JP3600214B2 - 道路造成方法及びそれに用いる上部工版 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、山間部の急傾斜の法面に道路を拡幅ないし造成するのに適した道路造成方法、及びそれに用いる上部工版の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、山間部の法面に道路を拡幅ないし造成する場合、計画道路幅に合わせて下部基礎を打ち、その上部に丈夫な擁壁又は大きなブロックを立て、法面との間に土砂(盛土)を入れ、その上部を道路としていた。この一般的な工法では、擁壁又はブロックの上端位置が道路端と一致するため、道路幅に制限があり、法面が急傾斜の場合、所要幅の道路を形成できないという難点がある。
【0003】
特に、例えば四国の山岳地形は急峻であり、道路幅が狭く大型バス等が離合しては運行できないような地域が数多くある。山側は切取り作業も不可能な崖となっている。このような地形で、道路を拡幅するためにいろいろな工法が今までに提案されているが、橋梁を建設するように高価であり、費用的に多くの問題点を含んでいる。
【0004】
上記難点を克服するため、所要幅に形成した床版の底部中間位置を基礎上に立てた支柱で支持し、支柱位置から谷側に張り出して道路幅を広く取ることも行われている。しかし、この床版による道路拡幅工法では、張出し部分の荷重をバランスウェイトさせる必要もあり、床版の山寄りの位置を路面に強固に固定する必要性があり、そのため現道端面に相当大きな基礎打ち工事をするため、多くの場合道路を長期に亘って全面通行止めにしなければならず、迂回路が無いような道路や、迂回路を造成できないような道路では実施できないという難点があった。
【0005】
以上のような難点を克服するため、特許第2929588号(道路拡張構造)では、その特許請求の範囲に記載のように、「谷側が傾斜面をなす道路を谷側に拡張する道路拡張構造において、前記傾斜面に立設された支持体(下部基礎及びその上に立設された支柱)と、この支持体の上部に設けられた谷側を上向きにして(その下端を上部基礎で固定し)斜設した壁体(以下、傾斜版と呼ぶ)と、この壁体上に設けられた道路拡張部分の下部部材(盛土)とを備えることを特徴とする道路拡張構造。」が示されている。傾斜版の傾斜角は盛土の安息角(30°程度)とされる。即ち、盛土を行ったとき、傾斜版が支柱上で安定して支持される状態とされる。
【0006】
この傾斜版による拡幅工法によれば、下部基礎及び上部基礎を現道端面より谷側に離れた位置で打ち、下部基礎上に支柱を立て、その上部に谷側を上向きとして傾斜版を載置固定し、その後盛土すれば良いので、下部基礎より谷側に拡幅可能であると共に、道路を全面通行止めしなくて済むという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記傾斜版による道路拡幅工法にあっては、次のような問題点がある。第1に、盛土を安定したバランスウエイトとするため、傾斜版の傾斜角を安息角に保たねばならず、盛土量に制限があり、支柱を基準としての張出し幅が、傾斜版の全水平幅(H)の1/3(H/3)に制限されるという点である。
【0008】
具体的には、傾斜版の全水平幅が3mの場合の最大張出し幅は1mとなり、4mの場合1.33mで、物足りない数字である。第2に、傾斜版は安息角で固定され盛土されているので図面上は安定しているが、地震や大雨による地盤の緩みによってバランスが崩れ、支柱を谷側へ押し出す力が加わる可能性があり、その場合道路崩壊に繋がる可能性を否定できない点である。いわば、静的安定は保たれているが、動的安定性に問題がある。この他、前述した急峻な崖等では、安定した安全設計を得にくい等の問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術に鑑みて、一般の道路造成に利用でき、山間部の道路拡幅工事にあっても現道の通行を確保しながら工事を行うことができ、張出し幅を大きくして、かつ静的及び動的安定性に優れ、安全設計を得ることができる道路造成方法及びそれに用いる上部工版を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、特許請求の範囲に記載の通りの道路造成方法及びそれに用いる上部工版を構成した。即ち、本発明の道路造成方法は、道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間にコンクリートを投設して下部工を形成し、前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、前記埋込み床版を前記下部工の前記コンクリートに対し強固にアンカー止めすると共に、前記壁版上部を前記山法面に対し永久アンカー止めし、前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に所定量の土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする。
【0011】
本発明では、埋込み床版の上部に所要量の土砂を埋め立てカウンタウエイト作用を持たせるので、埋立て土砂(盛土)量を十分な量とすることができ、谷側への引出し量を所要量だけ大きくすることができる。盛土量を安息量、即ち安全係数を加味して安全なバランスウエイト量として設計する場合、下部工のコンクリートブロック位置を基準位置として、張出量H1を床版長さH2(H2=H1)又はそれ以上とすることも可能である。埋込み床版への盛土による荷重は、確実に下部工に対して与えられるので、静的及び動的に下部工を谷側へ押し出す力は作用せず、静的かつ動的に安定である。
【0012】
一方、埋込み床版は下部工に対してアンカー止めされ、壁版上部は山法面に対してアンカー止めされるので、地震や大雨による地盤のゆるみに対しても十分な抵抗力を有し、安全を確保することができる。因みに、山間部にあっては局所的な大雨に会う機会が多く、アスファルトや水路の破損によって地盤中に雨水が侵入することもあり、それに伴う盛土を含めた地盤の緩みを考慮しておく必要がある。垂直方向でのアンカー止めは、工事中における安全性と動的なさらなる安全上の手段であって、静的にはそれが無くとも十分な安定を行うよう設計することが肝要である。
【0013】
本発明では、道路拡幅工事において、現道を通行止めすることなく、下部工を作り、適宜クレーン車を用いてその上部に上部工版を載置し、アンカー止めし、盛土し、順次道路拡幅することができる。
【0014】
また、本発明は、前記道路造成方法に用いるための前記上部工版であって、前記埋込み床版には前記下部工のコンクリートに対してアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、前記壁版本体には、前記山法面に対しアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、該アンカー挿通孔の上端に形成されるアンカー固定作業のための開口部は前記壁版の上表面に形成されることを特徴とする。本体と埋込み床版との間に補強梁材が形成される場合には、この梁材にもアンカー挿通孔が形成されることもある。
【0015】
本発明では、下部工上に載置され下部工及び山法面にアンカー止めされる上部工版をプレキャスト製品として工場で製造し、アンカー挿通孔までを予め形成しておくことができる。また、山法面に対するアンカー止めにおいて、壁版上表面にアンカー固定作業のための開口部を設けたので、山法面へのアンカー固定作業を、底面をアンカー固定した壁版上面で安全、確実に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の道路造成方法は、道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間にソイルセメントのような軽量コンクリートを投設して下部工を形成し、
