JP3599841B2 - 半導体レーザ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、発振波長が630nm帯付近の半導体レーザ素子としてAlGaInP系半導体レーザ素子が活発に研究開発されている。この630nm帯は視感度が高いことから、斯る素子はレーザーポインターやラインマーカー等に使用されている他、AlGaAs系半導体レーザ素子に比べて発振波長が短いことから高密度記録用光源等として期待されている。
【0003】
ところで、半導体レーザ素子では、温度特性(最高発振温度等)が良好で発振しきい値電流が小さいことが要求される。これら特性改善のためには、ダブルヘテロ構造を構成する活性層とp型クラッド層とのエネルギーギャップEgの差及 びp型クラッド層のホール濃度を大きくして、即ち活性層とp型クラッド層との伝導帯におけるバンド不連続(エネルギー差)ΔEを大きくして、電子の閉じ込めを良好にすることが必要である。
【0004】
ところで、AlGaInP系半導体レーザ素子のp型クラッド層に用いられるGaAs半導体基板と格子整合した、即ち無歪の(AlxGa1−x)0.5In0.5P結晶では、エネルギーギャップEgに関しては、Al組成比xが大きくなる程大 きくなるが、逆に、ホール濃度は、Al組成比xが大きくなる程小さくなる。
【0005】
この結果、電子の閉じ込めを良好とするために、(AlxGa1−x)0.5In0.5P結晶からなるp型クラッド層のAl組成比xは、0.5〜0.8程度が選択される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように選択されたAl組成比xのp型クラッド層を有するAlGaInP系半導体レーザ素子でも、例えばAlGaAs系半導体レーザ素子に比べて、ΔEが小さいため、最高発振温度等の温度特性が悪いといった問題があった。
【0007】
これらの問題を解決するものとして、特開平4−114486号(H01S
3/18)に活性層とp型クラッド層の間に電子を透過する厚みの井戸層及び障壁層を交互に積層してなる多重量子障壁(MQB)を設けることが開示されている。この多重量子障壁は、井戸層、障壁層の厚みと周期などを制御して、電子の干渉に基づいて電子を高反射するものである。このように多重量子障壁は電子の干渉を利用したものであり、井戸層、障壁層は電子が透過できる厚み、即ち非常に薄い厚みであることが不可欠である他、前記周期が重要となる。従って、この多重量子障壁は井戸層、障壁層の層厚を高精度に制御する必要があり、製造が繁雑であった。
【0008】
本発明は上述の問題点を鑑み成されたものであり、良好な温度特性を有する製造の容易な半導体レーザ素子を提供することが目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ピックアップ装置は、第1導電型の半導体基板と、該基板上に形成され該基板と略格子整合する第1導電型のAlGaInP系結晶からなるクラッド層と、該第1導電型のクラッド層上に形成された活性層と、該活性層上に形成され前記基板と略格子整合する前記第1導電型とは逆導電型となる第2導電型のAlGaInP系結晶からなるクラッド層と、を備え、前記両クラッド層のうちの少なくともp型クラッド層中又は該p型クラッド層と前記活性層の間に、前記p型クラッド層よりエネルギーギャップが大きく且つ該p型クラッド層よりホール濃度が小さいAlGaInP系結晶又はAlInP系結晶からなる障壁層をなす他のp型クラッド層を設け、前記p型クラッド層のドーパントがZnであると共に、前記他のp型クラッド層のドーパントがMgであることを特徴とする。
【0010】
特に、前記他のp型クラッド層は前記基板と略格子整合することを特徴とし、更に、前記基板がGaAs基板であり、前記p型クラッド層が(Alx1Ga1−x1)0.5In0.5P系結晶からなり、前記他のp型クラッド層が(Alx2Ga1−x2)0.5In0.5P(1≧x2>x1>0)系結晶からなることを特徴とする。
【0011】
また、前記組成比x2は、0.8<x2≦1の関係を満足することを特徴とし、特に0.9≦x2≦1の関係を満足することが望ましく、更にx2は略1であることがよい。
【0012】
