JP3751849B2 - 軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
軟弱地盤や地滑り地などでの盛土工法の一つとしてEPS工法のような軽量盛土材を用いた軽量盛土工法が知られている。この工法は、地盤改良にかかる経費の節減、工期の短縮、耐震性の向上などにおいて優れた効果を発揮することから、種々の土木工事において広く採用されている。図3は、軽量盛土工法を道路の拡幅工事に用いる場合の一例を示す断面図であり、軽量盛土材として発泡スチロールブロック(EPSブロック)を使用している。
【0003】
図示するように、頂部に既存の道路1が作られている既存地山の斜面側にH形鋼2を建て込み、H形鋼2と支持地盤3との間にEPSブロック4を積み上げて所定高さの盛土部を形成する。その後、積み上げたEPSブロック4の全面にわたり所定厚さにコンクリートを打設し、コンクリート床版5を形成する。そして、コンクリート床版5およびEPSブロック4が水平方向の位置ズレを起こさないように、支持地盤3に埋設固定したアンカー6の先端をコンクリート床版5に一体に形成したアンカーヘッド51に固定する。それにより、コンクリート床版5は既存地山側に一体的に固定され、地震などにより支持地盤3が動いたときにも、コンクリート床版5およびEPSブロック4が支持地盤3から剥離すること、すなわち滑動や転倒することを回避する。
【0004】
必要に応じH形鋼2を利用して軽量コンクリート板のような壁面保護材7が取り付け、コンクリート床版5の谷側縁に地覆コンクリート10が作られ、通常の土木工事のように、路盤8、アスファルト9などの仕上げのための工事が施されて、道路の拡幅工事は終了する。
【0005】
上記の軽量盛土工法において、アンカーヘッド51とアンカー6との固定は次のような手順で行われる。図4に詳細に示すように、最上段のEPSブロック4aの上に、アンカー6の先端部6aの位置に対応して、一方端をアンカーヘッド51の形状に折り曲げた鉄筋11を配置する。必要に応じて、鉄筋11の先端部11aとアンカー6の先端6aを囲うように型枠を配置した後、最上段のEPSブロック4aの全面および鉄筋11とアンカー6の双方の先端11a、6aの領域にコンクリートを打設し硬化させる。それにより、コンクリート床版5とその山側縁のアンカーヘッド51とが一体のものとして形成され、アンカーヘッド51を介して、コンクリート床版5とアンカー6とは一体化する。
【0006】
図5は、コンクリート床版5とアンカー6との他の接続態様を示しており、ここでは、既存地山に埋設固定したアンカー6aの先端を定着するための金属製保持部材31に、鉄筋(タイロッド)32の先端側を、ボルト・ナット33により相対的に回転可能にピン結合させ、その状態でコンクリートを打設して、コンクリート床版5とアンカーヘッド6とを一体化している(特開平10−266610号公報参照)。ここでもその上に、所要の仕上げのための工事が施される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
EPSブロック4のような樹脂発泡体は弾塑性体である。従って、コンクリート床版5の上に仕上げ施工として路盤8やアスファルト9を積み上げると樹脂発泡体(EPSブロック4)がわずかとはいえ沈下するのは避けられない。工事終了後にも、大型車両が通過する場合などに一時的な沈下が生じる。図3に示すように、山側が傾斜面であり、そこに谷側がほぼ垂直壁となるように軽量盛土材を積み上げた場合には、山側に比して谷川の沈下量が大きくなる。一方、コンクリート床版5のアンカーヘッド部51は既存地山(支持地盤3)に支持されており、路盤8やアスファルト9の影響で沈下することはない。そのために、コンクリート床版5のアンカーヘッド部51との繋ぎ部52にはどうしてもある程度のモーメントが発生する。
【0008】
従来の軽量盛土工法では、上記のモーメントにより破損が生じるのを回避するために、本来必要とされる強度(すなわち、水平方向の荷重を担持できるだけの強度)以上の強度を持つように、コンクリート床版とアンカーヘッド部との繋ぎ部の設計を行っており、結果として施工費用アップの一因となっている。
【0009】
