JP3599699B2 - フラットスピーカー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットスピーカーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、平面パネルを振動板として、振動板に励振器(エキサイター)を装着して振動させ、音を放射するフラットスピーカーがあった。
【0003】
図11は、これらのフラットスピーカーの基本的な例で、(a)は表面を表し、(b)は裏面のエキサイター装着状況を示している。(c)は断面図である。1枚のパネルを1つの振動系とするモノーラル音響用のフラットスピーカー10は、振動板11とエキサイター12で構成される振動系を持っている。フレーム13が振動板11とエキサイター12を支持している。
【0004】
音響出力の要求から、あるいは、パネルの振動形態を改善するために、1枚の振動板に複数個のエキサイター12が装着されている例があるが、これらのエキサイターは同じ電気駆動源で励振されるので、パネルに同じ位相の振動を与えるのみで、1枚のパネルから2チャンネル以上の音響を放射することはできなかった。
したがって、ステレオ効果を出すためには、2組のフラットスピーカーを設置する必要があった。
【0005】
フラットスピーカーの振動板の表面が平面であることを利用して、表面を映像スクリーンとして大型のスクリーンスピーカーとした例がある。
最近の映画の音響は、ステレオ音響から進んで、3チャンネル音響となっているので、独立した3個のスピーカーが必要となる。
【0006】
図12は、従来のスクリーンスピーカーを用いた投影システムの概要を示す説明図である。
全体符号1で示すスクリーン投影システムは、プロジェクタ10とスクリーンスピーカー20を有し、プロジェクタ10からの映像はスクリーンスピーカー20の表面に投影される。
【0007】
図13は、スクリーンスピーカー20の裏面を示した概要説明図で、スクリーンスピーカー20は、映像が投影される1枚のスクリーンフィルム22を有し、スクリーンフィルム22の裏面には音響用のフラットスピーカーユニット30が装着される。
【0008】
図14は断面図で、スクリーンフィルム22とフラットスピーカーの構造の詳細を示し、スクリーンフィルム22の裏面に3個のスピーカー31、32、33が装着される。
左チャンネル用のスピーカー31は、スクリーンフィルム22の裏面に接着される振動板31aと、振動板31aに取付けられるエキサイター31bを有する。
センターチャンネル用のスピーカー32は、振動板32aとエキサイター32bを有し、右チャンネル用のスピーカー33は、振動板33aとエキサイター33bを有する。
このスクリーンフィルム22は、スプリング40を介して周囲を基台50に展張されて投影面を形成する。
さらに、スクリーンスピーカーに高音質が要求されると、それぞれのチャンネルに高音域専用の小型スピーカーが設置されるので、複雑な構成となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来のフラットスピーカーは、1枚のパネルから複数チャンネルの音が放射できなかったため、システムの構成が複雑で、全体の重量が大きく、コストも高かった。
本発明は、軽量で簡素な構造の多チャンネルのフラットスピーカーを提供して、設置場所の狭い一般家庭、店舗、航空機、車両内などに設置可能とすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明では、課題を解決するための基本的な手段として、フラットスピーカーの振動板全体を1枚のサンドイッチパネルで構成し、パネルの曲げ剛性に方向性を持たせる、あるいは、局部的に異なる曲げ剛性を分布させて分割振動を容易にし、パネルを複数個のエキサイターで励振して、多チャンネルのスピーカー機能を持たせた。
【0011】
振動板パネルの曲げ剛性に方向性、あるいは適正な分布を持たせるための手段としては、サンドイッチパネルの表面材に方向性を持つ材料を使うこと、および、芯材として剪断弾性率に方向性を持つ材料、あるいは、剪断弾性率の異なる芯材を局部的に配置する構造としたが、詳細はそれぞれの発明の実施の形態で述べる。
【0012】
[サンドイッチパネルの曲げ剛性]
表面材とコア(芯)材で構成されるパネルを一般的にサンドイッチパネルと称している。軽量で曲げ剛性が高い特徴を持っているので、フラットスピーカーの振動板パネルに適している。