前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、
前記基礎及び前記上部工版を前記山法面に対してじん性の高いアンカーを用いて夫々強固に固定し、
前記コンクリートブロックの上下方向に挿通した縦筋の上下端を前記上部工版又は前記基礎に夫々強固に固定して、前記コンクリートブロックには地震時水平方向に作用する振動に対して柔軟性を持たせ、
前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする。
【0017】
本発明では、プレキャスト製品である上部工版と基礎コンクリートとを、共にじん性のあるアンカーにより、山法面に対して定着し、コンクリートブロックによって山法面との間に投設されたソイルセメントのような軽量コンクリートを包み込む形となる。ソイルセメントは、比重が小である。コンクリートブロックには少なくとも縦鉄筋が挿通され、その端部は、上部工版又は基礎に夫々強固に固定される。従って、本発明では、全体系でも脆性的な破壊に対して強じんで、じん性的耐破壊力が卓越する。擁壁内の地盤は、ソイルセメントであり、これが上部工版を支持している。従って、重量小で、地震地の貫性力を小とすることができ、柔軟構造の擁壁ブロックにて微振動を吸収でき、耐久性を格別向上することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態に係る道路造成方法により造成した道路の構造を示す断面図、図2は、図1に示した道路造成に用いる上部工版の構造を示す斜視図である。
【0019】
図示のように、本例の道路造成方法は、山1に造成された幅Aの現道2を幅Bだけ拡幅する例で示している。
【0020】
まず、拡幅すべき幅Bの略中央位置で、その下方に下部工の基礎3を打ち、これを山1の法面に対しPC鋼棒等じん性のあるアンカー鋼材4を用いてアンカー固定する。アンカー鋼材4の回りには、グラウトミルク5が注入され、基礎3は山1の法面に強固に固定される。
【0021】
前記基礎3を法面にアンカー固定した後、RCブロック等厚み20cm〜30cm位のコンクリートブロック6を立て、その裏面にコンクリート7を打つ。コンクリートブロック6には、十分な鉄筋を施す。コンクリート7には、アンカーボルト8を挿入し、後で上部工版9の埋込み床版10を固定できるようにする。コンクリートブロック6及びコンクリート7の仕上げ高さは、埋込み床版10の載置高さとされ、路面より所定高さ(上部工版9の高さ)だけ低い位置とされる。
【0022】
前記コンクリートブロック6及びコンクリート7から成る下部工擁壁部の施工方式には、2通りの方式がある。1つは、両者共に剛性を持たせて地震対応する剛性対応方式である。この場合、コンクリートブロック6には縦横方向に多量の主鉄筋を入れる等相応の補強手段が必要である。また、コンクリート7には比重2.0より上の通常コンクリートを投設する。もう1つは、コンクリートブロック6の縦方向にのみ主筋を入れてその上下端を強固に固定すると共に、コンクリート7の比重を2.0以下にすべくソイルセメントを投設し、地震時の水平方向の慣性力を極力低くして、かつ振動成分を前記コンクリートブロック7の水平方向の柔軟性で吸収する柔軟対応方式である。本発明は、これら2方式を含むものであるが、性能及び経済性の意味から前者に対し後者の方が優れると判断されるところである。
【0023】
次に、コンクリート7の固化後上部工版9を図示しないクレーン車で搬入し、埋込み床版10をコンクリート7の上面に合わせて載置し、アンカーボルト8で固定する。
【0024】
上部工版9は、図2に示すように、水平姿勢の埋込み床版10と、垂直版11と、天版12とで成る。垂直版11及び天版12は、埋込み床版10の谷13側端面から計画道路の最外端位置まで延伸された壁版(11、12)を構成する。
【0025】
前記埋込み床版10の上方及び天版12の下方には、垂直版11に対し補強用の梁14、15が夫々設けられる。
【0026】
前記埋込み床版10及び壁版11,12の側面には、道路延伸方向に沿って横じめワイヤー挿通孔16(本例では3個)が設けられている。また、前記埋込み床版10の床面にはアンカーボルト8を挿通するために、梁14を挟んで各3個(合計6個)のアンカー挿通孔17が設けられている。さらに、前記埋込み床版10の山1の法面寄りの位置から梁14、天版12の上表面にかけては山1の法面に対してアンカー止めするためのアンカー挿通孔18が設けられている。アンカー挿通孔18は天版12の上表面に設けられたアンカー固定作業用の開口部19と連通されている。
【0027】
本例の上部工版9は、山1の法面側から谷13にかけての全幅をHとし、埋込み床版11の幅をH1、天版12の幅をH2とするとき、埋込み床版10上に載置される盛土量を考慮して例えばH1=H2又はH2=(H1)/2等とできるよう垂直版11の高さが定められている。つまり、張出し量H2は盛土量にも関係する。
【0028】
再度図1において、上部工版9は、山1の法面に対し、永久アンカー20を用いて固定される。固定は前記天版12の上表面に設けられた開口部19内でナット材等を用いて確実に行なわれる。固定作業を天版12の上部で行えるので、作業を終始安全に行うことができる。
【0029】
その後、埋込み床版10の上部で、前記壁版11,12と山1の法面との間に土砂21を入れ転圧し幅Bを拡張した幅A+Bの道路が完成される。幅H2は、通常は1m〜2m程度に設計されるが、埋込み床版10の幅H1の2倍以上とすることも十分可能である。完成路面には適宜アスファルト(図3に2Aで示す)が布設され、最外端位置には、ガードレール22等附属設備が施工される。
【0030】
以上の、下部工3,6,7の施工において、又上部工9,21の施工において、工事は既に拡幅した部分の道路を介して資材受渡しを行いつつ、現道2の完全通行止めを行うことなく実施できる。埋込み床版10上に載置される盛土21は、拡幅された道路23の上を大型車両24が通行することを予定して計算しているので、拡幅道路23上を車道として利用できる。
【0031】
図3に示すモデルMDLを用いて具体的な計算例を示す。この計算用のモデルMDLは、下部工擁壁部の施工方式を柔軟対応方式とした場合の例で示してある。まず、モデルMDLの概要を説明すると、図1で示した構造に具体的数値を記入している。基礎3の形状は異なるが、図1のものと同一機能を果す。この他、図1のものと同一機能を果す部材には同一参照符号を付して示している。上部工版9の寸法は、埋込み床版10の幅2m、垂直版11の高さ2m、天版12による張出し量1mである。厚みは、埋込み床版10及び垂直版11は共に0.3mで、天版12は0.25mであるとする。本例では、路面に厚さ5cmのアスファルト2Aを施工するものとする。
【0032】
また、本例は、柔軟対応方式であるので、コンクリートブロック6には縦方向に主筋MRFを通し、その先端は小さく折り曲げられ、その下部は基礎3に、その上部は垂直版11内に夫々埋込まれ、上下共に強固に固定されるものとする。主筋MRFの上端を垂直版11に埋込むため、垂直版11の下方で、主筋MRFの対応部分には、予め作業穴11Hが設けられており、ここに挿通された主筋MRFを作業穴11H内で固定し、その後、この穴11Hをモルタルで埋戻すものとしている。図中(カッコ)内に示す符号は、計算上の重量又は力量を示している。道路進行方向の長さは2mとする。この他、計算に用いる材料の単位体積重量(比重)、水平震度、摩擦係数、安全率の設計値を表1にまとめて示す。
【0033】
【表1】
以上の条件下において、(1)上部工版9のモーメントによる転倒と、(2)構造物の自重による垂直荷重と、(3)地震時荷重による安定性、(4)施工時の安定性について、順次検討する。
【0034】
(1)上部工版9のモーメント荷重による転側について