加えて、前記他のp型クラッド層のホール濃度は、2×1017cm−3以上7×1017cm−3以下であることを特徴とし、更には、4×1017cm−3以上6×1017cm−3以下であることがよく、特に、4.5×1017cm−3以上5.5×1017cm−3以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記他のp型クラッド層の層厚は、500Å以上2000Å以下であることを特徴とし、1000Å以上2000Å以下であることが好ましい。
【0014】
更に、前記両クラッド層のうちのn型クラッド層中又は該n型クラッド層と前記活性層の間に、前記n型クラッド層よりエネルギーギャップが大きいAlGaInP系結晶又はAlInP系結晶からなる障壁層をなす他のn型クラッド層を設けたことを特徴とする。
【0015】
特に、前記他のn型クラッド層は前記基板と略格子整合することを特徴とし、更に、前記基板がGaAs基板であり、前記n型クラッド層が(Alx1Ga1−x1)0.5In0.5P系結晶からなり、前記他のn型クラッド層が(Alx2Ga1−x2)0.5In0.5P(1≧x2>x1>0)系結晶からなることを特徴とする。
【0016】
また、前記組成比x2は、0.8<x2≦1の関係を満足することを特徴とし、特に0.9≦x2≦1の関係を満足することが望ましく、更にx2は略1であることがよい。
【0017】
加えて、前記n型クラッド層と前記他のn型クラッド層は略等しい電子濃度であることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態であるAlGaInP系半導体レーザ素子を図を用いて説明する。尚、図1、図2はそれぞれ斯る半導体レーザ素子の模式断面構造図、活性層近傍の模式バンド構造図である。
【0020】
図中、1はn型GaAs半導体基板で、その一主面(結晶成長面)は(100)面から[011]方向に角度θ(θ=5度〜17度、好ましくは7度〜13度:以下この角度θをオフ角度θという)で傾斜した面であり、この前記一主面上には層厚0.3μmのn型Ga0.5In0.5Pバッファ層2が形成されている。
【0021】
上記バッファ層2上には、層厚0.8〜0.9μmのn型(Alxa1Ga1−xa1)0.5In0.5P(Siドープ)からなるクラッド層3、及びこのn型クラッド層3よりバンドギャップが大きく、障壁層をなす層厚taÅのn型(Alxa2Ga1−xa2)0.5In0.5P(1≧xa2>xa1>0:Siドープ)からなるクラッド 層4がこの順序で形成されている。
【0022】
前記n型クラッド層3上には、図2に詳細を示すように、層厚500Åのアンドープの(AlyaGa1−ya)0.5In0.5P(本実施例ではya=0.5)光ガイド層5が形成されている。
【0023】
この光ガイド層5上には、層厚100Åの引張り歪を有する(AlpGa1−p)qIn1−qP(1>p≧0,1>q>0.51:本実施例ではp=0、q=0.65)量子井戸層6a、6a、6aと層厚40Åの圧縮歪みを有する(AlrGa1−r)sIn1−sP(1≧r>0,0<s<0.51:本実施例ではr=0.5、s=0.45)量子障壁層6b、6b(典型的には、全5層以下)とが交互に積層されてなるアンドープの歪み補償型多重量子井戸構造(引張り歪MQW構造)からなる活性層6が形成されている。
【0024】
この活性層6上には、層厚500Åのアンドープの(AlybGa1−yb)0.5I n0.5P(本実施例ではyb=0.5)光ガイド層7が形成されている。
【0025】
この光ガイド層7上には、下記外側のp型クラッド層9よりバンドギャップが大きく障壁層をなす層厚tbÅのp型(Alxb2Ga1−xb2)0.5In0.5P(Mg ドープ)からなるクラッド層8、及び層厚が0.2〜0.3μm程度の平坦部9aとこの平坦部の略中央に紙面垂直方向(共振器長方向)に延存する高さ0.5〜0.6μm、上部幅3〜4μm、下部幅4〜5μmのストライプ状リッジ部9bで構成されるp型(Alxb1Ga1−xb1)0.5In0.5P(1≧xb2>xb1>0:Znドープ)からなるクラッド層9がこの順序で構成される。
【0026】
前記リッジ部9b上面には、層厚0.1μmのp型Ga0.5In0.5Pコンタクト層10が形成されており、このコンタクト層10の側面上及びp型クラッド層9上には層厚1μmのn型GaAs電流阻止層11、11が形成されている。
【0027】
前記コンタクト層10及び電流阻止層11、11上には、層厚が2〜6μmであるp型GaAsキャップ層12が形成されている。
