剤が、合成樹脂用フィラーである請求項1または2に記載の紫外・赤外線吸収剤。
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