車道に自動車が通行した場合、張り出し部分を含む上部工版9が作用点Fを中心として回転し転側することが考えられる。そこで、上部工版9の谷側13下部の作用点Fを回転中心と考え、自動車荷重と自重の釣合条件により、安定性の検討を行う。自動車荷重は、B荷重として端部から25cm位置に輪荷重10tが加わっていると仮定する。
【0035】
アスファルト2Aの重量WA1+WA2及び土砂の重量WS と、上部工版9の自重WC1+WC2+WC3との総和WA は、その正方形部分の重量W1 と張り出し部分の重量W2との和として表すことができる。その総和WA は15.0tである。これらの結果及び必要な計算式を表2にまとめて示す。
【0036】
【表2】
表2から、アンカーボルト8を設置しない場合の上部工版9の転倒に対する荷重条件を検討する。作用点Fを基準として天版12の重心までの距離をL1 、正方形部分の重心までの距離をL2 、自動車荷重10tの作用位置までの距離をL3 (0.75m)とすると、安全率FS =3として式2−12が成立すれば安定であると判断される。式2−12で符号が成立するFS 相当の値は、1.64(計算省略)で3より小さく、安全率3は満たされない。
【0037】
そこで、式12の安全率FS =3を満たすために、永久アンカー20をK5タイプSWPR7B 11.0tを用いるものとし、これを角度45°で補強して式13にて再計算を行う。作用点Fから永久アンカー20までの鉛直距離は1.4mである。式2−13において等号が成立するFS の値は3.51である。よって、安全率FS =3.0を満たしているので安定である。
【0038】
以上示した式2−13において、本構造物に作用する自重と活荷重による合力と作用位置を検討すると、永久アンカー20の垂直成分Ty を=7.78tとして合力Rは式2−14に示され、その値は32.78tである。作用点Fを基準とする作用位置までの距離をL4 とすると式2−15より、L4 =0.63mで、埋込み床版10の中心から0.37mの位置である。常時荷重では、中心よりB/3=0.67mの中に合力が作用すれば安定とされている。従って、B/3=0.67>0.37であり、安定である。作業の安全化を図るため、埋込み床版10の底面をアンカーボルト8を介してソイルセメント8に対して固定すれば、上部工版9の回転を阻止する作用が加わり重ねて安全性を高くすることができる。
【0039】
(2)自重による支持力
自動車荷重を1.35t/m2 の等分布荷重であるとして、上部工版9を含めた自重がソイルセメント7に加わる応力度と、基礎3の支持力とを検討する。この計算に必要な数式を表3にまとめて示す。まず、分布荷重の総和Pは、総面積6mを乗じて8.1tとされる。自重WO は表2の式2−9より15tである。また、既に計算したように、アンカー20の鉛直成分による荷重Ty は7.78tである。従って、ソイルセメント7に加わる荷重P1 は式3−2により、これらの総和として30.9tである。
【0040】
【表3】
一方、ソイルセメント7の設置面積A1 は、4.0m2 であり、圧縮応力σ1 は7.73t/m2 である。従って、ソイルセメント7の強度は、安全率3.0を考慮して、その3倍の23.19t/m2 以上の支持力が得られるよう配合し、締固めれば良い。実用上何ら問題のない数値である。
【0041】
次に、基礎3の支持力を検討する。アンカー鋼材4は、K5タイプSWPR7B 11.0tを使用するものとする。地盤は岩壁CL級100t/m2 、安全率3.0とする。基礎3の寸法は、高さ1.0m、奥行き幅1.5m、上端奥行き幅1.4m、長さは上部工版9の長さで2.0mであるとする。この条件下において、基礎3の自重WC は表3の式3−5で示され6.96tである。また、角度45°で設置したアンカー鋼材4に加わる力の鉛直成分Ty2は7.78tである。さらに、地盤とコンクリートとの接触面積A2 は、式3−7より3m2 である。
【0042】
以上より、自重及びソイルセメント7の重量WB (30.95t)を含めた荷重を合わせた総荷重P2 が面積A2 に加わったときの単位面積あたりでの支持力σ2 は式3−10により25.53t/m2 であり、式3−11の等号に相当するFS の値が3.92であり、安定が検証できる。
【0043】
(3)地震時荷重による安定性の検討
地震による地盤振動が構造物に作用する場合、一般に地震動の水平成分が支配的である。即ち、水平力の作用によってすべりによる構造物の倒壊が考えられる。▲1▼上部工版9のすべり、▲2▼コンクリートスラブ面でのすべり、▲3▼地盤と基礎3の境界におけるすべりの3状態について検討する必要がある。
【0044】
まず▲1▼の上部工版9のすべりについて検討する。地震によって生ずる上部工版9への水平地震力をP3 、ソイルセメント7及びコンクリートブロック6に作用する水平地震力をP4 とする。摩擦による反力及びアンカーによる水平圧力との関係を求め、安全率を1.5であるとして照査する。ここでは、上部工版9と下部工が一体として挙動すると仮定し、最下面ですべり破壊が発生すると仮定して安定計算する。計算式を表4にまとめて示す。
【0045】
【表4】
水平地震力P3 、P4 は表4の式4−1,4−2により、夫々3.0t、6.2tである。接地面での摩擦による水平反力PF は、摩擦力を0.4として式4−3より18.38tである。アンカー20の水平圧力Pa1は、7.78tである。これらの関係から式4−5で安定性を照査すると、式4−5が等号で成立するときのFS の値は2.8であり、安全率FS =1.5を満たしている。この点から垂直方向でのアンカーボルト8による固定は、工事上の、かつさらなる安全上のものである点が確認される。
【0046】
次に▲2▼のソイルセメント7の基礎3上でのすべりについて検討を行う。接地面での水平反力Pa3は、式4−6に示すように6.0tである。従って、式4−7による判別式において、等号で成立するFS の値は4.59であるので、FS =1.5を満たし安定である。
【0047】
さらに、▲3▼の地盤と基礎3とのすべりを考慮し、全体としての安定性を検討する。基礎3に作用する水平力Pa2とすると、式4−4で示したと同様の関係からPa1=Pa2で、この値は7.78tである。また、水平地震力P5 は4−9式より1.4tである。さらに、地盤との接地面による水平反力Pa4は、式4−10より31.75tである。従って、これらの関係から安定性は4−11式が満たされれば良い。式4−11において、等号が成立するときのFS の値は4.38であり、FS =1.5を満足でき、安定である。
【0048】
(4)施工時の安定性の検討
施工時の上部工版9の安定性について検討する。計算式を表5にまとめて示す。コンクリートのみのときの自重WO は式5−1より6.46tで、正方形部分の重量(WC1+WC2)は5.26t、張出し部分の重量(WC3)は1.2tである。そこで、合力WO が作用点Fからの距離L5の位置に作用しているとすると、式5−2が保たれる。この式よりL5 =0.4mが求まる。即ち、合力は、作用点より埋込み工版10の内側0.4mの所に作用している。
【0049】
この位置は、埋込み床版10の中心位置より0.6作用点寄りの位置である。この位置は、埋込み床版10の中心位置よりB/3(Bは2.0m)より内側であるので、式5−3を満足し、安定である。
【0050】
【表5】
(4)の検討において、上部工版9をソイルセメントの上に静置し、主筋MRFを固定し、順次の作業を行うについては、式5−3の関係から安全な作業を行うことができる。しかしながら、山間部での作業であり、資材を天版12上に置いたり、或いは、この上に作業者が立つことが考えられる。これらの作業荷重は、基本的にはゼロと考えねばならない。ただし、これらの作業荷重は作業上必須となることもある。従って、本上部工版の施工にあっては、主筋MRFの接続に合わせて、アンカーボルト8を施工し、アンカボルト8の固定強度に見合ったモーメント荷重を式5−4で計算し、これに安全率FS を乗じて、使用可能重量を指示することが必要である。式5−4は、アンカーボルトの固定強度F8 と同様の天版12上での作業荷重WM が可能で、安全率3を見て、その値は1/3以下に制限すべきであることが示されている。この値は、プレキャスト後、垂直版11の内側又は及び天版12上に、例えば「固定前荷重禁止、垂直アンカーの固定後3トンまで」等と、見易く、解り易く表示しておくことが好ましい。アンカーボルト8での固定前の安定性を増すため、埋込み床版10の山寄りの位置にカウンタウエイト部品を固定しておくこともできる。