【0028】
前記キャップ層12上面にはAu−Crからなるp型側オーミック電極13が、前記n型GaAs基板1下面にはAu−Sn−Crからなるn型側オーミック電極14が形成されている。
【0029】
斯る半導体レーザ素子は、図2に示すように、活性層6がバンドギャップの大きいクラッド層3、9で挟まれると共に、この活性層6はこれらクラッド層3、9よりバンドギャップの大きい障壁層をなすクラッド層4、8で挟まれる構成である。この素子では、p型クラッド層8により、活性層6とこのp型クラッド層8との伝導帯のエネルギー差ΔEは大きく電子が該p型クラッド層8を殆ど越えることがないので、電子の活性層6内への閉じ込めが十分行え、しきい値電流、最高発振温度等の温度特性が改善可能となる。
【0030】
図3は、斯る半導体レーザ素子における障壁層をなすp型クラッド層(p型障壁層)8のAl組成比xb2と障壁層をなすn型クラッド層(n型障壁層)4のAl組成比xa2を同じくして変化させた場合の最高発振温度を示す。尚、ここでは、p型障壁層8の層厚tb、n型障壁層4の層厚taは1000Å、n型クラッド層3及びp型クラッド層9は(Al0.8Ga0.2)0.5In0.5Pとした。
【0031】
この図3から判るように、p型障壁層8のAl組成比xb2、n型障壁層4のAl組成比xa2は、0.8より大が好ましく、0.9以上1以下が最高発振温度が80℃以上と顕著に大きく好ましいことが判る。
【0032】
図4は、斯る半導体レーザ素子におけるp型障壁層8の層厚tbとn型障壁層 4の層厚taを同じく変化させた場合の最高発振温度の関係を示す。尚、ここで は、p型障壁8とn型障壁層4はAl0.5In0.5Pとすると共に、n型クラッド層3及びp型クラッド層9は(Al0.8Ga0.2)0.5In0.5Pとした。
【0033】
この図4から、p型障壁層8の層厚tb、n型障壁層4の層厚taは、500Å以上2000Å以下の場合に最高発振温度が80℃以上と顕著に大きくなることが判る。
【0034】
図5は、斯る半導体レーザ素子におけるn型クラッド層3の組成比xa1とp型クラッド層9の組成比xb1を同じく変化させると共に、n型障壁層4の層厚ta とp型障壁層8の層厚tbを同じく変化させた場合のレーザ光の垂直広がり角度 の変化の計算結果を示す。尚、n型障壁層4とp型障壁層8はAl0.5In0.5Pとし、活性層6はGa0.5In0.5P量子井戸層(100Å×3層)と(Al0.5 Ga0.5)0.5In0.5P障壁層(40Å×2層)からなる量子井戸構造とした。
【0035】
この図5から、p型障壁層8とp型クラッド層9のAl組成比差、n型障壁層4とn型クラッド層3のAl組成比差が大きくなる程、レーザ光の垂直広がり角度を小さくできることが判る。
【0036】
但し、ここでは示さないが、p型障壁層8に比べてp型クラッド層9のAl組成比、n型障壁層4に比べてn型クラッド層3のAl組比が小さくなり過ぎると、レーザ発振条件を満たさなくなるので、p型クラッド層9のAl組成比xb1、n型クラッド層3のAl組成比xa1は、0.5より大で0.8以下がよく、0.6以上0.8以下がより好ましい。尚、n型クラッド層3のAl組成比xa1は、光強度分布の観点から、p型クラッド層9のAl組成比xb1と同じ程度であるのが好ましく、Al組成比xa1とAl組成比xb1は略等しく設定するのが更によい。
【0037】
加えて、この図5からは、垂直広がり角度を小さくするためには、障壁層の層厚ta、tbは1000Å〜3000Åが好ましいことが判る。
【0038】
このように図3〜図5から判るように、障壁層としては、Al組成比xが0.8より大、好ましくは0.9以上1以下である(AlxGa1−x)0.5In0.5Pがよく、特にxは略1がよい。そしてこれら層厚は、最高発振温度からは500Å〜2000Åがよく、しかも垂直広がり角度を小さくする点を鑑みると、1000Å〜2000Åが良い。
【0039】
また、障壁層の外側に位置するクラッド層としては、Al組成比yが上記障壁層のAl組成比xより小さく、0.5より大0.8以下の(AlyGa1−y)0.5 In0.5Pがよく、更にAl組成比yは0.6以上0.8以下がより好ましい。
【0040】