表面材として、金属の薄いシートの他、炭素繊維、ガラス繊維等の高弾性繊維を樹脂で固めたシートが用いられ、コアとして、蜂の巣状のハニカムコアや発泡樹脂材料が用いられる。
【0013】
図15は、その代表的な例として、蜂の巣状コアを用いたハニカムパネル80を示している。コア81の両面に表面材82および裏面材83が接着される。
【0014】
図16は、サンドイッチパネル80が、曲げる力(または曲げモーメント)を受けた場合の曲げ変形図で、表面材82は引張力を、裏面材83は圧縮力を受ける。そして、コア材81は剪断力を受ける。
表面材82および裏面材83の引張/圧縮弾性率が低いと、同じ曲げモーメントを受けてもパネルの曲がりは大きくなる。同時に、コア材81の剪断弾性率が低いと剪断変形が大きくなって、曲がりが大きくなる。
【0015】
従って、パネルの曲げ剛性を変化させる方法には、表面材82および裏面材83の引張/圧縮弾性率を変える方法と、コア材81の剪断弾性率を変える2方法があることとなる。本発明では、この2方法を使ってパネルの曲げ剛性を変化させて、パネルの分割振動形態を調整した。
それぞれの具体的な方法を各実施の形態に示す。
【0016】
[ハニカムコアの製造工程と剪断弾性率]
図17は、ハニカムコア200の製造工程を示している。
ハニカムコアの素材201は、軸線Xで示す縦方向の寸法が軸線Yで示す横方向の寸法に比べて大きくできている。この素材201を軸線Y方向に矢印S1で示すストレッチをしていくと、図(b)で示すハーフストレッチコア材202が形成される。このハーフストレッチコア材202の軸線Xで示す縦方向の剪断弾性率は、軸線Yで示す横方向の剪断弾性率の約10倍の値を持っている。
ストレッチを続けると図(c)で示す正六角形セルの標準ストレッチコア材203が形成される。この標準ストレッチコア材203の縦方向の剪断弾性率は、横方向の剪断弾性率の約2倍の値を持っている。
さらにストレッチを続けると図(e)で示す長方形セルのオーバーストレッチコア材205が形成される。このオーバーストレッチコア材205の縦方向の剪断弾性率は、横方向の剪断弾性率の1/10以下の値に逆転する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施例を図面を参照して説明する。
[実施例1]
図1は、本発明のフラットスピーカーを映像スクリーンに応用したスクリーンスピーカーの構造を示す説明図である。図1(a)は表面を、図1(b)は裏面を示し、図2は断面図を示している。
【0018】
全体を符号100で示すスクリーンスピーカーは、振動板となるハニカムパネル150の一方の面にスクリーンフィルム110が接着され、ハニカムパネル150の他方の面にエキサイター131b、132b、133bが取り付けられた構造を有する。
【0019】
図3は、スピーカーの振動板を構成するハニカムコア160の構造を示す。
ハニカムコア160は、3個の標準ストレッチコア材161、162、163を2個のオーバーストレッチコア材165、166で連結した構造を有する。
図3のハニカムコア材160の連結材165、166は、オーバーストレッチコア材のストレッチ方向を、ハニカムコア160のX方向に合わせて用いられている。したがって、図3のハニカムコア材160はコアの連結部165、166において、軸Yを含む平面の剪断弾性率は標準ストレッチコア材161、162、163の部分に比べて1/10以下程度と極めて低い。
【0020】
このような構造を持つハニカムコア材160の表裏面に平織り繊維を樹脂で固めた表層材料を接着すると、連結部165、166における剪断剛性の低いハニカムパネル150を得る。
この連結部165、166の剪断剛性を低くした構造によって、連結されている各標準ストレッチコアの部分がほぼ独立して振動することができる。特に指向性の強い高音域での振動板の振幅は1/100ミリメートル以下なので、相互干渉は少ない。
【0021】
したがって、図1および図2に示すように、各標準ストレッチコアを持つ振動板131a、132a、133aに、エキサイター131b、132b、133bを取り付けることによって、3個の平板スピーカー131、132、133で、独立した振動系を持つ3チャンネルのスピーカーシステムを構成することができる。
このようにしてできた、スクリーンスピーカー100は、振動板131a、132a、133aが連結部165、166で滑らかに結合されているので、映像の歪みを排除することができ、パネルは四辺を引張る必要がないので大型フレームは不要となった。
【0022】
図4は、ハニカムコア材160の連結材165、166の材料を、オーバーストレッチコア材からコルゲートコア材に替えて目的を達成した例である。