【0051】
以上の通り、本発明の道路造成方法及びそれに用いる上部工版の設計では、利用状況に合わせ、十分な拡幅量を確保して安全施工可能の設計を行うことができる。上部工版9は、プレキャスト品として安定した製品品質を保証できるので、現場毎に設計し現場投設される工法と異なり、工法としても確実な品質保証を行うことができる。また、法面の切取りが困難であるような急峻斜面での施工でも各種橋梁工法とは異なり、格別安価な設計が可能である。山合いの一般的な道路の拡幅工事や、バスその他の自動車の離合場所の確保のための拡幅工事等に用いて最適である。
【0052】
図4に、前記上部工版9の断面モデルを5例示した。図示の通り、本発明のモデルは、断面がZ字形、又はくの字形となるのが特徴である。図中、図2で示した部材と同一機能を果たす部材については同一参照符号を付して示してある。図4(a)に示すモデル9−1は、埋込み床版10に空洞25を設けたものである。このように埋込み床版10は、下部工のコンクリート7に固定されて、その上部に盛土21を載置できれば良いので、網を使ったり、格子状にすること等も可能である。
【0053】
図4(b)に示すモデル9−2は、埋込み床版10、垂直版11、天版12、梁14,15を夫々別途に製造し、全体を組立てて構成した例を示す。このように、上部工版9は組立て可能であり、またプレキャストコンクリート製品に限定されるものではなく、亜鉛びき鋼板等の利用も可能である。
【0054】
図4(c)に示すモデル9−3は、垂直版11を止め、上方を谷側へ傾斜させた傾斜版26としたものである。この場合、図4(a)のものに対し、天版12の幅が異なる。このように、壁版は、埋込み床版10の谷側端面を基準として計画道路の最外端位置まで延伸されることが条件であるので、垂直版でなく傾斜版とすることも可能である。
【0055】
図4(d)に示すモデル9−4は、図4(c)のモデル9−3に対し、傾斜版27の傾斜方向を逆とした例を示す。この場合、強度大とすることはできるが、埋込み床版10及び天版12の幅がいずれも大きくなるという難点がある。
【0056】
図4(e)に示すモデル9−5は、天版28の幅を最小とするまで傾斜版29を延長した例を示す。ただし、この場合でも、永久アンカー20の固定作業を壁版上部で行うため、天版28に開口部19を設けるだけの面積を残しておいた方が良い。いずれの場合も十分な盛土21を行うため、また静的及び動的安定性を得るため、埋込み床版10は必須である。
【0057】
本発明は、上記実施の形態で示したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施できる。例えば、上記実施の形態では本発明を道路拡幅に用いた例で示したが、本発明は新規道路の造成にも適用できること勿論である。
【0058】
【発明の効果】
以上の通り本発明は、埋込み床版と、その谷側谷面を基準として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸される壁版から成る上部工版を用いて、基礎及びそれに立てられたコンクリートブロック並びにその離面に打ったコンクリートから成る下部工上に前記壁版を谷側として前記上部工版の埋込み床版を載置し、作業の安全を図るためには前記コンクリートに対し適宜アンカー止めし、上部工版の上部を山法面に対してアンカー止めし、前記埋込み床版の上部で前記壁版の離面と山法面との間に計算された量の盛土を行うこととした道路造成方法であるので、一般の道路造成に利用でき、特に山間部の道路拡幅工事にあっては現道の通行を確保しながら所要幅の拡幅工事を行うことができ、かつ静的及び動的に安定性に優れた道路を安全設計を得た上で、計画的に造成することができる。
【0059】
本発明の上部工版は、上記道路造成方法に用いるための前記上部工版であって、前記埋込み床版には、設置作業を安全に行うため、前記下部工のコンクリートに対してアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、前記壁版本体には前記山法面に対しアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、該アンカー挿通孔の上端に形成されるアンカー固定作業のための開口部は前記壁版の上表面に形成されることを特徴とするので、プレキャスト製品として工場生産することができ、安全な設置作業を行うことができる。
【0060】
道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間に比重2.0以下の軽量コンクリートを投設して下部工を形成し、前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、前記基礎及び前記上部工版を前記山法面に対してじん性の高いアンカーを用いて夫々強固に固定し、前記コンクリートブロックの上下方向に挿通した縦筋の上下端を前記上部工版又は前記基礎に夫々強固に固定して、前記コンクリートブロックには地震時水平方向に作用する振動に対して柔軟性を持たせ、前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする道路造成方法にあっては、下部工への軽量コンクリートの使用によって地震時の水平方向での慣性力を小さくでき、コンクリートブロックの水平方向での柔軟性によって地震時の水平方向での微振動を吸収でき、地震に強く耐久性の有る構造物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る道路造成方法により造成した道路の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示した道路造成に用いる上部工版の構造を示す斜視図である。
【図3】図1及び図2に示す道路造成方法の計算モデルである。
【図4】上部工版の断面構造のモデルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 山
2 現道
2A アスファルト
3 基礎
4 アンカー鋼材
5 グラウトミルク
6 コンクリートブロック
7 コンクリート(ソイルセメント)
8 アンカーボルト
9 上部工版
10 埋込み床版
11 垂直版
11H 作業穴
12,28 天版
13 谷
14,15 梁
16 ワイヤー挿通孔
17,18 アンカー挿通孔
19 開口部
20 永久アンカー
21 土砂(盛土)
22 ガードレール
23 拡幅道路
24 大型車両
25 空洞
26,27,29 傾斜版
MDL 計算用のモデル
MRF 主筋
F 作用点
【発明の属する技術分野】
本発明は、山間部の急傾斜の法面に道路を拡幅ないし造成するのに適した道路造成方法、及びそれに用いる上部工版の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、山間部の法面に道路を拡幅ないし造成する場合、計画道路幅に合わせて下部基礎を打ち、その上部に丈夫な擁壁又は大きなブロックを立て、法面との間に土砂(盛土)を入れ、その上部を道路としていた。この一般的な工法では、擁壁又はブロックの上端位置が道路端と一致するため、道路幅に制限があり、法面が急傾斜の場合、所要幅の道路を形成できないという難点がある。
【0003】
特に、例えば四国の山岳地形は急峻であり、道路幅が狭く大型バス等が離合しては運行できないような地域が数多くある。山側は切取り作業も不可能な崖となっている。このような地形で、道路を拡幅するためにいろいろな工法が今までに提案されているが、橋梁を建設するように高価であり、費用的に多くの問題点を含んでいる。