図5に示す工法では、アンカー6の先端と鉄筋(タイロッド)32の先端とが相対的に回転可能にピン結合33されており、モーメントの伝達は緩和されるとしても、ピン結合部全体がコンクリート床版と一体となったアンカーヘッド部内に埋め込まれており、コンクリート床版の沈下により生じるモーメントによって、アンカーヘッド部あるいはアンカーヘッド部とコンクリート床版との繋ぎ部に破壊が生じる恐れがある。また、図示のような鋼板とそこに貫通するボルト・ナットによるピン結合は、一個の結合部が担持できる荷重に限界があり、施工現場によっては、荷重分散のために、ピン結合部すなわち地中アンカーの本数を本来必要とする数よりも多くすることが必要となる場合があり、施工性やコストの点での問題を有している。
【0010】
本発明は、EPSブロックなどを軽量盛土材として用いる軽量盛土工法において生じている上記のように不都合に鑑みてなされたものであり、軽量盛土材の沈下に起因してコンクリート床版とアンカーヘッド部との繋ぎ部に生じている問題を、繋ぎ部の構造強度を増加させることなくして回避し、それにより、施工にかかる費用を低減できるようにした、軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの新規な固定構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、盛土部側のコンクリート床版に形成したアンカーヘッド部に支持地盤側に埋設するアンカーの先端部分が固定される軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造において、コンクリート床版とアンカーヘッド部との間をヒンジ構造としたことを特徴とする。より具体的には、コンクリート床版とアンカーヘッド部とは目地板を介して縁切りされた状態で、双方に埋設する共通の接合鉄筋により一体に連接されていることを特徴とする。目地板としては、ヒンジ部すなわち縁切り状態とされた連接部での両者の挙動を吸収できるだけの弾性あるいは可塑性を備えている材料であれば任意に用いることができ、瀝青質板、瀝青繊維質板、ゴム発泡体、樹脂発泡体などが好ましくは用いられる。それらは単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明によれば、コンクリート床版上に仕上げ施工される路盤やアスファルトなどの影響で軽量盛土材が沈下し、それにより、コンクリート床版が谷川に傾斜する姿勢となった場合でも、コンクリート床版とアンカーヘッド部との繋ぎ部はヒンジ結合すなわち縁切りされた状態となっているので、該繋ぎ部にモーメントが発生することはない。そのために、繋ぎ部は水平方向の荷重を担持できるだけの強度を持つように設計すればよい。そして、該水平方向の荷重は、両者を一体に連接するために双方に埋設する共通の接合鉄筋により担持されるので、コンクリート床版とアンカーヘッド部の繋ぎ部の構成を複雑化することはなく、施工に要するコストを低減することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態を説明する。なお、本発明において、コンクリート床版とアンカーヘッド部の構造を除き、他の構成は図3に基づき説明した従来のものと同じであってよい。従って、以下の説明では、本発明による特徴的な事項を中心に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造を適用した盛土工事部の要部を断面で示している。図2は施工途中の状態を示す平面図である。前記したように、既存地山の斜面側にH形鋼2が建て込まれ、H形鋼2と支持地盤3との間にEPSブロック4が所定の高さまで積み上げられる。必要な場合には、H形鋼2を利用して軽量コンクリート板のような壁面保護材7が取り付けられる。
【0015】
最上段のEPSブロック4aの上には、H形鋼2に一端を止着した連結金具21を配置され、H形鋼2とコンクリート床版5との一体化を強固にする。さらに、EPSブロック4aの上には、H形鋼2側の側縁側から山側縁を越えるようにして適宜本数(図示の例では4本一組)の接合鉄筋22が、所定の間隔で配筋される。図1に示すように、この例では、接合鉄筋22はH形鋼2側の側縁において垂直な立ち上がり23となっており、山側の端部も上方への折曲部24となっている。
【0016】
接合鉄筋22の山側折曲部24の近傍には、従来と同様にして支持地盤3に埋設固定されたアンカー6の先端部分6aが位置しており、前記山側折曲部24および先端部6aを囲むようにして適宜の鉄筋25を配置して、アンカーヘッド部51の配筋構造を形成する。
【0017】