結合部材300は、矩形波状に整形した材料310で作られていて、軸Y方向の剪断弾性率はゼロに近い。表裏面に平織り繊維を樹脂で固めた表層材料を接着すると、連結部165、166における剪断剛性の極めて低いハニカムパネル150を得ることができる。
【0023】
[実施例2]
図5は、芯材にハーフストレッチコアを用いた例である。
フラットパネルスピーカーの振動板400の表面材料420、裏面材料430として、共に一般的な平織り繊維を樹脂で固めた材料を用いている。表/裏面材料の縦横の引張/圧縮弾性率は等しい。
振動板400のコア材410として、ハーフストレッチしたハニカムコアを用いているが、前記の通り、ハーフストレッチコアの剪断弾性率は、縦方向の値と横方向の値が約10倍も異なり、縦横の弾性率が等しい一般的な表面材料を接着してパネルを構成した場合、パネルの曲げ剛性値に方向性を与えることとなる。結果として、軸X方向(縦方向)の曲げ剛性が高く、軸Y方向(横方向)の曲げ剛性が低くなっている。
【0024】
図6は、このパネルを2チャンネルのフラットスピーカーに適用した説明図である。
横方向に距離を離して適切な位置に左チャンネル用エキサイター451bと右チャンネル用エキサイター452bを装着する。エキサイター支持フレームの表示を省略してある。
パネルの横方向の曲げ剛性が低いので、左右の分割振動が容易となり、特に指向性が強い高音域の周波数では振幅が1/100ミリメートル以下なので、左右の干渉が少ない。
振幅の大きい低音域では、左右の干渉が多くなるが、低い周波数の音の指向性は弱いので、2チャンネルのステレオ音響を試したところ、満足できるセパレーションを得た。
【0025】
[実施例3]
図7は、引張/圧縮弾性率が、縦方向の値と横方向の値が異なる材料を、振動板500の表面材520および裏面材530として、標準ストレッチコア510の両面に接着してパネルを構成した例である。
フラットスピーカーの構成および効果は、実施例2と同じである。
【0026】
[実施例4]
図8は、振動板600として、標準ストレッチコア600に、縦横の弾性率が等しい一般的な表面材料620、630を接着したパネルの中央の一部分の裏面材を切り取って、その部分の曲げ剛性を低下させて左右の分割振動を容易にした例である。エキサイター支持フレームの表示を省略してある。
1枚の振動板600であっても、高音域において左右別々の振動板630、640として振動するので、ステレオ音響を放射することができる。
この構造は、小型で小出力のフラットスピーカーの振動板に適している。
【0027】
[実施例5]
図9は、振動板の曲げ剛性を局部的に低下させ、高音域の振動に自由度を与え、高音域性能と左右のセパレーションを改善した多チャンネルスピーカー700を示した説明図である。
図9(a)は、スピーカー振動板710の全体図、図9(b)は、エキサイター770を装着した部分720の拡大断面図である。エキサイター支持フレームの表示を省略してある。
【0028】
振動板710の基本構成は、発明の実施の形態?3と同じくハーフストレッチコア730の両面に、縦横の弾性率が等しい一般的な表面材料740、750を接着している。
そして、左右の適切な位置で、コア720を円錐形状に切削除去加工して、局部的に曲げ剛性を低くした部分760にエキサイター770を装着した構造を有している。
高音域においては、それぞれのエキサイターは、振動板710の局部的な部分720のみを振動させ、振動板となる部分の質量が小さいので、優れた高音特性が得られる。
【0029】
そして、高音域の音は指向性が強いので、この部分720から左右別々に放射された音がステレオ感を与える。
振幅が大きく、位相の影響が少ない低音域では、エキサイターが振動板710全体を振動させるので、豊富な低音域の再生が可能となる。
【0030】
図9は、一枚のパネルに2個のエキサイターを装着して、ステレオスピーカーとした例を示しているが、一枚のパネルに1個のエキサイターを装着すると、高音域を改善したモノーラルスピーカーとなる。
【0031】
[実施例6]
図10は、エキサイター812に高音域用振動板811を組み込んだユニット810を別部品として装着した多チャンネルスピーカー800の説明図である。図10(a)は、スピーカー800の全体図、図10(b)は、ユニット810部分の拡大断面図である。エキサイター支持フレームの表示を省略してある。