【0004】
上記難点を克服するため、所要幅に形成した床版の底部中間位置を基礎上に立てた支柱で支持し、支柱位置から谷側に張り出して道路幅を広く取ることも行われている。しかし、この床版による道路拡幅工法では、張出し部分の荷重をバランスウェイトさせる必要もあり、床版の山寄りの位置を路面に強固に固定する必要性があり、そのため現道端面に相当大きな基礎打ち工事をするため、多くの場合道路を長期に亘って全面通行止めにしなければならず、迂回路が無いような道路や、迂回路を造成できないような道路では実施できないという難点があった。
【0005】
以上のような難点を克服するため、特許第2929588号(道路拡張構造)では、その特許請求の範囲に記載のように、「谷側が傾斜面をなす道路を谷側に拡張する道路拡張構造において、前記傾斜面に立設された支持体(下部基礎及びその上に立設された支柱)と、この支持体の上部に設けられた谷側を上向きにして(その下端を上部基礎で固定し)斜設した壁体(以下、傾斜版と呼ぶ)と、この壁体上に設けられた道路拡張部分の下部部材(盛土)とを備えることを特徴とする道路拡張構造。」が示されている。傾斜版の傾斜角は盛土の安息角(30°程度)とされる。即ち、盛土を行ったとき、傾斜版が支柱上で安定して支持される状態とされる。
【0006】
この傾斜版による拡幅工法によれば、下部基礎及び上部基礎を現道端面より谷側に離れた位置で打ち、下部基礎上に支柱を立て、その上部に谷側を上向きとして傾斜版を載置固定し、その後盛土すれば良いので、下部基礎より谷側に拡幅可能であると共に、道路を全面通行止めしなくて済むという利点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記傾斜版による道路拡幅工法にあっては、次のような問題点がある。第1に、盛土を安定したバランスウエイトとするため、傾斜版の傾斜角を安息角に保たねばならず、盛土量に制限があり、支柱を基準としての張出し幅が、傾斜版の全水平幅(H)の1/3(H/3)に制限されるという点である。
【0008】
具体的には、傾斜版の全水平幅が3mの場合の最大張出し幅は1mとなり、4mの場合1.33mで、物足りない数字である。第2に、傾斜版は安息角で固定され盛土されているので図面上は安定しているが、地震や大雨による地盤の緩みによってバランスが崩れ、支柱を谷側へ押し出す力が加わる可能性があり、その場合道路崩壊に繋がる可能性を否定できない点である。いわば、静的安定は保たれているが、動的安定性に問題がある。この他、前述した急峻な崖等では、安定した安全設計を得にくい等の問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来技術に鑑みて、一般の道路造成に利用でき、山間部の道路拡幅工事にあっても現道の通行を確保しながら工事を行うことができ、張出し幅を大きくして、かつ静的及び動的安定性に優れ、安全設計を得ることができる道路造成方法及びそれに用いる上部工版を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、特許請求の範囲に記載の通りの道路造成方法及びそれに用いる上部工版を構成した。即ち、本発明の道路造成方法は、道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間にコンクリートを投設して下部工を形成し、前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、前記埋込み床版を前記下部工の前記コンクリートに対し強固にアンカー止めすると共に、前記壁版上部を前記山法面に対し永久アンカー止めし、前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に所定量の土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする。
【0011】
本発明では、埋込み床版の上部に所要量の土砂を埋め立てカウンタウエイト作用を持たせるので、埋立て土砂(盛土)量を十分な量とすることができ、谷側への引出し量を所要量だけ大きくすることができる。盛土量を安息量、即ち安全係数を加味して安全なバランスウエイト量として設計する場合、下部工のコンクリートブロック位置を基準位置として、張出量H1を床版長さH2(H2=H1)又はそれ以上とすることも可能である。埋込み床版への盛土による荷重は、確実に下部工に対して与えられるので、静的及び動的に下部工を谷側へ押し出す力は作用せず、静的かつ動的に安定である。
【0012】
一方、埋込み床版は下部工に対してアンカー止めされ、壁版上部は山法面に対してアンカー止めされるので、地震や大雨による地盤のゆるみに対しても十分な抵抗力を有し、安全を確保することができる。因みに、山間部にあっては局所的な大雨に会う機会が多く、アスファルトや水路の破損によって地盤中に雨水が侵入することもあり、それに伴う盛土を含めた地盤の緩みを考慮しておく必要がある。垂直方向でのアンカー止めは、工事中における安全性と動的なさらなる安全上の手段であって、静的にはそれが無くとも十分な安定を行うよう設計することが肝要である。
【0013】
本発明では、道路拡幅工事において、現道を通行止めすることなく、下部工を作り、適宜クレーン車を用いてその上部に上部工版を載置し、アンカー止めし、盛土し、順次道路拡幅することができる。
【0014】
また、本発明は、前記道路造成方法に用いるための前記上部工版であって、前記埋込み床版には前記下部工のコンクリートに対してアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、前記壁版本体には、前記山法面に対しアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、該アンカー挿通孔の上端に形成されるアンカー固定作業のための開口部は前記壁版の上表面に形成されることを特徴とする。本体と埋込み床版との間に補強梁材が形成される場合には、この梁材にもアンカー挿通孔が形成されることもある。
【0015】
本発明では、下部工上に載置され下部工及び山法面にアンカー止めされる上部工版をプレキャスト製品として工場で製造し、アンカー挿通孔までを予め形成しておくことができる。また、山法面に対するアンカー止めにおいて、壁版上表面にアンカー固定作業のための開口部を設けたので、山法面へのアンカー固定作業を、底面をアンカー固定した壁版上面で安全、確実に行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の道路造成方法は、道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間にソイルセメントのような軽量コンクリートを投設して下部工を形成し、
前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、
前記基礎及び前記上部工版を前記山法面に対してじん性の高いアンカーを用いて夫々強固に固定し、
前記コンクリートブロックの上下方向に挿通した縦筋の上下端を前記上部工版又は前記基礎に夫々強固に固定して、前記コンクリートブロックには地震時水平方向に作用する振動に対して柔軟性を持たせ、
前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする。
【0017】
本発明では、プレキャスト製品である上部工版と基礎コンクリートとを、共にじん性のあるアンカーにより、山法面に対して定着し、コンクリートブロックによって山法面との間に投設されたソイルセメントのような軽量コンクリートを包み込む形となる。ソイルセメントは、比重が小である。コンクリートブロックには少なくとも縦鉄筋が挿通され、その端部は、上部工版又は基礎に夫々強固に固定される。従って、本発明では、全体系でも脆性的な破壊に対して強じんで、じん性的耐破壊力が卓越する。擁壁内の地盤は、ソイルセメントであり、これが上部工版を支持している。従って、重量小で、地震地の貫性力を小とすることができ、柔軟構造の擁壁ブロックにて微振動を吸収でき、耐久性を格別向上することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態に係る道路造成方法により造成した道路の構造を示す断面図、図2は、図1に示した道路造成に用いる上部工版の構造を示す斜視図である。