斯る半導体レーザ素子において、p型クラッド層8のホール濃度を変えてレーザ発振実験を行ったところ、p型障壁層のホール濃度に依存し、発振状態が顕著に異なることが判った。その結果を図6に示す。尚、前記n型クラッド層3とn型障壁層4は略等しい電子濃度とした。
【0041】
この図6から判るように、p型障壁層はホール濃度が2×1017cm−3以上7×1017cm−3以下の範囲外である場合、しきい値電流が大きくなり過ぎ、良好なレーザ発振が行えなかった。即ち、p型障壁層はホール濃度が2×1017cm−3以上7×1017cm−3以下がよく、特に4×1017cm−3以上6×1017cm−3以下でしきい値電流を小さくできるので好ましく、更に4.5×1017cm−3以上5.5×1017以下でしきい値電流を略極小値にできるのでより好ましい。
【0042】
尚、p型クラッド層9のホール濃度としては、p型障壁層より大きく7×1017cm−3より大きく3×1018cm−3以下がよく、典型的には略9×1017cm−3以上略1.5×1018cm−3以下に設定される。
【0043】
ここで、上述したように、p型クラッド層9のドーパントにZnを用い、p型障壁層8にZnとは異なるMgを用いる理由を以下に説明する。
【0044】
まず、p型クラッド層9のドーパントにZnを用いる理由は、ZnはAlGaInP系の結晶性を劣化する恐れが少ないためである。
【0045】
しかしながら、ZnはAlGaInP系、AlInP系結晶のAl組成が大きくなるに従って活性化率が低下し、特に実質のAl組成比が0.4より大で急激に低下する。例えば、Al0.5In0.5Pでは1016cm−3台のホール濃度しか得られない。
【0046】
一方、Mgは、Al組成が大きいAlGaInP系、AlInP系結晶においても上述のホール濃度を実現できるためであり、しかも、p型障壁層8はp型クラッド層9に比べて格段に層厚が小さくてよいので、素子の結晶性を劣化する恐れは小さいためである。
【0047】
最後に、図7に本発明に係る半導体レーザ素子と従来の障壁層を備えない以外は同じである半導体レーザ素子について、最高発振温度、垂直広がり角度を調べた結果を示す。ここでは、垂直広がり角度を変えるために、光ガイド層の組成比、層厚等も調整している。尚、本発明に係る素子は、n型クラッド層3、p型クラッド層9は(Al0.8Ga0.2)0.5In0.5P、n型障壁層4、p型障壁層8は層厚1000ÅのAl0.5In0.5Pであり、従来素子のp型、n型クラッド層は(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pである。
【0048】
この図7から判るように、本発明に係る素子は、従来の素子に比べて、同じ垂直広がり角度において最高発振温度を非常に大きくできる。
【0049】
尚、上述では、垂直広がり角度を小さくし、光強度分布を対称にするように、p型障壁層と対称なn型障壁層を設けているが、p型障壁層と非対称なn型障壁層を設けてもよく、また、n型障壁層の最高発振温度の改善の寄与は小さく、最高発振温度等の温度特性改善には、p型障壁層のみでもよい。
【0050】
また、上述では、歪補償型の量子井戸構造の活性層について主に説明したが、引っ張り歪みや圧縮歪のものでも、無歪のものでもよく、勿論バルク構造でもよい。また、上述の活性層は量子井戸層に光閉じ込めをよくするために光ガイド層を備えたが、これら光ガイド層はない構成も可能である。
【0051】
加えて、上述では、p型障壁層8、n型障壁層4は、それぞれp型クラッド層9と活性層6の間、n型クラッド層3と活性層6の間に設けたが、これらは、それぞれp型クラッド層9、n型クラッド層3中に設けるようにすることもできる。
【0052】
更に、n型GaAs半導体基板1とn型クラッド層3の間に設けたn型Ga0.5In0.5Pバッファ層2に代えてn型GaAsバッファ層を用いてもよく、またバッファ層はなくともよい。
【0053】
また、上述のようにリッジ部と平坦部で構成されるクラッド層中には、例えば両部の間にエッチング停止層、平坦部、リッジ部中に可飽和光吸収層等の他の層が含まれる構成とすることもできる。
【0054】
尚、(AlxGa1−x)uIn1−uP(x≧0)結晶は、u=0.51の場合に正確にGaAs半導体基板と格子整合して歪が生じないが、u=0.51の近傍であっても殆ど歪が生じないので、(AlxGa1−x)0.5In0.5Pと略記しているものは、組成比uは0.51近傍であればよい。
【0055】