実施例5では、コア720を円錐形状に切削除去加工して振動板の曲げ剛性を局部的に低下させているが、この実施例6では、当該部分850を円形に切断削除し、代わりに適切な曲げ剛性値を持った高音域専用の振動板811を別部品として配し、エキサイター812は、振幅の小さい高音域においては高音域用の専用振動板811のみに振動を与えて指向性の強い高音を放射する。
振幅の大きい低音域では、高音域専用振動板811の周囲が、ねじ830を介してパネル振動板820全体に振動を伝えるので、面積の大きい振動板820の全体を振動させて、豊富な低音を放射する。
【0032】
高音域専用の振動板の曲げ剛性値を、材質と板厚を変えて変化させ、スピーカーの周波数特性を計測して決定した。
この方法によって、振動板810を軽量なサンドイッチ材料に限定せず、ある程度は重量の重い安価な材料を選定しても、多チャンネルスピーカーとして機能することとなる。
【0033】
図10は、一枚のパネルに2個のエキサイターを装着して、ステレオスピーカーとした例を示しているが、一枚のパネルに1個のエキサイターを装着すると、高音域を改善したモノーラルスピーカーを得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
本発明により、一枚のフラットパネルスピーカーから2〜3チャンネルのステレオ音響を放射するスピーカーシステムを構成することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスクリーンスピーカーの表面図と裏面図。
【図2】本発明によるスクリーンスピーカーの断面図。
【図3】スピーカーの振動板を構成するハニカムコアの斜視図。
【図4】ハニカムコアの接合部にコルゲートコアを配した斜視図。
【図5】ハニカムパネルの芯材にハーフストレッチコアを用いた例を示す斜視図。
【図6】2チャンネルステレオスピーカーに適用した断面図。
【図7】縦横の弾性率が異なる表面材を張ったハニカムパネルの斜視図。
【図8】パネルの中央部分の一部を切り取って曲げ剛性を変化させた例を示す斜視図。
【図9】振動板の曲げ剛性を局部的に低下させた例を示す説明図。
【図10】高音域専用振動板を持つユニットを別部品として装着した例を示す説明図。
【図11】従来のフラットスピーカーの基本的な例を示す説明図。
【図12】従来のスクリーンスピーカーを用いた投影装置を示す説明図。
【図13】従来のスクリーンスピーカーの裏面図。
【図14】従来のスクリーンスピーカーの断面図。
【図15】蜂の巣状コアを用いたハニカムパネルの説明図。
【図16】サンドイッチパネルが曲げる力を受けた時の説明図。
【図17】ハニカムコアの製造工程図。
【符号の説明】
100 スクリーンスピーカー
110 スクリーンフィルム
131,132,133 平板スピーカー
131b,132b,133b エキサイター
150 ハニカムパネル
160 ハニカムコア材
165,166 連結部

Claims (3)

  1. 1枚の平面状のパネルにより構成される振動板と、振動板に取り付けられる励振器を備えるフラットスピーカーであって、
    パネルは、ハニカムコアと、ハニカムコアの両面に接着される表面材と裏面材を有し、
    ハニカムコアは、標準ストレッチコア材で形成される複数個のコア材と、複数個の標準ストレッチコア材を連結するパネルの短辺方向に引きのばされたオーバーストレッチコア材で形成され、
    複数個の標準ストレッチコア材を含むパネル上に各々励振器を備える多チャンネル音響用フラットスピーカー。
  2. 1枚の平面状のパネルにより構成される振動板と、振動板に取り付けられる励振器を備えるフラットスピーカーであって、
    パネルは、ハニカムコアと、ハニカムコアの両面に接着される表面材と裏面材を有し、
    ハニカムコアは、標準ストレッチコア材で形成される複数個のコア材と、複数個の標準ストレッチコア材を連結するハニカムコア材の材料を折り曲げたコルゲート材で形成され、
    複数個の標準ストレッチコア材を含むパネル上に各々励振器を備える多チャンネル音響用フラットスピーカー。
  3. 1枚の平面状のパネルにより構成される振動板と、振動板に取り付けられる励振器を備えるフラットスピーカーであって、
    パネルは、ハニカムコアと、ハニカムコアの両面に接着される表面材と裏面材を有し、
    ハニカムコア材は標準ストレッチコア材で形成されるとともに、裏面材の一部をパネルの短辺に沿って切り取ってパネルを複数個に区分し、区分された各パネルに励振器を備える多チャンネル音響用フラットスピーカー。
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