所要の配筋作業をした後に、従来法と同様に、コンクリート床版5とアンカーヘッド51のためのコンクリートを打設するが、本発明おいては、コンクリート打設の前に、コンクリート床版5とアンカーヘッド51の繋ぎ部となる部分にアスファルトなどによる目地板54が予め配置される。その状態でコンクリートを打設し、コンクリートの硬化によりコンクリート床版5とアンカーヘッド51とが形成される。その後、従来工法に従い、接合鉄筋22の垂直な立ち上がり23を補強材として地覆コンクリート10を作り、さらに、コンクリート床版5の上に仕上げ施工が行われる。
【0018】
本発明の構造において、コンクリート床版5とアンカーヘッド51とは、接合鉄筋22により分離しない連接状態に維持される一方において、両者の間には目地板54が介在していることから、コンクリート床版5のコンクリートとアンカーヘッド52のコンクリートとに連続性がなく、縁切りされている。そのために、仕上げ施工後にEPSブロック4が沈下してコンクリート床版5が谷側が下位となるように傾斜したとしても、そのコンクリート床版5の挙動は、目地板54に吸収されるにとどまり、アンカーヘッド52およびその近傍にはなんの影響も与えない。そのために、コンクリート床版5とアンカーヘッド52との繋ぎ部近傍の設計強度を低い値(水平方向の荷重を担持できるだけの強度)に設定することができ、コスト低減がもたらされる。
【0019】
一方において、コンクリート床版5は、従来工法による場合と同様に、接合鉄筋22、アンカーヘッド52、アンカー6を介して支持基盤3に一体化されているので、コンクリート床版5の水平方向の移動は従来のものと同様な安全性のもので規制されており、コンクリート床版5およびEPSブロック4が水平方向に位置ズレや転倒を起こすことはない。
【0020】
なお、上記の実施の形態では、谷側にH形鋼を建て込んだ状態で施工するようにしているが、EPSブロックのような樹脂発泡体は相互間およびコンクリート床版との間で所要の摩擦抵抗を有しており、十分に自立性があるので、H形鋼を建て込むことなく軽量盛土材としての樹脂発泡体(EPSブロック)の積み上げ施工を行うことが可能である。その際には、耐候性を出すために、樹脂発泡体の側面にはモルタルなどの吹き付けが行われる。その場合には、当然に、H形鋼2との連結金具21は不要となる。コンクリート床版5も積み上げた最上位のEPSブロックの上に形成するものとして説明したが、EPSブロックは自立性を備えることから、形成したコンクリート床版5の上にさらにEPSブロックを積み上げ、その上に、仕上げ施工として路盤やアスファルトなどを施工することももちろん可能である。
【0021】
【発明の効果】
本発明による軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造によれば、コンクリート床版とアンカーヘッドとの繋ぎ部近傍の設計強度を従来工法による場合よりも低い値に設定しても、従来のものと同様の安全性を確保することができる。それにより、軽量盛土工法に要する施工費用の低減がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造を適用した盛土工事部の要部を示す概略断面図。
【図2】施工途中の状態を示す平面図。
【図3】従来の軽量盛土工法における盛土工事部の要部を示す概略断面図。
【図4】従来の軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造を説明するための概略断面図。
【図5】従来の軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの他の固定構造を説明するための概略断面図。
【符号の説明】
2…H形鋼、3…支持地盤、4、4a…軽量盛土材としての樹脂発泡体、5コンクリート床版、6…アンカー、51…アンカーヘッド、54…目地板
Claims (2)
- 盛土部側のコンクリート床版に形成したアンカーヘッド部に支持地盤側に埋設したアンカーの先端部分が固定される軽量盛土工法におけるコンクリート床版とアンカーとの固定構造において、コンクリート床版とアンカーヘッド部とは目地板を介して縁切りされており、両者は双方に埋設する共通の接合鉄筋により一体に連接されていることを特徴とする固定構造。
- 目地板は、瀝青質板、瀝青繊維質板、ゴム発泡体、樹脂発泡体のいずれかまたはその組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の固定構造。
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