更に、上記各実施例では、GaAs半導体基板1の一主面が(100)面から[011]方向に傾斜した面であったが、これらと等価な関係にあるものが望ましい。即ち、GaAs基板の一主面(結晶成長面)は、(100)面から[0−1−1]方向に傾斜した面、(010)面から[101]又は[−10−1]方向に傾斜した面、(001)面から[110]又は[−1−10]方向に傾斜した面でもよく、即ち{100}面から<011>方向に傾斜した面であればよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明の半導体レーザ素子は、p型クラッド層中又は該p型クラッド層と活性層の間に、前記p型クラッド層よりエネルギーギャップが大きく且つ該p型クラッド層よりホール濃度が小さいAlGaInP系結晶又はAlInP系結晶からなる障壁層をなす他のp型クラッド層を設けたので、製造の簡単な構成で最高発振温度等の温度特性が改善可能となると共に、垂直広がり角度も小さくできる。 更に、前記p型クラッド層のドーパントがZnであると共に、前記他のp型クラッド層のドーパントがMgであるため、これら層の結晶性の劣化を防止しつつ、所望のホール濃度を容易に得られる。
【0057】
更に、前記他のp型クラッド層が基板と略格子整合する場合、他のp型クラッド層の層厚を大きくできるので、設計の自由度が増す。特に、基板がGaAs基板であり、前記p型クラッド層が(Alx1Ga1−x1)0.5In0.5P系結晶からなり、前記他のp型クラッド層が(Alx2Ga1−x2)0.5In0.5P(1≧x2>x1>0)系結晶からなる場合、他のp型クラッド層はGaAs基板と良好に略格子整合する。
【0058】
また、前記組成比x2が0.8<x2≦1の関係を満足する場合、十分に最高発振温度を大きくできると共に垂直広がり角度を小さくでき、特に0.9≦x2≦1の関係を満足する場合に顕著に最高発振温度が大きくなる。
【0059】
加えて、前記他のp型クラッド層のホール濃度が2×1017cm−3以上7×1017cm−3以下である場合にしきい値電流を小さくでき、特に、4×1017cm−3以上6×1017cm−3以下である場合により小さくでき、更に、4.5×1017cm−3以上5.5×1017cm−3以下である場合にしきい値電流を極めて小さくできる。
【0060】
また、前記他のp型クラッド層の層厚が500Å以上2000Å以下である場合、最高発振温度を十分に高めることができ、特に、1000Å以上2000Å以下である場合、垂直広がり角度を小さくできる。
【0061】
更に、n型クラッド層中又は該n型クラッド層と前記活性層の間に、前記n型クラッド層よりエネルギーギャップが大きいAlGaInP系結晶又はAlInP系結晶からなる障壁層をなす他のn型クラッド層を設けた場合、光強度分布を対称に近づけることができ、しかも垂直広がり角度をより小さくできる。
【0062】
更に、前記他のn型クラッド層が基板と略格子整合する場合、他のn型クラッド層の層厚を大きくできるので、設計の自由度が大きくなる。特に、基板がGaAs基板であり、前記n型クラッド層が(Alx1Ga1−x1)0.5In0.5P系結晶からなり、前記他のn型クラッド層が(Alx2Ga1−x2)0.5In0.5P(1≧x2>x1>0)系結晶からなる場合、他のn型クラッド層はGaAs基板と良好に略格子整合する。
【0063】
また、前記組成比x2は、0.8<x2≦1の関係を満足する場合、特に、0.9≦x2≦1の関係を満足する場合、垂直広がり角度を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である半導体レーザ素子の模式断面構造図である。
【図2】上記実施の一形態である半導体レーザ素子の活性層近傍の模式バンド構造図である。
【図3】p型、n型障壁層のAl組成比xb2、xa2を共に変化させた場合の最高発振温度Tmaxの関係を示す図である。
【図4】p型、n型障壁層の層厚tb、taを共に変化させた場合の最高発振温度Tmax の関係を示す図である。
【図5】障壁層の層厚ta、tb、障壁層の外側のクラッド層のAl組成比xa1、xb1、及び垂直広がり角度の関係を示す図である。
【図6】p型障壁層のホール濃度と発振しきい値電流の関係を示す図である。
【図7】本発明に係る半導体レーザ素子と従来例の半導体レーザ素子における最高発振温度、垂直広がり角度を示す図である。