【0019】
図示のように、本例の道路造成方法は、山1に造成された幅Aの現道2を幅Bだけ拡幅する例で示している。
【0020】
まず、拡幅すべき幅Bの略中央位置で、その下方に下部工の基礎3を打ち、これを山1の法面に対しPC鋼棒等じん性のあるアンカー鋼材4を用いてアンカー固定する。アンカー鋼材4の回りには、グラウトミルク5が注入され、基礎3は山1の法面に強固に固定される。
【0021】
前記基礎3を法面にアンカー固定した後、RCブロック等厚み20cm〜30cm位のコンクリートブロック6を立て、その裏面にコンクリート7を打つ。コンクリートブロック6には、十分な鉄筋を施す。コンクリート7には、アンカーボルト8を挿入し、後で上部工版9の埋込み床版10を固定できるようにする。コンクリートブロック6及びコンクリート7の仕上げ高さは、埋込み床版10の載置高さとされ、路面より所定高さ(上部工版9の高さ)だけ低い位置とされる。
【0022】
前記コンクリートブロック6及びコンクリート7から成る下部工擁壁部の施工方式には、2通りの方式がある。1つは、両者共に剛性を持たせて地震対応する剛性対応方式である。この場合、コンクリートブロック6には縦横方向に多量の主鉄筋を入れる等相応の補強手段が必要である。また、コンクリート7には比重2.0より上の通常コンクリートを投設する。もう1つは、コンクリートブロック6の縦方向にのみ主筋を入れてその上下端を強固に固定すると共に、コンクリート7の比重を2.0以下にすべくソイルセメントを投設し、地震時の水平方向の慣性力を極力低くして、かつ振動成分を前記コンクリートブロック7の水平方向の柔軟性で吸収する柔軟対応方式である。本発明は、これら2方式を含むものであるが、性能及び経済性の意味から前者に対し後者の方が優れると判断されるところである。
【0023】
次に、コンクリート7の固化後上部工版9を図示しないクレーン車で搬入し、埋込み床版10をコンクリート7の上面に合わせて載置し、アンカーボルト8で固定する。
【0024】
上部工版9は、図2に示すように、水平姿勢の埋込み床版10と、垂直版11と、天版12とで成る。垂直版11及び天版12は、埋込み床版10の谷13側端面から計画道路の最外端位置まで延伸された壁版(11、12)を構成する。
【0025】
前記埋込み床版10の上方及び天版12の下方には、垂直版11に対し補強用の梁14、15が夫々設けられる。
【0026】
前記埋込み床版10及び壁版11,12の側面には、道路延伸方向に沿って横じめワイヤー挿通孔16(本例では3個)が設けられている。また、前記埋込み床版10の床面にはアンカーボルト8を挿通するために、梁14を挟んで各3個(合計6個)のアンカー挿通孔17が設けられている。さらに、前記埋込み床版10の山1の法面寄りの位置から梁14、天版12の上表面にかけては山1の法面に対してアンカー止めするためのアンカー挿通孔18が設けられている。アンカー挿通孔18は天版12の上表面に設けられたアンカー固定作業用の開口部19と連通されている。
【0027】
本例の上部工版9は、山1の法面側から谷13にかけての全幅をHとし、埋込み床版11の幅をH1、天版12の幅をH2とするとき、埋込み床版10上に載置される盛土量を考慮して例えばH1=H2又はH2=(H1)/2等とできるよう垂直版11の高さが定められている。つまり、張出し量H2は盛土量にも関係する。
【0028】
再度図1において、上部工版9は、山1の法面に対し、永久アンカー20を用いて固定される。固定は前記天版12の上表面に設けられた開口部19内でナット材等を用いて確実に行なわれる。固定作業を天版12の上部で行えるので、作業を終始安全に行うことができる。
【0029】
その後、埋込み床版10の上部で、前記壁版11,12と山1の法面との間に土砂21を入れ転圧し幅Bを拡張した幅A+Bの道路が完成される。幅H2は、通常は1m〜2m程度に設計されるが、埋込み床版10の幅H1の2倍以上とすることも十分可能である。完成路面には適宜アスファルト(図3に2Aで示す)が布設され、最外端位置には、ガードレール22等附属設備が施工される。
【0030】
以上の、下部工3,6,7の施工において、又上部工9,21の施工において、工事は既に拡幅した部分の道路を介して資材受渡しを行いつつ、現道2の完全通行止めを行うことなく実施できる。埋込み床版10上に載置される盛土21は、拡幅された道路23の上を大型車両24が通行することを予定して計算しているので、拡幅道路23上を車道として利用できる。
【0031】
図3に示すモデルMDLを用いて具体的な計算例を示す。この計算用のモデルMDLは、下部工擁壁部の施工方式を柔軟対応方式とした場合の例で示してある。まず、モデルMDLの概要を説明すると、図1で示した構造に具体的数値を記入している。基礎3の形状は異なるが、図1のものと同一機能を果す。この他、図1のものと同一機能を果す部材には同一参照符号を付して示している。上部工版9の寸法は、埋込み床版10の幅2m、垂直版11の高さ2m、天版12による張出し量1mである。厚みは、埋込み床版10及び垂直版11は共に0.3mで、天版12は0.25mであるとする。本例では、路面に厚さ5cmのアスファルト2Aを施工するものとする。
【0032】
また、本例は、柔軟対応方式であるので、コンクリートブロック6には縦方向に主筋MRFを通し、その先端は小さく折り曲げられ、その下部は基礎3に、その上部は垂直版11内に夫々埋込まれ、上下共に強固に固定されるものとする。主筋MRFの上端を垂直版11に埋込むため、垂直版11の下方で、主筋MRFの対応部分には、予め作業穴11Hが設けられており、ここに挿通された主筋MRFを作業穴11H内で固定し、その後、この穴11Hをモルタルで埋戻すものとしている。図中(カッコ)内に示す符号は、計算上の重量又は力量を示している。道路進行方向の長さは2mとする。この他、計算に用いる材料の単位体積重量(比重)、水平震度、摩擦係数、安全率の設計値を表1にまとめて示す。
【0033】
【表1】
以上の条件下において、(1)上部工版9のモーメントによる転倒と、(2)構造物の自重による垂直荷重と、(3)地震時荷重による安定性、(4)施工時の安定性について、順次検討する。
【0034】
(1)上部工版9のモーメント荷重による転側について
車道に自動車が通行した場合、張り出し部分を含む上部工版9が作用点Fを中心として回転し転側することが考えられる。そこで、上部工版9の谷側13下部の作用点Fを回転中心と考え、自動車荷重と自重の釣合条件により、安定性の検討を行う。自動車荷重は、B荷重として端部から25cm位置に輪荷重10tが加わっていると仮定する。
【0035】
アスファルト2Aの重量WA1+WA2及び土砂の重量WS と、上部工版9の自重WC1+WC2+WC3との総和WA は、その正方形部分の重量W1 と張り出し部分の重量W2との和として表すことができる。その総和WA は15.0tである。これらの結果及び必要な計算式を表2にまとめて示す。
【0036】
【表2】
表2から、アンカーボルト8を設置しない場合の上部工版9の転倒に対する荷重条件を検討する。作用点Fを基準として天版12の重心までの距離をL1 、正方形部分の重心までの距離をL2 、自動車荷重10tの作用位置までの距離をL3 (0.75m)とすると、安全率FS =3として式2−12が成立すれば安定であると判断される。式2−12で符号が成立するFS 相当の値は、1.64(計算省略)で3より小さく、安全率3は満たされない。
【0037】