【符号の説明】
1 n型GaAs半導体基板
3 n型(Alxa1Ga1−xa1)0.5In0.5Pクラッド層
4 n型(Alxa2Ga1−xa2)0.5In0.5Pクラッド層(n型障壁層)
6 活性層
8 p型(Alxb2Ga1−xb2)0.5In0.5Pクラッド層(p型障壁層)
9 p型(Alxb1Ga1−xb1)0.5In0.5Pクラッド層
Claims (16)
- 第1導電型の半導体基板と、該基板上に形成され該基板と略格子整合する第1導電型のAlGaInP系結晶からなるクラッド層と、該第1導電型のクラッド層上に形成された活性層と、該活性層上に形成され前記基板と略格子整合する前記第1導電型とは逆導電型となる第2導電型のAlGaInP系結晶からなるクラッド層と、を備え、前記両クラッド層のうちの少なくともp型クラッド層中又は該p型クラッド層と前記活性層の間に、前記p型クラッド層よりエネルギーギャップが大きく且つ該p型クラッド層よりホール濃度が小さいAlGaInP系結晶又はAlInP系結晶からなる障壁層をなす他のp型クラッド層を設け、前記p型クラッド層のドーパントがZnであると共に、前記他のp型クラッド層のドーパントがMgであることを特徴とする半導体レーザ素子。
- 前記他のp型クラッド層は、前記基板と略格子整合することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
- 前記基板はGaAs基板であり、前記p型クラッド層は、(Alx1Ga1−x1)0.5In0.5P系結晶からなり、前記他のp型クラッド層は、(Alx2Ga1−x2)0.5In0.5P(1≧x2>x1>0)系結晶からなることを特徴とする請求項2記載の半導体レーザ素子。
- 前記組成比x2は、0.8<x2≦1の関係を満足することを特徴とする請求項3記載の半導体レーザ素子。
- 前記組成比x2は、0.9≦x2≦1の関係を満足することを特徴とする請求項4記載の半導体レーザ素子。
- 前記他のp型クラッド層のホール濃度は、2×1017cm−3以上7×1017cm−3以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5記載の半導体レーザ素子。
- 前記他のp型クラッド層のホール濃度は、4×1017cm−3以上6×1017cm−3以下であることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザ素子。
- 前記他のp型クラッド層のホール濃度は、4.5×1017cm−3以上5.5×1017cm−3以下であることを特徴とする請求項7記載の半導体レーザ素子。
- 前記他のp型クラッド層の層厚は、500Å以上2000Å以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、又は8記載の半導体レーザ素子。
- 前記他のp型クラッド層の層厚は、1000Å以上2000Å以下であることを特徴とする請求項9記載の半導体レーザ素子。
- 前記両クラッド層のうちのn型クラッド層中又は該n型クラッド層と前記活性層の間に、前記n型クラッド層よりエネルギーギャップが大きいAlGaInP系結晶又はAlInP系結晶からなる障壁層をなす他のn型クラッド層を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10記載の半導体レーザ素子。
- 前記他のn型クラッド層は、前記基板と略格子整合することを特徴とする請求項11記載の半導体レーザ素子。
- 前記基板はGaAs基板であり、前記n型クラッド層は、(Alx1Ga1−x1)0.5In0.5P系結晶からなり、前記他のn型クラッド層は、(Alx2Ga1−x2)0.5In0.5P(1≧x2>x1>0)系結晶からなることを特徴とする請求項12記載の半導体レーザ素子。
- 前記組成比x2は、0.8<x2≦1の関係を満足することを特徴とする請求項13記載の半導体レーザ素子。
- 前記組成比x2は、0.9≦x2≦1の関係を満足することを特徴とする請求項14記載の半導体レーザ素子。
- 前記n型クラッド層と前記他のn型クラッド層は略等しい電子濃度であることを特徴とする請求項11、12、13、14、又は15記載の半導体レーザ素子。
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