そこで、式12の安全率FS =3を満たすために、永久アンカー20をK5タイプSWPR7B 11.0tを用いるものとし、これを角度45°で補強して式13にて再計算を行う。作用点Fから永久アンカー20までの鉛直距離は1.4mである。式2−13において等号が成立するFS の値は3.51である。よって、安全率FS =3.0を満たしているので安定である。
【0038】
以上示した式2−13において、本構造物に作用する自重と活荷重による合力と作用位置を検討すると、永久アンカー20の垂直成分Ty を=7.78tとして合力Rは式2−14に示され、その値は32.78tである。作用点Fを基準とする作用位置までの距離をL4 とすると式2−15より、L4 =0.63mで、埋込み床版10の中心から0.37mの位置である。常時荷重では、中心よりB/3=0.67mの中に合力が作用すれば安定とされている。従って、B/3=0.67>0.37であり、安定である。作業の安全化を図るため、埋込み床版10の底面をアンカーボルト8を介してソイルセメント8に対して固定すれば、上部工版9の回転を阻止する作用が加わり重ねて安全性を高くすることができる。
【0039】
(2)自重による支持力
自動車荷重を1.35t/m2 の等分布荷重であるとして、上部工版9を含めた自重がソイルセメント7に加わる応力度と、基礎3の支持力とを検討する。この計算に必要な数式を表3にまとめて示す。まず、分布荷重の総和Pは、総面積6mを乗じて8.1tとされる。自重WO は表2の式2−9より15tである。また、既に計算したように、アンカー20の鉛直成分による荷重Ty は7.78tである。従って、ソイルセメント7に加わる荷重P1 は式3−2により、これらの総和として30.9tである。
【0040】
【表3】
一方、ソイルセメント7の設置面積A1 は、4.0m2 であり、圧縮応力σ1 は7.73t/m2 である。従って、ソイルセメント7の強度は、安全率3.0を考慮して、その3倍の23.19t/m2 以上の支持力が得られるよう配合し、締固めれば良い。実用上何ら問題のない数値である。
【0041】
次に、基礎3の支持力を検討する。アンカー鋼材4は、K5タイプSWPR7B 11.0tを使用するものとする。地盤は岩壁CL級100t/m2 、安全率3.0とする。基礎3の寸法は、高さ1.0m、奥行き幅1.5m、上端奥行き幅1.4m、長さは上部工版9の長さで2.0mであるとする。この条件下において、基礎3の自重WC は表3の式3−5で示され6.96tである。また、角度45°で設置したアンカー鋼材4に加わる力の鉛直成分Ty2は7.78tである。さらに、地盤とコンクリートとの接触面積A2 は、式3−7より3m2 である。
【0042】
以上より、自重及びソイルセメント7の重量WB (30.95t)を含めた荷重を合わせた総荷重P2 が面積A2 に加わったときの単位面積あたりでの支持力σ2 は式3−10により25.53t/m2 であり、式3−11の等号に相当するFS の値が3.92であり、安定が検証できる。
【0043】
(3)地震時荷重による安定性の検討
地震による地盤振動が構造物に作用する場合、一般に地震動の水平成分が支配的である。即ち、水平力の作用によってすべりによる構造物の倒壊が考えられる。▲1▼上部工版9のすべり、▲2▼コンクリートスラブ面でのすべり、▲3▼地盤と基礎3の境界におけるすべりの3状態について検討する必要がある。
【0044】
まず▲1▼の上部工版9のすべりについて検討する。地震によって生ずる上部工版9への水平地震力をP3 、ソイルセメント7及びコンクリートブロック6に作用する水平地震力をP4 とする。摩擦による反力及びアンカーによる水平圧力との関係を求め、安全率を1.5であるとして照査する。ここでは、上部工版9と下部工が一体として挙動すると仮定し、最下面ですべり破壊が発生すると仮定して安定計算する。計算式を表4にまとめて示す。
【0045】
【表4】
水平地震力P3 、P4 は表4の式4−1,4−2により、夫々3.0t、6.2tである。接地面での摩擦による水平反力PF は、摩擦力を0.4として式4−3より18.38tである。アンカー20の水平圧力Pa1は、7.78tである。これらの関係から式4−5で安定性を照査すると、式4−5が等号で成立するときのFS の値は2.8であり、安全率FS =1.5を満たしている。この点から垂直方向でのアンカーボルト8による固定は、工事上の、かつさらなる安全上のものである点が確認される。
【0046】
次に▲2▼のソイルセメント7の基礎3上でのすべりについて検討を行う。接地面での水平反力Pa3は、式4−6に示すように6.0tである。従って、式4−7による判別式において、等号で成立するFS の値は4.59であるので、FS =1.5を満たし安定である。
【0047】
さらに、▲3▼の地盤と基礎3とのすべりを考慮し、全体としての安定性を検討する。基礎3に作用する水平力Pa2とすると、式4−4で示したと同様の関係からPa1=Pa2で、この値は7.78tである。また、水平地震力P5 は4−9式より1.4tである。さらに、地盤との接地面による水平反力Pa4は、式4−10より31.75tである。従って、これらの関係から安定性は4−11式が満たされれば良い。式4−11において、等号が成立するときのFS の値は4.38であり、FS =1.5を満足でき、安定である。
【0048】
(4)施工時の安定性の検討
施工時の上部工版9の安定性について検討する。計算式を表5にまとめて示す。コンクリートのみのときの自重WO は式5−1より6.46tで、正方形部分の重量(WC1+WC2)は5.26t、張出し部分の重量(WC3)は1.2tである。そこで、合力WO が作用点Fからの距離L5の位置に作用しているとすると、式5−2が保たれる。この式よりL5 =0.4mが求まる。即ち、合力は、作用点より埋込み工版10の内側0.4mの所に作用している。
【0049】
この位置は、埋込み床版10の中心位置より0.6作用点寄りの位置である。この位置は、埋込み床版10の中心位置よりB/3(Bは2.0m)より内側であるので、式5−3を満足し、安定である。
【0050】
【表5】
(4)の検討において、上部工版9をソイルセメントの上に静置し、主筋MRFを固定し、順次の作業を行うについては、式5−3の関係から安全な作業を行うことができる。しかしながら、山間部での作業であり、資材を天版12上に置いたり、或いは、この上に作業者が立つことが考えられる。これらの作業荷重は、基本的にはゼロと考えねばならない。ただし、これらの作業荷重は作業上必須となることもある。従って、本上部工版の施工にあっては、主筋MRFの接続に合わせて、アンカーボルト8を施工し、アンカボルト8の固定強度に見合ったモーメント荷重を式5−4で計算し、これに安全率FS を乗じて、使用可能重量を指示することが必要である。式5−4は、アンカーボルトの固定強度F8 と同様の天版12上での作業荷重WM が可能で、安全率3を見て、その値は1/3以下に制限すべきであることが示されている。この値は、プレキャスト後、垂直版11の内側又は及び天版12上に、例えば「固定前荷重禁止、垂直アンカーの固定後3トンまで」等と、見易く、解り易く表示しておくことが好ましい。アンカーボルト8での固定前の安定性を増すため、埋込み床版10の山寄りの位置にカウンタウエイト部品を固定しておくこともできる。
【0051】
以上の通り、本発明の道路造成方法及びそれに用いる上部工版の設計では、利用状況に合わせ、十分な拡幅量を確保して安全施工可能の設計を行うことができる。上部工版9は、プレキャスト品として安定した製品品質を保証できるので、現場毎に設計し現場投設される工法と異なり、工法としても確実な品質保証を行うことができる。また、法面の切取りが困難であるような急峻斜面での施工でも各種橋梁工法とは異なり、格別安価な設計が可能である。山合いの一般的な道路の拡幅工事や、バスその他の自動車の離合場所の確保のための拡幅工事等に用いて最適である。
【0052】
図4に、前記上部工版9の断面モデルを5例示した。図示の通り、本発明のモデルは、断面がZ字形、又はくの字形となるのが特徴である。図中、図2で示した部材と同一機能を果たす部材については同一参照符号を付して示してある。図4(a)に示すモデル9−1は、埋込み床版10に空洞25を設けたものである。このように埋込み床版10は、下部工のコンクリート7に固定されて、その上部に盛土21を載置できれば良いので、網を使ったり、格子状にすること等も可能である。
【0053】
図4(b)に示すモデル9−2は、埋込み床版10、垂直版11、天版12、梁14,15を夫々別途に製造し、全体を組立てて構成した例を示す。このように、上部工版9は組立て可能であり、またプレキャストコンクリート製品に限定されるものではなく、亜鉛びき鋼板等の利用も可能である。
【0054】
図4(c)に示すモデル9−3は、垂直版11を止め、上方を谷側へ傾斜させた傾斜版26としたものである。この場合、図4(a)のものに対し、天版12の幅が異なる。このように、壁版は、埋込み床版10の谷側端面を基準として計画道路の最外端位置まで延伸されることが条件であるので、垂直版でなく傾斜版とすることも可能である。
【0055】
図4(d)に示すモデル9−4は、図4(c)のモデル9−3に対し、傾斜版27の傾斜方向を逆とした例を示す。この場合、強度大とすることはできるが、埋込み床版10及び天版12の幅がいずれも大きくなるという難点がある。
【0056】
図4(e)に示すモデル9−5は、天版28の幅を最小とするまで傾斜版29を延長した例を示す。ただし、この場合でも、永久アンカー20の固定作業を壁版上部で行うため、天版28に開口部19を設けるだけの面積を残しておいた方が良い。いずれの場合も十分な盛土21を行うため、また静的及び動的安定性を得るため、埋込み床版10は必須である。
【0057】
本発明は、上記実施の形態で示したものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施できる。例えば、上記実施の形態では本発明を道路拡幅に用いた例で示したが、本発明は新規道路の造成にも適用できること勿論である。
【0058】
【発明の効果】
以上の通り本発明は、埋込み床版と、その谷側谷面を基準として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸される壁版から成る上部工版を用いて、基礎及びそれに立てられたコンクリートブロック並びにその離面に打ったコンクリートから成る下部工上に前記壁版を谷側として前記上部工版の埋込み床版を載置し、作業の安全を図るためには前記コンクリートに対し適宜アンカー止めし、上部工版の上部を山法面に対してアンカー止めし、前記埋込み床版の上部で前記壁版の離面と山法面との間に計算された量の盛土を行うこととした道路造成方法であるので、一般の道路造成に利用でき、特に山間部の道路拡幅工事にあっては現道の通行を確保しながら所要幅の拡幅工事を行うことができ、かつ静的及び動的に安定性に優れた道路を安全設計を得た上で、計画的に造成することができる。
【0059】
本発明の上部工版は、上記道路造成方法に用いるための前記上部工版であって、前記埋込み床版には、設置作業を安全に行うため、前記下部工のコンクリートに対してアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、前記壁版本体には前記山法面に対しアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、該アンカー挿通孔の上端に形成されるアンカー固定作業のための開口部は前記壁版の上表面に形成されることを特徴とするので、プレキャスト製品として工場生産することができ、安全な設置作業を行うことができる。
【0060】
道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間に比重2.0以下の軽量コンクリートを投設して下部工を形成し、前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、前記基礎及び前記上部工版を前記山法面に対してじん性の高いアンカーを用いて夫々強固に固定し、前記コンクリートブロックの上下方向に挿通した縦筋の上下端を前記上部工版又は前記基礎に夫々強固に固定して、前記コンクリートブロックには地震時水平方向に作用する振動に対して柔軟性を持たせ、前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする道路造成方法にあっては、下部工への軽量コンクリートの使用によって地震時の水平方向での慣性力を小さくでき、コンクリートブロックの水平方向での柔軟性によって地震時の水平方向での微振動を吸収でき、地震に強く耐久性の有る構造物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る道路造成方法により造成した道路の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示した道路造成に用いる上部工版の構造を示す斜視図である。
【図3】図1及び図2に示す道路造成方法の計算モデルである。
【図4】上部工版の断面構造のモデルを示す説明図である。
【符号の説明】
1 山
2 現道
2A アスファルト
3 基礎
4 アンカー鋼材
5 グラウトミルク
6 コンクリートブロック
7 コンクリート(ソイルセメント)
8 アンカーボルト
9 上部工版
10 埋込み床版
11 垂直版
11H 作業穴
12,28 天版
13 谷
14,15 梁
16 ワイヤー挿通孔
17,18 アンカー挿通孔
19 開口部
20 永久アンカー
21 土砂(盛土)
22 ガードレール
23 拡幅道路
24 大型車両
25 空洞
26,27,29 傾斜版
MDL 計算用のモデル
MRF 主筋
F 作用点
Claims (3)
- 道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間にコンクリートを投設して下部工を形成し、
前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、
前記埋込み床版を前記下部工の前記コンクリートに対しアンカー止めすると共に、前記壁版上部を前記山法面に対しアンカー止めし、
前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする道路造成方法。 - 請求項1に記載の道路造成方法に用いるための前記上部工版であって、前記埋込み床版には設置作業を安全に行うため、前記下部工のコンクリートに対してアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、前記壁版本体には前記山法面に対しアンカー止めするためのアンカー挿通孔が形成され、該アンカー挿通孔の上端に形成されるアンカー固定作業のための開口部は前記壁版の上表面に形成されることを特徴とする上部工版。
- 道路を拡幅ないし造成したい山法面下方に基礎を作り、その上部で谷側に計画路面より所定高さだけ低い高さまでコンクリートブロックを立て、その裏面と前記山法面との間に比重2.0以下の軽量コンクリートを投設して下部工を形成し、
前記下部工の上面に載置される水平姿勢の埋込み床版及び該埋込み床版の谷側端面を基点として計画道路の最外端位置まで直線的又は曲線的に延伸された壁版とで成る上部工版の前記埋込み床版を前記下部工の上面に合わせて載置し、
前記基礎及び前記上部工版を前記山法面に対してじん性の高いアンカーを用いて夫々強固に固定し、
前記コンクリートブロックの上下方向に挿通した縦筋の上下端を前記上部工版又は前記基礎に夫々強固に固定して、前記コンクリートブロックには地震時水平方向に作用する振動に対して柔軟性を持たせ、
前記埋込み床版上部で前記壁版及び前記山法面との間に土砂を埋め立て道路を造成することを特徴とする道路造成方法。
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